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日本では、ここ数年で最大の盛り上がりを見せていると言っても過言ではない第76回アカデミー賞。渡辺謙に「たそがれ清兵衛」など、アカデミー賞の記録を塗り替えるかもしれないノミネート状況に！映画界最大の祭典のゆくえは!?

　76回目の授賞式を2月29日（現地時間）に迎えるアカデミー賞。さる1月27日にノミネートが発表され、数々の話題を呼んでいます。
　何と言っても、日本人最大の注目は「ラスト・サムライ」で助演男優賞にノミネートされた渡辺謙、外国語映画賞にノミネートされた「たそがれ清兵衛」がオスカーを獲得するかどうか！　両者がめでたく受賞すれば、前者は日本人初（助演賞という括りでいえば、マコ・イワマツ以来37年ぶりのノミネートで、受賞はナンシー梅木以来47年ぶりということに）、後者は22年ぶりの快挙となります。
　また、おすぎさん絶賛の「ロード・オブ・ザ・リング／王の帰還」（ピーター・ジャクソン監督）は11部門でノミネート。全部受賞すれば、「ベンハー」や「タイタニック」と並んでアカデミー最多受賞作品に！　最有力候補だけに、目が離せません。
　そして同じく注目を集めているのが、巨匠フランシス・フォード・コッポラの娘ソフィア・コッポラ。彼女が監督・脚本・プロデュースを務めた「ロスト・イン・トランスレーション」が作品賞、監督賞など4部門でノミネートされています。もし彼女が監督賞を受賞すれば、アカデミー史上初・親子二代受賞という記録を作ることに。この作品、東京でロケを敢行し、マシュー南が出演しているということで、今回の賞レースは日本人にとって思い入れの強いものになりそうです。

　受賞者に贈られるオスカー像はすべて高さ34センチ、重さ約3キロ。スズと銅で作られ、表面に金メッキが塗られています。ただし第2次世界大戦中に限っては金属節約のため、石膏で作られました。デザインは、十字軍の剣を持った裸の男性が、フィルムのリールの上に立っているというもの。これはMGMの美術監督だったセドリック・ギボンズが、賞の制定会議の時にスケッチを描いてデザインして生まれました。そんなオスカー像の名前の由来には、さまざまな説があります。もっとも有力な説は1931年当時、アカデミー事務局の職員であったマーガレット・ヘリックが「私のオスカーおじさんにそっくり」と言ったからだというもの。その後、1934年に行われた第6回授賞式でウォルト・ディズニーが「オスカーを手にできて嬉しい」とスピーチし、その名が一般的になったそうです。ちなみに実際は、ヘリックの血筋にはオスカーという名の人物はいなかったとか…。

　オスカー像の売買は禁止されています。が、中には競売にかけられたものも。ハロルド・ラッセルは妻の手術費用を工面するために、「我等の生涯の最良の年」（1946）で獲得した助演男優賞のオスカーを競売にかけ、約6万ドルで売却。あのマイケル・ジャクソンも'99年に「風と共に去りぬ」（1939）のオスカーを154万2450ドルで落札しています。ところで実際の値段って？　オスカーを盗まれたソフィア・ローレンがアカデミー協会に再度作ってもらった時の代金は60ドル。
　さて実際の値段はさておき、いずれにせよ名誉あるオスカー像ですが、実は数々の災難にあっています。「我が道を往く」（1944）で助演男優賞を獲得したバリー・フィッツジェラルドは、自宅の部屋でゴルフの練習中にオスカーの首をクラブではねてしまいました。「二人の女」（1961）で主演女優賞を獲得したソフィア・ローレンのオスカーは泥棒に盗まれてしまいました。そして「クレイマークレイマー」（1979）で助演女優賞を受賞したメリル・ストリープは、トイレに置き去りに…。

　アカデミー賞は1929年に始まった映画界最高峰の賞レース。アメリカの映画界で働く俳優やスタッフで結成された映画芸術科学アカデミー（AMPAS）が主催し、毎年25部門でのトップを決めます。現在は米テレビ局のNBCが放送権を買い取ったことで、エンターテインメント性あふれる華々しい授賞式となっていますが、第1回目は約200人だけが集まって行われ、とてもシンプルなものでした。当初は映画会社の権力者によって左右される、偏った賞レースでしたが、第8回授賞式で監督や俳優たちがボイコット運動をし、それ以降、公正な賞となりうる方向への改革が重ねられて現在に至ります。
　アカデミー賞最多受賞作品は「ベンハー」（1959）と「タイタニック」（1997）で、11部門でオスカーを獲得しています。また、個人での最多記録保持者はウォルト・ディズニー。64の賞にノミネート、26の賞を受賞しています。最年少記録は「ペーバー・ムーン」（1973）で助演女優賞を受賞したテータム・オニールの10歳（出演時は9歳でした）。一方、最年長記録は「ドライビング・ミス・デイジー」（1989）で主演女優賞を受賞したジェシカ・タンディの80歳。

本名・梅木美代志。1929年北海道小樽市生まれ。'50年にジャズバンド「ゲイ・セプテット」のボーカリストとして人気を博す。'55年渡米。テレビ番組「アーサー　ゴッドフリー」（CBS）のタレントスカウト・ショーで優勝し、アメリカのアイドル的存在に。'57年、マーロン・ブランド主演映画「サヨナラ」に出演し、東洋人初のアカデミー賞助演女優賞を獲得。その後、ブロードウェイに進出し、トニー賞で主演女優賞にノミネート。子役だったジョディ・フォスターと共演した連続ドラマ「エディの素敵なパパ」（ABC）終了後、43歳で女優を引退。スマステの調査などで現在も生きているとみられるが、詳細は不明。

[EPISODE]「百万長者になる」と言って渡米した梅木さん。オスカー受賞後の月給は現在の価値で5000万円にも跳ね上がった。夢は叶ったが、浪費癖があり手元にはほとんど残らなかった。

本名・岩松信。1933年兵庫県神戸市生まれ。芸術家の両親と共に'49年NYへ移住。兵役終了後の'55年、名門演劇アカデミー「パサデナ・プレイハウス」に入学。ダスティン・ホフマンと同じクラスに在籍する。ところが役に恵まれず、アジア俳優仲間たちと演劇集団「イースト・ウエスト・プレイヤーズ」を結成（後にジョン・ローンも輩出）。この公演がもとで映画「砲艦サンパブロ」に出演し、'66年にアカデミー賞助演男優賞にノミネートされる。その後80本のハリウッド映画に出演。劇団活動では'76年に、トニー賞にもノミネートされた。'94年にはハリウッドの「ウォーク・オブ・フェイム」に名を刻まれる。現在、妻とロサンゼルス在住。

[EPISODE]アカデミー在籍中、マコさんとD・ホフマンはスウェーデンの美人女学生をめぐり恋敵に。それ以来、親密な仲になったんだそう。

＜助演女優賞＞
ナンシー梅木（1957）「サヨナラ」

＜長編アニメ賞＞
「千と千尋の神隠し」（2003）【宮崎駿監督】

＜衣装デザイン賞＞
和田三造（1954）「地獄門」
ワダエミ（1985）「乱」
石岡瑛子（1992）「ドラキュラ」

＜白黒衣装デザイン賞＞
甲斐荘楠音（1955）「雨月物語」

＜作曲賞＞
坂本龍一（1987）「ラスト・エンペラー」

＜特別名誉賞＞
黒澤明（1990）

＜外国語映画賞＞
「デルス・ウザーラ」（1975）【黒澤明監督】
「宮元武蔵」（1955）【稲垣浩監督】
「羅生門」（1989）【黒澤明監督】

＜短編ドキュメンタリー賞＞
井比恵子（1999）「The Personals」

＜監督賞ノミネート＞
黒澤明（1985）「乱」

＜助演男優賞ノミネート＞
早川雪洲（1957）「戦場にかける橋」
マコ・岩松（1966）「砲艦サンパブロ」
渡辺謙（2004）「ラスト・サムライ」

＜外国語映画賞ノミネート＞
「泥の河」（1982）【小栗康平監督】
「たそがれ清兵衛」（2004）【山田洋次監督】

＜短編アニメ賞ノミネート＞
「頭山」（2003）【山村浩二監督】

＜白黒美術監督賞ノミネート＞
黒澤明（1989）「羅生門」

＜セット賞ノミネート＞
「羅生門」（1989）【黒澤明監督】