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もしイラクに自衛隊を派遣しなかったら…
各国のジャーナリストが語る「自衛隊派遣問題」。
【ロシア】
ウラジミール・ソーンツェフ イタル・タス通信東京支局次長

Q「自衛隊のイラク派遣について、ロシアの反応は?」。
A「この戦争には大きな関心があるが、自衛隊派遣についてはあまり大きな興味はない。我々も5つの記事を流したが、コメントとしては、国際社会での日本の軍事的役割は拡大の一歩である、という事。もうひとつは、今回の決定は小泉内閣にとってはとても危ないものになる、ということ。というのも犠牲者が出れば責任を問う声も出てくるだろうから。自衛隊派遣はある意味では正しいと思うが、今回、自国の軍隊を送った国は40カ国。200以上の国が存在する世界で40カ国というのは国際社会とはいいがたい。人道援助は立派な仕事だが、イラクはそんなに貧乏な国ではない」。

Q「日本の軍事化という脅威は無いのか?」
A「最近の日本とロシアの関係は深まっており、日本に軍事脅威を感じることはない。もちろん中国や北朝鮮からの批判はあるだろうが、私はあまり心配することは無いと思う」。

Q「米国が『戦争に参加しないものは復興参加の資格がない』と発言したことは?」
A「この考え方はアメリカ国防省から出たのだろう。国防省の指導者を私はミリタリーモンスターと呼んでいるのだが、彼らがそういう発言をするのはおかしい事だ。今回アメリカに同調しなかったフランスなどの国は戦争前から経済利益を持っていた。なかでもロシアはイラク債務を80億ドルくらい持っているはずだ」。

Q「日本政府がすべきことは何だと思うか?」
A「日本は何をすべきか、、日本政府は何をすべきか、、それは日本人と政府の判断。日本政府が正しいことをしているのかどうか、日本人はもう少し考えたほうがよい。日米安保は日本の利益なのか、アメリカの利益なのか。自衛隊派遣はイラクだけでなく、日本国内が危なくなることもある」。

【韓国】
白眞勲(ベック・ヂンフン)朝鮮日報・日本支社長

Q「自衛隊派遣について、韓国の反応は?」
A「いたって韓国の報道は冷静。事実をありのままに伝えているだけで、それ以上のコメントはあまりない。これは何故かというと、アメリカに対して、日本も韓国も悩みは同じようなものだからだ。北朝鮮問題があり、経済的依存が強く、韓国でも派兵については悩みが非常に多い。そういう部分で、『ああ、日本もそうなったのね』という事で、非常に冷静な反応だなという気がする」。

Q「自衛隊を派遣しなかった場合、日米関係はどうなると思うか?」
A「今回、小泉総理がこういう形で派兵を決断したのは、悩みに悩んだ結果なのだろう。ひとつは北朝鮮の軍事的脅威。もうひとつは経済的な日米同盟。そういう観点から決断を下したのだろうが、私は日本人のアイデンティティはどうなのか、、という部分では非常に問題があるのではないかと思う。韓国にもそういう意味で同じ側面があるが、日本は憲法9条で戦争放棄したり、世界唯一の被爆国であるわけで、ただ世界と同じように軍隊を派遣するのではなく、日本独自のアイデンティティを持った動き方というのもあるべきではないか」。

【中国】
張煥利(Zhang Huan Li) 新華社・東京特派員

Q「自衛隊の派遣について、アメリカ追随と言われることについてどう思う?」。
A「外国ジャーナリストの目で見ると、正真正銘のアメリカ戦争政策への追随。アメリカの要求はほとんど100%納得する。しかし自衛隊派遣は今の日本の平和憲法にあわない」。

Q「中東の石油権益についての配慮があったのではないか?」。
A「日本の石油はほとんどが海外から輸入したもの。とりわけ大部分は中東から輸入されたもの。出兵する理由のひとつは、国益…すなわち石油の利益ですね」。

Q「日本の最も大きな貢献方法は?」。
A「イラクはこれから治安の問題は少なくなる。そのとき、自衛隊は今のようではなく、軍用飛行機、機関銃、装甲車などを送るのではなく、自衛隊も武器を持たずに、文民でイラクの建設復興活動に従事するのが一番良い方法。日本はそれができると思う。日本は世界で経済大国としてイラクを支援するのならばよいのではないかと思う」。

Q「小泉総理に言いたい事は?」。
A「小泉総理はやはり今の派兵問題でできるだけ日本国民の声を聞いたら良いし、私もそれを希望する」。

【ドイツ】
ゲプハルト・ヒールシャー ジュートドイチェ新聞・前極東特派員

Q「イラクへの自衛隊派遣について、ドイツの反応は?」
A「一部のメディアには大きなニュースになった。たとえば海外ニュースなどではトップニュースだったが、一方ではあまり関心がなかったのではないか。ドイツと日本は、イラク戦争に対して、国民の考え方は似ているが、政府のやり方は全然違う。戦争参加には軍人を送ること、金を払うこと…など色々条件はあるが、日本が派遣を決定したひとつの理由は、日本の同盟はアメリカとの2カ国間だけで、日本に万が一の事があれば日本を守るのはアメリカだけという事。ドイツはNATOに加盟しており、加盟国は20カ国。ヨーロッパでは誰もドイツを攻める国はない。ところが日本の近くには、金正日の北朝鮮がある。何年か前には、日本でもテポドンがやってきた時には、初めてこの国でも何か変な事が起きるという危険を感じた。ドイツは冷戦が終わるまでは、いつでも30分でソ連が攻めてくるんだ、と感じながら生きてきた。そういう意味でも日本とドイツで出発点が違う。でも日本もドイツも世論も6割、7割が派遣に反対。シュレーダー首相は、国連が正式に決定しないと、戦争を正当化することはできない。しかし日本は湾岸戦争のことを思い出してしまうのだろう。あのとき日本は自衛隊を結局送ることができなかった。お金をたくさん送ったのに全く評価されなかった。『我々もちゃんとやれるよ』という事を小泉さんは証明したかったのだろう」。

Q「もし派遣しなかったらどうなると思うか?」
A「また湾岸戦争のようなことになる。日本は大人扱いされないとか、いつも特別な事情があるとか言っている、と。そういう意味で、小泉さんにはちゃんと問題意識があって、一応約束をしたからには、事情が悪くても、これを言い訳にすると信頼が無くなるか、ひびが入る可能性があったので仕方なく派遣を決めたのだろう。しかし私は、日本が軍国主義に向かう心配はしていない。ただ憲法改正の一歩となることは間違いないだろう」。

Q「『自衛隊』という存在はわかりにくいのでは?」。
A「これは名前だけ建前で、軍隊ですよ!日本の国防予算はアメリカ、ロシアに次いで第3の予算を持つ。軍隊が無いなんて冗談じゃない。でも、この軍隊で何ができるのか。憲法では軍隊を持つことは許されない、第9条の解釈で国防権は放棄できない、でも集団的自衛権は行使できない。ではイラクへの派遣は集団的自衛権ではないのか? もちろんそうです。だからあの解釈は憲法違反であり、法律そのものも憲法違反です。インド洋に送った海上自衛隊の防衛艦も、実際的には集団的自衛権。憲法違反なのは明らかだ」。
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