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新世界ことば辞典

  • 悪鬼(あっき)

    呪力を持った者の中で、同族である人間に危害を加える可能性のある存在。150年前から伝えられている説話として繰り返し学校で教えられているが、それは単なる作り話ではない。実例として、これまで全世界で30近い症例が記録されていて、そのうち2例を除いてすべてが男子であるという。最大の特徴は、人間すべてに備わっているはずの攻撃抑制と愧死機構がないということ。そして、相手から反撃を受けるかも知れないという恐怖から、周囲の人間を皆殺しにするまで先制攻撃をかけ続けるという。また、脳内で分泌される快楽物質のため、酩酊したような状態となり、大量殺人を止められなくなるという説もある。
  • 安全保障会議(あんぜんほしょうかいぎ)

    神栖66町の警固を司る組織。平素から町の安全に目を配っているほか、有事の際には、町の要人や関係者を招へいして議論を交わし、町の意思を決定する。町一番の呪力の使い手といわれる鏑木肆星が議長を務めており、町を脅かす緊急事態が発生した場合には、先頭に立って事態の収拾にあたる。
  • 家路(いえじ)

    チェコの作曲家アントニン・ドヴォルザーク作曲の交響曲「新世界より」第二楽章の一曲に日本語詩をあてたもの。神栖66町の子供たちは、公民館に設置された拡声器からこの音楽が聞こえてくると、家に帰るように指導されている。

  • 夏季キャンプ(かききゃんぷ)

    全人学級最大のイベント。班ごとに別れてカヌーに乗り込み、キャンプを張りながら利根川をさかのぼる。全7日間の日程は、重ならないように担任の教師によって調整される。単なる遠足ではなく、野外実習という名目があるため、生徒はキャンプ終了後、班ごとにテーマを決めた課題を提出しなければならない。
  • 神栖66町(かみすろくじゅうろくちょう)

    利根川の下流、大昔に茨城と呼ばれた地域があった一角に広がる町。現在、およそ3000人の人々が暮らしている。町には水路が張り巡らされ、船が行き来する交通の要として利用されている。水車による発電も行われているが、電力の使用は公民館の放送に限られている。また、貨幣という概念は存在せず、社会は助け合いと無償の奉仕によって成り立っている。
  • 愧死機構(きしきこう)

    人間の遺伝子に組み込まれた強制的かつ強力な攻撃抑制機能。サイコキネシスを持った人間が、集団で社会生活を営むために必要不可欠なものとされている。同種である人間への攻撃を企てていると脳が認識すると、無意識にサイコキネシスが発動。腎臓および副甲状腺の機能を停止させる。これによって不安、動悸、発汗などの警告発作が起き、なおも攻撃を続行した場合、低カルシウム血しょうによる発作で窒息死するか、カリウム濃度の急増により心停止に至る。
  • 教育委員会(きょういくいいんかい)

    子供たちの教育を司る機関。町の最高位組織である倫理委員会とは独立した権限を持ち、子供の教育やそれにまつわる処遇に関しては、絶対的な決定権を持つ。
  • 業魔(ごうま)

    呪力を持ちながら、己の業(ごう)から“人間ではないもの”へと変化した存在。漏れ出した呪力が周囲の生き物や環境にまで影響を及ぼすといわれる。
  • コロニー

    女王を中心とするバケネズミ集団の単位。神栖66町周辺には10個ほどのコロニーが存在し、スクィーラが奏上役を務める塩屋虻(しおやあぶ)、奇狼丸が司令官を務める大雀蜂(おおすずめばち)など、人間に従順なコロニーは存続を許されている。いっぽう、人間や呪力の存在を知らない土蜘蛛(つちぐも)などの海外から渡ってきたバケネズミたちは“外来種”と呼ばれ、人間に危害を加えるようであれば、コロニーごと駆除の対象となる。

  • サイコバスター

    まだ人類が科学文明の恩恵を受けて暮らしていた頃、アメリカで開発され、ひそかに日本に持ち込まれた大量殺戮兵器の俗称。正確には「強毒性炭疽菌」のことで、極めて高い感染力があり、人体に摂取されると治療法は皆無だという。元々は呪力を持たない人間が、呪力を持つ人間を根絶やしにするために開発した秘密兵器。現在は、廃墟と化した東京のある場所に保管されているらしい。
  • 呪力(じゅりょく)

    人間なら生まれながらにして誰しもに備わっている超能力。脳内のイメージを具現化することができ、そのエネルギーには原則としてリミットはない。しかし、実行には脳内で明確なイメージを描く必要があるため、「誰もが常にどんな現象でも起こせる」というわけではない。呪力の発現は、おおむね12歳を迎える頃で、"祝霊(しゅくれい)"と呼ばれるポルターガイスト現象が契機となる。
  • 清浄寺(しょうじょうじ)

    利根川の上流、霞ヶ浦のほとりに位置する祭祀施設。呪力発動の鍵となる言葉=真言(まんとら)を授けるなど、様々な秘密の儀式が行われているため、町民にもその正確な位置は知らされていない。
  • 書籍分類(しょせきぶんるい)

    神栖66町では、『一般倫理規定管理委員会』によって知識に等級がつけられており、本に直接焼印を押すなどして、誰もが見ていいもの、年齢制限があるもの、抹消すべきものなど、4つのカテゴリーに分類されている。具体的には、有益であり、無害と認められる第一分類。有益だが、必ずしも無害とは言えない第二分類。有害である可能性があり、慎重に管理すべき第三分類。そして、存在すること自体が一般の町民に知らされていない、永遠に葬り去るべき知識である第四分類の4種。なお、この四分類の中でもさらに細かく等級が付けられ、図書館司書である早季の母・渡辺瑞穂らによって厳重に管理されている。
  • 人格指数(じんかくしすう)

    どれだけその人物が安定した人格を保てるかを数値化したもの。想定外の出来事が起きて心の危機を迎えても、自分を見失ったり、精神的な動揺から普段にない行動を取ったりせず、一貫して自分を保つことが出来るかを示す。神栖66町では昔から、指導者に一番大切な素養として、この数値が重視されてきた。早季はそのスコアが全人学級始まって以来の高水準にあるという。
  • 真社会性(しんしゃかいせい)

    アリやミツバチのように、子を産み落とす女王のような個体と、労働に従事する個体が分かれていて、分業によって繁殖、子育てを行う生き物集団の性質。ハダカデバネズミは哺乳類の中で唯一この真社会性を持っており、バケネズミもその性質を受け継いでいる。
  • 神聖サクラ王朝(しんせいさくらおうちょう)

    570年に渡って関東一円から中部地方までを支配していた奴隷王朝。王朝初期は、少数のサイコキネシス能力者が、多数の一般人を奴隷として使役することで成り立っていたが、王族内部での粛清が相次ぎ、やがて1つの王族の血統による絶対王政へと変わっていった。歴代の王は実に九十四代を数え、王朝末期には後継者が王を殺害して王位を奪うことが通例になっていたという。歴代の王の中でも、第五代皇帝の大歓喜帝と、第79代の慈光帝は、特に残虐な暴君であったという言い伝えが残されている。しかし、その長年に渡る業により、神聖サクラ王朝は九十四代皇帝を最後に570年の歴史を閉じることになる。
  • 全人学級(ぜんじんがっきゅう)

    和貴園などの初等教育施設を卒業した者が通うことになる上級学校。基礎的な学問を学ぶほか、様々な分野で呪力のトレーニングが行われる。生徒たちはここで、自分が得意とする能力を見極め、呪力を磨いていくことになる。

  • 鳥獣保護官(ちょうじゅうほごかん)

    町立保健所の有害鳥獣対策課に所属する係員。保護という名称とは裏腹に、反抗的なバケネズミの駆除を主な任務とする。通常、高位の意思決定機関である安全保障会議の下命に従って任務を遂行することになる。駆除にあたっては必ず5人一組で連携しながら行動し、バケネズミからは「死神」と恐れられている。
  • 町立保健所(ちょうりつほけんじょ)

    現在の保健所と大きく異なるのは、異類管理課というバケネズミの統制を専門に行う部署があること。課では、随時バケネズミの実態調査をするほか、コロニー間の戦争や幼獣の管理移転申請などの届け出を受け付け、許可証を発行するといった業務を行っている。また、有害鳥獣対策課では、人間に危害を加える可能性のある生物の駆除を専門に行っている。その業務は主に、鳥獣保護官と呼ばれる係員が、反抗的なバケネズミコロニーを壊滅させることにある。
  • 当番委員(とうばんいいん)

    全人学級に入って2年目の冬に、学校主導で組まれる男女のペア。同じクラスの男女が二人一組になって日直や様々な行事の準備作業を行う。しかし、それはあくまで建前。ペア作りは基本、男女がお互いを指名することで成立するため、実際には異性に愛を告白するための公式行事である。同性同士の精神的繋がりのみならず、肉体的接触まで奨励してきた大人たちの指導方針が、ここで大きくシフトチェンジすることになる。
  • 図書館(としょかん)

    神栖66町にある公共施設。早季の母・渡辺瑞穂が司書として書物を管理しており、蔵書は秘匿度によって4つに分類されている。第一分類は「有益であり、無害と認められる優良図書」。第二分類は「有益だが、必ずしも無害とは言えないもの」。第三分類は「有害である可能性があり、慎重に管理すべき禁書」。そして、第4分類に属する書物は「永遠に葬り去るべき知識」として封印されている。

  • ナイトカヌー

    早季、覚、真理亜、守、瞬の5人は夏季キャンプ1日目の夜、守の提案で夜の利根川にカヌーで漕ぎ出した。覚だけは火の番で岸に取り残されたが、早季と瞬、真理亜と守は、このナイトカヌーでそれぞれ忘れ得ぬ思い出を作った。その鮮烈な記憶が残っていたことで、早季は自分たちの記憶が大人たちによって操作されていることに気づくことになる。
  • 七つの郷(ななつのさと)

    神栖66町は、櫟林(くぬぎばやし)、朽木(くちき)、白砂(しらすな)、黄金(こがね)、水車(みずぐるま)、見晴(みはらし)、芽輪(ちのわ)の七つの郷に分かれている。朽木の郷は元々、松風(まつかぜ)の郷と呼ばれる豊かな森林地帯だったが、ある時期から突然、郷の名称が変更された。現在は、ほとんど人が住まない寂れた場所になっている。
  • ネコダマシ

    子供たちの間で噂されている巨大な猫の化け物。初等学校を卒業出来なかった子供は、迎えに来たネコダマシによって、どこかに連れ去られてしまうといわれている。

  • バケネズミ

    ハダカデバネズミから進化したとされる生物で、知能は高く、中には人語を理解し、しゃべれる個体も存在する。身長はおおむね120〜140cm程度だが、個体によっては子供の背丈を上回る体躯を持つ者もいる。呪力を持つ人間を"神"と崇めており、その命令には絶対服従の意思を示す。普段は、八丁標の外に点在するコロニーと呼ばれる"巣"で生活しているが、土木工事などの役務を命じられた際には、町に入ることも許されている。また、人間に忠実なバケネズミには、額にコロニー名を記した刺青が施されている。
  • 橋本アッペルバウム症候群
    (はしもとあっぺるばうむしょうこうぐん)

    業魔の医学的な名称。無意識の暴走により、呪力の異常漏出が起き、周囲のものすべてに破壊的な影響を与えてしまう。治療法は発見されておらず、呪力を凍結しても症状は進む。そのため、神栖66町では発症者を町から離れた場所に隔離し、自ら命を断つよう促すか、不浄猫を放って“処分”することが倫理規定で定められている。
  • ハチ玉(はちだま)

    金属で作られた球状の玩具。呪力によって宙に浮かせ、高速で回転させるとブーンという蜂の羽音のような音を発する。全人学級に入学した後、能力開発教室で最初に与えられる課題のひとつ。呪力を持つ者なら誰でも簡単に扱えるようになるので、しばらくすると誰一人見向きもしなくなるような代物。
  • 八丁標(はっちょうじめ)

    神栖66町と外界を区切る境界線に張られた注連縄(しめなわ)。紙垂(しで)の付いた太い縄が、ぐるりと町を取り囲み、外から流れてきた“悪いもの”が町に侵入するのを防いでいると教えられている。しかし、本来の目的は、外敵から町を守るためではなく、自分たち人間から絶えず漏出している呪力を外の世界に向けるため。そのせいで町の外では、わずか1000年という短い年月で、生態系や生物の進化に大きな異変が起きている。
  • ボノボ

    ヒト科チンパンジー属に分類されるサル。チンパンジーより高い知能を持つといわれる。小型哺乳類なども食べる雑食性ではあるが、同種間で争うことはほとんどないという。その理由として、個体間の緊張やストレスが高まると、濃密な性的接触を行い、それによって抗争の火種を解消しているからであると考えられている。成熟した雄と雌はもとより、同性間や未成熟な個体でも、擬似的な行為を行う。これにならい、サイコキネシスによる対人攻撃が常態化していた当時の人類は、ボノボ型の愛の社会への変革を計画。以来、人間同志の親密な接触は黙認、あるいは推奨されている。

  • 真言(まんとら)

    呪力を起動する鍵となる言葉。正式に呪力を授かる清浄寺での儀式の中で伝えられ、言葉は一人ひとり違う。これをみだりに他言すれば言霊が失われ、呪力の発動に支障をきたすと教えられている。
  • 妙法農場(みょうほうのうじょう)

    黄金の郷に位置する町最大の農場及びそれに付随する施設。穀物や野菜といった食品を育てているほか、大規模な畜舎や養蚕場なども有する。町の初等学校では、社会科見学の一環として訪れることが慣例になっている。また、農場内には専門の研究室も設置され、職員は日々品種改良や遺伝子の研究に勤しんでいる。26歳になった覚は、自ら希望してこの研究室に職を得た。
  • 夢応鯉魚号(むおうのりぎょごう)

    清浄寺が保有する神栖66町唯一の潜水艇。本来は川底を調査するためのものだが、有事の際には住職など高僧の脱出用として用いることが想定されていた。船外に付いた外輪を呪力で回すことで前進、後退、あるいは曲がることができる。ただ、狭い船内の空気はすぐに薄くなってしまうため、時折浮上して息継ぎをしなければならない。早季たちは、バケネズミに見つからないように、これに乗って水底を進み、東京を目指すことになる。
  • 面従腹背(めんじゅうふくはい)

    「表面は従っているが、腹の中では違うことを考えている」という意味の四字熟語。バケネズミは、呪力を持った大人の人間を神として崇めているが、呪力のない子供に対してはどういう態度に出るか分からない。神栖66町の大人たちは、バケネズミにそうした面従腹背の気質があると感じ、子供たちとバケネズミが顔を合わせることを極力避けている。

  • 友愛園(ゆうあいえん)

    守が通っていた初等教育の学校。早季たちが通っていた和貴園が茅輪の郷にあるのに対して、この友愛園は守の実家がある櫟林の郷に位置する。いずれの園も、“祝霊”が訪れた者から順次、全人学級へと進学することになる。

  • ラーマン・クロギウス症候群
    (らーまん・くろぎうすしょうこうぐん)

    悪鬼の正式名称。同じ悪鬼でもタイプによって7つの型に分けられ、混沌型と呼ばれるラーマンT〜W型、秩序型と呼ばれるクロギウスT〜V型に分類される。混沌型と秩序型では、破壊や殺りくの様態が違うため、避難する際の心得が違う。神栖66町では、悪鬼の万が一の出現に備えて、タイプ別の避難方法が指導されていた。
  • 竜穴(りゅうけつ)

    バケネズミのコロニーの中で、女王のために掘られた洞穴状の居住スペース。外敵の攻撃から女王を守るため、周囲は塹壕などで固められ、竜穴自体はコロニーの中心部に位置することが多い。しかし、スクィーラ率いる塩屋虻コロニーでは、女王の扱いの変化や文明の発展から、その存在が改廃された。
  • 倫理委員会(りんりいいんかい)

    町のあらゆる方針を取りまとめる最高位の意思決定機関。委員長の権限は町長より強いといわれている。
  • 倫理規定(りんりきてい)

    神栖66町で定められた法律の一種。町民が安全に生活するための根本的な決まりごとが定められている。「別の人間が呪力を及ぼしている対象に、割り込んで呪力を行使してはならない」という項目は、もっとも重要な既定のひとつ(呪力同士がバッティングすると、虹のような干渉模様が現れて空間が歪み、極めて危険な状態となるため)。これに違反した者には、相応のペナルティーが科せられることになる。

  • 和貴園(わきえん)

    古い時代でいうところの小学校にあたる、神栖66町にある教育施設のひとつ。早季、覚、瞬の母校。卒業する時期は決まっておらず、呪力の発現を示す"祝霊"が訪れた者から順次、上級学校である全人学級へと進学することになる。
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