7月27日放送のディレクターズアイ
7月27日放送 ディレクター/丸山真樹
【本拠地・長岡で決定的証言を聞いた】
7月24日、政治倫理審査会。私は、午前9時半過ぎから、ファミリー企業元役員の自宅にいた。テレビの前で今か今かと中継を待ちつづけていた。席を共にさせて頂く目的は、生中継を見ての元役員のリアクションだ。彼は、どういう心境でこの中継を見るのか、何を感じるのか。
9時55分、中継は始まった。早速画面に出てきた真紀子議員を、元役員は食い入るようにみつめた。私は、真紀子議員の表情をどう見るか、元役員に聞くが、なかなか答えが返ってこない。というよりも、真紀子議員の一挙手一投足に集中しているため、私の質問など、耳に入らなかったのかもしれない。
約2時間後、中継が終わり、元役員はこう言った。
「始めからピンハネはあっただろうという認識はあります。それがいいことなんては言えないけど、罪としてはそれほど重いという認識はありませんよ。それより、隠したりする方がむしろ腹立たしい。そういう人じゃないと政治家にはなれないのかな」。
政倫審の真紀子議員の答弁を聞いて、疑惑が晴れたと感じた人はどれくらいいたのだろうか。
そもそも、なぜ、今回このような疑惑が浮上したか、その背景について真紀子事務所関係者はこう語った。
「人間関係ですよ」。
先日、真紀子議員の公設第1秘書、第2秘書がいわゆる“クビ”になった。そのうちの一人の元秘書は我々の取材に応じてくれたが、根本的な原因はやはり人間関係にあった。
「世の中には、敵と家族と使用人だけだ」。
真紀子議員が言ったといわれる言葉が、これまで私が元公設秘書をはじめ、さまざまな人を取材した結果、関係者は揃って“使用人意識”があったことを口にする。そして、外部から見ると側近、真紀子議員から見ると“使用人”という立場を終えると、その後、関係者=敵となっていくようだ。多くの人が真紀子議員との別れ際がよくない。このように、疑惑浮上の背景には、関係者と真紀子議員の人間関係がある。
6月10日付け、真紀子議員の自民党党紀委員会宛て弁明書の一部抜粋。
「これまで秘書経験者の方たちから給与に関し何らの苦情等もなかったことを申し添えます」。
私の取材する範囲で、真紀子議員に苦情などを直接言える人は絶対にいないと思う。何か報道があれば執拗な犯人探し。元公設秘書には、すべてもらったことにしてくれという念書まで取りに行く始末。そんな長岡で暮らす人にとって、例えファミリー企業から離れたとしても、真紀子議員に逆らうことが出来ないのが現状だ。先ほどの真紀子議員の発言は、そういった関係者の足元を見ての言葉であろう。それを聞いて関係者がどのように感じるのか、彼女は考えたことがあるのだろうか。
また、政倫審での真紀子議員のK氏への執拗な個人攻撃。真紀子議員はかねてから「今回の問題に関する資料は個人のプライバシーなどを多く含むもので第3者に開示すべきものではない」としていたが、関係者ならK氏が誰かわかる状態において、「Kさんについては特殊な思惑があったと思います」などと発言すること自体、個人のプライバシーを無視しているのではないか。
疑惑について。まず、なぜ、あのような複雑な処理をしたのか。本来、政倫審において、政治家たる者が自分の言葉で説明できないような会計処理をしていたことに、素朴に疑問を感じる。疑惑発覚後、何ヶ月経っているのか。そして、真紀子議員は「秘書給与について指示も関与もしていない」としている。私にはあたかも、秘書給与について問題があっても、一切の責任はファミリー企業の担当者らにあるというように聞こえてならない。
しかし、政倫審の前夜、それがまったくの嘘だという決定的な物証を見ている。詳細は避けるが、私が見た元事務所関係者のノートには確かに、真紀子議員本人から秘書給与に関する具体的な指示が記載されていた。そのノートをすべて見せてもらったが、最近になって書いたものではないことを裏付けるように、当時のやり取りが鮮明に詳細に記載されている。
真紀子議員の政倫審での上記発言を聞いたとき、私は真紀子議員が明らかにうそをついていると確信した。公設秘書の退職金について、「会社に入れること」と指示していたではないか。
さらに、民主党の永田議員が出した資料。公設秘書の給与が、当時の私設秘書らに分配されていたことを示す内部文書。これを元公設秘書から入手したとする永田議員に対して、その信憑性を問う発言があった。
しかし、ある関係者は私にその資料の存在について言った。
「あの資料を私は見たことがある。当時の経理部長が作ったものです」
決定的な証言だった。資料は実在していたのである。
真紀子議員は資料を見て、「初めて聞いたので・・・」としたが、関係者は「真紀子議員が知らないはずはない」と反論する。「金について、真紀子議員が知らないところで幹部が勝手に動かすことは出来ない。それこそクビになる」という。
真紀子議員はあの資料について、今後、どのように反論してくるのだろうか。知らぬ、存ぜぬではもう通用しないのではないか。複数の関係者が口をそろえて言う。
「真紀子は絶対に謝らない」。
そうならば、最終的には司直の判断に委ねるしか方法はなくなる。
まだまだ書きたいことはたくさんあるが、それは真紀子議員の今後の出方を見てからにしようと思う。
最後に、今回の一連の取材でお世話になった関係者の方々に改めて心から感謝申し上げます。