6月15日放送のディレクターズアイ 

6月15日放送 ディレクター/江野夏平
【ありのまま、を伝える重要性】

昨年のアメリカ同時多発テロから8ヶ月、再びパレスチナへと入ることになりました。情勢はさらに悪化していました。前回の取材でもそうでしたが、とにかく映像としてそのままを切り取ることを心がけました。「聖誕教会での人質解放の瞬間」「自爆テロの惨状」「壊滅状態のジェニン難民キャンプ」映像が全てです。

今回の放送では、多くの方々に歴史的背景をもっと詳しく説明すべきではないか、と言うご指摘を受けました。確かにこの問題を語る上で歴史的な背景は非常に重要なことです。番組としてもその重要性を理解した上で、あえて今回の放送では歴史の説明は必要最低限にとどめ、取材で分かった新たな事実を優先して放送することとなりました。現場で撮影したありのままの映像を報道することに重きを置いたのです。それ故、番組取材班が撮影していないVTRについては、極力誰が撮影したVTRかを明示するように心がけました。海外の通信社が撮影したものであれば、その会社名を。フリーランスのジャーナリストが撮影したものであれば、記者の名前をテロップ表示することにしたのです。

この問題は本当に難しい問題で、現地に入り詳しく取材をすればするほど、分からなくなっていくというのが正直なところです。パレスチナの過激派による自爆テロでは、多くの罪もない市民が犠牲になっていますし、一方で難民キャンプでは、テロリストを検挙するはずのイスラエル軍の侵攻によって市民が戦闘に巻き込まれ死亡しています。

そういう意味では今回取材した「人間の盾」と呼ばれる平和活動家たちの体を張った行動は、両者の闘いをストップさせるという意味では、新しいあり方だと思いました。第三者がその紛争の間にはいること、その目撃者となることで抑止になったのです。そしてこの目撃者となるのは、私たちメディアでも良いわけです。メディアが目撃者となることも、ある種の抑止になるはずです。ありのままをVTRに記録すること、それがテレビのおける報道番組の役割のひとつであると思うのです。

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