5月4日放送のディレクターズアイ
5月4日放送 ディレクター/花村恵子
【日本は外国人を"受け入れる”だけの国でしょうか 】
日本に入ってきた外国人は2001年で約528万人いました。これは年々増えています。一番多いのはどこの国か知っていますか。25%近くを占めるのは韓国からの128万人。次いで台湾、アメリカ、中国となっています。一方不法滞在の外国人は約23万人です。日本から本国へ強制送還される外国人は、年間約4万5000人。不法滞在なのだから強制送還されて当たり前、これに異論はありません。しかし制度として「在留特別許可」というものがあるのです。
これは法務大臣が「特別な事情がある」と判断した場合に不法滞在の外国人でも滞在が認められるものです。「在留特別許可」がおりた人は2000年で約7000人いました。この数はうなぎ登りです。
さてここからが問題です。
人によって受け止め方が全く違うのですね。「在留特別許可」の取材中、ある入管の方が「随分窮屈なことを取材しているんですね」と言われました。この方にとっては「500万人余りを受け入れ、開かれた国・日本なのに、どうしてそんな小さいことを取り上げるのか」ということのようです。また実際にそうおっしゃる職員の方もいました。確かに今回番組で取り上げた「在留特別許可」は数としては非常に小さいものかもしれません。しかし私はこの「在留特別許可」から入管行政のあり方、また外国人に対する考え方が見えてくるように思います。
不法滞在だから日本にいるのはけしからん、とおっしゃる方がいます。しかし日本には「出入国管理基本計画」というものがあります。これは「日本人は外国人とどのように共存していくのかについて将来像を示すことが出入国管理行政に求められている」として、1989年に入管法が改正された時に定めることが規定されたものです。この第2次計画の中に、「不法滞在者と我が国社会のつながりに配慮した取り扱い」という項目があり、「その外国人を退去強制することが、人道的な観点等から問題が大きいと認められる場合に在留を特別に許可している」「具体的な例としては、日本人と婚姻し、その婚姻の実態がある場合で、入管法以外の法令に違反していない外国人が挙げられる」と記されています。
つまりこのように「在留特別許可」を「規定」しているのです。このように規定されたのは、社会情勢による必要性からです。もし不法滞在の外国人は全て国外退去させるべきということであれば、これまでの積み上げをもとに戻して議論しなければなりません。
法務省は、よく「公共の福祉」「治安の維持」ということを言います。これ自体は多くの国民が望むことです。また別の言葉で言えば「その人物が国にとって利益があるかどうか」ということです。実際に入管の現場の方がそれが判断の基準だと言っていました。取り締まりはしっかりと、しかし同時に「日本人とのつながりのある外国人」への配慮もしっかりという両面をお願いしたいのです。取材した二人の外国人と日本人の妻はともに「不法滞在という法を犯したことは大変申し訳ない。しかしこれから日本でずっと暮らしていきたい。許可をお願いしたい」と話しています。このうちの一人からは、「自分は外国人だから怖がられるので、道で会った人にも自分から笑顔で話しかけるようにしている」と聞きました。また周辺の多くの方から、彼らを必要とし、許可を切望する声も聞きました。私は「個々の事情で判断する」という入管の姿勢に異論を唱えるものではありません。偽装結婚や名前を変えて再入国している外国人など、取り締まるべきものはその必要があります。しかし繰り返し申し上げたいのは、「個々の事情をしっかり見ていただきたい」ということです。
ある入管の職員の方はこうも言っていました。
「入管法が未成熟であることは職員の多くが分かっている。外国の例を聞き、また日常の業務の中で日々変わっている」と。「入管法が未成熟」と現場の方が言うのを聞いて私は意外な感を覚えました。
またインタビューした北川れん子衆議院議員は、入管の職員と話した経験から「あいまいな基準に現場の職員も悩んでいる。結果として職員の首を絞めている」と言っていました。これは法律が現状と合わないことを示していないでしょうか。
最後に番組宛てにいただいたメールを紹介します。この方は日本人の女性と結婚した外国人の男性です。仕事柄多くの外国人と接点があるというこの方は、出身国によって入管職員の態度が違い、”アジア系の外国人”に特に厳しく、”西洋系の外国人”は在留特別許可を簡単に取っていると指摘した上で、「私はこの国にずっと住みたい、だからこの国がきれいでいてほしい。この国を是非きれいな国にしましょう。国籍や肌の色に関係なく全てのものに平等に日本の法律に基づいて判断しましょう」とありました。
また別の女性は、「観光ビザで入国したにもかかわらず、労働をしていたと一方的に判断され」オーストラリアから強制送還された体験を書いてこられました。日本に大勢の外国人がやってくるだけではなく、外国に出て行く日本人も今後一層増えるのは間違いありません。入管行政のあり方は私たち日本人が外国人とどう接していくのかの鏡でもあります。