4月13日放送のディレクターズアイ 

4月13日放送 ディレクター/大木茂生
【保土ヶ谷事件第二弾〜こんなことがあっていいのだろうか・・・】

2月に保土ヶ谷事件を放送してから3ヶ月、ついに待望の「DNA鑑定」の結果が出た。

結果は久保さんのモノではない他人の心臓だった。「中間報告」ではあるが、最終報告でも同じ結果であると思われる。一度否定された親子鑑定は覆されることはないのである。「久保さんのモノではない心臓」では一体誰の心臓なのだろうか?法医学の専門家は中間報告の心臓の写真を見て「心筋梗塞の心臓ですね。」と言った。「心筋梗塞」で亡くなった人の心臓をどこからか持ってきたのだろうか?全く信じられないことが明らかになったのである。

■「神奈川県警はそんなに怖いのか・・・」

神奈川県内の複数の葬儀業者と会うことができた。現役の業者の人たち。彼らが共通して口にしたのは「監察医は怖くないんですけど、警察にばれると怖いんです。仕事が来なくなりますからね」。警察が葬儀業者にとって一番のお得意様ということだ。
その警察を裏切って色々内部のことをしゃべったことがばれると仕事が回ってこないらしい。それほど、警察と葬儀業者の力関係ははっきりしていると言える。

そもそも、一般の市民は葬儀業者とのつきあいは少ない。交通事故で家族が亡くなった場合、警察から紹介される業者で葬儀を行うのがほとんどをしめるという。「警察の紹介」この言葉はかなりの信頼性がある。しかし、その警察と葬儀業者の関係を知る人は少ない。癒着関係の歴史は長い。それは当たり前のことになっているという。

■「権威と現実」

今回、問題となっている伊藤監察医は神奈川県の警察学校で講師をしている。法医学の講義は警察官全員受講するために、伊藤監察医の事を知らない警察官はいないのである。その神奈川県警の元警察官に取材することができた。そこで聞いた「警察と監察医の関係」は予想とは違っていた。私には警察の言いなりになる都合のいい監察医というイメージがあった。

しかし、「警察官から伊藤医師にもうちょっときちんと調べてくださいとは言えませんね」。立場は現場の警察官より監察医の方が遙かに上だという。
「警察官にとって変死体は日常茶飯事なんです。早く検案書を書いてもらって早く帰りたいんですよ。警察官の心理をよく分かっているので伊藤先生は早いんだと思います。」
長い年月を経てどちらにとっても好都合な「あうんの呼吸」が出来たのだろうか。しかし、そのナアナアな仕事のツケが、今回回ってきたのかも知れない。それとも、もっと他に何か隠さなければならない重大なことがあったのだろうか・・・

■「崖っぷちに立たされた神奈川県警」

今回、警察はどのような言い訳をするのであろうか?「権威ある伊藤先生のことを信じて、これまで死体検案をお願いしてきた。その伊藤先生に裏切られた思いである。」とは言えないのである。警察官立ち会いのもと「司法解剖」は行われたことになっている。では、立ち会った「巡査部長」の勘違いでしたと言うのだろうか?それとも・・・全てを再調査して真実を明らかにするのであろうか。

パトカーで駆けつけた2人の警官、久保夫人に保土ヶ谷署で対応し司法解剖にも立ち会ったことになっている巡査部長、110番通報が遺族に知られた翌日急遽遺族宅を訪れた副署長、そして当時の保土ヶ谷署長。これらの警察関係者から事情聴取して、もう一度きちんと調べる力が神奈川県警にあることを信じたい。

■「DNA鑑定中間報告書への反論」

12日の裁判で被告側の弁護士から「中間報告書への反論をしたい」と裁判長に申し出があった。果たしてどのような「反論」が出されるのであろうか。ものすごく楽しみである。12日の裁判当日のニュース番組で被告側の弁護士が電話取材にこう答えていた。
「ホルマリン漬けの心臓ではなく、小さなブロック片でしかDNA鑑定が行われていない。きちんとホルマリン漬けの心臓でDNA鑑定しないと分からないはずである」。

ギャグであるならば面白い発言だが、法医学者達ははこれを聞いてあきれたことだろう。(そもそもホルマリン漬け心臓、ブロック片、プレパラートの全てが久保さんのモノであるとして裁判所に提出されているはずなのである)

次回の裁判ではまさか、こんなピントはずれな反論は出ないと思うが、もし出たならば「前代未聞の反論」となるだろう。それとも、「DNAが一致しなかった3つのブロック片は他のモノが間違って混ざってしまいました。なのであの中間報告では他人の臓器とは言えないことになります」と言うのであろうか・・・もう一度、提出された全てのモノが久保さん本人のモノであるかどうか、伊藤監察医に確認しておいた方がいいのではなかろうか・・・

とにかく、「中間報告への反論」には期待したい!

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