11月24日放送のディレクターズアイ 

11月24日放送  ディレクター/山路徹
【文明の衝突!? 】

“冷戦が終わったら、隣人が敵になった” 旧ユーゴスラビアのボスニアで内戦が勃発した1992年、アメリカのニュースマガジン「ニューズウイーク」はこんな見出で表紙を飾った。この見出しは、実に的を射ていたように思う。冷戦構造の中では、政治的な枠組みで国家の線引きが行われていた。つまり、一つの国家に宗教や民族、文化、文明が異なる人々が一緒に暮らしていたのである。しかし、ベルリンの壁が崩壊し政治的な枠組みが消滅すると民族の違いや宗教の違いが内戦の火種になった。1998年に勃発したコソボ紛争もまた、アルバニア人とセルビア人の戦いである。世界は今、政治的な枠組みではなく文化文明が近い国々が互いに接近し、新しい枠組みを作ろうとしている。経済的にはヨーロッパがEUとして統一通貨ユーロを始めたし、軍事的にはNATOがこれまでに無く各国の関係を強化している。今回の対テロで集団的自衛権の行使を決めたのは、分かりやすい例と言える。

こうした西欧圏の動きに対して、イスラム文明もまた活発に動き出している。世界のあちこちでイスラム復興運動が展開されているのだ。イスラム原理主義過激派であるアフガニスタンのタリバンの政策ははまさに、こうしたイスラム復興運動を推進するイスラム教徒から注目を集めていた。ニューヨークで起きた同時多発テロ事件の背景には、世界を意のままにコントロールするアメリカに対するイスラムの挑戦があった。ニューヨーク同時多発テロ事件はイスラム原理主義過激派的なイスラム復興運動といえる。現在、世界人口の約20%がイスラム教徒で、そのうち4割はアジア地域に集中している。イスラム人口は、今後20年以内に世界人口の30%を超えると見られている。一方、先進国は少子化が進んでいる。西欧文明とイスラム文明の人口が逆転する日がやってくるかもしれない。

今後、どうすれば文明の衝突を避けられるのか?どうすれば互いに共生できるのか?

日本へ向かう飛行機の中で、ふと考えたことである。

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