1998/12/12 ~遺書 無念なり、ゼネコン下請け社長たちの自殺~

「涙すれば目があけられないほどの汗。汗をかけばどす黒い血をにじんだような汗をかき、そんな毎日が数年続いてきました。命を捨てる覚悟をしていました。恨みつらみ絶対忘れません」

あるゼネコン下請け会社社長が遺書に残した一文である。彼は、元請け会社の門前で焼身自殺した。

経済苦による自殺者が増えている。特に生き残りをかけて、厳しいリストラとコストダウンを行っている建設業界では、下請け会社の社長たちの自殺が続発している。何層にも重なる下請け構造のなかで、親会社からの切り捨てと社員や孫請け会社に対する責任の狭間で苦しみ、もがき、会社や家族のために生命保険を自分にかけて死を選んだ男たち。その遺書には、文字通り血を吹き上げるような怒りと無念さが綴られ、平成不況日本のゆがみが浮かび上がってくる。

なにが彼らを死へと追いやったのか。死を思いつめた男たちの心には、なにが浮かんでいたのか。彼らの遺書の行間をたどり、遺族の方々を訪ね歩きながら鳥越俊太郎が自殺した社長たちへの死への道程を追跡する。

鳥越俊太郎の先週の言葉

あれだけステキなあたたかい家族に囲まれていながら自ら死を選ばざるをえなかった。そのあまりのギャップの大きさに彼らが胸に抱いていた悔しさ、怒り、無念さがいかに深いものだったのかということを思い知らされたような気がします。

それにしても、私の頭のなかで、どうしてもつじつまがあいません。おふたりが死に追いこまれた金額というのはたかだか数百万円、多くても千数百万円なんですね。その一方で、数千億円、数兆円という不良債権を抱えながら、平気でいる銀行の経営者もいるわけです。今日、明らかになった日債銀のケースでは、1400億円の税金による公的資金がつぎこまれ、それはもう戻ってこない。

どこか、何かが間違っていないでしょうか。私にはそう思えてなりません。

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