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[ part2 ] 男子シングルーーファイナル争いを演じるのは誰?

――日本勢の活躍が期待される、男女シングルの勝負の行方もお聞きします。まず男子シングル。大本命を3人を上げるとしたら、どの選手でしょうか?
荒川 最初から安定した演技を見せてくれるのは、フランスのブライアン・ジュベール、アメリカのエバン・ライザチェック、そして日本の高橋大輔選手でしょうか。トリノ五輪では若手だった3人ですが、すでにベテラン。特にジュベールは例年、グランプリシリーズから安定しています。今年も大きな波もなく、いい仕上がりを見せてくれると思います。
 ライザチェックも今年8月のアイスショー、「フレンズ・オン・アイス」で前年度のフリー「カルメン」を滑ってくれましたが、あの時点ですでに身体がしっかりできていました。夏のアイスショーで、しかも小さなリンクでフリーを滑りきる、これは選手にとってすごく難しいことなんです。4分半、ジャンプを跳びきる集中力も必要ですから、招いた私たちとしては「フリーを全部滑らなくてもいいですよ。最初とステップだけ見せてくれれば」とお願いしたのですが、彼は3回転‐3回転も入れて、きっちり見せてくれたんです!きっと昨シーズンの成績は、ライザチェックにとって不本意だったのでしょう。その失敗を踏まえてどう戦ってくるか、楽しみですね。
 ジュベール、ライザチェックに加え、日本の高橋選手も一戦目から本気で来ると思います。今年の目標である4回転をフリーで2回。これも、グランプリシリーズから挑んでくるのではないでしょうか。彼は世界のトップを目指すには、自分に何が必要かが、わかっています。昨年もそのために、グランプリの最初から4回転に挑んで、成功させてきました。今年も「4回転は2回必要!」と自分が感じているのならば、彼のことだからきっと入れてくるはず。ここ数年の高橋大輔は本番に強くなった、とよく言われますが、私はむしろ彼の意思が強くなった、と感じています。勝つためにやらなければならないことは、どんなときでもやる! そう自分を追い込んで、もっと上に行く! そんな強い意志を持つようになってから、彼は強くなったのだと思います

――シーズン最初から安定してくるだろう、ジュベール、ライザチェック、高橋の3人。彼らを追ってファイナルに出てきそうなメンバーはどの選手でしょうか?
荒川 やはりスイスのステファン・ランビエール選手。オフの間、ショーにかなり出て、ショーでも4回転を跳んで見せましたね。彼もまた、しっかり回転できる身体を既に作れているのだと思います。フリーも昨シーズン後半に滑った「フラメンコ」を持ってくると思いますので、滑り込みに関しても心配はなさそう。でもランビーエールの場合、一シーズン通しての安定感はジュベールたちほどではないので、グランプリシリーズで調子を上げきってしまったら、シーズン最後まで持つのかな、そんな不安はあります。さらにアメリカや日本の選手たちと違って、国内に強敵がいないことで、自分との戦いも厳しくなりそうです。
 もうひとり上げるとしたら、昨シーズンの世界選手権で目立ってきたチェコのトマシュ・ベルネルでしょうか。昨年で十分名前を知られたので、ファイブコンポーネンツもぐっと伸びてきますし、ファイナルに残るチャンスはありそうです。ジャンプも4回転だけでなく、トリプルアクセル、他の3回転もきっちり跳べて、このジャンプは苦手、というバランスの悪さがありません。安定するとかなり怖い選手かもしれませんね。

――ファイナル進出確実のトップスケーター勢以外で、荒川さんが特に注目している選手も挙げていただけますか。
荒川 ぜひ注目したいのは、日本の中庭健介選手!実は彼は私と同級生なのですが、ぜんぜんそんな年齢には見えませんよね(笑)。時には高橋選手よりもフレッシュに思えてしまうほど、毎年毎年、まだまだ伸びている選手です。ジャッジに「この人はベテラン」というイメージを与えてしまうと、どうしても点数は伸び悩んでしまいますが、まだまだ可能性を感じさせる選手には点数も出やすい。中庭選手もここはひとつ、フレッシュさとともに安定感も見せて、いい位置を狙って欲しいですね。
 もうひとり見逃せないのは、やはり日本の選手ですが、小塚崇彦選手。昨年はシニアの中に入るとどうしても線の細さが目立ってしまっていた彼も、今年はグンと身体がたくましくなりました。オフの間、おそらく陸上トレーニングをしっかり積んだのでしょう。体格がひとまわり大きくなりましたし、身体の中に一本芯が出てきたように見えます。男子選手は女子と違って、年齢が少し上がってからでも身体をしっかり作れば、どんどん伸びていく。彼も今年の身体ならば、4回転やプログラム後半の3回転‐3回転を跳べる力があるはずです。シニア2年目としてどれだけ成長を見せられるか 真価が問われるシーズンだと思います。

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