戦評
男子は織田、女子は逆転で安藤が優勝 まずは織田信成が首位に立った男子シングルショートプログラム。五輪出場を逃した悔しさが、彼をここまで変えたのか、と驚くほど、織田信成はパワーアップしていた。重力を感じさせないトリプルアクセルや3回転−3回転。細かく丁寧なサーキュラーステップ。大人の雰囲気に挑戦した新しいプログラム「Fly me to the moon」をノリノリで踊りきり、本人もびっくりのパーソナルベスト、81.80点をたたき出す。しかしフリーで黙っていなかったのは、昨シーズンの世界選手権銅メダリスト、エヴァン・ライザチェックだ。地元でオリンピックにも出ていない選手に首位を奪われ、悔しかったことだろう。フリーではこれぞメダリスト!という気合の入った「カルメン」を披露。少し気持ちがのっていないように見えたショートプログラムとは、体のキレも表情も別人のようだ。一方で首位に立った緊張感から前日のような弾けた演技を見せられなかった織田信成は、フリーでは2位。しかし総合点ではわずかに逃げ切り、織田1位、ライザチェック2位となった。 女子シングルでも日本勢は止まらない。ショートプログラムは世界チャンピオンのキミー・マイズナーを押さえ、浅田真央・安藤美姫が軽々とワンツーフィニッシュを決めた。このふたりのプログラムの雰囲気が、まるで対照的なのがおもしろい。首位に立った浅田真央は、柔らかな動きで泳ぐようにショパンの「ノクターン」の中を滑っていく。続く安藤美姫のプログラムは、手足をダイナミックに使い、力強くメリハリの利いた構成だ。カラーは違っても、どちらもジャンプだけではないところをしっかりと見せてくれる。しかし翌日のフリー。やはり世界チャンピオンは奮起してきた。ギターの音色に合わせたフラメンコは、冷たい氷の上ではなくスペインの大地で踊っているかのよう。派手さは無いがチャンピオンの底力を見せる演技で、マイズナーは滑り終わった時点で浅田真央を抜き、トップに立つ。やはり見せ場は地元勢が持っていくのか、と思った矢先――。さらに上をいく演技を日本の安藤美姫が見せてくれた。切なさに満ちた感情表現と、しっかり意識の行き渡った手足の力強い動きで、まずは音楽をきちんと自分のものにしている。3回転−3回転もクリーンに決め、マイズナーを大きく引き離す125.85点を獲得!逆転で優勝を決めた。演技を終えた後の感極まった表情からは、安藤美姫がどれだけ本気でこの一戦にのぞんだか、あふれる気持ちが痛いほど伝わってきた。 アフター五輪の少しのんびりしたシーズンとは思えない幕開け。この第一戦の熱さが残りの5試合にどんな影響を及ぼすのか――今年のグランプリシリーズ、ますます目が離せない!! 文/Hirono Aoshima
結果 SP=ショートプログラム FS=フリースケーティング
【女子シングル】
【男子シングル】
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初戦から最注目の対決!! グランプリシリーズ初戦のアメリカ大会は世界にアピールする上でも、絶対に勝たなければいけない舞台。果たして、新たな「女王伝説」は始まるのか!?昨年のグランプリファイナル覇者・浅田真央(16歳)を迎え撃つのは、今年の世界選手権を制したアメリカの妖精キミー・マイズナー(16歳)。フィギュア界を背負う2人の対決が初戦から実現!新女王決定の瞬間を見逃すな!! その他にも、4回転ジャンパー・安藤美姫や浅田真央の姉・舞、アメリカのエミリー・ヒューズなど注目&強豪揃い。誰が優勝してもおかしくない、初戦から銀盤は最高潮の時を迎える!! |