ネタバレ注意!南良の捜査日記
この殺人事件と23年前の事件
をつなぐのは…
南良の目には何が見えているのか?
『西松町スーパー店長 殺人事件」。
発生日時は、令和8年1月18日午前9時10分頃(※110番通報)。
発生場所:神奈川県三ツ葉市西松町4丁目1-5 スーパーマーケット「スマイルサクマ三ツ葉南店」店長室内。
被害者は佐久間秀之(40歳)、スーパーマーケット「スマイルサクマ三ツ葉南店」店長。
現場は同敷地内の店長室、被害者だけが使用していた場所。
遺体の第一発見者はスーパーの従業員。今朝9時過ぎ、金庫の鍵を借りるため、店長室に向かい、そこで遺体を発見。拳銃で撃たれて殺害されたようですが、凶器は見つかっていない。
佐久間家は、有数の名士として知られおり、現在、当主であり被害者・秀之の父親、佐久間秀正は入院中。昨年暮れに脳溢血で倒れ、今も退院できずにいる。佐久間家を実質的に切り盛りしているのは、次男であり、サクマ土地開発専務の佐久間直人と言われている。
現場の隣の金物屋店主より銃声らしき音を聞いたと情報あり、時刻は午後10時前。
鑑識からの報告も含め被害者が撃たれたのは夜10時前。
被害者家族にあたったところ、犯人に心当たりはないとの事。
ただし、被害者の腹違いの弟・佐久間直人が最近脅迫を受けていた。
現在、直人は大型複合施設を建てる事業を進めていて、その計画を反対する小売業者から嫌がらせを受けていたようだ。事件と関係あるかどうかは不明だ。
第一発見者のパートの女性からの証言。
事件前日、知り合いの美容師(美容室「Ma
saison」店長・岩本万季子)がスーパーに来ていたそうで、買い物をしにきたわけではないとのこと、帰りは息子と一緒に帰って行った。
以前は店によく来ていた美容師が最近は姿をみせなかったから珍しかったとのことだった。
岩本万季子は、小学生の息子から財布を失くしたと電話があったのでお金を渡しにいったといっていたが、彼女は明らかに嘘をついている。
被害者の遺体から摘出された弾丸は、警察の制式拳銃であるニュー・ナンブM60と断定。そして、今から二十三年前、紛失したままになっている殉職警官、清原和雄巡査長の拳銃であると特定された。
二十三年前、山都信託銀行三ツ葉支店で現金輸送車の強盗事件があった。被疑者の大島は現金三千万を持って5キロ離れた森に逃走、清原巡査長と遭遇。そこで清原巡査長と相撃ちとなり、共に死亡。
大島には共犯者がいたとみられ、共犯者が三千万円と清原巡査長の拳銃を持ち去ったとされるが、三千万円と拳銃は発見されることなく不明のまま。
飛奈刑事はなぜ震えていたのか?
そういえば、岩本万季子も佐久間直人も飛奈刑事の小学校の同級生だとか。
二十三年前の事件で紛失した拳銃が、今回の事件で使用された。
フレッシュサクマの店内には十四ヶ所、防犯カメラが取り付けてある。
すべて録画しているが、1月16日(※日付あってるか?)のお菓子売り場を撮っている十四番モニターのデータだけがない。
スマホを持っていない息子は、どうやって財布を忘れたことを母親に連絡したのか?
公衆電話はスーパーにも、周辺にもない、そもそも財布がなければ公衆電話はかけられない。
スーパーの固定電話を借りたのか?
通話記録から、岩本万季子の美容院にかけられた記録がある。
電話をかけたのは、息子とは限らない。
母親がスーパーに息子を迎えにやってきた。
その日のお菓子売り場の映像が見当たらない。
忘れた財布を届ける以外に、母親がスーパーに来た理由は。
23年前の捜査資料を調べた。
拳銃は、どこにいったのか?
亡くなった清原巡査長も、何年も経ってから、自分の拳銃が殺人に使われたと知ったら、死んでも死にきれないだろうが。
銀行で流れ弾に当たって亡くなった一般市民の方が、死んでも死にきれないのではないだろうか…。
そして、これは偶然なのか?
一緒に捜査することになった飛奈刑事と同級生3人は清原巡査長の遺体の第一発見者だった。
岩本万季子・清原圭介への聴取。
岩本万季子の嘘は、やはり息子の万引きだった。
息子は中学の推薦枠の合格が決まったところで、進学を取り消されたくないと思い嘘をついた、と。
1月16日(金)の午後、佐久間秀之から「息子が万引きした」と電話があり、向かった。
佐久間秀之に、警察にも学校にも連絡しないから誠意を見せるよう言われ、その日の夜11時に元旦那・清原圭介と一緒に三十万円を渡しに行った。
防犯カメラの映像データももらうはずだったが、緊張のためもらうのを忘れていた。
そして、もう一度連絡を取ろうと思っていた矢先、佐久間秀之があんなことに。
佐久間秀之が殺害された1月17日(土)の夜のアリバイについて。
二人は、息子のことを話し合うために二ヶ月に一度、会っている。ちょうど土曜日がその日で、息子の万引きのこともあったので、今後のことについて話した。
息子は岩本万季子の実家に預けて、夜の8時に駅前のファミレスで二人で話し、その後、清原圭介はビジネスホテルに行きチェックイン、岩本万季子は美容室に戻って一人で仕事をしていた。しかし、やはりもう少し息子のことを話し合いたかったので、もう一度、10時半くらいにファミレスで待ち合わせをして、岩本万季子の家に行った。清原圭介は、酒を飲みホテルに戻るのが面倒になったので、岩本万季子の家に朝までいた。
こんなにもアリバイが揃うなんて、元夫婦だからなのか?興味深い…
清原圭介の父親は、二十三年前に殉職された清原和雄巡査長。
そして、佐久間秀之の弟である佐久間直人、清原圭介、岩本万季子、そして飛奈刑事、四人は、清原巡査長の遺体を発見した第一発見者だった。
佐久間秀之を殺した犯人は、清原圭介の父親の拳銃を所持していた。
長年に渡り持っていたのか、それとも最近になって手に入れたのかは不明だが、拳銃の入手経路が事件を解く鍵を握っているものと思われる。
二十三年前の事件の関係者が佐久間秀之を殺した犯人、とは断言できないが、今回の事件と二十三年前の事件は、なんらかの接点を持っていることだけは事実だ。
清原巡査長の遺体の第一発見者、飛奈刑事ら4名を聴取。
二十三年前、被疑者の大島伸和は三ツ葉市内の銀行の現金輸送車から三千万円を強奪し発砲。その弾に当たって、市内在住の男性が命を落とした。
大島は現金三千万を持って5キロ離れた森に逃走、清原巡査長と遭遇。そこで清原巡査長と相撃ちとなり、共に死亡。
森の中で遊んでいた飛奈刑事ら4名は銃声を耳にした。森から逃げる途中、清原巡査長の遺体を発見し、すぐに森から出て警察に通報しようとした。警察が清原巡査長の遺体を発見した時、すでに清原巡査長のホルスターから拳銃は無くなっていた。当時の捜査資料にはこう書かれてた。
佐久間直人が清原巡査長から少し離れたところに、大島伸和が倒れていたことを覚えていた。
その他は、不審な人物や物音も見聞きしていないという。
飛奈刑事は、自分たちが清原巡査長の遺体を発見した時には拳銃は見当たらなかったので、共犯者が持ち去ったと推測される、というが、少し気になることがある。
いずれにしても、今回の佐久間秀之が殺害された事件は、二十三年前の事件に間違いなく繋がっている。
1月17日(土)事件当日について。
清原圭介のアリバイはビジネスホテルにいたことが確認された。
岩本万季子が美容室にいたという確認はまだ取れていない。
被害者の弟・佐久間直人は夜八時五十五分羽田着の飛行機で韓国から帰国。自宅まで車で移動し、渋滞だったため十一時前に自宅に到着。羽田八時五十五分着は航空会社に確認済み。十一時前に自宅に到着したことは、母親が証言している。
飛奈刑事のアリバイは?
雀荘で麻雀してボロ負け…とか。
神奈川県三ツ葉警察署の小杉署長に話を聞いた。
清原圭介、岩本万季子、佐久間直人、そして飛奈刑事、当時小学六年生だったこの四人が、清原巡査長の遺体の第一発見者だったことは知っていたようだ。
あの事件が起きた時、小杉署長は警務におり、強盗殺人犯が逃走中ということで、駆り出されていた。
そして、保護された彼ら4人の様子も見ていたようだ。
二ヶ月前、飛奈刑事がここに赴任してきた時、あの時の少年だということは認識していたようだ。
警察官の遺体の第一発見者となったことが、その後の子供たちの人生にどう影響したかはわからないが、飛奈刑事に関して言えば、彼が現在、とても優秀な警察官であることに間違いはない、仮に、彼の同級生が佐久間殺しに関わっていたとしても、飛奈刑事が公私混同して捜査を行うようなことはないだろうとの事だ。
そんな飛奈刑事は、必死に岩本万季子のアリバイを探している。
事件当日の夜10時頃、美容室に灯りがついていて中に人影があった、という目撃証言が2件取れたと報告をしてきた。
佐久間直人のアリバイが崩れた。
羽田から佐久間直人の自宅まで一時間もかからないこと、あの日、渋滞に巻き込まれたという話だったが、高速も一般道も渋滞がなかったことはすでに確認が取れていた。
そんな中、セルフのガソリンスタンドの防犯カメラに、午後十時五分、直人の車と直人の姿が確認された。給油記録からも明らかだ。
殺人現場となったスマイルサクマから車で約十分、つまり、殺人現場に居合すことが可能となった。
佐久間直人を署まで任意同行。
佐久間直人を任意同行で事情聴取。
黙秘を続けていたが、しばらくして犯行を認めた。
翌日、取調を始める。
事件のあった土曜日、夜八時五十五分に羽田空港に到着し、名ばかりの店長の兄がちゃんと仕事をしていたかどうか不安だったのでスーパーの兄の事務所へ向かった。
金の無心は今までも何度もあったが、借金の返済期日が迫っているから百万貸して欲しいといわれ、一度は金を取に実家へ戻ろうと思い車に乗ったが、考え直し、もう一度兄の事務所へ戻った。
兄は怒って物を投げ口論になった。
兄はソファの下から拳銃を取り出したが、単なる脅しだと思い、直人は銃口を掴んで事務所の入り口付近で拳銃の奪い合いになった。兄は酔ってたせいか、思った以上に力がなかった。
大きな音がして、兄の腹から血が流れており、拳銃は直人の手にあった。
そこら辺からあまりよく覚えていないが、多分、自分が引き金を引いたんだと思うとの事。
しばらく動けなく警察・救急車を呼ぶこともせず、気づいた時には血の海で、兄が死んでいるのがわかり、その場から拳銃を持って逃げた。
拳銃は、直人が中学の時に兄の部屋に勝手に入った時みたことがあったが、モデルガンだと思っていたので本物だとは思っていなかった。拳銃の事は誰にも話さずにいたが、自慢そうに本物だと言っていた、森で拾ったと。
そして、その拳銃は事件後に直人が川に捨てたという事だった。
その後、記憶がない部分もあるが、気がつくと国道を走っていて、給油ランプが点灯しているのが見え、目に入ったガソリンスタンドに入った。
事件翌日、「複合施設の建設を推し進めたら、天罰がくだる。」という内容の手紙で脅迫を受けたと供述したが、あれは嘘だった。自分への疑いを少しでも逸らしたかったので、脅迫話をでっち上げたとの事だった。
殺人事件と二十三年前の事件はつながっている。鍵はやはりあの拳銃が握っている。なので、二十三年前の事件をもう一度詳しく検証してみることにした。あの森で。ただし、特別捜査本部には内緒で、私と飛奈刑事だけで。
そして、清原圭介、岩本万季子、佐久間直人も一緒に。
捜査資料によると…四人は、渓流でサワガニを獲るために森の中に入り、複数の銃声が聞こえ怖くなって逃げようとした。逃げる途中で清原巡査長の遺体を発見、すぐに森を出ようとした。
当時の捜査資料の記録は、これだけだ。あれほどの重大事件なのに、あまりにも簡潔な報告書だ。
清原圭介の記憶。
四人はずっと一緒に行動していたわけではなく、二組に分かれて川で合流することになっていた。清原圭介と佐久間直人は、分かれ道の左側の道を進み、銃声を聞いた。最初に一発。その後に……二発。すぐに引き返し、分かれ道のところで飛奈刑事と岩本万季子と合流、もう一発の銃声を聞いた。ここまでで、銃声を四発聞いたという事になる。
一緒に戻ったと思っていた佐久間直人がいない事に気づき、飛奈刑事が探しに行った。
清原圭介と岩本万季子は、警察に通報するために森を出ようとしていたところ、もう一発の銃声を聞いた。それが最後の銃声だったそうだ。つまり、全部で銃声は五発聞こえた事になる。
ふたりは、飛奈刑事と佐久間直人のことが気になり、森の中へと引き返した。
まず佐久間直人を見つけ、飛奈刑事が向かった方に行こうと思ったら、飛奈刑事が戻ってきたという。飛奈刑事の様子がおかしかったので、気になって見に行ったら、絶命した清原巡査長と対面した。
岩本万季子の記憶は、清原圭介と同じだった。
佐久間直人は、怖くて動けないくらいだったので、何発聞いたかまでは覚えていないが、四人揃って銃声の方へ行ったら、清原巡査長と対面したとの事だ。
飛奈刑事の記憶。
右側の道を岩本万季子と進み、最初に一発、その後に、二発の銃声を聞いた。分かれ道に戻り、清原圭介と合流したところで、さらに一発。その後、佐久間直人を探しに左の道へ行った。佐久間直人を見つけた後、一人でその先に進み、また銃声が一発。
木の陰に隠れ、そこから覗いたら、青い物体が見え、その先に進み、清原巡査長だと認識したとのこと。つまり、清原巡査長の遺体を最初に発見したのは飛奈刑事だった。
佐久間直人のところに戻ったら、清原圭介と岩本万季子がいた。そこで、四人全員が清原巡査長を認識した。
ここからは私の推論だ。
森の中で大島を見つけた清原巡査長は、どの警察官でも最初はそうやるように、まずは威嚇射撃と口頭で止まるように指示を出したに違いない。
しかし、大島は立ち止まらなかった。それどころか清原巡査長に向けて改造銃を発砲。それを受けて、清原巡査長は二発目の威嚇射撃。現場付近から銃弾が発見されていないことから、大島を狙って撃ったものではないと判断できる。
だが、清原巡査長のこの判断が裏目に出たようだ。大島は威嚇射撃にすくむことなく、清原巡査長に発砲。命中し、清原巡査長はそのまま倒れてしまう。
この距離で撃たれた場合、大抵の人間は立っていることができない、撃たれたのは心臓、倒れてそのまま亡くなったと考えられる。
そうなると、大島を撃ったのは別の誰か…。
四人が到着した時、すでに清原巡査長の拳銃は見当たらなかったと言っているが、仮に、大島の共犯者が清原巡査長の拳銃を持ち去ったとすると、その理由はなにか?
清原巡査長の拳銃は、日本警察の制式拳銃。それを持ち去ったところで、二度と使うことはできない、すぐに足がついてしまう。持ち去ることに意味のない拳銃…。
もしかして共犯者は、拳銃を持ち去っていなかったのではないか?つまり、清原巡査長の遺体の近くに、拳銃は落ちたままではなかったのか?
では、誰が大島を撃ったのか?
撃てる人間は絞られる。例えば、この場所に一番最初に到着した人物。
……飛奈刑事が大島を撃ったと自白した。
岩本万季子のアリバイが崩れた。
佐久間秀之が殺害された当日、岩本万季子は夜八時~十時半の間に、美容室に戻って仕事をしていた、とのことだった。
飛奈刑事からは、美容室の電気がついていて、人影があったという証言が二件あったと報告を受けていた。だが実際は、それは岩本万季子ではなく、万季子のアシスタントが使用していたことが確認できた。
佐久間直⼈の事情聴取で岩本万季子のアリバイが崩れたことを伝えた。何かを知っていそうだが、相変わらず自分が兄を殺したと自供している。
そして、拳銃についても、佐久間直人の兄・秀之が拾ったという供述のままだ。佐久間直人が拳銃を捨てたという川を、かなり範囲をひろげて捜索しているが、まだ発⾒されていない。
一度は任意同行を断られたが、再度、岩本万季子を訪ねた。
岩本万季子だけに、私の推論を話すために。
飛奈刑事は拳銃で銀行強盗を射殺した、と二十三年間思ってきた。しかし、私には飛奈刑事の撃った弾が大島に当たったとは、思えないのだ。そもそも拳銃を撃っていないのかもしれない。拳銃さえ出てくれば、その証明ができるのだが……、と。