奥森皐月の公私混同<収録後記>
-
念願のラジオ(風)配信と60分の大喜利学習!|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第6回
好きな階段は空気階段、好きな公団は空気公団、高校2年生17歳の奥森皐月です。 私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開されています。タイトルのとおり、奥森がプライベートでハマっている人やモノを公の場で熱く深く語り尽くす番組です。 おかげさまで、番組スタートから半年が経ちました。公と私を混同しているだけなのに、ここまで皆さんに観ていただけて続いている事実がうれしいやら信じられないやら。いつもご視聴ありがとうございます。引き続き、応援していただけるとうれしいです。 このnoteでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いていきます。 今回は、公私混同ラジオ・赤嶺総理さんゲスト回・大喜利スピードラーニングの第22回から第24回までの振り返り。 logirlの本編とこの記事を併せてご覧いただくと、一番楽しめるのではないかと思います。 ぜひよろしくお願いします! テレ朝動画のオリジナル番組定額見放題サービス「logirl(ロガール)」で毎週配信中の『奥森皐月の公私混同』。そのスピンオフのテキスト版として、MCの奥森皐月が番組収録のウラ話や感想、各回のオススメポイントなどを自ら執筆する連載コラムです。番組で発表した「ゲストを表す四字熟語」も改めて紹介します。 #22 奥森皐月の公私混同ラジオ:1200通ものメールをいただけた念願のラジオ(風)配信! ラジオ好きを公言している私が、初めて2時間のラジオに挑戦。今まで憧れていた「ラジオ」の理想像を可能な限り詰め込んだ、夢の回です。究極の公私混同かもしれません。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #22 奥森皐月の公私混同ラジオ』) 第一にうれしかったことは、やはりリスナーの皆さんから最高のメールをいただけたこと。「大喜利公私混同カップ」「街の公私混同」とこれまでできなかった投稿コーナーを設けたため、たくさんメールが届きました。公私混同ラジオの回だけで1200通近く来たそう。これはかなりの数字ではないでしょうか。うれしい、ありがたい限りです。 さてこのラジオの最大の特徴は、「リアクションメールがある」ということ。収録番組なのに次々とリスナーからリアクションメールが届くという画期的なシステムです。 この日はリアルタイムでの感想ツイートも多くいただけたため、本当に生放送をしているかのような不思議な時間が流れました。虚構なのか真実なのか、どこまでが想定範囲か、自分でもよくわからなかったです。「本物ラジオ」さながらの体験ができて、今年の夏の最高の思い出になりました。 ただでさえ、2時間ひとりしゃべりで駆け抜けるのは大変なことだと思います。しかし、その上にリスナーさんからいただいたリアクションメールとつながるトークをするという難易度の高い脳トレのような作業もありました。我ながらやりきったと思います。 本番直前にリアクションメールの内容を箇条書きでもらって、自分の用意したトークと組み合わせていくのは緊張感もありましたが、とても楽しかったです。トークに嘘を混ぜる時間なんて聞いたことのない言葉ですね。金髪で角刈りのケンタウロスの話や合法で無料でマンガを読む話が見どころかと思います。 メールをいただいて読むだけでも相当うれしい出来事なのに、名だたるハガキ職人さんの名前をお読みできたのは最高に幸せでした。いつもラジオで聴いている名前を、自分が読めるというこのうれしさ。言葉にできないくらいの喜びでした。大喜利方面のリスナーさんからもメールが届き盤石の布陣となりましたね。メールのおもしろさは私が保証するので、そこだけでもぜひ聴いていただきたいです。 インデペンデンスデイ久保田(剛史)さんのお悩みを聞くコーナーだけ唯一謎。女子高生が年齢が倍の男性に、淡々と正論を振りかざす新感覚の時間です! そこも含めて最強の2時間ラジオになったのではないでしょうか。ラジオが好きな人、お笑いが好きな人、大喜利が好きな人、みんなに届いてほしいラジオです。 #23 赤嶺総理:大喜利×トークの新企画「ギリーク」 この回から新企画「ギリーク」がスタート。ギリークとは大喜利とトークを掛け合わせた、番組初の造語です。芸人さんの中には一定数、大喜利のイメージがついている方がいらっしゃいますが、その最たる人物が赤嶺総理さんだと思います。大喜利ライブや大喜利企画に多数出演されており、とにかく大喜利に携わられている印象でした。私が赤嶺総理さんの大喜利が好きなこともあり、番組が始まってわりと早い段階からお呼びしたいと思っていた方です。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #23 赤嶺総理』) トークは基本的に大喜利に関する質問が多く、基礎的な考え方や赤嶺総理の大喜利術をいろいろと語っていただけた回になっています。回答の導き方がとにかくロジカル。さらに状況を鮮明にイメージしたり、ほかの回答からの流れを考えたり、あちこち視点を変えて大喜利をされているとのこと。 目から鱗が落ちるお話ばかりでした。少数になりがちな女性プレイヤーとしての強みの話もおもしろかったです。素早く、多角的に考えられるその姿が素敵すぎて、うっとりしてしまいます。 収録を受けて、大喜利を見て学びたいという欲が高まっていたため、告知で挙げられていた大喜利のYouTubeを収録後の1週間で観まくりました。 こちらにまとめてくださっているので皆様もぜひ。さまざまな形の大喜利が観られて楽しかったです。気になるタイトルの動画を観始めると、かなり止まらなくなります。もしかしたら、大喜利には中毒性があるのかもしれません。おいでよ大喜利好きの幸せな世界に。 番組内で赤嶺総理さんから「#18 1人で大喜利」の1答ずつにアドバイスを書いてくださった恐ろしい文字数のノートをいただきました。こんなにうれしいプレゼント、なかなかないです。とにかくうれしくて、収録後に一度抱きしめた。 帰宅してから丁寧に読みましたが、小さな言葉の言い回しや表現について、わかりにくさや「こうするといい」ということなどがぎっしり書かれていました。どれも説得力があって、勉強になることばかり。基本的には改善すべきところが並んでいる中、たまによかった回答に◎をつけていただいていました。これがもう飛び跳ねたくなるうれしさで、アメとムチに完全にやられてしまいましたね。赤嶺総理さんにずっとついていこうと思います。 <赤嶺総理さんを表す四字熟語>頓知頓才 その時その場、機に応じて即座に機転を利かせることができる知恵や才能のこと。(四字熟語辞典より) #24 スピード大喜利ラーニング:これを観れば60分で大喜利力が向上する! 番組初の2週連続ゲスト。#23があまりにも楽しすぎて、もっともっと大喜利について聞きたい!となった私のわがままを聞いていただきました。この回はタイトルのとおり、1時間で授業を受けた人の大喜利力を向上させるプログラムという内容です。そんなうまい話があるわけない、と疑っているあなた。騙されたと思って観てください。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #24 スピード大喜利ラーニング』) 赤嶺総理先生の初級・中級・上級・番外編によるステップ授業がとにかくわかりやすい。まったくの大喜利初心者でも回答を出せるようになれるくらい丁寧に説明していただきました。私自身もこれまで「なんとなく」で挑んでいたものがきちんと言葉で理解できて楽しかったです。 初級編の、「要素を挙げてそれらを足し合わせる」という方法は、実践すると本当に回答が出しやすくなりました。選択肢の幅も広がるし、これをうまく使うこなすことでより大喜利が強くなれるのであろうと思います。 赤嶺総理先生のお話はどれも興味深かったのですが、特に印象に残っているのが「好(い)い感情になる答えを出す」というもの。大喜利のお題として「こんな〇〇はイヤだ」が代表されるように、大喜利ではマイナスイメージの回答が多くなりがち。そこを逆手に取って、好い感情になる回答を出すという手法はとても勉強になりました。 大喜利能力が向上しただけでなく、この授業を経たことによって、大喜利ライブもこれまで以上に楽しめるようになりました。回答の流れや、それぞれの回答の特徴を捉えることの楽しさにまで気づくことができる。 こんなにも充実した1時間の授業、観て損することはまずないと思いますよ。 世界初?大喜利界のインターネット教育サービスだと思ってください。 全然関係ないのですが、この回の赤嶺総理さんのメガネ白衣姿がとても好きです。先生役ということで白衣を自前で持ってきてくださった赤嶺総理さん。最高です。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 (写真:『奥森皐月の公私混同』) 最新回公開直後の1時間は無料でご覧いただけるので、ぜひチェックしてみてください! logirl公式サイト内「ラジオ」のページでは番組アフタートークが公開されています! 本編に入りきらなかったトークや、収録での出来事など。奥森とTPとゲストさんでお話しさせていただいています。無料でお聴きいただけますので、こちらもぜひよろしくお願いします。 『奥森皐月の公私混同』で大喜利熱が高まった私は、QJWebの連載「奥森皐月は傍若無人」でも大喜利のことについて書きました。 調べれば調べるほどおもしろいです、大喜利ライフの入口にこちらも読んでみてはいかがでしょう。 『奥森皐月の公私混同』公式Twitterアカウントあります! 番組の情報や、私からのお知らせ、日常の報告などいろいろツイートしていますよ。 ぜひフォローよろしくお願いします。 番組やこの収録後記の感想などは #奥森皐月の公私混同 をつけて投稿していただけるとうれしいです。 #奥森皐月の公私混同 は、テレ朝動画「logirl」で毎週木曜に最新作を公開中!◆1人ぼっち大喜利60分回◆公私混同2時間ラジオ回◆涙のukka本音トーク回◆おくもりーもこ回など、過去回23作が月額990円で全て見放題なので月初の加入が絶対お得です!! 詳しくはこちらhttps://t.co/JUnIidTe8M pic.twitter.com/W6yULR1sxS — 奥森皐月の公私混同は傍若無人【公式】 (@s_okumori) September 4, 2021 番組ではメールも募集しています。 ゲスト案、番組の感想、ふつおた、お悩み相談、大喜利のお題、「街の公私混同」のコーナーなどなんでもOKです。 受付メールアドレスは s-okumori@tv-asahi.co.jp まで。お待ちしております。 次回のnoteでは「号泣して感動してイチャイチャする!」を中心に書く予定です。お楽しみに。
-
ひとり大喜利と、ゲストに“育ての親”?|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第5回
好きな新聞は完熟トマト新聞、高校2年生17歳の奥森皐月です。 ずっと好きなコンビ「ガクヅケ」がKOC準決勝に進出したので毎日踊っています。 logirlにて毎週木曜18時に私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が配信されています。タイトルのとおり、奥森がプライベートでハマっている人やモノを公の場で熱く深く語り尽くす番組です。 と、毎回説明していますが、最近はそのコンセプトを根底から覆す内容の回もあります。これは「ブレている」のではなく「イカれている」と解釈していただきたいです。 このnoteでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いていきます。 今回は、ひとり大喜利回と、ニッポン放送の石井玄さん、放送作家の藤井青銅さん、完熟フレッシュの池田レイラさんがゲストにいらした第18回から第21回までの振り返り。 logirlの本編とこの記事を併せてご覧いただくと、一番楽しめるのではないかと思います。 ぜひよろしくお願いします! テレ朝動画のオリジナル番組定額見放題サービス「logirl(ロガール)」で毎週配信中の『奥森皐月の公私混同』。そのスピンオフのテキスト版として、MCの奥森皐月が番組収録のウラ話や感想、各回のオススメポイントなどを自ら執筆する連載コラムです。番組で発表した「ゲストを表す四字熟語」も改めて紹介します。 #18 1人で大喜利:前代未聞“女子高生のひとり大喜利” 過去最高のイカレ回です。初のゲストなし放送。 俺スナさんと冬の鬼さんに来ていただいた第16回の反響が大きかったのを受け、大喜利を強化する方針が固まりました。大喜利が強くなりたいという野望はずっと抱いているのです。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #18 1人で大喜利』) ゲストや企画については、毎回番組プロデューサーのTPと話し合っています。 あるとき、いくつかTPから提案の連絡が来て。 「芸人さんのゲストを呼ぶ」「またオオギリストを呼ぶ」「ひとり大喜利をする」「オクモリンピック」の4つの選択肢をいただきました。 はじめは、「オオギリストを呼ぶ」がよいと思っていたのですが、気づいたら「ひとり大喜利をする」に決定していました。何かしらの催眠をかけられたのか、「ひとり大喜利やってみましょう!」と返事をしていて怖かったです。 まだまだ大喜利の赤ちゃんである私が、いきなり1時間ひとりで大喜利をする。無謀すぎやしないでしょうか。一歩間違えれば大放送事故になりかねません。 ただ、「松本人志の次に『一人ごっつ』のような大喜利を女子高生がするのは前代未聞すぎる」というワクワク感の一本槍で進みました。 練習のしようもないので、収録までの期間は何回か神社へ行き「ひとり大喜利が無事に終わりますように」と念じました。闘志を奮い立たせるためにMOROHAの曲だけを聴いてテレ朝へ向かったな。奥森皐月あるあるなのですが、ここぞというときMOROHA聴きがち。 うまくできていたか、ダメだったか、は本編を観て判断していただきたいです。ただひとつ言えることは、楽しすぎた。大喜利にのめり込む人々のマインドがよくわかりました。視聴者のみなさんから、最高のお題をたくさんいただけたのもうれしかったです。1時間が一瞬に感じました。今後も大喜利はどんどんやっていく予定。ひとり大喜利もまたやりたい。 セットも衣装も『一人ごっつ』に寄せていて最高だったのでそこにも注目してほしいです。孤軍奮闘とはまさにこのこと。作務衣はマイフレンドみほとけにお借りしました。作務衣と一緒に厄除けのステッカーを授かったのが効いたかも。南無。 #19 石井玄(ニッポン放送):“育ての親”の前でエピソードトーク披露 憧れの方に来ていただけて、ただただ幸せでした。放送内でも言いましたが、私を育ててくれたラジオ番組はみんな石井さんがディレクターを担当されていました。文をキュッと短くすると私の育ての親です。お話しできることがうれしくてうれしくて、ずっとウキウキしていました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #19 石井玄(ニッポン放送)』) オールナイトニッポン元チーフディレクターの前でオープニングトークをするという、かなり重要な機会。いつもOPトークは“いい意味で”気楽にしゃべっているのですが、この回はそうもいかないと気合いを入れました。しっかり1週間で起きたことでのエピソードトークしたよ。ところがこの収録までの1週間、落ち込むことが続いていてハッピートークがまったくありませんでした。緊急事態です。 記憶をたどって、唯一出てきた「ヘコんでいるときにお笑いライブに行ったら、竹内ズの青春コントで号泣してしまった。竹内ズの彼女じゃないと成り立たないくらい泣きながら笑った」というキモエピで乗りきりました。 この場で言ったらトークがブレるので言いませんでしたが、実はこのトークには嘘があります。「竹内ズ・金の国・モシモシの3組のコント、全部で泣いてしまった」が事実です。 トークを盛らずに減らすというよくわからない結果になりました。もっとおもしろくなりたいですね。 なかなか知ることができなかった、石井さんの学生時代のお話やラジオとの出会いについて深くお聞きできました。この番組のゲストの9割は学校が苦手だったタイプという説がありますが、石井さんも大学時代がその期間となっていたそうです。絶対に感想として間違っているとは思うのですが、とても安心できました。 9月15日にKADOKAWAより出版される石井玄さんの初著書『アフタートーク』についてもいろいろとお聞きできました。執筆時のことや出版の経緯など、気になることをお話ししてくださってとても楽しかったです。インタビュー形式での言葉がまとめられた本ではなく「自分で書いている」というところが一番のポイントだそう。石井さんの言葉で、どのようにラジオが語られているのか。発売が楽しみですね。 番組後半で、「今後ラジオ番組を持つべき人材」という質問をさせていただいたところ「奥森皐月」の名前を一番に挙げていただきました。お世辞とかそういうの知らないです。そのまま受け止めます。 元ANNチーフディレクターである石井さんから名前が挙がるタレント。奥森皐月。 ラジオ業界の皆さん、今がチャンスです。奥森は今なんのラジオ番組も持っていません。フリー森皐月です。 ご連絡お待ちしています! よろしくお願いします! (アピールできそうな隙間があれば全力ですることを心がけています) <石井玄さんを表す四字熟語>冬夏青青 節操が堅く、常に変わらないことのたとえ。(新明解四字熟語辞典より) #20 藤井青銅(放送作家):ラジオレジェンドが語った“ラジオ好き必見の1時間” 第19回の収録中、ゲストの石井玄さんに「公私混同にゲストに来てくださりそうなラジオ関係者はいないか」と尋ねたところ「藤井青銅さんはすぐ来る」とのこと。お聞きしたいことはたくさんあるので、いつか来ていただきたいなぁ、と思いその日は終わりました。 そしてその1日、2日後には「次回ゲストは藤井青銅さんに決まりました」との連絡が届いた。本当にすぐ来てくださって驚きました。ありがたいです。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #20 藤井青銅(放送作家)』) 最近「ラジオ好きJK」としてお仕事をいただくことが増えましたが、いかんせん17歳なので昔のラジオ番組の知識はありません。そして、ラジオの歴史を知ることはなかなか困難です。ネットで調べても出てこないことばかりなので。 だからこそ、ラジオ業界に半世紀近く携わっている青銅さんにお聞きしたいことはあふれるほどありました。 「作家」としても「放送作家」としても活躍されている青銅さんですが、初めからどちらも志していた、というお話は興味深かった。私はあまりイメージがなかったのですが、青銅さんが活動を初めたころには、作家業と放送作家をどちらもしている有名な方がいらっしゃったそうです。てっきり、どちらかを目指していて結果的に活動の幅が広がったのかと思っていたので意外に感じました。「星新一ショートショートコンテスト」のお話がとてもおもしろかったので、まだ観ていない方はぜひ観ていただきたいです。 私がとても気になっていた「芳賀ゆい」についてたっぷりお聞きできたのも幸せでした。伊集院光さんがラジオ番組に出演し始めたころのことから、レギュラー放送になるまで。そしてリスナーと作り出した架空のアイドルがオールナイトニッポンを担当したこと。嘘だと疑いたくなるくらい素敵なストーリーで、当時番組を聴いていた方が本当にうらやましいです。 ほかにもオードリーさんがブレイクする前のことやオールナイトニッポンのレギュラーにまで羽ばたいたことなど。青銅さんにしか語れないお話を聞き尽くせた、最高の1時間でした。 ラジオ好きには一度観てもらいたい回です。 私も、青銅さんにトークを聴いてもらえる日を夢見てがんばろうと思えました。 <藤井青銅さんを表す四字熟語>達人大観 物事の道理に広く通じている人は、物事の全体を客観的に見渡すことができるということ。(四字熟語辞典より) #21 池田レイラ(完熟フレッシュ):JKタレントのリアルな悩み 公私混同で初の「同学年」ゲスト。私と同じ高校2年生である池田レイラさんと、同級生トークを繰り広げました。 これまでのゲストとは違い、この回では「全編タメ語」というルールを適用。呼び方も「レイラちゃん」「皐月ちゃん」になりました。初めはお互いに距離感を探り合っていましたが、このルールがあったことでいつにも増して込み入ったお話ができたように思います。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #21 池田レイラ(完熟フレッシュ)』) ここ最近のレイラちゃんは、特にYouTubeやTikTok、Instagramなど個人SNSでの注目度が高い印象。流行に敏感な「イマドキJK」タイプだと思っていたので、流行りのものについて教えていただく予定でした。 しかしながらトークを進めていくうちに、これまでの子供らしさを活かした芸能活動とは別のイメージを作るためにSNSに力を入れていることが判明。同世代の私が言うのは変だとは思いますが、高校生とは思えないしっかりとした考え方と仕事へのプライドを感じてとても感動しました。本当に素敵な方です。 半ば強引にお笑い芸人としてデビューしたにもかかわらず、未来への明確なビジョンを持って努力していることがよく伝わり、これまで以上に応援したいと思いました。 また、後半では高校生タレントとしての悩みも聞かせてくださりました。「恋愛系の質問を受けてもどう返せばいいかわからない」というかなりリアルな内容。 私にも明確な答えは導き出せませんが、誰とも共感できない感覚を分かち合えたのはとてもうれしかったです。レイラちゃんも喜んでくださったので何より。後半は、今後の芸能人生設計のようになっていて、かなり新しい内容だったと思います。 テレビでの、明るく溌剌としていて厳しく物申す一面が見えていたからこそ、今回のまじめで繊細で努力家な姿はよけい印象深かったです。 私はあまり、芸能活動について身近な人に相談したり話したりすることがないのですが、今後はレイラちゃんに声をかけたいなと思いました。 またひとり、公私混同をきっかけにお友達ができました、幸せです。 高校生という今の時期を大切にしつつ、未来に向かってそれぞれ活躍の場を広げられたら理想だなぁと思います。 またプライベートで収録の続きをお話ししたいな。 <池田レイラさんを表す四字熟語> 直往邁進:ためらわずにまっすぐ突き進むこと。(新明解四字熟語辞典より) 已己巳己:文字の形が似ていることから、互いによく似ているもののたとえ。(四字熟語辞典より) 第19回からはlogirl公式サイト内「ラジオ」のページにてアフタートークが公開されています! 本編に入りきらなかったトークや、収録での出来事など。奥森とTPとゲストさんでお話しさせていただいています。 無料でお聴きいただけますので、こちらもぜひよろしくお願いします。 『奥森皐月の公私混同』公式Twitterアカウント、フォロワーどんどん増えています! 第4回の収録後記を書いたとき、フォロワーが1000人を突破したと書きましたが、現在なんと3000人を超えました。 完全に『99人の壁』に出演させていただいてからの爆増です、やったあ。 奥森皐月です。本当に奥森です。ツイッターをはじめることに成功しました。傍若無人に公私混同な内容を発信していきたいですね。抱腹絶倒ツイートを見守ってください。 フォローと拡散、よろしくお願いしますー!(奥森) pic.twitter.com/zh0XsrlHku — 奥森皐月の公私混同は傍若無人【公式】 (@s_okumori) June 23, 2021 番組やQJWebでの連載の最新情報、裏話などを投稿するほか、私もツイートをしています。 ぜひフォローよろしくお願いします。 番組やこの収録後記の感想などは #奥森皐月の公私混同 をつけて投稿していただけるとうれしいです。 番組ではメールも募集しています。 ゲスト案、番組の感想、ふつおた、お悩み相談、大喜利のお題、「街の公私混同」のコーナーなどなんでもOKです。 受付メールアドレスは s-okumori@tv-asahi.co.jp まで。お待ちしております。 『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開 最新回公開直後の1時間は無料でご覧いただけるので、ぜひチェックしてみてください! (写真:『奥森皐月の公私混同』) 次回のnoteでは「奥森、念願の2時間ひとりしゃべりラジオに挑戦」を中心に書く予定です。お楽しみに。
-
友達増やしと、あふれ出すオタク感|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第4回
テレ朝動画のオリジナル番組定額見放題サービス「logirl(ロガール)」で毎週配信中の『奥森皐月の公私混同』。そのスピンオフのテキスト版として、MCの奥森皐月が番組収録のウラ話や感想、各回のオススメポイントなどを自ら執筆する連載コラムです。番組で発表した「ゲストを表す四字熟語」も改めて紹介します。 恐ろしいほどスルスルと会いたい人に会えてしまう 初対面の大人に学校で所属している部活を聞かれたら「バニー部」と答えます。高校2年生17歳の奥森皐月です。 logirlにて毎週木曜18時から、私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が配信されています。 タイトルのとおり、私がプライベートでハマっている人やモノを公の場で熱く深く語り尽くす番組です。 ミュージシャン、芸人、アイドル、大喜利激強一般人など幅広いゲストをお迎えしてディープなトークを繰り広げています。 この番組が始まってからというもの、恐ろしいほどスルスルと会いたい人に会えてしまう。毎週好きな人が来てくれるというこの感動をみんなにも味わってもらいたいです。 『オールナイトニッポン』のように、『〇〇の公私混同』と帯番組にすることを目標にします。 このnoteでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いていきます。 今回は、にゃんぞぬデシさん・スーパー3助さん・俺スナさん&冬の鬼さん・ukkaさんがゲストにいらした第14回から第17回までの振り返り。 logirlの本編とこの記事を併せてご覧いただくと、一番楽しめるのではないかと思います。 ぜひよろしくお願いします! #14 にゃんぞぬデシ:恐怖すら感じるほど深いラジオ愛 お笑いファンのゲストと、好きを共有するシリーズ第3弾。 にゃんぞぬデシさんとは『ハライチのターン!』(TBSラジオ)のヘビーリスナーという共通点から魅力を熱く語り合いました。よくよく考えるとリスナーだけが集まって愛を語るコンテンツってかなり珍しいですよね。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #14 にゃんぞぬデシ』) にゃんぞぬデシさんを知ったのもラジオがきっかけ。5年ほど前に、Aマッソさんの番組に出演されていた高校生のアーティストがにゃんぞぬデシさんでした。 トークが独特で、曲がとにかくかっこいい。そのギャップが鮮烈に印象に残っています。 ずっと気になる存在だったので、ようやくお会いできてうれしかったです。 音楽を始めたのも、お笑いを好きになったのも、ラジオがきっかけとのことでとても親近感が湧きました。ラジオ愛の強さを感じる1時間。 それにしても、この番組のゲストは学生時代に暗い過去がある人が多すぎる。にゃんぞぬデシさんもつらい学校生活のなかラジオが救いだったとおっしゃっていたのが印象的です。類は友を呼ぶ、という言葉の正しさを痛感します。MCの私が“そっち側”なので無意識に同じ境遇だった人を引き寄せている可能性が高い。 番組を観ていただいた方はおわかりでしょうが、にゃんぞぬデシさんがかなりノリノリで加速しながらトークをしてくださりました。今オススメの芸人さんや『ハライチのターン!』の私的神回もたくさんご用意いただいたのですが、明らかに1時間番組で紹介できる量じゃない。台本が真っ黒になっていて怖さすら感じました。愛が深くて素敵。 ハライチ岩井さんがにゃんぞぬデシさんに道で声をかけられたというトークを、3年ほど前にしていたのが頭に残っていたのですが、その日のことをにゃんぞぬデシさん目線でも聞けたのがうれしかったです。バースデーソング裏話など、『ハライチのターン!』とにゃんぞぬデシさんの歩みを聞くことができた貴重な回になりました。 後半はオタクふたりの喫茶店トークなので、温かな目でご覧いただきたいです。連絡先を交換させていただいたので、今度はプライベートで同じことしたいと思っています。私はこの番組を使って友達を増やそうとしている。公私混同だろ? <にゃんぞぬデシさんを表す四字熟語>独具匠心 詩文や音楽などの芸術に対する、独創的なアイデアや技巧を備えていること。(四字熟語辞典より) #15 スーパー3助:型破りの大暴走 公私混同名物、芸人さん大暴走回。過去最高というか最低を叩き出しました。個人的にはかなり気に入っている回です。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #15 スーパー3助』) 当初の予定では、昨年アンゴラ村長さんと破局されたことから恋バナをメインにしようという計画だったのですが、ものの見事に崩されてしまいました。まず初めに、3助さんがあり得ない量のフリップや手作りお面を用意して持ってきてくださったことが大きな原因だと思います。勝因? 敗因? わからない。 初めは、ワケのわからないお面を被せられて時間を無駄にされて腹が立ちそうになりました。しかしそれらを通じて「スベる」という体験をくださった3助さんに、今は感謝しています。貴重です。聞きたかった話のほとんどは聞けませんでしたが、アングラ時代の強烈なエピソードをいくつか話していただけたのはよかった。 地下芸人、アングラ芸人、職務質問芸人、というものの違いを初めて知りました。アングラお笑い徹底ガイドと呼んでもいいくらい丁寧な説明だったな。 頼んでもいないのに、勝手にフリップのピンネタを披露してくださったり、コーナーを潰されてしまったり、最低限読まなきゃいけない台本が読めなくなったりしたことで、エンディングで私はやってしまいました。メディアに出てはいけないくらいの嫌な顔をしてしまいました。この場を借りてお詫び申し上げます。反省しています。 ただ、ひどい仕打ちを受けたにもかかわらずコンプライアンスに引っかかるような悪口をグッと飲み込んだことは褒めていただきたいです。 3助さんが、耳元でミニ四駆のモーターを回して髪の毛が絡まり取れなくなるという事件も番組終了間際で起こりました。フォローしきれず番組が終わりました。これも謝ります、ごめんなさい。 終了後、絡まりを取ろうとしている3助さんに番組プロデューサーのTPが「もう一回電源入れたら取れるんじゃないっすか」と言ってカメラも回っていないのにもう一度やらせていました。本物のサイコパス。こんな人と第15回までやってきたのかと思うと怖かったです。笑っちゃったけど。 後日、3助さんがネットラジオアプリGERA『スーパー3助のCome back my singer』にて私とTPと番組を絶賛してくださっていて驚いた。この番組を通じて「芸風ヤバイ人ほどいい人」ということがよくわかりました。結局いい人なんかい。 <スーパー3助さんを表す四字熟語>苦心惨憺 心をくだいて非常な苦労を重ね、工夫をこらすこと。(新明解四字熟語辞典より) #16 俺スナ&冬の鬼:ふたりが講師の大喜利塾があったら週6で通う 芸人さんでもタレントさんでもない人を普通に呼ぶ、それが『奥森皐月の公私混同』です。 ついにオオギリストにも手を出しました。 この世には、芸人さんではないけれど大喜利のライブで活躍するおもしろ一般人大喜利プレイヤーという存在がいます。その中でも特に有名なふたりをお呼びしました。おふたりによれば、オオギリストという言葉は厳密に言えば「ない」そうです。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #16 俺スナ&冬の鬼』) 普段は大喜利をしている姿しか観られないため、プライベートのことやこれまでのお笑い・大喜利ヒストリーを聞けたのがとても楽しかったです。大喜利ファンのみなさんからの反響も大きく、たくさんの方に観ていただけてよかった。 俺スナさんが、出会って2秒で「ぎょねこ落ちちゃいましたね」と声をかけてくれておもしろかったです。ちょうどキングオブコント1回戦の結果が出たばかりで、私もかなり衝撃を受けていたのでお笑い好きとして共有できて幸せでした。 収録前は緊張しているとおっしゃっていましたが、大喜利が始まるとさすがプロ。 一答も逃さず爆笑をかっさらっていて、ただただカッコよかったです。 また、私が用意した大喜利回答を添削していただく時間がありましたが説得力に圧倒されました。端的かつ的確で、絶対そうしたほうがおもしろい!というアドバイスをしていただけて感動。ふたりが講師の大喜利塾があったら週6で通います。 この収録は、とにかく「俺スナさんと冬の鬼さんにつまらないヤツだと思われたくない!」という一心で臨みました。即興での大喜利では大ケガせず終わったので本当に安心した。 毎回収録後にサムネイル撮影をするのですが、この回のサムネは私が手を開き、冬の鬼さんがピース、俺スナさんがファイティングポーズ、というバラバラの構図になっていて。撮影しながら「あ!じゃんけんであいこだ!」とついこぼした私。大喜利を終えた解放感からか気が抜けて鬼つまらないことを口にしてしまったことを後悔しています。これからもおふたりの大喜利を観て勉強しよう。修行。 <俺スナさん&冬の鬼さんを表す四字熟語>一心精進 ひとつのことに心を集中させて励むこと。 #17 ukka:過去、現在、未来のukkaが知れる1時間 初のグループ! 初のアイドル! 初の同じスターダスト所属! マニアックお笑い番組を久々に抜け出した回です。 メンバーが4人ということで、ふたりずつ前半後半に分かれたこれまでにない構成でお送りしました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #17 ukka』) ukka(旧・桜エビ〜ず)さんが結成された2015年ごろから、私もスターダストで活動をしていたため一方的に同世代の意識を持っていました。私立恵比寿中学さんの番組で放送されていた桜エビ〜ずの活動報告コーナーも欠かさず観て、気づいたときにはファンになっていた私。楽曲を聴いたり活躍を見たりして、元気もやる気ももらってきました。 かなり昔に事務所のレッスンで何度かお会いしていたのですが、それ以外ほとんど関わりはなくてきちんとお話しできたのは今回が初めて! 聞きたいことを聞き尽くせて、とてもいい時間になりました。何よりメンバーのみなさんと少し距離を縮められた気がします、幸せ〜。 先日リリースされた最新ミニアルバム『T.O.N.E』についてトークした場面では、各メンバーのフィーチャー曲について詳しく教えてもらえました。楽曲に対する想いがそれぞれ素敵だし、何より話せば話すほど全員の人柄のよさが伝わってきて最高。ハッキリ言います、ukkaは最高のグループなのです。 メンバーの脱退により、変更が重なった際の苦悩や、窮地に追い込まれてからの努力の話をまっすぐしてくださり心を打たれました。4人で支え合い、絆を深めていったというエピソードに感動して、ちゃんとウルウルしてしまいました。自分でOAを観返しながら、きっちり「お前が泣くんかい」と画面に向かって大声でツッコみました。 これまでのukka、今のukka、これからのukka、3つの面をありのままに伝えてくれて、本当にうれしかったです。 基本的に、同世代のMCとしてきちんと任務を果たそうという心持ちでしたが、ukkaを目の前にすると全員かわいすぎてペースが崩れました。1カ所、村星りじゅさんと芹澤もあさんに「さつきちゃーん♡」と連呼していただくご褒美タイムがあり、しっかり昇天しちゃった。客観的に観て、さすがに私のリアクションが「きも」でしたね。 これからもukkaさんのことをずっと応援しています。またいつでも来ていただきたい。次はオタク感をもう少し薄める努力をします。これに関しては公私混同すぎてファンの方々に怒られないか不安なのです。 <ukkaさんを表す四字熟語>羽化登仙 酒などに酔って快い気分になることのたとえ。天にも昇る心地。羽が生え仙人になって、天に昇る意から。(新明解四字熟語辞典より) 『奥森皐月の公私混同』公式Twitterアカウント、おかげさまでフォロワー1000人突破! 奥森皐月です。本当に奥森です。ツイッターをはじめることに成功しました。傍若無人に公私混同な内容を発信していきたいですね。抱腹絶倒ツイートを見守ってください。 フォローと拡散、よろしくお願いしますー!(奥森) pic.twitter.com/zh0XsrlHku — 奥森皐月の公私混同は傍若無人【公式】 (@s_okumori) June 23, 2021 番組やQJWeb連載の最新情報、裏話などを投稿するほか、私もツイートをしています。 これまでの放送回の書き起こし文章も上がっていて、なかなかおもしろいですよ。 私の日常的なことも載せているので、ぜひフォローよろしくお願いします。 また番組やこの収録後記の感想などは #奥森皐月の公私混同 をつけて投稿していただけるとうれしいです。 番組ではメールも募集しています。 ゲスト案、奥森にオススメしたいエンタメ情報、叱咤激励、ふつおた、お悩み相談、大喜利のお題、「街の公私混同」のコーナーなどなんでもOKです。 受付メールアドレスは s-okumori@tv-asahi.co.jp まで。お待ちしております。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 最新回公開直後の1時間は無料でご覧いただけるので、ぜひチェックしてみてください! (写真:『奥森皐月の公私混同』) 次回のnoteでは「トーク番組のコンセプト大崩壊! 1時間ひとり大喜利女子高生と化した奥森皐月」を中心に書く予定です。お楽しみに。
-
憧れの存在と「下ネタ」のプロが並ぶ大冒険キャスティング!|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第3回
テレ朝動画のオリジナル番組定額見放題サービス「logirl(ロガール)」で毎週配信中の『奥森皐月の公私混同』。そのスピンオフのテキスト版として、MCの奥森皐月が番組収録のウラ話や感想、各回のオススメポイントなどを自ら執筆する連載コラムです。番組で発表した「ゲストを表す四字熟語」も改めて紹介します。 好きなことを好きなだけできている幸せを感じます 先日知人に「奥森さん、お笑いライブ行ってない日ある?ってぐらい行ってますね」と言われました。 行ってない日もあります、高校2年生17歳の奥森皐月です。 logirlにて毎週木曜18時から、私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が配信されています。 公私混同を観ている人こそが、この世の誰よりも最先端だと言われているそうです。 このnoteを読んでくださっているあなたが、これからはトレンドを作っていくことでしょう。 「ライトな層を完全に置いていく宇宙一マニアックなトーク番組」をテーマに、毎週ゲストの方々とディープなお話を繰り広げています。突然ハガキ職人さんの個人名を挙げたり、昔のラジオ番組のひとつの放送回について語ったりと相変わらず大暴れです。 それでも追いかけ続けてくれる人を、私は一生を懸けて幸せにしてあげたいな。 このnoteでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いていきます。 今回は、諭吉佳作/menさん・囲碁将棋さん・松井咲子さん・ルシファー吉岡さんがゲストにいらした第10回から第13回までの振り返り。 改めて並びを見ると、大冒険キャスティングです。 好きな人をお呼びして、好きなことを好きなだけできている幸せを感じる。 logirlの本編とこの記事をあわせてご覧いただくと、一番楽しめるのではないかと思います。 ぜひよろしくお願いします! #10 諭吉佳作/men:この胸の高鳴りは…恋? 番組がスタートしてすぐ、番組プロデューサーのTPに会いたい人物としてお伝えしました。 私の大大大好きなアーティストである諭吉佳作/menさん。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #10 諭吉佳作/men』) 音楽活動を始められたばかりのころ、同世代で同じ中学生でこんなにも素晴らしい作品を作る人がいるのかと衝撃を受けました。紛れもなく私が影響を受けているひとりです。 ゲストに決まってからお会いできるまで、ずっとドキドキが止まらなかった。当日も、お会いするまでの時間は味わったことのない胸の高鳴りを感じました。 第9回まではお笑いの話題が中心だったため、私自身も「おもしろさ」を意識していました。ゲストの方にも、おもしろいと思ってもらえるように振る舞っていたのですが、この回はまったく違う。 憧れの諭吉さんに少しでも「かわいい」と思ってもらいたい……という謎の感情が働きました。 いつにも増して涙袋のキラキラも増やしてしまったし。恋? 収録中はただ楽しく幸せな時間でした。 一度、諭吉さんへの想いを語ろうとしたところ完全に泣きそうになった部分があります。これまで積み重ねてきた気持ちが溢れて感情が昂りました。 MCが勝手にしゃべって泣くのはかなり意味がわからないぞ?という冷静な客観の奥森がその涙を抑え込んでくれたのでよかったです。 こんなにもたっぷりと諭吉さんがお話をされる機会は貴重で、とてもありがたかった。 謎に包まれているイメージでしたが、目の前にするとかわいらしく愛嬌のある魅力的な方だなぁと感じました。 そして、「奥森、これやっときな!」のコーナーでは一緒に制服ディズニーをしませんか?という提案をしていただき昇天。 この日が最終回でも許せました、うれしすぎる。 実現した際にはすぐにお知らせしますね。 諭吉佳作/menさんにお会いすることがひとつの目標だったため、それが叶った至福の回でした。 ここからは諭吉さんと仲よくなることが目標。ありがとう公私混同。 <諭吉佳作/menさんを表す四字熟語>鏡花水月 はかない幻のたとえ。目には見えるが、手に取ることのできないもののたとえ。また、感じ取れても説明できない奥深い趣のたとえ。(新明解四字熟語辞典より) #11 囲碁将棋:目の前で囲碁将棋が“囲碁将棋している” 2021年、注目を浴びている芸人さんのひと組なのではないでしょうか。 おふたりとも40歳で芸歴17年目となった今、どうしてここまでの人気になっているのか純粋に興味がありお呼びしました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #11 囲碁将棋』) 何より、ネットラジオアプリGERAにて配信中の『囲碁将棋の情熱スリーポイント』があまりにもおもしろすぎる。おふたりのトークを目の前で見たいという、ファンの願望がTPと合致しました。 本物の囲碁将棋さんは想像を遥かに上回る大きさと、人柄のよさでした。 私からすると囲碁将棋さんはもうベテラン芸人さんなのですが、お会いするなり芸歴1年目かと思うほどのハキハキ挨拶をしてくださって感動しました。お優しい……。 本編では、序盤から私のお笑いを観すぎているオタク感が滲み出てしまったのか「もっと時間を大切にしたほうがいい」「お笑いを観すぎていて変態」と言われてしまいました。 変態呼ばわりされているのに、にこにこ喜んでいる自分が画面に映っていたときは相当キモかったです。気をつけます。 囲碁将棋さんのこれまでについてお聞きしたところ、どこにも明かしていなかった情報をたくさん教えてくださりました。 囲碁将棋は襲名制、現在は8代目、国に守られている芸人であること、などなど。 ファンの方必見の内容だったのではないでしょうか。今からでも遅くないので絶対に観てほしい。おふたりのすべてを知ることができます。 収録中にも言ったのですが、目の前で囲碁将棋が“囲碁将棋している”のを観られて最高でした。ふたりが会話するだけで、もうそれがひとつの漫才みたい。「囲碁将棋ブランド」のようなものを感じました。 お会いしてからより好きになってしまい、収録後すぐに大宮でのライブチケットを予約。すっかり私も囲碁将棋ファンです。 ここから、さらなる活躍が期待されている囲碁将棋さん。 テレビでも囲碁将棋しているところを観たいですね。 ちなみにサムネイルの写真の身長差がエグすぎると、少しTwitterがざわついていたのですが、あれは詐欺写真です。 囲碁将棋のおふたりが少しだけ高さのある台に乗った状態で撮影しました。 ネタバラシするタイミングもなかったので、ここで白状します。 <囲碁将棋さんを表す四字熟語>面目躍如 世間の評価に値する活躍をしていて、生き生きとしているさま。また、名声・世間体などがよりよくなるさま。(新明解四字熟語辞典より) #12 松井咲子:「お茶会」「平甲子園」「トゥーマス」「ポポゴリラ」… お笑いラジオ語り回の第2弾。 松井咲子さんのことはお笑い好き・ラジオ好きとして存じ上げており、ぜひお話をお聞きしたいと思っていました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #12 松井咲子』) 『JUNK 山里亮太の不毛な議論』リスナーとして有名な松井さんですが、そのほかのお笑いの趣味はあまりわかりませんでした。そのため、収録中に好きなお笑いをどんどん知れたのが楽しかったです。 お互いに「あ、この人ガチだな」と確信したためか、かなりフルスロットルでお笑いラジオ愛を語り合えました。 開始早々に松井さんが「ジャーゲジョージさん」という元ハガキ職人で作家さんの名前を挙げていてビビりかけました。すぐに「『SCHOOL OF LOCK!』とかやられている方ですね!」と返せてよかったです。 あの瞬間にこの回の成功が決まったのではないかと思います。 番組中盤からは「私的ラジオ神回ベスト3」と題し、お互いに好きなラジオ放送を発表し合いました。それぞれの好みが出つつ、共感できることも多くて楽しい企画でした。 ちなみにTPもベスト3を考えてくださりましたが、打ち合わせのときに「たった3つに絞るのはあまりにも酷だ」と言っていて笑いました。ベスト3と決めたのはTPなのに……。 スタジオにいる松井さん、奥森、TPの全員がアルピーANNリスナーの家族だという事実がとてもエモーショナルでした。2021年に「お茶会」、「平甲子園」、「トゥーマス」、「ポポゴリラ」、という単語を声に出して言えた幸せな日です。 帰り際、松井さんが台本にメモを残されて帰られていたそうです。 こんなの好きになってしまうに決まっている。いい人すぎる。 お綺麗で、スタイルがよくて、ピアノも弾けて、お笑い好きで、人格者。 何も勝ち目がなくてつらいですが、素敵な人で大好きになりました。 またラジオ振り返り回はやりたいです。 <松井咲子さんを表す四字熟語>一意専心 他に心を動かされず、ひたすら一つのことに心を集中すること。(新明解四字熟語辞典より) #13 ルシファー吉岡:下ネタのプロが放つ最もドラマティックな「きゅんです」 『奥森皐月の公私混同』では最近、サムネイルのおもしろさを追求しがちになっています。 ルシファー吉岡さんも、奥森との並びがよさそうという点から即決定しました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #13 ルシファー吉岡』) もともとルシファーさんのネタが大好きで頻繁にネタ動画は観ているのですが、本人のキャラクターやこれまでのことはあまり知りませんでした。 そのため、芸人さんになるまでのお話をじっくりと聞けてよかったです。 また、何よりも気になっていたのが「下ネタ」について。 上品さすら感じるルシファーさんのネタの不思議を解き明かしたいと思っていました。 照れない、一理あると思わせる、など具体的な説明がどれもわかりやすくおもしろかったです。 私からお聞きしておいて失礼なのですが、女子高生の前で話すのはかなり難易度の高いトークだったかと思います。 ところが、その紳士的な口調と美しい言葉遣いからまったくいやらしさのない、上質なお話をしていただけました。さすが下ネタのプロ。かっこいいです。 トーク中のルシファーさんから醸し出されている「役者感」が凄まじかったのですが、皆さんは感じましたでしょうか。 数年後には、朝ドラの重要な役を演じるような俳優さんになっているのでは? カメラが回っていないときもずっとそのテンションでした、根本からああいう人なのかな。 ルシファーさんに女子高生カルチャーを教えるという、異文化交流の時間もなかなか楽しかったです。「きゅんです」を知らないとのことで、TikTokを教えるといういかにもJKらしいことができました。いい具合にルシファーさんがおじさんでした。 ただ、演技力の高さとおもしろさでTikTok史上最もドラマティックな「きゅんです」が完成してしまいました。 この動画、本当にTikTokに投稿したらバズるのでは? どんな出来になっているかは、番組本編と番組公式Twitterでお確かめください! <ルシファー吉岡さんを表す四字熟語>明目張胆 恐れることなく、思い切って事に当たること。また、はばかることなく、公然と物事をやってのけること。(新明解四字熟語辞典より) 先日『奥森皐月の公私混同』公式Twitterアカウントが開設されました。 私が連載させていただいているQJWeb「奥森皐月は傍若無人」との共同運営アカウントです。 奥森皐月です。本当に奥森です。ツイッターをはじめることに成功しました。傍若無人に公私混同な内容を発信していきたいですね。抱腹絶倒ツイートを見守ってください。 フォローと拡散、よろしくお願いしますー!(奥森) pic.twitter.com/zh0XsrlHku — 奥森皐月の公私混同は傍若無人【公式】 (@s_okumori) June 23, 2021 番組と連載の最新情報や裏話を投稿するほか、私もツイートをしています! 観に行ったお笑いライブなど、日常的なことも載せているのでぜひフォローよろしくお願いします。 フォローしてくださった瞬間に大きな声でありがとうございます!と叫びますよ。 また、番組やこのnoteの感想などは #奥森皐月の公私混同 をつけて投稿していただけるとうれしいです。 番組ではメールも募集しています。 ゲスト案、奥森にオススメしたいエンタメ情報、叱咤激励、ふつおた、お悩み相談、大喜利のお題などなんでもOKです。 受付メールアドレスは s-okumori@tv-asahi.co.jp まで。お待ちしております。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 最新回公開直後の1時間は無料でご覧いただけるので、ぜひチェックしてみてください! (写真:『奥森皐月の公私混同』) 次回のnoteでは「あれ、この番組のゲスト、学生時代暗かった人が多くない?」を中心に書く予定です。お楽しみに。
-
運命的な出会いも、全力の“りーもこ”も!|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第2回
テレ朝動画のオリジナル番組定額見放題サービス「logirl(ロガール)」で毎週配信中の『奥森皐月の公私混同』。そのスピンオフのテキスト版として、MCの奥森皐月が番組収録のウラ話や感想、各回のオススメポイントなどを自ら執筆する連載コラムです。番組で発表した「ゲストを表す四字熟語」も改めて紹介します。 予想される展開をいかに裏切るか選手権 最近大喜利にハマりすぎて、ついに大喜利のメール投稿を始めてしまいました。奥森皐月と申します。 ほかの人よりほんの少しだけお笑いを見る時間が長いだけの17歳、高校2年生です。 logirlにて毎週木曜18時から『奥森皐月の公私混同』が配信されています。 一部の層で話題だと言われていたり、いなかったりする番組。 「ライトな層を完全置いていく宇宙一マニアックなトーク番組」をテーマに、毎週ゲストの方々とディープなお話を繰り広げています。 マニアックすぎるトークにも果敢についてきてくれる視聴者の皆さんには感謝しかありません。いつもありがとうございます。 お呼びするゲストさんは、私と番組プロデューサーのTP(高橋プロデューサー)による話し合いによって決めているのですが、回を増すごとに「攻めた人選」になってきている気がします。 「予想される展開をいかに裏切るか選手権」のような会議、これがとても楽しいです。 「あの人は今こそ呼びたいね」とか「このゲストの流れはオシャレだねぇ」とか、感覚を麻痺させながら毎週考えています。 さて、このnoteは番組収録のウラ話や収録を通して感じたことをMCの私目線で書く放送後記。 今回は第6回から第9回までを順に振り返っていきます。 logirlの本編とnoteの記事、ともに観ていただけるとより楽しめるのではないかと思います……。 #6 みほとけ:普段から交流のある頼れるお姉さん これまでの公私混同の放送の中で、最も「私」の成分が多かった回。 プライベートでお友達として仲よくしていただいているみほとけさんをお招きしました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #6 みほとけ』) 毎週欠かさずゲストの方をプレゼンするコーナーを設けていますが、みほとけさんとの回だけはそのコーナーもカット。 ただただ「お友達」として1時間楽しくゆるくおしゃべりする。はずでしたが。 みほとけさん持ち前のまじめさが炸裂し、しっかりエピソードトークを何本も用意してきてくださりました。 頼れるお姉さんです、私はほぼ何も考えないで収録に臨んでいたのに。 収録日は私の誕生日が近かったため、サプライズでお祝いもしていただきました。 プレゼントでいただいた単眼鏡がとてもお気に入り。 次にみほとけさんとお寺に行くときは、この単眼鏡を片手に隈なく見て回りたいです。 いつの間にか普段喫茶店で話しているときと同じテンションになり、私はかなり素の状態でトークしていました。放送を観て「こんなに思ったことをそのまま言ってしまっていたのか」と驚いたくらいです。それだけ、みほとけさんといると安心してしまうのでしょうね。 収録後帰宅すると、みほとけさんから超長文のラインが届いていました。 その日の収録についてひとり反省会をした上で、信じられないくらいまじめに感想を綴った文章。 お友達として、いつも他愛ない話を送り合っていたLINEに突如現れた「芸人・みほとけ」のストイックさに感銘を受けました。 そして、この素敵な人が仲よくしてくださっていて幸せだなと感じて。 謎のスイッチが入ってしまい、しばらくアツい会話が続いたので全身に熱気を帯びた状態で果てるように眠りにつきました。 ふたりで出した結論は「ウチら最高の仲間だね」です。 文化祭終わりの学生も同じことを言うと思いますが、私たちの想いは比べ物にならないくらい強いです。 みほさん、今後ともよろしくお願いします。 <みほとけさんを表す四字熟語> 知己朋友 よく自分のことを知ってくれている友人のこと。また、よく待遇してくれる人。(新明解四字熟語辞典より) #7 ムラムラタムラ:随所に表れるりーもこ愛 破壊力抜群の回になることは容易に予想できたので、楽しみな気持ち半分、恐怖心も大きかったです。 「もっこりからのりーもこちゃん」を女子高生にやらせていいのか、とTPも悩んだそう。 ちなみにマネージャーさんからは何も言われませんでした。スターダストプロモーションはりーもこOKの事務所のようです。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #7 ムラムラタムラ』) 前半は完全にムラムラタムラさんに主導権を握られてしまい、ただただ、りーもこを全力でやる時間でした。厳しい指導でしたが、随所に表れるりーもこへの愛が素敵だと思いました。なぜ厳しいりーもこの指導を受けなくてはならないのか?という疑問はとっくのとうに捨てています。 番組後半では、ムラムラタムラさんのプライベートの面や“普通”な部分を知ることができてよかったと思います。 カメラが止まると、さらに好青年な部分が出てくるムラムラタムラさん。 「フリーだと大変ですよね」と何気なく言っただけなのに、これまでの芸人生活の変遷やフリーになった経緯、今後どうしていきたいかまで丁寧に教えてくださりました。 この女子高生に、将来のことまで詳しく教えてくれる優しい人です。聞いてもいないのに。 帰り際の「またお願いします」という深いお辞儀が脳裏に焼きついています。 普段の姿を知ってしまうと、ますます舞台で観るムラムラタムラさんがおもしろいです。 このエピソードを踏まえた上で、みなさんにも第7回を観返していただきたい。 新たな発見があるかもしれません。 そして、奥森がノリノリでりーもこをしていることに疑問を抱くはずです。 私も自分で放送を観たときに「なんでこんなに向上心を持ってもっこりからのりーもこちゃんをしているのだろう」と怖くなりました。 ネットラジオアプリGERAで放送中のムラムラタムラさんの番組でも、その人柄が垣間見えるのでぜひ聴いていただきたいです。#6の恋愛について話す回が私のお気に入り。 <ムラムラタムラさんを表す四字熟語> 気骨稜稜 自分の信念を守って、貫き通そうとするさま。(デジタル大辞泉より) #8 エアコンぶんぶんお姉さん:「エアコンぶんぶんお姉さん」を知りたければこれを観るべき! 芸歴2カ月という、今までお呼びした方々の中でも圧倒的にフレッシュなゲスト。 4月に『全力!脱力タイムズ』に出演されたことをきっかけに脚光を浴び始めた、今一番注目度の高い芸人さんのひとりです。 番組内で「こんね」と呼ばせていただくことになったので、ここからは「こんねさん」と書きます。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #8 エアコンぶんぶんお姉さん』) 印象的な名前と、かわいらしい見た目で見る人の心を惹きつけるこんねさん。 しかしながら、調べても調べても素性はわからないし、どんな人なのか想像もつかない謎多き存在でした。 そのようななかで、『奥森皐月の公私混同』がいち早くこんねさんの実態に迫れたのはとてもうれしかったです。 お笑いを始めるまでの人生や普段の様子を知れた上に、想像の何倍も上手だった歌の披露まで。「エアコンぶんぶんお姉さん」を知りたければこれを観るべき!という1時間になっています。 こんねさんの空気感が徐々にスタジオを覆っていくのが見どころ。 ひとつひとつの言葉のチョイスに、鋭さと強い魅力を感じました。 年齢が近いことからシール帳のトークが盛り上がったり、意外な共通点が見つかったり。 近しいものを感じるな、という直感が確信に変わりました。 今後、プライベートでもお話ししてみたい存在です。また違った部分も知りたい。 「タナカ電機」としてコンビでも活動するこんねさん。漫才をしている姿も観に行きたいと思います。 ちなみに、この回の「奥森、これやっときな!」のコーナーでネット大喜利を始めたほうがいいと教えていただいたのもあり、大喜利投稿を密かにスタートしました。 大喜利投稿職人として名が知れるまでは粛々と修行を積みたいと思います。 なぜ修行を積まなくてはいけないのか? その疑問もとっくのとうに捨てています。 こんねさんの願いも背負って、大喜利を学んでいく。 <エアコンぶんぶんお姉さんを表す四字熟語> 花紅柳緑 春の美しい景色の形容。また、色とりどりの華やかな装いの形容。また、人手を加えていない自然のままの美しさのこと。花は紅に柳は緑の意。(新明解四字熟語辞典より) #9 桑原由気:声優界随一のお笑い好き 第8回までのゲストはすべて芸人さんでしたが、ここで突如お呼びした声優さんのゲスト。 しかし結果的にはこれまで以上に「お笑い濃度」の高い放送になりました。 声優界随一のお笑い好きで知られる桑原さん。芸人さんをゲストに呼ぶラジオ番組を放送されていたことをきっかけに、私は桑原さんのことを知りました。寄席を主催していると知り調べてみると、お笑い好きを煮詰めたようなキャスティングで驚いたことをよく覚えています。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #9 桑原由気』) 一方の桑原さんは、私がQJWebにて書いた「うしろシティ星のギガボディが終わるのがしんどい」という内容の記事を読んでくださっていたそう。 お互いにお笑い好きとして、番組でお会いする前から認知していたという事実がまずおもしろかったです。 実際にお会いすると、そのかわいらしさと華やかさに圧倒されました。しかし、トークをすると数十秒で「同じ側の人間だ」とわかり安心。 その優しくて魅力的なお声から「中野twl」「ゲレロンステージ」「虹の黄昏」と地下お笑い用語が次々と飛び出すのが、とにかく幸せ。 私もカメラを忘れるほどお笑いトークに夢中になってしまい、後半は完全にライブ帰りにファミレスで語り合うお笑いファンふたりでした。 「徳原旅行」「レッドブルつばさ」「スクールガールファンタジー」「ファンファーレがきこえる」という4単語をひと息で言ってしまったことは少し反省しています。 そして、1時間の放送の中で桑原さんと私が『マイナビ Laughter Night』という単語を3万回くらい発していました。他局の番組なのに。 どの話をしても通じ合えることが終始うれしかったです。 今後、賞レース後にはお互いにメモを取ったノートを持ち寄って振り返り会をしたいです。 賞レースのメモを取っている人、自分以外で初めて会いました。 これは運命的な出会いな気がしています。 <桑原由気さんを表す四字熟語> 兼愛交利 人を区別なく広く愛し、互いに利益を与え合うこと。中国戦国時代の墨子の思想。(新明解四字熟語辞典より) 番組の感想メールも受付中です こうして振り返ると、バラエティに富んだ番組だということがより鮮明にわかりますね。 先日「奥森皐月の公私混同を通して、ゲストの方を好きになった」という声をいただけたのですが、この意見こそが目指している到着地。 ゲストの方を知らなかった人にも魅力が届くといいな、と思っています。 番組の感想などはすべて s-okumori@tv-asahi.co.jp までお送りください。 ゲスト案、奥森にオススメしたいエンタメ情報、叱咤激励、ふつおた、お悩み相談、大喜利のお題などなんでもOKです。 いつか大喜利をする日が来るのかと思うと恐ろしいのですが、募集しています。 桑原由気さんにお声がけしたのは視聴者の方からのメールがきっかけだったので、ぜひぜひゲスト案も送ってください。 お便りを読むのも毎週の楽しみになっています、よろしくお願いします。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 最新回公開直後の1時間は無料でご覧いただけるので、ぜひチェックしてみてください! (写真:『奥森皐月の公私混同』) 今後の放送とゲストもお楽しみに。 ちなみに、TPとの会話で「俺スナさん」という単語が何度も出てきていることだけご報告しておきます。 皆さん。どうにかついてきてください。 ツイッターも更新中、フォローよろしくお願いします! 奥森皐月です。本当に奥森です。ツイッターをはじめることに成功しました。傍若無人に公私混同な内容を発信していきたいですね。抱腹絶倒ツイートを見守ってください。 フォローと拡散、よろしくお願いしますー!(奥森) pic.twitter.com/zh0XsrlHku — 奥森皐月の公私混同は傍若無人【公式】 (@s_okumori) June 23, 2021
-
冠番組が始まりました|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第1回
テレ朝動画のオリジナル番組定額見放題サービス「logirl(ロガール)」で毎週配信中の「奥森皐月の公私混同」。そのスピンオフのテキスト版として、MCの奥森皐月が番組収録のウラ話や感想、各回のオススメポイントなどを自ら執筆。毎月1回更新する連載コラムです。 起きている時間は常に何かしらのお笑いに触れています みなさん、初めまして。奥森皐月と申します。 どこにでもいるような高校2年生の17歳の女の子。 唯一変わったところがあるとするならば、今年の4月から冠番組がスタートしたことくらいです。 『奥森皐月の公私混同』は、お笑い大好きJK奥森皐月が“プライベート”でハマっている人をゲストに招き、マニアックな質問をぶつけたり、お願いごとを聞いてもらう公私混同上等のトークバラエティ。 幼いころから芸能活動をしてきましたが、まさか高校2年生で自分の番組が持てるとは思いませんでした。人生序盤に起きた急展開です。 しかも、信じられないくらいの自由を授けられています。 番組タイトルも、コーナーの内容も、ゲストも、トークの内容も、私が「こうしたい!」と言ったとおりになる。 大金持ちの子供でもここまでの自由はないだろうなぁと思いながら毎週収録に望んでいます。喜ばしい限りなのですが。 テレ朝さんはいったいどうなっているのでしょう。ただの女子高生の夢を叶えてくれる素敵な会社です、最高ですね。 お笑いを観ることが趣味で、起きている時間は常に何かしらのお笑いに触れている。 テレビ・ラジオ・ライブ・ネット配信・SNS・紙媒体、すべてのお笑いを主食として生きてきた私は、とにかく芸人さんが好きです。 「公私混同」ではその中でも特にお話ししてみたい方をゲストにお呼びして、1時間トークをしています。今のところは芸人さんのゲストばかりですが、今後はいろいろな職種の方が来てくださるはず。 改めて見ると、相当ヤバイ番組名ですね。 ちなみに #公私混同 だけだと汚職のニュースが出てきてしまうので、感想を書いてくださるときは #奥森皐月の公私混同 でお願いいたします。 さて、この「収録後記」では番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを書いていきます。 番組の視聴と共に楽しんでいただければ何よりです。 #1 サスペンダーズ:「この人たちは売れそうだ!」という直感 初回のゲストがこのおふたりで本当によかった。 大事な大事な第1回をサスペンダーズさんが彩ってくださりました。 ライブでの発言の真意を聞いたり、2年前に古川さんが投稿していたnoteについて究明したり。 深過ぎる話題が飛び交い、「ライトな層を完全に置いていく宇宙一マニアックなトーク番組」という方向性が完全に体現された回だったと思います。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #1 サスペンダーズ』) 今年1月に発売された『anan』(マガジンハウス)にて、お笑い好きとして今年注目の芸人さんのひと組にサスペンダーズさんを挙げてから初の対面。 実際にお話しすると、ますます「この人たちは売れそうだ」と思いました。直感ですが。目標を話すときの熱量とパワーが凄まじかったです。 また、尻もちをつくところを見たいというお願いに応えていただいたとき、即興で作ってくださったセリフが本当におもしろくて感嘆してしまいました。 ネタの作り方や、お笑いに対する考えがロジカルで、なるほどと納得できるお話の連続。 「コント師は2度売れなくてはならない」というワードが出てきたときには内心ガッツポーズでした。そこまで話してくださった依藤さんの優しさに感謝です。 番組を観て、サスペンダーズさんに興味が湧いた方は、Podcast番組『サスペンダーズのモープッシュ!』、YouTube『サスペンダーズの稼げ年収1000万チャンネル』がおすすめ。 そして、最新のネタ動画『フクロウカフェ』も最高です。 奥森“モープッシュ”芸人、サスペンダーズさんが2021年大活躍することを願っています。 #2 寺田寛明:今からでも寺田さんの塾に通いたい 『R-1グランプリ2021』が終わって間もなく、ゲストに来ていただくならダントツで寺田寛明さんだろう。番組プロデューサー(TP)と意見が合致してお呼びしました。 共通のアイドルが好き、ラジオ好き、子供のころからお笑いが好き、オタク気質など共通点が多いと思っていたので、トークしたいことのリストも盛りだくさん。 帰り道に「ラジオのこと話しそびれた!」と思ったところ、まったく同じ内容をツイートされていたので笑ってしまいました。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #2 寺田寛明』) 現役で塾講師をしている寺田さんへの、授業をしてほしい!という私利私欲にまみれたお願いも叶えていただきました。 説明がわかりやすい、例文がおもしろ過ぎる、先生として優しい、の3点がそろっていて幸せでした。今からでも寺田さんの塾に通いたいです。 ただ、これが思いのほか視聴者のみなさまにも好評。塾の先生の一面を見ることは普段できないからなのでしょうか。 私宛てのファンレターに「寺田さんの塾講師の面を見せてくれてありがとう」という旨が書かれていて、公私混同とはいいものだなぁと思いました。 先月公開された寺田さんの電子書籍が素晴らしかったので、これを読んでいる心優しい文字好きのあなたにおすすめします。読みやすく、随所にある刺激的なエピソードがたまりませんでした。 寺田さん主催の大喜利ライブはとにかく楽しいです。大喜利ライブ初心者の方はぜひ一度観に行きましょう。 おもしろいし、髪がきれいです。すごくきれいなので生で見ていただきたい。本当にきれい。 #3 ランジャタイ:開始2分で再生を止めないでください 日に日に売れている気がします、ランジャタイさん。 5年ほど前からずっと好きで見ていた芸人さんなので、ゲストにお越しくださったのはうれしかったです。 椅子に座ってもらえない、拍手が止まらなくなってトークが進められない、質問に答えてくれない国崎さん。会話はできているのに、なぜか噛み合わなくて終始フワフワした空気になってしまう伊藤さん。 どちらも手強かったです。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #3 ランジャタイ』) この収録で初めてランジャタイさんを見た私のマネージャーさんは大きなショックを受けていました。「椅子に座らないって」と連絡が来たくらい。 ただ、トークの中でおふたりの性格や人柄が垣間見られる部分もありました。 開始2分で再生を止めなければ、ランジャタイさんのことがもっと好きになる1時間だったと思います。 オール巨人師匠の等身大パネルを持って来ていただき、実際に目の前で見せていただけたのはいい思い出です。 帰り際、丁寧におふたりで師匠のパネルを袋にしまっていた姿が印象的でした。 YouTube『ランジャタイもういっちょ』にもお邪魔したので併せて楽しんでいただければと思います。 「TPラーメン」という知らない人からするとまったく理解できないフレーズを最近おふたりが頻繁に話題にしていますが、『ランジャタイもういっちょ』を観ればわかりますよ。 ここまでブレイクしてきても、ずっと変わらないスタイルを貫いているのが格好いいです。 本物の欽ちゃんの前で『欽ちゃんの仮装大賞』のネタを披露する日はいつだろうか、と心待ちにしています。 #4 ママタルト:「まーごめ」を徹底解説 昨年一度共演させていただいたことや、収録前月に単独ライブを観に行ったこともあり、とても盛り上がりました。 今や爆笑問題の太田さんも使っている巷で話題の「まーごめ」というフレーズ。 大鶴肥満さん考案のこの言葉について、徹底解説をしてもらったのはこの番組が初ではないでしょうか。 今後より広まっていき、「新語大賞」を獲る可能性もあるまーごめ。 正しい使い方を知り、みなさんもまーごめライフを送りましょう。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #4 ママタルト』) また、大喜利キングの檜原さんには大喜利の極意と必勝法を教えていただきました。 令和ロマンさんのYouTubeで檜原さんが大喜利の解説をしている動画を観て感動したので、直々に学びたいと思いお願いした企画。 自分のキャラを利用することが重要とのことで、奥森皐月の活かし方を考えてくださりました。アドバイスを受けたとおりにやっただけで少し大喜利力が上がった気がします。 教えることも上手なのか...…名選手であり名監督です。 収録後に楽屋で、缶コーラを半分こしてマクドナルドのハンバーガーを食べていたとTPから聞きました。かわい過ぎやしませんか。 朗らかなオーラはおふたり共にじみ出ていますが、その何十倍か穏やかで素敵。 肥満さんの体重の半分くらいは優しさなのかもしれません。 単独ライブのネタが10本中10本おもしろいし、第3回単独ライブも控えているようだし、今後各所でママタルトさんを観られるのではないかと楽しみにしています。引きつづきまーごめです。 #5 まんじゅう大帝国:賞レースでもっと好成績であるべき芸人さん ゲストにお呼びするのはもちろん私が大好きな方々なのですが、まんじゅう大帝国さんはその中でも特にプライベートで応援している芸人さん。 昨年著書を出版された際にサイン会に行ったほど。初めてきちんとお話しすることができてうれしかったです。 (写真:『奥森皐月の公私混同 #5 まんじゅう大帝国』) 映画や本など、2020年は幅広く活躍されていたため、それぞれの裏話をお聞きしました。 ただ、一番聞けてよかったことが『M-1グランプリ』について。 賞レースでもっと好成績であるべき芸人さんだと個人的に思っていたのですが、おふたりも同じように思っているようで安心しました。 『M-1』の審査員さま、頼むのでまんじゅう大帝国を3回戦よりも先に進出させてください。 また、落語についてのお話も伺いました。 ネットラジオアプリGERA内で配信中の落語について語る番組『まんじゅう大帝国の落語良いとこ一度はおいで』が大好きです。 敷居が高い気がするし難しそう、なかなか入りにくかった落語の世界へまんじゅう大帝国さんに誘われました。 演目についての説明がわかりやすく、短くまとめて披露する落語は初心者にぴったり。たくさんの人にオススメしたいラジオ番組です。 本編では、落語を披露するために必要なことも教えていただいています。 高座名をつけてもらう時間がとても幸せでした。 戴いた名前、かなり気に入っているのでどこかで使う日がくるといいなぁと思っています。 映画や本など、2020年は幅広く活躍されていたため、それぞれの裏話をお聞きしました。 ただ、一番聞けてよかったことが『M-1グランプリ』について。 賞レースでもっと好成績であるべき芸人さんだと個人的に思っていたのですが、おふたりも同じように思っているようで安心しました。 『M-1』の審査員さま、頼むのでまんじゅう大帝国を3回戦よりも先に進出させてください。 また、落語についてのお話も伺いました。 ネットラジオアプリGERA内で配信中の落語について語る番組『まんじゅう大帝国の落語良いとこ一度はおいで』が大好きです。 敷居が高い気がするし難しそう、なかなか入りにくかった落語の世界へまんじゅう大帝国さんに誘われました。 演目についての説明がわかりやすく、短くまとめて披露する落語は初心者にぴったり。たくさんの人にオススメしたいラジオ番組です。 本編では、落語を披露するために必要なことも教えていただいています。 高座名をつけてもらう時間がとても幸せでした。 戴いた名前、かなり気に入っているのでどこかで使う日がくるといいなぁと思っています。 まんじゅう大帝国さん出演の映画『実りゆく』は去年観た作品の中でも一番感動したので、自粛のお供にみなさんもご覧ください。DVD発売中です。 著書『笑いの学校』も読み応えがあり、お笑い好きなら読むべき本だと思いました。 「公私混同」は毎週木曜18時に最新回が公開 途中途中に宣伝が挟まりましたが、これはあくまでも私の趣味です。 今後も頼まれてもいない告知をバシバシ入れていきます。 多くの人に、私の大好きな方々を観ていただきたいという一心で毎週番組の収録を楽しみにしています。 少し綺麗事を言い過ぎました。好きな人をお呼びして、私的なお願いまで叶えてもらいたいという気持ちもあります。公私混同なので。 (写真:『奥森皐月の公私混同』) 毎週木曜18時に最新回が公開されます。 最新回公開直後の1時間は無料でご覧いただけるので、ぜひよろしくお願いします。 次回の記事では、ムラムラタムラさんがカメラが回っていないときは信じられないくらいいい人だったことを中心に書く予定です。お楽しみに。
Daily logirl
撮り下ろし写真を、月曜〜金曜日に1枚ずつ公開
-
奥村桃夏(Daily logirl #203)
奥村桃夏(おくむら・ももか)2008年8月27日生まれ。京都府出身 Instagram:peach_summer827 X:@peach_summer827 撮影=時永大吾 ヘアメイク=佐藤愛梨 編集=中野 潤 【「Daily logirl」とは】 テレビ朝日の動画配信サービス「logirl」による私服グラビア。毎週ひとりをピックアップし、撮り下ろし写真を月曜〜金曜日に1枚ずつ公開します。
-
宇佐美えり(Daily logirl #202)
宇佐美えり(うさみ・えり)1997年10月7日生まれ。東京都出身 Instagram:eriusami_ X:@usamieri_ TikTok:eriusami_ 撮影=大靏 円 ヘアメイク=高良まどか 編集=中野 潤 【「Daily logirl」とは】 テレビ朝日の動画配信サービス「logirl」による私服グラビア。毎週ひとりをピックアップし、撮り下ろし写真を月曜〜金曜日に1枚ずつ公開します。
-
藤咲碧羽(Daily logirl #201)
藤咲碧羽(ふじさき・みう)2007年6月24日生まれ。神奈川県出身 Instagram:miu.fujisaki_official TikTok:miu_fujisaki_official 撮影=時永大吾 ヘアメイク=池田ふみ 編集協力=千葉由知(ribelo visualworks) 編集=中野 潤 【「Daily logirl」とは】 テレビ朝日の動画配信サービス「logirl」による私服グラビア。毎週ひとりをピックアップし、撮り下ろし写真を月曜〜金曜日に1枚ずつ公開します。
Dig for Enta!
注目を集める、さまざまなエンタメを“ディグ”!
-
なぜガンダムは長く愛されるのか?サブスク時代のアニメ新常識とムーブメント──DJ・KO KIMURA×アニメ評論家・藤津亮太
KO KIMURA 木村コウ(きむら・こう) 国内ダンスミュージック・シーンのトップDJ。クラブ創成期から現在までシーンをリードし、ナイトクラブでの活動のみならず、さまざまなアーティストのプロデュース、リミックス、J-WAVE『TOKYO M.A.A.D SPIN』(毎月第1金曜日27:00〜29:00)にてラジオDJとしてなど、国内外で活躍中。2025年、DJキャリア40周年を迎えた 藤津亮太(ふじつ・りょうた) アニメ評論家。地方紙記者、週刊誌編集を経てフリーのライターとなる。主な著書として『「アニメ評論家」宣言』(2003年/扶桑社、2022年/ちくま文庫)、『アニメと戦争』(2021年/日本評論社)、『アニメの輪郭』(2021年/青土社)などを出版。最新刊は2025年3月刊行の『富野由悠季論』(筑摩書房)。 目次2025年春アニメの注目作品は?サブスク時代に感じるアニメの当たり前作品が増えるにつれて、観ない理由を探す時代に愛され続けるガンダムの魅力とは?社会現象を巻き起こす名ゼリフ 2025年春アニメの注目作品は? ──前回から1年ぶりの対談になります。また春アニメの時期がやってきましたが、今年も豊富なラインナップです。さっそくおふたりの注目作を伺えますでしょうか? 木村 最近は、おじさんが活躍するアニメを好きになってしまいますね(笑)。 藤津 『片田舎のおっさん、剣聖になる』は評判いいんですよ。 木村 勢いでどんどん話が進んでいくから観やすいですよね。再放送の作品もありますが、次シリーズを予定しているから予習っぽい感じなんですかね? 藤津 『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』も7月に新シリーズ『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』を放送するし、『その着せ替え人形は恋をする』も、この次があるので新作に向けての“つなぎ”ですね。 ──藤津さんはどうですか? 藤津 オリジナルを中心に上げると『アポカリプスホテル』と『LAZARUS ラザロ』は、タイプは違う作品ですけどツカミはじゅうぶん強く、オリジナルアニメのおもしろさ──デザインやアイデアのユニークさを含めた目新しさ──を実感しています。『アポカリプスホテル』は人類が地球からいなくなっちゃってロボットだけがホテルを守っていて、そこに宇宙人がやってくるという設定。コメディではあるんだけれどもロボットが来るか来ないかわからないお客さんをずっと待っているという、ちょっと物悲しい要素が軸にあることで、すごく独特な味になっていますよね。 『LAZARUS ラザロ』は渡辺信一郎監督のアクションモノ。しかも『ジョン・ウィック』のアクション監督が協力していて、普通のアニメよりも、手の動きや足さばきとかが複雑で細かく、本当のアクションスターがやっているような仕上がりです。しかも主人公は驚異的身体能力があるのでパルクールみたいな動きができるという設定で、アクションだけでも話が持つというか、番組のウリとして成立しているんですよね。 木村 音楽とかもちゃんとしていて、海外で売るために作ったのかなあと観ながら考えていました。 藤津 もともと勧進元がカートゥーン ネットワークなので、そういう意味では海外の企画なんです。プロデューサーはJoseph Chou氏で、最近だと神山健治監督の『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』(2024年)をプロデュースしています。もともとはアメリカで働いていて、OVA『アニマトリックス』のプロデュースとかをしていたんです。その方が日本で会社を作り、プロデュースと実制作を手がけています。渡辺さんにアクションモノをやりませんか?とだいぶ前に声をかけたのもChouさんだと聞きました。そういう流れの中の企画なので、海外へのアプローチも最初から頭に入っていると思います。 木村 『サムライチャンプルー』(2004年)や『カウボーイビバップ』(1998年)とかも海外でのウケがいいですよね。 藤津 そうそう、海外で愛されています。映画『ブレードランナー 2049』(2017年)に合わせて短編『ブレードランナー ブラックアウト2022』(2017年)を監督したり、クランチロールなどでリリースされた『ブレードランナー』のシリーズ作品にクリエイティブプロデューサーでも参加していて、海外との関係性がけっこう深いんですよね。 木村 日本は“クールジャパン”と言ってアニメでアプローチしてはいるけど、10年前ぐらいはなかなか反応がないなと思っていたけど、今になってちゃんと反応がありますね。アニメだけでなく音楽も。YOASOBIやAdoはどっちかというとアニメの主題歌で向こうでウケた感じがありますもんね。 藤津 アニメとセットで認識が広がった感じですね。 木村 逆に、『LAZARUS ラザロ』は海外の音楽がそのまま鳴っているみたいなのもおもしろいですし。 藤津 『怪獣8号』はOP/EDに洋楽アーティストに書き下ろしでお願いをしていて。それには関係者のいろんなご苦労があったみたいですけど(笑)、そういうこともやれるような環境になってきたということですよね。向こうでもメリットがあるし、日本の視聴者も新鮮な気持ちになりますし。 木村 自分がDJだから気になるのかもしれないけど、音楽が違うとまた雰囲気がガラリと変わるから。あと、国でいうと中国と一緒になってきている作品も多いなと思っていて。それは中国が売る市場として大きいからもあるんでしょうけど。ただ『薬屋のひとりごと』はあっちからすると中国じゃないって言われているんですよね? 藤津 あれは中華「風」ファンタジーなんですよ! そんなに多くはないんですけど、日本の中で少女小説を中心に中華風ファンタジーのジャンルが成立していて、アニメ化された作品でいうと『十二国記』(2002年)とか『彩雲国物語』(2006年)とか。どちらも放送がNHKですね。あと少女マンガ原作だと『ふしぎ遊戯』(1995年)とか。 聞くところによると『薬屋のひとりごと』は、韓流ドラマファンも観ている人が多いらしいです。壬氏さまがわりと早い段階で猫猫にデレているんですけど、僕はもう少し緊張関係というかお互い嫌味なやりとりを延々とやっていてほしいなと思っていたのに……。それを女性ファンに言ったら、韓流ドラマの文脈で楽しんでいる人もいるから、お互い好きだということがハッキリわかっていたほうが盛り上がるんだという解説を受けて。そうか、そういうものなのかと(笑)。 木村 はははは、おもしろい! 藤津 そういう文脈で観ている人がけっこういると思うので、想像以上に視聴者の年齢層が広いみたいですよ。 木村 ストーリーもおもしろいし。そういえば15年くらい前にアニメ系の友人と話をしていたときに、その当時アニメを“難し系“と”空気系“で区別し出していて、世の中の大多数のアニメファンが“空気系“のほうに流れていってるので残念と話をしていて、当時、僕は“空気系“より圧倒的に“難し系“のほうが好きだったのでそれ推しだったのですが、今になって“難し系“を観なくなってきた気がして、いろいろ考えさせられます。 サブスク時代に感じるアニメの当たり前 ──今年の春アニメは、難し系と言われる作品がわりとあるような。 木村 たとえば『鬼人幻燈抄』は難し系に入るのかも。鬼が出てくる作品は昔からあるのに、『鬼滅の刃』の影響で定型が決まってしまって。もし『鬼滅』の前に放送されていたら、また反応が違っていたんでしょうけど。 藤津 鬼って、普通に怖く演出しようとするとストライクゾーンが狭くなっちゃうんでしょうね。しかも、ひとつ強い作品があると見る側も意識が引っ張られちゃいますよね。難し系でいうと『ムーンライズ』(Netflix)は原案が冲方丁(うぶかた・とう)さんで、がっつりSF。過去と未来が行ったり来たりしながら進んでいく語り口も特徴的で、難しいのは難しい。でもアクションシーンも多いし、WIT STUDIO制作なので絵のパワーがあって、牽引力は強いです。 木村 最近は軽いストーリーが多くて、女子高生の日常とか。 藤津 軽いっていう意味でいうと、今回ど真ん中なのが『ざつ旅-That's Journey-』と『mono』かな。『ざつ旅-That's Journey-』は思いつきで旅をするというだけの内容なんですが、観光案内的なおもしろさがありますよね。ほかの地方の人間からすると「こんなものあるんだ」と、ちょっと驚けるような、地方にしかないちょっとおもしろいものも出てくる。 木村 町おこしの一環としてやっている感じもありますよね。そういえば僕の地元の岐阜県の陶芸アニメもちょい前にあったような……。 藤津 多治見でやっていた『やくならマグカップも』(2021年)ですね。15分アニメなんだけど、後半は役者さんが現地で陶芸体験をしたりする、実写映像がついていて。 木村 そうそう! あとは前回もお話しした『聲の形』(2016年)とかね。舞台は僕の地元なんだけど、商店街に行くと、そのキャラクターを使ったチラシがあって。「このキャラクターを使うのに100万円かかった」と店主が言うんですよ(笑)。 藤津 『聲の形』はプロジェクトが大きいので、大変だったと思いますよ。 木村 あと新海誠監督の『君の名は。』は飛騨高山の町おこしになっていましたし。 藤津 岐阜でいうと、今回は『ウマ娘 シンデレラグレイ』のカサマツトレセン学園になっているのが、笠松町の笠松競馬場で。 木村 そうなんですね。実は『ウマ娘』は1クールで観るのをやめてしまって。僕はおじさんだから、かわいいところについていけなくて(笑)。 藤津 ああ、でも『ウマ娘』って、シリーズが続くにつれて、かわいい要素が減ってスポ根度合いが上がっていくんですよ。もともとはレースが終わったらライブをやるという設定があったんですけど、今はそのシーンがなくはないけど、アニメ的にはメインではない状況です(笑)。『ウマ娘』がおもしろいのは、史実をもとにレースシーンが構築されているので、運命のいたずらを導入しやすいんですよ。普通のフィクションでそれをやると「そこでこの展開ってあざとくない?」となるけど、思いどおりにいかないことが実際にあった、ということがベースになっているので、リアリティが保証された上で、ストーリーにドラマチックさが出るんです。 木村 リアリティ要素が増しているんですね。 ──今の話を聞いたら、『ウマ娘』を最初から観直したくなりました。ちなみに、今回『恋するワンピース』が深夜枠に移動となり、一部で話題になっていましたね。 木村 配信で観られるから、子供向けアニメも深夜にやってもいいだろうとなったのかな。これは深夜にやるやつ?夕方にやったほうがいいんじゃないの?と思ったり。 藤津 昔は時間帯で視聴者のセグメントを分けていたんです。たとえば深夜に起きているのは若者で、朝早く起きているのはお母さんと子供とか。今やタイムシフトで見るのが当たり前になっちゃったので、そのセグメントが無効化してきているんですよね。昔は小学校高学年ぐらいの子が夕方のアニメを見てアニメファンになっていくという回路が多かった。今はタイトルを検索して配信で観られちゃうので、たまに「子供のお前が見るには大人向けすぎるんじゃないかな?」という作品も混ざってくる可能性も(笑)。別回路ができちゃっているんですよね。 昔は小学生のころは大人向けで観られなかったけど、中学生になったら深夜アニメを録画して観るようになったという、階段を登るみたいにちょっとずつ大人っぽいものを観ていくような感じだった。けど、今はもっと自由に観られる時代になっているんですよね。それはそれで今の時代のアニメの楽しみ方ではあるけれど、同時に、ミスマッチが起きる可能性があり得るよなって。 ──TVerやサブスクと、いつでもアニメを観られる環境が増えましたもんね。 木村 そうですね。配信だと最近は30秒スキップやOP/EDをスキップする効果があったりして。作品によってはスキップされないようにわざわざ絵を変えていたり、主題歌と主題歌の間でストーリーを入れていたりと工夫していて。 藤津 エンディングはスタッフのクレジットが載るので、自動的に飛ばされるとつらい。誰が担当してたんだっけ?と確認できなくて。設定で変えられるけど、デフォルトだとそうなっちゃう。映画もエンドロールを飛ばそうとするじゃないですか。 木村 そこ飛ばすのは寂しいですよね。この人が作っている作品だからこうなのかとかがあるから。そして話は飛びますが最近は音楽の制作をしているところがだいたい決まってきているので、タイアップでつけたみたいな感じが見えてしまうことも……。商業っぽさを感じて、逆に入っていけないものがあって。 藤津 大人の都合が見えちゃうとノリきれないんですね(笑)。テレビの話に戻ると、僕は東京工芸大学という学校で少しだけ教えているんですけど、毎年生徒にどういう試聴環境なのかの簡単なアンケートを取っています。それでいうとここ何年か傾向がはっきりして、基本的にひとり暮らしの人はテレビを持っていないから、タブレットかパソコンで観ている。実家で暮らしている子は、居間にテレビがあって録画機や再生機がある。じゃあ果たして、今この若い世代が大人になって家族を持ったとき、その居間にテレビを置くのかどうかという問題が見えるんですよ。 木村 買わないんじゃないですか? それかモニターとしてテレビを買う人はいるかもです。 藤津 そうなんですよね。あと、留学生の子が「うちの家は居間にテレビがありますが、誰もテレビを見ません」と。要は子供が成長すると自分用のテレビを部屋に置くか、PCやタブレットなりで各自が自分の機器で観ている。居間のテレビはよほどのことがない限りつけなくなるみたいで。ここから20年ぐらいテレビを持たない家がすごく増える可能性があるなあと。 木村 チャンネルの取り合いがないんですね……。よりいっそうネットの配信が重要になってきますよね。そうなるとその配信形態に合ったフォーマットが必要になってくるというか。音楽の場合だと、10年以上前にアメリカのスタンフォード大学で、レコードとデジタルデータのMP3の音はどっちがいいかというアンケートを取ったみたいで。そのころからもうほとんどの人が音楽をiTunesとかで聴いているからMP3のような圧縮音源に慣れちゃっていて。だから、若い子はレコードよりもデジタル圧縮音源のほうがいいと答えたみたい。なじみがあるから、そっちのほうがいい音だって。だからアニメもそのうち同じような感じになるのかも。最近は1.5倍速とかで観ている人も多いと思うので、それで本当のアニメの作家性というものが全部見られるかはわからないですけど。 藤津 ただ、内容をチェックするぶんにはいいのかもしれないですが。 作品が増えるにつれて、観ない理由を探す時代に ──タイパを重視する時代でもあり、視聴の簡略化が目立ってきていますからね。最近だと事前情報だけで観る観ないを判断する“ゼロ話切り”という言葉も聞きます。実際、どう思いますか? 木村 僕は、1話だけでも観てほしいかな。 藤津 最近は作品数が多いので、観ることにもなるべく努力しないといけなくて。2000年代初頭の時点であるアニメ誌の編集さんが言ってたんですけど、今や“観ない理由”を探す時代になったんだと。昔は観る理由を探していたけど、観ない理由を探すと。それが“ゼロ話切り”という言葉に置き換わったのかなって。 ──なるほど。時代によって視聴者の意識も変わってきますよね。作品のジャンルでいうと、一時期は異世界転生モノが増えていましたが、その時代の日本社会とも関係があったのでしょうか? 貧困などの問題でほかの人生を歩みたいという願望を異世界転生モノに重ねている人もいるという記事を読みまして。 木村 もちろん、人生うまくいかないこともあると思うんですけど──ここ数十年で世の中が変わっていてよりいろいろと抑圧されていることもあるし、それで自分が本当にやりたいことをやりたいという気持ちが異世界転生モノに惹かれるということになるかもしれないですね。 藤津 もともと異世界転生モノは、なろう系(※)なんていわれたとおり、小説投稿サイトを中心に広がっていって、当初の読者は氷河期世代が中心だったはず。その世代の「思いどおりにいかなくてつらいなあ」っていう気持ちを受け止めるフィクションだったと思うんです。そうしてその結果、あのジャンルが大量に生まれて、いろんなメディアに出ていったことで、今度は小学生とかも読むようになって。浸透と拡散とでもいえばいいんでしょうかね。スタートは世代の置かれている環境が反映されていたんだろうと思うんですけど、それがジャンルになってしまうと間口が広くなって、いろんな作品が出てきて、当初のターゲットとも異なる子供も読むようになっちゃう。『転生したらスライムだった件』なんかは今や小学生のファンがすごくいるんですよね。国作りの話だから、彼らはあの作品を『三国志』みたいな感覚で読んでいるんですよ。 (※小説投稿サイト『小説家になろう』発の原作の作品) 木村 短いエピソード内で事件とかいろんなことが起こりまくって、刺激が強いんですよね。子供たちも「次は何をやるだろう?」ってのめり込む。『片田舎のおっさん、剣聖になる』も同じで、どんどんいろんなことがあって、次の展開を楽しみだと思わせてくれる。ただ、あまりにもアニメの作品数が多すぎて……いい意味ですけど。これは数を作らなきゃいけなくて業界にプレッシャーがかかっているんですか? 藤津 難しいんですよ。制作会社は基本的には制作を請け負う側なので。『鬼滅』以降、原作側がアニメ化に対してのモチベーションが上がっているんですよね。一方で企画は、10倍の予算で1本作るよりは、10分の1の予算で作ったほうが絶対にリスクヘッジができるので「数は力」みたいなところがあって。だからお金を回している側からすると、数を減らす理由がないんですよね。しかも、原作元も意欲があるから。ただ作る側が過剰に大変だということに…… 木村 そうなんですね。あと、前は少女マンガが原作のアニメがけっこうあった気がしましたけど。 藤津 前期だと『ハニーレモンソーダ』がそうですね。今回だと『謎解きはディナーのあとで』が「ノイタミナ」でアニメ化されています。これは小説原作ですが、キャラクターデザインや雰囲気は、コメディ寄りの少女マンガといったテイストで。気取った警察の警部の声優は宮野真守さんで。しかも、おもしろいほうの宮野さんでやっている。だから少女マンガそのものではなくても、「少女マンガっぽいもの」へのニーズはあると思うんですよね。 木村 やっぱり女性のアニメ視聴層は、パーセンテージ的に多いんですか? 藤津 多いと思います! あくまで傾向で例外もあると思うんですが、女性ファンって好きになると友達を誘いがちなんです。なので、熱気が盛り上がるときはS字曲線なんですよ。ちなみに下がるときは逆のプロセスになるので、そちらも早くて(小声)。 あの子が離れたなら私も離れようかなって。あくまで一般論的で例外もあるでしょうけど、マクロで見ると女性はそういう行動を取りがちのようです。男性は友人に布教しても、そこまでではないんですよね。わりとバラバラというか、“分子間力”が弱い感じ。女性は“分子間力”が強くて、「一緒に楽しもうよ!」となって塊が生まれる。だから女性ファンがつくとグッと温度が上がる。そういうことで女性ファンが目立って見えるというのがあるかもしれません。 木村 だいたい女の子のほうが先にハマって、そのまわりの男の子が釣られてハマっていく時期には女の子はもう飽きているという(笑)。男性のほうがハマっていったらわりと長く続ける人が多いのかなって。おもしろいものを見つけようという意識は女性のほうがすごい感じがしますね。 愛され続けるガンダムの魅力とは? ──おもしろい傾向ですよね。話は変わるのですが、前回の春アニメ対談の際に、春アニメといえば『ガンダム』とふたりともおっしゃっていました。今春は新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』がスタートしています。さらに先日、藤津さんが『富野由悠季論』も刊行されましたので、ガンダム作品についてもたっぷり聞いていけたらと思っています。 藤津 ようやく映画『機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning』(2025年)と違う展開に。1クールだけという噂がありますが、これからどうなっていくのか楽しみですね。 木村 ガンダムなのに1クールって珍しいですよね。 藤津 その前の『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(2022年)も結局2クールだったので、短かったんですよね。それまでは基本は1年ベースで作ってきたので。 木村 『機動戦士ガンダム00』(2007年)も途中で一回終わって、またやっていましたね。 藤津 あれはもともと1年の企画なんだけど、だんだん求められるものが高度になってきたので連続で制作するとすごく大変になっちゃう。なので、半年ブレイクを入れましょうとなったみたいです。 木村 そのころから、長い作品は途中で休むようになりましたよね。1クールとか2クール休んで。 藤津 分割4クールとか分割2クールといったパターンですね。やっぱり1年間は大変みたいで……マラソンなのでね。庵野秀明監督は「テレビシリーズというのは穴の開いた船みたいなもので。出航した瞬間から水が溜まり始めるから、沈むまでに目的地にたどり着けるかどうかが勝負。なのでダメージコントロールをしていかないと」みたいな話をされていて。なので、1年作り続けるってそれぐらい大変なんですよね。 木村 ただ、今回は12話で収めちゃうのはなかなか厳しいですよね。世界観も広がっているので。ファーストガンダム(『機動戦士ガンダム』/1979年)と同じだけど、違う話。頭から設定が変わっているから。あとは若き日のシャア少佐(シャア・アズナブル)の声が変わった時点で、だいぶ印象が違いますよね。 藤津 シャアっぽいお芝居ができる若手の方を選んだって感じですよね。 木村 サンライズにはないスタジオカラーっぽさが入っていて、新しい感じなのがおもしろいです。あとオリジナルストーリーだから、先がわからないところも。 藤津 オリジナルってそこがおもしろいところでね。あと、今回スタジオカラーが制作の中心なのがインパクトがある。サンライズといえばガンダムの会社で、ある時期までは社内である程度キャリアを積んできた人がガンダムの監督をやるということが普通だったわけで。たとえば、『機動戦士ガンダムSEED』(2002年)の福田己津央さんはサンライズの中で設定制作という仕事をやって、そのあと、演出家になり監督作『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』(1991年)をヒットさせた上での『ガンダム』でした。ある意味満を持しての登板ですよね。それで実際に実績を出したという。 そのあとから風を変えに行って、サンライズでは演出家にはなっていなかった水島精二さんとか長井龍雪さんとか、サンライズに縁はあっても、生え抜きという感じではない人を監督にするようになった。さらにはゲーム会社レベルファイブの日野晃博さんをシリーズ構成に起用したこともあった。あの時期は、次に進んだなという印象でした。『水星の魔女』もその延長線上の印象です。さらに今回の座組は『ガンダム』をどうやって長く生きたタイトルにしていくかというときに、サンライズはある意味ガンダムのプロデュースをすればいい。業界全体で見て、そのとき一番おもしろい人に作ってもらうということを考えているのかなと。 木村 だいぶ変わってきましたもんね。特に『新機動戦記ガンダムW』(1995年)あたりからは、もう全体が変わってしまって。僕は好きなんですが。 ──映画『機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning』は情報がないままでしたけど、観たときの印象はどうでした? 藤津 僕は前半のインパクトがすごすぎて、後半のマチュ(アマテ・ユズリハ)が出てきてからの記憶が飛んでしまいました(笑)。あと劇伴と効果音が元のシリーズと同じなのもインパクトが強かった。 木村 効果音、気になりましたよね! ちゃんとうまく使っていましたし。 ──キャラクターデザインはどうでした? 木村 後期の『新世紀エヴァンゲリオン』を彷彿させましたね。 藤津 竹さんというイラストレーターにお願いされてるんですけど、思いきったなと。記号化されたタイプの方だからリアリティが求められる世界観になじむか不安だったけど、動き出して声がつくとその世界にいるような感じになりました。アニメ化にあたって、斜めのアングルとか、影のつけ方を工夫して実在感が感じられるようにする調節をしているのもうまくいっているのかなと。木村さん、メカはどうでした? 木村 違和感はなかったですけど、細身で鋭角な感じが大河原邦男さんのデザインではなくて、全体がスタジオカラーのセンスだなと思って観ていました。 そうだ、ガンダムシリーズでずっと気になっていたんですけど、『GQuuuuuuX』って英語が不思議ですよね。たとえば、エグザベ・オリベというキャラクターがいますけど、スペイン語だと“シャビエル”で、英語だと“ザビエル”とかで。けど“エグザベ”はどこの言葉?みたいな……。 藤津 今となってはわりと忘れられちゃっているんですけど、最初『ガンダム』の設定では国家がなくなって「地球連邦」になったことで、人種もある程度混合されているんですね。だから言語もいろいろ変わっているであろうことが想定されていたっぽい。もちろん1970年代の作品なのでそこまで徹底はされていないですが。それがシリーズを制作していく過程で、だんだん現実味を増していくにあたって、用語も全部英語だったり、ドイツ語が入ってきたりした。でも富野監督自身は、いろんな固有名詞のモジリを使ったりして世界観を作ってる。「レコンキスタ」じゃなくて「レコンギスタ」にする、とか。だから「出雲(いずも)」じゃなくて「イズマ」にしたりするのは、ちょっと富野さんらしさに通じるものを感じる言葉遣いでもありますね。 木村 そうだったんですね。これは何語だろうな?といろいろと考えたりしていて(笑)。 社会現象を巻き起こす名ゼリフ ──そんな背景があったんですね……勉強になります。著書『富野由悠季論』では印象的な「富野ゼリフ」にも触れていらっしゃいます。記憶に残るセリフはありますか? 木村 やっぱりファーストガンダムの「坊やだからさ」かな。 藤津 『GQuuuuuuX』で、シャアがホワイトベースのブリッジを破壊するとき「運がなかったのだ」みたいなことを言うんです。最初の『機動戦士ガンダム』では、シャアは「私もよくよく運のない男だ」と言ってるんです。そのセリフの本歌取りとして『GQuuuuuuX』のセリフがあるのかなと。ちなみに、もともとの「運がよかった」のセリフは、脚本にはないので、富野さんが絵コンテで書いているセリフだと思うんです。そもそも敵・連邦軍の「V作戦」の秘密兵器であるホワイトベースを見つけちゃったんだから、本当はシャアは運がいいはず。なのにそれをわざわざ「よくよく運のない男だ」と。その持って回った感じが、少なくとも最初の『ガンダム』のシャアなんですよね。そこからすると、もういっぺんひねった結果、『GQuuuuuuX』で、ひねりのないストレートな発言になっているのがおもしろいですね(笑)。 ……なので印象に残るセリフというと、第1話最後の「認めたくないものだな」もそうなんですが、この持って回ったシャアのセリフはまず頭に浮かびますね。富野ゼリフは耳に引っかかる言葉遣いが多いですよね。 木村 今の時代でも、なんかの拍子で使われることもありますからね。 藤津 一定世代までは、歌舞伎とか大衆演劇、その流れにある時代劇が基礎教養だったと思うんですよ。『国定忠治』の「赤城の山も今宵限り」とか『忠臣蔵』の「殿中でござる」とか。 ──白浪五人男の「知らざあ言って聞かせやしょう」とか。 藤津 ある時期まではドリフ(ザ・ドリフターズ)とかがコントでパロディで使っていたりもしたので、歌舞伎を見たことがなくても「そういうものがあるんだなあ」と漠然とではあるけれど、教養として受け止めていたんですよね。それがどこかで『ガンダム』に置き換わったような印象です。 ──アムロ・レイが殴られたときのセリフとかも、コントで使われちゃう時代ですからね。 木村 自分たちはファーストガンダムの影響を受けて育ってきていますけど、今の人たち、若い子たちはそうじゃないから。昔だと『スター・ウォーズ』とか『ターミネーター』とかの映画を元にした社会現象みたいなのがあったんですが、今は世の中すべてがそれになっちゃうことってあまりないですよね。今の子たちは『鬼滅』とかなのかな? 藤津 『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020年)は興行収入400億円ぐらいなので、当時10歳ぐらいだった子にはでかいムーブメントに見えていたと思います。あと、今10代後半〜20代前半ぐらいだと『ハリー・ポッター』の存在感がすごかったはず。ただ、今のほうがコンテンツの数自体が多いので、昔のように大人が巻き込まれるほどではないのかも。 木村 大人にはでかく見えないけど、子供たちにとっては大きかったんでしょうね。自分たちも子供のころに見ていたものは、すごいものに見えましたもんね。 藤津 ですが、昔よりも国民的大ヒットは生まれにくくなってきていると思います。そこは昔と今との違いかもです。 木村 名ゼリフみたいなものも、大人たちは気づいていなくて。だけど若い子たちの間では名ゼリフになっていくのかなって。 藤津 『鬼滅』で、冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)が言っていた「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」とかは、おそらくその世代の子供たちだと何も言わずに通じているはずなんですよね。今の20歳ぐらいの子になるかな。彼らが40歳ぐらいになるころは、そのあたりがもっと広がっていてもおかしくないかなって。だから時間の問題じゃないですかね。 僕自身の肌感覚でも最初の『機動戦士ガンダム』がこんなに一般的にネタにされるようになってきたのは『∀ガンダム』(1999年)が終わったあとぐらいの印象なんです。21世紀になってから一般性を帯びてきて、風景になってきたというか。それまではマニアックなお遊びみたいだった。 ──この対談を読んで『GQuuuuuuX』だけでなく、これまでのガンダムシリーズも観ようと思う読者がいると思います。これからチャレンジしてみようかなと思っている人に、最低限ここを観ておいたらいいというシリーズがあれば伺いたいなと。 木村 『GQuuuuuuX』を観るんだったら、ファーストガンダム(『機動戦士ガンダム』)は観ないと。どこが変わったのかがわからないと思いますね。 藤津 『機動戦士ガンダム』は全43話あるから、その中でも絞るなら第39話「ニュータイプ、シャリア・ブル」、第41話「光る宇宙」かな。そこを観ておくと、元ネタがわかる。 ──ファーストガンダム以外は? 木村 バトルという点では『機動武闘伝Gガンダム』(1994年)かな。ただ、ガンダムバトルでも少し違うし参考にはならないかもです(笑)。 藤津 ガンダムではないんですが、監督である鶴巻和哉さんの作風を知りたかったら、『フリクリ』(2000年)と『トップをねらえ2!』(2006年)かな。両方とも6話ずつなので観やすい。特に『トップをねらえ2!』は、前に『トップをねらえ!』(1988年)という作品があった上で鶴巻さんがどう捻ったかがポイントなので、これはけっこう『ガンダム』と『GQuuuuuuX』の関係と似ているところがある。あ、似ているという意味では『ガンダム』の第1話も必要かな。完コピ具合の驚きも含めて。そうなると、第1話、第39話、第41話かな。 木村 始めを知っていると楽しめますよね。ミノフスキー粒子のこととか、ファーストガンダムを踏襲していますし。あとは、『機動戦士Ζガンダム』(1985年)と『機動戦士ガンダムΖΖ』(1986年)ではニュータイプの苦悩なども出てきますから。ニュータイプを知っておかないと、話がわからなくなってくるので、勉強してもらいたいですね。 藤津 だから今回、ニュータイプをテーマにしてやるんだって驚きました。大変なところに手を突っ込んできたなと(笑)。 撮影=Jumpei Yamada 取材・文・編集=宇田川佳奈枝
-
永野芽郁が演じることをやめない理由「お芝居は“生きがい”に近いもの」
永野芽郁(ながの・めい) 1999年9月24日、東京都出身。朝のNHK連続テレビ小説『半分、青い。』(2018年)、『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(2021年/日本テレビ)など話題作に多数出演。近年の出演作に映画『はたらく細胞』(2024年)、配信ドラマ『晴れたらいいね』(2025年/テレビ東京)など。現在、TBS4月期日曜劇場ドラマ『キャスター』に出演中。 X:@mei_nagano0924 Instagram:mei_nagano0924official 2024年7月に俳優として15周年を迎えた永野芽郁。朝ドラヒロインを経て数々のドラマや映画で役を演じ、俳優として魅力を増し続けている彼女が、2025年5月16日より公開される映画『かくかくしかじか』で主人公・林明子を演じる。本作は漫画家・東村アキコの自伝的作品であり、学生時代から9年間にもわたる恩師との日々を描いた物語。映像化を断り続けていた東村を動かしたのは、永野芽郁と恩師・日高先生を演じる大泉洋の存在だ。“このふたりでなければ成立しなかった(東村)”と奇跡の映画化が実現した本作を通して、永野芽郁が作品に捧げた想いや、演じることで大切にしていることや信念などを知ることができた。なぜ人は永野芽郁に魅了されるのか?──その理由が明らかになる。 (※本取材は2025年2月に実施) 目次東村アキコ先生から受け取った“人生のバトン”永野芽郁にとっての“恩師”と呼べる人 どんなにしんどくても「終わらないものはない」役者を辞めようと思ったとき、いつも作品が引き止めてくれた 東村アキコ先生から受け取った“人生のバトン” ──漫画家・東村アキコさんが自身の実話をもとにして描かれたマンガ『かくかくしかじか』が、連載終了から10年の時を経て、ついに実写映画化されます。原作をお読みになって、どんな印象を持ちましたか? 永野 初めて原作を読んだとき、中盤まではただただ笑っていたんです。「こういう日常ってあるよね」とか、おもしろいエピソードも随所にちりばめられていて「こんなことが起こる!?」と楽しく読んでいたんですが、物語が進むにつれてだんだんと心が引っ張られていきました。人との出会いで人生って大きく変わったりするなとも思いましたし、大切な人に伝えなきゃいけないことって、やっぱり伝えたいと思ったときに伝えなきゃいけないんだなとも思い、気がついたら泣いていました。それが東村先生の実話というのが、なによりすごいなって感じました。 ──今作は完璧なかたちでの実現は不可能だろうという理由から、映像化を断り続けてきた東村さんが「永野芽郁さんが明子をやってくださるのなら」と快諾されたと聞きました。作品のオファーを受けたときのお気持ちと、実際に演じられてから気持ちの変化はありましたか? 永野 東村先生の人生を描いた作品に、私が携われると決まったときはただただ光栄でしたが、それと同時に緊張もありましたね。東村先生が過ごしてきた時間を壊してしまうかもしれない、というプレッシャーもあったので「どうしようかな」という気持ちは、撮影前から終わったあとも抱いていました。でも、現場には常に東村先生がいてくださったので、大泉洋さん演じるスパルタな絵画教師・日高先生とのかけ合いだったり、明子の動き方だったり、どうしたら明子らしさが出るかなと思ったときに、いつもその場でアドバイスをいただけました。友達とカラオケで盛り上がるシーンでも「私はこうやってノッていたんだよ」と直接教えてくださったので、東村先生に明子像を作ってもらえた感覚があります。あとは、常に大泉さんが日高先生として向き合ってくださっていたので、私はみなさんに身を任せる気持ちで撮影に臨んでいました。 ──今回、東村さん自らが脚本を手がけられたことも大きなポイントですね。原作との違いは感じましたか? 永野 原作と脚本でもちろん違う部分もありましたが、先生が物語として脚本に参加されながらも、生身の人間が演じるにあたって「こうしたほうがよりおもしろくなる」とか「ふたりのよさが伝わるんじゃないか」と、試行錯誤して何度も脚本を調整してくださりました。そのため、原作との違いに驚くことはなく、すんなりと読んではいたんですけど、日高先生が明子へ檄を飛ばすように発する「(絵を)描け!」という言葉がより心に残るような脚本になっていた印象です。完成した映画を観終わったあとに、あの「描け!」が頭の中で思い出されただけで、なんかグッときて泣きそうになりました。誰かのひと言で突き動かされる瞬間って、誰にでもあると思うので、とても素敵な作品になったと思います。 ──明子は思ったように絵が描けなくて落ち込んだり、精神的に絵と向き合うことが難しくなったりすると、日高先生が決まって「描け!」とひと言、喝を入れる。その言葉は非常にシンプルなんだけど、物語が進むに従って深みが増していきますよね。 永野 そうなんですよね! シンプルな言葉でも人に伝わることってあるんだなって思います。 ──永野さんはこれまでにも『俺物語!!』(2015年)、『マイ・ブロークン・マリコ』(2022年)、『はたらく細胞』(2024年)など、マンガ原作の作品に多数出演されています。今回は原作・東村先生が書かれた脚本や、目の前にいるご本人など、役を作るにあたって何が一番の指針になりましたか? 永野 映画なので割合的には脚本を軸にする部分が一番大きかったですけど、東村先生がいろんな思いを抱えながらかたちにされたマンガ原作のひとコマひとコマや、物語の流れは常に研究していました。それでいて、私からすれば明子が大人になった東村先生ご本人が目の前にいてくださるので、「こういう動きをしたほうが、今の東村先生に近いかな」とひっそり観察してお芝居に反映させました。 ──東村先生は「明子はかなり難しい役だと思う。ふわふわしただけの女の子ではないから」「でも、芽郁ちゃんなら絶対にうまく演じられると思った」と話していましたが、永野さんは明子という人物に対してどんな印象をお持ちですか? 永野 明子は飄々(ひょうひょう)としていて「なんとかなるでしょ!」と思える楽観的な強さがありつつ、意外と繊細な印象があります。どうして先生は、私だったら演じられると思ってくださったのかをまだ聞けていないんですけど、でも先生がそうって言ってくださることがすべてだと思ってがんばりました。 永野芽郁にとっての“恩師”と呼べる人 ──今作は東村さんの9年間にわたる実話の物語ということで、永野さんは明子の高校時代から漫画家としてデビューされるまでをおひとりで演じられました。 永野 出演のお話をいただいたときに、まず不安に思ったのが年齢の変化だったんですよ。高校生から大人になるまでを演じるのは、朝ドラ(『半分、青い。』/2018年)以来なんです。明子の高校時代はノーメイクでナチュラルにやればなんとかなるかなと思いつつ、じゃあメイクを濃くしたから大人に見えるのか?といったらそういうわけでもない。かといって、メイクをしなかったら高校時代との変化が難しいということで、衣装やヘアメイクもそうですし、歩き方や姿勢、声のトーンなどを関(和亮)監督と細かく話し合いながら調整していきましたね。 ──綿密に役を作られていく中で、明子がご自身の中に入ってきたと思えた瞬間はありましたか? 永野 先生が実際にマンガを描かれるとき、椅子の上に足を乗せるんです。最初は「それって描きづらくないのかな?」と思っていたのですが、いざ自分がやってみたら、慣れない姿勢だからかなり描きづらかったんですけど、カメラが回っていないときに、トーン貼りをやっていたら「あ、自然に椅子に足を乗せてる」と思って。そのときに明子の雰囲気をつかめているのかもしれないと思いました。 ──改めて、明子と日高先生の関係についても教えてください。 永野 明子が高校3年生のときに「美大に行くために絵の勉強をしなきゃ」と思って通い始めたのが、日高先生の絵画教室。当時は「怖い」「なんだ、この人は」という印象しかなかったですけど、時間が経つにつれて、恩師だと思うんですよね。誰もがあとになって気づくこととか、大人になって理解したり、その時間に寄り添えたりすることってあると思うんですけど、まさにそれを象徴するふたりだと思いました。 ──撮影現場の雰囲気はいかがでしたか? 永野 大泉さんとは現場でずっとしゃべっていましたね。常に現場の雰囲気を明るくしてくださっていました。ただ、ドライで撮影の段取りが始まるとガラッと空気が変わって、急に怖い先生になるんです。普段の優しくてみんなを盛り上げてくれた大泉さんと、心はまっすぐで優しいけど一見とても怖く見える日高先生とのギャップがすごくて、常に大泉さんの放つ空気に引っ張ってもらいながら撮影していました。 ──今作は笑えるシーンから泣けるシーンまで、明子と日高先生の関係性が見られる名場面がたくさんあります。その中で永野さんが印象に残っているシーンは? 永野 完成した映画を観て、強く印象的に残ったのは明子と日高先生がバス停で出会う場面。その場はあまり考えずに撮っていたんですけど、こんなに印象に残るものなんだなって観終わってから思いました。そのバス停で明子は、つかなければよかったと思う嘘をついてしまうのですが、あのバス停が始まりであり通過点でもあるので、私の中で心に響きましたね。 ──明子にとっての日高先生のように、永野さんご自身も怖いけど好きだと思える恩師はいますか? 永野 中学時代の先生が、当時は怖くて苦手だったんです。何をやっても注意され、ひと言しゃべるだけで怒られるみたいな感じでした。ただ、卒業が近くなって最後にみんなで出し物をやる機会に、先生が「あなたが学年みんなをまとめなさい」と言ってくれたことがありました。当初は「なんで私?」と不思議だったんですけど、先生は私のことを信頼してくれていて、だからこその厳しさだったんだなって感じました。そこからいい先生だなと思えるようになって、今でもご飯に行く仲なんですけど、当時の話をすると先生は「芽郁には厳しく怒りすぎたな。今も反省してる」と言っていて。私は「アレはアレでおもしろかったね!」と言って、今では笑い話になっているんです。明子と日高先生の関係性とは違いますけど、きっとこの人が恩師なんだろうなと思います。 ──金沢や宮崎など地方ロケが多かったそうですが、振り返って印象に残っていることはありますか? 永野 撮影をした金沢美術工芸大学は、東村先生の母校なんです。撮影時には旧校舎が取り壊されることが決まっていたんですけど、最後にということで、協力してくださって。先生が過ごされた地で撮影できて、エネルギーをもらいましたし、ありがたかったですね。そのあとに「金沢のおいしい回転寿司屋さんがある」と聞いて、みんなで食べに行き、それもすごく楽しかったです。金沢には2、3日しかいなかったんですけど、いい思い出ができたなと思います。 宮崎には長い時間滞在していたんですけど、あの穏やかな雰囲気にみんなが引っ張られていました。それとまわりは穏やかなのに絵画教室の中は張り詰めた空気が漂っているという対比が、おもしろかったです。宮崎には先生のご親族や親戚の方もたくさんいらっしゃるので、代わる代わるみなさんが現場に来てくださって、「この感じ懐かしい!」「そんなこともあったな!」なんて言っていたぐらい、マンガと同じ風景がたくさん出てくるので、それぞれの地にこの作品は助けられたなと思います。 ──ちなみに、作品の中で「タイムマシンがあったら、昔の私に竹刀をお見舞いしたい」という明子のナレーションが流れます。もし永野さんが過去に戻れるなら、このときの自分に喝を入れたいと思う場面はありますか? 永野 小学生のころに映画の撮影をしていたときに、マネージャーさんに「芽郁ちゃん、楽屋でテレビばっかり見てないで、ちゃんと台本を読みなさい」と言われたんです。ただ私はセリフを覚えてきていたので「なんで覚えているのに読む必要があるんだろう?」と思っていたら、母親から電話がかかってきて「芽郁、台本を読みなよ」と言われたんです。 ──お母さんに関しては、永野さんが事前に台本を読んでいたことを知っていたんじゃないですか? 永野 母親はいまだに言うんですけど、私が台本を読んでる姿を一回も見たことないらしいんですよ。それもあってみんながすごく心配になっちゃったみたいで。そのあと、マネージャーさんが「台本を読みなさい」と言って、しばらくして戻ってきたら私が寝てたみたいで(笑)。 ──ははは! テレビを観るよりもひどくなってるじゃないですか。 永野 起きたらみんなにすごく怒られました。あのときに寝ないで、嘘でも台本を開いておけばよかったのになっていうのは思います。 ──でも、ちゃんと覚えていたわけですよね。 永野 そうなんです、ちゃんと覚えていたんです! でも、あのころは自分も子供だったので「覚えたもん!」でしかなかったんですけど、もうちょっと台本を一生懸命読み解くとか、いろいろやれることはあったかもしれないのに、「読んだら?」と言ってくれた親切さを無視して寝るなんて、すごく子供らしいことをしていたなって(笑)。当時の自分に「もうちょっと、ちゃんとやりなさい!」と喝を入れたいですね。 ──先ほどお母さんは永野さんが台本を読む姿を見たことがない、とおっしゃいましたけど、人前でセリフを覚える様子を見せないのは、永野さんのポリシーなんですか? 永野 台本を持ち帰って家で仕事をするのが好きじゃないです。でも、昔は学校が終わって母が仕事から帰ってくるまでの間に台本を読んでいましたね。あとは、オーディションで台本を読まなきゃいけないときは、家を出る前に携帯で写真を撮っておいて、オーディションに向かう電車内でその画面を見続けていました。自分なりに時間を費やして覚えていたんですけど、それを母がたまたま見てなかっただけだと思います(笑)。 どんなにしんどくても「終わらないものはない」 ──もうひとつ作中の場面をピックアップすると、明子は絵を描きたいけど、何を描けばいいのかわからなくて筆が進まないシーンがありました。永野さんご自身はお芝居をされる上で、考えすぎてどうしたらいいのかわからなくなった経験はありますか? 永野 私はあまりないです。お芝居に関しては、現場に行ったら監督だけでなく、脚本家さんやプロデューサーさん、また共演者の方など味方をしてくれる人がたくさんいたり、助言をしてくれる人も大勢いるので、「ここはどうしよう?」みたいなことは基本的にはないです。ただ、唯一『半分、青い。』のときだけは、10カ月以上も撮影をしていたので、自分なのか役なのかがわからなくなったんです。それは最初で最後の体験でしたね。 そのときはセリフをしゃべっている自覚もないし、自分の感情が動いている感覚もなくて、「え? 今、涙が流れてたの?」と自分で自分に驚きました。もはや別世界に行ったような気持ちだったんです。がんばっているのに、そのがんばりが伝わっている気もしなくて、「どうしよう……」と暗闇の中で過ごしているような、不安な感覚が長い間ありました。その経験をしていたからこそ、今回の「自分の描きたいものがわからないから描けない」と悩み、もがいている明子の姿はすごく共感しましたし、でき上がった作品を観てそのシーンで思わず涙が出ました。自分にとって大きな壁じゃないはずなのに、なぜか大きくて固い壁に感じて、どう壊せばいいんだろうっていうのは、誰にでもあることだなと思って、泣きましたね。 ──大きな壁が立ちはだかったとき、どのようにご自身を奮い立たせていますか? 永野 いい意味で「終わらないものはない」と言い聞かせています。今がしんどくても、この状況を乗り越えられる自信がなくても、絶対に大丈夫だって。時間は必ず進むし、終わらないものはないと思っているから、それでどうにかこうにか乗り越えてきましたね。 ──先ほど「スタッフさんや共演者の方々がまわりにいるから、お芝居で悩むことはない」とおっしゃいましたが、最初からそう思えていましたか? 永野 小学生でこの仕事を始めたので、最初は何も考えずに過ごしていたんですけど、この仕事に対して自覚を持ったときには、すでに座長が真ん中に立っていらっしゃり、サポートするように共演者がまわりを囲んでいました。さらに、それをいい方向に持っていくために、監督やスタッフのみなさんが常に現場のムードを作っていく姿を見て「あ、ひとりじゃないんだな」と実感しました。「自分が座長という立場で現場に入るときも、座長を支える立場で入るときも、どんなときでも自分は助けてくれる人たち、支えてくれる人たちに感謝を持ちながら頼ろう」と思ったのが、始まりだったと思います。 ──その考えに至ったのは、何歳のころですか? 永野 中学生のときには思っていましたね。当時、出会った先輩方の姿がとても大きかったんだと思います。 役者を辞めようと思ったとき、いつも作品が引き止めてくれた ──永野さんは女優を辞めようと思ったことが、過去に2度あったそうですね。きっと肉体的、精神的にもいろいろなしんどい経験があったと思いますが、それでも「お芝居が楽しい」「この仕事を続けたい」と思えたのは? 永野 私がこの世界に残った理由は、いつも作品が引き止めてくれたからなんですよね。1度目はしんどいから辞めたかったというより、高校受験のタイミングで「一生の職にするのは難しいのかもしれないな」と思い、「辞めようと思う」と家族や会社の人に話していたときに『俺物語!!』のヒロインに決まり、「これは辞められないぞ」となりました。 2度目は、小さいころからずっとお芝居をがんばったし、もう辞めようと思ったときに「最後に朝ドラのオーディションを受けてみない?」と言われて挑戦したら『半分、青い。』が決まりました。運なのか縁なのか、常に作品に引き止めてもらってきたんです。だからこそ、その作品に対して「恩返し」といったらおこがましいですけど、「この作品にすべてを懸けてみよう」と思ってなんとかやってきました。そのおかげで、今はすべてのお仕事を純粋に楽しめています。振り返ると、当時は楽しいよりも「続けるきっかけをもらえたからがんばらなきゃ」という感じで、がむしゃらにやっていた感じでしたね。 ──昨年はデビュー15周年を迎えられました。長く続けようと思ったというより、続けていたら15周年を迎えていた、という感覚なのかなと思います。 永野 まさに、気づいたら15年も経っていましたね。小中学生のころは、今みたいな仕事の仕方をしていなかったので、これだけの仕事が自分にある未来を想像していなかったです。忙しくなってからはギュッとしているので、仕事がなかった期間をカウントしなければ15年も経ってないかもしれないですけど、気づいたら「あ、そんなに経ってましたか?」って感覚です。私もそんなに長いことお芝居を続けてこられたんだなと感慨深いですね。 ──映画の話に戻りますが、『かくかくしかじか』の映像化を東村さんが何度も断ってきたのは、日高先生との日々に涙を流しながら心血を注いで描かれたこともそうですし、日高先生がすでにお亡くなりになっていることも含めて、それを映像作品に残すことにいろいろな感情があったのかなと思います。でも、映画を拝見したときに、お芝居を通して日高先生のことも、東村さんが日高先生と過ごした時間も肯定しているように見えたんです。特に今作において、お芝居はその人の人生や一緒に過ごしたことを肯定する行為に思えました。 永野 この作品は、東村先生の過ごしてきた時間だったり日高先生への思いを消化したり消化しきれなかったり、いろんな感情の中で描かれたと思います。そのなかで、東村先生が映画化を承諾してくださり、私はその気持ちに応えたかったです。今言ってくださったように、東村先生ご自身の人生を肯定して、またここから東村先生の新しい章が始まるみたいな感覚になってくださったらいいなと感じています。実際、東村先生からは「もうこれ以上のものはない」とお言葉をいただけたので、先生の人生のひとつにこの映画が入ったらいいなと思います。 ──ちょっと大きな質問なんですけど、永野さんにとってお芝居を言葉にするとなんですか? 永野 演じること自体は“ただただ偽り”ではありますけど、台本の中にいる登場人物たちにとってはそれが人生。そして私が生きていて一番やりたいと思うことも、一番続けたいって思うこともお芝居。大きな言い方をすると、私にとっては、もう生きる上で絶対的に必要なことだし生きがいに近いものです。きっとこれからも続けていくだろうし、続けていく努力をしていきたいと思います。 ──最後に、この映画を通して永野さんが観客に伝えたいことは? 永野 明子は日高先生に対して言えなかったことがあって、いまだに「あのときに言えばよかった」と後悔しています。だからこそ、やっぱり自分の大切な人に伝えたいと思ったことは今伝えるべきです。自分の気持ちを言葉にして大切な人に届けることが、どれだけ大切なのかが、この映画を観ればきっと感じてもらえると思います。映画を観終わったあとに、大切な人に「いつもありがとね」って言ってくれたらいいなって思います。 映画『かくかくしかじか』2025年5月16日(金)より全国ロードショー 出演:永野芽郁、大泉 洋 原作:東村アキコ 監督:関 和亮 脚本:東村アキコ、伊達さん 主題歌:MISAMO「Message」(ワーナーミュージック・ジャパン) 音楽:宗形勇輝 制作プロダクション:ソケット 製作:フジテレビジョン 配給:ワーナー・ブラザース映画 原作クレジット:「かくかくしかじか」東村アキコ(集英社マーガレットコミックス刊) (C)東村アキコ/集英社 (C)2025 映画「かくかくしかじか」製作委員会 取材・文=真貝 聡 編集=宇田川佳奈枝
-
一夫多妻制は円満なのか? “竜人は救世主♡” 清 竜人25新たな夫人たちの本音
清 竜人25(きよし・りゅうじんトゥエンティーファイブ) シンガーソングライターの清 竜人が結成した一夫多妻制アイドルユニット。前回は2014年〜2017年にかけて活動。今年、清 竜人のデビュー15周年、清 竜人25結成から10周年という節目を迎えるにあたり、完全新メンバーで復活。第101夫人・清 さきな(頓知気さきな/femme fatale)、第103夫人・清 凪(根本凪/ex 虹のコンキスタドール、でんぱ組.inc)、第104夫人・清 真尋(林田真尋/ モデル・舞台女優)、第105夫人・清 ゆな(チバゆな/きゅるりんってしてみて)で活動している。 ※第102夫人・清 嬉唄(島村嬉唄/きゅるりんってしてみて)は7月のお披露目ライブで電撃脱退した Instagram:@kiyoshiryujin25_official 清 竜人25が復活した。“一夫多妻制アイドル”というコンセプトで、一世を風靡し解散したのが2017年のこと。あれから7年。新たな夫人たちを迎え、新生・清 竜人25として再スタートしたのだ。 オリジンの清 竜人25は伝説的な存在だが、現・夫人の4人も負けてはいない。アイドルとしてすでに活躍してきた彼女たちの実力は申し分ない。しかもグループの雰囲気もグッドで、第101夫人のさきなは、「もう家族みたい」と語るほどだ。 10周年だけど、新婚ほやほやの清 竜人25。インタビューで四者四様の夫人たちの魅力に迫ると、大いなる飛躍の予感は、確信に変わった。 目次夫人たちにとって清 竜人は「共通の敵♡」!?さきなは「思考力が深すぎて“ゴリゴリゴリ〜”ってしたくなる」凪は「おっちょこちょいなおばあちゃん」真尋は「素直でめんどくさい女」ゆなは「守りたくなっちゃう癒やし系」竜人くんはみんなの救世主新生・清 竜人25は「観ておかないと、もったいないよ?」KIYOSHI RYUJIN25 REUNION TOUR 「THE FINAL」 夫人たちにとって清 竜人は「共通の敵♡」!? ──なぜ、清 竜人25を復活させたんですか。 竜人 10年前は、アイドルシーンにおいて、男性が女の子と一緒にステージに立つユニットがなかったので、そこに一石を投じる気持ちがありました。そのクリエイション以外の部分で成し遂げたかったことは3年かけていったん完全燃焼した。今回は清 竜人25の10周年というアニバーサリーイヤーだったので、純粋なエンタテインメントグループとして、この時代にできるハッピーなもの作りをしたいなと思ったんです。 ──このメンバーならそれができると思ったんですね。 竜人 うん、そうですね。 ──竜人さんの誕生日でもある5月27日に復活が発表されましたが、いつごろ夫人たちに声がかかったんですか。 さきな 半年以上前かな。もうあんまり覚えてない(笑)。でも私は、お仕事ではなく、もう家族みたいだなと思ってます。最初は、真尋ちゃんがみんなの仲を取り持ってくれたよね。 真尋 私、人見知りしないんで。でも、みんないい人で本当によかった。今では夫人4人がすごく仲よくて、竜人が置いていかれてる感があるんですけど(笑)。 さきな だから、夫人たちの間でギスギスすることはなくて、(ステージ上でのウィンクとか)「みんなに平等にしてよ!」とか逆に竜人にクレームが行くことがあるかも? 1対4で、竜人が共通の敵みたいな♡(笑)。 ──寂しいですね。 竜人 そうっすねえ……(苦笑)。 ──楽曲も次々とリリースされています。竜人さんにとって、どんなポジティブな影響がありますか? 竜人 10年前のデビュー曲「Will♡You♡Marry♡Me?」のリアレンジverをリリースして、SNSなどでたくさんの方に聴いていただけている状況で。解釈を変えて世の中に提示することで、違う時代でも受け入れてもらえてるのは、すごくアーティスト冥利に尽きるなと思います。 ──夫人たちは、竜人さんの楽曲を歌ってみていかがですか。 夫人4人 (キーが)高すぎる! 真尋 あと、歌詞に「スケベ」なんて入る曲を歌ったことがなかったので(笑)、新鮮で楽しいです。 ゆな 歌うのが難しい楽曲ばかりですけど、難しいからこそ、どうやって歌うか考えるのが楽しいです。 凪 壁が高いからこそ超えたくなるよね。「竜人、もっと難しい曲提示してよ」みたいな。負けねえぞ!という気持ち。 竜人 すげえ、ストイック(笑)。 さきな かっこいい〜。私はもう「楽しいなぁ!」ってだけかも。「キーが高くて出ないよ〜、楽しい〜!」みたいな。 凪 「振り付けできないよ〜。楽しい〜」ってね(笑)。最終的には「楽しいなら、いっか!」なグループですね。 さきなは「思考力が深すぎて“ゴリゴリゴリ〜”ってしたくなる」 ──夫人同士のお互いの印象はいかがでしょうか? まずは、さきなさんについて。 凪 私たちの振り付けは、ワークショップ的に先生と一緒に考えることが多いんですけど、さきなちゃんは積極的に意見を言ってくれて、それがキレイなかたちにまとまることが多いんですよ。地頭がいいんだと思ってます。 ゆな さきなちゃんは、もう……このまんま人間! 凪&真尋 あはははは(笑)。 さきな これ以上でも以下でもない(苦笑)。 ゆな すごく明るいし優しいし、裏表がまったくない。あと、すごくいろいろ考えてる。思考力が深すぎて、こんなに明るいのに、こんなこと考えてるんだって思うと、ゴリゴリゴリ〜ってしたくなる。 凪 ゴリゴリゴリ……? ゆな 違う! わしゃわしゃわしゃ〜って頭を撫でたくなっちゃうような感じ、でーす(笑)。 真尋 さきなちゃんは言葉の選び方がすごく上品。私は本当に頭が悪いんで、思ったことをすぐ言っちゃうんですよ……。でも、さきなちゃんは、誰も嫌な気持ちにならない言い方をしてくれるから、すごくありがたい。 さきな うれしい、泣いちゃう……! 竜人は? 竜人 ……3人が言ったことがすべてだよね。 さきな えぇ〜。 ゆな 私は、さきなちゃんのいいところもっと言いたいくらいなのに! 竜人 まじめな子だなあ、と思いますね。 さきな もう、竜人はいつもこれしか言ってくれない。「責任感がある」、「まじめ」。そんなことないのに……まだ私のこと知らないんだね。 凪は「おっちょこちょいなおばあちゃん」 ──凪さんはどうですか? 真尋 癒やし系でほわほわしてるけど、ライブ中は、人が変わったようにすごいんですよ! さきな 憑依型だよね。あと、ツッコミ担当だけど、すっごくおっちょこちょい(笑)。 真尋 リップのフタを逆側にハメちゃって、抜けなくなったり(笑)。さっきは、ドアを半開きにしておく方法がわからなくて、ずっとドアの前でわたわたしてた。「大丈夫?」って聞いたら「ダメです」って(笑)。 さきな 凪ちゃんはひとりでごちゃついてること多いよね。 真尋 おもしろいから、放置してずっと見ちゃう。 凪 助けてくれよぉ〜。 さきな あと、すごく人見知りで、心をすぐに開かない。だから、最近心を許してくれたことが本当にうれしくて愛おしくて。 凪 たしかに、今めっちゃ心開いてる。 さきな 最近は顔を見るたびに抱きしめたくなっちゃう。 凪 さっきは肩揉んでくれましたね。 真尋 おばあちゃんだと思われてない!?(笑) 凪 私は、清 竜人25の「おばあちゃん」担当ですね(苦笑)。ちなみに竜人は何かありますか? 竜人 出会ったころから、いい意味で印象が変わってないかも。 凪 前世のレコーディングのときに出会ったんですよね。「歌が上手だね」って言ってくれて。覚えてる? 竜人 覚えてるよ。いい意味でオンオフの切り替えがはっきりしてて、プロフェッショナルだなと思いますね。 凪 ありがとうございます。普段けっこうダウナーなので、意識して切り替えないと、人の前で歌ったり踊ったりできないんですよ。 さきな 凪ちゃんの本来の人間性と、ステージに立つ人の感覚っていうのが、ギャップがあるんだよね。だからそのまんまの凪ちゃんでは出ていけなくて、スイッチを入れなくちゃいけない。 凪 そうそうそう。けっしてお酒を飲んでステージに上がってるわけではないです。 さきな ナチュラルハイなんだよね。 真尋は「素直でめんどくさい女」 ──真尋さんはどうですか。 凪 真尋〜! 大好き!! 真尋 あはは、私も(笑)。 さきな 屈託のない素直さが魅力。何事にもまっすぐ。たまに良くも悪くもって感じになるんだけど。 真尋 よくわかってる(笑)。 さきな 素直に猪突猛進って感じ。私はこういう女が好き。 真尋 告白……!(笑) さきな でも、まだ見たことないですけど、もし機嫌が悪くなったら、めっちゃ態度に出すタイプだと思います。そういうめんどくさい女(笑)。 真尋 合ってます! さきなちゃん、占い師みたい(笑)。 さきな 私、めんどくさい女が大好きなんですよ。あと、私は真尋ちゃんのことは、ほぼ犬だと思ってます。 真尋 どういうこと!? さきな 誰にでも笑顔でしっぽ振って懐いちゃうから……。この3人の中で彼女にしたら一番不安になっちゃうのが真尋ちゃんだと思う。どっか行っちゃうんじゃないかって。 真尋 やばい女じゃん!(笑) さきな めちゃくちゃムードメーカーで、みんなを朗らかにしてくれる存在です。喜びや怒りはまっすぐ表現する反面、自分の弱さは人に見せない強がりさんなところがあって愛おしい。とても器用だから隠すのが上手すぎて、明るい真尋を演じている瞬間があるのでは?と心配になっちゃうこともあるくらい。 凪 今まで出会ったことのないタイプの明るさを持っている人。なので、人見知りの私でもすぐに打ち解けられた。唯一の同い年で、パフォーマンス力がすごく高くて、ダンスとか教えてくれるから……真尋いつもありがとう。 ゆな 真尋ちゃんは本当に優しくて、犬みたい(笑)。 真尋 え⁉︎ なんでみんな犬って言うの!(笑) ゆな (笑)私は、ひとりだけ加入が遅かったんですけど、初めての顔合わせが写真の撮影日で。もうガチガチで、初めて会う人と一緒に写真撮るなんて、ヤバーい!って緊張してて。 さきな この仕事してたら、初対面で撮影なんてしょっちゅうあるでしょ(笑)。 ゆな でもヤバすぎ〜って緊張してたの! そしたら真尋ちゃんがめっちゃ話しかけてくれて、こんなに優しい人がいてうれしいってなりました。楽しいこともうれしいことも、真尋ちゃんにすぐ言いたくなる。 真尋 うれしい〜! じゃあ、竜人。来いよ! 竜人 なんだろう、すごくガーリーだよね。本番前の舞台袖とかでさ、いつもぷるぷる震えてるじゃん。たぶん緊張しいな部分もあるんだよね。そこもかわいいなって思うよ。 真尋 きゅん♡ かわいいならよかった! ──今日初めて「かわいい」って出ましたね。 凪 本当だ! クレームセンター行きだ(笑)。 さきな クレームの窓口どこだろ。 ゆなは「守りたくなっちゃう癒やし系」 ──最後に、ゆなさんはどうですか? さきな ゆなは、繊細さんで守りたくなる。いい子すぎて、すっごく健気で、がんばり屋さんで。ゆなこそ、すっごくまじめ。こうやってずっとニコニコして、ギャグセンがちょっと高くて、おもしろいこととか言うし、ぽわぽわしてるように見える。でも実はちょっと抱え込みがちだから、守りたくなっちゃう。 真尋 癒やしです。ずっと見てたくなる。いつか誰かに騙されそうで、壺とか買っちゃいそう(笑)。守りたくなるんですよね。 ゆな ぜひ守っていただいて♡ 真尋 うん、みんなで守るよ! 凪 めちゃめちゃかわいくて、きゅるんってしてるのにおもしろいし、親身になって同じ目線になって話聴いてくれるところもある。私はゆなちゃんいないと、無理。依存! さきな 中毒性がある(笑)。 真尋 ゆなちゃんって、よく変なこと言うんですよ。このインタビューでもちょいちょい出てると思いますけど(笑)。 さきな 最近おもしろかったのが、私が「トイレ行ってくる〜」って部屋を出ようとしたら「いいなぁ」って返されて。じゃあ「一緒に行こうよ〜」って誘いました。 凪&真尋 あっはっは(笑)。 真尋 パッと出るひと言がすごくおもしろいんですよ。 ゆな ありがとうございます。竜人くんは? 竜人 ゆなはすごく今っぽいなと思いますね。時代をまとった女。 さきな ナウい。いいなぁ。私にもそういうのつけてよ、二つ名欲しい。 竜人 うーん、考えておく。 竜人くんはみんなの救世主 ──夫人たちは、竜人さんとの「結婚」にためらいはなかったですか。 さきな 私は全然。懸念あった? ゆな ゆなはいっぱいあった。 凪 めっちゃ悩んでたね。 ──お披露目ライブで第102夫人の嬉唄さんが離脱し、急遽交代で入ったのがゆなさんでした。 さきな ゆなちゃんは、すっごくファンを大事にしてて、誰ひとり取り残さないで、みんなを笑顔にしたいタイプだから、けっこう葛藤があったよね。 ゆな でも「やる!」って自分で決めて入ったら楽しかったので、勇気を出してよかったです。 真尋 私のファンからも「結婚」っていうワードに対して「悲しい」って意見もありました。でも結局は、私が幸せなら何をしても応援してくれる人ばかりだから、「ごめんね」じゃなくて、「がんばるから見ててね」って前向きな気持ちになれました。 凪 私のファンの方々は「凪がまた元気に活動してくれて、またグループやってくれるなんて!」って喜んでくださってます。私の健康も気遣ってくれるし……って、これじゃ本当におばあちゃんみたいですね(苦笑)。私のファンにとって、竜人くんは救世主です。「竜人くんは救世主♡」って歌作ってほしい! 竜人 やば!(笑) 真尋 いいじゃん! 次の曲それにしようよ! ──歌詞はご夫人方が書いてもよさそうですね。 凪 1行ずつ書こう! さきな 私たちが書いたら絶対グチャグチャになるよ。 凪 たしかに(笑)。 新生・清 竜人25は「観ておかないと、もったいないよ?」 ──ライブツアーも控えていますが、グループとしての目標はなんでしょうか? ゆな ずっとこんな感じでにこにこ楽しく幸せにやっていきたいです。 凪 どんな状況でも、どんなライブハウスでも、路上ライブだとしても、この5人なら、絶対楽しいし、ハッピーを届けられると思います。元気のない人にも、このハッピーオーラを届けたいですね。 真尋 このハッピーさはみんなに伝えたい。あと、私の前世のグループで叶えられなかった目標があるので、清 竜人25では叶えたいです。 さきな すごい! このグループで、そんな大きな目標が話題になったことなかった。 凪 竜人の頭の中にはあるんじゃないの? 竜人 ん? なに? さきな 今、真尋ちゃんがライブハウスよりも大きいステージにこの5人で立ちたいって言ってたの。 竜人 へぇ、いいじゃん! 真尋 明日にでも予約してくれそうなテンション!(笑) さきな 今、決まりました! 行きましょう。 ──さきなさんご自身の目標はどうですか? さきな やっぱりたくさんの人に見てほしいかな。ライブを観に来てくれたお友達とか家族の反応がすごくいいんです。たぶん私たちが思っているよりも、お客さんのことを楽しませることができてる。だから、「私たちのことを観ておかないと、もったいないよ?」って思います。私も観たいくらいだし。こんなグループもう二度と出てこないと思うから、今のうちに観てほしい。見世物小屋を観に来る感覚でいいから。 凪 寄ってらっしゃい! 見てらっしゃい! ゆな 凪ちゃんはすごく天然なんですけど……。 さきな 突然どうしたの?(笑) ゆな さっき凪ちゃんのこと説明できなかったから。凪ちゃんはノートに歌詞を書いてて、メモもたくさんしてます。憑依は、そういう努力のおかげだと思う。っていうのも書いておいてください。 凪 優しい……ゆな〜〜! ゆなはメンバーのことを本当によく見てくれてる。 ゆな 照れるからやめてよ〜(笑)。 文=安里和哲 撮影=時永大吾 編集=宇田川佳奈枝 <出演情報>テレビ朝日『ももクロちゃんと!』 11/9(土)11/16(土)2週連続 深夜3:20~3:40 ※詳しくは、番組ホームページで KIYOSHI RYUJIN25 REUNION TOUR 「THE FINAL」 出演:清 竜人25 会場:豊洲PIT 日程:2024年11月14日(木) 時間:18:00開場/19:00開演 http://www.kiyoshiryujin.com/kr25_2024/
BOY meets logirl
今注目の「BOY」をピックアップし、撮り下ろし写真を公開
-
齋藤璃佑(BOY meets logirl #056)
齋藤璃佑(さいとう・りゅう)2004年6月16日生まれ、秋田県出身 Instagram:saitoryu_616_official X:@saitoryu616 1st写真集 『All Light!』6月6日発売 写真集『All Light!』発売記念イベントを東京(6月7日)、大阪(6月8日)で開催 Vシネクスト『爆上戦隊ブンブンジャーVSキングオージャー』阿久瀬錠役で出演(5月1日〜期間限定上映) 『爆上戦隊ブンブンジャー』ファイナルライブツアー2025(3月〜5月/全国9都市で開催中) 撮影=井上ユリ 編集=宇田川佳奈枝 【「BOY meets logirl」とは】 今、注目の「BOY」をピックアップし、撮り下ろし写真を公開します。
-
浅井小次郎(BOY meets logirl #055)
浅井小次郎(あさい・こじろう)2002年11月10日生まれ、東京都出身 Instagram:ko_ins_ji 撮影=まくらあさみ 編集=宇田川佳奈枝 【「BOY meets logirl」とは】 今、注目の「BOY」をピックアップし、撮り下ろし写真を公開します。
-
飯島 颯(BOY meets logirl #054)
飯島 颯(いいじま・はやて)2001年10月12日生まれ、東京都出身 Instagram:@hayate_kumakun_official 2025年4月に東京・京都にて上演、舞台『青のミブロ』沖田総司役で出演 撮影=まくらあさみ 編集=宇田川佳奈枝 【「BOY meets logirl」とは】 今、注目の「BOY」をピックアップし、撮り下ろし写真を公開します。
若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>
「初舞台の日」をテーマに、当時の期待感や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語る、インタビュー連載
-
賞レースでも活躍し、ブレイク間近と話題のコンビ・ひつじねいりが抱く焦燥と野望|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#35
細身の元慶應ボーイ・細田が並べ立てる屁理屈に、ふくよかな男・松村が濃厚な関西弁で熱くツッコむ。東と西の笑いが融合したしゃべくり漫才が魅力のコンビ・ひつじねいり。 前回の『M-1グランプリ』では惜しくも準決勝敗退。しかし確実に認知を広げ、活躍の場は広がっている。 はたから見ているとのぼり調子なひつじねいりだが、本人たちの自覚は違うようだ。死屍累々の芸人界でひと旗あげるべく、がむしゃらに戦う彼らの現在地を聞いた。 【こちらの記事も】 紆余曲折を経て主役の座が見えてきたコンビ・ひつじねいりの期待にあと押しされた初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#35 目次ひつじねいりには、何かが足りんライブシーンに居座ってしまったテレビで傭兵として爆死したい ひつじねいりには、何かが足りん 左から:松村祥維、細田祥平 ──ネタ作りはどうしてますか? 松村 細田が0→1を出して、台本を持ってくるんですけど、一言一句決まってるわけじゃないんで、僕が編集する感じです。前のコンビではネタ作りしてましたけど、僕はゼロからイチを生み出すのが苦手やなと思ったんで、このかたちになりましたね。 細田 最初のころは(松村が)遠慮じゃないけど気を遣って、台本をまんまやってくれてて。でもこれじゃM-1勝てんぞってなって、気になるとこを言ってくれるようになりましたね。 松村 組んで1年くらいは細田の発想にシンプルにツッコむみたいな感じで。それがちょっと戦うには弱いなってなってから、お互いの違いを乗せたかたちになってきた。 細田 あと今年になって、ラジオを通して外部の意見をくれる人を募りました。2年くらい前に、ふたりで詰めるやり方だと、天井このへんかなぁって。 松村 今、3人いますね。ひとりはガッツリお笑いの作家さんですけど、あとは別の畑の方です。ネタの種だけあるときに、「どういう拾い方がいいですかねぇ」って聞いたりして。 ──客観的な視点を入れているというのは意外です。どのネタもふたりの人柄(ニン)が立ってるので気づきませんでした。 松村 組むときの目標として、M-1で決勝行きたい、優勝したいっていうのがはっきりあったんで、そこに行けない間はずっとテコ入れは繰り返すでしょうね。 ──昨年のM-1では初めて準決勝に進出しました。着実にステップアップしてる印象があるんですが。 松村 やってることは間違ってはないんでしょうけど、決勝に届かないってことは単純なウケ以外の部分で、何かが足りんってことでしょう。だったら何かやらんとあかん。まぁ落ちても「なんでやねん!」とはならないですけど。 ──その足りない「何か」って、現状ではなんだと思いますか? 細田 ネタの切り口、設定のところがまだ弱いのかなと。今まではふたりの人間性と対照性を見せてきましたけど、それだけだとまだ足りない。 ──昨年末のM-1敗者復活戦は初めての舞台でしたが、いかがでしたか。 細田 勝つかもとは思ったんですけど、まぁ勝ったところで……とは思いましたね。 松村 決勝行ったとて、令和ロマンにボコボコにされてたから。 細田 たぶん損してたと思うんで、結果、勝ち上がれなくてよかったです(笑)。 ライブシーンに居座ってしまった ──近年マセキ芸能社では、おふたりより芸歴の長いモグライダーやハンジロウといった中堅や、同世代のきしたかのが活躍されています。やや遅咲きの面々を見ていて、自分たちもまだまだ間に合うぞって背中を押されるところはありませんか。 松村 いや、普通にめっちゃ焦りますよ。子供のころテレビで見てたスターは20代後半だったんで、僕らみたいに30代半ばでお金はギリギリ、テレビもちょっとしか出てないってヤバいなと思います。SMAにいたときにバイきんぐの小峠(英二)さんにお世話になってて、今もたまに飲ませてもらうんですけど、あの人が『キングオブコント』で優勝したのが、36歳のときなんです。 ──松村さんは今年37歳になるから、小峠さんがチャンピオンになったときを超えると……。 松村 そうなんですよ。当時のバイきんぐさんって、死ぬほど遅咲きで苦労人っていう扱われ方だったじゃないですか。それでも36歳やったっていうのがヤバくて。あんなに苦労人やって言われてた、つるっぱげのおじいちゃんが報われたのに、俺はまだ報われてない。 ──たしかにそう聞くと焦るのもわかります。 松村 それこそ前編でも話題になったストレッチーズって、2022年に『ツギクル(芸人グランプリ)』で優勝して、M-1も準決勝まで行ってるんすよ。俺らより前に「次はストレッチーズの時代や!」ってなってたんです。でも、ちょうど昨日(高木)貫太を飲みに誘ったら「行きてぇけど……金がない」って言うんですよ。 ──なんと……。 松村 僕もびっくりっすよ。さすがに「今日俺がおごったるわぁ。俺の金で飲め!」って言っちゃいましたね。自分らより先にガッと行きかけてたヤツらが金ないのは焦ります。 ──ちなみにマセキだと、どのあたりの芸人がバイトを辞めて芸人仕事だけで食べていけてるんですか。 松村 僕らとサスペンダーズがギリギリで食えてる。 細田 カナメ(ストーン)さんも食えてるはずだけど、借金が(笑)。 松村 吉本(興業)だけですよ、若手でもたくさん食えてるのは。僕らがガッと上行って、仲間をフックアップできる立場になれればいいですけどね。ライブシーンでいうと、僕らってもうだいぶおじさんなんでいい加減上がらないといけないんですけど、実は下もあんまり育ってないんですよ。次の若手があんまり出てきてないから、僕らが中心に居座ってしまってる。吉本はそのへんもうまく回ってるんですけどね。 細田 僕はライブシーンがどうこうっていうより、自分のことで精いっぱいですね。 松村 細田はこの世代の中で一番熟してないんですよ。この芸歴ではありえんパフォーマンス。コイツだけマジで大学生みたい。 細田 本当にそうなんですよ。僕はしゃべりもステージングも全然ダメで……。ここから僕らが勝ち上がるために必要なものを考えると、僕の足りてないところばっかりなんです。 松村 これは自分らのラジオでもしゃべってることなんすけど、細田は青臭いまんま、ここまで来てる。たぶんコイツはお笑いを頭の中でだけやってきたんやなって。でも今は本人が意識して成長しようとしてるぶん、まわりの先輩も「最近の細田、接しやすくなったな」って徐々に認められてきてますけど。 細田 年齢的にも芸歴的にも、かわいげを出すとかってやり方はギリギリアウトなんですけどね……。 松村 20代前半のヤツ育ててるみたいな気分ですよ(笑)。 ──松村さんは相方として、細田さんの青臭さに気づいてたはずですよね。なんでここまで放置したんですか? 松村 もちろん気づいてましたよ! でも自分でなんとかすると思ってたんです。なのに、いよいよなんともならんから! 組んで3〜4年目までは我慢してたんです。でもこれはいよいよあかんわって。僕らほんまにずっとジタバタしてますね。 テレビで傭兵として爆死したい ──今後はどんな活躍のビジョンを描いてますか? 細田 僕はずっとおもしろいことを言ってカッコいいと思われたいんです。だから学生気分でやんなって言われるんでしょうけど。 ──前編では「『火花』憧れはもうない」って言ってましたけど、まだ引きずってる……? 細田 そうかもしれないですね。僕は足りてないところを宿題としてまじめにやっていって、その先でおもしろいこと言いたい。 松村 細田はまだまだ自分磨きで必死なんですよ。自分がちゃんと磨けてないから、具体的に何になれるかまだわかってない(笑)。 細田 でも僕、めっちゃまじめなんで、一個一個がんばるのは性に合ってます。 松村 こっちは次の課題を毎回提示せなあかんので大変ですよ(笑)。「これできた! ハイ次これ!」ってずっとやってるんで。最近だと『大喜る人たち』でも「MCをやるんじゃなくて、お前もやる側に回れよ!」って。この見た目は絶対大喜利できると思われるんで。 まぁ僕だけでも先に売れればいいんですけどね。そしたら「コイツ、ヘンなヤツなんですよ」って紹介できるじゃないですか。そのために「プレイヤーとしていろんなことできますよ」ってことで、いろいろやってます。サツマカワ(RPG)さんと、ストレッチーズの貫太とやってる『トゥリオのKOC優勝への道』ってPodcastもやってるし、『こちら幡ヶ谷待機所』っていうYouTubeチャンネルをスタミナパン・トシダと、大仰天・田口とも組んでますし。 ──YouTubeやPodcastで活動の幅を広げている松村さんは、テレビよりネットのほうに活路を見出している? 松村 いや、本当はいっぱいテレビに出たいですよ。ウエストランドの井口(浩之)さんと仲いいんですけど、あの人みたいにレギュラー番組はあんまなくても、この人おったら全部おもろなるなって芸人になりたい。 あと、芸人のおもちゃになりたいですね。子供のころからずっとイジられてやってきたんで、そういうところを見せていきたい。きしたかのさんとかって、ネタが高野(正成)さんの説明書になってるじゃないですか。ああいうネタも必要やなって思います。そんで、食べたいもの食べられて、いくらでもおごれるくらい稼ぎたい。 ──テレビで活躍したいんですね。 松村 めちゃめちゃテレビ至上主義です。YouTubeは結局ナメちゃうっていうか。テレビってどんだけしんどいことになっても、結局、一番影響力がある。だから、そこで自分も戦っていきたいんですよ。ルールとかコンプラはどんどん厳しくなるんでしょうけど、その網目をくぐっていきたいですね。 どうせ僕らはテレビにフィットできない側の人間ですけど、若い子らはそのへんうまいことやるじゃないですか。その手前でがんじがらめになった僕は、わめき続けたい。最後まで「女がめっちゃ好きやねん!」って叫び続けたい。テレビでまだこんなん言ってるでって呆れられたい。 細田 僕らってさらば(青春の光)さんとかAマッソさんみたいに、自分らの国を作っていくタイプではなくて、もらった仕事を一個ずつこなしていく傭兵タイプだと思うんです。だからどんな仕事もスケジュールが空いてたら行きます。 松村 傭兵として戦いますよ。僕らはどうせ爆売れはしないんで。 ──今回はブレイク直前のひつじねいりさんの焦燥を聞けて、貴重なインタビューになった気がします。 松村 ブレイクできるかほんまにわからないですからね。このFirst Stageさんがストレッチーズを取材したのってちょうど『ツギクル』優勝して、M-1準決勝行ったタイミングですよね。そう考えると、僕らも踏ん張らなあかんと思いますよ。 ──テレビで活躍するふたりを見たいです。 松村 早くボロ雑巾になりたいです。 細田 もっと働きたいですね、働かせてください。 文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平 ひつじねいり 細田祥平(ほそだ・しょうへい、1991年11月30日、埼玉県出身)と松村祥維(まつむら・よしつな、1988年7月2日、大阪府出身)のコンビ。2019年に結成し、2023年には『ツギクル芸人グランプリ』で準優勝する。『M-1グランプリ2024』では初めてセミファイナリストとなった。大喜利ライブ『大喜る人たち』のMCとして、お笑いファンの信頼も厚い。 【後編アザーカット】
-
紆余曲折を経て主役の座が見えてきたコンビ・ひつじねいりの期待にあと押しされた初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#35
細身の元慶應ボーイ・細田が並べ立てる屁理屈に、ふくよかな男・松村が濃厚な関西弁で熱くツッコむ。東と西の笑いが融合したしゃべくり漫才が魅力のコンビ・ひつじねいり。 前回の『M-1グランプリ』では惜しくも準決勝敗退となったが、次の主役の座を虎視眈々と狙っている。 コンビ歴は7年目だが、実は今年、細田が34歳、松村が37歳と若手とは言い難い。紆余曲折を経たふたりは、どうして組んだのだろうか。ふたりのさまざまな初舞台を聞きながら、ひつじねいりの軌跡をたどる。 若手お笑い芸人インタビュー連載<First Stage> 注目の若手お笑い芸人が毎月登場する、インタビュー連載。「初舞台の日」をテーマに、当時の高揚や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語ります。 目次細田の遅刻と、松村のモテテクニック突如の上京と運命にならずの出会い寂しさとエッチな問題で解散実はNSCに入りかけた 細田の遅刻と、松村のモテテクニック 左から:細田祥平、松村祥維 松村 すんません、細田がまだ来てなくて……。 ──よく遅刻されるんですか? 松村 いや、全然ないっすね。電話していいっすか……。出えへん。大丈夫かな。いったん先に僕だけ取材してもろても大丈夫ですか? ──もちろんです。では、ひつじねいりを組むまでの話を聞かせてください。大阪で生まれ育った松村さんにとって、お笑いはやはり身近でしたか。 松村 そうですね。逆に東京来るまではこれが当たり前やと思ってたんですけど、フル尺の漫才を20分番組とかでやってるんですよ。あと、『吉本新喜劇』。僕らが子供のころは土曜日は午前授業があったんで、学校終わったらすぐ帰って、お昼ごはん食べながらテレビで観てました。月曜は『新喜劇』(MBS)か『ごっつ(ダウンタウンのごっつええ感じ)』(フジテレビ)の話で盛り上がる。大阪ってほんまにおもしろいヤツがクラスの中心メンバーになるんですよ。足が速いとか顔がええとかより、おもしろいほうが偉い。 ──ちなみに松村さんは人気者だった? 松村 僕はもうほんまにずっと人気者でした! ──(笑)。 松村 いや、ほんまなんですよ。とにかくイジってもらえたんです。友達もそうですけど、先生もイジってくる。そこでうまく返そうっていうのは、小学生のときからやってましたね。 ──よく言われることですけど、ブラジルの少年たちが当たり前に路上でサッカーしてるみたいに大阪ではお笑いが日常なんですね。 松村 ほんまにそうでしたね。あと、女の子がめちゃめちゃ好きでモテたかったんです。顔はブサイクやから、笑いで勝負したろと。 ──その努力は実ったんですか。 松村 これが実ってるんですよ。変な話、初体験もまわりよりちょっと早いし。そういう人生だったぶん、モテない自虐をネタでやっても、ウソってバレる。 ──笑いでモテるってどういうことなんですか。 松村 小中学生のときはあんまわかってなかったんですけど、高校生ぐらいになると女子との会話の中で、ちょっとしたことにツッコんだり、イジったりすると、女子がめっちゃ笑ってくれるのに気づいて。それで女子との間(ま)の取り方がうまくなった気はします。大学に入ったら、心斎橋でめちゃめちゃナンパもしてて。見た目カッコいい友達はサクサク行くでしょう。でも僕は女子からしたら「なんでお前いかなあかんねん」って見た目やから、そこは戦死する覚悟で笑かしてました。 ──女性が笑ってくれる定番のフレーズとかあるんですか。 松村 いや、これを言ったらっていう鉄板の言葉はないんです。それこそ女子の前にスライディングしたこともありますよ。「うわ、セカンドベースやなかったんかい!」とか言うて。その瞬間のインスピレーションだけ。せやからむちゃくちゃ失敗も多かったですし。ただ、そういうところで鍛えられた根性が、芸人になった今も少なからず活きてるやろうなって思います。 ──まだ細田さん来ないのでもう少し「笑いとモテ」について聞きたいんですけど、笑わせてハートをつかんだあと、男性としての魅力はどうやって出すんですか。 松村 僕はこの見てくれなんで、やっぱ色気は出せなくて。なんで、笑わせたあとは「聞く力」ですね。最初は僕からめちゃくちゃしゃべって盛り上げてからは、ひたすら聞く。で、相手が投げてきたワードにちょっとだけおもしろを乗せて笑かすみたいな。(明石家)さんまさんみたいに「ほんで? ほんで?」じゃなくて、「そうなんやぁ」って相づちを打ちながらですね。でもこんな偉そうに言うてますけど、ほんまに打率は低いですよ、ピッチャーの生涯通算打率並です。圧倒的にミスが多い。数少ない成功で、自信を養ってきた感じですね。 突如の上京と運命にならずの出会い 松村 あっ! すんません、今、細田からLINE来ました。「忘れてた」って(苦笑)。ほんますんません。今から急いで来たら、30分くらいで着くと思うんで。あいつがどんな顔して入ってくるか、見てやりましょう。 ──事故に遭ったとかじゃなくて、本当によかったです。では、もう少し松村さんの話を聞かせてください。芸人になろうと思ったのはどのタイミングだったんですか。 松村 大学卒業する直前ですね。就活してて、サラリーマンになる予定やったんですけど、高校の同級生が急に「お笑いやらんの?」って言うてきて、それがキッカケですね。就活もなんとなくやってたんで、お笑いやってみてもええなと。イケイケのお姉ちゃんたちを振り向かすには、俺が有名になって「見たよ〜」ってLINEさせるしかないなって。 ──じゃあ最初は大阪で活動してたんですか。 松村 ここでややこしいのが、最初は静岡に行くんですよ。僕、留年してたから、誘ってきた同級生はもう社会人で。そいつが静岡に住んでたんです。親には内緒で「勤務地が東京になりました」って就職したフリして実家を出て、静岡の相方の社宅に住ませてもらいました。 ──松村さんの芸人としての初舞台は、その相方と? 松村 そうですね。大阪であった新人コンクールの予選会、そこに1回出ただけです。それも客前じゃなくてネタ見せなんで、大阪吉本のギラギラした若手ばっかりやから、ひとつもウケない。終わったあとは、そそくさと帰りましたね。車で来てたんで、静岡まで運転して帰るんですけど、空気重かったなぁ。最初は「全然ダメやったなぁ」ってヘラヘラしてたけど、めっちゃ時間あるから、じわじわと「ヤバいな……」って。 ──気まずい時間ですね。 松村 学生のときは、まわりからおもろいとされて調子乗ってたんで落ち込みました。本気でお笑いやってる人らとはまるで違うんやなと。今思うと、あの初舞台で相方は心折れたところが多少あったかもしれないですね。サラリーマンとしてじゅうぶん稼げてるのに、なんでこんな惨めな思いせなあかんねんって思うのも無理ない。もし初舞台でウケてたら、その勢いで「会社辞めるわ」ってなってたかもわからん。 ──ナンパで鍛えられた松村さんは打たれ強いから。 松村 そうっすねぇ。「まぁこっからやな」って踏ん張れました。結局、相方が全然やる気にならなくて2カ月くらいで社宅出ましたけど。「俺、本気でやるわ」ってひとりで東京に来て。 ──誘われて静岡に来たのに、相方に愛想を尽かして、そこからひとりで東京に出るってすごいですよね。大阪に戻る選択肢はなかった? 松村 大阪ってなると吉本一択なんで、NSC行かんとダメじゃないですか。当時僕はもう26歳になる年だったんで、今さら1年間養成所に通うのもしんどい。それに新人コンクールでのひどい経験があったから、とにかく舞台に立たなあかんってことで、フリーライブがたくさんある東京に行くことにしました。最初は上京してた友達の家に居候させてもらいながらバイトしてお金貯めながら、相方探すためにライブを観に行ったりして。 ──相方はすぐ見つかりましたか。 松村 これもたまたまなんですけど、高田馬場の汚い食堂で偶然、高校の同級生と再会したんですよ。しかもそいつも東京にお笑いしに来たって言うてて。 ──ドラマみたいな話。 松村 俺も思いましたよ、「絶対コイツと組んで売れるんや!」って。でもそのコンビも、2年ちょっとやったら「結婚するからもう辞める」って言われて(笑)。そのあともいろんな人と試して、今のコンビの1個前「いい塩梅」ではM-1の準々決勝まで行けたんです。それで芸人とかライブのスタッフさんとかに声かけてもらえるようになったんですけど、そいつとはまったくそりが合わず、2年もたなかったですね。 ──松村さんの20代は、鳴かず飛ばずだった。 松村 養成所にも事務所にも入ってないから、同期もおらんし過酷でしたよ。あ、細田来た。 細田 すみません! いやもう本当に申し訳ありません。家の近くの喫茶店でネタ書いてました。集中するためにスマホもイジれない設定にしてたんで、連絡も気づかず……。 松村 うまいこと言い訳考えてきたなぁ。 細田 タクシーで考えてきました。今日は休みだと思ってました……。ホントすみません。 寂しさとエッチな問題で解散 ──ちょうど松村さんがひつじねいりを組む直前まで話を聞いたんで、いいタイミングでした。埼玉出身の細田さんは、ストレッチーズと同じ浦和高校に通ってたんですよね。 細田 そうです。『U-1グランプリ』っていうのがあって、そこで漫才したのが初舞台ですね。出場者は2組だけで、もう片方はストレッチーズでしたけど。 ──4分の3がプロになり第一線で活躍してるってすごい大会じゃないですか。 細田 いやでも文化祭で教室をひとつ借りてやるだけですよ。観てる人も10人くらいなんで、緊張することもなく。 ──大学は慶應(義塾)ですが、(お笑い道場)O-Keisというお笑いサークルがありますね。もともと大学お笑いをやるつもりだったんですか? 細田 いや、最初はNSCに通おうかなと思ってました。でもお笑いサークルがあるって聞いてのぞいたら、大学生活を楽しめてない人が集まってて、親近感があって入りました。 ──以前、この連載でストレッチーズに取材した際、細田さんとトリオになるかもしれなかったって聞いたんですよ。 細田 そんな話もあった気がしますね。でも別にサークルなんで、一生の相方になろうって感じではなかったと思いますよ。そもそも僕は漫才に憧れてたから、3人でやるイメージが湧かなかったし。 ──ストレッチーズの高木(貫太)さんいわく、最初に3人で結成の話をしようとしたとき、福島(敏貴)さんが遅刻されて「初っ端から遅刻するヤツとは組めない」って細田さんが言ってたらしいんです。 松村 どの口が言うてんねん!! めちゃめちゃ遅刻しとるやないか! 細田 いやもう今日は本当にすみませんでした! ──もう大丈夫ですよ(笑)。学生時代にお笑いサークルで活動しつつ、どのタイミングでプロになろうと思ったんですか。 細田 慶應にいた真空ジェシカの川北(茂澄)さんが人力舎所属になって、そのルートで行けたらいいなと。当時は三四郎さん、ルシファー吉岡さん、モグライダーさんってマセキ(芸能社)所属の方々がライブシーンでめっちゃ盛り上がって熱気があったんで、大学在学中にマセキを受けて、卒業とともに預かりになりました。 ──プロとしての初舞台は、そのコンビで踏んだ? 細田 はい。新宿Fu-でしたね。大学お笑いで慣れてたんで、わりとうまくいって。帰り道は缶ビール片手にテンション上がってたかな。あのころちょうど又吉(直樹)さんの『火花』が流行って芸人はカッコいいみたいな風潮があったんで、自分たちに酔ってましたね。 ──松村さんと同じく、細田さんもいくつかコンビを経験してますよね。 細田 最初のコンビは1年くらいで解散しましたね。まじめにネタの話をするようになったら、普通に険悪になった(笑)。あと、新宿駅からライブ会場までの10分間、一緒に歩いているのにずっとイヤホンされてたのが寂しすぎた。 松村 コンビやったら普通にあるやろ(笑)。 ──次のコンビはバーニーズでした。 細田 今、モシモシっていうトリオをやってるまぐろと組んでました。でも相方がすごいエッチな問題を起こしちゃって……。たぶん業界初のSNS乗っ取りで、自分のアカウントからすべてを暴露されたんですよ。今思えば笑い話にして続けられたと思うんですけど、僕がけっこう無理になっちゃいましたね。 実はNSCに入りかけた ──ここでようやく松村さんと細田さんがひつじねいりを組むわけですが、松村さんはずっとフリーだったんですよね。そもそもどうやって知り合ったんですか? 松村 たぶん、K-PROのライブですね。いい塩梅のときにM-1準々決勝まで行ったおかげでライブが増えたり、SMAに入れてもらえたりしたんですよ。その流れで知ってくれる芸人も増えて、細田とも出会いました。でも僕、細田と組む直前まで、NSCに行こうとしてて。 細田 それ知らなかったわ。 松村 いい塩梅を解散して、今さら誰かとまた組む歳でもないなぁって思ってて。30歳になる年だったんで、NSCに入る最後のタイミングかなと、まぁ吉本への憧れもありましたしね。あのとき入ってたら、たぶんナイチン(ゲールダンス)と同期ですよ。お金振り込めば入学っていうタイミングで細田から声かかって、まぁやるかと。 ──細田さんはなぜ松村さんに声をかけたんですか。 細田 前のコンビがおもしろかったし、ふたりだったら対照的で見栄えがするんじゃないかなぁって思ってました。 松村 新宿の珈琲西武で、「組もか」って話したな。 細田 朝6時に集まりましたね、お互い8時からバイトだったんで。 ──大事なときはちゃんと会って話すんですね。細田さんLINEで承諾されたら「寂しいから」って組むのやめそう(笑)。 細田 そんなことはないですけど(苦笑)。でもさすがにLINEではやらないですね。 松村 でも完全に一個騙されたんですよ。僕が細田と組もうと思ったんは、「ネタ無限に書けます」って言ってたのもあったんです。それまでのコンビでは合同で書いたり、僕が書いたりしてたんで、次はネタ作れる人と組みたかった。でも結局、詐欺でしたね。 細田 まぁそこは誇大広告くらいで(苦笑)。 ──では、ひつじねいりの初舞台は? 細田 K-PROのライブだったと思いますね。 松村 お互い前のコンビで知られてたんで、ライブシーンのお客さんは知ってくれてたから、うっすら期待の熱があったんですよ。そのわりにはまぁ「ウケはしたけど……」っていう感じ。 ──「ヤバいコンビ出てきた!」みたいな感じではなかった? 松村 まったくですね。自分らのスタイルを見つけるまでけっこう時間かかってます。 ──初々しい初舞台ではなかったんですね。 松村 いやもう全然ですよ、僕らは焼き回ってるんでね(笑)。 細田 おじさんになって組んだんで、浮かれてるとかはまったくなかったですね。『火花』憧れももうなかったです。 文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平 ひつじねいり 細田祥平(ほそだ・しょうへい、1991年11月30日、埼玉県出身)と松村祥維(まつむら・よしつな、1988年7月2日、大阪府出身)のコンビ。2019年に結成し、2023年には『ツギクル芸人グランプリ』で準優勝する。『M-1グランプリ2024』では初めてセミファイナリストとなった。大喜利ライブ『大喜る人たち』のMCとして、お笑いファンの信頼も厚い。 【前編アザーカット】 【インタビュー後編】 賞レースでも活躍し、ブレイク間近と話題のコンビ・ひつじねいりが抱く焦燥と野望|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#35
-
好きなことを突き詰めてきた異色のコンビ・十九人が、勝ちを意識した瞬間|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#34
「M−1、嫌いだったんですよ」 『M-1グランプリ2024』でセミファイナリストとなり、敗者復活戦でも爪あとを残した十九人(じゅうきゅうにん)。 初舞台について聞くインタビュー連載「First Stage」では今回、十九人のふたりに『M-1』の大舞台に初めて上がった感想を話してもらった。 そこで飛び出したのが、冒頭の言葉だ。M-1に対する十九人の本音、そして勝負への覚悟を決めた彼らの現在に迫る。 【こちらの記事も】 『M-1』や『おもしろ荘』で注目を集めるコンビ・十九人の脳汁とニヤケが止まらなかった初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#34 目次M-1準決勝敗退はひどいなりトップバッターを任されがちM-1が大嫌いだった何も矯正されず、変人のままで M-1準決勝敗退はひどいなり 左から:ゆッちゃんw、松永勝忢(まつなが・まさとし) ──M-1では、昨年初めて準決勝に進出しましたね。 松永 なんか緊張するっていうよりかは、普通に楽しかった。 ゆッちゃんw ね。めちゃめちゃ気持ちよかったです。 松永 楽屋もけっこう和気あいあいとしてたし。 ゆッちゃんw カメラはすっごい多いです、ずっと密着だし。ホントに気づかないうちに撮ってる。僕たちはカメラ向けられたら、いっぱいふざけようって決めてたんですけど、バレないようにめっちゃ撮られまして。でも、密着のスタッフさんとめっちゃ仲よくなりました。僕たちがふざけてたら「いや、使えるかぁ!」とかツッコんでくれた(笑)。 ──準決勝の出番は4番目でした。 松永 よくないなぁとは思ってました。実際、場が温まりきってない感じはしましたし。 ゆッちゃんw でも、後半すぎると逆にお客さんが疲れちゃうから、僕らみたいなのは、みんなが体力のあるうちに見てもらえてめっちゃありがたかったなと思う。元気じゃないと、見てられないときがあるから(笑)。 ──客席から観ていましたが、十九人で会場が温まった記憶があります。 ゆッちゃんw わー、うれしい! たしかにねぇ。気持ちいいくらいウケて、終わった直後はもしかしたら……とは思ったんですけど、僕たちのすぐあとのスタミナパンさんが相当ウケられていたので、ダメかもなぁって。 ──出番が終わって、結果発表まではどう過ごしたんですか? 松永 結果発表まで3時間ぐらいあったんですよ。オズワルドの伊藤(俊介)さんに誘ってもらって、モツ鍋を食べさせてもらいました。スタミナパンの麻婆さんと、豆鉄砲と、例えば炎の田上で行きましたね。 ゆッちゃんw モツ鍋のあとはカラオケに行って、時間がないから、ひとりずつ「魂の一曲」を歌って。僕はYOASOBIの「群青」を歌いました。でも松永くんがすごい曲歌ってた(笑)。 松永 僕、神聖かまってちゃんの「神様それではひどいなり」。 ゆッちゃんw 最後に「殺してやる!」って叫び続ける曲で、みんなで「まだ落ちてないよ! 大丈夫だよ!」って。でも結局、そのモツ鍋メンバー全員落ちてて、ずこーってなりました(笑)。 トップバッターを任されがち ──敗者復活戦では、準決勝とはネタを変えていました。敗者復活戦では『席を譲ろう』、準決勝でやった『耳が痛い』。なぜ変えたんでしょうか。 松永 敗者復活はトップバッターだったんで、トップバッターで「耳が痛い!」って叫びまくるネタはちょっとかかりすぎてるから引っ込めました。テレビだし、初見の人もいっぱい観てくれるから。 ゆッちゃんw 電車のネタは、僕らの中では伝わりやすい温厚なほうだったんです(笑)。『おもしろ荘』では『耳が痛い』をやったんですけど、総合演出の諏訪(一三)さんは「席譲るやつは伝わりやすいけど、十九人を好きな人からすると、物足りないなぁ」って言われました。「まぁ、しょうがないな。テレビだからなぁ。おじいちゃんおばあちゃんが観てるからな」って(笑)。 ──初めての敗者復活戦はいかがでしたか。 ゆッちゃんw 出る直前に煽りVを見てて、「うわぁ、テレビで観てたあれに出るんだ!」と思ったら、一回「ぐぅ!」ってめっちゃ緊張して。でもマネージャーさんに「めっちゃ緊張してきました……」ってベラベラしゃべってたら、「たぶん緊張してないですよ。アドレナリンが出てるだけです」って教えてもらえて、落ち着きました。 松永 でも正直そんなに手応えはなかったなぁ。 ゆッちゃんw だから勝つぞっていうよりも、僕らのネタで番組が盛り上がればいいかって半分思ってた。『M-1敗者復活戦』という番組が、十九人がいたおかげで盛り上がったっていう印象になればいいなって。 松永 僕らは普段のライブでもトップバッターにされることが多い。十九人で無理やり盛り上がらせようみたいな。 ゆッちゃんw 大きい声っていうか、デカい音を出せるから(笑)。 ──最近の若手芸人は「M-1という番組を盛り上げたい」と言う人が増えている印象があります。 ゆッちゃんw たしかに。「絶対に勝つぞ」って気持ちと、番組を盛り上げたい気持ちだったら、どっちがいいのかはわからないけど。 松永 なんやろ。賞レースで結果出して(メディアに)引き上げてもらうっていうよりは、自分たちがおもしろいと思うことをやって、いいものができればいいよねっていう気持ちが強いのかな。だから勝ち負けはそこまで重要じゃないっていうか。もちろん勝ちたいんですけど。 M-1が大嫌いだった ──気が早いですけど、次のM−1への意気込みはどうですか。 ゆッちゃんw M-1に対して意識が変わりました。今までは15年かけて、いいところまで行けたらっていう感じで。普段のバトルライブも、僕らそんなに得意じゃないから、お笑いは戦うもんじゃないしな、みたいに思ってたけど……うん、松永くん、どうだ? 松永 敗者復活に出てみて、見えてるものがちょっと変わったんですよ。もう一回勝てば決勝なんやっていうのが具体的に見えてきて、これからはM-1に向けたネタを作ろうと。今までは自分たちの好きなことやり続けて、いつか決勝行けたらと思ってたけど、決勝に行ってる人たちはM-1で勝つための4分間のネタを作ってるんだって目の当たりにして、ここをちゃんとやらなアカンなっていう気持ちになった。 ゆッちゃんw 勝ちたくなっちゃったね(笑)。みんながあんなに熱いのはこういうわけだったんだなって思っちゃいました。 松永 僕ら、M−1嫌いだったんですよ。かなり嫌い。 ゆッちゃんw こんなこと言っていいのか(笑)? 松永 僕らなんて、1回戦で3回落とされてるし。1回戦って持ち時間が2分じゃないですか。そんな短い時間で伝わるわけないって、ふて腐れてたんです。ライブではめちゃめちゃウケてるまわりの友達もいっぱい落とされるから、M-1自体が嫌いだった。でもだからといって賞レース至上主義からは逃れられんし……。 ゆッちゃんw 悲しいね。なんか悲しい話だね(笑)。 松永 ふふふふ(苦笑)。嫌なんですよね、お笑いの本質って別にバトルじゃないし。なんなら商売ですらない。 ゆッちゃんw 趣味でやってることにたまたまお金が発生して、超ラッキーっていう状態なので。 松永 そんな感じで僕らは賞レース自体が嫌いだったけど、でもそれをM-1の2回戦で負けてるヤツが言ってても仕方ないじゃないですか。 ゆッちゃんw やっぱ決勝に行ってる人たちってめっちゃすごい。でも別に2回戦で落ちた人がおもしろくないわけじゃない。それがみんなに伝わってほしいなって思うから、僕らが勝ったら「たまたま今日評価されたから勝っただけで、ほかの人もみんなおもしろいんだよ」って言えるようになりたい。そのためにがんばりたいなって思えるようになりました。 何も矯正されず、変人のままで ──これからはどんな仕事をしたいですか。 ゆッちゃんw 事務所の先輩たちがすごいので、そういう人たちと一緒にテレビ番組出られたり、営業とか一緒に回れるぐらい有名になれたらいいなとは思ってます。 松永 やりたいことを、やりたい。今は それについてきてくれるお客さんもいるし。去年単独ライブやったんですけど、それが500人ぐらい来てくれて。そのお客さんを大事にしたいなって思う。 ゆッちゃんw ありがてぇ。 松永 僕らに3000円とか払ってくれる人がそんだけいるっていうのがうれしいから。 ゆッちゃんw 高いよね! 松永 だから、僕らをおもしろいと思ってくれる人たちを喜ばせたいし、僕らはやりたいことをやりたいなって気持ちです。 ゆッちゃんw あと、僕らが好き勝手していい場所がテレビにできたらいいなぁ。冠までは行かなくても、僕らの同世代の何組かで番組させてもらえたりしたらいいなぁ。 ──1997年生まれのおふたりも、テレビへの憧れはあるんですね。 松永 テレビは好きですね。僕らはまだギリギリYouTubeじゃなくてテレビに育ててもらったので。それに「テレビは終わり」みたいに言われるけど、まだ終わってないと思うしなぁ。視聴率が数%でも数百万人が同時に観てるってことで、その規模はYouTubeではあり得ない。やっぱりテレビにしかできんことがあると思うし、そこで自分らがやりたいことをできたらめちゃくちゃうれしいですね。 ゆッちゃんw あと、松永くんは英語もすごくできるから。英語クイズなら負けない。ね! 松永 何それ、あんま関係なくない?(苦笑) ──でもEテレの英語番組とかおふたりでやったらハマりそう。 ゆッちゃんw わぁ、やりたい! たしかに「NHK出てください」はファンの人にめっちゃ言われます。最初の単独ライブで人形劇をやったときテレビ局の人から「アテレコ上手〜」って褒められたよね(笑)。 ──たしかにおふたりとも独特のテンションと声質なので、ナレーションも向いてそうです。 ゆッちゃんw やりたい! 『キョコロヒー』で内田紅多(人間横丁)がやってて、めっちゃうらやましいです。大(おお)友達だから。 ──先ほど「同世代の何組かで番組」と言ってましたが、どのあたりの芸人が浮かびますか。 ゆッちゃんw うわぁ、どうする!? 何組かっていったら、まず人力舎のめっちゃ最高ズかなぁ。おばた(最高)は仕切れるし、(めっちゃ)むつみさんは突破力があって、『はねトび(はねるのトびら)』みたいな番組だったら、虻川(美穂子)さんみたいになれそう。あと、何をしても大丈夫っていう安心感が欲しいのでオッパショ石さん。どんな空気でもなんとかしてくれるし、僕らが好きなことやってもまとめてくれる。あと豆鉄砲とか。 松永 いいなぁ。たしかに今売れてる人って何組かでコント番組とかしてきたイメージあるから、そういうのをうちらの世代でできたらいい。 ゆッちゃんw 地下ライブって「これしかできない」みたいな変人がいっぱいいるんです。そういう人たちがテレビに出ようとすると、直さなきゃいけなくなっちゃうけど、それがもったいないなぁって。何も矯正されずに、変人のままテレビに出られるようになったらいいな。僕もそうなんです。松永くんは器用だからなんでもできるけど、僕は松永くんが書いてくれるネタじゃないと無理だから(笑)。 文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平 十九人 ゆッちゃんw(1997年9月9日、北海道出身)と、松永勝忢(まつながまさとし、1997年10月29日、大阪府出身)のコンビ。2018年4月、立命館大学の劇団サークルで出会い、コンビを結成。2020年4月に上京し、フリーとして活動。2022年、ASH&Dに正式所属。『M-1グランプリ2024』準決勝進出。2025年元日未明に放送された『おもしろ荘』では3位に入賞した。 【後編アザーカット】
focus on!ネクストガール
今まさに旬な、そして今後さらに輝いていく「ネクストガール」(女優、タレント、アーティスト等)を紹介していく、インタビュー連載
-
趣味は編み物と映画鑑賞──『おいしくて泣くとき』ヒロイン・當真あみのプライベート
#20 當真あみ(後編) 旬まっ盛りな俳優にアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。 當真あみ(とうま・あみ)。2020年に沖縄でスカウトされ、『妻、小学生になる』(2022年/TBS)でテレビドラマ初出演を果たす。その後、「カルピスウォーター」の14代目イメージキャラクターに就任、また、『パパとなっちゃんのお弁当』(2023年/日本テレビ『ZIP!』朝ドラマ)や『どうする家康』(2023年/NHK)、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(2023年/日本テレビ)など、ドラマへの出演を重ねる。2025年4月4日公開の映画『おいしくて泣くとき』では、複雑な家庭環境下にあるヒロイン・夕花を演じている。後編では、プライベートに関することを聞いてみた。 インタビュー【前編】 目次手芸屋で毛糸を物色、俳優仲間と映画館へ上京後も送ってもらっていた“実家の味” 手芸屋で毛糸を物色、俳優仲間と映画館へ ──プライベートなことも伺いたいのですが、最近ハマっていることはありますか? 當真 映画鑑賞はずっとしています。あと、去年ハマり出したのは、カメラと編み物ですね。編み物は、空いている時間に少しずつ編んで、いろいろと作ったりしています。 ──素材も自分で買いに行ったり? 當真 はい。手芸屋さんへ行って、毛糸を物色したりとか。 ──今まで編んだ中で、一番うまくできたものはなんですか? 當真 ニット帽ですね。けっこううまくいって。夏場は、麦わら帽子になるような素材で、帽子を作ったりもしていました。 ──映画は今、どれくらいのペースで観ていますか? 當真 今年も1月中に3本は観ました。まだまだ観たい作品があって、もうすぐ上映が終わるのかなとか、早く行かなきゃと思っている作品も、今、3つぐらいあります。少なくとも月に1本以上は確実に観たいなと思っています。 ──映画館に行って観るんですか? 當真 そうですね、映画館がすごく好きで。家で観ていると、ちょっと飽きちゃったり、気が散ることもあるのですが、映画館だと大きなスクリーンにすごい音響だったり、本当にその空間がすごく好きなんです。 ──今まで観てきた映画の中で、すごく好きな作品、もしくはこの作品に出ているこの俳優の演技に憧れる、というのはありますか? 當真 お芝居でいうと、杉咲花さんです。昨年観た『52ヘルツのクジラたち』(2024年)と、おととし観た『市子』(2023年)での杉咲さんのお芝居が本当にすごくて……誰かの人生を追いかけて見ているような、そういうリアルなお芝居というか。リアルだし、言葉の一つひとつに、しっかりと伝わってくる強さがあって、そういう相手に届ける力がすごく強い女優さんだなと思いました。 ──お仕事をするなかで、仲よくなった俳優さんはいますか? 當真 『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』というドラマで仲よくなった友達とは、ずっと一緒にいます。みんな映画を観るのが好きなので、最近は一緒に。それこそ『室町無頼』も一緒に観に行きました。共通の好きなものを持っている人がいるのって、すごくいいなと思いながら過ごしています ──今後、やってみたい役柄はありますか? 當真 今、高校卒業間近で、これまでは学生役をいただくことが多くて、今後はさらに先にある大人としての仕事とか、今の学生のさらに先のところで一生懸命にがんばっているような役に挑戦できたらなと思っています。 ──社会人の役などですかね? 當真 そうですね。学生の役では、自分が経験したものだったり、知っている感情をつなぎ合わせて演じていたんですけど、その先となると私もまだ経験したことがないから、たぶんすごく難しいだろうなと思うんです。でもそこを探しながらやるのがすごく楽しいだろうなと思っていて、挑戦してみたいですね。 ──高校を卒業して、成人して、何かが変わる実感はあったりしますか? 當真 成人してですか……まったくないです(笑)。18歳になったからって遅くまで出歩くわけでもないですし、結局あまり変わらないかなというのが大きくて。ただ、学生でも子供でもないというところを意識して、しっかり気持ちを切り替えてかないといけないなとは思っています。 上京後も送ってもらっていた“実家の味” ──俳優以外で、今後やってみたいお仕事はありますか? 當真 ドラマや映画の宣伝で出演するバラエティ番組などで、全然違うジャンルなのに、おもしろくできる俳優さんがいるじゃないですか。すごく明るいキャラクターが出ている感じの……。私は(バラエティでは)うまくしゃべれないぐらいに緊張するので、それをなくせたらなと思っています。 ──書く仕事などは、興味があったりしますか? 當真 あまり考えたことはなかったですね。それよりは、最近カメラを持ち始めてずっと撮っているんですけど、写真を撮るのがすごく楽しくて。その流れで何か挑戦できるものがあったらいいなと思います。 ──写真を撮るときには、ご自分が撮られるときの経験が活きていたりしますか? 當真 いや、まったくないですね(笑)。撮っている対象も友達ばかりですし。画面を通して見ると、また違う人に見えてくるのがおもしろくて、そこはどこかお仕事で活かせたら楽しいだろうなと思います。 ──最後に、改めて映画『おいしくて泣くとき』の見どころを伺えれば。 當真 そうですね。心也くんと夕花の初恋、ラブストーリーではあるんですけど、それだけじゃなくて、ふたりを囲む世界にいる人たちの愛がたくさん感じられる作品だと思います。たとえば30年も相手を思い続ける心也くんの想いや、子供に対する心也くんのお父さんの想いなど、深い気持ちをすごく感じられる作品ですし、人の気持ちの強さ、尊さを感じていただけたらなと思います。 ──タイトルにもつながる、當真さんご自身の「食の思い出」はあったりしますか? 當真 あまり外に出て食べるということをしないのですが、お母さんやおばあちゃんの料理はすごく好きですし、東京に来てからも作った料理を実家から送ってもらっていたことがあって。ハンバーグとか、自分が本当に好きな食べ物を送ってもらっていて、仕事が終わったあとに食べるとすごく体に染み渡りました。ずっと食べてきたものを食べるとすごく安心して、おいしくて。泣くまではいかないんですが、ほっとする料理が身近にあるのは、本当にうれしいことだなと思いました。 取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 編集=中野 潤 ************ 當真あみ(とうま・あみ) 2006年11月2日生まれ。沖縄県出身。『妻、小学生になる』(2021年/TBS)でテレビドラマ初出演。その後も『パパとなっちゃんのお弁当』(2023年/日本テレビ『ZIP!』朝ドラマ)や『どうする家康』(2023年/NHK)、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(2023年/日本テレビ)、『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(2024年/TBS)など、ドラマへの出演を重ねる。Netflix映画『Demon City 鬼ゴロシ』が配信中。2025年4月4日公開の映画『おいしくて泣くとき』では、複雑な家庭環境下にあるヒロイン・夕花を演じている。
-
最旬女優・當真あみ──松岡茉優や広瀬すずとの共演で培った“演技力”と“人間力”
#20 當真あみ(前編) 旬まっ盛りな俳優にアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。 當真あみ(とうま・あみ)。2020年に沖縄でスカウトされ、『妻、小学生になる』(2022年/TBS)でテレビドラマ初出演を果たす。その後、「カルピスウォーター」の14代目イメージキャラクターに就任、また、『パパとなっちゃんのお弁当』(2023年/日本テレビ『ZIP!』朝ドラマ)や『どうする家康』(2023年/NHK)、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(2023年/日本テレビ)など、ドラマへの出演を重ねる。2025年4月4日公開の映画『おいしくて泣くとき』では、複雑な家庭環境下にあるヒロイン・夕花を演じている。その作品に関する話から聞いてみることに。 目次心の「居場所」を意識して、作り上げたヒロイン像松岡茉優からもらった「卒業証書」に感銘を受けて 心の「居場所」を意識して、作り上げたヒロイン像 ──映画『おいしくて泣くとき』の話をもらったとき、いかがでしたか? 當真 お話をいただいてから、台本と原作を読んで、すごくあたたかい作品だなと思いました。ほっこりするあたたかさとは違って、人の優しさを知るというあたたかさというか……。私が演じる夕花と、長尾(謙杜)さんが演じる心也との初恋もそうなんですけど、それだけじゃない、人を思いやる気持ちというのがたくさん感じられる作品で、すごく素敵だなと思いました。 ──ご自分の素のキャラクターと夕花とで、似ているところはありますか? 當真 夕花は家庭での複雑な事情があって、少し大人びているところがあるんですけど、その中での芯の強さと、本人のもともと持っている明るさが合わさったときの力強さは私にはないものなので、そこをしっかり出せたらいいなと思いました。 ──撮影していて、特に印象に残っているシーンはありますか? 當真 ひとつだけ挙げるなら、雨の中を帰るシーンですね。実際、その日も雨が降っているというリアルな状況で、楽しいというよりは少し沈んでいる空気を雨が消してくれるみたいな、そういう心情になって。そのあたりの気持ちの作り方を考えて、監督とも相談しながら撮影したこともあって、印象に残っています。 ──ほかにも撮影していて大変だったな、苦労したなというシーンはありますか? 當真 ラストの心也くんとのシーン……気持ちを作るのに少し時間をかけてしまったんですけど、このシーンが大変でしたね。たくさん言葉をかけてくれる心也くんに対して、振り切るかたちで夕花が行ってしまうという行動……すごく大切な部分なので、その気持ちを作るのに時間がかかりました。 ──クランクイン後の最初の撮影、夕花の家でのシーン……けっこう激しいシーンでしたね。 當真 夕花の土台となる、この作品ですごく重要な要素でした。そういった家での状況が中心にあった上で、心也くんとの対話だったり、“子ども食堂”に行っていたりとかするので、重要な部分を最初に撮れたのは、すごくありがたかったなと思います。 ──そこを基準に、役づくりをしていった感じでしょうか? 當真 そうですね。やっぱり家で起きていることが、どんなシーンでも頭をよぎるというか……ふと思い出したりすることができたので、そこはすごくありがたかったです。 ──長尾謙杜さんと共演してみた印象は? 當真 横尾(初喜)監督と長尾さんと私の3人で話すことが多かったので、コミュニケーションを取る機会も多くて、演じる上ですごくやりやすかったです。 ──撮影の合間は、どんな話をしましたか? 當真 撮影地が豊橋だったこともあって、豊橋のおいしい食べ物の話とか……初日は私が緊張しているので、撮影がスムーズにできるような気遣いをしてくださったり。合間では、本当にたわいもない会話や地元の話……図書館のシーンでは、文房具がいっぱい目の前にあったので絵を描いたりとか、そんなこともしていましたね。 ──當真さん自身も、弟役の矢崎滉さんを引っ張っていかなきゃというような意識はありましたか? 當真 やっぱり夕花としては、小さい弟を守らなきゃ!みたいな気持ちもありますし、弟役の矢崎くんも撮影の初日は緊張しているかなとも思ったので、意識的に話しかけたりしました。 ──その様子を見ていて、ご自分が初めて演技したときのことを思い出したりしました? 當真 しました(笑)! やっぱり緊張というか……監督から言われたことを、こうなんだろうか?と考えたりして、本当に難しいなと思っていたことを思い出しました。 ──この映画で見てほしい、ご自分の演技のポイントはどのあたりですか? 當真 (自分の)家にいるときの夕花と、心也くんが作ってくれた居場所にいるときの夕花の違いです。やっぱり、自分にとっての居場所があるというのはすごくうれしいことだなと、撮影の合間にも感じていて……帰ってくることができるという安心感って、たくさんあればあるほどすごく安心できる。その居場所に対する夕花の違いを、見ていただければと思います。 ──當真さんにとっての「居場所」、行き着く場所は、どこなんでしょうか? 當真 やっぱり仲のいい人といる場所……もちろん地元の沖縄のお母さんたち、おうちだったり、おばあちゃんだったり。それと東京に来てから仕事で仲よくなった友達と一緒にいる時間や空間というのも、私にとっての「居場所」だなと思います。 松岡茉優からもらった「卒業証書」に感銘を受けて ──今まで演じてきた作品の中で、一番印象に残っているものはなんですか? 當真 こういう現代の話とは離れたジャンルの時代劇『大奥』(2023年/NHK)と『どうする家康』は、すごく印象に残っていますね。それまでやってきたお芝居とは違って、セリフから所作から何もかも自分の中で新しくやることだったので、すごく難しかった記憶があります。 ──なるほど。時代劇も、今後またやってみたいと思いますか? 當真 そうですね。『大奥』では、特に男女の設定を逆転させて女性のほうが強く押し切るという、実際の歴史とはちょっと違った描き方でしたし、これとはまた違うかたちでの時代劇にもチャレンジしてみたいです。 ──當真さんのInstagramを拝見すると、いろいろな映画作品をご覧になっていますが、最近観た中で印象に残っている作品はありますか? 當真 昨年の12月に観た『侍タイムスリッパー』です。最近観に行ったばかりの『室町無頼』も、現代とはかけ離れた話で、アクションの迫力とか、そういう部分に圧倒されたり。『侍タイムスリッパー』にはコミカルでくすっと笑ってしまうような部分、すごく惹きつけられる部分がたくさんあったので、印象に残っています。 ──以前、憧れている俳優は長澤まさみさんとおっしゃっていましたが、今、憧れている、目標にしている俳優はどなたですか? 當真 変わらずに、長澤まさみさん。それと、ドラマでご一緒した松岡茉優さん、よく出演作品を観ている杉咲花さんです。松岡さんは、ご一緒した撮影現場(『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』)で、すごく圧倒されました。先生役で、ワンシーンがものすごく長くて、セリフもすごい量だったんですけど、長回しで何回も繰り返す撮影でも、毎回ぐっと惹きつけられるお芝居で。観る人だけじゃなく、現場にいる俳優たちも圧倒するようなお芝居が、すごくエネルギーがあって素敵だなと思いました。憧れですし、私もそうできるようになりたいです。 ──松岡さんとの現場での思い出はあります? 當真 松岡さんはすごく優しくて、クランクアップの日は、本当の卒業式みたいに卒業証書をくださいました。一人ひとりが(松岡さんから)ひと言をもらう時間もあって、そこは10話通して撮影してきた中でも本当にラストの卒業みたいな感じになって。撮影中、生徒と松岡さんが演じる先生との間には役柄的にも壁がある感じだったんですけど、撮影が終わると、笑顔で「おつかれさま!」と言っていただいたのも印象に残っています。 ──デビュー以降、初期に演じた作品はいかがでしたか? 當真 長編映画だと最初に演じたのは『水は海に向かって流れる』(2023年)、短編だと『いつも難しそうな本ばかり読んでる日高君』(2022年)ですね。長編では、広瀬すずさんとご一緒しました。お芝居はほぼ初めての状態だったので、監督が撮影1カ月前に何回か個別にリハーサルを組んでくださって、そこでいろいろなアドバイスをもらいながら本番に臨んだので、すごく記憶に残っています。 ──広瀬すずさんとの共演は、どうでした? 當真 一緒のシーンがすごく少なかったのと、映画の内容的にも、私の演じる「楓」が一方的に(広瀬すず演じる「榊千紗」を)敵対視している設定だったということもあって、現場であまりお話しすることはなかったんですよね。ただ、撮影したのが寒い季節だったので、待ち時間にちっちゃいストーブを私のほうに向けて「あったまって!」と言ってくれたりとか、そういう気遣いをしていただいたのは覚えています。 ──実写映画以外では『かがみの孤城』(2022年)での声優経験もありますが、声優と俳優では、どんな違いがありましたか? 當真 声優は、セリフだけで表現しないといけないのがすごく難しいと感じました。俳優だったら表情でやるものを、アニメーションの表情に合わせるにはさらにテンションを上げたり抑揚をつける必要があって、そういう部分がすごく難しかったです。 ──なるほど。ドラマ『ケの日のケケケ』(2024年/NHK)では、ちょっと難しい役柄にも挑戦されていましたが、役づくりはどうされたんですか? 當真 このドラマでは、私が演じた役が持つ「感覚過敏」の方とお話しする機会をいただきました。実際の感覚を教えてもらったり、撮影現場にも来てくださった方から話を聞いたりとか、いろいろと教えてもらいながらやりましたね。たとえば、音や光……駅の騒々しい感じはどれぐらいの大きさに聞こえるんだろう?とか、そういうことを常に想像しながら過ごして、自分の役に取り入れていました。 ──『ケの日のケケケ』で母親役を演じていた尾野真千子さんは、『おいしくて泣くとき』でも大事な役どころで出演されていますね。 當真 ものすごくうれしいですね。尾野さんとまたこうやってご一緒できて。撮影のスケジュール的にはお会いできなかったので、会いたかったなぁ……という寂しい思いもあるんですけど、本当にうれしいです。 取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 編集=中野 潤 ************ 當真あみ(とうま・あみ) 2006年11月2日生まれ。沖縄県出身。『妻、小学生になる』(2021年/TBS)でテレビドラマ初出演。その後も『パパとなっちゃんのお弁当』(2023年/日本テレビ『ZIP!』朝ドラマ)や『どうする家康』(2023年/NHK)、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(2023年/日本テレビ)、『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(2024年/TBS)など、ドラマへの出演を重ねる。Netflix映画『Demon City 鬼ゴロシ』が配信中。2025年4月4日公開の映画『おいしくて泣くとき』では、複雑な家庭環境下にあるヒロイン・夕花を演じている。 【インタビュー後編】
-
タイを満喫──女優・莉子が語る『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』撮影裏話
#19 莉子(後編) 旬まっ盛りな女優やタレントにアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。 莉子(りこ)。2018年〜2021年まで雑誌『Popteen』の専属モデルを経て、『ブラックシンデレラ』(2021年/ABEMA)にて連続ドラマ初主演。その後も、ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(2023年/日本テレビ)や、映画『違う惑星の変な恋人』(2024年)など、さまざまな作品に出演し、女優としての歴を重ねる。2024年10月から放送中のドラマ『3年C組は不倫してます。』(日本テレビ)では主演を、11月より配信される『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』(ABEMA)では、主人公と行動をともにする「広瀬」として、重要な役どころを演じている。前回に続いて、最近の活動にフォーカスする。 インタビュー【前編】 目次「桐谷さんと佐野さんには本当に助けてもらいました」映画『恋僕』では福岡に1カ月滞在キックボクシング、ピラティス、ドライブ──アクティブなプライベート 「桐谷さんと佐野さんには本当に助けてもらいました」 ──最近出演された『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』(ABEMA)(以下、『インフォーマ』)についてもお聞きしたいのですが、実際にやってみていかがでしたか? 莉子 本当に楽しかったです! それはやっぱり、桐谷健太さんと佐野玲於(GENERATIONS)さんのおかげだと思っていて。おふたりがいなければ、私はきっとこの現場を乗り越えられなかっただろうなと思うくらい、おふたりが伸び伸びとお芝居できる環境を整えてくださったので、感謝の気持ちでいっぱいです。 ──海外での撮影は今回が初めてでしたか? 莉子 はい、初めてです。修学旅行以来の海外で、4年ぶり。渡航の準備段階から「海外ってどうやって行くんだっけ?」という感じでした(笑)。久しぶりの海外が仕事で、しかも撮影ということで不安もありましたけど、やるしかないと思って飛び込みました。 ──タイでの撮影はいかがでしたか? 莉子 正直、最初は不安と緊張でいっぱいでした。現地はとても暑くて、ちょっと過酷な環境でしたし。どうしようという不安もあったんですが、『Popteen』時代の体育会系精神がよみがえってきて「やるしかない!」と自分に言い聞かせました。 ──印象に残った出来事は、どんなことでしたか? 莉子 タイはどこも室内が寒いんですよ。タイの人たちは暑さを和らげるために、室内をキンキンに冷やしているんです。それがサービスなんですが、私は寒すぎてスウェットを着たいくらいでした。日本の冷房の感覚とは違って、本当に冷え冷えなんです! それと、交通はバイクや車が主流で、タクシーが渋滞に巻き込まれることがしょっちゅうありました。「バイタク」というバイクタクシーも利用しましたけど、日本ではまず見かけない光景なので新鮮でした。撮影では「トゥクトゥク」にも乗りましたし、日本ではなかなかないことをたくさん体験できて、最初の不安はどこかへ消えて、終わってみれば本当に楽しい思い出ばかりです。 ──ご飯はいかがでした? 莉子 実は私、辛いものが苦手で、最初の1週間くらいは現場でも辛い料理ばかりで食べられず、ずっとタイ米だけを食べる生活でした(笑)。そんななか、プロデューサーさんたちが「ヤバい、莉子ちゃん、辛いのダメらしい」と気づいて気を遣ってくださり、辛くない料理を用意してくれるようになって、そこからはだいぶおいしくいただけました! ──撮影中、特に印象に残ったシーンはありますか? 莉子 私自身のアクションシーンは少なくて、体力的にはほかのみなさんほど大変ではなかったんですけど……普通に楽しかったのは、やはり「トゥクトゥク」に乗るシーンです。それと、前作の『インフォーマ』(関西テレビ/2023年)で印象的だったシーンがまた出てきたり、前作を観ていた人が楽しめるネタがあちこちにちりばめられているので、「あ! このシーンはあれだ!」と、ひとりで密かに盛り上がっていました。 ──今回のドラマでは、どのような役づくりを意識されましたか? 莉子 普段はノートに役について書き込むのですが、今回はあえて決め込まずにいこうと思いました。オーディションでお芝居を見ていただいたこともありますし、木原(桐谷)と三島(佐野)との関わりの中で変化していく役柄なので、先入観で固めてしまわないようにしました。 せっかくのタイという場所での撮影ですし、前作にも出てらっしゃる桐谷さんや佐野さんと初共演するなかで、その場の空気感を大切にしながら生まれるお芝居を受け止めて、キチンと返すことに集中しましたね。 ──撮影中、桐谷さんとはどんなお話をされましたか? 莉子 最初に本当に感動したのは、桐谷さんの気遣いです。タイの室内は寒いというのは聞いていて対策していたんですけど、ロケバスで初対面のあいさつをしてから、移動するとき、桐谷さんが「莉子ちゃん、ロケバスの温度大丈夫?」と、すぐ気にかけてくださったんです。初対面で、しかもさっきごあいさつしたばかりなのにすぐに私の名前を呼んで、温度まで気遣ってくださるなんて、本当に素敵な方だなと思いました。あの瞬間から、私も桐谷さんのような人間になりたいと強く思いました。 ──佐野さんとは、いかがでしょうか? 莉子 佐野さんとは、空港のシーンが最初でした。初対面だったのですが、待ち時間などに少し話しかけてくださったりして。佐野さんって本当に温かみのある方で、コミュニケーションの取り方からも、たくさんの経験をされてきた方なんだなと感じました。 ほかにも佐野さんは、タイでおすすめの場所のリストをスタッフさんを通じて送ってくださったり、後輩や私たちのことを気にかけてくれる方でした。今回の現場では、人に恵まれているなと改めて感じましたね。桐谷さんと佐野さんには本当に助けてもらいました。 ──タイでの撮休日は、観光を……? 莉子 そうですね、最初の3〜4週間はタイに滞在しっぱなしだったので、後半にはもう慣れて、ひとりでタクシーに乗ったり、マッサージやショッピングモールにひとりで行ったりしていました。タイでひとり行動できるなんてすごいなと自分で思うくらい楽しんでました(笑)。 ──特に印象に残った場所はありますか? 莉子 とにかくショッピングモールが大きくて、中には水上マーケットがあったりもするんです。色合いや装飾がタイらしくて楽しかったですね。ナイトマーケットも有名で、暑さのなか、汗をかきながらスタッフとご飯を食べたりして……いい思い出ですね。 ──改めて『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』の見どころは、どんなところですか? 莉子 前作でも日本のドラマでここまで作れるんだと思いましたけど、今作ではタイでの撮影ということで、さらに臨場感があります。日本ではなかなかできないカーアクションもかなり入っているので、映画のようなクオリティになっています。 前作を観ていた方にも「『インフォーマ』が返ってきた!」というような楽しんでいただける要素がたくさんありますし、私も含めて新しいキャラクターも登場するので、見どころ満載です。 映画『恋僕』では福岡に1カ月滞在 ──ほかの作品についてもお聞きします。この夏公開していた映画『恋を知らない僕たちは』(2024年)の撮影はどうでしたか? 同世代の方が多い現場でしたよね。 莉子 とても楽しかったです。同世代と一緒だとリラックスできて、休みの日にはくだらない話で盛り上がることも多かったり、本当に学校のような感覚で撮影できました。 ──撮影地の学校のロケーションも素敵でしたね。 莉子 そうなんです、福岡で。学校や海が印象的な原作だったので、福岡のロケーションが作品の雰囲気を引き立てていました。福岡に1カ月ほど滞在して、酒井麻衣監督の映像美が際立つ作品に仕上がっています。 ──ああいう作品に出演するときは、原作のマンガを先に読んでから臨むんですか? 莉子 読みますね。原作がある場合は必ず読んでいます。原作を一度読み込んでから、そこから自分なりに役を落とし込んでいくんです。酒井監督は、キャラクターづくりに対して本当にこだわりを持っていて、髪型も役のために切ったり、持っている小道具も原作と同じ飲み物を用意したりと、細かい部分まで忠実に再現していました。みんなが一丸となってこだわりを持って作り上げる作品だったので、刺激的でした。 ──ボクも観たのですが、原作についてまったく予備知識がなくて、全然違う展開を想像していたので……。 莉子 そうなんですよ! 水野美波先生が作り上げる『恋を知らない僕たちは』(集英社)は、最初は学園恋愛ものに見えるんですけど、意外な方向に矢印が向かうのがおもしろいんですよね。それがリアルな恋愛模様を描いていて、私はその部分にすごく魅力を感じているんです。 ──この作品もですが、ご家族や友達からは、出演した作品への感想などは伝えられます? 莉子 家族は観てくれていると思うんですが、感想はあまり言ってきませんね。父は『インフォーマ-闇を生きる獣たち-』に出演するのは知っていて、タイでの撮影についても話していたので、前作の『インフォーマ』も観てくれたみたいで、めちゃめちゃハマってましたね。「あれはどうだった?」とか「このあとはどうなるの?」とか聞かれたんですけど、ネタバレはできないので「言わないよー」と返してました(笑)。 キックボクシング、ピラティス、ドライブ──アクティブなプライベート ──ちょっとプライベートなことも伺いたいのですが、最近ハマっていることや好きなことはありますか? 莉子 カメラが好きで、フィルムカメラと……最近ではデジカメも使っています。フィルムカメラは高校2年生のころからずっと愛用していて、最近はハーフカメラも手に入れて、現像してみたらすごくよくて、さらにハマりそうです。映像作品の撮影現場では、フィルムカメラで共演者の写真を撮ったりしています。 ──カメラを始めたきっかけは? 莉子 高校生のときに「写ルンです」ブームが再燃していて、それをきっかけにインスタントカメラではなく、ちゃんとしたカメラが欲しいと思い、父に初めてフィルムカメラを買ってもらいました。今はスマホですぐに写真が見られる時代なので、現像までの待ち時間が新鮮で、フィルムの色味や画質の粗さもすごく好きなんです。ずっと使っています。 ──写真を撮るときに、何か工夫はしていますか? 莉子 特に工夫はしないのですが、人や物を撮るのが好きです。友達が笑っている瞬間など、現場の思い出を撮影して、あとで見返してそのときのことを思い出すのが楽しいんですよね。だから現場にもフィルムカメラを持ち込んでいます。 ──なるほど。普段はどのような休日を過ごしていますか? 莉子 家にいるのが苦手で、じっとしていられないんです。休みが本当にいらないっていう人間なので、それこそ仕事も週6とかでしていたいんですよ。週1の休みがあればじゅうぶんなんです(笑)。 けっこう日々動いていたくて、休みの日も必ずキックボクシングやジム、ピラティスに行っています。撮影期間中は朝から夜まで撮影があるので、運動できないのがストレスになるくらい。午後から撮影の日なんかは、午前中にジムへ行って、体を動かしています。 ──キックボクシングをやろうと思ったのは、エクササイズ目的で……? 莉子 はい。今は、特に本格的なジムに通っているわけではなくて、習い事的な感覚でエクササイズの一環として通っている感じです。体づくりが目的ですね。中学のときはバドミントンを3年間ゴリゴリにやっていたんですが、高校で仕事が忙しくなってからはできなくなってしまいました。でも、20代で運動をしているかどうかで将来が変わるなと感じていて、まわりの大人の方からもそう言われているので(笑)、やれるうちにやっておこうと思って続けています。 ──ほかに、やってみたいことはありますか? 莉子 最近はドライブにハマっていて、車を運転するのがけっこう好きなんです。友達とドライブに行くことが多くて、もっと遠出してみたいですね。あと、今はずっとグランピングに行きたくて。 ──基本、アクティブですね! 莉子 そうなんですよ、アクティブすぎて(笑)。 ──少し話が戻りますが、ドラマ『怖れ』(2024年/CBCテレビ)など、最近はいろいろな役柄を演じていますよね。そんななか、今後やってみたい役柄はありますか? 莉子 ずっと言っているんですけど……悪役をやってみたいです。ファンの方に「えっ、莉子ちゃんが……?」と驚かれるような役を演じてみたいんです。だから、悪役とか、人とケンカしたりいじめたりする役に挑戦してみたいですね。 ──『怖れ』の役にも、少しそういった空気感があるのかな……と。 莉子 たしかにそうですね。でも『怖れ』では役がいくつもあって、完全に悪役というわけではないんです。新しい挑戦でもあって、そういう意味ではすごく楽しかったです。 ──悪役の役づくりを徹底してみたいと……。 莉子 そうなんです。ワンクール通して悪役をやってみたら、自分がどうなるのか気になりますね。本当にやったことがないので、挑戦してみたいと思っています。 ──ありがとうございます。最後に、今まで観た作品の中で、好きな作品はありますか? 映像でも舞台でも構いません。 莉子 最近観たアニメになっちゃうんですけど、映画『ルックバック』(2024年)を観て、すごくよかったです! たった1時間でここまで人の心を動かせるんだと驚きました。しかもアニメーションで! 河合優実さんも声優をされていて、本当に素晴らしいなと思いました。いろいろな表現方法があって、あの短い時間でも伝わるものがあるんだと感じました。最近観た映画で、一番いいと感じた作品ですね。 ──なるほど。声優にも本格的に挑戦してみたいと思いますか? 莉子 やってみたいですね。ただ、声優って本当に難しいです。今までも少しやらせてもらったりオーディションを受けたりとかしたことはあるんですが……声だけで感情を伝えるのがいかに難しいかを実感しました。それでも、これからも挑戦してみたいと思います。 取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 編集=中野 潤 ************ 莉子(りこ) 2002年12月4日生まれ。神奈川県出身。雑誌『Popteen』(角川春樹事務所)専属モデルを経て、『小説の神様 君としか描けない物語』(2020年)で映画デビュー。その後、ドラマ『ブラックシンデレラ』(2021年/ABEMA)、『最高の教師1年後、私は生徒に■された』(2023年/日本テレビ)、映画『違う惑星の変な恋人』(2024年)など、さまざまな作品への出演を重ねる。現在、連続ドラマ『3年C組は不倫してます。』(日本テレビ)に主演、11月からABEMAで配信される『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』では、主人公と行動をともにする「広瀬」として重要な役どころを演じている。
サボリスト〜あの人のサボり方〜
クリエイターの「サボり」に焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載
-
「楽しむ気持ちがあるから、将棋にも研究にも夢中になれる」谷合廣紀のサボり方
クリエイターの活動とともに「サボり」にも焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載「サボリスト~あの人のサボり方~」。 棋士でありながら、東大出身の情報工学者という顔も持つ谷合廣紀さん。将棋の対局だけでなく将棋AIの開発に勤しみ、さらには『M-1グランプリ』にも挑戦するなど、好奇心と行動力がずば抜けている谷合さんに、その原動力やサボり方を聞いた。 谷合廣紀 たにあい・ひろき 1994年、東京都生まれ。2006年に新進棋士奨励会に6級で入会し、2020年に四段昇段・棋士となる。第47期(2021年度)の棋王戦予選・決勝では、本戦トーナメント進出。また、東京大学に進学し電子情報学を専攻、自動車の自動運転技術や将棋の棋譜の自動記録プログラムなどの開発に携わる。現在は情報工学者として将棋AIの開発に力を入れており、2022年の第32回世界コンピュータ将棋選手権では独創賞を受賞した。 AIが将棋で人に勝つ時代がやってきて、自分の生き方を模索 ──まずは棋士としての活動について伺いますが、やはり奨励会(棋士志望者の育成機関)に入会したことで自然と棋士の道を意識されたのでしょうか。 谷合 そうですね。将棋道場といわれる場所に通うようになり、切磋琢磨していた同年代の人たちが奨励会に入って棋士を目指していくのを見て、私も同じ道を選んだので、けっこうまわりに流されやすいところがあるのかもしれません。高校生くらいまでは純粋に将棋が楽しくて続けていたので、将棋の本質や将来について考えたりするようなことも少なかったと思います。 ──意識が変わったきっかけなどはあるんですか? 谷合 ひとつには、高校生くらいでコンピューターが将棋で人間に勝ち始めていたタイミングだったことがあります。当時はまだ人間とAIが拮抗していましたが、いずれは成長したコンピューターに負かされていくわけで、将棋界や棋士という職業に不安を感じるようになったんです。そこで将棋や将来についてまじめに考えるようになり、将棋を続けつつちゃんと大学にも行っておこうと東大を目指すことにしました。 ──東大生と棋士の卵って、両立できるものなのでしょうか。 谷合 大学に入学したころには、棋士のひとつ手前である奨励会三段まで昇段していたので、辞めるのはもったいないと思っていましたし、両立もできると思っていました。とはいえ、そこから8年くらい三段に留まっていたので、将棋だけに打ち込まなかった弊害はあったのかもしれませんね。 ただ、棋士になれたのは年齢制限ギリギリの26歳でしたが、将棋一本でやっていると、最後の期に追い込まれて将棋のクオリティが下がってしまったりすることもあるんです。私の場合はリスクを分散したことで気持ちに多少の余裕があったので、最後の期でもちゃんと自分の将棋が指せたんじゃないかと思います。 ──棋士になったことで、見えてくる景色もまた変わってきますよね。 谷合 そうですね。棋士になれるかどうかのギリギリで追い詰められていたころに比べると、伸び伸びと自分のやりたい将棋が指せるようになったのは大きい気がします。棋士はもちろん勝つことも大事ですけど、いかに自分らしい将棋を指して将棋ファンの方々を魅せていくか、という意識も加わるので、将棋の内容も変わってくるんです。 将棋を軸に、自分にしかできないことを追求したい ──棋士としての谷合さんが思う「自分の将棋」とはどんなものなのでしょうか。 谷合 戦法の話になりますが、私はよく「四間飛車」という戦法で指していて、棋士はあまり指さないものの、アマチュアの方々には人気の戦法なんです。なので、アマチュアの方の見本になるような、教科書的な将棋を指すことを心がけています。あと、四間飛車は「振り飛車」という戦法に分類されるのですが、近年のAIではあまり評価されない終わった戦法だといわれることもあるんです。でも、そんなことはないと思っていて、棋士でも振り飛車で戦える可能性を見せたいという思いもあります。 ──逆にほかの棋士の将棋を見ていて、「強いな」と感じるのはどんなときですか? 谷合 いろんな要素があるのでひと口にはいえませんが、知識や戦略性が問われる序盤、読みの深さや早さが求められる中盤、詰むか詰まないかの判断力に左右される終盤とある中で、強い人には終盤力があると思いますね。「詰む/詰まない」の判断が正確で、優勢のときはそのまま勝ちきり、劣勢でも逆転に持っていく勝負力がある。まあ、藤井聡太さんみたいな方はそのすべてにおいて卓越していますが。 ──なるほど。では、ご自身の対局の中で印象深いものがあれば教えてください。 谷合 一度棋王戦というタイトル戦でベスト8まで勝ち上がったことがあるんですけど、そのベスト16のときに広瀬章人九段に勝てたことは印象に残っていますね。大きな舞台で、しかも広瀬九段という強い相手に自分らしい将棋で勝てたので。 ──谷合さんとしては、今後伸ばしていきたい点や棋士としての理想像はありますか? 谷合 あまり理想像みたいなものはないんです。ただ、普及活動にも力を入れたいとか、将棋AIを使った勉強ツールを作って実力向上に活かしたいとか、強い将棋AIを作りたいとか、将棋についてやりたいことは多角的にあります。将棋を軸に、自分にしかできないことをやりたい、伸ばしていきたいですね。 ──文化人として吉本興業に所属し、将棋好きな芸人さんたちのYouTubeチャンネルに登場されたりしているのも、そういった普及の一環なんですね。 谷合 そうですね。お笑い好きな方たちやAIに携わる情報系の方たちなど、将棋界の外にも声を届けたいと思っています。 ──『M-1』に挑戦(※)されたのは、芸人さんたちに触発されてのことなのでしょうか。 谷合 お笑い芸人さんと仕事をしていると、当然そのすごさを感じるわけですけど、やってみないとわからない部分もあるなと思ったんです。そんなときに、山本さんが『M-1』に出てみたいと言うので「じゃあやってみよう!」と。エントリー費を払えば誰でも参加できますし、アマチュアの参加も珍しくないので、一度は経験してみようという感じでしたね。 (※)2024年、山本博志五段と「銀沙飛燕(ぎんさひえん)」を結成して『M-1グランプリ』に挑戦。結果は1回戦敗退に終わった。 ──舞台に立ってみて、どうでしたか? 谷合 やっぱり緊張はしましたね。それに、人におもしろいと思ってもらえるネタを考えるのは難しいなと実感しました。一応将棋普及の目的もあるので将棋のネタにしたのですが、思った以上に伝わらなくてしっかりスベったというか……(笑)。初めて会ったお客さんも笑わせられる芸人さんはすごいなと、改めて感じました。 強いだけでなく学べる将棋AIの可能性を模索中 ──東大で情報工学を学ぶ道を選ばれたのは、やはり将棋があってのことなのでしょうか。 谷合 そうですね。ちょうど将棋AIが人間に勝とうとしていた時期だったとお話ししましたが、それでAIに興味を持って。勉強するなら、自分の将棋のスキルにつながるものがいいなと思ったんです。 ──実際に勉強してみて、どんなところに価値や魅力を感じましたか? 谷合 AIというよりプログラム全般の話になりますが、自分でプログラムを書けると、エクセルの作業といったタスクが自動化できるわけですよ。最近ではChatGPTみたいな大規模言語モデルが普及して、よりAIに任せられることも増えているので、どんどん便利になってきた気がします。それに、自分が書いたプログラムがかたちになり、アプリケーションとして世に出て使ってもらえる可能性があるところも、魅力のひとつですね。 ──まさにChatGPTによって日本でもAIの活用が一般化しつつありますが、ここまで普及すると思っていましたか? 谷合 日本語で指示できるAIがここまで早く浸透するとは思っていませんでしたね。とはいえ、今はまだその可能性を探っている状態なので、どういうふうに活用されるのか注視しているところです。私が研究している将棋AIの分野では、局面を入れたら最善手を示すことはできますが、なぜその結果になったのか、初心者にわかるように説明することはできませんでした。でも、ChatGPTのようなツールをつなげれば、日本語で解説するといったこともできるかもしれない。 ──膨大な計算を経て結果を導いているのだと思いますが、たしかにその過程がわかったほうが勉強になりますね。 谷合 今の将棋AIって、1秒間に数千万局面を計算できてしまうのですが、その過程はブラックボックスなんですよね。そこをわかりやすく解説するようなプログラムを実装していくか、そのあたりが研究の課題になっています。 ──そんなAIができれば、棋士としての谷合さんにもフィードバックがありそうな気がします。 谷合 そうですね。もちろん自分の将棋の勉強にも活かせると思いますが、勉強用ツールは別のかたちでも充実させたいと思っているんです。たとえば、将棋の定跡(決まった指し方、戦略)って膨大にあるので、一度暗記したものでもしばらくすると忘れてしまったりするんですよ。だから、自分が問題として取り組んでいた局面、定跡を、忘れたころに再び問題として出してくれるようなツールがあるといいなと思っています。 ──おもしろい。広く学習用のツールに活かせそうなアイデアだと思います。研究者としての展望も、AIを通じて将棋を豊かにしていく方向に広がっているんですね。 谷合 はい。自動車の自動運転技術に携わっていたこともあるのですが、自分が将棋を軸に置いている以上、研究も将棋に関するものに絞っていこうと思うようになりましたね。 趣味は将棋観戦。毎日観ていたい ──二足の草鞋を履いているような状態で非常にお忙しいと思いますが、谷合さんはサボることってありますか? 谷合 ずっとひとつのことに集中していても煮詰まったり、疲れたりしてしまいますから、何かを継続して長く続けるなら、サボりの時間も必要だと思いますね。私自身、やる気がないときは何をしてもダメな気がするので、「やる気がないときはやらない」というスタンスなんです。 ──そういうときは何をされているんですか? 谷合 基本、パソコンで作業しているのですが、やる気がないときはYouTubeを観ながら作業してみたり。それも集中の度合いによって違っていて、まだ集中力が残っているときは目で見なくてもいい音楽系、やる気がないときは芸人さんの動画、もっとひどいときはNetflixで映画を観てしまうときもあります。 ──Netflixは完全に息抜きモードですね(笑)。 谷合 そうですね。お皿洗いとか、家事をしているときもずっとNetflixを観ています。 ──お皿洗いとNetflixって両立できますか? 谷合 できませんか?(笑) ひとつのお皿を洗うのに1分以上かかったりと、効率的ではないと思いますが、Netflixを観ながらでもできているとは思います。 ──ほかに谷合さんにとっての息抜きって、どんなことがあるのでしょうか。 谷合 スマホのアプリで将棋の中継を観ているときはリラックスできるんですよ。逆に観ないと落ち着かないというか、土日は対局がないので、けっこうストレスに感じてしまいますね。 ──それは将棋ファンとして観ているということですか? お仕事でもあるので、いろいろ思うところがあったり、シンプルに観られないような気もします。 谷合 自分が対局するときはストレスというか緊張感がありますが、人の対局はあまり変な感情を抱かずに、エンタメとして楽しんで観ることができるんです。やっぱり将棋が好きなんですよね。クオリティの高い将棋を見せられると、「すごいな、自分もこれくらい指せなきゃな」って思いますし。 ──谷合さんにはプロ棋士の顔と研究者の顔があるということでお話を伺ってきましたが、なによりひとりの将棋ファンでもあるということなんですね。 谷合 そうですね。たしかに根底に将棋を楽しむ気持ちがないと、どれもできない気がするので、そこは本当に大切にしなきゃいけないなと思いますね。 撮影=石垣星児 編集・文=後藤亮平
-
「息苦しい世の中になっても、人をゆるさに引きずり込む仕事がしたい」スズキナオのサボり方
クリエイターの活動とともに「サボり」にも焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載「サボリスト~あの人のサボり方~」。 フリーライターのスズキナオさんの著作には、あてもなくふらりと旅に出てみたり、家から5分の旅館に宿泊してみたりと、日常を軽やかに楽しむ術が詰まっている。当然、サボりの心得もあるに違いないと、その極意について聞いてみた。 スズキナオ 1979年、東京都生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』などを中心に執筆中。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』、『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』、『家から5分の旅館に泊まる』(以上スタンド・ブックス)、『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』(新潮社)、『大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる』(LLCインセクツ)などがある。 ライターになる前から、のんびりと街を散策していた ──今ではライターとして多数の著書を出されていますが、もともとは会社員をされていたんですね。 スズキ 30代半ばまで東京で会社員をしていました。でも、10年くらい会社員を続けてきたところで、それこそサボってきたツケが回ってきたというか、行き詰まりを感じるようになって。できればずっとダメな平社員でいたかったのに、部下ができたりして立場が変わってきちゃったんですよね。 ──いわゆる管理職を任されるようになると、ダメ社員ではいられない。 スズキ そうなんです。それで将来について考えていた矢先に、奥さんが大阪の実家の家業を継ぐという話が持ち上がったんです。だったら一家で大阪に移住して、自分のやりたいことをやってみるのもいいんじゃないかと、大阪でフリーライターとして活動するようになりました。それが2014年ですね。 ──それこそゼロからのスタートですよね。 スズキ はい。最初は会社員のときから記事を書かせてもらっていたWEBサイトの仕事くらいしかありませんでした。ネットで書いていた記事がだんだん人の目に触れるようになり、じわじわと「うちでも書いてみませんか?」みたいに声をかけてもらえるようになった感じです。 ──そのころから街歩きのような記事を書いていたんですか? スズキ ダラダラと街を散歩しながら、おもしろいものを見つけたらそのことについて書いて、取材ができたら取材もするような感じだったので、今とあまり変わらないですね。それ以外に書きたいこともなかったので、無理しなかったというか、できなかったと思います。 会社員時代からウロウロとお酒を飲み歩いたり、はしご酒したりするのが好きだったんですけど、おいしいお酒や料理を求めているわけではなくて、街や路地のたたずまいや、お店の雰囲気なんかを味わうのが好きでした。そこも今と変わらない。 ──たしかに、スズキさんの記事はグルメというよりは体験に軸があるイメージです。 スズキ そうなんですよ。だから、ライターとしての研鑽みたいなものが積まれていかないというか……(笑)。酒場の記事をよく書くのにお酒の銘柄にも詳しくないので、「え、これも知らないんですか?」ってよく驚かれます。 ──では、書くもの自体は変わらないなかで、状況が変わってきたのはどんなタイミングだったのでしょうか。 スズキ スタンド・ブックスから最初の本『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』を出してもらったことですね。ウェブのあちこちで書いてきたものをまとめて本にするお話をいただいて、最初はいったん無料で公開された記事を本にする意味がよくわからなかったんですけど、この本が名刺代わりとなって、自分のスタイルやキャラクターを知ってもらえるようになって。何度か増刷されるような反響もあって、おかげで自分にとってやりやすい仕事がいただけるようになりました。 ──今ではすごいペースで著書が刊行されてますよね。 スズキ 僕をスタンド・ブックスに紹介してくれた、酒場ライターのパリッコさんと一緒に記事や本を書くことも多いので、それで数が増えていったんじゃないかと思います。本を出せるなんて思っていなかった時期も長かったので、こうして振り返ってみるとありがたく感じますね。 ──パリッコさんとのユニット「酒の穴」といえば、「チェアリング」(※)が大きな話題になりました。 スズキ あれはもう我々の手を離れて、ひとつのアクティビティになった感がありますね。我が物顔で「あれは俺たちが考えたものだ」みたいなことは言わないようにしようと、パリッコさんとも話しています。コロナ禍によってお店で飲めない時期だったこともあって時代にフィットしたのかもしれませんが、我々は「チェアリング」と名づけただけで、やっている人は前からいたと思いますし。 (※)持ち運びできるアウトドア用のチェアを屋外の好きな場所で広げ、ぼーっとしたりお酒を飲んだりすること。スズキナオとパリッコによる飲酒ユニット「酒の穴」が「チェアリング」と名づけて提唱したところ、テレビなどのメディアに取り上げられるほどの反響を呼んだ。 名所を見終わったあとの旅も楽しい ──記事を書くために旅に出てみたものの、これといった出会いもなく「このままだとただ遠くに来ただけで終わってしまいそうだ」みたいなこともあるのでしょうか。 スズキ あります、あります。期待したようなことが起きなくても締め切りはあるので、ダラダラとその土地まで行く過程を書くとか、別のところでおもしろ味を作っていくしかなくて。でも、その感じも好きなんです。お店も何もない住宅街を歩いていても、コンビニで買ったお酒が飲めるちょっとした川べりにたどり着ければ、それはそれで気分がよかったりする。街歩きって、そもそもそういうものかもしれないですね。 ──たしかに、散歩ってそういうものですよね。でも、一応現地でもがいてみたりはするんですか? スズキ 本にもなった大阪の環状線の駅周辺をひと駅ずつ即興で旅するような連載では(『大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる』)、ただの住宅街を2時間ぐらい歩いて「さすがに何も書けないかも……」と焦ったことはありました。でも、なんとかクリンチしていたら、住人の方にお話を聞くことができて。そうするとただの住宅街に見えた街でも、「自転車であの繁華街まですぐ行けるし、意外と便がいいんだな」とか、いろいろ見えてくる。そういう出会いでなんとかなってきた気がします。 ──住宅街にぽつんとある居酒屋とか、地元の人すらスルーしてしまうような場所を掘り下げるスズキさんのスタイルは、そういった粘りから生まれたところもあるんですね。 スズキ 何かしらお店があればしめたものですね。そういうところのほうが、かえって密な話が聞けたりするので。名店を調べて行くのも好きですなんですけど、それでは絶対に行けない場所もあるんですよ。 家から5分の旅館に泊まったのも、旅行をテーマにした連載の締め切りが迫ってきて、行ける場所が近所しかなかったという状況がきっかけでした。けっこう行き当たりばったりというか、せっぱ詰まって動き出すことが多いんです。でも、動いてみたら状況が好転するだろうと信じてやっている。 ──街歩きの際にチェックするポイントなどはあるのでしょうか。 スズキ 大衆酒場や銭湯が好きなので、そういった地元の方々が集まっていそうな場所を探します。そこでズケズケと話を聞くでもなく、なんとなく聞こえてくるその土地の情報をヒントにして歩いていく。ゲームしている感覚に近いかもしれないですね。 僕もミーハーなんで、大阪に旅行に行ったのなら、まず大阪城やグリコの看板は見たいんですよ。ただ、全部行き終わった4日目以降の旅もけっこうよくて。ヒマだしちょっと疲れてもいるからホテルの近くをウロウロしていたら、食べログでは評価されてないようなちょっといい店が見つかるとか、飽きてからの旅っておもしろい気がするんです。 ──3日目のカレーみたいな旅ですね。 スズキ まさにそうですね。3日目のカレーに初日からかぶりついてしまうこともよくあります(笑)。子供のころ、両親の故郷の山形に帰省するのがすごく好きだったんです。東京で新しいゲームソフトを買って遊ぶような楽しさとは違う、じわじわくるよさがあって。たまに行く田舎だったからかもしれませんが、優しい親戚に囲まれて、何もすることなくぼーっと過ごしているのが、幸せな退屈として記憶に残っています。それが原体験としてあるから、サボりグセがついたというか、ぼんやりした時間が好きなのかもしれないです。 ──それが仕事になっているからおもしろいですよね。「締め切りが近いから行かなきゃ!」って追われるように家を出て、お酒を飲んだりぼーっと街を歩いたりしているわけで。 スズキ そうなんですよ、その状況が発生しないと書きたくない。「これでいいのか?」という不安とも戦ってはいますが、ぼーっとできる仕事は気楽で楽しいですね。 ──記事を作るにあたって、ほかに大事にしていることはありますか? スズキ できれば自然に縁ができた土地を取材したくて。よそ者が「エキゾチックだ!」なんて外からのぞいている感じになるのがイヤなので、できるだけ自然な流れで入っていきたいんですよね。そうじゃないと自分らしい書き方にはならないような気がします。 最近では、日本の離島のイベントに行って琵琶湖にある「沖島」という有人島をおすすめされたという記事を書いたときに、沖島に縁のある方から「今度行きませんか?」って誘ってもらえたんです。1日巡っただけですが、自然な縁で行けたのがうれしかったし、島自体もおもしろかったですね。 ──そういった中で印象的な出会いを挙げるとしたら、どんなものがあるのでしょうか。 スズキ 『デイリーポータルZ』で記事を書いた、大阪市此花区にある千鳥温泉っていう銭湯ですね。洗い場の鏡にくっついている「鏡広告」の広告主を募集していたんですよ。銭湯の方がアイデアマンで、新たに街のカフェやレストランから広告を募ったら、意外と広告主になってくれる人がいるんじゃないかと思ったそうで、その広告ができるまでの過程を追いました。 ──実際に『デイリーポータルZ』の広告を作ったんですよね。 スズキ そうです。もう亡くなられてしまったんですけど、当時90歳になる松井さんという字書き職人さんがいて、手書きで文字を入れてくれました。独学による手書きとパソコンを組み合わせたレタリングの手法や戦争体験とか、松井さんにいろいろお話を聞くことができて。作業の工程なども見せていただき、すごく貴重な体験でしたね。 サボりの灯を絶やしてはいけない ──幼少期にサボりグセが刷り込まれたとおっしゃっていましたが、やはりそのクセは抜けていないのでしょうか。 スズキ はい、僕はもう本当にサボり人間です。締め切り当日になってもなかなか向き合わず、自分でもイヤになるくらいサボってしまいます。なんでだろう(笑)、追い込まれれば追い込まれるほどサボりが楽しくなっちゃって。一応やる気になる瞬間を待っている状態ではあって、うっすら記事の構成を考えたりしてるんです。それが固まるまで机に座って向き合っているよりは、散歩してるほうがいいような気がするんですよね。 ──いわゆる“寝かせる”タイプで、頭の中で記事の内容をなんとなくイメージしているから、書き出せさえすれば書ける、みたいな。 スズキ その時間も大事な気がして。「こういう話から始めようかな」と出発点を頭の中で何回も試して、どれがいいか考えながらサボってるつもりではあります。先ほどお話ししたように、僕は「なんでそこに行くことになったのか」から書きたいほうなので、きっかけとなった出会いから出発に至るまでのルートをたどっていくんですね。読む人にしてみたら、「なかなか行かねーな」って感じかもしれませんが(笑)。 ──罪悪感を抱くようなサボりではなく、積極的に息抜きをするためのサボりはありますか? スズキ ありますね。原稿を書き上げたあと、一回サボりを入れてから推敲したほうがいいと思うんですよ。書ききれなかった部分や配慮の足りなかった部分などが見えてくるなど、別の視点が生まれるので。だから視野が狭くならないように、一回飲みに行ったり公園を散歩したりしています。外の空気を吸って、全然自分と関係ない世界を見ておくことが大事なんでしょうね。 ──ちなみに平社員を満喫していた会社員時代は、どんな感じだったんですか? スズキ 僕と同じくらいやる気がない同僚と、いつも仕事帰りに飲みに行っていました。会社があった渋谷の街を歩きながら、缶チューハイを飲むスタイルで。そのせいか、会社ではいつも軽い二日酔いか寝不足の状態で、「こういうときは寝たほうが効率がいいんだよ」って自分に言い聞かせては、トイレや外のベンチなんかで寝てましたね。 その後、田町にオフィスがある会社に出向したんですけど、そっちは渋谷のときのようなゆるさがなくて。節電のために定時でオフィスの電気が消されるのに、それでも仕事してる人がいるような感じでした。でも、僕は夕日がきれいだったら、仕事の手を止めてみんなで窓の外を見たりしたほうがいいと思うんです。 ──なんだか『釣りバカ日誌』みたいな話ですね(笑)。 スズキ 本当にそういうつもりでしたね。みんなの息抜きキャラとしてサボり方を教えたい、「このくらいサボっていいんだ」とみんなに知らせる存在として自分はここにいるんだ、みたいな。でも、気がついたら怒りの対象になっていて……。 もっと科学的にサボりの大切さが研究されないとダメなのかな。海外の権威に言ってほしいですね、「ストレスは作業効率を低下させるから、会社には仮眠スペースを設けなさい。夕日がきれいだったらみんなで眺めなさい」って。 ──みんながスズキさんの本を読めば、少しは風向きも変わるような気がします。 スズキ そうなったらうれしいですね。大げさに言えば、世の中がせわしなく息苦しくなっていくなかで、逆サイドのゆるみ側に人を引きずるような仕事をしている気持ちもなくはないんです。本当に微力ではありますが、パリッコさんみたいな仲間と一緒にせめてもの抵抗をしている気がします。 ──「酒の穴」は政治団体だったのかもしれない(笑)。 スズキ タバコもそうですけど、お酒だっていつ自由に飲めなくなるかわかりませんからね。サボりだって禁止になるかもしれない。 ──本当に、今後もサボりを啓蒙していただきたいです。微力ながらこの連載でもお手伝いしていきますので。 スズキ そうですね。サボりの価値を訴えながら、上手にサボる。そういう洗練されたサボり方も提案してきたいと思います。 撮影=石垣星児 編集・文=後藤亮平
-
「仕事も趣味も“収集”をモチベーションにする」宇垣美里のサボり方
クリエイターの活動とともに「サボり」にも焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載「サボリスト~あの人のサボり方~」。 今回お話を伺ったのは、フリーアナウンサー・俳優の宇垣美里さん。ドラマ出演やラジオパーソナリティ、コラムの連載など、さまざまな顔を持つ宇垣さんに、そのスタンスや切り替え方を聞いた。 宇垣美里 うがき・みさと 1991年、兵庫県生まれ。TBSアナウンサーとして数々の番組に出演し、2019年に退社。現在はドラマやラジオ、雑誌、舞台出演のほか、執筆活動も行うなど活躍の幅を広げている。『週刊文春』(文藝春秋)、『女子SPA!』(扶桑社)などでマンガや映画のコラムを連載中。著書に『今日もマンガを読んでいる』(文藝春秋)、フォトエッセイ『風をたべる』(集英社)など。 ラジオは自分の思いを話すことができる場所 ──現在はさまざまな分野で活躍されていますが、やはりTBSでアナウンサーをされていた経験が、活動の土台になっているところはあるのでしょうか。 宇垣 そうですね。中でもTBSにはラジオがあったので、ラジオで自分の思っていることや人におすすめしたいことなどをしゃべってきた経験は大きいです。こうしたインタビューでもなんでも、振られた質問やテーマに対してすぐに返すという反射神経は、TBS時代に鍛えられました。 また、何か心に残るものがあったら、それについてどうしゃべろうか考えたり、なぜそれがよかったのか、どこが響いたのか、言語化したりする習慣がついたのも、あのころの経験によるものだと思います。 ──TBSラジオというラジオ局もあることで、アナウンサーのみなさんがテレビとラジオ、両方出演されているのはTBSならではですよね。 宇垣 アナウンサーが自分の思ったことを話す機会は、なかなかないんです。番組にもよりますが、ラジオでは「あなたはどう思ったの?」と聞かれることが多いので、とても幸運だったと思っています。私は比較的早いうちからラジオの仕事につくことができて、すごくありがたかったです。 それに、スタッフさんから「あなたは何か書いてあることを話すよりは、それに対してどう思ったのか話すことのほうが好きなんだね」と言われたこともあり、ラジオは自分に向いているメディアなんだと思うようになりました。アナウンサーとしては、いいことなのかどうかわかりませんが。 ──ラジオでの経験というと、フリーになった現在も曜日パートナーを務められている『アフター6ジャンクション』(※)の存在は大きいのではないでしょうか。 宇垣 本が好きです、映画が好きです、舞台が好きです、マンガが好きですと言っていたら、アトロクというカルチャー・キュレーション番組を担当させていただけたので、好きなことを言い続けるのって、大事だなと思いました。 今ではもう実家みたいな存在です。番組もパーソナリティの宇多丸さんも、私たち曜日パートナーのことをひとりのパーソナリティとして大事にしてくださっていて、「この人が輝くもの、おもしろいと感じるものはなんだろう」と考えてくれるんです。だから、曜日によってカラーが全然違うんですよね。一番自分らしくいられて安心できる、とても大切な番組です。 (※)RHYMESTERの宇多丸がパーソナリティを務めるTBSラジオの生ワイド番組。通称『アトロク』。現在は『アフター6ジャンクション2』として放送中。 ──リスナーも、この番組を通じてパートナーの方々の個性を見出し、親しみを覚えているように感じます。 宇垣 そうですね。ある意味では甘やかされているとも思います。でも、たとえばお酒好きの日比麻音子アナウンサーに『おんな酒場放浪記』(BS-TBS)のお仕事が来るようなことって、なかなかないじゃないですか。知られざるパートナーの一面に光を当ててもらえている。私も番組で発信していたから映画のコメントや本のお仕事をいただけるようになったので、すごくありがたい場所だと思っています。 ──宇多丸さんから影響を受ける部分もありますか。 宇垣 それはもう、こんな大人になりたいと常々思っていて。私より忙しいのに、あまりにもたくさんの映画や本、ゲーム、ライブなどに触れていて、意味がわからないです(笑)。あと、インプットを続けているからこそ、自分の考え方が古びていないか常に懐疑的で、だから「おじさんみたいなことを言う!」と感じることが全然ない。それって奇跡みたいなことだなと思っています。私ですら若い世代の人たちに寄り添えているのか、ずっと自信がないのに。 文章の自分が、一番ウソがない ──最近はコラムやエッセイを書く仕事も多いですよね。書くことには立ち止まったり迷ったりしてしまう場面もあるかと思います。文章を書くことについて、どう思われていますか。 宇垣 もともと記者を志望していたくらい、書くことは好きだったんです。それが巡り巡ってお仕事になり、人に読んでもらって褒めていただけて、本当に運がいいなと思います。話す言葉ってパッションが伝わるぶん、思ってもない言葉が出てきたり、強すぎてしまったりすることもあるじゃないですか。でも、書くことは考えたり見返したりして推敲するし、編集者さんの意見や校閲も入るので、伝えたいことについて「これで勘違いされるなら、もうしょうがないよね」と思えるところまで研ぎ澄ますことができる。だからこそ、一番ウソがない、私自身だなと思います。 ──ご自身の濃度が高い文章を世に出して、人に読まれることについてはどう感じられていますか? 宇垣 エッセイはまた違ってきますが、映画評やマンガ評、書評などでは基本的に作品について書くので、あまり気にしていないかもしれません。ただ、私は作品について学術的に書くことはできないので、なぜ心に刺さったのか、自分を介して書くしかない。そういう意味では自分のことを書いているんですけど、書評なら「頼むからこの本を読んでくれ!」という思いがまずあって、そこから読んでくれた人に刺さったらうれしいという気持ちが大きいですね。 ──「自分」の出し方以外にも、ジャンルによって意識の違いはありますか? 宇垣 メディアによって読み心地は変わるべきだと思っています。たとえば『週刊プレイボーイ』(集英社)で連載しているエッセイなら、読んでいて楽しいリズムや読みやすさにこだわるなど。文章がリズミカルであることを大事にしていて、読み心地のために多少創作することもあります。 人の本を読むときも、文体がすごく気になるんですよ。同じことを書いているのにその人らしい文章になるのは、文体にその人が宿っているからだと思うので、自分の文章でも人の文章でも、そこはすごく意識していますね。 ──文体以外にも、エッセイだと「何に引っかかるか」といった着眼点にも個性が出ると思います。宇垣さんはどんなことが心に残りやすいと思いますか。 宇垣 プレイボーイは毎週締め切りがあるので、ネタになると思ったものはすぐに書いちゃうんですよね。ただ、心惹かれたエンタメについては、観ている人と観ていない人がいるので、よっぽど好きでない限りはあまり扱わないです。なので、人が「あるある」と思ってくれるような日常の些細な出来事や、「私だけじゃなかったんだ」と思ってもらえるような自分のダメな瞬間などを書くようにしています。 ──なんだか毎週エピソードトークを用意しているラジオパーソナリティみたいですね。やっぱり締め切りの数日前からソワソワしたりするものなのでしょうか。 宇垣 いや、だいたい締め切りの日になって「書くことなーい!」と絶望することがほとんどです。だから、前回の原稿を書くまでに時間がかかりすぎたときは、その翌週に先週いかにダラダラしていたか書いたりすることもあります。あとは、自分のめんどくさい部分について、心に引っかかったことだけメモしておいて書くこともありますね。たとえば初めて会った人に「どういう性格なんですか?」と聞かれて、どういう性格かひと言で答える人ってちょっとヤバくないか、と思ってしまったこととか。 けっこうメモ魔で、3年日記っていう、1ページが3年分に分かれている日記もずっと続けています。1年前、2年前に書いたことと見比べられるので、「うわ、1年前と同じこと言ってる」みたいな発見でエッセイが1本書けるんですよ。 自分の中の引き出しを埋めていきたい ──宇垣さんはラジオや執筆活動以外にも幅広く活躍されていますが、仕事ごとに求められる役割について、どのように向き合っているのでしょうか。 宇垣 特にテレビのバラエティなどはある種のキャラクターを求められることもありますが、それはお仕事としてできるだけ応えるようにしています。ただ、自分の中から出てこないもの、自分の倫理や思想に反するものはできないので、そこは厳しくジャッジしていますね。5センチぐらい思っていることを30センチにすることはできますが、0から5センチにしてしまったらウソになるので自分が悲しくなるし、責任も取れないです。 ──たしかに、宇垣さんは自分なりの倫理観を大事にされている印象があります。では、そういった求められることと資質がマッチしていると感じる仕事や、自分からやってみたいと思う仕事はありますか。 宇垣 私は表現することがすごく好きなので、書くことでも、しゃべることでも、番組に出ることでも、演じることでも、その媒体に合わせて自分が出したいものを表現するのが向いているなと思っています。 あとは、自分の中の空いている引き出しを埋めるのが好きで、やったことのないことをクリアしていくと、すごく豊かな気持ちになります。ちょっと収集癖に近くて、やったことのないことはなんでもチャレンジしてみたいし、食べたことのないものも食べたいし、行ったことのないところに行きたい。それが自分の原動力になっていますね。 ──珍しい引き出しを埋めた経験としては、どんなものがありますか? 宇垣 演技のお仕事も、最初は空いていた引き出しのひとつで。バラエティ番組のようなある瞬間に集合してパッと解散するような現場と違って、ドラマや舞台は長いスパンをかけてみんなで作り上げていく。チームとしてひとつの作品を作り上げていくという経験は新鮮でしたし、自分はそういうことが好きなんだという発見がありました。 ──では、今後埋めてみたい引き出しは? 宇垣 作る側ですね。映画やドラマの監督、小説家といった0から1を生み出す仕事にすごくリスペクトがあるからこそ、そんなに簡単にできるものではないだろう、と自分の中でハードルが上がってしまうのですが。 ──勝手ながら、小説はすごくイメージできる気がします。 宇垣 短編を書いたことはありますが、自分の中に蓄積がありすぎて、何をやってもダメだと思ってしまいそうなんですよ。自分の中にいろんな方の影響を感じてしまったり、すでに書かれているなと思ったり、そこをどうやって乗り越えていくかですね。あとは、虚実を織り交ぜるエッセイから、小説というウソへの一歩が踏み出せるかどうか。そのあたりはまだわかりませんね。 仕事としても、サボりとしても、本を読む ──原稿の締め切り前についダラけてしまうとおっしゃっていましたが、サボりグセはあると思いますか? 宇垣 ありますね。お仕事する時間はできるだけ短く巻いていくのが好きなんですけど、書くことだけはやる気スイッチ頼みすぎるっていう。結局、締め切りの日にため息をつきながら構成用のノートを広げることが多いです。 そこからまずノートに書きたいことを並べて、書く順番をつけていくんですけど、それができたところで一回「終わった〜」と思ってしまうんですね。それでダラダラしたり、本やマンガを読んだりして、日付が変わってから「うわーっ!!」と慌ててパソコンを開くこともよくあります。それもまた終わりが見えてくるとできた気になって、紅茶を淹れようとしたまま紅茶の並びを入れ替え始めたり……。 ──テスト前の学生みたいですね(笑)。よくわかります。本を読むような腰を据えたサボり方はなかなかできませんが。 宇垣 映画は受動的に観るので、家だとどうしても気が散ってしまう。でも、本は自分で目を動かしながら能動的に読むので、その労力によってムダな力がそがれるというか、無心になって作品に集中できるんですよ。違う世界にダイブしているような感覚ですね。 ただ、ちゃんとお仕事に関係のある本を読んではいるんですよ。エッセイの参考に人の作品を読んでみるとか、書評を書こうとして著者の昔の作品も読んでみるとか、帯コメントを依頼されている作品を読み返すとか、今読む必要があるかどうかは別として、読む理由はあるんです。 ──読書が仕事であり趣味でもあるから、読み分けることがリフレッシュにもなるんですね。 宇垣 そうですね。単に集中力がないだけかもしれませんが、ずっとパソコンの画面をにらみつけているくらいなら、気持ちを切り替えてほかのことをやっちゃったほうがいいような気もして。それに、「いつか絶対に原稿はできる」という自分に対する謎の自信と信頼があるんです(笑)。それが「今日中にやる」から「寝るまでにやる」、「編集者さんが起きるまでにやる」に変わっていったとしても。 ──では、読書以外で、もっとシンプルに息抜きや楽しみになっているものはありますか? 宇垣 1日休みがあれば日帰りで広島に行ったりするくらい旅行も好きなんですけど、最近ハマっているのは、シルバニアファミリーを集めることです。コンビニで売っているのを見て「かわいいな」と買ってしまったのが沼の入口で、ポップアップストアや専門店にまで行くようになりました。 シマエナガの服を着ているアザラシの赤ちゃんとかがいるんですよ。そんなかわいくて平和な世界を眺めてニコニコしています。あとは、ダム。ダムを見に行って、ダムカードを集めるのが好きです。 ──ダムカード? 宇垣 ダムに行くと、そのダムの写真や歴史、情報が載ったカードがもらえるんですよ。大きな人工建造物がすごく好きな上に、収集癖も満たされるところがいいですね。ダムを見ているうちにだんだん解像度が上がってきて、形状や仕組みの違いが見分けられるようになってきました。この前、ついにダムのお仕事もいただいて、またひとつ好きと言っていたものが仕事につながり、ダムカードまでもらえてうれしかったです。 撮影=石垣星児 編集・文=後藤亮平
エッセイアンソロジー「Night Piece」
気持ちが高ぶった夢のような夜や、涙で顔がぐしゃぐしゃになった夜。そんな「忘れられない一夜」のエピソードを、オムニバス形式で届けるエッセイ連載
-
踏み込めないまま大人になったふたり、“あーちゃん”と距離が近づいた夜(金井 球)
エッセイアンソロジー「Night Piece〜忘れられない一夜〜」 「忘れられない一夜」のエピソードを、毎回異なる芸能人がオムニバス形式でお届けするエッセイ連載。 金井 球(かない・きゅう) 2001年9月の新宿に生まれる。寿司屋のバイトを「賄いに寿司が出ない」という理由で辞めたこともあったが、最近は執筆やZINE制作、Podcast番組『ラジオ知らねえ単語』の制作・出演、演技など、精力的に活動の幅を広げている。 X:@tiyk_tbr Instagram:@tiyk_tbr note:@tiyk_tbr 正直、踊ることがおもしろいみたいなフェーズはとっくに終わっていて、それでもあーちゃんとわたしは踊りをやめたくないから踊っていた。 わたしたちにできる踊りのレパートリーは、とっくに尽きていた。左右に揺れる/お尻を振る/腕を広げる/肩をくねらす。義務感とかではなかった。いつでもやめられる踊りを、踊りをやめたくないという明確な意思を持ってやめなかったふたり。左右に揺れる/お尻を振る/腕を広げる/肩をくねらす。はじめて、わたしたちはいまどうしようもなく姉妹だなと思った。 意外だと言われることが多いのだけど、わたしには妹がいる。あーちゃんという、髪がピンクの4歳下の妹だ。意外だと言われることが多い、というのは、自認がどうとかではない。本当に、いままで100人と兄弟構成を当て合って、100人がわたしに妹がいること、わたしが長女であることを見抜けなかった(わたしにはそれを褒め言葉だと思っている節がある)。 わたしのあざとかわいさがそう思わせるのか、面倒見のよくなさが一瞬でにじんでしまうのかはわからないけど、とにかくわたしは世界中の初対面のだれからもお姉ちゃんだと思われたことがない。正直、自分でも自分の中に姉らしさみたいなものをひとつも見出せない。 一度、あーちゃんの18歳の誕生日のプレゼントを買うために、自分でもなかなか入れないデパコス売り場に行った。「妹のプレゼントを買いたいんですけど……」と、はじめて話したBAさん(ビューティーアドバイザー)に伝えたとき「自分がかなり自覚的に姉をやりにいっている」ということにすぐ気がついてしまったくらい、わたしは日頃まったく姉じゃない。 あーちゃんとわたしは父親が違う。 そんなに意識せず生活してこられたけれど、そういうこともあってか、わたしたちの間には少し不思議な距離感があると思う。趣味はまったく被っていない。洋服もシェアしない。子どものころはよくケンカをしていた気がするけど、ある程度大きくなってからは一定の距離を保って暮らしていた。 そういえば、あーちゃんの友だちと話したことがない。真夜中のキッチンで恋バナをしたこともない。父からはよく「仲がいいんだか悪いんだか、わかんないね!」と言われるが、仲はよくも悪くもないと思う。干渉しない。そんなルールがあるみたいに、わたしたちはお互いに踏み込まないまま、同じ部屋で大きくなった。 離れて暮らすようになってからは、頻繁に連絡を取り合うこともない。姉らしくきょうだいを溺愛するまわりの姉たちに憧れては少しまねをしてみるが、やはりそこまでの熱はない。照れくさいのかもしれない。きっと、あーちゃんだってわたしに溺愛されることなんて望んでいないのではないか、と思うけど本当の気持ちはわたしにはわからない。友だちじゃないし赤の他人じゃない、家族と言い合うのは恥ずかしい。ママの血と家だけがわたしたちをつないでいると思う。わたしたちはそれでいい。一緒にご飯を食べても、銭湯に行っても、この距離感が縮まることはないのだろうと思う。 2月のことだ。餃子パーティーをしたいというママの提案によって、あーちゃんとわたしはママの家に遊びに行った。18時、先にあーちゃんと合流してスーパーで食材を買っているとき、そういえばあーちゃんのことをわたしは「あーちゃん」としか呼んだことがないと気がついた。それに、ママの家をあーちゃんと訪ねたのははじめてだった。 みんなで作ったママの餃子を食べながら、19歳になったあーちゃんの成人式が、もう来年に迫っていることを話した。 「あーちゃん。振袖は、わたしも着たおばあちゃんのお下がりを着るのが絶対いいよ!」姉らしいことを言ってみて、「あらまあ姉ですね〜」と思った。わたしが姉らしさをものにすることはきっと一生できないんだろう。 食事が終わって、しばらく布団に横になったあと、おもむろに立ち上がったわたしはリビングへ向かった。半分くらい残していた缶ビールを飲み干すとすごく気分がよくて、好きな曲を流してみる。人の家で好きな曲を流すのはビールを飲み干すことより気分がいい。電影と少年CQに合わせてでたらめに踊っていると、あーちゃんがそれに続いて、次にママが続いて踊り始めた。3人は、わたしのiPhoneからシャッフル再生で流れてくるどんな曲調にも合わせて踊った。肩が触れそうになるたび爆笑しながら踊った。 30分くらい経ったあたりでママはお風呂に入るからと踊りをやめて、リビングにはあーちゃんとわたしふたりだけになった。左右に揺れる/お尻を振る/腕を広げる/肩をくねらす。おもしろくないのにやめたくない。 わたしたち、おもしろくないのに、やめたくない。 いまこの瞬間、この世界で心がつながっている唯一の人間だと思った。どっちが上とか下とかはなく、なんか人間同士として姉妹だった。 ママがお風呂から上がって布団に横になりはじめても、わたしたちはふたりきりで、いつでもやめられる踊りを踊った。左右に揺れる/お尻を振る/腕を広げる/肩をくねらす。そんななか。革命が起きる。あーちゃんが手を拳銃の形にしてこちらに向けてきたのだ。頭のうしろのほうで爆発音がした。 左右に揺れる/お尻を振る/腕を広げる/肩をくねらすしかなかったわたしたちの世界に、とつぜん具体的なイメージが持ち込まれて、あろうことかその銃口は、ずっと一緒にたのしく踊っていたわたしに向けられている。すごくおかしかった。笑いすぎて涙が出る。笑いながら泣きながら、向けられた銃口によって、また少しずつ、一度近づいたはずのわたしたちが、いままで保たれてきた距離感に戻っていく感覚があった。 拳銃を突きつけたまま、突きつけられたまま、わたしたちは踊り続けた。 しばらくしてあーちゃんが踊りながら寝室に帰っていって、それで、わたしたちの夜は終わった。 文・写真=金井 球 編集=宇田川佳奈枝
-
悔しくてノートに怒りをぶつけた、いろいろな感情が交錯する夜(箭内夢菜)
エッセイアンソロジー「Night Piece〜忘れられない一夜〜」 「忘れられない一夜」のエピソードを、毎回異なる芸能人がオムニバス形式でお届けするエッセイ連載。 箭内夢菜(やない・ゆめな) 2000年6月21日生まれ、福島県出身。2017年8月、「ミスセブンティーン2017」でグランプリを受賞し、雑誌『Seventeen』の専属モデルとしてデビュー。2018年、ドラマ『チア☆ダン』(TBS)でドラマ初出演、2019年には映画『雪の華』で映画初出演を果たす。以降、ドラマ『ゆるキャン△』シリーズ(テレビ東京)、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ)、『明日、私は誰かのカノジョ』(MBS・TBS)『マイ・セカンド・アオハル』(TBS)などに出演。また、バラエティ番組『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)の「出川ガールズ」としても活躍。 Instagram @ yumenayanai_official 「夜」 私にとっては“敵”のようにも感じる。 普段は前向きでポジティブな私を、 ネガティブに変えてしまうような気がするから。 なぜなのだろう。 「夜」の自分は自分自身でも理解ができないほど、いろいろな感情が入り交じる。 私自身が矛盾する。 そんな「夜」ばかりだ。 私は毎日、無意識にひとりで反省会をしてしまう。 今日はうまく発言できなかったな…… あのタイミングでこう言っとけばよかったな…… あの人に嫌われていないかな…… うまくみんなの輪に入れてなかったな…… もっとああすればよかった。 もっとこうすればよかった。 でも、今日これを言えたからスッキリした! 自分の気持ちはやっぱり素直に言うようにしよう! みんなに褒めてもらえたのうれしかったな〜。 今日のお昼ご飯おいしかったな〜。 浮き沈みが激しいとは、私のことをいうのだと思う。 そして時々、そんなことを考えているうちに、どんどん考え事のスケールが大きくなっていく。 自分は、人生を生きていく上で何をしたいんだろう。 今の現状に満足しているのかな。 将来、自分はどうなりたいのかな。 人生においての優先順位ってなんだろう。 もしも明日地球が滅びるってなっても、後悔しないかな。 もう、キリがない。 21歳の夏、とある夜 いつものように反省会をしていた。 この何気ない、何か嫌なことがあったわけでもない日に、私は突然爆発した。 なぜか「怒り」が強かった。 でも、この怒りをどこにぶつければいいのかわからず、私は無我夢中で、ひたすらノートに自分の思いを殴り書きした。 その筆圧は、紙を破く勢いだった。 「思うままに、直感でやりたいことをやればいいものを、なぜこんなにもいろいろな思考が入るんだろう。言葉を選びすぎて、結局何を言いたいのかわからなくなってしまう。質問されたことから脱線してしまう。 そして結局伝わらない。 これはどうしたら改善できるの? 私の頭の中のことを代弁してくれる小人でもいればいいのに。 自分がどうしたいのかも理解できていない。 どうしたいのかくらい、自分で決められるようになってくれ……。 人に合わせることばかりじゃなく、 自分の思いを話さないとどんどんおかしくなるぞ。 はぁ、何も考えたくない。 何にも追われたくない。 自分から逃げたい。 自分にもいいところはたくさんあるんだから。 自分に甘いのを乗り越えればもっとできるはず。 支えてくれる人、アドバイスをくれる人、怒ってくれる人、背中を押してくれる人は幸せなことにたくさんいるんだから。 逃げずに自分自身が自分のことを支えてあげたい。認めてあげたい」 そんな内容だった。 自分がわからなくて、ムカついて、悔しくて、涙でぐしゃぐしゃになりながら書いた。 私は「言葉」をうまく人に伝えることが苦手で、とてもとても時間がかかる。 心で思っていること。 自分の意思、意見。 これがスパッと言えるようになったら、どんなに楽だろうか。 声にできない悩みが少しずつ溜まっていって、キャパオーバーになってしまったんだと思う。 まだ芸能界に入りたてで、この世界の難しさと厳しさに耐えることで必死だった17歳のころ、 「何があっても、どんな状況でも、笑顔でいないといけない仕事を、夢菜はしているんだよ。だから、家族に何かあってもテレビの前では笑顔でいなさい。それがプロだからね」 と、母から教わったこの言葉を、私はふと思い出した。 17歳のころは、なんでそんなことを言うの? と、その言葉の重みを感じることはできていなかったが、21歳の私は、その言葉で何度も立ち直ることができていた。 私はこの仕事が好きだし、いくつになってもやっていたい。 そう思える仕事に出会えたことは本当にありがたいことだし、今まで続けられているのもまわりの人が支えてくれているから。 見てくれている人がいるから。 そう思うと、少し涙が落ち着いた。 そして私は肩に力を入れず、楽にこの世界で生きていく方法を考えた。 職場での自分、ひとりのときの自分 家族の前での自分、友達の前での自分 このいろいろな自分を、使い分けることができたらいいのではないか。 でも、これってもしかしたら今まで意識していなかっただけで、普段からしていることなのではないかな。 そうも思えた。 よし、これから意識してみよう。 まずは、身近なところから。 と、いろいろなタイプの「自分」を使い分けてみると、 本当に少し楽になった気がした。 私は、出会う人、一人ひとりにいい顔をしようとしすぎていたんだ。 いろいろな自分も、結局は私自身の中に存在するものだから。 偽りでもなんでもない。 もっと気楽に「楽しむ」ようにしてみよう、そう思い、実践できたとき、頭が軽くなった気がした。 前よりも人と話せるようになった。 あの日 たくさん泣いてたくさん考えて、自分の中のモヤモヤと葛藤して、でも自分は嫌いになりたくなくて、いろいろな感情が交互にあふれてこぼれた夜。 つらかったけど、いい気づきになった。 ある意味、自分を知り、向き合えたいい夜だった。 きっとこの先も悩み、小さな細かい分かれ道を迷い続けて生きていくと思うけど、 ネガティブになりがちな「夜」も自分と向き合い、守ってあげられる時間にしてあげようと思う。 文・写真=箭内夢菜 編集=宇田川佳奈枝
-
私が私の背中を押した。巻き戻すことはできない夜(福田沙紀)
エッセイアンソロジー「Night Piece〜忘れられない一夜〜」 「忘れられない一夜」のエピソードを、毎回異なる芸能人がオムニバス形式でお届けするエッセイ連載。 福田沙紀(ふくだ・さき) 1990年9月19日生まれ、熊本県出身。13歳のときに「第10回全日本国民的美少女コンテスト」にて演技部門賞を受賞。2004年にドラマ『3年B組金八先生(第7シリーズ)』(TBS)で俳優デビューを果たし、2005年には高見沢俊彦プロデュースで歌手デビュー。2024年、ショートドラマ配信アプリ『BUMP』の『大人に恋はムズカシイ』で初めて監督を務めた。 夜。 よる。 夜はどちらかというと、わたしは苦手な時間帯かもしれない。 いや “苦手な時間帯かも”ということを含め 好きだったりもするのかもしれない(笑)。 その日の失敗を思い返して 反省しては後悔して 時間を巻き戻すことはできないのに 気にして眠れなかったりしたこともあった。 そんなふうに考えて過ごした時間が思い浮かぶ。 20歳くらいのころだったか、いつか監督をしてみたいな。 そんな好奇心が芽生えたけれど 自分でなにかしらできない理由をつけて、できないもののひとつとして選別していた。 それから十数年変わることはなかったのだが とある日の夜。 たった一度の人生 頭の中にふと浮かんだその好奇心に飛び込んでみてもいいんじゃないか?と自分に問いかけられた。 たしかにそもそもできないと誰が決めたんだ? いつの間にか自分で自分の可能性を狭めているだけだったのではないか? 私のための人生、もっとたくさんの景色を見てみたい。 この夜。 私が、私の背中を押した。 そんなこんなで監督に初挑戦することになったのだが 企画自体は2023年の夏ごろから動き始めた。 まずは先方から企画書をいくつか提案してもらい どんな作品が作りたいのかを打ち合わせをして 作品が決まったら脚本会議で何度もブラッシュアップしていった。 1話3分で全10本のショートドラマ。 作品の登場人物の年齢がスタッフに近いこともあって アットホームな雰囲気の中で進んでいった。 話ごとのテーマと話のフックになる部分を10本分作り 脚本が少しずつ上がってきていた。 その次の会議で思いもよらない大幅な変更が出た。 “ユーザーのみなさんのニーズに合わせて1話1分前後にしたい“ ほう。なるほど……。 1話1分。 “ショートドラマ”とはいえ ショートショートすぎませんか!?!???!???? あまりの尺の短さに驚きつつも やる気に満ちている自分がいた。 2時間だって、1時間だって、30分だって、10分だって、1分だって! そう、やるのみ。 そうなると単純計算で考えて、全体の尺としてはほぼ変わらないとはいえ 話数が増えれば話ごとの構成も変わってくる。 1話ごとに必ず導入部分と、1話の終わりで次が見たくなる構成にしなければならない。 そんなことをしていたらあっという間に1分は過ぎ去ってしまうのだが、私は意外と冷静だった。 さらに脚本会議を行い、構成を変更し、脚本が上がってきて、でき上がった台本をもとにどんどん準備が進んでいった。 キャスティング、ロケハン、美術打ち合わせ、衣装合わせなどなど。 自分の頭の中にあるイメージを共有していく。 そのイメージの一つひとつが小道具や衣装、ロケ現場などに具現化され作品の世界ができ上がっていく。 なんというワクワク感。 どの作業もどの瞬間も愛しくて仕方なかった。 撮影自体は5日間。 毎日、朝から晩までの撮影。 「福田組。クランクインです!!」 “福田組”というワードはなかなか慣れなくて、聞くたびになんとも不思議なふわふわとした気持ちになっていた。 初めてカット割りを伝える際、口にしようとすると少し緊張で喉の奥が詰まった。 もともと私は撮影現場で監督を中心にスタッフさんたちが集まってカット割りをしているところを見るのが好きなのでよく見ていたのだが、もちろんやったことはない。 まさか好きで見ていたような光景の真ん中に自分が立つことになるとは。 と、思いつつカット割りを伝えなければ現場は進まないので、意を決して口を開いた。 “好き”に助けられた瞬間だった。 無事に撮影を終えると編集作業などが待っていて 役者さんのいい表情やお芝居、部分をできるだけ拾って活かしたかったので、OKテイク以外も全素材をもらってチェックした上で編集を行っていった。 現場でも感じていたが、改めて一つひとつのカットを見ると愛しくて愛しくてたまらなかった。 編集作業に没頭して、気づいたら夜になっていた。 その夜、私は宇宙を感じた。 意味合いとしては「世界が広がっていった」ということが伝えたいのだが、頭の中に広がる世界がとても自由で、その暗闇は無限に広がっているように感じた。 行き止まりはない。 どこまでも自由に進んでいけるようで、星がキラキラ輝くように自分の瞳がキラキラ輝いているのを感じた。 そして次に音の最終調整であるMAを行い カラーグレーションで作品の雰囲気を調整していく。 それぞれの仕事が集結し作品ができ上がる。 これまでの役者として作品に参加してきた景色とはまた違う監督という立場で作品作りに携わってみて、改めて作品作りが好きだということを全身で感じた。 各部署の動きや流れはなんとなく把握していたものの、 役者の目線だけでは直接はなかなか見られなかった作業を、今回実際にやってみたり見ることができて、さらに制作することに対しての想いが強まった。 このエッセイを書きながらふと、 小さいころ、自分でカセットテープにラジオ番組を作って収録していたことを思い出した。 「続いてはこの曲!」と曲紹介をして音楽を流す。 音楽はCD プレイヤーで流して、カセットテープに録音している間は自分の声が入らないように黙っていなければならない。 とはいえ紹介する曲は自分が大好きな曲ばかりでついつい口ずさんでしまいそうになりながらも、必死に我慢して録音していた。 たまに録音していることを知らずに私の部屋に入ってきた母の声が録音に入ってしまうと「今、録音してるのに!」とわりと本気で怒って、テープを巻き戻して仕切り直せるところからまた録音し直していた。 何かを作ることが好きで、どんなときも夢中で真剣に取り組んでいたなと思い出した。 思いきって挑戦してみた先に見えた景色は、想像していたよりもすばらしい景色と経験と感情、そして人とのつながりを運んできてくれた。 あの夜がなければきっと出会えなかっただろう。 “好き”という純粋な気持ちをこれからも大切にして 宇宙に飛んでいくような夜を重ねてたくさんの景色に出会っていきたい。 文・写真=福田沙紀 編集=宇田川佳奈枝
文野紋のドキュメンタリー日記 ~現実(リアル)を求めて~
人生を変えた一本、退屈な日々に刺激をくれる一本、さまざまな愛に気づく一本など──漫画家・文野紋によるリアルな視点、世界観で紹介するドキュメンタリー映画日記
-
4年ごとに人類が抱く夢、映像美を追求したスポーツの記録──市川崑『東京オリンピック』
文野紋のドキュメンタリー日記 ~現実(リアル)を求めて~ 人生を変えた一本、退屈な日々に刺激をくれる一本、さまざまな愛に気づく一本など── 漫画家・文野紋によるリアルな視点、世界観で紹介するドキュメンタリー映画日記 1964年8月21日、ギリシャ・オリンポスの丘で点火されたオリンピックの火は日本へ向かった。 『東京オリンピック』は、1965年3月に公開された1964年の東京オリンピックの公式記録映画である。監督は『ビルマの竪琴』(1956年)や『炎上』(1958年)などで知られる鬼才・市川崑。 東京オリンピックの公式記録映画でありながら市川の「単なる記録映画にはしたくない」という理念のもと作られた本作は、「芸術か? 記録か?」と政治問題にまで発展する議論を巻き起こし、国内動員2000万人超えの大ヒットを記録し、数々の映画賞を受賞した。 本作の特徴はなんといってもその映像美、芸術性にあると思う。スポーツの祭典であるオリンピックの記録映画でありながら、冒頭の真っ赤な太陽の画など、抽象的なショットがたびたび映し出される。 「とにかく、単なる記録映画にはしたくなかったですね。自分の意思とかイメージというものを重く見て、つまり創造力を発揮して、真実なるものを捉えたい、と。」 (「公益財団法人日本オリンピック委員会」インタビューより引用) 市川は本作の制作にあたり、記録映画であるにもかかわらず緻密なシナリオを制作し、スタッフには絵コンテを描いて説明するなど、演出に強くこだわったという。100台以上のカメラ、200本以上のレンズ。世界で初めての2000ミリの望遠レンズまでも使用された。それらを用いて撮影された映像は、選手の肉体美のみならず、内面までも映し出す。 (C)フォート・キシモト 選手の強張った表情が、額を流れる汗が、彼らがオリンピックというものに向ける大きな感情を如実に表現する。 そして市川らのカメラが捉える対象は、選手だけに留まらない。 ケガをした選手を運ぶ救護班。 グラウンドの整備をするスタッフ。 思わず競技に見入ってしまう審判。 休憩中、競技が始まって、思わず仲間たちと顔を見合わせニヤリと笑う警備員たち。 アメリカ人選手とドイツ人選手による一騎打ちとなった棒高跳びのシーンでは、各国の応援をする観客たちのリアルな表情が対比するように映される。 太ったおじさんの二重あごのアップ……ではなく、息を呑む観客の喉元が、こだわり抜かれた映像技術で映し出される。 彼らもまた、東京オリンピックの参加者のひとりである。 また、本作では、ハードル走のシーンで選手が先行しているかわかりづらいであろう真正面からの画角を採用するなど、スポーツ観戦としての正確性より芸術性を重視した挑戦的なカメラワークを採用している。そのため、映像作品としても非常に完成度が高い。 監督である市川は、もともとスポーツというものにはそれほどの関心がなく、本作の総監督の打診もそのことを理由に一度保留にしていたほどだ。そして、自身がスポーツに疎いからこそ「スポーツファンだけの映画にしない」とスタッフ全員に徹底して伝えたという。 市川はスポーツに対し、たとえばその勝敗などよりも、そこに関わっている人間たちのドラマや心の機微に関心があったのだろう。 そのため本作は記録映画としては不十分ではないかという批評を受けることがある。冒頭でも述べたように、当時は「芸術か? 記録か?」と政治問題にまで発展する議論が巻き起こった。試写会で本作を鑑みたオリンピック担当大臣(当時)の河野一郎は、「記録性を無視したひどい映画」と本作を激しく批判し、文部大臣(当時)の愛知揆一もまたこれに同調した。 しかし翌年1965年、『東京オリンピック』が劇場公開されると当時の興行記録を塗り替える大ヒットとなった。 「オリンピックは人類の持っている夢のあらわれである」 冒頭の字幕だ。 本作は、オリンピックのために解体される東京の街を映したシーンから始まる。聖火リレーのシーンで映されるのは沖縄の「ひめゆりの塔」、広島の「原爆ドーム」。市川はのちに「どうしても広島の原爆ドームからスタートさせたかったんです」と語る。 1945年8月6日、市川の母を含む家族8人全員が広島に住んでおり、被爆している。当時東京で暮らしていた市川も原爆投下から数日後に広島へ向かい、その凄惨さを目の当たりにしていた。 オリンピックの理念のひとつに世界平和がある。のちのインタビューで市川はこの世界平和という部分に着目してシナリオを制作したと語っている。 東京オリンピックには、実は1940年にも一度開催が予定されていたが日中戦争の勃発などにより幻となったという経緯がある。戦後復興と高度経済成長を世界にアピールしたい日本にとって、1964年の東京オリンピックは絶好の機会であった。 本作は 「人類は4年ごとに夢をみる この創られた平和を夢で終わらせていいのであろうか」 という言葉で締めくくられる。 森達也をはじめ、さまざまなドキュメンタリー監督がドキュメンタリーにおいて作り手の視点は重要である、という趣旨の発言をしている。ドキュメンタリーとは事実の記録に基づいた作品のことであり、一般的に「意図を含まぬ事実の描写」であると認識されることが多いが、それを撮影、編集し作品として仕上げている以上、制作者の意図や思想、視点が入り込むことになる。 私はドキュメンタリーのおもしろさはこの制作者の視点にあると思っている。制作陣がどういう感情を持ってその対象を観測していたかの記録であり、そしてその視点を我々視聴者が追体験できるという意味で、ドキュメンタリーは非常に価値のあるものだと感じている。 自分がいつかスポーツマンガを描くのなら、私はこういった制作者の視点が、制作者が何に魅力を感じているのかが如実に伝わるような作品が作りたい。 本作はそう強く思える、市川の視点が十二分に込められた素晴らしいスポーツドキュメンタリーだ。 文野 紋(ふみの・あや) 漫画家。2020年『月刊!スピリッツ』(小学館)にて商業誌デビュー。2021年1月に初単行本『呪いと性春 文野紋短編集』(小学館)を刊行。同年9月から『月刊コミックビーム』(KADOKAWA)で連載していた『ミューズの真髄』は2023年に単行本全3巻で完結。2024年7月、WEBコミック配信サイト『サイコミ』連載の『感受点』(原作:いつまちゃん)の単行本を発売。2025年1月から、『週刊SPA!』(扶桑社)にて『トムライガール冥衣』(原作:角由紀子)の新連載がスタートしている。 『東京オリンピック』 Blu-ray&DVD発売中 発売・販売元:東宝 (C)公益財団法人 日本オリンピック委員会
-
俳優・東出昌大が導く「生きている意味」
文野紋のドキュメンタリー日記 ~現実(リアル)を求めて~ 人生を変えた一本、退屈な日々に刺激をくれる一本、さまざまな愛に気づく一本など── 漫画家・文野紋によるリアルな視点、世界観で紹介するドキュメンタリー映画日記 「あいつ、鉄砲の免許持ってて狩猟してるんだよ」 サバイバル登山家・服部文祥の言葉からすべては始まった。 『WILL』は映像作家・エリザベス宮地によるドキュメンタリー映画で、俳優・東出昌大の狩猟生活を追った作品だ。 東出昌大は映画『桐島、部活やめるってよ』(2012年)での俳優デビューから数々の映画やドラマに出演するなど人気の俳優だ。個人的な話になるが、私は東出が将棋棋士・羽生善治を演じた映画『聖の青春』(2016年)をきっかけに、最近では『Winny』(2023年)や『福田村事件』(2023年)などの東出の出演作を観ては彼の魅力に感嘆するいち映画ファン、東出ファンである。彼は世間的に見ると常軌を逸したような、独特な人間を演じるのがうまい。 しかし一般的にはやはり東出といえば、2020年の離婚騒動をはじめとしたスキャンダルのイメージが強いだろう。その後、「山ごもり」が報道され賛否両論となっていたころ、東出は2023年11月放送のABEMAのバラエティ番組『チャンスの時間』に出演した。映画に出演している姿以外ほとんど彼について知らなかった私は、そのあきらめきったような厭世的な様子に少しだけ衝撃を受けた。騒動の印象と端正な顔立ちから、いわゆるチャラい、器用なタイプかと想像していたが、なんとも生きづらそうな人だ、と思った。 俳優・東出昌大はなぜ狩りをするのか。 「カメラ回してもらっても、たぶん僕500時間ぐらい一緒にいないとわからないから」 「カメラ前で主張したいこととかもないし……」 実は本企画は、一度頓挫している。事務所の許可が降りなかったのだ。しかしその半年後、宮地のもとに東出から連絡が届く。2021年10月、再びのスキャンダルにより事務所を離れることになったという。事務所NGがなくなったことで本企画は再び動き出し、宮地は狩りをする東出にカメラを向けることになる。 (C)2024 SPACE SHOWER FILMS 東出は狩猟について「悪」であると語る。 「混沌とすることが、常にまとわりついていて、でも、近くに命があるから……考え続けるし……」 なぜ自身が「悪」と定義する狩猟を、つらい思いを抱えながらも続けるのかと尋ねられた東出はたどたどしく答え、頭を抱える。東出は何に葛藤し、何に悩んでいるのか。きっと自分でもわかっていないのだろう。わからないから狩猟をしているのだろう。東出にとって狩猟は、自身(人間)の根源的な罪を心に刻む、ゆるやかな自傷行為なのかもしれない。 「忙しい中でよくわかんないコンビニ飯食って感謝もしないよか、呪われてるっていう実感持ちながら、そこに張り合い持ってアレの分も……って思ってもらったほうが……とかなんのかな。わからん」 東出から紡ぎ出される言葉はいつも正直で真摯だ。 私は大阪府貝塚市の精肉店を迫ったドキュメンタリー映画『ある精肉店のはなし』(2013年)を見たことをきっかけに、狩猟や屠殺(とさつ)について興味を持ち、関連のドキュメンタリー映画や書籍を読み漁っていたことがある。そうしていわゆる「食育」について学んでいると、「命をいただいている自覚を持って感謝して生きる」といった結論にたどり着くことが多い。それはもちろん間違いではないし、人間として生きていく以上そうして合理化するしかない。だが、屠殺の職に就いているわけでもない「忙しい中でよくわかんないコンビニ飯を食っている」自分にとってその結論は本当に実感を持った正しいものなのだろうかと思う。 もっとわかりやすくいうと、ものすごく耳障りがいい「命への感謝」という概念に違和感があった(これは私が普段食に対して命を実感する生活をしていないことに起因しているため、その結論を出している人たちを批判するものではない)。 東出は自身の銃で鹿を仕留めたとき、ひと言「うぃ〜」と言った。ドキュメンタリーのカメラが回っているにもかかわらず、俳優という世間からわざわざボロを探して叩かれるような人生を送っているにもかかわらず、だ。東出はこのことを振り返って、なんて軽薄なんだと思ったけど、すごくうれしかったから、と語る。こういう素直さは東出の魅力のひとつだ。 作中全編を通して感じることだが、改めて、東出は人間離れした男前である。189cmの長身に、考えられないくらい小さな頭。目鼻立ちもハッキリしており、端正。誰がどう見ても男前なのだ……一般人として生きていけないくらいに。猟友会の中にいる東出は正直、イケメンすぎて浮いている。作中でも狩猟仲間から親戚を紹介され「芸能人」として求められることに苦悩するシーンが映されている。 (C)2024 SPACE SHOWER FILMS スキャンダルや本作中での言動を考えると、東出は本来「芸能人」に向いている性質ではないのだろうと思う。実際、最初はバイト感覚でモデルの仕事をしていたという。だが東出の生まれ持った圧倒的なオーラは、彼が一般人になることを許さない。そして、そのことに葛藤し、もがき苦しんだ東出はよりいっそう俳優として唯一無二な魅力的な存在になっていく。俳優という職業は人生経験が糧になる。彼にしか演じられない役柄が存在する限り、東出は映画界から求められ続けるだろう。 東出は『世界の果てに、ひろゆき置いてきた』(2023年/ABEMA)の仕掛け人である高橋弘樹プロデューサーとの対談で、俳優の仕事について次のように語る。 「僕の場合は(高橋さんと違って)人が用意した台本でやる。たしかにそれはあるんですけど、“僕の35年の人生があって台本をどう読むか”だから。そこに僕のオリジナリティがまた生まれるんです」 「でも役者の仕事はめちゃくちゃ疲弊するんです。磨耗する、削られる。ちょっと休むとまた欲が出るんです。(中略)また身を粉にするように削られるようにやりながら挑戦したいという欲が生まれる」 2022年、東出が出演する映画作品『福田村事件』の撮影が始まる。監督は、『A』(1998年)、『A2』(2001年)、『FAKE』(2016年)など数々のドキュメンタリー作品でも有名な、森達也だ。東出はオファーを受ける前から森の作品のファンだったという。正義や悪や人間は簡単なものじゃない、虐待事件を起こした側にも家族があり愛がある──そういった森の作品に共感し出演を決めたという。私自身も森の作品には感銘を受け、トークショーにも足を運ぶようなドキュメンタリーファンのひとりだ。東出のこの感覚には非常に共感する。 私は普段はマンガの仕事をしているが、時々、自分には作品を発表する素質がないような気がして何も書けなくなってしまうことがある。なにも自分や自分の作り出したキャラクターの価値観が絶対的に正しいだなんて思っていない。何が正しいことなのかを悩みながら、悩んでいるからこそ生きているし、物を作っている。しかし世間が見るのは「完成品」であり「商品」である。当たり前に自分が作ったものが倫理的に正しくないと指摘されることがある。私の作品を見ることで不快になった(=不幸になった)と言われることがある。これ自体は物を作って発表している以上、仕方のないことだ。折り合いをつけていくしかない。 ただ、私はそういう正しくなさも含めて人間(キャラクター)であり、愛らしさであり、それが滲み出ているものが、それを丸ごと抱きしめてあげたくなるようなものが愛しい作品であると思っている。自分はそういった「抱きしめてあげたいような気持ち」に出会うために生きているような気がする。 調子がいいときはそう思えているのだが、物作りをしているとどうしようもない不安に駆られる瞬間がある。自分の考える「愛らしさ」は世間にとって害であり、自分が物を作り自分の価値観を訴えることは多くの人を不快にする行為なのではないか。そうやって価値観を開示したときに人を幸せにできるか否かこそが物作りをすることに必要な素質の有無なのではないか。正直に自分を開示することは世間から愛されるコツだが、開示して出てくるものが世間とズレていたらもうどうしようもないのではないか。 東出は私にとって非常に「愛らしい」存在だ。 東出はきっと、本当に「こういう人」で、それを我々にある程度素直に開示してくれている。何度世間を賑わせて、叩かれて、殺害予告が届いても。 彼の過去のスキャンダルが倫理的に正しかったかというと、うなずくことはもちろんできない。内容はまったく違うが、個人的には本作を観たときの感覚は圡方宏史監督の『ホームレス理事長』(2014年)を観たときに近い。罪は罪だし行為に対して正しいとも思わないけれど、人間が真摯に生きる姿は惹かれるものがある。そして、「自分はやっぱり人間という生き物が好きだな」と思う。 東出は語る。 「──仕事だったり狩猟だったり、人との出会いだったりっていうのを本気でやってると、何か生きててよかったって僕自身思う瞬間もあれば、生きててよかったって(あなたの)おかげで思いましたって言ってくれる人の言葉があったり、生きててよかったとか、どうしようもなく愛おしいっていう気持ちなんだ、とか。それは物に対しても人に対しても作品に対しても。そういうときに、なんか、生きている意味ってあるんだろうな」 さまざまなスキャンダルやバッシングを受け続けた東出の口から、たどたどしい言葉で紡がれる「生きている意味」は必見だ。 文野 紋(ふみの・あや) 漫画家。2020年『月刊!スピリッツ』(小学館)にて商業誌デビュー。2021年1月に初単行本『呪いと性春 文野紋短編集』(小学館)を刊行。同年9月から『月刊コミックビーム』(KADOKAWA)で連載していた『ミューズの真髄』は2023年に単行本全3巻で完結。2024年7月、WEBコミック配信サイト『サイコミ』連載の『感受点』(原作:いつまちゃん)の単行本を発売。 (C)2024 SPACE SHOWER FILMS 出演:東出昌大 音楽・出演:MOROHA 監督・撮影・編集:エリザベス宮地 プロデューサー:高根順次 製作・配給・宣伝:SPACE SHOWER FILMS
-
ファッションが持つ力を信じる、最前線の美しさに込めたメッセージ──関根光才『燃えるドレスを紡いで』
文野紋のドキュメンタリー日記 ~現実(リアル)を求めて~ 人生を変えた一本、退屈な日々に刺激をくれる一本、さまざまな愛に気づく一本など── 漫画家・文野紋によるリアルな視点、世界観で紹介するドキュメンタリー映画日記 服を作ることは罪でしょうか? 本作はその疑問に真っ向からぶつかる日本人デザイナーを追った作品だ。 『パリ・オートクチュール・コレクション』。 オートクチュールとは「高級仕立服」という意味のフランス語で、『パリ・オートクチュール・コレクション』は、パリ・クチュール組合に加盟する限られたブランド、または招待されたブランドしか参加できない格式高いコレクションである。 本映画は、同コレクションに日本から唯一参加するブランド「YUIMA NAKAZATO(ユイマ ナカザト)」のデザイナーである中里唯馬に密着したリアル・ファッション・ドキュメンタリーである。 映画『燃えるドレスを紡いで』 唯馬は国内外で活躍する日本のトップデザイナーのひとりだ。ベルギーの名門アントワープ王立芸術アカデミー出身である彼の卒業コレクションは、インターネット上で回り回って世界的ヒップホップグループであるThe Black Eyed Peasのスタイリストの目に留まった。同グループの世界ツアー衣装のデザインを手がけたことをきっかけに、唯馬は対話から服を作っていけるオートクチュールに惹かれていった。 その後、唯馬は2009年に前述のブランド「YUIMA NAKAZATO」を設立。日本人では森英恵以来ふたり目となる『パリ・オートクチュール・コレクション』のゲストデザイナーに選ばれている。そんな輝かしい経験を持ち、ファッション業界の最前線を走る唯馬にはひとつの関心事があった。 「衣服の最終到達地点を見たい」 映画は、唯馬がアフリカ・ケニアへ旅立つシーンから始まる。アフリカ・ケニアのギコンバはメディアを通してしばしば「服の墓場」と表現されることがある。 映画『燃えるドレスを紡いで』 チャリティ団体や回収ボックスに寄付された古着がその後どのような道をたどるかご存じだろうか。昨今ファストファッションの流行などにより先進国での衣類の生産量や購入料は実際に必要とされている分よりも遥かに多いとされる。流行のデザインの安価な服をワンシーズンのみ着用するために購入する、ということも珍しくないだろう。そういった服を善意から、廃棄ではなく前述のような手段で寄付というかたちで手放すこともあるだろう。しかし現実には、回収量が必要量を上回っていたり、質などの問題で再利用できなかったり、ニーズに合っていなかったりと問題が多く、運ばれてくる古着のうちそのまま売り物になるのは20%ほどで、ゴミ同然のものも多いという。 ケニアの街の人々は口々に言った。 「服はじゅうぶんにある。もう作らないでほしい」 そうして弾かれたり売れ残ったりしたゴミ同然の古着は「服の墓場」である集積場に廃棄される。ケニアには焼却炉はない。集積場には生ゴミなども廃棄されており、プラスチックゴミの自然発火も相まって、街に入った瞬間から腐敗臭が立ち込めるという。 色とりどりの衣類等のゴミが地平線まで積み重なり、その中を子供たちが歩く様子は我々が想像すらしたことのないような光景でまさに圧巻。37年間、このゴミ山で暮らしているという女性の姿も映し出される。風でゴミたちが巻き上がる。 唯馬は、服の墓場を見て「美しい」とつぶやいた。 唯馬は『さんデジオリジナル』(山陽新聞)のインタビューでそのときのことを振り返り「不快だという思いもあるんですけど、それだけではない何かがあるな……と」、「適切な言葉が思いつきませんでした」と述べている。この「美しい」という言葉には我々には想像もつかないくらいたくさんの感情が込められているのだろう。 安価な服はポリエステルを主としている上、さまざまな原料が混ぜられているので、そう簡単にリサイクルすることはできない。 新しい服を作ることに魅力を感じ、生業としている唯馬にとってケニアでの光景は大きな葛藤を産むものだった。唯馬は「なぜ自分は服を作るのか」と自問自答した。唯馬の動揺がスクリーン越しに強く伝わってくる。 このとき、すでに次のパリコレクションまでの猶予は2カ月ほどしかなかった。この現実を知り、強い落ち込みを感じているのに、それを無視してまったく別のコレクションを発表することなどできない。 その後、唯馬たちはケニア北部のマルサビット地方を訪れる。マルサビット地方ではひどい干ばつが続いており、家畜が死に、食糧危機にも悩まされていた。そんな場所で唯馬が出会ったのは、羊の皮を縫い合わせた服や色とりどりにビーズを使った装飾品を身につけておしゃれを楽しむ現地の女性たちの姿であった。深刻な食糧危機に悩まされるこの地域でも、人々はおしゃれを楽しんでいたのだ。 映画『燃えるドレスを紡いで』 唯馬は彼女らから人が装うことの根源的な意味を考えるヒントを得て帰国し、パリコレクションに向けての制作に入る。 映画の後半では、帰国からパリコレクションまで約2カ月間の奮闘が描かれている。ケニアで売られていた古着の塊を持ち帰った唯馬は、さまざまなハプニング──SDGsとも関係のないものも含めた本当にさまざまなハプニングに見舞われながらも、より美しいコレクションを作るために妥協なしで服作りを進める。 この後半の物語によって、本作はSDGsに関する啓蒙映画という枠にとどまらず、むしろ中里唯馬というひとりの人間の生き様を映した映画になっていると思う。 服の過剰生産に対する問題提議を新しい服を作るという方法で行うのは、一歩間違えたら矛盾と捉えかねられない難しい活動だ。実際、唯馬も社内ミーティングで「(パリコレクションのような消費を促すことが目的の場に)関わっている以上、すでに加担してしまっている」、「そういう中で何を言っても、言い訳にしか聞こえないだろう」と言葉にしている場面があった。しかし、唯馬は方向性を固めてからは、ただひたすら美しさに重点を置き、ストイックにそれを追求していく。 唯馬はきっと芸術、特に美しい衣服の持つ力を心の底から信頼しているのだろう。 唯馬は「オートクチュールはF1レースみたいなもの」だという。技術を集結させ最も美しいものを発表する場だ、と。しかしF1レースで培われた技術は10年後には公道を走る車に応用される。かつては男性のものだったパンツスーツが今は女性の装いとして当たり前のものになっているように。最前線で美しいものを発表することが、人々の装いを、そして価値観までを変えることができる、服の持つ美しさにはその力があると信じているのだろう。 趣味程度だが、私は美術館やギャラリーで絵画や現代アートを見ることが好きだ。それらの作品の中には、戦争や政治、環境問題などに対するメッセージや主張が込められたものが多い。そして、それらはただ単純に文字や言葉での主張ではなく、絵画や彫刻などの美しく心が惹かれるようなかたちに昇華されている。 なぜ人は、理路整然とした言葉や理屈ではなく、美しさを通じて何かを主張しようとするのだろうか。その答えは簡単にわかることではないが、パリコレクションという大きな舞台の本番の直前まで美しさにこだわり、追求し、微調整を続ける唯馬を見ていると、我々もまた美しさの持つ可能性を信じずにはいられなくなる。美しさは時に言葉よりも鮮明に、そして強く物事を主張することができる。 映画『燃えるドレスを紡いで』 「デザイナーにはこれだという主張が必要だけど、彼(唯馬)は常に何か言いたいことがあった」 作中で唯馬について述べられていることのひとつだ。 何かどうしても言いたいことがある人が、美しさの持つ力を圧倒的に信じることで、世の中のデザインや芸術というものはでき上がっているのかもしれない。 『燃えるドレスを紡いで』は環境問題やファッション業界について知ることができるのはもちろんのこと、中里唯馬という人間のかっこいい生き様をのぞける貴重な作品だ。 文野 紋(ふみの・あや) 漫画家。2020年『月刊!スピリッツ』(小学館)にて商業誌デビュー。2021年1月に初単行本『呪いと性春 文野紋短編集』(小学館)を刊行。同年9月から『月刊コミックビーム』(KADOKAWA)で連載していた『ミューズの真髄』は2023年に単行本全3巻で完結。2024年7月18日、WEBコミック配信サイト『サイコミ』連載の『感受点』(原作:いつまちゃん)の単行本が発売予定。 映画『燃えるドレスを紡いで』 出演:中里唯馬 監督:関根光才 プロデューサー:鎌田雄介 撮影監督:アンジェ・ラズ 音楽:立石従寛 編集:井手麻里子 特別協力:セイコーエプソン株式会社 Spiber
マンガ『テレビドラマのつくり方』筧昌也
もっとドラマが楽しめる? 映画・ドラマ監督/脚本家の筧昌也が描く、テレビドラマづくりの裏側、こだわり、人間模様——
-
#36「ドラマのサントラ『劇伴』の発注は難しい」|マンガ『テレビドラマのつくり方』筧昌也
マンガ『テレビドラマのつくり方』筧昌也 もっとドラマが楽しめる? 映画・ドラマ監督/脚本家の筧昌也が描く、テレビドラマづくりの裏側、こだわり、人間模様——
-
#35スピンオフ「差し入れ道、すなわち『差道』」|マンガ『テレビドラマのつくり方』筧昌也
マンガ『テレビドラマのつくり方』筧昌也 もっとドラマが楽しめる? 映画・ドラマ監督/脚本家の筧昌也が描く、テレビドラマづくりの裏側、こだわり、人間模様——
-
#34「ピンチヒッターのピンチ」|マンガ『テレビドラマのつくり方』筧昌也
マンガ『テレビドラマのつくり方』筧昌也 もっとドラマが楽しめる? 映画・ドラマ監督/脚本家の筧昌也が描く、テレビドラマづくりの裏側、こだわり、人間模様——
マンガ『ぺろりん日記』鹿目凛
「ぺろりん」こと鹿目凛がゆる〜く描く、人生の悲喜こもごも——
林 美桜のK-POP沼ガール
K-POPガチオタク・林美桜テレビ朝日アナウンサーの沼落ちコラム
-
『2025 パク・ヒョンシクFANMEETING [UNIVERSIKTY]』レポート|「林美桜のK-POP沼ガール」特別編
「林 美桜のK-POP沼ガール」 K-POPガチオタク・林美桜テレビ朝日アナウンサーの沼落ちコラム 『2025 パク・ヒョンシクFANMEETING [UNIVERSIKTY]』に行ってきました!! パク・ヒョンシクさんは韓国の俳優・歌手。アイドルグループ「ZE:A」でデビュー後、時代劇『花郎<ファラン>』、ラブコメディドラマ『力の強い女 ト・ボンスン』や『SUIT/スーツ~運命の選択~』などに出演し、演技力にも定評があります。 今回は特別編として、本イベントのレポートをお届けします。 神々しいオーラで登場!素敵な歌唱パフォーマンスも 真っ暗な会場で、すべての光を集めながら登場した 真っ赤なスーツに身を包む、金髪のパク・ヒョンシクさん。 (C)PARKHYUNGSIK JAPAN OFFICIAL なんだこの比率は……顔が小さすぎる。 赤だ。え? 金だ? 天使……いや、神が降臨したのか? パク・ヒョンシクさんという神々しい存在に、まったく脳の処理が追いつかない。 会場にいらっしゃったSIKcretのみなさんも「は!? え?」と驚いているように感じました。 (C)PARKHYUNGSIK JAPAN OFFICIAL まずは一つひとつの言葉を大事に、すらっと長い手で曲調を表現しながら、日本のカバー曲を披露くださいました。 温もりある、伸びのいい歌声。 曲間には、立っているだけの時間をすべて意味のあるものにする表情も。 俳優さんとしての魅力もひしひしと感じるパフォーマンスに魅了されました。 (C)PARKHYUNGSIK JAPAN OFFICIAL パク・ヒョンシクさんと大学生活を楽しもう! 素晴らしい歌声で幕を開けたファンミーティングは [UNIVERSIKTY]の名のとおり、 パク・ヒョンシクさんと一緒に大学生活を楽しむ、というコンセプト。 学科別に、ヒョンシクさんのいろいろな姿を見ることができました。 (C)PARKHYUNGSIK JAPAN OFFICIAL ここで語り尽くしたいほどすべてが楽しい内容だったのですが、 中でも、演劇科。 ヒョンシクさんがカメラの前でひとり芝居。 かなり接近するシーンもあり、最高以上でした。 レポート執筆のため、CSで流れる映像をお先に確認させていただきましたが、 会場で見たあの瞬間をもっと超高画質で、もちろんカメラマンさん目線の映像で観ることができます。 大変貴重です。とても近かったです。観る方は心してご覧くださいませ!! 会場のみなさんと団結して“厳しい監督”を演じたのも、大切な思い出になりました。 ヒョンシクさん主演の最新ドラマ『埋もれた心』(ディズニープラス)とはまた違った姿を堪能できましたよ。 調理科では、 最高のMC・古家(正亨)さんとのかけ合いでたくさん笑って、トークで引き出されるさまざまな表情にこちらまでニッコリ。 古家さんが映りのバランスを考えて、スマホを上下逆に構えて撮影している優しさにもご注目ください!! ファンミーティングでしか見られない生バンドを携えての歌唱は、やはり圧巻でした。 お忙しいなかにも関わらず、本当にいつ練習したんでしょう……。 飛びそうなくらい軽やかに高くスキップしながら歌われているお姿、妖精のようでした。 ファンミだけじゃ物足りない!スペシャルコンテンツも ぎゅっとした内容のレポートになってしまいましたが ここでお知らせがございます。 6月21日(土)午後3:00~午後5:00 CSテレ朝チャンネル1 <独占放送>2025 パク・ヒョンシクFANMEETING [UNIVERSIKTY] https://www.tv-asahi.co.jp/ch/contents/variety/0794/ ファンミーティングの様子が放送されます!! 独占インタビュー含め、なんと2時間。たっぷりお楽しみいただけます♪ (C)PARKHYUNGSIK JAPAN OFFICIAL そしてもうひとつお知らせです。 6/20(金) 『大下容子ワイド!スクランブル』(テレビ朝日)のフラッシュニュース枠で パク・ヒョンシクさんのインタビューが放送されます。 時間は11時25分ごろを予定しております。 (ニュース番組ですので、緊急で何か発生した場合などは放送されない場合もございます) さらに、テレビ朝日公式YouTube『ANNnewsCH』では ロングバージョンのインタビューも公開されますので、ぜひご覧いただけるとうれしいです。 https://youtube.com/@annnewsch ヒョンシクさんはファンミーティング後、お疲れなのにもかかわらず、疲れた顔をひとつも見せず、丁寧に質問に応じてくださいました。 日本語も瞬時に理解して反応くださいました。 (C)PARKHYUNGSIK JAPAN OFFICIAL お話しされるお言葉にあふれる、ヒョンシクさんらしい愛嬌とユーモアのセンス。 短い時間の中でも、観てくださるファンのみなさんを一番に想って、いつでも楽しませたいという情熱的で優しいお人柄が感じられました。 ぜひたくさんの方に観ていただけるとうれしいです。 文=林 美桜 編集=高橋千里
-
神保町の韓国書籍専門店CHEKCCORIを訪問!経営者・金 承福「行動ひとつが自分を変える」|「林美桜のK-POP沼ガール」マレジュセヨ編
「林 美桜のK-POP沼ガール」 K-POPガチオタク・林美桜テレビ朝日アナウンサーの沼落ちコラム 林美桜が話を聞きたい“韓国カルチャー仕事人”に突撃取材する「林美桜のK-POP沼ガール・マレジュセヨ編」。 第2弾は、最近K-BOOKがマイブームである林の強い要望で、神保町で韓国語原書書籍・韓国関連本を専門に扱う書店「CHEKCCORI(チェッコリ)」を営む、金 承福(キム・スンボク)さんが登場! 出版社の社長も務める金さんのキャリアにも興味津々。林は、いったいどんな学びを得るのか? CHEKCCORIが作り出す「韓国文学を通じたコミュニティ」 林 美桜(以下、林) 営業時間外にもかかわらずお店を開けていただいて……本当にありがとうございます! まず店内がとても明るい雰囲気で、入った瞬間にとてもワクワクしました。 金 承福(以下、金) こちらこそありがとうございます。CHEKCCORIに来てくれてうれしいです! この場所ができてから、今年で丸10年になるんですよ。 林 10周年、本当にすごい。おめでとうございます。 金 なんだか100年くらいやっているような感覚です(笑)。 林 アハハハ! そのくらい、この場所でいろんなことを経験されているということですよね。そもそも韓国書籍専門店をオープンされた経緯を伺ってもよろしいですか? 金 まず私たちは、2007年に「クオン」という韓国文学を出版する出版社を作ったのですが、以前は今よりも韓国の本を取り扱っている書店はずっと少なかったんです。 韓国語を学び始める人も増えていたので、そういった方々が原文で韓国語の本を読む機会が少ないのは残念にも感じていました。であれば、自分たちで書店を作ってしまおうと思い立ったんです。 林 金さんは、いつから本がお好きだったんですか? 金 子供のころ、母が毎日おもしろいお話を聞かせてくれていたんですね。でもあるとき、それらは母の自作ではなく本から仕入れた物語だということを知った私は、まだ字が読めない年齢にもかかわらず「私も聞くだけじゃなく、本を読んでみたい!」と言って、文字を教えてほしいとせがみました。 林 すごい熱意! お母様はどんなお話をされていたんですか。 金 冒険物語とか、偉人伝が多かったです。そういった物語を通じて、新しい世界に飛び込むことに魅了されたことで本の魅力に目覚め、大きくなってからは詩人を志すようになり、韓国の芸術大学へ進みました。 林 ご自身で詩を書いていたこともあるんですね。そこからどのように、日本で出版社を立ち上げたのでしょうか? 金 当時、韓国の若者の間で留学ブームが起こって。特に私たちの世代にとって日本カルチャーは憧れの対象でした。今、日本の若い方たちが韓国カルチャーに対して抱いている気持ちに近いものだったと思います。 また、そのころは村上春樹や江國香織など、日本文学の注目度が高い時期でもありました。大学の先輩が、吉本ばななの『キッチン』を韓国語に翻訳してくれたノートを、みんなで回し読みしていたこともあったんですよ。それくらい人気があって、本好きとしてはぜひ日本に行かなければと決意し、大学に留学しました。 卒業後は日本の広告代理店に入社したのですが、やはり文学への愛は変わらなかったので出版社を作ろうと。ただ、イチから本を作ることは最初の段階では難しかったから、版権仲介のかたちで事業をスタートさせました。自分たちで新しく本を出すようになったのは、2011年になってからですね。 林 そしてクオンの記念すべき第1弾作品になったのは……。 金 『菜食主義者』(著:ハン・ガン/訳:きむ ふな)です。人間の内面を繊細に描く内容で、国を問わず文学が好きな人なら誰もが入り込んでしまう物語だと思い、一作目に選びました。 ただ、せっかく素晴らしい作品でも、読んでもらえなければそのよさを伝えることができない。最初にお話ししたとおり、当時はどこの書店も韓国文学の棚がない状況でしたから、まずは手に取ってもらえる機会を作ろうと思いました。そこで、私たちだけでなくいろんな出版社が韓国文学を出せるような環境を作る取り組みも始めたんです。 林 日本の韓国文学を取り巻く環境から変えようと。 金 そのとおりです。結果的に、今ではたくさんの韓国文学が日本語に翻訳され、人気を博すようになりました。『菜食主義者』著者のハン・ガンさんも本作で、2016年にアジア人で初めてブッカー国際賞を、そして2024年にはノーベル文学賞を獲得し、世界的に知られる作家となりましたね。 彼女の受賞が発表されるや、たくさんの方がCHEKCCORIへお祝いに駆けつけてくださったときは、「やはりいいものは、ゆっくり時間がかかっても必ず魅力が伝わるんだな」と感じてすごくうれしかったです。 林 今のお話を聞いて、クオンで新たな作品を発信するとともに、CHEKCCORIという場所で、韓国文学を通じて人と人がつながるコミュニティも作られているのだなと感じました。 金 そうですね。ここでは本を売るだけでなく、著者を招いたトークショーや楽器の演奏、映画やドラマの話をするイベントなどを週に2~3回は行っています。人の話を聞ける、そして自分の話もできる場所ですね。 お客様からの寄せ書きもたくさん! 林におすすめ!「シンクン」(=胸キュン)する韓国文学は? 林 最近はどんな本が人気なのですか? 金 K-POPファンの方にも来ていただけるようになったので、推しが読んでいる本が気になって……という声をよく聞きます。そのほか内容については、日本・韓国問わず、癒やしを与えてくれる本が好まれる傾向にあると感じます。林さんも、そういうテーマに関心がありますか? 林 癒やし、求めてますね(笑)。最近31歳になったのですが、働き方やひとりの人間としての生き方について悩むことも増えてきて、漠然とした不安に襲われることもあるんです。 金 それなら、2024年の本屋大賞で翻訳小説部門に輝いた『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(著:ファン・ボルム/訳:牧野美加/集英社)をオススメしたいです。この本の主人公も、林さんと同じくバリバリ働く女性なのですが、あるとき燃え尽きてしまって「何をすればいいんだろう」という状態になってしまうんです。 そんななかで彼女は、本屋を開くことになる。そこに集う優しい人たちと交流していくうち、心に変化が生まれていくといったストーリーです。大きな出来事は起こらないけど、些細なことがゆっくりと進んでいく様子が描かれています。 林 それは癒やされそう!! すぐにでも読んでみたいです! 金 林さんは韓国語を勉強されているということなので、原書と日本語版を読み比べてみるといいと思いますよ。ここに来ている多くのお客さんもそういう方法で勉強しているし、私自身も日本語を学んでいたときにそのようにしていたんです。 林 なるほど! でも、小説を原書で読めるか不安です……。 金 この本はあまり難しすぎない表現で書かれているから、きっと大丈夫です。それに、先に日本語版で内容をインプットしてから原書を読むと、イメージしやすくなりますよ。「この表現、韓国語だとこうなるんだ!」っていう発見が楽しいですし、読み終えたあと「韓国語の本が読めた」と大きな自信につながるはずです。 林 たしかに、そうやって考えるとなんだかできそうな気がしてくるし、やってみたくなります! そして今感じたのですが、このように、本を前にお話ししながらオススメしていただくって、すごく特別な体験ですね。まさに、先ほど金さんがおっしゃっていた「人の話を聞ける、そして自分の話もできる場所」としての魅力を実感しました。 金 人と話すことで思いがけない本との出会いもありますし、そういった体験をみなさんに提供できればと思っています。ほかにも、興味のあるトピックや読んでみたいジャンルはありますか? 林 やっぱり、キュンとするような恋愛模様が描かれた物語も読みたいです。「胸キュン」って、たしか韓国語で「シンクン(심쿵)」っていうんですよね。 金 そうそう。ただ、うーん……いわれてみると、韓国ってドラマは「シンクン」する作品が多いんですが、意外と小説はそこまで多くないのかも。 林 えっ、そうなんですか! 金 なので、なかなか難しいのですが……『アンダー、サンダー、テンダー』(著:チョン・セラン/訳:吉川凪/クオン)は、私の中で「シンクン」ですね。これも主人公が30代女性なのですが、高校時代の友人の動画を撮り溜めているんです。その中で、青春時代に好きだった人の話も出てきて、それがすごくいい話なんですよ。 林 気になります~! こちらも今日、購入します(笑)。 翻訳者を育成するコンクールも開催! 林 クオンさんとCHEKCCORIさんでは、翻訳者の発掘や育成も行っていらっしゃるんですよね。 金 プロから直接学べる『チェッコリ翻訳スクール』という講座を設けたり、『日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール』をK-BOOK振興会と開催しています。コンクールの受賞作品は、実際にクオンから出版されるんですよ。 第1回の受賞者である牧野(美加)さんも、今すごく活躍される翻訳者になられていて、先ほどご紹介した『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』の訳も手がけられているんです。 林 デビューまでサポートされているんですね。そうやって翻訳者の方が羽ばたくことで、日本での韓国文学界も豊かになっていく。 金 コンクールの翻訳対象となった作品に『ショウコの微笑』(著:チェ・ウニョン/訳:牧野美加、横本麻矢、小林由紀/クオン)があるのですが、212人の応募作が集まったんですね。 それについて著者のチェ・ウニョンさんが、「韓国語の『ショウコの微笑』はひとつしかない。だけど、日本語の『ショウコの微笑』の物語は212篇もあるんです」とおっしゃっていたことがすごく心に残っています。それこそが翻訳の素晴らしさだなと。 林 とても素敵な言葉……。また、そういった環境を整えられているのも、クオンさんが出版から書店まで行われているからこそだと思います。 金さんが31歳のとき、悩みは多かった? 金 ここまでのことは、とてもできないと最初は思っていましたが、経験を積み重ねていくうちに「自分たちはできるんだ」ということに気づいていって、今に至っています。 林 今日お話を伺って、金さんのバイタリティに感銘を受けました。私自身、今31歳で「何かやらなきゃ」と焦りつつ、頭で考えてばかりで行動に移せないので、すごく刺激になります。金さんも、私の年齢のときは悩むことが多かったですか? 金 もちろんありましたし、今も悩むことはあります。でもそれ以上にやりたいことがいっぱいでしたし、それが必ずしもお金にならないことでも、興味があるからとりあえずやってみるという考え方はずっと変わりません。 今振り返ってみると、その行動一つひとつが今を形作っているような気がしているんですよね。なので、頭で考えることがすべてではないと思います。 それに30歳でも40歳でも、新しいことに挑戦している人はいっぱいいますから、焦る必要はないですよ。そう思えたら、難しく考えずにとりあえずやってみようと感じられるじゃないですか。 林さんはせっかく韓国文学に関心を持って、今日ここへ足を運んでくれたんだから、これをきっかけに何か始めてみてもいいかもしれない。それくらいの気持ちで、まずは行動してみることが重要だと思います。 林 本当にそのとおりですね。韓国文学の発信という分野を開拓されて、人々に一歩踏み出すチャンスも届けている金さんの言葉だからこそ、よりいっそう刺さります。 金 ぜひ私たちと一緒に、何かやりましょう。アナウンサーさんだから、この場所で朗読会をやっていただくとか。すごくピッタリだと思いますよ。 林 うれしい……! 自分では考えてもみないことでしたが、そういったところから世界が広がっていくような予感がします。ぜひ、これからもよろしくお願いします! 韓国版の「指切りげんまん」。ふたりの約束が叶う日も近いかも? 林美桜の取材後記 金さんのお話に没頭した帰り、電車の窓に映った自分の顔が、充実感にあふれていてびっくり。久しぶりに見た表情でした。 それくらい、金さんから元気をいただいたんです。お話しさせていただけばいただくほどに、心が充電されていく新しい感覚でした。 今回の取材を通して、金さんのみなぎるパワーや行動力の源には「韓国文学」があるのではと感じました。 韓国文学にたくさん触れていらっしゃる金さんは、たくさんの世界、考え方をご存じです。 私は何かに行き詰まると、自分の世界だけで完結して限界を迎えてしまいますが、金さんにはその限界がまったくありませんでした。 「これがダメでも、こっちにはもっと楽しいことが!」「あっちもどうかしら?」と、限界突破!な考えがとめどなくあふれてきます。 それも、そのすべてがはつらつとしていて、ワクワクするような!! 「悩んでないでやってみようよ!」と、いくつもの出会ったことのない未来の扉を開いていただきました。 CHEKCCORIは本当に何時間でもいたくなる空間でした。ご紹介いただいた韓国文学を読むのが楽しみです。また新しい世界が見つかりそう! いつか朗読会もさせていただきたいので、韓国語もがんばります! 店舗情報 CHEKCCORI 東京都千代田区神田神保町1-7-3 三光堂ビル3階 https://www.chekccori.tokyo/ 文=菅原史稀 撮影=MANAMI 編集=高橋千里
-
古家正亨に50の質問! 座右の銘・モテ期・仲のいい芸能人…プライベートまで大公開|「林美桜のK-POP沼ガール」マレジュセヨ編
「林 美桜のK-POP沼ガール」 K-POPガチオタク・林美桜テレビ朝日アナウンサーの沼落ちコラム 連載「林美桜のK-POP沼ガール」新シリーズ・マレジュセヨ編の第1回には、多数のK-POP関連ライブやイベントで司会を務める名MC・古家正亨さんが登場しました。 ▼第1回はこちら 名MC・古家正亨に直撃!K-POPスターの魅力を引き出すコツは?|「林美桜のK-POP沼ガール」マレジュセヨ編 司会者ならではのお悩みを古家さんにぶつけ、聞き手は「(相手の話を)聞いて、受け止める」ことが大事だと教わった林。 それを踏まえ、今回は古家さんを「50の質問」でさらに深掘り! まだ誰も知らなかったファン必見のパーソナルな魅力を引き出し、読者に伝えることができるのか? 林 ……ということで、古家さんのファン必見! 50の質問~!!(拍手パチパチ) 古家 そんなにバチバチやらなくても……。 林 いや、せっかく古家さんをお迎えしたので、全力で盛り上げていきたいんです! 私、古家さんのご著書やインタビューはすべてチェックさせていただいているんですけど、「50の質問」はこれまでやってこられなかったんじゃないかと。 古家 そうですね! 「50の質問」って、すごくK-POPのファンミっぽい企画(笑)。 林 イベントへ行くと、古家さんの名前が書かれたうちわを持っているファンの方がたくさんいらっしゃるじゃないですか! 古家さんファンのみなさんに喜んでいただきたくて……。私も普段仕事でご一緒してもなかなかお話しする機会がないので、古家さんの仕事以外の一面などいろいろ気になって、企画させていただきました。 古家 だいたい(うちわの)裏を返すと、本命のスターの、ディテールの細かいデコレーションが(笑)。 林 でも、ステージへ登場してあんなに歓声が上がるMCって、なかなかいないですよ。ということで、はりきって始めてまいりましょう! ■Q1.最近のお気に入りの写真は? 古家 (スマホの画面を見せながら)ロウンさんと一緒に撮っていただいた写真。こうやって俳優さんと写真を撮るときって、もちろんこちらは控えめに写るものなんですが、ロウンさんは親しみを持って一緒に写ってくださって、お人柄のよさが伝わりますよね。 この投稿をInstagramで見る 古家正亨(후루야 마사유키/Furuya Masayuki)(@furuya_masayuki)がシェアした投稿 林 素敵〜! ほっこりする一枚です! 先日ファンミにも行かせていただきましたが、古家さんとロウンさんのケミ、大ファンです。 ■Q2.メガネは何個持っている? 古家 4つをローテーションで使ってます。「あの人、いつも同じメガネだよね」って言われたくなくて(笑)。 林 「このメガネをかけてる古家さんはレア!」というのもあるんですか? 古家 真っ赤なのがあるんですけど、派手すぎてもうつけていませんね。今後も使うかどうかわかりませんが、そんな派手なものをかけ始めたら、何か変化があったと捉えていいと思います。 ■Q3.今日の朝ご飯は? 古家 タッポックンタン(닭볶음탕)。もともとはタットリタン(닭도리탕)と呼ばれていたものです。鶏肉とじゃがいもを使った、からい煮物、鶏肉じゃがのようなものです。 林 おいしそう! 奥様の手作りですか? 古家 僕が作りました。数少ない得意料理なんです。韓国に留学時代、下宿先のおばさんが教えてくれて。おいしくて、わりと手軽にできるので、ぜひ作ってほしいです。 ■Q4.朝のルーティンは? 古家 6時50分に、小学生の息子をバス停まで見送ること。 林 毎朝、送ってらっしゃるんですか? 古家 出張で不在のとき以外は。ただ、基本的に家族と過ごすのが好きなので、出張があっても、できる限り日帰りできるようにお願いしています。だいたい毎朝6時前には起きていますね。 ■Q5.平均睡眠時間は? 古家 4~5時間です。 林 短すぎませんか
古家 もともと朝型なんですけど、僕くらい歳を取ると、これくらい寝れば勝手に目が覚めちゃうんです(笑)。 ■Q6.仕事の必需品は? 古家 イヤモニ(イヤーモニター)とストップウォッチ。イベントのときに耳に入れるイヤフォンは、持参しているものです。今のものはたぶん5代目ぐらいです。自分の耳の形に合うもの、音の合うものでないと、けっこう大変です。 林 それで通訳さんや舞台監督さんの声を聴いているんですね。 古家 そうですね、あとアーティストの声も。ストップウォッチは、ラジオのときに「この曲のイントロは何秒か」とかを事前に計るために欠かせません。 ■Q7.願かけはしますか? 古家 あまりいい記憶がないので、こだわりはないですね。 林 冷静なんですね……。ちなみに私は願かけしまくります(笑)。 ■Q8.自分へのごほうびといえば? 古家 家電! 最近購入したものは……。 林 すごくうれしそうな笑顔!! 古家 バルミューダのホットプレートです! ■Q9.ファッションで意識していることは? 古家 とにかくモノトーンを選ぶこと。MCって目立っちゃいけない存在ですから、意図的にそういう服を着るようにしていますね。 林 たしかに、古家さんといえばモノトーンなイメージがあります。 ■Q10.好きなアーティストは? 古家 いっぱいいるから難しい! K-POP限定ですか? 林 K-POPに限らずで大丈夫です! 古家 (しばらく悩んで)……あえて言うなら「Toy」、つまりユ・ヒヨルさんですかね。僕が初めて出会ったK-POPアーティストだからです。 ■Q11.テンションを上げるときに聴く曲は? 古家 K-POPじゃないけど、大江千里さんの「dear」(1990年)……たぶん初めて言います(笑)。あの曲のBPMが自分の歩くスピードに合っているのと、シンプルなのに、よく聴くとかなり凝った清水信之さんの手がけたアレンジが素晴らしい! 林さんはピンとこないと思うんですけど、僕はEPICソニー世代なんです。今はEpic Records Japanになりましたけど、当時EPICソニーに所属していた大江千里さん、渡辺美里さん、TM NETWORKといったアーティストが一世を風靡していた時代があって。毎月『GB』(音楽雑誌)とか買って、今紹介したアーティストの情報を夢中になって読んでたなぁ。 林 大江千里さん、私の勉強不足で存じ上げなかったです……「マツケンサンバ」みたいな感じですか? 古家 全然違うよ!(笑) もともとシンガーソングライターで、今はジャズピアニストとして名を馳せている方。大好きなんです。 ■Q12.悲しいときに聴く曲は? 古家 LOOKの「シャイニン・オン 君が哀しい」(1985年)。これもEPICソニー発ですね。 林 意外! 韓国の曲ではないんですね。 古家 韓国の曲はもちろん聴くんですが、たとえば寝るときなんかに聴くのはJ-POPか洋楽が多いです。 ■Q13.好きな食べ物は? 古家 カレーライス! 林 辛い派ですか、甘い派ですか。 古家 辛い派ですね。 ■Q14.嫌いな食べ物は? 古家 らっきょうですかね。 ■Q15.テンションが上がる、現場の差し入れは? 古家 たまにあるんですけど、スタバのコーヒーをいただいたときは「ラッキー!」って思いますね(笑)。 ■Q16.初恋はいつ? 古家 保育園の年中です。 林 おお、早い! ■Q17.モテ期はいつ? 古家 2024年! 林 えぇっ!? 古家 仕事に、ですけどね。たぶん、今までで一番仕事量が多かった1年で、月平均20本くらいイベントの司会をやっていましたね。 ■Q18.生まれ変わるなら何になりたい? 古家 (熟考して)……鳥? 古家・林 (爆笑) 林 これは、理由をあまり深く聞かないほうがいいですか? 古家 いや、僕、空を飛びたい願望が昔から強かったんです。子供のとき「鳥になりたいなあ」って思っていたことを、今ふと思い出しました(笑)。 ■Q19.オフの日の過ごし方は? 古家 とにかく家にじっとしていられない性格なので、外に出ちゃうかな。公園とか映画館とか。 林 じゃあ仕事がいっぱいあるのは、苦じゃないんですね。 古家 そうですね。ただ、煮詰まってしまうときはあります。そんなときは、ただ何も考えずに歩くことが自分にとって精神安定剤でもあるから、忙しすぎると、その時間が持てないのがつらいですね。家電量販店にも行けないですし。 ■Q20.どんな子供だった? 古家 先生からめったに怒られない、優等生……だったと思います。 ■Q21.得意だった科目は? 古家 地理と生物が、とにかく大好きでした。 ■Q22.最近一番笑ったことは? 古家 うどんが鼻から出たことかな(笑)。 林 (爆笑) 古家 家で家族と一緒にうどんを食べていたとき、くしゃみしたらスポーン!ってキレイに出て。悲しいことに誰も見てなくて、ひとりで笑っていたら「どうしたの?」ってみんなに言われたので「ううん、大丈夫、なんでもないよ」って。 ■Q23.最近泣いたことは? 古家 映画『ドラえもん のび太の絵世界物語』を息子とふたりで映画館に観に行って、ひとりで号泣していました。息子がそんな僕を見て笑っていましたけど。 林 どんなストーリーに、特に弱いですか? 古家 お父さんが出てきたらヤバい。今回の映画『ドラえもん』でも、パパがいいんですよね。それから、よく観る韓国ドラマに出てくるお父さんって、弱い立場のケースが多いじゃないですか。家族に虐げられている姿を見るだけで涙が……。 ■Q24.特技は? 古家 そろばんです。僕、地元の北海道でそろばんのチャンピオンになったこともあるくらい、4歳から中学生まではガチでやってたんです。 林 すごい。そのスキルが、今も活かされることも? 古家 暗算が速いので、たとえばファンミのゲームコーナーで得点を出すときにもすごく役立っていますね。たまにスタッフやお客さんからビックリされます。 ■Q25.リフレッシュ方法は? 古家 テニスは週1、必ずするようにしています。 ■Q26.自分の性格を言い表すなら? 古家 めちゃめちゃシャイ。 林 見えないです。シャイだとできない仕事じゃないですか? 古家 これがね、だからこそむしろできる仕事なんだと思うんです。小・中学生時代、生徒会の役員をやっていたんですけど、その理由は、強制的に人前で話す機会を、シャイな自分に課したかったから。でもいまだに初対面の人と話すのが苦手ですし、仕事仲間以外の友達も本当に少ない。 林 私も友達、少ないです。シャイなのかも。 古家 そうかな……? ■Q27.好きな映画は? 古家 とにかく『ダイ・ハード』。僕の中では、これを超える映画はまだ出てきていません。 ■Q28.短所は? 古家 自分の意見が言えないこと。 ■Q29.長所は? 古家 どんな人にも合わせられること。 林 納得です。私と一緒にお仕事していただいているのも、古家さんが全部合わせてくださっているからですもん。 古家 (笑)。いやいや、そんなことはないです! ■Q30.自信のある顔の向きは? 古家 ……下? とにかく写真を撮られるのが苦手で、鏡を見るのも嫌なんですよ。自分の外見が好きじゃなくて。 ■Q31.人から言われて救われたことは? 古家 「ありがとう」。 林 今までにいっぱいありますよね。 古家 案外、少ないものですよ。MCって、人のために動いて当たり前の仕事じゃないですか。でもイベントって、危機的状況が頻繁に訪れる。そういうときにうまく対処すると、「ありがとう」と言っていただけて。「がんばってよかったな」と。 ■Q32.好きな韓国ドラマは? 古家 『ミセン-未生-』……うーん、やっぱり『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』! これを超えるドラマは、まだないですね。 林 あれはずっと泣けます。 古家 でもこのドラマは、特におじさんに刺さるストーリーだと思いますよ。 ■Q33.尊敬する人は? 古家 学生時代に卒業文集にも書いたんだけど、スティービー・ワンダー。自分のハンディキャップさえもポジティブに受け止めて、パワーに変えている人ってすごく尊敬できるし、魅力的じゃないですか。昔から今まで、ずっと憧れています。 ■Q34.最近後悔していることは? 古家 ロケで韓国に行ったときに「古家さん、そこへ行ったら危ないですよ」と注意されていたのに、構わず進んでいって、うんちを踏んじゃったこと(笑)。 林 あ……でも、運がついたと思えば……。 古家 さすが! ありがとうございます。 ■Q35.自分自身を褒めたいことは? 古家 ここまで同じことをずっと続けてきたことに対して、自分を褒めてあげたいです! ■Q36.座右の銘は? 古家 「為せば成る」。 林 ご著書を読んで、古家さんって本当に即行動派なんだなあって。 古家 後悔したくないんですよね。世の中、やってみないとわからないことばかりだから。 ■Q37.宝物は? 古家 自分のまわりにいる人たち、みんな。 ■Q38.仲よしは誰? 古家 一番メッセージのやりちりが多いのは、家族の次だと、ドランクドラゴンの塚地(武雅)さんかも。 林 ええ!? そうなんですか。でもたしかに、塚地さんってK-POPへの愛情がすごいから、古家さんともたくさんお話しすることがありそう。 古家 直接仕事で会うときよりも、ざっくばらんにK-POPや韓国ドラマの話をしているかもしれません。 ■Q39.最近、恥ずかしかったことは? 古家 とあるイベントで、ずっとパンツの社会の窓(ファスナー)が開いていたこと(笑)。終演後、お手洗いで気づいて焦りました。 ■Q40.プライベートで挑戦したいことは? 古家 時間があるなら、デザインの勉強。もし将来的に、自分で企画してイベントを開催できるチャンスがあれば、すべて自分でプロデュースしたいんですね。そのためには、イベント関連で自分が能力的にできないことを挙げれば、デザインなんです。なので、映像やメインビジュアル、告知ページなどが作れたら、自己完結できるかなぁって。 ■Q41.譲れないこだわりは? 古家 ステージ上では、なるべく椅子に座らない。ソファが用意されているときはさすがにあきらめているんですが、ハイチェアがあるときは、座らずほぼ立っています。 林 その理由は? 古家 座っていると、ステージ全体がよく見渡せないんです。何かあったときに、すぐに動けるようにしたいし。常にステージの状況を把握しておきたいんですよね。あとは、お客さんの死角になりたくないので、みなさんがスターのよく見える位置に立っていたいという気持ちもあります。 林 舞台上の空気を読んだ古家さんの動きの素早さには、いつも驚かされています。 ■Q42.人に対して「うらやましいな」と思うことは? 古家 もしも自分がイケメンだったら、どうだっただろうなって考えることはあります。 林 イケメンですよ!! 古家 お世辞はいりません。でも、僕はもともと、大学の映画・演劇学科か放送学科に進みたかったんです。もしもビジュアルに自信があったら、表舞台に立つ道もあったのかな?って。 ■Q43.自信のあるパーツは? 古家 耳。よくいろんな人から福耳ですねって言われます。 林 みなさん、大注目です!!(笑) 古家 いやいや、適当すぎ!(笑) ■Q44.ファンからかけられたらうれしい言葉は? 古家 これも「ありがとう」かな。 ■Q45.「これだけは許せない!」ということは? 古家 感謝の気持ちを相手に示せないこと。息子にも、いつも「『ありがとう』は必ず言うようにしようね」と伝えているんですが、中にはなかなか感謝できない人もいるじゃないですか。なので、たまに遭遇すると悲しい気持ちになります。 ■Q46.印象的だったK-POPファンミの会場セットといえば? 古家 これはすごいマニアックな質問……。逆に、何も設備がない会場があって、ビックリしました。 林 スクリーンも何も? 古家 そうそう、いわゆる素舞台の中で、スターひとりだけっていうイベントがあって。「このスターのために、自分ができることはすべてやろう」と決意しましたね。 ■Q47.仕事場のこだわりは? 古家 自分の仕事まわりで、唯一お金をかけているのがマイクなんです。自宅でラジオを録音しているから、それにはこだわっています。 ■Q48.印象に残るうちわ、ボードは? 古家 「후루야씨 맛있어요(フルヤシ マシッソヨ/古家さん、おいしいです)」。たぶん「후루야씨 멋있어요(フルヤシ モシッソヨ/古家さん、カッコいいです)」と書きたかったんだと思うんですが……(笑)。 林 かわいらしい間違い! でも、本命にはやっていないことを願いたいです。 古家 そうですね、どなたか見かけたら訂正してあげてください(笑)。 ■Q49.印象に残っているファンは? 古家 本にも書いたんですが、CNBLUEのファンですね。イベントで、メンバーが『のだめカンタービレ』のキャラクター・千秋先輩について話していたんですけど、僕が『のだめ』を知らないせいであまりその内容に触れずに終わっちゃったんです。 すると帰りに、ファンの方から「千秋先輩も知らないんですか?」と言われて。その出来事があったおかげで、以来、幅広い分野まで情報収集するようになりました。 ■Q50.今年の目標は? 古家 とにかく健康でいること! 去年はお医者さんのお世話になったことが何度かあったので、今年は病院に行く必要がない状態でいたいです。 林美桜の取材後記 お話がおもしろくて、すべては載せきれないほど長尺のインタビューになってしまいました。 私は毎年10回以上、舞台上でMCをされている古家さんとお会いしている気がするのですが……みなさんいかがでしたか? よくよく考えてみたら、年に数回しか来日しない最推しの数倍、お会いしているかも。 古家さんのこともいろいろ知りたいけど、仕事上、聞き手をされているため、なかなか人となりを知ることが難しい。 でも、もし知ることができたら……舞台上に推しがふたり、推しと推しの共演? ……ファンミを2倍楽しめる!! そんな思いで「50の質問」を思いつき、伺ってみました。 古家さんファンのみなさんもまだ知らなかった情報が、少しでも引き出せていたらうれしいです。 古家さん、お忙しいなか丁寧に取材にお付き合いくださり、ありがとうございました。 文=菅原史稀 撮影=MANAMI 編集=高橋千里
奥森皐月の喫茶礼賛
喫茶店巡りが趣味の奥森皐月。今気になるお店を訪れ、その魅力と味わいをレポート
-
カボチャのムースがピカイチ!喫茶店の未来を考える「カフェ トロワバグ」|「奥森皐月の喫茶礼賛」第10杯
先月、友達と名画座に行ってきた。期間限定で上映している作品がおもしろそうだと誘われ、私も興味があったので観ることに。同じ監督の作品が2本立てで楽しめて、大満足で映画館をあとにした。 2本分の感想が温まっている状態で、その街でずっと営業している喫茶店に行った。けっして広くないお店のカウンターであれこれ楽しく映画のことを話していると、店の奥にいた男女のお客さんの声が聞こえてきた。どうやらそのふたりも私たちと同じ映画を観ていたそうだ。 その街での思い出を、その街の喫茶店で話している客が同時にいて、これこそ喫茶店のいいところだよなと感じた出来事だった。 「3つの輪」を意味する店名とロゴマーク 今回は神保町駅から徒歩1分というアクセス抜群の場所にある「カフェ トロワバグ」を訪れた。 大きな看板と赤いテントが目印の建物の、地下へ続く階段を降りていく。トロワバグとはフランス語で「3つの輪」という意味だそう。輪が3つ連なっているロゴマークが特徴的だ。 店内に入るとまず目に入るのは、かわいらしいランプやお花で飾られたカウンター。お店全体はダークブラウンを基調としていて、照明も落ち着いている。大人の雰囲気をまとっていながらも、穏やかな時間が流れている空間だ。 昼過ぎではあったが、若い女性のグループからビジネスマンまで幅広い客層のお客さんがコーヒーを飲んでいた。独特なフォントの「トロワバグ」が刻まれたお冷やのグラスでテンションが上がる。カッコいいなあ。 横型の写真アルバムのような形のメニューが素敵。一つひとつ写真が載っていてわかりやすく、メニューも豊富だ。 コーヒーのバリエーションが多く、サンドウィッチ系の食事メニューや甘いものなど全部おいしそうで、どれにしようか悩む。喫茶店ではあまり見かけないような手の込んだスイーツも豊富で、すべてオリジナルで手作りしているそうだ。 いつかホールで食べ尽くしたい「カボチャのムース」 今回は創業から一番人気でロングセラーの「グラタントースト」と「カボチャのムース」と「トロワブレンド」をいただくことにした。結局、人気と書かれているものを頼みたくなってしまう。 グラタントーストにはサラダもついている。ありがたい。 ハムやゴーダチーズなどの具材が挟まれたトーストに、自家製のホワイトソースがたっぷり。ボリューミーだけれど、まろやかで優しい味わいなのでもりもり食べられる。 クロックムッシュを置いている喫茶店はたまにあるが、「グラタントースト」というメニューは案外見かけない。わかりやすい名前と誰もが虜になるおいしさで、50年近く愛されているのだという。 カボチャのムースがこれまたおいしい。おいしすぎる。カボチャそのものの甘さが活かされていて、シンプルながら完璧な味。なめらかな舌触りで、少し振りかけられているシナモンとの相性も抜群。添えられているクリームはかなり甘さ控えめで、ムースと食べると食感が少し変わる。 カボチャのムースがある喫茶店は多くないだろうが、トロワバグのものはピカイチだと思う。いつかお金持ちになったらホールで食べ尽くしたい。食べ終わるのが名残惜しかった。 ブレンドは苦味と酸味のバランスが絶妙で、食事にもケーキにも合う。 まろやかで甘みも感じられるので、コーヒーの強い苦みや酸味が苦手という人にも飲みやすいのではないかと思う。 喫茶店が50年も残り続けているのは「奇跡的」 カフェ トロワバグについて、店主の三輪さんにお話を伺った。 オープンしたのは1976年。お母様が初代のオーナーで、娘である三輪さんが2代目として今もお店を継いでいるそうだ。学生時代からお店で過ごし、お母様とともにお店に立たれている時代もあったとのこと。 地下のお店なのでどうしても閉塞感があり、当時はタバコも吸えたので男性のお客さんが多かったそうだ。しかし、禁煙になってからは女性客も増え、最近は昨今の喫茶店ブームで若いお客さんも多いという。 女性店主ということもあり、なるべく華やかでかわいらしさのあるお店作りを心がけているそう。たしかに、テーブルのお花や壁に飾られている絵は店内を明るくしている。 客層の変化に合わせて、メニューも少しずつ変わったとのことだ。パンメニューの中にある「小倉バタートースト」は女性に人気らしい。 若い女性のグループが食事とスイーツをいくつか注文し、シェアしながら食べていることもあるそうだ。これだけ豊富なメニューだと誰かと行ってあれこれ食べてみたくなるので、気持ちがよくわかった。 落ち着きのある魅力的な店内の内装は、松樹新平さんという建築家さんが手がけたもの。特徴的な柱やカウンター、板張りの床などは創業以来変わらず残り続けている。 喫茶店というものは都市開発やビルのオーナーの都合などで移転や閉店をしてしまうことが多い。そのため、50年近く残り続けているのは奇跡的だ。 松樹さんは今でもたまにトロワバグを訪れることがあるそうで、自分のデザインのお店が残り続けていることを喜ばしく思っているそうだ。店内のあちこちに目を凝らしてみると、歴史が感じられる。 店主とお客さん、お互いの「様子の違い」にも気づく これまでにも都内の喫茶店を取材して耳にしていたのだが、三輪さんいわく喫茶店の店主は“横のつながり”があるそうだ。お互いのお店を訪れたり、プライベートでも交流したり。 先日閉店してしまった神田の喫茶店「エース」さんとも親交があったそうで、エースの壁に吊されていたコーヒーメニューの札をもらったそう。トロワバグの店内にこっそりと置かれていた。温かみがあって素敵だ。 神保町にはかなり多くの喫茶店が密集している。ライバル同士でお客さんの取り合いになっているのではないかと思ってしまうが、実際は違うようだ。 たとえばすぐ近くにある「神田伯剌西爾(カンダブラジル)」は現在も喫煙可能なため、タバコを吸うお客さんが集まっている。また「さぼうる」はボリューミーな食事メニューがあるため、男性のお客さんも多い。 そしてトロワバグさんは女性客が多め。このように、時代の流れによってそれぞれの特色が出て、結果的に棲み分けができるようになったとのことだ。 街に根づいている喫茶店には、もちろん常連さんがいる。常連さんとのコミュニケーションについて、印象的なお話を聞いた。 たとえば三輪さんの疲れが溜まっていたり、あまり元気がなかったりするときに、常連さんは気づくのだという。それは雰囲気だけでなく、コーヒーの味などからも違いを感じるのだそう。きっと私にはわからない違いなのだろうが、長年通っているとそういった関係が構築されていくようだ。 反対に、お客さんの様子がいつもと違うときには三輪さんも気づく。「コーヒーを1杯飲むだけ」ではあるが、それが大切なルーティンでありコミュニケーションであるというのは喫茶店ならではだ。喫茶店文化そのもののよさを、そのお話から改めて感じられた。 2号店「トロワバグヴェール」を開いた理由 実は、トロワバグさんは今年の6月に2号店となる「トロワバグヴェール」をオープンしている。同じ神保町で、そちらはコーヒーとクレープのお店。 週末のトロワバグはお客さんがたくさん来店し、外の階段まで並ぶこともあるという。そこで、せっかく来てくれた人にゆっくりしてもらいたいという思いがあり、2号店をオープンしたそうだ。 また、現在のトロワバグのビルもだんだんと老朽化してきていて、この先ずっと同じ場所で営業するというのはなかなか難しいのが現実だ。 その時が来たらきっぱりとお店をたたむという考えもよぎったそうだが、喫茶店業界では70代以上のマスターが現役バリバリで活躍している。それを見て三輪さんも「身体が元気なうちはお店を続けよう」と決心したそうだ。 結果として、喫茶店の新しいかたちを取ることになった。元のお店を続けながら2号店を開く。 古きよき喫茶店は減っていく一方のなか、トロワバグがこの新しい道を提案したことによって守られる未来があるように思える。 三輪さんは喫茶店業界の先を見据えた営業をされていて、店主仲間ともそのようなお話をされているそうだ。私はただ喫茶店が好きで足を運んでいるひとりにすぎないが、心強く思えてなんだかとてもうれしい気持ちになった。 最終回を迎えても、喫茶店に通う日々は続く 時代の変化に伴いながら、街に根づいた喫茶店。神保町という街全体が、多くの人を受け入れてきたということがよくわかった。 喫茶店のこれからを考える三輪さんは、これからのリーダー的存在であろう。大切に守られてきたトロワバグからつながる「輪」を感じられた。神保町でゆっくりとしたい日には、一度は訪れていただきたい名店だ。 昨年12月に始まったこの連載だが、今月が最終回。私も寂しい気持ちでいっぱいなのだが、これからも喫茶店が好きなことには変わりない。 今までどおり喫茶店に日々通って、写真を撮って記録していく。いつかまたどこかで、みなさんに素晴らしいお店を紹介したい。そのときにはまた読んでね。ごちそうさまでした。 カフェ トロワバグ 平日:10時〜20時、土祝日:12時〜19時、日曜:定休 東京都千代田区神田神保町1-12-1 富田ビルB1F 神保町駅A5出口から徒歩1分 文・写真=奥森皐月 編集=高橋千里
-
贅沢な自家製みつまめを味わう。成田に佇む“理想の喫茶店”「チルチル」|「奥森皐月の喫茶礼賛」第9杯
これまでに行った喫茶店とこれから行きたい喫茶店の場所に、マップアプリでピンを立てている。ピンに絵文字を割り振ることができるので、行った場所にはコーヒーカップ、行きたい場所にはホットケーキ。 都内で生活をしているため、東京の地図にはコーヒーカップの絵文字がびっしりと並んでいる。少しずつ縮小していくにつれ、全国に散り散りになったホットケーキのマークが見える。 いつか日本地図を全部コーヒーカップの絵文字で埋め尽くしたいなぁと、地図を眺めながらよく思う。 そのためには旅行をたくさんしてその先で喫茶店に行くか、喫茶店のために旅行するか、どちらかをしなければならない。どちらにせよ遠くまで行ったら喫茶店に立ち寄らないのはもったいないと思っている。 旅行気分で、成田の喫茶店「チルチル」へ 今回はこの連載が始まって以来一番都心から離れた場所に行ってきた。JR成田駅から徒歩で12分、成田山新勝寺総門のすぐそばのお店「チルチル」さんだ。 ずっと前から SNSや本で写真を見ていて、いつか行ってみたいと思っていた喫茶店。取材させていただけることになり、成田という土地自体初めて訪れた。 駅から成田山までの参道にはお土産屋さんや古い木造建築の商店などが建ち並んでおり、成田の名物である鰻(うなぎ)のお店も軒を連ねていた。 賑やかな道なので、体感としては思ったよりもすぐチルチルさんまで行けた。よく晴れた日で、きれいな街並みと青空が最高だった。旅行気分。 レンガでできた門に洋風のランプ、緑色のテントがとてもかわいらしい外観。 この日は店の外に猫ちゃんが4匹いた。地域猫に餌をあげてチルチルさんがお世話をしているそうで、人慣れしたかわいらしい猫たちがお出迎えしてくれた。 製造期間20日以上!とっても贅沢な手作りのみつまめ 店内に入り、思わず息を飲んだ。ゴージャスかつ落ち着きのある「理想の喫茶店」といってもいいような空間。 木目調の壁、レトロなシャンデリア、高級感のある椅子やソファ。天井が高いのも開放的でよい。装飾の施されたカーテンや壁のライトは、お城のような華やかさがある。 メニューは喫茶店らしさにこだわっているようで、コーヒー・紅茶・ソフトドリンク・ケーキ・トーストとシンプルなラインナップ。 レモンジュースやレモンスカッシュは、レモンをそのまま絞ったものを提供しているそう。写真映えするのでクリームソーダも若い人に人気なようだ。 ただ、チルチルのイチオシ看板メニューは、手作りのみつまめだという。強い日差しを浴びて汗をかいてしまっていたので、アイスコーヒーとみつまめを注文した。 店内の椅子やソファに使われている素敵な布は「金華山織」という高級な代物だそう。しかし布の部分は消耗してしまうため、定期的にすべて張り替えているとのこと。お値段を想像すると恐怖を覚えるが、ふかふかで素敵な椅子に座ると、家で過ごすのとは違う特別感を味わえる。 アイスコーヒーはすっきりしていておいしい。ごくごくと飲んでしまえる。ちなみにシロップはお店でグラニュー糖から作っているものだそう。甘いコーヒーが好きな人にはぜひたっぷり使ってみてもらいたい。 そして、お店イチオシのみつまめ。「手作り」とのことだが、なんと寒天は房州の天草を使った自家製。さらに「小豆」「金時」「白花豆」「紫豆」の4種類の豆は、水で戻すところから炊き上げまですべてをしているそうだ。完全無添加で、素材の味が存分に活かされたとにかく贅沢なみつまめ。 粉寒天や棒寒天で作るのとは違って、天草から作る寒天は磯の香りがほのかにする。また食感もよい。まず寒天そのものがおいしいのだ。 また、お豆は何度も何度も炊いてあり、とても柔らかい。甘さもほどよく、豆だけでもお茶碗一杯食べたくなるようなおいしさ。花豆はそれぞれ最後の仕上げの味つけが違うそうで、紫花豆は黒砂糖、白花豆は塩味。すべて食べきったあとに白花豆を食べると異なる味わいが楽しめるので、おすすめだそう。 このみつまめすべてを作るのには20日以上かかるとのことだ。完全無添加でこれほど時間と手間がかかっているみつまめは、ほかではないだろう。一度は食べていただきたい。 1972年に創業。店名は童話『青い鳥』から お店について、店主のお母様にお話を伺った。 「チルチル」は1972年11月に成田でオープン。当初は違う場所で、ボウリング場などが入っているビルの中で営業していた。 夜遅くもお客さんが来ることから夜中の0時までお店を開けていたため、毎日忙しく、寝る暇もなかったらしい。当時は20歳で、若いうちから相当がんばっていらしたそう。 2年後の1974年12月25日から現在の成田山の目の前の場所で営業がスタート。もとは酒屋さんが使っていた建物だそうで、1階はトラックが停まり、シャッターが閉まるような造りだったらしい。そこに内装を施して喫茶店にしたため、天井が高いようだ。 店名の「チルチル」は童話の『青い鳥』から。繰り返しの言葉は覚えやすいため、店名に選んだらしい。かわいらしいしキャッチーだし、とてもいい名前だと思う。 「チルチル」の文字はデザイナーさんに頼んだそうだが、お店の顔ともいえる男女のイラストは童話をモチーフにお母様が描いたもの。画用紙に描いてみた絵をそのまま50年間使い続けているとのことだ。今もメニューやマッチに使われている。 記憶にも残る素晴らしいデザインではないだろうか。おいしいみつまめも、トレードマークの看板イラストも作れる素敵な方だ。 「お不動さまに罰当たりなことはできない」 成田山のすぐそばで喫茶店を営業するからには、お不動さまに罰当たりなことはできない、というのがチルチルのポリシーらしい。 お参りをしに来た人がゆったりとくつろげて、「来てよかったな」と思ってもらえるようにやってきたそう。お参りをしてからチルチルに立ち寄る、というルーティンになっているお客さんも多いらしい。 店内は何度か改装をしているが、全体の造りや家具は50年間ほとんど変わりがないとのこと。椅子やテーブルはお店に合わせて職人さんに作ってもらったもので、細やかなこだわりを感じられる。 お店の奥のカウンターとキッチンの棚もとても素敵だ。これも職人さんがお店に合わせて作ったもの。喫茶店の特注の家具は、たまらない魅力がある。 随所にこだわりが光る「チルチル」は、50年間大切に守られてきた成田の名所のひとつであろう。 素通りするわけにはいかないので、成田山のお参りももちろんしてきた。広い境内は静かで、パワーをもらえるような力強さもあった。 空港に行く用事があっても「成田」まで行こうと思うことがなかったため、今回はとてもいい機会であった。成田山に行き、帰りに「チルチル」に寄るコースで小旅行をしてみてはいかがだろうか。 次回もまたどこかの喫茶店で。ごちそうさまでした。 チルチル 9時30分〜16時30分 不定休 千葉県成田市本町333 JR成田駅から徒歩12分、京成成田駅から徒歩13分 文・写真=奥森皐月 編集=高橋千里
-
40年前から“映え”ていたクリームソーダにときめく。夏の阿佐ヶ谷は「喫茶 gion」で|「奥森皐月の喫茶礼賛」第8杯
「奥森皐月の喫茶礼賛」 喫茶店巡りが趣味の奥森皐月。今気になるお店を訪れ、その魅力と味わいをレポート 暑さが一段と厳しくなってきたので、大好きな散歩も日中はほどほどにしている。 昼間に家を出ると、アスファルトの照り返しのせいかフライパンで焼かれているようだ。寒さより暑さのほうが苦手な私は、夏の大半は溶けながらだらりと過ごしてしまう。 しかしながら、夏の喫茶店は大好き。汗をかきながらやっとお店に着いて、冷房の効いた席に座るときの幸福感は何にも変えられない。冷たいドリンクを飲んで少しずつ汗が引いていくあの感覚は、夏で一番好きな瞬間だ。 阿佐ヶ谷のメルヘンチックな喫茶店 今回訪れたのはJR阿佐ケ谷駅から徒歩1分、お店が建ち並ぶ駅前でひときわ目立つ緑に囲まれたレトロな外装の喫茶店。阿佐ヶ谷の街で40年近く愛されている「喫茶 gion(ぎおん)」さん。 実はこのお店は、私のお気に入りトップ5に入る大好きな喫茶店。中学生のころに初めて行ってから今日まで定期的に訪れている。取材させていただけてとてもうれしい。 店内はかわいいランプやお花や絵で装飾されていて、青と緑の光が特徴的。いわゆる「喫茶店」でここまでメルヘンチックな雰囲気のお店はかなり珍しいと思う。 どこの席も素敵だが、やはり一番特徴的なのはブランコの席。こちらに座らせていただき、人気メニューのナポリタンとソーダ水のフロートトッピングを注文した。 ブランコ席は窓に面していて、この部分だけ壁がピンク色。店内中央の青色を基調とした空気感とはまた違う、かわいらしさと落ち着きのある空間だ。 店先の木が窓から見える。今の季節は緑がとてもきれいだ。 焦げ目がおいしい!一風変わったナポリタン ここのナポリタンは、一般的な喫茶店のナポリタンとは異なる。大きなお皿にナポリタン、キャベツサラダ、そしてたまごサラダが乗っている。店主さんいわく、このたまごサラダはサンドイッチに挟むためのものだそう。それを一緒に提供しているのだ。 まずはナポリタンをいただく。ハムが1枚そのまま乗っている見た目がいい。このナポリタンは色が濃いのだが、これは少し焦げるくらいまでしっかりと炒めているから。麺にソースがしっかりとついていて、香ばしさがたまらなくおいしい。 次にキャベツと一緒に食べてみると、トマトのソースが絡んで、シャキシャキとした食感が加わり、これもまたいい。 最後にたまごサラダと食べると、まろやかさとナポリタンの風味が最高に合う。黒胡椒も効いていて、無限に食べられる味だ。ボリュームたっぷりだがあっという間に完食した。 トーストもグラタンもお餅も少し焦げ目があるくらいが一番おいしいので、スパゲッティもよく炒めてみたところおいしくできたから今のスタイルになったそうだ。 ただ、通常のナポリタンなら温める程度でいいところを、しっかり焼くとなると手間と時間がかかる。炒めてくれる店員さんに感謝だ。ごく稀に、焦げていると苦情を入れる人がいるそう。そこがおいしいのになあ。 トロピカルグラスで飲む、おもちゃみたいなクリームソーダ これまた名物のクリームソーダ。 正確にいうと、gionで注文する場合は「ソーダ水」を緑と青の2種類から選び、フロートトッピングにする。すると、丸く大きなグラスにたっぷりのクリームソーダを飲むことができる。このグラスは「トロピカルグラス」というそうだ。 gionさんのまねをしてこのグラスを使い始めたお店はあるが、このかわいいフォルムはオープン当初から変わらないとのこと。「インスタ映え」という言葉が生まれる遙か前からこの「映え」な見た目のクリームソーダがあったのは、なんだか趣深い。 深く透き通る青と炭酸のしゅわしゅわ、贅沢にふたつも乗った丸いバニラアイス。どこを切り取ってもときめくかわいさだ。 見た目だけでなく、味もおいしい。シロップの風味と炭酸に、バニラ感強めのアイスが合う。「映え」ではなくなってくる、アイスが溶けたときのクリームソーダも好きだ。白と青が混じった色は、ファンシーでおもちゃみたい。 内装から制服までこだわった“かわいい”世界観 お店について、店主の関口さんにお話を伺った。 学生時代に本が好きだった関口さんは、本をゆっくりと読めるような落ち着いた場所を作りたかったそうで、20代はとにかく必死で働いてお店を開く資金を貯めていたとのこと。 1日に16時間ほど働き、寝るためだけの狭い部屋で暮らし、食べ物以外には何もお金を使わず生活していたとのことだ。 そしてお金が貯まったころから1年かけて東京都内の喫茶店を300店舗ほど回り、どんなお店にしようかと参考にしながら計画を練ったそう。 お店を開くにあたって、設計から何からすべてを関口さんが考えたそうで、1cm単位で理想の喫茶店になるように作って、できたのがこの喫茶 gion。 大理石の床、板張りの床、絨毯の床、どれも捨てがたいと思い、最終的には場所ごとに変えて3種類の床になったらしい。贅沢な全部乗せだ。ブランコはかつて吉祥寺にあったジャズ喫茶から得たエッセンス。 オープン時には資金面でそろえきれなかった雑貨やインテリアも少しずつ集めて、今のお店の独特でうっとりするような空間になっていったようだ。 白いブラウスに黒のリボン、黒のロングスカートというgionの制服も関口さんプロデュース。手書きのメニューもキュートで魅力的だ。 ご自身の好みがはっきりとあり、それを実現できているからこそ、調和した世界観になっているのだとわかった。お店のマークも、関口さんの思い描く素敵な女性のイラストだという。ナプキンまでかわいい。 「帰りにgionに寄れる」という楽しみ 喫茶gionのもうひとつの魅力は、午前9時から24時(金・土は25時)まで営業しているところ。モーニングが楽しめるのはもちろん、夜も遅くまで開いている。阿佐ヶ谷には喫茶店が多くあるが、たいていは夕方〜19時くらいには閉店してしまう。 私は阿佐ヶ谷でお笑いや音楽のライブに行ったり、演劇を観に行ったりする機会が多い。終わるのは21時〜22時が多く、ちょうどお腹が空いている。ほかの街なら適当なチェーン店に入るのだが、阿佐ヶ谷に限っては「帰りにgionに寄れる」という楽しみがある。 ナポリタン以外にもピザやワッフルなど、小腹を満たせるメニューがあってありがたい。夜のgionは店先のネオンが光り、店内の青い灯りもより幻想的になる。遅くまで営業するのはとても大変だと思うが、これからも阿佐ヶ谷に行ったときは必ず寄りたい。 夏の阿佐ヶ谷の思い出に、gion 関口さんの理想を詰め込んだメルヘンチックな喫茶店は、若い人から地元民まで幅広く愛される名店となった。 阿佐ヶ谷の街では8月には七夕まつりも開催される。駅前のアーケードにさまざまな七夕飾りが出される、とても楽しいお祭りだ。夏の阿佐ヶ谷を楽しみながら、喫茶gionでひと休みしてみてはいかがだろうか。 次回もまたどこかの喫茶店で。ごちそうさまでした。 喫茶 gion 月火水木日:9時〜24時、金土:9時〜25時 東京都杉並区阿佐谷北1-3-3 川染ビル1F 阿佐ケ谷駅から徒歩1分、南阿佐ケ谷駅から徒歩8分 文・写真=奥森皐月 編集=高橋千里
AKB48 Team 8 私服グラビア
大好評企画が復活!AKB48 Team 8メンバーひとりずつの撮り下ろし連載
【会員限定】AKB48 Team 8 私服グラビア Extra
【会員限定】AKB48 Team 8メンバーひとりずつの撮り下ろし連載
生きづらさを乗り越える「大人のためのマンガ入門」
仕事、恋愛、家族、結婚……大人のありきたりでありがちな悩みや生きづらさと向き合い、乗り越えていくためのヒントを探るマンガレビュー連載(文=山本大樹)
-
「才能」という呪縛を解く ミューズの真髄
【連載】生きづらさを乗り越える「大人のためのマンガ入門」 仕事、恋愛、家族、結婚……大人のありきたりでありがちな悩みや生きづらさと向き合い、乗り越えていくためのヒントを探るマンガレビュー連載。月1回程度更新。 『ブルー・ピリオド』をはじめ美大受験モノマンガがブームを呼んでいる昨今。特に芸術というモチーフは、その核となる「才能とは何か?」を掘り下げることで、主人公の自意識をめぐるドラマになりやすい。 文野紋『ミューズの真髄』も、一度は美大受験に失敗した会社員の主人公・瀬野美優が、一念発起して再び美大受験を志し、自分を肯定するための道筋を探るというストーリーだ。しかし、よくある美大受験マンガかと思ってページをめくっていくと、「才能」の扱い方に本作の特筆すべき点を見出すことができる。 「美大に落ちたあの日。“特別な私”は、死んでしまったから。仕方がないのです。“凡人”に成り下がった私は、母の決めた職場で、母の決めた服を着て、母が自慢できるような人と母が言う“幸せ”を探すんです。でも、だって、仕方ない、を繰り返しながら。」 (『ミューズの真髄』あらすじより) 主人公の美優は「どこにでもいる平凡な私」から、自分で自分を肯定するために、少しずつ自分の意志を周囲に示すようになる。芸術の道に進むことに反対する母親のもとを飛び出し、自尊心を傷つける相手にはNOを突きつけ、自分の進むべき道を自ら選び取っていく。しかし、心の奥深くに根づいた自己否定の考えはそう簡単に変えることはできない。自尊心を取り戻す過程で立ち塞がるのが「才能」の壁だ。 24歳という年齢で美術予備校に飛び込んだ美優は、最初の作品講評で57人中47位と悲惨な成績に終わる。自分よりも年下の生徒たちが才能を見出されていくなかで、自分の才能を見つけることができない美優。その後挫折を繰り返しながら、予備校の講師である月岡との出会いによって少しずつ自分を肯定し、前向きに進んでいく姿には胸が熱くなる。 「私は地獄の住人だ あの人みたいにあの子みたいに漫画みたいに 才能もないし美術で生きる資格はないのかもしれない バカで中途半端で恋愛脳で人の影響ばかり受けてごめんなさい でももがいてみてもいいですか? 執着してみていいですか?」 冒頭で述べたとおり、本作の「才能」への向き合い方を端的に示しているのがこのセリフである。才能がなくても好きなことに執着する──功利主義の社会では蔑まれがちなこのスタンスこそが、他者の否定的な視線から自分を守り、自分の人生を肯定していくためには重要だ。才能に執着するのではなく、「絵」という自分の愛する対象に執着する。その執着が自分を愛することにつながるのだ。それは「好きなことを続けられるのも才能」のような安い言葉では語り切れるものではない。 才能と自意識の話に収斂していく美大受験マンガとは別の視座を、美優の生き方は示してくれる。そして、美優にとっての「美術」と同じように、執着できる対象を見つけることは、「才能」の物語よりも私たちにとっては遥かに重要なことのはずである。 文=山本大樹 編集=田島太陽 山本大樹 編集/ライター。1991年、埼玉県生まれ。明治大学大学院にて人文学修士(映像批評)。QuickJapanで外部編集・ライターのほか、QJWeb、BRUTUS、芸人雑誌などで執筆。(Twitter/はてなブログ)
-
勝ち負けから離れて生きるためには? 真造圭伍『ひらやすみ』
【連載】生きづらさを乗り越える「大人のためのマンガ入門」 仕事、恋愛、家族、結婚……大人のありきたりでありがちな悩みや生きづらさと向き合い、乗り越えていくためのヒントを探るマンガレビュー連載。月1回程度更新。 30代を迎えて、漠然とした焦りを感じることが増えた。20代のころに感じていた将来への不安からくる焦りとはまた種類の違う、現実が見えてきたからこその焦りだ。 周囲の同世代が着々と実績を残していくなか、自分だけが取り残されているような感覚。いつまで経っても増えない収入、一年後の見通しすらも立たない生活……焦りの原因を数え始めたらキリがない。 真造圭伍のマンガ『ひらやすみ』は、30歳のフリーター・ヒロト君と従姉妹のなつみちゃんの平屋での同居生活を描いたモラトリアム・コメディだ。 定職に就かずに30歳を迎えてもけっして焦らず、のんびりと日々の生活を愛でながら過ごすヒロト君の生き方は、素直にうらやましく思う。身の回りの風景の些細な変化や季節の移り変わりを感じながら、家族や友達を思いやり、目の前のイベントに全力を注ぐ。どうしても「こんなふうに生きられたら」と考えてしまうくらい、魅力的な人物だ。 そんなヒロト君も、かつては芸能事務所に所属し、俳優として夢を追いかけていた時期もあった。高校時代には親友のヒデキと映画を撮った経験もあり、純粋に芝居を楽しんでいたヒロト君。芸能事務所のマネージャーから「なんで俳優になろうと思ったの?」と聞かれ、「あ、オレは楽しかったからです!演技するのが…」と答える。 「でも、これからは楽しいだけじゃなくなるよ──」 「売れたら勝ち、それ以外は負けって世界だからね」 数年後、役者を辞めたヒロト君は、漫画家を目指す従姉妹のなつみちゃんの姿を見て、かつて自分がマネージャーから言われた言葉を思い出す。純粋に楽しんでいたはずのことも、社会では勝ち負け──経済的な成功/失敗に回収されていく。出版社にマンガを持ち込んだなつみちゃんも、もしデビューすれば商業誌での戦いを強いられていくだろう。 運よく好きなことや向いていることを仕事にできたとしても、資本主義のルールの中で暮らしている以上、競争から距離を置くのはなかなか難しい。結果を出せない人のところにいつまでも仕事が回ってくることはないし、自分の代わりはいくらでもいる。嫌でも他者との勝負の土俵に立たされることになるし、純粋に「好き」だったころの気持ちとはどんどんかけ離れていく。 「アイツ昔から不器用でのんびり屋で勝ち負けとか嫌いだったじゃん? 業界でそういうのいっぱい経験しちまったんだろーな。」 ヒロト君の親友・ヒデキは、ヒロトが俳優を辞めた理由をそう推察する。私が身を置いている出版業界でも、純粋に本や雑誌が好きでこの業界を志した人が挫折して去っていくのをたくさん見てきた。でも、彼らが負けたとは思わないし、なんとか端っこで食っているだけの私が勝っているとももちろん思わない。勝ち/負けという物差しで物事を見るとき、こぼれ落ちるものはあまりに多い。むしろ、好きだったはずのことが本当に嫌いにならないうちに、別の仕事に就いたほうが幸せだと思う。 私も勝ち負けが本当に苦手だ。優秀な同業者も目の前でたくさん見てきて、同じ土俵に上がったらまず自分では勝負にならないということも30歳を過ぎてようやくわかった。それでも続けているのは、勝ち負けを抜きにして、いつか純粋にこの仕事が好きになれる日が来るかもしれないと思っているからだ。もちろん、仕事が嫌いになる前に逃げる準備ももうできている。 暗い話になってしまったが、『ひらやすみ』のヒロト君の生き方は、競争から逃れられない自分にとって、大きな救いになっている。なつみちゃんから「暇人」と罵られ、見知らぬ人からも「みんながみんなアナタみたいに生きられると思わないでよ」と言われるくらいののんびり屋でも、ヒロト君の周囲には笑顔が絶えない。自分ひとりの意志で勝ち負けから逃れられないのであれば、せめてまわりにいる人だけでも大切にしていきたい。そうやって自分の生活圏に大切なものをちゃんと作っておけば、いつでも競争から降りることができる。『ひらやすみ』は、そんな希望を見せてくれる作品だった。 文=山本大樹 編集=田島太陽 山本大樹 編集/ライター。1991年、埼玉県生まれ。明治大学大学院にて人文学修士(映像批評)。QuickJapanで外部編集・ライターのほか、QJWeb、BRUTUS、芸人雑誌などで執筆。(Twitter/はてなブログ)
-
克明に記録されたコロナ禍の息苦しさ──冬野梅子『まじめな会社員』
【連載】生きづらさを乗り越える「大人のためのマンガ入門」 仕事、恋愛、家族、結婚……大人のありきたりでありがちな悩みや生きづらさと向き合い、乗り越えていくためのヒントを探るマンガレビュー連載。月1回程度更新。 5月に『コミックDAYS』での連載が完結した冬野梅子『まじめな会社員』。30歳の契約社員・菊池あみ子を取り巻く苦しい現実、コロナ禍での転職、親の介護といった環境の変化をシビアに描いた作品だ。周囲のキラキラした友人たちとの比較、自意識との格闘でもがく姿がSNSで話題を呼び、あみ子が大きな選択を迫られる最終回は多くの反響を集めた。 「コロナ禍における、新種の孤独と人生のたのしみを、「普通の人でいいのに!」で大論争を巻き起こした新人・冬野梅子が描き切る!」と公式の作品紹介にもあるように、本作は2020年代の社会情勢を忠実に反映している。疫病はさまざまな局面で社会階層の分断を生み出したが、特に本作で描かれているのは「働き方」と「人間関係」の変化と分断である。『まじめな会社員』は、疫禍による階層の分断を克明に描いた作品として貴重なサンプルになるはずだ。 2022年5月末現在、コロナがニュースの時間のほとんどを占めていた時期に比べると、世間の空気は少し緩やかになりつつある。飲食店は普通にアルコールを提供しているし、休日に友達と遊んだり、ライブやコンサートに出かけることを咎められるような空気も薄まりつつある。しかし、過去の緊急事態宣言下の生活で感じた孤独や息苦しさはそう簡単に忘れられるものではないだろう。 たとえば、スマホアプリ開発会社の事務職として働くあみ子は、コロナ禍の初期には在宅勤務が許されていなかった。 「持病なしで子供なしだとリモートさせてもらえないの?」「私って…お金なくて旅行も行けないのに通勤はさせられてるのか」(ともに2巻)とリモートワークが許される人々との格差を嘆く場面も描かれている。 そして、あみ子の部署でもようやくリモートワークが推奨されるようになると、それまで事務職として上司や営業部のサポートを押しつけられていた今までを振り返り、飲食店やライブハウスなどの苦境に思いを巡らせつつも、つい「こんな生活が続けばいいのに…」とこぼしてしまう。 自由な働き方に注目が集まる一方で、いわゆるエッセンシャルワーカーはもちろん、社内での立場や家族の有無によって出勤を強いられるケースも多かった。仕事上における自身の立場と感染リスクを常に天秤にかけながら働く生活に、想像以上のストレスを感じた人も多かったはずだ。 「抱き合いたい「誰か」がいないどころか 休日に誰からも連絡がないなんていつものこと おうち時間ならずっとやってる」(2巻) コロナによる分断は、働き方の面だけではなく人間関係にも侵食してくる。コロナ禍の初期には「自粛中でも例外的に会える相手」の線引きは、限りなく曖昧だった。独身・ひとり暮らしのあみ子は誰とも会わずに自粛生活を送っているが、インスタのストーリーで友人たちがどこかで会っているのを見てモヤモヤした気持ちを抱える。 「コロナだから人に会えないって思ってたけど 私以外のみんなは普通に会ってたりして」「綾ちゃんだって同棲してるし ていうか世の中のカップルも馬鹿正直に自粛とかしてるわけないし」(2巻) 相互監視の状況に陥った社会では、当事者同士の関係性よりも「(世間一般的に)会うことが認められる関係性かどうか」のほうが判断基準になる。家族やカップルは認められても、それ以外の関係性だと、とたんに怪訝な目を向けられる。人間同士の個別具体的な関係性を「世間」が承認するというのは極めておぞましいことだ。「家族」や「恋人」に対する無条件の信頼は、家父長制的な価値観にも密接に結びついている。 またいつ緊急事態宣言が出されるかわからないし、そうなれば再び社会は相互監視の状況に陥るだろう。感染者数も落ち着いてきた今のタイミングだからこそ本作を通じて、当時は語るのが憚られた個人的な息苦しさや階層の分断に改めて目を向けておきたい。 文=山本大樹 編集=田島太陽 山本大樹 編集/ライター。1991年、埼玉県生まれ。明治大学大学院にて人文学修士(映像批評)。QuickJapanで外部編集・ライターのほか、QJWeb、BRUTUS、芸人雑誌などで執筆。(Twitter/はてなブログ)
L'art des mots~言葉のアート~
企画展情報から、オリジナルコラム、鑑賞記まで……アートに関するよしなしごとを扱う「L’art des mots~言葉のアート~」
-
【News】西洋絵画の500年の歴史を彩った巨匠たちの傑作が、一挙来日!『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』が大阪市立美術館・国立新美術館にて開催!
先史時代から現代まで5000年以上にわたる世界各地の考古遺物・美術品150万点余りを有しているメトロポリタン美術館。 同館を構成する17部門のうち、ヨーロッパ絵画部門に属する約2500点の所蔵品から、選りすぐられた珠玉の名画65 点(うち46 点は日本初公開)を展覧する『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』が、11月に大阪、来年2月には東京で開催されます。 この展覧会は、フラ・アンジェリコ、ラファエロ、クラーナハ、ティツィアーノ、エル・グレコから、カラヴァッジョ、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、レンブラント、 フェルメール、ルーベンス、ベラスケス、プッサン、ヴァトー、ブーシェ、そしてゴヤ、ターナー、クールベ、マネ、モネ、ルノワール、ドガ、ゴーギャン、ゴッホ、セザンヌに至るまでを、時代順に3章で構成。 第Ⅰ章「信仰とルネサンス」では、イタリアのフィレンツェで15世紀初頭に花開き、16世紀にかけてヨーロッパ各地で隆盛したルネサンス文化を代表する画家たちの名画、フラ・アンジェリコ《キリストの磔刑》、ディーリック・バウツ《聖母子》、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《ヴィーナスとアドニス》など、計17点を観ることが出来ます。 第Ⅱ章「絶対主義と啓蒙主義の時代」では、絶対主義体制がヨーロッパ各国で強化された17世紀から、啓蒙思想が隆盛した18世紀にかけての美術を、各国の巨匠たちの名画30点により紹介。カラヴァッジョ《音楽家たち》、ヨハネス・フェルメール《信仰の寓意》、レンブラント・ファン・レイン《フローラ》などを御覧頂けます。 第Ⅲ章「革命と人々のための芸術」では、レアリスム(写実主義)から印象派へ……市民社会の発展を背景にして、絵画に数々の革新をもたらした19世紀の画家たちの名画、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む》、オーギュスト・ルノワール《ヒナギクを持つ少女》、フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲く果樹園》、さらには日本初公開となるクロード・モネ《睡蓮》など、計18点が展覧されます。 15世紀の初期ルネサンスの絵画から19世紀のポスト印象派まで……西洋絵画の500 年の歴史を彩った巨匠たちの傑作を是非ご覧下さい! 『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』 ■大阪展 会期:2021年11月13日(土)~ 2022年1月16日(日) 会場:大阪市立美術館(〒543-0063大阪市天王寺区茶臼山町1-82) 主催:大阪市立美術館、メトロポリタン美術館、日本経済新聞社、テレビ大阪 後援:公益財団法人 大阪観光局、米国大使館 開館時間:9:30ー17:00 ※入館は閉館の30分前まで 休館日:月曜日( ただし、1月10日(月・祝)は開館)、年末年始(2021年12月30日(木)~2022年1月3日(月)) 問い合わせ:TEL:06-4301-7285(大阪市総合コールセンターなにわコール) ■東京展 会期:2022年2月9日(水)~5月30日(月) 会場:国立新美術館 企画展示室1E(〒106-8558東京都港区六本木 7-22-2) 主催:国立新美術館、メトロポリタン美術館、日本経済新聞社 後援:米国大使館 開館時間:10:00ー18:00( 毎週金・土曜日は20:00まで)※入場は閉館の30分前まで 休館日:火曜日(ただし、5月3日(火・祝)は開館) 問い合わせ:TEL:050-5541-8600( ハローダイヤル) text by Suzuki Sachihiro
-
【News】約3,000点の新作を展示。国立新美術館にて「第8回日展」が開催!
10月29日(金)から11月21日まで、国立新美術館にて「第8回日展」が開催されます。日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門に渡って、秋の日展のために制作された現代作家の新作、約3,000点が一堂に会します。 明治40年の第1回文展より数えて、今年114年を迎える日本最大級の公募展である日展は、歴史的にも、東山魁夷、藤島武二、朝倉文夫、板谷波山など、多くの著名な作家を生み出してきました。 展覧会名:第8回 日本美術展覧会 会 場:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2) 会 期:2021年10月29日(金)~11月21日(日)※休館日:火曜日 観覧時間:午前10時~午後6時(入場は午後5時30分まで) 主 催:公益社団法人日展 後 援:文化庁/東京都 入場料・チケットや最新の開催情報は「日展ウェブサイト」をご確認下さい (https://nitten.or.jp/) 展示される作品は作家の今を映す鏡ともいえ、作品から世相や背景など多くのことを読み取る楽しさもあります。 あらゆるジャンルをいっぺんに楽しめる機会、新たな日本の美術との出会いに胸躍ること必至です! 東京展の後は、京都、名古屋、大阪、安曇野、金沢の5か所を巡回(予定)します。 日本画 会場風景 2020年 洋画 会場風景 2020年 彫刻 会場風景 2020年 工芸美術 会場風景 2020年 書 会場風景 2020年 text by Suzuki Sachihiro
-
【News】和田誠の全貌に迫る『和田誠展』が開催!
イラストレーター、グラフィックデザイナー和田誠わだまこと(1932-2019)の仕事の全貌に迫る展覧会『和田誠展』が、今秋10月9日から東京オペラシティアートギャラリーにて開催される。 和田誠 photo: YOSHIDA Hiroko ©Wada Makoto 和田誠の輪郭をとらえる上で欠くことのできない約30のトピックスを軸に、およそ2,800点の作品や資料を紹介。様々に創作活動を行った和田誠は、いずれのジャンルでも一級の仕事を残し、高い評価を得ている。 展示室では『週刊文春』の表紙の仕事はもちろん、手掛けた映画の脚本や絵コンテの展示、CMや子ども向け番組のアニメーション上映も予定。 本展覧会では和田誠の多彩な作品に、幼少期に描いたスケッチなども交え、その創作の源流をひも解く。 ▽和田誠の仕事、総数約2,800点を展覧。書籍と原画だけで約800点。週刊文春の表紙は2000号までを一気に展示 ▽学生時代に制作したポスターから初期のアニメーション上映など、貴重なオリジナル作品の数々を紹介 ▽似顔絵、絵本、映画監督、ジャケット、装丁……など、約30のトピックスで和田誠の全仕事を紹介 会場は【logirl】『Musée du ももクロ』でも何度も訪れている、初台にある「東京オペラシティアートギャラリー」。 この秋注目の展覧会!あなたの芸術の秋を「和田誠の世界」で彩ろう。 【開催概要】展覧会名:和田誠展( http://wadamakototen.jp/ ) 会期:2021年10月9日[土] - 12月19日[日] *72日間 会場:東京オペラシティ アートギャラリー 開館時間:11:00-19:00(入場は18:30まで) 休館日:月曜日 入場料:一般1,200[1,000]円/大・高生800[600]円/中学生以下無料 主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団 協賛:日本生命保険相互会社 特別協力:和田誠事務所、多摩美術大学、多摩美術大学アートアーカイヴセンター 企画協力:ブルーシープ、888 books お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル) *同時開催「収蔵品展072難波田史男 線と色彩」「project N 84 山下紘加」の入場料を含みます。 *[ ]内は各種割引料金。障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料。割引の併用および入場料の払い戻しはできません。 *新型コロナウイルス感染症対策およびご来館の際の注意事項は当館ウェブサイトを( https://www.operacity.jp/ag/ )ご確認ください。 ▽和田誠(1932-2019) 1936年大阪に生まれる。多摩美術大学図案科(現・グラフィックデザイン学科)を卒業後、広告制作会社ライトパブリシティに入社。 1968年に独立し、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしてだけでなく、映画監督、エッセイ、作詞・作曲など幅広い分野で活躍した。 たばこ「ハイライト」のデザインや「週刊文春」の表紙イラストレーション、谷川俊太郎との絵本や星新一、丸谷才一など数多くの作家の挿絵や装丁などで知られる。 報知映画賞新人賞、ブルーリボン賞、文藝春秋漫画賞、菊池寛賞、毎日デザイン賞、講談社エッセイ賞など、各分野で数多く受賞している。 仕事場の作業机 photo: HASHIMOTO ©Wada Makoto 『週刊文春』表紙 2017 ©Wada Makoto 『グレート・ギャツビー』(訳・村上春樹)装丁 2006 中央公論新社 ©Wada Makoto 『マザー・グース 1』(訳・谷川俊太郎)表紙 1984 講談社 ©Wada Makoto text by Suzuki Sachihiro
logirl staff voice
logirlのスタッフによるlogirlのためのtext
-
「誰も観たことのないバラエティを」。『ももクロChan』10周年記念スタッフ座談会
ももいろクローバーZの初冠番組『ももクロChan』が昨年10周年を迎えた。 この番組が女性アイドルグループの冠番組として異例の長寿番組となったのは、ただのアイドル番組ではなく、"バラエティ番組”として破格におもしろいからだ。 ももクロのホームと言っても過言ではないバラエティ番組『ももクロChan』。 彼女たちが10代半ばのころから、その成長を見続けてきたプロデューサーの浅野祟氏、吉田学氏、演出の佐々木敦規氏の3人が集まり、番組への思い、そしてももクロの魅力を存分に語ってくれた。 浅野 崇(あさの・たかし)1970年、千葉県出身。プロデューサー。 <現在の担当番組> 『ももクロChan』 『ももクロちゃんと!』 『Musee du ももクロ』 『川上アキラの人のふんどしでひとりふんどし』、など 吉田 学(よしだ・まなぶ)1978年、東京都出身。プロデューサー。 <現在の担当番組> 『ももクロChan~Momoiro Clover Z Channel~』 『ももクロちゃんと!』 『川上アキラの人のふんどしでひとりふんどし』 『Musée du ももクロ』、など 佐々木 敦規(ささき・あつのり)1967年、東京都出身。ディレクター。 有限会社フィルムデザインワークス取締役 「ももクロはアベンジャーズ」。そのずば抜けたバラエティ力の秘密 ──最近、ももクロのメンバーたちが、個々でバラエティ番組に出演する機会が増えていますね。 浅野 ようやくメンバー一人ひとりのバラエティ番組での強さに、各局のディレクターやプロデューサーが気づいてくれたのかもしれないですね。間髪入れずに的確なコメントやリアクションをしてて、さすがだなと思って観てます。 佐々木 彼女たちはソロでもアリーナ公演を完売させるアーティストですけど、バラエティタレントとしてもその実力は突き抜けてますから。 浅野 あれだけ大きなライブ会場で、ひとりしゃべりしても飽きがこないのは、すごいことだなと改めて思いますよ。 佐々木 そして、4人そろったときの爆発力がある。それはまず、バラエティの天才・玉井詩織がいるからで。器用さで言わせたら、彼女はめちゃくちゃすごい。百田夏菜子、高城れに、佐々木彩夏というボケ3人を、転がすのが本当にうまくて助かってます。 昔は百田の天然が炸裂して、高城れにがボケにいくスタイルだったんですが、いつからか佐々木がボケられるようになって、ももクロは最強になったと思ってます。 キラキラしたぶりっ子アイドル路線をやりたがっていたあーりんが、ボケに回った。それどころか、今ではそのポジションに味をしめてる。昔はコマネチすらやらなかった子なのに、ビックリですよ(笑)。 (写真:佐々木ディレクター) ──そういうメンバーの変化や成長を見られるのも、10年以上続く長寿番組だからこそですね。 吉田 昔からライブの舞台裏でもずっとカメラを回させてくれたおかげで、彼女たちの成長を記録できました。結果的に、すごくよかったですね。 ──ずっとももクロを追いかけてきたファンは思い出を振り返れるし、これからももクロを知る人たちも簡単に過去にアクセスできる。「テレ朝動画」で観られるのも貴重なアーカイブだと思います。 佐々木 『ももクロChan』は、早見あかりの脱退なども撮っていて、楽しいときもつらいときも悲しいときも、ずっと追っかけてます。こんな大事な仕事は、途中でやめるわけにはいかないですよ。彼女たちの成長ドキュメンタリーというか、ロードムービーになっていますから。 唯一無二のコンテンツになってしまったので、ももクロが活動する限りは『ももクロChan』も続けたいですね。 吉田 これからも続けるためには、若い世代にもアピールしないといけない。10代以下の子たちにも「なんかおもしろいお姉ちゃんたち」と認知してもらえるように、我々もがんばらないと。 (写真:吉田プロデューサー) 浅野 彼女たちはまだまだ伸びしろありますからね。個々でバラエティ番組に出たり、演技のお仕事をしたり、ソロコンをやったりして、さらにレベルアップしていく。そんな4人が『ももクロChan』でそろったとき、相乗効果でますますおもしろくなるような番組をこれからも作っていきたいです。 佐々木 4人は“アベンジャーズ"っぽいなと最近思うんだよね。 浅野 わかります。 ──アベンジャーズ! 個人的に、ももクロって令和のSMAPや嵐といったポジションすら狙えるのではないか、と妄想したりするのですが。 浅野 あそこまで行くのはとんでもなく難しいと思いますが……。でも佐々木さんの言うとおりで、最近4人全員集まったときに、スペシャルな瞬間がたまにあるんですよ。そういう大物の華みたいな部分が少しずつ見えてきたというか。 佐々木 そうなんだよねぇ。ももクロの4人はやたらと仲がいいし、本人たちも30歳、40歳、50歳になっても続けていくつもりなので、さらに化けていく彼女たちを撮っていかなくちゃいけないですね。 早見あかりが抜けて、自立したももクロ (写真:浅野プロデューサー) ──先ほど少し早見あかりさん脱退のお話が出ましたけど、やはり印象深いですか。 吉田 そうですね。そのとき僕はまだ『ももクロChan』に関わってなかったんですが、自分の局の番組、しかも動画配信でアイドルの脱退の告白を撮ったと聞いて驚きました。 当時はAKB48がアイドル界を席巻していて、映画『DOCUMENTARY of AKB48』などでアイドルの裏側を見せ始めた時期だったんです。とはいえ、脱退の意志をメンバーに伝えるシーンを撮らせてくれるアイドルは画期的でした。 佐々木 ももクロは最初からリミッターがほとんどないグループだからね。チーフマネージャーの川上アキラさんが攻めた人じゃないですか。だって、自分のワゴン車に駆け出しのアイドル乗っけて、全国のヤマダ電機をドサ回りするなんて、普通考えられないでしょう(笑)。夜の駐車場で車のヘッドライトを背に受けながらパフォーマンスしてたら、そりゃリミッターも外れますよ。 (写真:『ももクロChan』#11) ──アイドルの裏側を見せる番組のコンセプトは、当初からあったんですか? 佐々木 そうですね、ある程度狙ってました。そもそも僕と川上さんが仲よしなのは、プロレスや格闘技っていう共通の熱狂している趣味があるからなんですけど。 当時流行ってた総合格闘技イベント『PRIDE』とかって、ブラジリアントップファイターがリング上で殺し合いみたいなガチの真剣勝負をしてたんですよ。そんな血気盛んな選手が闘い終わってバックヤードに入った瞬間、故郷のママに「勝ったよママ! 僕、勝ったんだよ!」って電話しながら泣き出すんです。 ああいうファイターの裏側を生々しく映し出す映像を見て、表と裏のコントラストには何か新しい魅力があるなと、僕らは気づいて。それで、川上さんと「アイドルで、これやりましょうよ!」って話がスムーズにいったんです。 吉田 ライブ会場の楽屋などの舞台裏に定点カメラを置いてみる「定点観測」は、ももクロの裏の部分が見える代表的なコーナーになりました。ステージでキラキラ輝くももクロだけじゃなくて、等身大の彼女たちが見られるよう、早いうちに体制を整えられたのもありがたかったですね。 ──番組開始時からももクロのバラエティにおけるポテンシャルは図抜けてましたか? 佐々木 いや、最初は普通の高校生でしたよ。だから、何がおもしろくて何がウケないのか、何が褒められて何がダメなのか。そういう基礎から丁寧に教えました。 ──転機となったのは? 佐々木 やはり早見あかりが抜けたことですね。当時は早見が最もバラエティ力があったんです。裏リーダーとして場を回してくれたし、ほかのメンバーも彼女に頼りきりだった。我々も困ったときは早見に振ってました。 だから早見がいなくなって最初の収録は、残ったメンバーでバラエティを作れるのか正直不安で。でも、いざ収録が始まったら、めちゃめちゃおもしろかったんですよ。「お前らこんなにできたのっ!?」といい意味で裏切られた。 早見に甘えられなくなり、初めて自立してがんばるメンバーを見て、「この子たちとおもしろいバラエティ作るぞ!」と僕もスイッチが入りましたね。 あと、やっぱり2013年ごろからよく出演してくれるようになった東京03の飯塚(悟志)くんが、ももクロと相性抜群だったのも大きかった。彼のシンプルに一刀両断するツッコミのおかげで、ももクロはボケやすくなったと思います。 吉田 飯塚さんとの絡みで学ぶことも多かったですよね。 佐々木 トークの間合いとか、ボケの伏線回収的な方程式なんかを、お笑い界のトップランナーと実戦の中で知っていくわけですから、貴重な経験ですよね。それは僕ら裏方には教えられないことでした。 浅野 今のももクロって、収録中に何かおもしろいことが起きそうな気配を感じると、各々の役割を自覚して、フィールドに散らばっていくイメージがあるんですよね。 言語化はできないんだろうけど、彼女たちなりに、ももクロのバラエティ必勝フォーメーションがいくつかあるんでしょう。状況に合わせて変化しながら、みんなでゴールを目指してるなと感じてます。 ももクロのバラエティ史に残る奇跡の数々 ──バラエティ番組でのテクニックは芸人顔負けのももクロですが、“笑いの神様”にも愛されてますよね。何気ないスタジオ収録回でも、ミラクルを起こすのがすごいなと思ってて。 佐々木 最近で言うと、「4人連続ピンポン球リフティング」は残り1秒でクリアしてましたね。「持ってる」としか言えない。ああいう瞬間を見るたびに、やっぱりスターなんだなぁと思いますね。 浅野 昔、公開収録のフリースロー対決(#246)で、追い込まれた百田さんが、うしろ向きで投げて入れるというミラクルもありました。 あと、「大人検定」という企画(#233)で、高城さんがタコの踊り食いをしたら、鼻に足が入ってたのも忘れられない(笑)。 吉田 あの高城さんはバラエティ史に残る映像でしたね(笑)。 個人的にはフットサルも印象に残ってます。中学生の全国3位の強豪チームとやって、善戦するという。 佐々木 なんだかんだ健闘したんだよね。しかも終わったら本気で悔しがって、もう一回やりたいとか言い出して。 今度のオンラインライブに向けて、過去の名シーンを掘ってみたんですが、そういうミラクルがたくさんあるんですよ。 浅野 今ではそのラッキーが起こった上で、さらにどう転していくかまで彼女たちが自分で考えて動くので、昔の『ももクロChan』以上におもしろくなってますよね。 写真:『ももクロChan』#246) (写真:『ももクロChan』#233) ──皆さんのお話を聞いて、『ももクロChan』はアイドル番組というより、バラエティ番組なんだと改めて思いました。 佐々木 そうですね。誤解を恐れずに言えば、僕らは「ももクロなしでも通用するバラエティ」を作るつもりでやってるんです。 お笑いとしてちゃんと観られる番組がまずあって、その上でとんでもないバラエティ力を持ったももクロががんばってくれる。そりゃおもしろくなりますよね。 ──アイドルにここまでやられたら、ゲストの芸人さんたちも大変じゃないかと想像します。 佐々木 そうでしょうね(笑)。平成ノブシコブシの徳井(健太)くんが「バラエティ番組いろいろ出たけど、今でも緊張するのは『ゴッドタン』と『ももクロChan』ですよ」って言ってくれて。お笑いマニアの彼にそういう言葉をもらえたのは、ありがたかったなぁ。 誰も見たことのない破格のバラエティ番組を届ける ──そして11月6日(土)には、『テレビ朝日 ももクロChan 10周年記念 オンラインプレミアムライブ!~最高の笑顔でバラエティ番組~』を開催しますね。 吉田 もともとは去年やるつもりでしたが、コロナ禍で自粛することになり、11周年の今年開催となりました。これから先『ももクロChan』を振り返ったとき、このイベントが転機だったと思えるような特別な日にしたいですね。 浅野 歌あり、トークあり、コントあり、ゲームあり。なんでもありの総合バラエティ番組を作るつもりです。 2時間の生配信でゲストも来てくださるので、通常回以上に楽しいのはもちろん、ライブならではのハプニングも期待しつつ……。まぁプロデューサーとしては、いろんな意味でドキドキしてますけど(苦笑)。 佐々木 ライブタイトルに「バラエティ番組」と入れて、我々も自分でハードル上げてるからなぁ(笑)。でも「バラエティを売りにしたい」と浅野Pや吉田Pに思っていただいているので、ディレクターの僕も期待に応えるつもりで準備してるところです。 浅野 ここで改めて、ももクロは歌や踊りのパフォーマンスだけじゃなく、バラエティも最高におもしろいんだぞ、と知らしめたい。 さっき佐々木さんも言ってましたけど、まだももクロに興味がない人でも、バラエティ番組として楽しめるはずなので、お笑い好きとか、バラエティをよく観る人に観てもらいたいです。 佐々木 誰も見たことない、新しくておもしろい番組を作るつもりですよ。 浅野 『ももクロChan』が始まった2010年って、まだ動画配信で成功している番組がほとんどなかったんですね。そんな環境で番組がスタートして、テレビ朝日の中で特筆すべき成功番組になった。 そういう意味では、配信動画のトップランナーとして、満を持して行う生配信のオンラインイベントなので、業界の中でも「すごかった」と言ってもらえる番組にするつもりです。 吉田 『ももクロChan』スタッフとしては、番組が11周年を迎えることを感慨深く思いつつ、テレビを作ってきた人間としては、コロナ以降に定着してきたオンライン生配信の意義を今改めて考えながら作っていきたいです。 (写真:『テレビ朝日 ももクロChan 10周年記念 オンラインプレミアムライブ!~最高の笑顔でバラエティ番組~』は、11月6日(土)19時開演 logirl会員は割引価格でご視聴いただけます) ──具体的にどういった企画をやるのか、少しだけ教えてもらえますか? 浅野 「あーりんロボ」(佐々木彩夏がお悩み相談ロボットに扮するコントコーナー)はやるでしょう。 佐々木 生配信で「あーりんロボ」は怖いですよ、絶対時間押しますから(笑)。佐々木も度胸ついちゃってるからガンガンボケて、百田、高城、玉井がさらに煽って調子に乗っていくのが目に見える……。 あと、配信ならではのディープな企画も考えていますが、ちょっと今のままだとディープすぎてできないかもしれないです。 浅野 配信を観た方は、ネタバレ禁止というルールを決めたら、攻められますかねぇ。 佐々木 たしかに視聴者の方々と共犯関係を結べるといいですね。 とにかく、モノノフさんはもちろんですが、少しでも興味を持った人に観てほしいんですよ。バラエティ史に残る番組の記念すべき配信にしますので、絶対損はさせません。 浅野 必ず、期待にお応えします。 撮影=時永大吾 文=安里和哲 編集=後藤亮平
-
logirlの「起爆剤になりたい」ディレクター・林洋介(『ももクロちゃんと!』)インタビュー
ももいろクローバーZ、でんぱ組.inc、AKB48 Team8などのオリジナルコンテンツを配信する動画配信サービス「logirl」スタッフへのリレーインタビュー第5弾。 今回は10月からリニューアルする『ももクロちゃんと!』でディレクターを務める林洋介氏に話を聞いた。 林洋介(はやし・ようすけ)1985年、神奈川県出身。ディレクター。 <現在の担当番組> 『ももクロちゃんと!』 『WAGEI』 『小川紗良のさらまわし』 『まりなとロガール』 リニューアルした『ももクロちゃんと!』の収録を終えて ──10月9日から土曜深夜に枠移動する『ももクロちゃんと!』。林さんはリニューアルの初回放送でディレクターを務めています。 林 そうですね。「ももクロちゃんと、〇〇〇!」という基本的なルールは変わらずやっていくんですけど、画面上のCGやテロップなどが変わるので、視聴者の方の印象はちょっと違ってくるかなと思います。 (写真:「ももクロちゃんと!」) ──収録を終えた感想はいかがですか? 林 自粛期間中に自宅で推し活を楽しめる「推しグッズ」作りがトレンドになっていたので、今回は「推しグッズ」というテーマでやったんですが、ももクロのみなさんに「推しゴーグル」を作ってもらう作業にけっこう時間がかかってしまったんですよね。「安全ゴーグル」に好きなキャラクターや言葉を書いてデコってもらったんですが、本当はもうひとつ作る予定が収録時間に収まりきらず……それでもリニューアル1発目としては、期待を裏切らない内容になったと思います。 ──『ももクロちゃんと!』を担当するのは今回が初めてですが、収録に臨むにあたって何か考えはありましたか? 林 やっぱり、リニューアル一発目なので盛り上がっていけたらなと。あとは、ももクロは知名度のあるビッグなタレントさんなので、その空気に飲まれないようにしないといけないなと考えていましたね。 ──先輩スタッフの皆さんからとも相談しながらプランを立てていったのでしょうか? 林 そうですね。ももクロは業界歴も長くてバラエティ慣れしているので、トークに関しては心配ないと聞いていました。ただ、自分たちで考えて何かを書いたり作ったりしてもらうのは、ちょっと時間がいるかもしれないよとも……でも、まさかあそこまでかかるとは思いませんでした(笑)。ちょっとバカバカしいものを書いてもらっているんですけど、あそこまで真剣に取り組んでくれるのかって逆に感動しました。 (写真:「ももクロちゃんと! ももクロちゃんと祝!1周年記念SP」) 「まだこんなことをやるのか」という無茶をしたい ──ももクロメンバーと仕事をする機会は、これまでもありましたか? 林 logirlチームに入るまで一度もなくて、今回がほぼ初対面です。ただ一度だけ、DVDの宣伝のために短いコメントをもらったことがあって、そのときもここまで現場への気遣いがしっかりしているんだという印象を受けました。 もちろん名前はよく知っていますが、僕は正直あまりももクロのことを知らなかったんですよね。キャリア的に考えたら当然現場では大物なわけで、そのときは僕も時間を巻きながら無事に5分くらいのコメントをもらったんですが、あとから撮影した素材を見返したら、あの短いコメント取材だけなのに、わざわざみんなで立ち上がって「ありがとうございました」と丁寧に言ってくれていたことに気がついて、「めっちゃいい子たちやなあ」って思ってました。 ──一緒に仕事をしてみて、印象は変わりましたか? 林 『ももクロちゃんと!』は、基本的にその回で取り上げる専門的な知識を持った方にゲストで来ていただいてるんですが、タレントさんでない方が来ることも多いんですよね。そういった一般の方に対しても壁がないというか、なんでこんなになじめるのかってくらいの親しみ深さに驚きました。そういう方たちの懐にもすっと入っていけるというか、その気遣いを大切にしているんですよね。しかもそれをすごく自然にやっているのが、すごいなと思いました。 ──『ももクロちゃんと!』は2年目に突入しました。今後の方向性として、考えていることはありますか? 林 「推しグッズ」でも、あそこまで真剣に取り組んでるんだったら、短い収録時間の中ではありますが、「まだこんなことをやってくれるのか」という無茶をしてみたいなと個人的には思いました。過去の『ももクロChan』を観ていても、すごくアクティブじゃないですか。だから、トークだけでは終わらせたくないなっていう気持ちはあります。 (写真:「ももクロChan~Momoiro Clover Z Channel~」) 情報番組のディレクターとしてキャリアを積む ──テレビの仕事を始めたきっかけを教えてください。 林 大学を卒業して特にやりたいことがなかったので、好きだったテレビの仕事をやってみようかなというのが入口ですね。最初に入ったのがテレビ東京さんの『お茶の間の真実〜もしかして私だけ!?〜』というバラエティ番組で、そこでADをやっていました。長嶋一茂さんと石原良純さんと大橋未歩さんがMCだったんですが、初めは知らないことだらけだったので、いろいろなことが学べたのは楽しかったですね。 ──そこからずっとバラエティ畑ですか。 林 AD時代は基本的にバラエティでしたね。ディレクターの一発目はTBSの『ビビット』という情報番組でした。曜日ディレクターとして、日々のニュースを追う感じだったんですが、そもそもニュースというものに興味がなかったので、そこはかなり苦戦しました。バラエティの“おもしろい”は単純というか、わかりやすいですが、ニュースの“おもしろい”ってなんだろうってずっと考えていましたね。たとえば、殺人事件の何を見せたらいいんだろうとか、まったくわからない世界に入ってしまったなという感じがしていました。 ──情報番組はどのくらいやっていたんですか? 林 『ビビット』のあとに始まった、立川志らくさんの『グッとラック!』もやっていたので、6年間ぐらいですかね。でも、最後まで情報番組の感覚はつかめなかった気がします。きっとこういうことが情報番組の“おもしろい”なのかなって想像しながら、合わせていたような感じです。 番組制作のモットーは「事前準備を超えること」 ──ご自身の好みでいえば、どんなジャンルがやりたかったんですか? 林 いわゆる“どバラエティ”ですね。当時でいえば、めちゃイケ(『めちゃ×イケてるッ!』/フジテレビ)に憧れてました。でも、情報バラエティが全盛の時代だったので、結果的にAD時代、ディレクター時代を含めてゴリゴリのバラエティはやれなかったですね。 ──情報番組のディレクター時代の経験で、印象に残っていることはありますか? 林 芸能人の密着をやったり、街頭インタビューでおもしろ話を拾ってきたりと、仕事としては濃い時間を過ごしたと思いますが、そういったネタよりも、当時の上司からの影響が大きかったかなと思います。『ビビット』や『グッとラック!』は、ワイドショーだけどバラエティに寄せたい考えがあったので、コーナー担当の演出はバラエティ畑で育った人たちがやっていたんですよね。今思えば、バラエティのチームでワイドショーを作っているような感覚だったので、特殊といえば特殊な場所だったのかもしれません。僕のコーナーを見てくれていた演出の人もなかなか怖い人でしたから(笑)。 ──その経験も踏まえ、番組を作るときに心がけていることはありますか? 林 どんなロケでも事前に構成を作ると思うんですが、最初に作った構成を越えることをひとつの目標としてやっていますね。「こんなものが撮れそうです」と演出に伝えたところから、ロケのあとのプレビューで「こんなのがあるんだ」と驚かせるような何かをひとつでも持って帰ろうとやっていましたね。 自由度の高い「配信番組」にやりがいを感じる ──logirlチームには、どのような経緯で入ったんでしょうか? 林 『グッとラック!』が終わったときに、会社から「次はどうしたい?」と提示された候補のひとつだったんですよね。それで、僕はもう地上波に未来はないのかなと思っていたので、詳細は知らなかったんですけど、配信の番組というところに興味を持ってやってみたいなと思い、今年の4月から参加しています。 ──参加して半年ほど経ちますが、配信番組をやってみた感触はいかがですか? 林 そうですね。まだ何かができたわけじゃないんですけど、自分がやりたいことに手が届きそうだなという感じはしています。もちろん、仕事として何かを生み出さなければいけないですが、そこに自分のやりたいことが添えられるんじゃないかなって。 具体的に言うと、僕はいつか好きな「バイク」を絡めた企画をやりたいと思っているんですが、地上波だったら一発で「難しい」となりそうなものも、企画をもう少ししっかり詰めていけば、実現できるんじゃないかという自由度を感じています。 ──そこは地上波での番組作りとは違うところですよね。 林 はい、少人数でやっていることもありますし、聞く耳も持っていただけているなと感じます。まだ自分発信の番組は何もないんですけど、がんばれば自分発信でやろうという番組が生まれそうというか、そこはやりがいを感じる部分ですね。 logirlを大きくしていく起爆剤になりたい ──logirlはアイドル関連の番組も多いです。制作経験はありますか? 林 テレビ東京の『乃木坂って、どこ?』でADをやっていたことがあります。本当に初期で『制服のマネキン』の時期くらいまでだったので、もう9年前くらいですかね。いま売れている子も多いのでよかったなと思います。 ──ご自身がアイドル好きだったことはないですか。 林 それこそ、中学生のころにモーニング娘。に興味があったくらいですね。ちょうど加護(亜依)ちゃんや辻(希美)ちゃんが入ってきたころで、当時はみんな好きでしたから。でも、アイドルに熱狂的になったことはなくて、ああいう気持ちを味わってみたいなとは思うんですけど、なかなか。 ──これからlogirlでやりたいことはありますか? 林 先ほども言ったバイク関連の企画もそうですが、単純に何をやればいいというのはまだ見えてないんですよね。ただ、logirlはまだまだ小さいので、僕が起爆剤になってNetflixみたいにデカくなっていけたらいいなって勝手に思っています。 ──最後に『ももクロちゃんと!』の担当ディレクターをとして、番組のリニューアルに向けた意気込みをお願いします。 林 『ももクロちゃんと!』はこれから変わっていくはずなので、ファンのみなさんにはその変化にも注目していただければと思います。よろしくお願いします! 文=森野広明 編集=中野 潤
-
言葉を引き出すために「絶対的な信頼関係を」プロデューサー・河合智文(『でんぱの神神』等)インタビュー
ももいろクローバーZ、でんぱ組.inc、AKB48 Team8などのオリジナルコンテンツを配信する動画配信サービス「logirl」スタッフへのリレーインタビュー第4弾。 今回は『でんぱの神神』『ナナポプ』などのプロデューサー、河合智文氏に話を聞いた。 河合智文(かわい・ともふみ)1974年、静岡県出身。プロデューサー。 <現在の担当番組> 『でんぱの神神』 『ナナポプ 〜7+ME Link Popteen発ガールズユニットプロジェクト〜』 『美味しい競馬』(logirl YouTubeチャンネル) 初めて「チーム神神」の一員になれた瞬間 ──『でんぱの神神』には、いつから関わるようになったんでしょうか? 河合 2017年の3月から担当になりました。ちょうど、でんぱ組.incがライブ活動をいったん休止したタイミングでした。「密着」が縦軸としてある『でんぱの神神』をこれからどうしていこうか、という感じでしたね。 (写真:『でんぱの神神』) ──これまでの企画で印象的なものはありますか? 河合 古川未鈴さんが『@JAM EXPO 2017』で総合司会をやったときに、会場に乗り込んで未鈴さんの空き時間にジャム作りをしたんですよ。企画名は「@JAMであっと驚くジャム作り」。簡易キッチンを設置して、現場にいるアイドルさんたちに好きな材料をひとつずつ選んで鍋に入れていってもらい、最終的にどんな味になるのかまったくわからないというような(笑)。 極度の人見知りで、ほかのアイドルさんとうまくコミュニケーションが取れないという未鈴さんの苦手克服を目的とした企画でもあったんですが、@JAMの現場でロケをやらせてもらえたのは大きかったなと思います。 (写真:『でんぱの神神』#276/2017年9月22日配信) 企画ではありませんが、ねも・ぺろ(根本凪・鹿目凛)のふたりが新メンバーとしてお披露目となった大阪城ホール公演(2017年12月)までの密着も印象に残っていますね。 ライブ活動休止中はバラエティ企画が中心だったので、リハーサルでメンバーが歌っている姿がとても新鮮で……その空間を共有したとき、初めて「チーム神神」の一員になれたという感じがしました。 そういった意味ではねも・ぺろのふたりに対しては、でんぱ組.incという会社の『でんぱの神神』部署に配属された同期入社の仲間だと勝手に感じています (笑)。 でんぱ組.incが秀でる「自分の魅せ方」 ──でんぱ組.incというグループにどんな印象を持っていますか? 河合 僕が関わり始めたころは、2度目の武道館公演を行うなどすでにアイドルグループとして大きく、メジャーな存在だったんです。番組としてもスタートから6年目だったので、自分が入ってしっかり接していけるのかな、という不安はありました。 自分の趣味に特化したコアなオタクが集まったグループ……ということで、それなりにクセがあるメンバーたちなのかなと構えていたんですけど、そのあたりは気さくに接してもらって助かりました。とっつきにくさとかも全然なくて(笑)。 むしろ、ロケを重ねていくうちにセルフプロデュースや自己表現がすごくうまいんだなと思いました。自分の魅せ方をよくわかっているんですよね。 ──そういったご本人たちの個性を活かして企画を立てることもあるのでしょうか? 河合 マンガ・アニメ・ゲームなどメンバーが愛した男性キャラクターを語り尽くすという「私の愛した男たち」はでんぱ組にうまくハマった企画で、反響が大きかったので、「私の憧れた女たち」「私のシビれたシーンたち」と続く人気シリーズになりました。 やはり好きなことについて語るときはエネルギーがあるというか、とてもテンション高くキラキラしているんですよね。メンバーそれぞれの好みというか、人間性というか……隠れた一面を知ることのできた企画でしたね。 (写真:『でんぱの神神』#308/2018年5月4日配信) ──そして5月に『でんぱの神神』のレギュラー配信が2年ぶりに再開しました。これからどんな番組にしていきたいですか? 河合 2019年2月にレギュラー配信が終了しましたが、それでも不定期に密着させてもらっていたんです。そのたびにメンバーから「『神神』は何度でも蘇る」とか、「ぬるっと復活」みたいに言われていましたが(笑)。そんな『神神』が2年ぶりに完全復活できました。 長寿番組が自分の代で終了してしまった負い目も感じていましたし、不定期でも諦めずに配信を続けたことがレギュラー再開につながったと思うと、正直うれしいですね。 今回加入した新メンバーも超個性的な5人が集まったと思います。やはり今は多くの人に新メンバーについて知ってほしいですし、先ほどの「私の愛した男たち」は彼女たちを深掘りするのにうってつけの企画ですよね。これまで誰も気づかなかった個性や魅力を引き出して、新生でんぱ組.incを盛り上げていきたいです。 (写真:『でんぱの神神』#363/2021年5月12日配信) 密着番組では、事前にストーリーを作らない ──ティーンファッション誌『Popteen』のモデルが音楽業界を駆け上がろうと奮闘する姿を捉えた『ナナポプ』は、2020年の8月にスタートしました。 河合 『Popteen』が「7+ME Link(ナナメリンク)」というプロジェクトを立ち上げることになり、そこから生まれたMAGICOURというダンス&ボーカルユニットに密着しています。これまでのlogirlの視聴者層は20〜40代の男性が多かったですが、『ナナポプ』のファンの中心はやはり『Popteen』読者である10代の女性。そういった人たちにもlogirlを知ってもらうためにも、新しい視聴者層への訴求を意識した企画でもあります。 (写真:『ナナポプ』#29/2021年3月5日配信) ──番組の反響はいかがでしょうか? 河合 スタート当初は賛否というか、「モデルさんにダンステクニックを求めるのはいかがなものか?」といった声もありました。ですが、ダンス講師のmai先生はBIGBANGやBLACKPINKのバックダンサーもしていた一流の方ですし、メンバーたちも常に真剣に取り組んでいます。 だから、実際に観ていただければそれが伝わって応援してもらえるんじゃないかと思っています。番組も「“リアル”だけを描いた成長の記録」というテーマになっているので、本気の姿をしっかり伝えていきたいですね。 ──密着番組を作るときに意識していることはありますか? 河合 特に自分がディレクターとしてカメラを回すときの場合ですが、ナレーション先行の都合のよいストーリーを勝手に作らないことですね。 僕は編集のことを考えて物語を固めてしまうと、その画しか撮れなくなっちゃうタイプで。現場で実際に起きていることを、リアルに受け止めていこうとは常に考えています。一方で、事前に狙いを決めて、それをしっかり押さえていく人もいるので、僕の考えが必ずしも正解ではないとも思うんですけどね。 音楽の仕事をするために、制作会社に入社 ──テレビ業界を目指したきっかけを教えてください。 河合 高校時代に世間がちょうどバンドブームで、僕も楽器をやっていたんです。「学園祭の舞台に立ちたい」くらいの活動だったんですけど、当時から「仕事にするならクリエイティブなことがいい」とはずっと考えていました。初めは音楽業界に入りたかったんですが、専門学校に行って音楽の知識を学んだわけでもないので、レコード会社は落ちてしまって。 ほかに音楽の仕事ができる手段はないかなと考えたときに浮かんだのが「音楽番組をやればいい」でした。多少なりとも音楽に関われるなら、ということで番組制作会社に入ったのがきっかけです。 ──すぐに音楽番組の担当はできましたか? 河合 研修期間を経て実際に採用となったときに「どんな番組をやりたいんだ?」と聞かれて、素直に「音楽番組じゃなきゃ嫌です」と言ったら希望を叶えてくれたんです。1998年に日本テレビの深夜にやっていた、遠藤久美子さんがMCの『Pocket Music(ポケットミュージック)』という番組のADが最初の仕事です。そのあとも、同じ日本テレビで始まった『AX MUSIC- FACTORY』など、音楽番組はいくつか関わってきました。 大江千里さんと山川恵里佳さんがMCをしていた『インディーウォーズ』という番組ではディレクターをやっていました。タレントさんがインディーアーティストのプロモーションビデオを10万円の予算で制作するという、企画性の高い番組だったんですが、10万円だから番組ディレクターが映像編集までやることになったんです。 放送していた2004〜2005年ごろ、パソコンでノンリニア編集をする人なんてまだあまりいませんでした。ただ僕はひと足先に手を出していたので、タレントさんとマンツーマンで、ああでもないこうでもないと言いながら何時間もかけて動画を編集した思い出がありますね。 ──現在も動画の編集作業をすることはあるんですか? 河合 今でもバリバリやっています(笑)。YouTubeチャンネルでも配信している『美味しい競馬』の初期もそうですし、『でんぱの神神』がレギュラー配信終了後に特別編としてライブの密着をしたときは、自分でカメラを担いで密着映像とライブを収録して、それを自分で編集したりもしました。 やっぱり、自分で回した素材は自分で編集したいっていう気持ちが湧くんですよね。忘れかけていたディレクター心に火がつくというか……編集で次第に形になっていくのがおもしろくて。編集作業に限らず、構成台本を作成したり、けっこうなんでも自分でやっちゃうタイプですね。 (写真:『でんぱの神神』特別編 #349/2019年5月27日配信) logirlは、やりたいことを実現できる場所 ──logirlに参加した経緯を教えてください。 河合 実は『Pocket Music(ポケットミュージック)』が終わったとき、ADだったのに完全にフリーになったんですよ。そこから朝の情報番組などいろんなジャンルの番組を経験して、番組を通して知り合った仲間からいろいろと声をかけてもらって仕事をしていました。紀行番組で毎月海外に行ったりしたこともありましたね。 ちょうど一段落して、テレビ番組以外のこともやってみたいなと考えていたときに、日テレAD時代の仲間から「テレ朝で仕事があるけどやらない?」と紹介してもらい、それがまだ平日に毎日生配信をしていたころ(2015〜2017年)のlogirlだったんです。 (写真:撮影で訪れたスペイン・バルセロナにて) ──番組を作る上でモットーにしていることはありますか? 河合 今は一般の方でも、タレントさんでも、編集ソフトを使って誰でも動画制作ができる時代になったじゃないですか。だからこそ、「テレビ局の動画スタッフが作っている」というクオリティを出さなければいけないと思っています。難しいことですが、これを諦めたら番組を作る意味がないのかなという気がするんですよね。 あとは、出演者との信頼関係を大切に…..といったことですね。特に『でんぱの神神』『ナナポプ』といった密着系の番組は、出演者の気持ちをいかに言葉として引き出すかにかかっていますので、そこには絶対的な信頼関係を築いていくことが必要だと思います。 ──実際にlogirlで仕事してみて、いかがでしたか? 河合 自分でイチから企画を考えてアウトプットできる環境ではあるので、そこは楽しいですね。自分のやりたいことを、がんばり次第で実現できる場所。そういった意味でやりがいがあります。 ──リニューアルをしたlogirlの今後の目標を教えてください。 河合 まずは、どんどん新規の番組を作って、コンテンツを充実させていきたいです。これまで“ガールズ”に特化していましたが、今はその枠がなくなり、落語・講談・浪曲などをテーマにした『WAGEI』のような番組も生まれているので、いい意味でいろいろなジャンルにチャレンジできると思っています。 時期的にまだ難しいですが、ゆくゆくはlogirlでイベントをすることも目標です。logirlだからこそ実現できるラインナップになると思うので、いつか必ずやりたいと思っています。 文=森野広明 編集=田島太陽
大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』
仙波広雄@スポーツニッポン新聞社 競馬担当によるコラム。週末のメインレースを予想&分析/「logirl」でアーカイブ公開中『美味しい競馬』MC
-
大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(宝塚記念)
大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(宝塚記念) 今週は6月15日(日)の阪神11R・宝塚記念の予想です。上半期の締めくくりとなります。配信(YouTube(logirl 【テレ朝動画公式】YouTube)美味しい競馬#205)のゲストはほのかさん。ここのところオークス◎アルマヴェローチェ2着→ダービー◎クロワデュノール1着→安田◎ジャンタルマンタル1着なので、◎の精度は悪くありません。相手と馬券セレクトが今ひとつではありますが、いいこと書いて参考にもなればそれでOKというコラムなので、うまいこと利用してください。 ◎⑮ロードデルレイ。 宝塚は施行時期が繰り上がったのですが、結局は6月のG1ですからポイントは天気と馬場。さすがに今回、道悪は確定と言っていいでしょう。◎に指名したロードデルレイは今まで良以外一度もない晴れ男なので、道悪は走ってみないと分かりません。走り方と血統からはこなせると思いますが、道悪はメンタルの影響も大きいので、さっぱりという恐れもあります。それはそれとして大阪杯2着の内容は申し分なく、道悪なら外枠も悪くなく、鞍上も川田。道悪想定でなお勝負どころではないかと思っています。 ○①ベラジオオペラ。 大阪杯が1分56秒2のレコード勝ちなので、良の方が望ましいとは思いますが、この馬は道悪も大丈夫です。実際、重馬場だった昨年の宝塚記念も3着。器用なタイプでスタートも速く、最内枠でも自分で運びたいポジションで運べるでしょう。隣に並ぶドゥレッツァやローシャムパークは少々ゲート難の部類ですからね。馬場のラチ沿いが悪くなっていれば、内を空けて回れる位置を確保。ベストよりは1F長いとは思いますが、辛抱できる可能性も十分です。 ▲⑫メイショウタバル、☆⑪ソールオリエンス。 道悪枠として抜擢したいのがこの2頭。いずれも道悪での実績には光るものがあります。▲メイショウタバルはハナを切る公算が大きく、かつ道悪なら折り合いもつきやすい。☆ソールオリエンスは皐月賞や昨年宝塚2着が示す通り、現役屈指の重巧者です。 馬券は3連単軸フォーメーション。 <1着>⑮→<2着>①⑪⑫→<3着>①②③⑪⑫⑯。 <1着>⑮→<2着>②③⑯→<3着>①⑪⑫。24点。 text:仙波広雄@大阪スポーツニッポン新聞社 競馬担当/【logirl】でアーカイブ公開中『美味しい競馬』MC
-
大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(安田記念)
大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(安田記念) 今年もダービーが終わり一段落した気持ちになっています。今週は6月8日(日)の東京11R・安田記念の予想です。配信(YouTube(logirl 【テレ朝動画公式】YouTube)美味しい競馬#204)のゲストは鎌田菜月さん。今回の配信は、筆者にはそういうつもりはないのですが、他者から「牝系オタク語り」と言われたので、多分にそういう面もあるのでしょうが、牝系について語っています。ソニックレディにマチカネハヤテ、エアグルーヴ、スワンズウッドグローヴと推し牝系が複数出ているG1なので、そりゃまあ楽しみにもなろうというものです。なお安田記念はこの5年の予想コンセプトがだいたい一緒で「若さ、速さ、勢い」重視です。今年は香港馬もいませんからね。 ◎⑩ジャンタルマンタル。 朝日杯FS、NHKマイルC制覇の4歳馬。昨年のNHKマイルCは現マイル路線の文句なしトップクラスであるアスコリピチェーノを2馬身半、離して勝ちました。父パレスマリスの産駒は早熟傾向にあるので、4歳初戦のここは成長力が鍵。NHKマイルCの勝ち時計1分32秒4は少々詰めてもらわないと安田記念では厳しいわけですが、陣営のコメントは「明らかに成長している」と高野師。信用しましょう。 ○⑭ウォーターリヒト。 3勝クラス、リステッド、G3と東京マイルで3連勝。上がり3Fは32秒8、33秒5、33秒2。そして祖母マチカネハヤテ。希代の穴馬の末裔らしく、重賞馬券圏内時の人気は17、10、4、3番人気。勢いはありますが、今回もそれほど人気は上がらないはず。そういう星の下なのでしょう。 ▲⑯トロヴァトーレ。 ソニックレディ牝系は外枠の成績がいい傾向です。気性的にちょっと難しいところがあるためでしょう。同牝系ソングラインは安田記念を18番で勝っています。この馬の16番は歓迎していいと思います。外枠だと鞍上も腹をくくれますから、決め打ちの差しでしょう。そういう乗り方をしてくれれば力を発揮できます。 ☆⑰ジュンブロッサム。 6歳ですし、G1も2度目なので鮮度という点ではもう一つですが、とにかくディープ父系の強いレース。あと友道厩舎は府中特攻仕上げが得意で、鞍上もダービーでも存在感を見せた武豊。何かとファクターがそろっている馬です。 馬券は3連単軸2頭流し。 <1着>⑩→<2着>⑭→<3着>全。 <1着>⑩→<2着>全→<3着>⑭。32点。 text:仙波広雄@大阪スポーツニッポン新聞社 競馬担当/【logirl】でアーカイブ公開中『美味しい競馬』MC
-
大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(日本ダービー)
大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(ダービー) 先週のオークスは1着▲カムニャック、2着◎アルマヴェローチェ、3着△タガノアビーで、配信で取り上げた5頭で決まりましたので、まずは及第点かと思います。今週はいよいよ6月1日(日)の東京11R・ダービーの予想です。配信(YouTube(logirl 【テレ朝動画公式】YouTube)美味しい競馬#204)のゲストは鎌田菜月さんです。昔から筆者はダービーこそ競馬の根幹、そしてスーパーストラクチャーと史的唯物論概念を持ちだして最も重視しています。まあ、この物言いこそ、学生時代に吉本隆明あたりに触れたんだな、この人ってことがよく分かると思います。 ◎⑬クロワデュノール。 皐月賞(2着)は残念でした。展開の綾がいろいろありましたが、2着は2着。その結果を踏まえた上で言うと、クロワデュノールはイクイノックスには届かないと言えます。それでもキタサンブラックという種牡馬の資質をよく伝えており、広いコースでスムーズな競馬ができれば、このメンバーでも上位とみていいでしょう。例年のダービー上位級の力を間違いなく備えています。北村友一にとって騎手キャリアを懸けての一戦となりますが、まあダービーは毎年そういうレースですからね。 ○⑦ミュージアムマイル。 レーンは23年のタスティエーラでテン乗りダービーVを果たしています。そもそも乗り替わり、継続騎乗うんぬんは短期免許の外国人騎手に適用するのはナンセンス。皐月賞とダービーの適性を考えると、だいぶ皐月賞寄りの馬ですが、といってダービーで極端にパフォーマンスを落とすとも思えない。枠もいいところです。 ▲⑨ジョバンニ。 皐月賞は道中の不利もあって4着。エピファネイア産駒はそもそも広いコースの方がいいというか、タイトな競馬はあまり得意ではないので、条件は好転します。 ☆⑥ファンダム。 一発あるならこの馬という毎日杯の内容でした。毎日杯はダービーの裏ローテでは最重要レース。ダービーの適性と似たところがあります。とはいえ2400メートルがベストかと問われると微妙。限定戦でこなせるとは思いますが、◎に抜擢するほどかと問われると、このあたりの評価に落ち着きました。怖いのは怖いのですが…。 馬券は3連単軸1頭流し。 <1着>⑬→<相手>②③⑤⑥⑦⑨⑱。42点。 text:仙波広雄@大阪スポーツニッポン新聞社 競馬担当/【logirl】でアーカイブ公開中『美味しい競馬』MC
その他
番組情報・告知等のお知らせページ
-
WAGEI公開収録<概要・応募規約>
テレ朝動画「WAGEI 公開収録」番組観覧無料ご招待! 2025年1月18日(土)開催! logirl(ロガール)会員の中から抽選で100名様に番組観覧ご招待! 番組概要 テレ朝動画で配信中の伝統芸能番組『WAGEI』の公開収録! 番組MCを務める浪曲師「玉川太福」と、五代目三遊亭円楽一門の落語家「三遊亭らっ好」が珠玉のネタを披露します。 ゲストには須田亜香里と、SKE48赤堀君江が登場!出演者からの貴重なプレゼントも用意する予定です。 超レアなプログラムを是非お楽しみください。 日時:2025年1月18日(土)開場12:30 開演13:00(終演15:15予定) 場所:浅草木馬亭 東京都台東区浅草2−7−5 出演:玉川太福(浪曲師)・玉川みね子(曲師)/三遊亭らっ好(落語家)/須田亜香里/赤堀君江(SKE48) 応募詳細 追加応募期間:2024年12月27日(金)15:00~2025年1月9日(木)17:00締切 応募条件:logirl(ロガール)会員のみ対象(当日受付で確認させていただきます) 下記「応募規約」をよく読んでご応募ください。 応募フォーム:https://www.tv-asahi.co.jp/apps/apply/jump.php?fid=10062 追加当選発表:当選した方のみ、2025年1月10日(金)23:59までに 当選メール(ご招待メール)をご登録されたアドレスまでお送りさせていただきます。 「WAGEI公開収録」応募規約 【応募規約】 この応募規約(以下「本規約」といいます。)は、株式会社テレビ朝日(以下「当社」といいます。)が 運営する動画配信サービス「テレ朝動画」における「WAGEI」(以下「番組」といいます。)に関連して 実施する、公開収録の参加者募集に関する事項を定めるものです。参加していただける方は、本規約の 内容をご確認いただき、ご同意の上でご応募ください。 【募集要項】 開催日時:2025年1月18日(土)13:00開始~15:15頃終了予定 (途中、休憩あり) ※スケジュールは変更となる場合があります。集合時間等の詳細は当選連絡にてお伝えいたします。 場所:浅草木馬亭(東京都台東区浅草2-7-5) 出演者(予定):玉川太福(浪曲師)・玉川みね子(曲師)/三遊亭らっ好(落語家)/須田亜香里/赤堀君江(SKE48) ※出演者は予告なく変更される場合があります。 募集人数:100名様(予定) ※応募者多数の場合は、抽選とさせていただきます。 【応募資格】 ・テレ朝動画logirl(ロガール)会員限定 ・年齢性別は問いません 【応募方法】 応募フォームへの必要事項の入力 ・テレ朝動画にログインの上、必要事項を入力してください。 【ご参加お願い(参加決定)のご連絡】 ■ご参加をお願いする方(以下「参加決定者」といいます。)には、1月10日(金)23:59までに、応募フォームにご入力いただいたメールアドレス宛に、集合時間と場所、受付手続等の詳細を記載した「番組公開収録ご招待メール」(以下「ご招待メール」といいます。)を送信させていただきます。なお、ご入力いただいた電話番号にお電話をさせて頂く場合がございます。非通知設定でかけさせていただく場合もございますので、非通知拒否設定は解除して頂きますようお願いします。 ■当日の集合時間と集合場所は「ご招待メール」に記載します。集合時間に遅ることのないようご注意ください。 ■「ご招待メール」が届かない場合は、残念ながらご参加いただけませんのでご了承ください。 ■「ご招待メール」の送信の有無に関するお問い合わせはご遠慮ください。 ■公開収録の参加は無料です。参加決定のご連絡にあたって、参加決定者に対し、参加料等のご入金のお願いや銀行口座情報、クレジットカード情報等のお問い合わせをすることは、一切ございません。「テレビ朝日」や本サービスの関係者を名乗る悪質な連絡や勧誘には十分ご注意ください。また、そのような被害を防止するため、ご応募いただいた事実を第三者に口外することはお控えいただけますようお願い申し上げます。 ■「ご招待メール」および公開収録への参加で知り得た情報、公開収録の内容に関する情報、及び第三者の企業秘密・プライバシー等に関わる情報をブログ、SNS等への記載を含め、方法や手段を問わず第三者への開示を禁止いたします。また、当選権利および当選者のみが知り得た情報に関して、譲渡や販売は一切禁止いたします。 【注意事項】 ■ご案内は当選したご本人様1名のみのご参加となります。(同伴者はご案内できません) ■未成年の方がご応募いただく場合は、必ず事前に保護者の方の同意を得てください。その場合は、電話番号の入力欄に保護者の方と連絡の取れる電話番号をご入力ください。(保護者にご連絡させていただく場合がございます。) ■開催当日、今回の公開収録の参加および撮影・映像使用に関しての承諾書をご提出いただきます。(未成年の方は保護者のサインが必要となります。) ■1名につき応募は1回までとします。重複応募は全て無効になりますので、お気をつけください。 ■会場ではスタッフの指示に従ってください。指示に従っていただけない場合は、会場から退去していただく場合がございます。 ■会場でのスマートフォン等を用いての録画・録音についてはご遠慮ください。 ■会場までの交通手段は、公共交通機関をご利用ください。駐車場はございません。 ■会場までの交通費、宿泊費等は参加者のご負担にてお願いいたします。 ■当日は、ご本人であることを確認させていただくために、お手持ちのスマートフォン等で表示または印刷した「ご招待メール」と、「身分証明書」(運転免許証・パスポート等、氏名と年齢が確認できるもの)をお持ち下さい。ご本人確認が出来ない方は、ご参加いただけません。 ■荷物置き場はご用意しておりません。貴重品の管理等はご自身にてお願いいたします。貴重品を含む持ち物の紛失・盗難については、当社は一切責任を負いません。 ■公開収録に伴い、参加者・客席を含み場内の撮影・録音を行い、それらの映像または画像等の中に映り込む可能性があります。参加者は、収録した動画、音声を、当社または当社が利用を許諾する第三者(以下、当社および当該第三者を総称して「当社等」といいます)が国内外テレビ放送(地上波放送・衛星波放送を含みます)、雑誌、新聞、インターネット配信およびPC・モバイルを含むウェブサイトへの掲載をはじめとするあらゆる媒体において利用することについてご同意していただいたものとみなします(以下、かかる利用を「本件利用」といいます)。なお、本件利用の対価は無料とさせていただきますので、ご了承ください。 ■諸事情により番組の公開収録が中止又は延期となる場合がありますのでご了承ください。 【個人情報の取り扱いについて】 ■ご提供いただいた個人情報は、番組公開収録への参加に関する抽選、案内、手配又は連絡及び運営等のために使用し、収録後に消去させていただきます。 ■当社における個人情報等の取扱いの詳細については、以下のページをご覧下さい。 https://www.tv-asahi.co.jp/privacy/ https://www.tv-asahi.co.jp/privacy/online.html
-
新番組『WAGEIのじかん』(CS放送)
CSテレ朝チャンネル1「WAGEIのじかん」 落語・浪曲・講談など日本の伝統芸能が楽しめる番組。MCを務める浪曲師玉川太福と話芸の達人(=ワゲイスト)たちが珠玉のネタを披露します。さらに、お笑いを愛する市川美織が番組をサポート!お茶の間の皆様に笑いっぱなしの15分をお届けします。 お届けするネタ(3月放送)は、玉川太福の浪曲ほか、古今亭雛菊・春風亭かけ橋・春風亭昇吉・昔昔亭昇・柳家わさび・柳亭信楽の落語、神田松麻呂の講談などが登場します。お楽しみに〜!(※出演者50音順) ★3月の放送予定 3月17日(日)25:00~26:00 3月21日(木)26:00~27:00 3月24日(日)25:00~26:00 ⇩【収録中の様子】市川美織さん箱馬に乗って高さのバランスを調整しました。笑