奥森皐月の公私混同<収録後記>
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涙の最終回!? 2年半の思い出を振り返る|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第30回
転んでも泣きません、大人です。奥森皐月です。 この記事では私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』の収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを毎月書いています。今回の記事で最終回。 『奥森皐月の公私混同〜ソレ、私に教えてください!〜』の9月に配信された第41回から最終回までの振り返りです。 月額990円ですが、logirlに加入すれば最新回までのエピソードがすべて視聴できます。過去回でおもしろいものは数えきれぬほどあるので、興味がある方はぜひ観ていただきたいです。 「見せたい景色がある」展望タワーの存在意義 (写真:奥森皐月の公私混同 第41回「タワー、私に教えてください!」) 第41回のテーマは「タワー、教えてください!」。ゲストに展望タワー・展望台マニアのかねだひろさんにお越しいただきました。 タワーと聞いてやはり思い浮かべるのは、東京タワーやスカイツリー。建築のすごさや造形美を楽しんでいるのだろうかとなんとなく考えていました。ところが、お話を聞いてみるとタワーという概念自体が覆されました。 かねださんご自身のタワーとの出会いのお話が本当におもしろかったです。20代で国内を旅行するようになり、新潟県で偶然バス停として見つけた「日本海タワー」に興味を持って行ってみたとのこと。 実際の画像を私も見ましたが、思っているタワーとはまったく違う建物。細長くて高い、あのタワーではありません。ただ、ここで見た景色をきっかけにまた別のタワーに行き、タワーの魅力にハマっていったそうです。 その土地を見渡したときに初めてその土地をわかったような気がした、というお話がとても素敵だと感じました。 たとえば京都旅行に行ったとして、金閣寺や清水寺など名所を回ることはあります。ただ、それはあくまでも京都の中の観光地に行っただけであって「京都府」を楽しんだとはいえないと、前から少し思っていました。 そこでタワーのよさが刺さった。たしかに、その地域や都市を広く見渡すことができれば気づきがたくさんあると思います。 もちろん造形的な楽しみ方もされているようでしたが、展望タワーからの景色というものはほかでは味わえない魅力があります。 かねださんが「そこに展望タワーがあるということは、見せたい景色がある」というようなことをお話しされていたのにも感銘を受けました。 いわゆる“高さのあるタワー”ではないところの展望台などは少し盛り上がりに欠けるのではないか、なんて思ってしまっていたけれど、その施設がある時点でその景色を見せたいという意思がありますね。 有効期限がたった1年の、全国の19タワーを巡るスタンプラリーを毎年されているという話も興味深かったです。最初の印象としては、一度訪れたところに何度も行くことの楽しみがよくわからなかったです。 でも、天気や季節、建物が壊されたり新しく建築されたりと常に変化していて「一度として同じ景色はない」というお話を聞いて納得しました。タワーはずっと同じ場所にあるのだから、まさに定点観測ですよね。 今後旅行に行くときはその近くのタワーに行ってみようと思いましたし、足を運んだことのある東京タワーやスカイツリーにもまた行こうと思いました。 収録後、速攻でかねださんの著書『日本展望タワー大全』を購入しました。最近も、小規模ではありますが2度、展望台に行きました。展望タワーの世界に着々と引き込まれています。 究極のパフェは、もはや芸術作品!? (写真:奥森皐月の公私混同 第42回「パフェ、私に教えてください!」) 第42回は、ゲストにパフェ愛好家の東雲郁さんにお越しいただき「パフェ、教えてください!」のテーマでお送りしました。 ここ数年パフェがブームになっている印象でしたが、流行りのパフェについてはあまり知識がありませんでした。 このような記事を書くときはたいていファミレスに行くので、そこでパフェを食べることがしばしばあります。あとは、純喫茶でどうしても気になったときだけは頼みます。ただ、重たいので本当にたまにしか食べないものという存在です。 東雲さんはもともとアイス好きとのことで、なんとアイスのメーカーに勤めていた経験もあるとのこと。〇〇好きの範疇を超えています。 そのころにパフェ用のアイスの開発などに携わり、そこからパフェのほうに関心が向いたそうです。お仕事がキッカケという意外な入口でした。それと同時に、パフェ専用のアイスというものがあるのも、意識したことがなかったので少し驚かされました。 最近のこだわり抜かれたパフェは“構成表”なるものがついてくるそう。パフェの写真やイラストに線が引かれていて、一つひとつのパーツがなんなのか説明が書かれているのです。 昔ながらの、チョコソース、バニラソフトクリーム、コーンフレークのように、見てわかるもので作られていない。野菜のソルベやスパイスのソースなど、本当に複雑なパーツが何十種も組み合わさってひとつのパフェになっている。 実際の構成表を見せていただきましたが、もはや読んでもなんなのかわからなかったです。「桃のアイス」とかならわかるのですが、「〇〇の〇〇」で上の句も下の句もわからないやつがありました。 ビスキュイとかクランブルとか、それは食べられるやつですか?と思ってしまいます。難しい世界だ。難しいのにおいしいのでしょうね。 ランキングのコーナーでは「パフェの概念が変わる東京パフェベスト3」をご紹介いただきました。どのお店も本当においしそうでしたが、写真で見ても圧倒される美しさ。もはや芸術作品の域で、ほかのスイーツにはない見た目の豪華さも魅力だよなと感じさせられました。 予約が取れないどころか普段は営業していないお店まであるそうで、究極のパフェのすごさを感じるランキングでした。何かを成し遂げたらごほうびとして行きたいです。 マニアだからとはいえ、東雲さんは1日に何軒もハシゴすることもあるとのこと。破産しない程度に、私も贅沢なパフェを食べられたらと思います。 1年間を振り返ったベスト3を作成! (写真:奥森皐月の公私混同 第43回「1年間を振り返り 〇〇ベスト3」) 第43回のテーマは「1年間を振り返り 〇〇ベスト3」ということで、久しぶりのラジオ回。昨年の10月からゲストをお招きして、あるテーマについて教えてもらうスタイルになったので、まるまる1年分あれこれ話しながら振り返りました。 リスナーからも「ソレ、私に教えてください!」というテーマで1年の感想や思い出などを送ってもらいましたが、印象的な回がわりと被っていて、みんな同じような気持ちだったのだなとうれしい気持ちになりました。 スタートして4回のうち2回が可児正さんと高木払いさんだったという“都トムコンプリート早すぎ事件”にもきちんと指摘のメールが来ました。 また、過去回の中で複雑だったお話からクイズが出るという、習熟度テストのようなメールもいただいて楽しかったです。みなさんは答えがわかるでしょうか。 この回では、私もこの1年での出来事をランキング形式で紹介しました。いつもはゲストさんにベスト3を作ってもらってきましたが、今度はそれを振り返りベスト3にするという、ベスト3のウロボロス。マトリョーシカ。果たしてこのたとえは正しいのでしょうか。 印象がガラリと変わったり、まったく興味のなかったところから興味が湧いたりしたものを紹介する「1時間で大きく心が動いた回ベスト3」、情報番組や教育番組として成立してしまうとすら思った「シンプルに!情報として役立つ回ベスト3」、本当に独特だと思った方をまとめた「アクの強かったゲストベスト3」、意表を突かれた「ソコ!?と思ったランキングタイトルベスト3」の4テーマを用意しました。 各ランキングを見た上で、ぜひ過去回を観直していただきたいです。我ながらいいランキングを作れたと思っています。 ハプニングと感動に包まれた『公私混同』最終回 (写真:奥森皐月の公私混同最終回!奥森皐月一問一答!) 9月最後は生配信で最終回をお届けしました。 2年半続いた『奥森皐月の公私混同』ですが、通常回の生配信は2回目。視聴者のみなさんと同じ時間を共有することができて本当に楽しかったです。 最終回だというのに、冒頭から「マイクの電源が入っていない」「配信のURLを告知できていなくて誰も観られていない」という恐ろしいハプニングが続いてすごかったです。こういうのを「持っている」というのでしょうか。 リアルタイムでX(旧Twitter)のリアクションを確認し、届いたメールをチェックしながら読み、進行をし、フリートークをして、ムチャ振りにも応える。 ハイパーマルチタスクパーソナリティとしての本領を発揮いたしました。かなりすごいことをしている。こういうことを自分で言っていきます。 最近メールが送られてきていなかった方から久々に届いたのもうれしかった。きちんと覚えてくれていてありがとうという気持ちでした。 事前にいただいたメールも、どれもうれしくて幸せを噛みしめました。みなさんそれぞれにこの番組の思い出や記憶があることを誇らしく思います。 配信内でも話しましたが、この番組をきっかけにお友達がたくさん増えました。番組開始時点では友達がいなすぎてひとりで行動している話をよくしていたのですが、今では友達が多い部類に入ってもいいくらいには人に恵まれている。 『公私混同』でお会いしたのをきっかけに仲よくなった方も、ひとりふたりではなく何人もいて、それだけでもこの番組があってよかったと思えるくらいです。 番組後半でのビデオレターもうれしかったです。豪華なみなさんにお越しいただいていたことを再確認できました。帰ってからもう一度ゆっくり見直しました。ありがたい限り。 この2年半は本当に楽しい日々でした。会いたい人にたくさん会えて、挑戦したいことにはすべて挑戦して、普通じゃあり得ない体験を何度もして、幅広いジャンルを学んで。 単独ライブも大喜利も地上波の冠ラジオもテレ朝のイベントも『公私混同』をきっかけにできました。それ以外にも挙げたらキリがないくらいには特別な経験ができました。 スタートしたときは16歳だったのがなんだか笑える。お世辞でも比喩でもなくきちんと成長したと思えています。テレビ朝日さん、logirlさん、スタッフのみなさんに本当に感謝です。 そしてなにより、リスナーの皆様には毎週助けていただきました。ラジオ形式での配信のころはもちろんのこと、ゲスト形式になってからも毎週大喜利コーナーでたくさん投稿をいただき、みなさんとのつながりを感じられていました。 メールを読んで涙が出るくらい笑ったことも何度もあります。毎回新鮮にうれしかったし、みなさんのことが大好きになりました。 #奥森皐月の公私混同 最終回でした。2021年3月から約2年半の間、応援してくださった皆様本当にありがとうございます。メールや投稿もたくさん嬉しかったです。また必ずどこかの場所で会いましょうね、大喜利の準備だけ頼みます。冠ラジオは絶対にやりますし、馬鹿デカくなるので見ていてください。 pic.twitter.com/8Z5F60tuMK — 奥森皐月 (@okumoris) September 28, 2023 『奥森皐月の公私混同』が終了してしまうことは本当に残念です。もっと続けたかったですし、もっともっと楽しいことができたような気もしています。でも、そんなことを言っても仕方がないので、素直にありがとうございましたと言います。 奥森皐月自体は今後も加速し続けながら進んで行く予定です。いや進みます。必ず約束します。毎日「今日売れるぞ」と思って生活しています。 それから、死ぬまで今の好きな仕事をしようと思っています。人生初の冠番組は幕を下ろしましたが、また必ずどこかで楽しい番組をするので、そのときはまた一緒に遊んでください。 私は全員のことを忘れないので覚悟していてください。脅迫めいた終わり方であと味が悪いですね。最終回も泣いたフリをするという絶妙に気味の悪い終わり方だったので、それも私らしいのかなと思います。 この連載もかれこれ2年半がんばりました。1カ月ごとに振り返ることで記憶が定着して、まるで学習内容を復習しているようで楽しかったです。 思い出すことと書くことが大好きなので、この場所がなくなってしまうのもとても寂しい。今後はそのへんの紙の切れ端に、思い出したことを殴り書きしていこうと思います。違う連載ができるのが一番理想ですけれども。 貴重な時間を割いてここまで読んでくださったあなた、ありがとうございます。また会えることをお約束しますね。また。
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W杯で話題のラグビーを学ぼう!破壊力抜群なベスト3|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第29回
季節の和菓子が食べたくなります、大人です。奥森皐月です。 私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が毎週木曜日18時にlogirlで公開されています。 このブログでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いています。 今回は『奥森皐月の公私混同〜ソレ、私に教えてください!〜』の8月に配信された第36回から第40回までの振り返りです。 月額990円ですが、logirlに加入すれば最新回までのエピソードがたくさん視聴できます。『奥森皐月の公私混同』以外のさまざまな番組も、もちろん観られます。 「おすすめの海外旅行先」に意外な国が登場! (写真:奥森皐月の公私混同 第36回「旅行、私に教えてください!」) 第36回のテーマは「旅行、教えてください!」。ゲストに、元JTB芸人・こじま観光さんにお越しいただきました。 仕事で地方へ行くことはたまにありますが、それ以外で旅行に行くことはめったにありません。興味がないわけではないけれど、旅行ってすぐにできないし、習慣というか行き慣れていないとなかなか気軽にできないですよね。 それに加え、私は海外にも行ったことがないので、海外旅行は自分にとってかなり遠い出来事。そのため、どういったお話が聞けるのか楽しみでした。 こじま観光さんはもともとJTBの社員として働かれていたという、「旅行好き」では済まないほど旅行・観光に詳しいお方。パッケージツアーの中身を考えるお仕事などをされていたそうです。 食事、宿泊、観光名所、などすべてがそろって初めて旅行か、と当たり前のことに気づかされました。 旅行が好きになったきっかけのお話が印象的でした。小学生のころ、お父様に「飛行機に乗ったことないよな」と言われて、ふたりでハワイに行ったとのこと。 そこから始まって、海外への興味などが湧いたとのことで、子供のころの経験が今につながっているのは素敵だと感じました。 ベスト3のコーナーでは「奥森さんに今行ってほしい国ベスト3」をご紹介いただきました。海外旅行と聞いて思いつく国はいくつかありましたが、第3位でいきなりアイルランドが出てきて驚きました。 国名としては知っているけれど、どんな国なのかは想像できないような、あまり知らない国が登場するランキングで、各地を巡られているからこそのベスト3だとよく伝わりました。 1位の国もかなり意外な場所でした。「奥森さんに」というタイトルですが、皆さんも参考になると思うので、ぜひチェックしていただきたいです。 11種類もの「釣り方」をレクチャー! (写真:奥森皐月の公私混同 第37回「釣り、私に教えてください!」) 第37回は、ゲストに釣り大好き芸人・ハッピーマックスみしまさんにお越しいただき「釣り、教えてください!」のテーマでお送りしました。 以前「魚、教えてください!」のテーマで一度配信があり、その際に少し釣りについてのパートもありましたが、今回は1時間まるまる釣りについて。 魚回のとき釣りに少し興味が湧いたのですが、やはり始め方や初心者は何からすればいいかがわからないので、そういった点も詳しく聞きたく思い、お招きしました。 大まかに海釣りや川釣りなどに分かれることはさすがにわかるのですが、釣り方には細かくさまざまな種類があることをまず教えていただきました。11種類くらいあるとのことで、知らないものもたくさんありました。釣りって幅広いですね。 みしまさんは特にルアー釣りが好きということで、スタジオに実際にルアーをお持ちいただきました。見たことないくらい大きなものもあるし、カラフルでかわいらしいものもあるし、それぞれのルアーにエピソードがあってよかったです。 また、みしまさんがご自身で○と×のボタンを持ってきてくださって、定期的にクイズを出してくれたのもおもしろかった。全体的な空気感が明るかったです。 「思い出の釣り」のベスト3は、それぞれずっしりとしたエピソードがあり、いいランキングでした。それぞれ写真も見ながら当時の状況を教えてくださったので、釣りを知らない私でも楽しむことができました。 まずは初心者におすすめだという「管理釣り場」から挑戦したいです。 鉄道好きが知る「秘境駅」は唯一無二の景色! (写真:奥森皐月の公私混同 第38回「鉄道、私に教えてください!」) 第38回のテーマは「鉄道、教えてください!」。ゲストに鉄道芸人・レッスン祐輝さんをお招きしました。 鉄道自体に興味がないわけではなく、詳しくはありませんが、好きです。移動手段で電車を使っているのはもちろん、普段乗らない電車に乗って知らない土地に行くのも楽しいと思います。 ただ、鉄道好きが多く規模が大きいことで、楽しみ方が無限にありそう。そのため、あまりのめり込んで鉄道ファンになる機会はありませんでした。 この回のゲストのレッスン祐輝さん、いい意味でめちゃくちゃに「鉄道オタク」でした。あふれ出る情報量と熱量が凄まじかった。 全国各地の鉄道を巡っているとのことで、1日に1本しか走っていない列車や、秘境を走る鉄道にも足を運んでいるそうです。 「秘境駅」というものに魅了されたとのことでしたが、たしかに写真を見ると唯一無二の景色で美しかったです。山奥で、車ですら行けない場所などもあるようで、死ぬまでに一度は行ってみたいなと思いました。 ベスト3では「癖が強すぎる終電」について紹介していただきました。レッスン祐輝さんは鉄道好きの中でも珍しい「終電鉄」らしく、これまでに見た変わった終電のお話が続々と。 終電に乗るせいで家に帰れないこともあるとおっしゃっていて、終電なんて帰るためのものだと思っていたので、なんだかおもしろかったです。 あのインドカレーは「混ぜて食べてもOK」!? (写真:奥森皐月の公私混同 第39回「カレー、私に教えてください!」) 第39回は、ゲストにカレー芸人・桑原和也さんにお越しいただき「カレー、教えてください!」をお送りしました。 私もカレーは大好き。インドカレーのお店によく行きます、ナンが食べたい日がかなりある。 「カレー」とひと言でいえど、さまざまな種類がありますよね。日本風のカレーライスから、ナンで食べるカレー、タイカレーなど。 近年流行っている「スパイスカレー」も名前としては知っていましたが、それがなんなのか聞くことができてよかったです。関西が発祥というのは初めて知りました。 カレー屋さんは東京が栄えているのだと思っていたのですが、関西のほうが名店がたくさんあるとのことで、次に関西に行ったら必ずカレーを食べようと心に決めました。 インドカレーにも種類があるらしく、たまにカレー屋さんで見かける、銀のプレートに小さい銀のボウルで複数種類のカレーが乗っていてお米が真ん中にあるようなスタイルは、南インドの「ミールス」と呼ばれるものだそうです。 今まで、ミールスは食べる順番や配分が難しい印象だったのですが、桑原さんから「混ぜて食べてもいい」というお話を聞き、衝撃を受けました。銀のプレートにひっくり返して、ひとつにしてしまっていいらしいです。 違うカレーの味が混ざることで新たな味わいが生まれ、辛さがマイルドになったり、別のおいしさが感じられるようになったりするとのこと。次にミールスに出会ったら絶対に混ぜます。 ランキングは「オススメのレトルトカレー」という実用的な情報でした。 レトルトカレーで冒険できないのは私だけでしょうか。最近はレトルトでも本当においしくていろいろな種類が発売されているようで、3つとも初めてお目にかかるものでした。 自宅で簡単に食べられるおいしいカレー、皆さんもぜひ参考にしてみてください。 9月のW杯に向けて「ラグビー」を学ぼう! (写真:奥森皐月の公私混同 第40回「ラグビー、私に教えてください!」) 8月最後の配信のテーマは「ラグビー、教えてください!」で、ゲストにラグビー二郎さんにお越しいただきました。 9月にラグビーワールドカップがあるので、それに向けて学ぼうという回。 私はもともとスポーツにまったく興味がなく、現地観戦はおろかテレビでもほとんどのスポーツを観たことがありませんでした。それが、この『公私混同』をきっかけにサッカーW杯を観て、WBCを観て、相撲を観て、と大成長を遂げました。 この調子でラグビーもわかるようになりたい。ラグビー二郎さんはラグビー経験者ということで、プレイヤー視点でのお話もあっておもしろかったです。 ルールが難しい印象ですが、あまり理解しないで観始めても大丈夫とのこと。まずはその迫力を感じるだけでも楽しめるそうです。直感的に楽しむのって大事ですよね。 前回、前々回のラグビーW杯もかなり盛り上がっていたので、要素としての情報は少しだけ知っていました。 その中で「ハカ」は、言葉としてはわかるけれど具体的になんなのかよくわからなかったので、詳しく教えていただけてうれしかったです。実演もしていただいてありがたい。 ここからのランキングが非常によかった。「ハカをやってるときの対戦相手の対応」というマニアックなベスト3でした。 ハカの最中に対戦相手が挑発的な対応をすることもあるらしく、過去に本当にあった名場面的な対応を3つご紹介いただきました。 どれも破壊力抜群のおもしろさで、ランキングタイトルを聞いたときのわくわく感をさらに上回る数々。本編でご確認いただきたい。 今年のワールドカップを観るのはもちろん、ハカのときの対戦相手の対応という細かいところまできちんと見届けたいと強く感じました。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 奥森皐月の公私混同ではメールを募集しています。 募集内容はX(Twitter)に定期的に掲載しているので、テーマや大喜利のお題などそちらからご確認ください。 宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp です、たくさんのメールをお待ちしております。 logirl公式サイト内「ラジオ」のページでは毎週アフタートークが公開されています。 最近のことを話したり、あれこれ考えたりしています。無料でお聴きいただけるのでぜひ。 (写真:『奥森皐月の公私混同 アフタートーク』) 『奥森皐月の公私混同』番組公式X(Twitter)アカウントがあります。 最新情報やメール募集についてすべてお知らせしていますので、チェックしていただけるとうれしいです。 また、番組やこの収録後記の感想などは「#奥森皐月の公私混同」をつけて投稿してください。 メール募集! 今週は!1年間の振り返り放送です!!! コーナーリスナー的ベスト3 奥森さんへの質問、感想メール募集します! ▼奥森!コレ知ってんのか!ニュース▼リアクションメール▼感想メール 📩宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp メールの〆切は9/19(火)10時です! pic.twitter.com/nazDBoFSDk — 奥森皐月の公私混同は傍若無人 (@s_okumori) September 18, 2023 奥森皐月個人のX(Twitter)アカウントもあります。 番組アカウントとともにぜひフォローしてください。たまにおもしろいことも投稿しています。 キングオブコントのインタビュー動画 男性ブランコのサムネイルも漢字二文字だ、もはや漢字二文字待ちみたいになってきている、各芸人さんの漢字二文字考えたいな、そんなこと一緒にしてくれる人いないから1人で考えます、1人で色々な二文字を考えようと思います https://t.co/dfCQQVlhrg pic.twitter.com/LMpwxWhgUF — 奥森皐月 (@okumoris) September 19, 2023 『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開。 次回は、なんと収録後記の最終回です。 番組開始当初から毎月欠かさず書いてきましたが、9月末で番組が終了ということで、こちらもおしまい。とても寂しいですが、最後まで読んでいただけるとうれしいです。
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宮下草薙・宮下と再会!ボードゲームの驚くべき進化|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第28回
ドライブがしたいなと思ったら車を借りてドライブをします、大人です。奥森皐月です。 私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が毎週木曜日18時にlogirlで公開されています。 このブログでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いています。 今回は『奥森皐月の公私混同〜ソレ、私に教えてください!〜』の7月に配信された第32回から第35回までの振り返りです。 月額990円ですが、logirlに加入すれば最新回までのエピソードがたくさん視聴できます。『奥森皐月の公私混同』以外のさまざまな番組ももちろん観られます。 かれこれ2年半もこの番組を続けています。もっとがんばってるねとか言ってほしいです。 宮下草薙・宮下が「ボードゲームの驚くべき進化」をプレゼン (写真:奥森皐月の公私混同 第32回「ボードゲーム、私に教えてください!」) 第32回のテーマは「ボードゲーム、教えてください!」。ゲストに、宮下草薙の宮下さんにお越しいただきました。 昨年のテレビ朝日の夏イベント『サマステ』ではこの番組のステージがあり、ゲストに宮下草薙さんをお招きしました。それ以来、約1年ぶりにお会いできてうれしかったです。 宮下さんといえばおもちゃ好きとして知られていますが、今回はその中でも特に宮下さんが詳しい「ボードゲーム」に特化してお話を伺いました。 巷では「ボードゲームカフェ」なるものが流行っているようですが、私はほとんどプレイしたことがありません。『人生ゲーム』すら、ちゃんとやったことがあるか記憶が曖昧。ひとりっ子だったからかしら。 そんななか、ボードゲームは驚くべき進化を遂げていることを、宮下さんが魅力たっぷりに教えてくださいました。 大人数でプレイするものが多いと勝手に思っていましたが、ひとりでできるゲームもたくさんあるそう。ひとりでボードゲームをするのは果たして楽しいのだろうかと思ってしまいましたが、実際にあるゲームの話を聞くとおもしろそうでした。購入してみたくなってしまいます。 ボードゲームのよさのひとつが、パーツや付属品などがかわいいということ。デジタルのゲームでは感じられない、手元にあるというよさは大きな魅力だと思います。見た目のかわいさから選んで始めるのも楽しそうです。 ランキングでは「もはや自分のマルチバース」ベスト3をご紹介いただきました。宮下さんが実際にプレイした中でも没入感が強くのめり込んだゲームたちは、どれも最高におもしろそうでした。 「重量級」と呼ばれる、プレイ時間が長くルールが複雑で難しいものも、現物をお持ちいただきましたが、あまりにもパーツが多すぎて驚きました。 それらをすべて理解しながら進めるのは大変だと感じますが、ゲームマスターがいればどうにかできるようです。かっこいい響き。ゲームマスター。 まずはボードゲームカフェで誰かに教わりながら始めたいと思います。本当に興味深いです、ボードゲームの世界は広い。 お城を歩くときは、自分が死ぬ回数を数える (写真:奥森皐月の公私混同 第33回「城、私に教えてください!」) 第33回は、ゲストに城マニア・観光ライターのいなもとかおりさんお越しいただき、「城、教えてください!」のテーマでお送りしました。 建物は好きなのですが歴史にあまり詳しくないため、お城についてはよくわかりません。お城好きの人は多い印象だったのですが、知識が必要そうで自分には難しいのではないかというイメージを抱いていました。 ただ、いなもとさんのお城のお話は、本当におもしろくてわかりやすかった。随所に愛があふれているけれど、初心者の私でも理解できるように丁寧に教えてくださる。熱量と冷静さのバランスが絶妙で、あっという間の1時間でした。 「城」と聞くと、名古屋城や姫路城などのいわゆる「天守」の部分を想像してしまいます。ただ、城という言葉自体の意味では、天守のまわりの壁や堀などもすべて含まれるとのこと。 土が盛られているだけでも城とされる場所もあって、そういった城跡などもすべて含めると、日本に城は4万から5万箇所あるそうです。想像していた数の100倍くらいで本当に驚きました。 いなもとさん流のお城の楽しみ方「攻め込むつもりで歩いたときに何回自分がやられてしまうか数える」というお話がとても印象的です。いかに敵に対抗できているお城かというのを実感するために、天守まで歩きながら死んでしまう回数を数えるそう。おもしろいです。 歴史の知識がなくてもこれならすぐに試せる。次にお城に行くことがあれば、私も絶対に攻める気持ち、そして敵に攻撃されるイメージをしながら歩こうと思います。 コーナーでは「昔の人が残した愛おしいらくがきベスト3」を紹介していただきました。 お城の中でも石垣が好きだといういなもとさん。石垣自体に印がつけられているというのは今回初めて知りました。 それ以外にも、お城には昔の人が残したらくがきがいくつもあって、どれもかわいらしくおもしろかったです。それぞれのお城で、そのらくがきが実際に展示されているとのことで、実物も見てみたいと思いました。 プラスチックを分解できる!? きのこの無限の可能性 (写真:奥森皐月の公私混同 第34回「きのこ、私に教えてください!」) 第34回のテーマは「きのこ、教えてください!」。ゲストに、きのこ大好き芸人・坂井きのこさんをお招きしました。 きのこって身近なのに意外と知らない。安いからスーパーでよく買うし、そこそこ食べているはずなのに、実態についてはまったく理解できていませんでした。「きのこってなんだろう」と考える機会がなかった。 坂井さんは筋金入りのきのこ好きで、幼少期から今までずっときのこに魅了されていることがお話を聞いてわかりました。 山や森などできのこを見つけると、少しうれしい気持ちになりますよね。きのこ狩りをずっとしていると珍しいきのこにもたくさん出会えるようで、単純に宝探しみたいで楽しそうだなぁと思いました。 菌類で、毒があるものもあって、鑑賞してもおもしろくて、食べることもできる。ほかに似たものがない不思議な存在だなぁと改めて思いました。 野菜だったら「葉の部分を食べている」とか「実を食べている」とかわかりやすいですけれど、きのこってじゃあなんだといわれると説明ができない。 基本の基本からきのこについてお聞きできてよかったです。菌類には分解する力があって、きのこがいるから生態系は保たれている。命が尽きたら森に葬られてきのこに分解されたい……とおっしゃっていたときはさすがに変な声が出てしまいました。これも愛のかたちですね。 ランキングコーナーの後半では、きのこのすごさが次々とわかってテンションが上がりました。 特に「プラスチックを分解できるきのこがある」という話は衝撃的。研究がまだまだ進められていないだけで、きのこには無限の可能性が秘められているのだとわかってワクワクしちゃった。 この収録を境に、きのこを少し気にしながら生きるようになった。皆さんもこの配信を観ればきのこに対する心持ちが少し変わると思います。教育番組らしさもあるいい回でした。 「神オブ神」な花火を見てみたい! (写真:奥森皐月の公私混同 第35回「花火、私に教えてください!」) 7月最後の配信のテーマは「花火、教えてください!」で、ゲストに花火マニアの安斎幸裕さんにお越しいただきました。 コロナ禍も落ち着き、今年は本格的にあちこちで花火大会が開催されていますね。8月前半の土日は全国的にも花火大会がたくさん開催される時期とのことで、その少し前の最高のタイミングでお越しいただきました。 花火大会にはそれぞれ開催される背景があり、それらを知ってから花火を見るとより楽しめるというお話が素敵でした。かの有名な長岡の花火大会も、古くからの歴史と想いがあるとのことで、見え方が変わるなぁと感じます。 それから、花火玉ひとつ作るのに相当な時間と労力がかけられていることを知って驚きました。中には数カ月かかって作られるものもあるとのことで、それが一瞬で何十発も打ち上げられるのは本当に儚いと思いました。 このお話を聞いて今年花火大会に行きましたが、一発一発にその手間を感じて、これまでと比べ物にならないくらいに感動しました。派手でない小さめの花火も愛おしく思えた。 安斎さんの花火職人さんに対するリスペクトの気持ちがひしひしと伝わってきて、とてもよかったです。 最初は、本当に尊敬しているのだなぁという印象だったのですが、だんだんその思いがあふれすぎて、推しを語る女子高校生のような口調になられていたのがおもしろかったです。見た目のイメージとのギャップもあって素敵でした。 最終的に、あまりにすごい花火のことを「神オブ神」と言ったり、花火を「神が作った子」と言ったりしていて、笑ってしまいました。 この週の「大喜利公私混同カップ2」のお題が「進化しすぎた最新花火の特徴を教えてください」だったのですが、大喜利の回答に近い花火がいくつも存在していることを教えてくださっておもしろかったです。 大喜利が大喜利にならないくらいに、花火が進化していることがわかりました。このコーナーの大喜利と現実が交錯する瞬間がすごく好き。 真夏以外にも花火大会はあり、さまざまな花火アーティストによってまったく違う花火が作られていることをこの収録で知りました。きちんと事前にいい席を取って、全力で花火を楽しんでみたいです。 成田の花火大会がどうやらかなりすごいので行ってみようと思います。「神オブ神」って私も言いたい。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 『奥森皐月の公私混同』ではメールを募集しています。 募集内容はTwitterに定期的に掲載しているので、テーマや大喜利のお題などそちらからご確認ください。 宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp です、たくさんのメールをお待ちしております。 logirl公式サイト内「ラジオ」のページでは、毎週アフタートークが公開されています。 ゆったり作家のみなさんとおしゃべりしています。無料でお聴きいただけるのでぜひ。 (写真:『奥森皐月の公私混同 アフタートーク』) 『奥森皐月の公私混同』番組公式Twitterアカウントがあります。 最新情報やメール募集についてすべてお知らせしていますので、チェックしていただけるとうれしいです。 また、番組やこの収録後記の感想などは「#奥森皐月の公私混同」をつけて投稿してください。 メール募集! テーマは【カレー🍛】【ラグビー🏉】です! ▼奥森!コレ知ってんのか!ニュース▼ゲストへの質問▼大喜利公私混同カップ2▼リアクションメール▼感想メール 📩宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp メールの〆切は8/22(火)10時です! pic.twitter.com/xJrDL41Wc9 — 奥森皐月の公私混同は傍若無人 (@s_okumori) August 20, 2023 奥森皐月個人のTwitterアカウントもあります。 番組アカウントとともにぜひフォローしてください。たまにおもしろいことも投稿しています。 大喜る人たち生配信を真剣に見ている奥森皐月。お前は中途半端だからサッカー選手にはなれないと残酷な言葉で説く父親、聞く耳を持たない小2くらいの息子、黙っている妹と母親の4人家族。啜り泣くギャル。この3組がお客さんのカレー屋さんがさっきまであった。出てしまったので今はもうない。 — 奥森皐月 (@okumoris) August 20, 2023 『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開。 次回は「未体験のジャンルからやってくる強者たち」を中心にお送りします。お楽しみに。
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予想の斜め上の上!? 衝撃的なベスト3が登場|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第27回
カードを複数枚所持しています、大人です。奥森皐月です。 私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が毎週木曜日18時にlogirlで公開されています。 このブログでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いています。 今回は『奥森皐月の公私混同〜ソレ、私に教えてください!〜』の5月に配信された第27回から第31回までの振り返りです。 月額990円ですが、logirlに加入すれば最新回までのエピソードがたくさん視聴できます。もちろん『奥森皐月の公私混同』以外のさまざまな番組も観られます。 アートとお笑いは紙一重!? (写真:奥森皐月の公私混同 第27回「アート、私に教えてください!」) 第27回のテーマは「アート、教えてください!」。ゲストはアートテラーのとに~さんにお越しいただきました。 もともとお笑い芸人の仕事をしていたところから、アートに携わる仕事をするようになったとのことですが、アートにもおもしろさや笑いを見出したというお話が印象的です。 「おもしろい」の意味は広いので、アートにもアートのおもしろみがあるとは思っていましたが、とに~さんは純粋な“笑い”という意味でも芸術を受け取っていることがわかりました。 その特性を活かした活動や説明は、アートに普段触れ合わない人こそ出会うべきだと感じます。堅苦しいイメージを壊すような、楽しいお話ばかりでした。 私はよく美術館や展示会にアートを観に行くのですが、やはり自分なりの楽しみ方を見つけるというのは意識している部分だったので、改めてお話しして気づくことがあって楽しかったです。 ベスト3のコーナーでは「え? これがアートなの!? お笑いと紙一重のアート?ベスト3」をご紹介いただきました。 インパクトのある未知の作品ばかりでとてもおもしろかったです。作品を観ているだけではなくて、その話を聞いているだけで楽しめてしまうのは本当にすごい。 「アート」という広いテーマの回ではありましたが、それがきっかけとなってさまざまなエピソードを伺えてよかったです。 とに~さんの著書をもとにした展示『名画たちのホンネ展』にも行ってきましたよ。作品自体から吹き出しが出ている斬新な展示の形式と、楽しみながら読める説明文で、とてもハッピーな空間でした。 次のステージは、作品を購入すること。もっともっと身近にアートを楽しみたいです。 フリースタイルラップ回、衝撃的な「ベスト3」 (写真:奥森皐月の公私混同 第28回「フリースタイルラップ、私に教えてください!」) 第28回は、オッパショ石の広田ハヤトさんにお越しいただき「フリースタイルラップ、教えてください!」のテーマでお送りしました。 収録後の打ち合わせで、たまにスタッフさんに「この分野に詳しい人に来てほしいです」といった話をするのですが、フリースタイルラップはまさに私がお願いしたテーマ。 芸人界でも随一のラップ好き、そしてラッパーである広田さんにお話を聞くことができてよかったです。 コンビでネタ合わせをするつもりがラップをしてしまう、大事な舞台の前にありのままの気持ちをラップにしてぶつけ合うなど、聞いたことがないエピソードが続々飛び出してとてもよかったです。 バトルの大会で怖い人に呼び出された話も最高でした、ヒップホップっていいですね。 さて、この回のランキングは予想の斜め上の上を行く斬新なものでした。毎回、私は収録のときに初めてなんのランキングなのかを知ります。 ラップバトルの名場面や、注目のラッパーなど、何が来るかやんわり想像していたときに突如走った衝撃。その名も「そんなに詳しくなくてもラップ好きそうに聞こえる受け答えベスト3」です。 これまで数多くのベスト3を紹介いただきましたが、ここまで外側のランキングは初めて。「好きなヒップホップの楽曲は何か」と質問されたときをはじめとした、ラップ好きに聞こえるフレーズを教えてもらいました。 受け答えの流れも細かく再現してくださって、実演のパートもあります。広田さんに稽古をつけていただいたので、すっかりラップ好きっぽい振る舞いができるようになりました。 ある意味、これまでで最も実用的なランキングかもしれません。おもしろかった。 日本茶トークで1時間!“お茶愛”の飛躍がすごい (写真:奥森皐月の公私混同 第29回「お茶、私に教えてください!」) 第29回のテーマは「お茶、教えてください!」。ゲストに茂木雅世さんをお招きしました。 お茶というと、緑茶・紅茶・麦茶・ウーロン茶・ジャスミン茶などたくさん思い浮かぶかと思いますが、この回は日本茶の話オンリーで1時間です。 てっきり世界のお茶のお話も出てくるかと思っていたのですが、日本茶と茂木さんの人生のつながりが本当に素敵で、あっという間の時間でした。 飲む楽しさの話だけでなく、お茶を振る舞うこともよさであるというお話を聞けたのがよかったです。確かにお茶を囲む時間って素敵。私も自宅で家族と紅茶を飲みながらおやつを食べる時間が好きだったなぁと思い出しました。 忙しいとなかなかゆっくりお茶を飲む時間を取れませんが、忙しいときこそお茶を飲んでひと息つくべきなのかもしれませんね。 茂木さんの“お茶愛”の飛躍が凄まじくて、思わず笑ってしまいました。 知らない人にお茶を振る舞うのはまだわかるのですが、お茶が好きすぎてお茶のラップがしたいと話されたときにはさすがについていけなくなりました。さまざまな角度から好きなものにアプローチできるのは素敵ですね。 この回もまた衝撃的なベスト3でした。「飲まないお茶ベスト3」の文字を見たときは頭に入ってこなかったのですが、本当に飲まないお茶のランキングを紹介されていました。 お茶のグッズやお茶にまつわるキャラクターなど、飲むにとどまらないお茶の魅力。振り落とされないように聞いていましたが、どれもおもしろかったです。 お茶のことだけを話すラジオを10年も続けていると聞いて、仰天しました。お茶縛りで10年できるなら、何も縛りがないこちらは是が非でもネタを切らさず続けたいものです。 「絶対に次の国技館に行く」と決意した相撲回 (写真:奥森皐月の公私混同 第20回「相撲、私に教えてください!」) 第30回は「相撲、教えてください!」ということで、山根千佳さんにお越しいただきました。 相撲に関しては一切知識がなく、そもそもどういう仕組みで進んでいるのかすらわかっていませんでした。「〇〇場所」とかは聞き覚えがありますが、それが全国各地でやっているのか、どれくらいの頻度で開かれているのか、本当に何も知らない。 そんな超相撲初心者の私が、番組終盤には「絶対に両国国技館に行こう」と思えるようになるほど、山根さんのご説明がわかりやすく素晴らしかったです。 丸一日ずっと取組が行われていて、昼間は新人、時間が遅くなるにつれて強い力士になると初めて知りました。勝ち上がるシステムなどがお笑いライブに似ていてわかりやすいなと思いましたが、よく考えるとお笑いライブが番付を参考にしているだけだ。 ランキングでは「まわしを切るのがうまい力士ベスト3」という渋いテーマでご紹介いただきました。ここでもいい情報をたくさん聞くことができた。 特に、今大注目の19歳の力士である伯桜鵬のお話が印象深いです。それぞれ特性があることはわかりますが、どこを取っても山根さんの解説がすごい。気がつけば、私も自分の目で取組を観たいと思いましたし、お気に入りの人を見つけて応援したいと思いました。 出待ちをしてサインをもらいに行くとのことですから、本当の本当に真の相撲ファンですよね。私も絶対に次の9月の国技館に行きます。 御朱印の次は、書店を巡る「御書印」!? (写真:奥森皐月の公私混同 第31回「御書印、私に教えてください!」) 6月最後の配信のテーマは「御書印、私に教えてください!」で、和賀勇介さんにお越しいただきました。有吉(弘行)さんのラジオのリスナーなので、和賀さんとお会いできてうれしかったです。 御朱印ではなく「御書印」という聞きなじみのないものですが、そもそも御書印自体が近年始まったサービスとのこと。本屋さんに行くことで集める、書店版の御朱印のようなものらしいです。 和賀さんは本も好きだけれどそれ以上に本屋さんに行くことが好きだから、行く理由ができて楽しいとおっしゃっていました。 私も本屋さんという空間は好きですし、興味のある本があれば迷わず買ってしまうのですが、遅読どころではないくらい読書が進まないタイプ。私も書店に行く理由にするため、ぜひやってみたいと思いました。 御書印もそれぞれのお店ごとに特色があり、本のセリフや心に残る言葉を添えてくれるとのこと。中には行くたびに違うことを書いてくれるお店もあるそうです。全国に広がっているそうなので、知らない土地の書店に行くのも楽しそう。 話を聞けば聞くほど、和賀さんがアナログ好きだとわかっていきました。本は紙がいいし、ネットショッピングはしないし、実際に足を運ぶことが醍醐味だと思っている。 私も年齢のわりにはアナログが好きなつもりでしたが、和賀さんのお話を聞いていると、今の70代くらいの感覚だったのでおもしろかったです。おじいさんみたい。その性格も含めて、御書印という趣味にハマっているのだろうなと思いました。 まだ御書印集めを始めている人も少ないとのことなので、私も先取りできるようにすぐ始めるつもりです。まずは都内から巡ってみます。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 奥森皐月の公私混同ではメールを募集しています。 募集内容はTwitterに定期的に掲載しているので、テーマや大喜利のお題などそちらからご確認ください。 宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp です、たくさんのメールをお待ちしております。 logirl公式サイト内「ラジオ」のページでは毎週アフタートークが公開されています。 ゆったり作家のみなさんとおしゃべりしています。無料でお聴きいただけるのでぜひ。 (写真:『奥森皐月の公私混同 アフタートーク』) 『奥森皐月の公私混同』番組公式Twitterアカウントがあります。 最新情報やメール募集についてすべてお知らせしていますので、チェックしていただけるとうれしいです。 また、番組やこの収録後記の感想などは「#奥森皐月の公私混同」をつけて投稿してください。 メール募集!テーマは【城🏯】【きのこ🍄】です!▼奥森!コレ知ってんのか!ニュース▼ゲストへの質問▼大喜利公私混同カップ2▼リアクションメール▼感想メール 📩宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp メールの〆切は7/11(火)10時です! pic.twitter.com/nsUGQArlQB — 奥森皐月の公私混同は傍若無人 (@s_okumori) July 9, 2023 奥森皐月個人のTwitterアカウントもあります。 番組アカウントとともにぜひフォローしてください。たまにおもしろいことも投稿しています。 たまごっち買いたかったけど自分の飼育で手一杯だしやめておいてる — 奥森皐月 (@okumoris) July 19, 2023 『奥森皐月の公私混同』は、logirlにて毎週木曜18時に最新回が公開。 次回は「最先端のボードゲームに驚愕」を中心にお送りします。お楽しみに。
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クイズ番組で活躍したい!奥森皐月を奮い立たせた新境地|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第26回
映画も美術館も一般料金で行くようになりました、大人です。奥森皐月です。 私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が毎週木曜日18時にlogirlで公開されています。 このブログでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いています。 今回は『奥森皐月の公私混同〜ソレ、私に教えてください!〜』の、5月に配信された第24回から第26回までの振り返りです。 月額990円ですが、logirlに加入すれば最新回までのエピソードがたくさん視聴できます。もちろん『奥森皐月の公私混同』以外のさまざまな番組も観られます。 「立ちそば」への熱情と愛とリスペクトを実感! (写真:奥森皐月の公私混同 第24回「立ちそば、私に教えてください!」) 第24回のテーマは「立ちそば、教えてください」ということで、ゲストに『立ちそばガール!』(講談社)著者のイトウエルマさんをお招きしました。 人生で一度も立ちそばに行ったことのない私には未知の世界だったので、興味深いお話の連続。なによりイトウさんがこれまでに出会った誰よりも熱量の高い方だったので、おもしろい回になりました。 立ちそばというと、時短でサクッと食事ができる簡素な飲食店の印象でした。客層も、時間のないビジネスマンが多いイメージ。自分には縁遠い場所だと捉えていました。 イトウさんはもともとそばがお好きで、自分でそば打ちをするほどだったそうですが、そんなそば好きな方が「立ちそばのおいしさに感動した」というのは意外でした。 お店によってこだわりがあったり、特色のあるメニューがあったり、ひと口に立ちそばと言えど、さまざまな種類があるそう。 イトウさんが描かれている「立ちそば日記」があまりに凄まじくて感動してしまいました。それぞれのお店のそばを忠実にイラストで再現されていて、見るだけでそばが食べたくなります。 つゆの透明感やトッピング、そばや食器の細部まで細かく描かれていて本当に素敵です。そばへの熱情と愛とリスペクトがひと目で伝わってきます。 また、イラストのまわりには小さな字でびっしりと情報と感想が書かれていて、たった1ページに魅力が詰め込まれている。センスと才能があれば、好きなものをこんなにもおいしく保存しておけるのかと知ることができて、なんだかうれしい気持ちになりました。 お話ししていて感じましたが、イトウさんはとにかく考えや気持ちがあふれ出てくるようなお方。収録中も、私が何も話さなくても次々と情報を教えてくださって、この回はMCでもなんでもなかったような気がします。お客さんの気分。 それだけ内から湧き出るものがあるからこそ、素晴らしい創作につながっているのだろうなと感じました。 イトウさんが投稿されているブログ『イラストで綴る日常』にて、「立ちそば日記」が公開されているので、ぜひ一度ご覧いただきたいです。 『公私混同』の告知もブログでしていただいて、私のイラストも描いてくださっていました。かわいく絵にしていただいて幸せ。おもしろい方だったなぁ。 「焼き芋」ブームの功労者が登場! (写真:奥森皐月の公私混同 第25回「焼き芋、私に教えてください!」) 第25回は、ゲストに天谷窓大さんをお招きし「焼き芋、教えてください」のテーマでお届けしました。 寒い時期になると焼き芋を見かけたときに買うくらいには焼き芋が好きでしたが、あれほどまで教わることがあるとは思ってもみませんでした。 365日焼き芋を食べ、焼き芋のために全国を巡り、焼き芋アンバサダーとして活動されている天谷さん。目覚めてすぐに焼き芋を焼くことから一日が始まるというお話から、想像のかなり斜め上をいく焼き芋好きだとわかりました。 焼き芋トースターなるものがあることをこのときに初めて知りましたし、それが枕元にあるというのが衝撃です。枕元の相場は目覚まし時計だと思っていたので。 イベント運営のお仕事をされるなかで、自分の好きな焼き芋のフェスを開催してみたら、想定を遥かに上回る人が集まったというお話は非常に興味深かったです。その一歩目を踏み出す人になれるのはカッコいいですよね。 今巻き起こっている焼き芋ブームの功労者は、まさしく天谷さんなのだと知ることができました。焼き芋アンバサダーという肩書がぴったりだと思います。 ランキングのコーナーでは「食べて稲妻が走った焼き芋ベスト3」をご紹介いただきました。さまざまなお店の焼き芋を教えてくださったのですが、これが最高でした。 とにもかくにも天谷さんのご説明がおいしそう。ひと言ひと言が鮮やかに焼き芋を表していて、言葉だけなのによだれが垂れそうになります。 食べ物の説明なんて、最終的には「おいしい」としか表しようがないと思っていましたが、そんな短絡的な表現ではありません。言葉の素晴らしさと焼き芋に対する大きすぎる愛で、私の心は揺さぶられました。アンバサダーはすごい。 「好き」でいられるものがあるというだけでじゅうぶんに素敵なのに、それを知らない人にまで魅力を届けられるというのはなによりも美しいと感じます。 愛情とこだわりが共存したときに初めてそれが成立するのだろうか、なんて考えさせられました。私も好きなものを天谷さんのように華麗に伝えられる人になりたいです。 今まで知らなかった「クイズ」の新境地 (写真:奥森皐月の公私混同 第26回「クイズ、私に教えてください!」) 5月最後の放送は「クイズ、教えてください」がテーマ。ゲストにピン芸人の大久保八億さんにお越しいただきました。 私も子供のころからクイズ番組はよく観ていて、クイズは好きなほうだと思っていましたが、今回教えていただいたクイズは私が知っているものとは大きく違いました。 第一に「競技クイズ」というジャンルがあることを今回初めて知りました。クイズ研究会なるものは聞いたことがありますが、趣味として参加できるクイズ大会が数多く存在していることは初耳です。 毎週のように各地でクイズのイベントや大会が開かれていると知り、一気に新しい世界が見えたのが不思議な感覚でした。知っているものの知らない側面が見える瞬間はとてもおもしろい。 八億さんはクイズの作成もされているそう。途中で出題してくださったクイズが、どれも絶妙な難易度かつ挑戦しがいのある問題で楽しかったです。問題自体で楽しませるという観点でクイズに挑戦したことがなかったので、受け取り方が変わりました。 クイズ番組で活躍している人のほかにも、クイズ界で有名な人はさまざまいらっしゃるようですが、その中でも「伝説」となっているプレイヤーのお話が印象的です。 最強でありながら引退してしまったとのことで、興味をそそられました。その人の誕生日がクイズファンの間でラッキーナンバーとまでなっているというのがなんだか笑えました。伝説にもほどがある。 「競技クイズ界に爪痕を残した奇問」のベスト3も素晴らしいランキングでした。私たちが慣れ親しんでいるものとはひと味もふた味も違ったクイズの新境地を知り、クイズが日夜進化していることがわかりました。 それぞれがまったく違う方向性で新しくてすごかったので、ぜひ本編でご確認ください。 知識が豊富であることは当然として、それを活かすためのクイズ筋があるのだと思います。いつかクイズ番組で活躍できるようになりたいですし、大会も観に行きたいです。とてつもなく広いクイズの世界の入口に立ったような回でした。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 『奥森皐月の公私混同』ではメールを募集しています。 募集内容はTwitterに定期的に掲載しているので、テーマや大喜利のお題などそちらからご確認ください。 宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp です、たくさんのメールをお待ちしております。 logirl公式サイト内「ラジオ」のページでは毎週アフタートークが公開されています。 こちらは本編の振り返りをはじめ、普段思っていることや本編ではできない話もしています。無料でお聴きいただけますよ。過去回も遡れるのでぜひお聴きください。 (写真:『奥森皐月の公私混同 アフタートーク』) 『奥森皐月の公私混同』番組公式Twitterアカウントがあります。 最新情報やメール募集についてすべてお知らせしていますので、チェックしていただけると嬉しいです。また、番組やこの収録後記の感想などは「#奥森皐月の公私混同」をつけて投稿してください。 メール募集!テーマは【お茶🍵】【お相撲👶 】です!▼奥森!コレ知ってんのか!ニュース▼ゲストへの質問▼大喜利公私混同カップ2▼リアクションメール▼感想メール 📩宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp メールの〆切は6/13(火)10時です! pic.twitter.com/4x0DXUCFnC — 奥森皐月の公私混同は傍若無人 (@s_okumori) June 10, 2023 奥森皐月個人のTwitterアカウントもあります。番組アカウントとともにぜひフォローしてください。たまにおもしろいことも投稿しています。 貴族のおWi-Fi だ pic.twitter.com/YvWbey2EZ1 — 奥森皐月 (@okumoris) June 13, 2023 『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開。 次回は「過去イチの盛り上がりを見せるランキング登場」を中心にお送りします。お楽しみに。
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奥森皐月、制服からスーツ姿に!社会人感あふれる新衣装|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第25回
19歳になりました、大人です。奥森皐月です。 私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が毎週木曜日18時にlogirlで公開されています。 このブログでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いています。 今回は『奥森皐月の公私混同〜ソレ、私に教えてください!〜』の4月に配信された第20回から第23回までの振り返りです。 月額990円ですが、logirlに加入すれば最新回までのエピソードがたくさん視聴できます。もちろん『奥森皐月の公私混同』以外のさまざまな番組も観られます。 おかげさまで番組は3年目に突入しました。番組開始当初は16歳の高校2年生でしたが、高校も卒業。大学進学はしなかったので、この4月からは社会人です。 よって、番組衣装もリニューアル。これまではシャツ、ベストにプリーツスカートの制服スタイルでしたが、今シーズンからはリクルートスーツになりました。社会人感マシマシ。おそらく就活はしない人生ですが、かたちから社会人を味わえてうれしいです。 今週の #奥森皐月の公私混同 から新衣装です...!急におとな...! pic.twitter.com/0xhRgCtztT — 奥森皐月 (@okumoris) April 6, 2023 この格好でテレビ朝日局内を歩いていると、新入社員がうろちょろしているように見えます。少し恥ずかしいです。 「生き物の中でも特別な存在」全方向から魚を楽しむ (写真:奥森皐月の公私混同 第20回「魚、教えてください!」) 4月1週目のテーマは「魚、教えてください」ということで、さかな芸人ハットリさんにお越しいただきました。 「魚を教わる」とはいっても、あまりにも広すぎるテーマ。海くらい広いですとうまいこと言ってみようかと思いましたが、魚は川にもいるからうまくありませんでした。4月1発目からなかなか攻めたテーマです。 ハットリさんは、SNSのショート動画で拝見したことがありました。曲の歌詞をすべて魚の名前に替えた歌でバズっている方という印象。しかしながら、お話ししてみるとその“魚愛”の凄まじさに圧倒されていくのでした。 まず驚いたのが、ただ魚に詳しいだけではないということ。魚を見るのが好きだし、釣るのも好きだし、調理もできるし、食べるのも好き。全方向から魚を楽しんでいるのだとわかりました。 また、魚を「観賞されることも、食べられることも、飼われることもある、生き物の中でも特別な存在」と説明されていて、あまり考えたことのない意見だったのでおもしろいと思いました。言われてみれば、ここまでいろいろな場面で人間に近い生き物はいないですね。 自分で獲った生き物だけで生活する、という厳しいルールを自らに課して実践しているというお話には恐怖すら覚えましたが、それができてしまうほどの愛の大きさなのだとも感じます。 途中、「それは食べられる魚なのですか?」というような質問をしたときに返ってきた「食べられるか食べられないか、ではなく、食べるか食べないかだ」という名言が強く頭に残っています。 毒があるものでない限りはすべて食べるそうです。おいしさとかは関係ないらしい。まっすぐな目でお話しされるものだから、こっちが間違っているのだろうかと思ってしまいます。 ランキングでは「忘れられない魚ベスト3」をご紹介いただきました。これまで数多くの魚と出会っている中でも、特にインパクトのある出会いのエピソードが飛び出します。 釣って食べるというシンプルな行動の中にも、あらゆるドラマがあって本当におもしろかったです。ぜひ本編でハットリさんの説明のままお聞きください。 ハットリさんが出版した、外来種を食べた記録がまとめられた本も衝撃の連続でした。外来種を食べることで減らそうという活動も興味深いです。知らないことの連続で楽しい回でした。 「山登り」は収集好きにもたまらない! (写真:奥森皐月の公私混同 第21回「登山、教えてください!」) 第21回のテーマは「登山、教えてください」ということで、山登り大好き芸人の桜花さんをお招きしました。 この週はかなりほかの回と違う内容になっています。大半が桜花さんワールドに包まれているため、私はなす術もなくぼんやりしてしまっていたはずです。それがおもしろかったのですが。 桜花さんのフリップネタが不思議で、見ながらずっと奇妙な笑い方をしてしまいました。ブリッジのリズムが変すぎてクセになる。規則性がつかめなくてずっとヘラヘラしちゃった。 登山好きが高じて山小屋でアルバイトしていた、というのはいいお話です。山の中で過ごしたことがないので想像もつきませんが、話を聞けば聞くほど楽しそうだなぁと思いました。 山を登りきったときに見る景色の素晴らしさというのは、やはり自分の目で見たときに最高に感じられると思います。桜花さんがとにかく山登りを楽しんでいることがわかり、私も体験してみたくなりました。 それぞれの山ごとに記念バッジなるものがあるというのは、今回初めて知りました。調べてみるとかなり種類が多く、集まっていればいるほどかわいい。これは、山に行かないと手に入らないというレア感も含めて集めたくなります。収録中にひとつバッジをいただいてうれしかったです。 山頂に神社が建っているところもあるとのことで、御朱印集めが好きな私はより興味をそそられました。やっぱり収集できるものは気分が上がりますね。 まずは登山から行きマウンテン。桜花さんのダジャレラッシュが半端ではないので、映像でお確かめください。 ものすごくタメになる「ポイ活」のガチ情報回 (写真:奥森皐月の公私混同 第22回「ポイ活、教えてください!」) 第22回はゲストに木下ニイソさんをお招きして「ポイ活、教えてください」のテーマでお届けしました。 ポイ活というと、地道にコツコツと貯めてちょっとの得をするというくらいの印象でした。ただ、この回を観るとポイ活というものの印象がガラリと変わります。 これまでのテーマに比べて少し難しい内容でしたが、わかりやすく図にまとめて説明してくださって本当にありがたかったです。 1ポイントを1円で使うのではなく、それを運用することができるというのが衝撃的でした。貯めるだけでなくそれを育てるのもポイ活。ただ貯めることもできるけれど、それを有効に使えるということを知りました。 「ポイントは出口が大事」というキラーフレーズにすべてが凝縮されています。 このテーマのすごいところは、知らないとできないけれど、知れば誰でもできるということ。能力や向き不向きに関係なく、やってみようと思えば全員同じようにできるのはおもしろいですよね。 ここまでタメになる、ガチ情報回は後にも先にもないような気がします。有益な情報を惜しみなく教えていただけてありがたい。永久保存版です。 子供のころから「攻略」が好きだというお話も印象的です。それがポイ活にもつながって、攻略を進めた結果だとよくわかりました。おそらくここまで攻略がお好きだと、どんな分野でも先駆者になれるでしょうね。 ポイ活のお話があまりにも勉強になったので、もっとたくさんのメディアで木下さんが注目されるといいなと思いました。必見の回です。 知らなかった「道の駅」の魅力に、興味津々! (写真:奥森皐月の公私混同 第23回「道の駅、教えてください!」) 4月最後の放送は「道の駅、教えてください」、ゲストに道の駅大好き芸人のスーザン。さんにお越しいただきました。 東京生まれ東京育ちの私は、車で遠出する機会もあまりなく、道の駅にとにかくなじみがありません。どういう場所もぼんやりとしかわかっていませんでした。なんとなくこぢんまりしていて野菜が売っている気がする、くらい。 この収録では、道の駅がいかにおもしろい場所なのかがわかりました。 前提として道の駅とは何かをお聞きしたところ、「24時間使える駐車場とお手洗いがあり、地域や交通の情報を伝えている休憩施設」というとてもわかりやすい説明をしてくださいました。この条件さえクリアしていれば、全部道の駅。単純明快。 道の駅にはその地域のものが凝縮されている、というところが魅力だとよくわかりました。地元の方が作っている手作り感も、実際に見て体験してみたいです。 場所によっては川下りやワークショップ、温泉などがあるところもあり、道の駅自体が旅の目的地になるというお話は印象的。各道の駅にあるスタンプを集めるのも楽しそうです。道の駅巡りにかなり興味が湧きました。免許も取ったことだし行ってみたいな。 ランキングでは「衝撃を受けた道の駅ベスト3」をご紹介いただきました。道の駅に衝撃を受けることがあるのかと侮ってはいけません。日本全国にはさまざまな場所があるのだと思い知らされます。 いい意味で完璧ではないところがおもしろかったり、独特な施設や商品だったり、聞いているだけでも衝撃的なランキング。最新の素敵な道の駅も知ることができて、素晴らしいベスト3でした。 道の駅に対する情熱、愛情の強さはもちろんなのですが、とにかくスーザン。さんの解説がわかりやすかったです。無数にある知識を次々と丁寧に説明してくださるので、本当に楽しく収録ができました。 道の駅を紹介するYouTubeチャンネルもおもしろかったので、ぜひ皆さんにご覧いただきたいです。 毎回収録後にスタッフさんと打ち合わせをしていますが、毎回楽しかったですとしか言っていないような気がします。何かを愛する人のお話ってやっぱりおもしろいですよね。幸せな番組ができているなぁといつも思います。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 『奥森皐月の公私混同』ではメールを募集しています。 募集内容はTwitterに定期的に掲載しているので、テーマや大喜利のお題などそちらからご確認ください。 宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp です、たくさんのメールをお待ちしております。 logirl公式サイト内「ラジオ」のページでは毎週アフタートークが公開されています! こちらは本編の振り返りをはじめ、最近のことや考えたいことなどをゆったりとお話ししていますよ。作家の皆さんとお話しするこの時間も楽しみにしています。 こちらは無料でお聴きいただけます。過去回も遡れるので、ぜひお聴きください。 (写真:『奥森皐月の公私混同 アフタートーク』) 『奥森皐月の公私混同』番組公式Twitterアカウントがあります。 最新情報やメール募集についてすべてお知らせしていますのでチェックしていただけるとうれしいです。 また、番組やこの収録後記の感想などは「#奥森皐月の公私混同」をつけて投稿してください。 メール募集!テーマは【立ちそば🍲】【焼き芋🍠 】です!▼奥森!コレ知ってんのか!ニュース▼ゲストへの質問▼大喜利公私混同カップ2▼リアクションメール▼感想メール 📩宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp メールの〆切は5/2(火)10時です! 詳しくはこちら👇 pic.twitter.com/zOwyBnnmno — 奥森皐月の公私混同は傍若無人 (@s_okumori) April 28, 2023 奥森皐月個人のTwitterアカウントもあります 番組アカウントとともにフォローしてね。 ブログ更新しました 19https://t.co/kSZNOfv8pc — 奥森皐月 (@okumoris) May 9, 2023 『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開。 次回は「強キャラ続々登場に奥森困惑」を中心にお送りします。お楽しみに。
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番組に感謝!野球素人でもハマったWBC|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第24回
高校を卒業し、社会人になりました、完全に大人です。奥森皐月です。 私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が、毎週木曜日18時にlogirlで公開されています。 このブログでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いています。 今回は『奥森皐月の公私混同~ソレ、私に教えてください!~』の3月に配信された第15回から第19回までの振り返りです。 月額990円ですが、logirlに加入すれば最新回までのエピソードがたくさん視聴できます。もちろん『奥森皐月の公私混同』以外のさまざまな番組も観られます。 世界で1000種類以上!おいしさを引き出すチーズの魅力 (写真:奥森皐月の公私混同 第15回「チーズ、教えてください!」) 3月1週目のテーマは「チーズ、教えてください!」ということで、“チーズボーイ”こと、うだがわこうきさんにお越しいただきました。 チーズ自体のことをあまり考えたことがなかったのですが、思っている何十倍も奥深いものだとこの収録でよくわかりました。 世界中でそれぞれのチーズがあり、種類の総数は1000以上とのこと。さまざまな種類があることくらいは知っていましたが、そこまでだとは知らず大変驚きました。 うだがわさんも保有する「チーズソムリエ」の資格の試験が難しいというのも納得です。それぞれのチーズを理解するには、なかなかの情報量が必要になると思います。 うだがわさんが“チーズボーイ”というキャラクターになるまでの経緯もとてもおもしろかったです。 何か聞き覚えのあるフレーズだと思っていたら、ハンバーグ師匠の一門でした。納得のいく濃いキャラクター。チーズくらい濃厚です。チーズジョーク炸裂で、ずっとゲラゲラ笑いながら収録が進みました。 ランキングでは「都内のおいしいオシャレチーズ料理店ベスト3」をご紹介いただきました。チーズ料理というフレーズだけではピンとこなかったのですが、どの料理のお話を聞いてもおいしそうで最高。 2位で紹介されていた原宿の「みのりんご」というお店のチーズがけキーマカレーは、実際に食べに行きましたがとてもおいしかったです。 本編でおっしゃっていましたが、チーズが食べ物のおいしさをより引き出し、なんにでも合うというのはそのとおりだと思いました。 Twitterの動画でも「手軽に楽しめるチーズ料理ランキング」を発表してくださったので、皆さんもぜひお試しください。去り際の「マスカルポーネ、間違えた、また遊ぼーね」も最高です。 📢今週木曜配信の #奥森皐月の公私混同 のテーマは【チーズ🧀】ゲストは #チーズボーイ さん!収録終わりにお2人からコメント頂きました!本編のおすすめベスト3とは別にチーズボーイさんのおすすめ教えて頂きました!さぁどんなベスト3でしょうか😋 pic.twitter.com/V3qFc6Jlav — 奥森皐月の公私混同は傍若無人 (@s_okumori) February 28, 2023 WBC開幕直前!素人でも楽しめる野球知識 (写真:奥森皐月の公私混同 第16回「野球、教えてください!」) 第16回のテーマは「野球、教えてください!」ということで、金の国・渡部おにぎりさんがゲストでいらっしゃいました。 野球についてまったくの素人、最低限の知識もあるかないかくらいの私ですが、この1時間、そしてそこからの2週間ほどで完全に野球のトリコに。 WBCが開幕する直前の放送ということで、学生時代を野球に捧げた渡部さんから、その魅力や楽しみ方を徹底的に教えていただきました。 びっくりするくらい何も知らない私にも、丁寧にひとつずつお話ししてくださって本当に優しかった。ありがたいです。 今回のWBCがいかにアツいかということや、ここから観始めても問題ないというお言葉をいただいたので、初めて野球の試合をテレビできちんと観てみました。結果的にとても楽しかったです。予選から決勝戦までほぼ全試合観ました。 これまで、まわりが野球の話で盛り上がっていたり、ラジオで野球の話題が上がったりしていても、ついていけなくて蚊帳の外でした。 しかし、今回初めて真剣に試合を観たところ、今まではついていけなかった会話に入れたり、ラジオがより楽しめたりして本当にうれしかった。 社会に順応できている実感すらありました。日本中が盛り上がるイベントでは、自分もその中に入っていくといいのだとようやくわかった。 そのきっかけを作ってくださった番組とおにぎりさんには本当に感謝です。改めて、自分にとってもたくさんいいことがある番組だと感じます。 姿勢で不調がわかる?ストレッチで健康体に (写真:奥森皐月の公私混同 第17回「ストレッチ、教えてください!」) 第17回はゲストに山田BODYさんをお招きし「ストレッチ、教えてください!」のテーマでお届け。 冒頭で、まさかの一度同じ番組に出演したことがあると発覚し、そこからどんどん加速するように楽しくお話しさせていただきました。 山田さんがボクシング経験者ということで、私もボクシングジムに通っているというようなお話もして盛り上がりました。どこのジムに通っているかという話になってしまったので、本編ではカットです(笑)。 ストレッチというと開脚など少ししんどいイメージもありましたが、自分の悩みに合わせて必要な部分を伸ばしていくことが大事だとよくわかりました。 姿勢をひと目見ただけで、どこに不調があるかをすぐに言い当てられて驚き。 自分の今の状態をテストして、改善策まですべて放送内で教えてくださったので、視聴者の皆さんもすぐに実践できます。ぜひまねしながら観ていただければうれしいです。みんなで健康体を目指す最高の企画でした。 また、山田さんのツッコミやトークがすばらしいおかげで、大喜利が過去一番盛り上がったような気がしています。大喜利の部分だけ毎週いてほしいくらいおもしろかった。 ゲストごとのテーマで毎回大喜利を募集しているため、実際の情報と照らし合わせたり、詳しい方目線でのお話を聞いたりするのが本当に毎回楽しいです。 吉祥寺でパーソナルトレーニングをされているそうですので、皆さんも身体の不調があったら山田さんに見てもらってください! 難しい印象だった「地図」の楽しさ、奥深さ (写真:奥森皐月の公私混同 第18回「地図、教えてください!」) 翌週第18回のテーマは「地図、教えてください!」ということで、ゲストに火災報知器・小林知之さんにお越しいただきました。 冒頭で小林さんがおっしゃっていましたが、まず「地図は好きとか嫌いとかの部類に入らないことが多い」というのにハッとしました。たしかに地図に対して好きだと思ったことはないです。 ただ、地図に特化した古本屋が神保町にあるということをなんとなく知っていて、そのお話をしたところ小林さんも行きつけだとのことだったので、誤情報ではなかったようです。 地図の定義は広く、究極的には線が1本あるだけで地図といえるというお話が、地図の奥深さを物語っていると思いました。 また、最新の地図というものはどこにもなく、常に更新されていくものだから、この世にある地図はすべて過去の地図だというお話も興味深かったです。 私は方向音痴ではありませんが、学校で使っていた地図帳でも等高線や記号がモノクロのものは見づらく、少し難しい印象がありました。 ところが地図にも数えきれぬほど種類があり、中には見ていて楽しいものやかわいい見た目のものもあるとわかって、どんどんテンションが上がっていく収録。 少しずつ地図の魅力がわかり、かわいらしい地図グッズもいただいて、とても楽しかったです。 今は地図アプリでだいたいの場合は事足りますが、観光地や身近な場所でも紙の地図をもらって散歩に役立てたいと思います。 サウナ回では、前代未聞のランキングが! (写真:奥森皐月の公私混同 第19回「サウナ、教えてください!」) 3月最後の放送は「サウナ、教えてください!」、ゲストにスター諸星さんにお越しいただきました。 数年前から爆発的に人気があるイメージで、私はまだその魅力をよく知らなかったのですが、この回で完全にサウナに行きたくなりました。 もともと興味はあったのですが、気軽に行きづらくて躊躇してしまっていました。諸星さんの熱いサウナ愛にみるみる惹かれていきましたね。 アウフグース、という単語も初めて聞きましたがすごくおもしろいものでした。パフォーマンス性の高さが見どころで、ただ風を起こすだけではないとよくわかった。 ランキングでは「サウナ後に食べたいサ飯ベスト3」を教えていただきました。 サウナ施設で食べられるおいしいご飯はさまざまとのことで、ご飯からサウナを選ぶというのもアリだそう。ただ、最終的に前代未聞のランキングになっているので、ぜひ本編でお確かめください。 この収録後、実際に私も外気浴までできるサウナを訪れましたが、とても気持ちよかったです。定期的に通いたくなったので、諸星さんに感謝の気持ちでいっぱい。 ゲストの皆さんのおかげで日々がより豊かに楽しくなっている気がします。ありがたい限りです。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 『奥森皐月の公私混同』ではメールを募集しています。 募集内容はTwitterに定期的に掲載しているので、テーマや大喜利のお題などそちらからご確認ください。 宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp です、たくさんのメールをお待ちしております。 logirl公式サイト内「ラジオ」のページでは、毎週アフタートークが公開されています! 本編の振り返りをはじめ、最近のことや考えたいことなどをゆったりとお話ししている時間です。 こちらは無料でお聴きいただけます。過去回も遡れるのでぜひお聴きください。 (写真:『奥森皐月の公私混同 アフタートーク』) 『奥森皐月の公私混同』番組公式Twitterアカウントがあります。最新情報やメール募集についてすべてお知らせしていますので、チェックしていただけるとうれしいです。 また、番組やこの収録後記の感想などは「#奥森皐月の公私混同」をつけて投稿してください。 📢お知らせ#奥森皐月の公私混同 遅れておりました配信は本日の18時からになります👈 テーマは【魚、教えてください】🐟ゲストは、さかな大好き水産系芸人のさかな芸人ハットリさん!🐠🐟🐡 魚の魅力をたくさん教えて頂きました🌊🐟🌊🐟 配信までもう少しお待ちください🐙🦑🪼🦈 pic.twitter.com/XCrCdnmnwm — 奥森皐月の公私混同は傍若無人 (@s_okumori) April 7, 2023 奥森皐月個人のTwitterアカウントもあります。番組アカウントとともにフォローしてね。 『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開。 Tweets by okumoris 3年目の『奥森皐月の公私混同』もよろしくお願いします!
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スイーツ、コーヒー…おいしい幸せ収録|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第23回
確定申告をひとりで終わらせました、完全に大人です。高校3年生・18歳の奥森皐月です。 私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が毎週木曜日18時にlogirlで公開されています。 このブログでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いています。 今回は『奥森皐月の公私混同~ソレ、私に教えてください!~』の2月に配信された第12回から第14回までの振り返りです。 月額990円ですが、logirlに加入すれば最新回までのエピソードがたくさん視聴できます。もちろん『奥森皐月の公私混同』以外のさまざまな番組も観られます。 1月は1ヶ月間配信をお休みさせていただいたため、2023年最初の配信は2月9日になりました。 このまま終わってしまうのではないかと不安になった方は安心してください。普通に再開しました。引き続きご視聴をお願いいたします。 「空白の1ヶ月」を1時間で語ることの難しさ (写真:奥森皐月の公私混同 第12回「空白の1ヶ月」) 再開後一発目の配信では「空白の1ヶ月」をテーマにお届けしました。 空白を作ったのはそっちだろう、という気もしますよね。『公私混同』の場で私からお話しすることはなかったため、年末のことから順を追ってお話ししました。 毎週エピソードトークをする、というのは本当に難しいこと。世の中のラジオパーソナリティは恐ろしいです。 ラジオ形式で毎週配信していたころは、何を話そうかと収録に向かいながらドキドキしていました。楽しい出来事があったからといって、おもしろいエピソードになるとは限りませんし。案外何もない週だったほうがいいエピソードが生まれるなんて話を聞いたこともあります。 その一方で、この回は1ヶ月半くらいの話を1時間で話すため、これはこれで難しいと感じました。 一つひとつが短くなることで薄っぺらい話になってしまうのは嫌だったので、できる限り短くてビビッドなトークを心がけました。コンビニで売られているプチ和菓子のアソートセットみたいに話すことが理想。和菓子である必要は特にありません。 ゲストをお招きするスタイルになってからは、ひとりでしっかりとトークする時間が減ってしまいましたが、やはり毎週お話しできる場所があるのは幸せです。 このままもっともっと力を蓄えて、最強おもしろラジオパーソナリティになりたいものです。最強おもしろラジオパーソナリティのラジオ、全然おもしろくなさそうですね。 おいしすぎる“差し入れスイーツ”に衝撃! (写真:奥森皐月の公私混同 第13回「スイーツ、教えてください!」) 2023年ひとり目のゲストはスイーツなかのさん。「スイーツ、教えてください!」をテーマに1時間お送りいたしました。 スイーツに詳しい方として私も存じ上げていた、間違いなくお笑い界トップのスイーツ好き。そのルーツからお話を聞けて非常に興味深かったです。 “好き”がお仕事につながって唯一無二の存在になる、本当に素敵なことだと思います。 レセプションパーティーのお誘いがあるというお話が印象的でした。果たして私はこれからの人生でレセプションパーティーにお呼ばれすることはあるのでしょうか。知っている単語ではあるものの、あまりに聞きなじみがなかったのでおもしろかったです。 ベスト3のコーナーでは、差し入れで喜ばれるスイーツのランキングを教えてくださいました。3つとも買いに行きやすく、食べたことのない、おいしすぎるスイーツという最強のラインナップでした。ありがたいことにすべてスタジオで試食させていただけて、幸せ収録。 どれもそれぞれの魅力がありましたが、やはり1位のスイーツは衝撃を受けるほどのおいしさでした。翌週のオープニングトークでもお話ししましたが、収録後プライベートでも買いに行きました。 差し入れとして喜ばれる以前に、一度食べたらどハマリしてしまいました。今度どこかに差し入れをする機会があれば、ぜひ参考にさせていただきたいです。 まだまだお聞きしたいことがたくさんあったので、またお越しいただきたいです。 コーヒー回でも、まさかのサプライズおもてなし! (写真:奥森皐月の公私混同 第14回「コーヒー、教えてください!」) 第14回のテーマは「コーヒー、教えてください!」。ゲストはコーヒールンバの平岡佐智男さんでした。 以前「純喫茶」がテーマの回がありましたが、今回はさらに「コーヒー」に絞ってお送りしました。コーヒー自体は好きですがまったく知識がなく、興味関心の高いテーマだったのでとても楽しかったです。 コーヒーと関わるきっかけのお話がおもしろかったな。アルバイトとしてタリーズコーヒーで働き、そのときはまだコーヒー好きではなかったというのが意外でした。 登場して早々にコーヒーを飲ませていただくという、サプライズおもてなしがうれしかったです。本来番組のホストは私のはずなのですが、思いがけずおもてなしされてしまいました。ウェルカムコーヒーというのでしょうか。 これがまたおいしくてびっくり。すごくフルーティーで、苦味や酸味がくどくない、「コーヒー」のイメージとはかなり離れている味でした。あそこまでコーヒーにフルーティな香りを感じたことがなかったので、初手で一気にコーヒーの世界に惹きつけられました。 そのあとも、私にオススメの産地をYes/Noチャートのように見つけ出すという画期的な紹介の仕方があり、大盛り上がり。ぜひいろいろな人に体験してもらいたいです。 私にはケニア産がオススメとのことでした。次にさまざまな産地のコーヒーがそろっている喫茶店に行く際は、絶対に飲もうと思います。 ベスト3のコーナーでは「おうちでできるアレンジコーヒーベスト3」をご紹介いただきました。私はあまりコーヒーをアレンジするという考えがなく、カフェオレかウインナーコーヒーくらいしか知らなかったので、意外な組み合わせがたくさん出てきて新鮮でした。 配信内では、1位のレシピをスタジオで実際に作るお料理番組のような時間がありました。『公私混同』で初の試みでしたが、これまた新しくておもしろかったですね。 収録後、2位・3位のアレンジコーヒーも飲ませていただきましたが、個人的には3位のベトナムヨーグルトコーヒーが一番好きでした。皆さんもぜひお試しください。おいしいよ。 昨日の配信でゲストの #コーヒールンバ の平岡さんに紹介して頂きました、「アレンジコーヒーBEST3」の1位を奥森さんに飲んでいただきましたが、収録終わりに3位と2位も飲んでもらいました!😙まず3位から👇 ※本編を観たい方は #logirl に入会すると観られます!☕️https://t.co/NJXaTH0rRI pic.twitter.com/JefJRiGEPw — 奥森皐月の公私混同は傍若無人 (@s_okumori) February 24, 2023 毎週ひとつずつ何かを教えてもらって、着実に知識が広がっている感覚があります。またそれと同時に興味の幅が広がっているのも感じています。 なかなか自力では開拓できないことも、有識者に教わることで楽しく足を踏み入れられている。この調子で番組が進めば、1年後には相当物知りな人になれるのではないでしょうか。 視聴者の皆さんもこれは同じです。一緒に物知り人間になりましょうね。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 『奥森皐月の公私混同』ではメールを募集しています。 募集内容はTwitterに定期的に掲載しているので、テーマや大喜利のお題などそちらからご確認ください。 宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp です、たくさんのメールをお待ちしております。 logirl公式サイト内「ラジオ」のページでは毎週アフタートークが公開されています! 本編の振り返りをはじめ、最近のことや考えたいことなどをゆったりとお話ししている時間です。 こちらは無料でお聴きいただけます。過去回も遡れるので、ぜひお聴きください。 (写真:『奥森皐月の公私混同 アフタートーク』) 『奥森皐月の公私混同』番組公式Twitterアカウントがあります。 番組やこの収録後記の感想などは「#奥森皐月の公私混同」をつけて投稿してください。たくさん感想をつぶやいてください。 📢#奥森皐月の公私混同 【ストレッチ🤸♂️】は本日18時配信です!ゲストは #山田BODY さん💪テンション高めの山田BODYさんから色々ストレッチ教えてもらいました!みなさんも動きやすい服装でスタンバイお願いします! 過去の配信観たい方は👇https://t.co/JUnIidCb6M pic.twitter.com/Kd3LtvdFhE — 奥森皐月の公私混同は傍若無人 (@s_okumori) March 16, 2023 また奥森皐月個人のTwitterアカウントもあります。番組アカウントとともにフォローよろしくお願いします! Tweets by okumoris 『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開。 次回は「未知の世界と強烈キャラが続々登場!」を中心にお届けする予定です。お楽しみに。
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過去一番笑った「顔ハメ」の流儀|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第22回
ちょっと高い買い物でも、欲しかったら躊躇しなくなってきました、大人です。高校3年生・18歳の奥森皐月です。 私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が毎週木曜日18時にlogirlで公開されています。 このブログでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いています。 今回は『奥森皐月の公私混同~ソレ、私に教えてください!~』の第8回から第11回までの振り返りです。 月額990円ですが、logirlに加入すれば最新回までのエピソードがたくさん視聴できます。もちろん『奥森皐月の公私混同』以外のさまざまな番組も観られます。 奥森皐月も大好きな「純喫茶」の心地よさ (写真:奥森皐月の公私混同 第8回「「純喫茶、教えてください!」) 12月最初の配信のテーマは「純喫茶、教えてください!」。ゲストにダーリンハニーの長嶋智彦さんをお招きしました。 これまでのテーマで一番といっていいほど自分も好きなジャンル。とても楽しい収録でした。 大前提ですが「純喫茶とは何か」は私もよく理解していませんでした。お酒を提供せず、純粋にコーヒーを楽しむお店を純喫茶と呼ぶことが多いようです。レトロなお店のことではないのですね、学びになりました。 長嶋さんは音楽や美術もお好きで、その大きな興味の中に純喫茶も入ってきたようで、素敵だと思いました。純喫茶はコーヒーや食事以外にも、お店の内装や家具などの空間のよさがあると感じていたので、その気持ちを共有できてうれしかった。 また、時が止まったような空気や、流行に流されない人のいる場所であることが落ち着くと話されていたのもよかったです。店員さんやほかのお客さんと会話をするわけではないけれど、安心感を覚えることが私もよくあります。どこか同じ心持ちの人が集う場所なのかもしれませんね。 純喫茶のマッチコレクションを見せてくださったのもとてもテンションが上がりました。喫茶店ごとにオリジナルのマッチを用意していることがあるのは知っていましたが、今の時代なかなか現物を見る機会がありません。 純喫茶の本で、さまざまな店のマッチの写真が並んでいるのを見ていいなぁと思っていたので、現物を見ることができて幸せです。私も集めてみようかと悩んでいるくらいには魅力的でした。喫茶店、最高。 まるで占い?奥森皐月におすすめの「文具」を紹介! (写真:奥森皐月の公私混同 第9回「文具、教えてください!」) 翌週は、ゲストに文具ソムリエールの菅未里さんをお招きし「文具、教えてください!」のテーマでお届けしました。登場から番組終了までずっと、菅さんの静かなる情熱の炎がスタジオを包み込んでいました。 この回も純喫茶回同様「文具とは何か」という定義からスタート。「文房具」と「文具」に実は違いがあったのですね。「房」が書斎を表しているとは知らなかったです。またひとつ知識を得られました。 この回で何よりうれしかったのは、ただ文具をおすすめするだけでなく、「奥森に」おすすめの文具を教えてくださったこと。事前に私のことをいろいろと調べてくださったようで、本当にありがたい限りです。実際ご紹介いただいた文具はどれも魅力的で、ソムリエールはさすがだなぁと感じました。 事前に普段使っている文具の写真をお送りしていたのですが、そこから考察されていた私の像がかなり的確でおもしろかったです。文具診断、文具占いのようでした。 ただの黒のボールペンではなく、茶色やニュアンスカラー系のペンが好きだというのにも気づいてくださって、最新の素敵なニュアンスカラーボールペンを体験させていただけました。かわいかった。 とにかく凄まじい量の文具をご用意いただき、1時間ずっと文房具屋さんにいるわくわく感が続いて幸せでした。 試し書きするときって、かなりテンションが上がりますよね。色やラメがわかりやすいようにと、黒の紙をサッと出していただく場面もあり、またひとつ感動。ソムリエール、かっこいいです。 ペンをはじめ、箱用オープナーやリップクリームまでプレゼントにいただいてしまいました。全部日常でめちゃくちゃ使っています。本当にありがとうございます……。 1時間じゃまったく足りないほどの情報量と熱量。また新学期シーズンにお話を伺いたいですね。楽しかったです。 過去一番のおもしろさ!「顔ハメ看板」の未知なる魅力 (写真:奥森皐月の公私混同 第10回「顔ハメ看板、教えてください!」) 第10回のテーマは「顔ハメ看板、教えてください!」。ゲストは顔ハメ看板ニストの塩谷朋之さんでした。 顔ハメ看板はあまりなじみがなく、そもそも見かける機会も少なかったので、まったくの未知の世界。お話をお聞きするのが楽しみでした。 この回は個人的に過去一番おもしろかったです。おもしろいにも種類がありますが、とにかくたくさん笑いました。 想像以上に人生と顔ハメ看板が密接に関わっていらっしゃる方でした。全国を巡っているところがすごいし、そもそも顔ハメ看板がそこまであちこちにあったのかという驚きもある。 それどころか世界にもあるということを初めて知りました。世界に広がるものだとは思わなかった。 特に印象に残っているのが、塩谷さんの独自の言い回し。顔ハメ看板の過去形「ハマった」を初めて耳にしただけでなく、「ハマらせていただく」という聞いたことのない敬語も出てきて最高でした。 また、顔ハメの流儀もいろいろとお聞きできてよかったです。前提として、前髪など無駄な要素は排除し、真顔で撮るとよい。そこからステップアップするためには、低い位置に挑戦したり、細い看板に身体を収めきったりすることも重要だそうです。 よりレベルが高いのは「しまわれている看板を出してもらう」こと。実際に消防署などでお願いして看板を出してもらったエピソードがめちゃくちゃおもしろかった。看板を出すために消防車を移動してもらったというところがツボです。状況が変すぎる。 この収録後、たまたま秋葉原で顔ハメ看板を見つけたので、きちんと撮影しました。メイドカフェの広告の看板。 この収録を経たことで、もう顔ハメ看板の前を素通りすることはできなくなりました。着実にいろいろな影響を『公私混同』で受けています。塩谷さんのご著書もとてもおもしろかったので、ぜひチェックしていただきたい。 『M-1』から高校3年生の振り返りまで、2022年の集大成! (写真:奥森皐月の公私混同 第11回「今年1年総ざらい!奥森に伝えたいB E S T3 S P」) 第11回は久々のひとりしゃべり回でした。 「今年1年総ざらい!奥森に伝えたいBEST3」をメールテーマにお届け。魅力的なランキングが続々と届き、メールを読みながらトークをするのは楽しいなと改めて感じました。 『M-1』後だったこともあり、かなり『M-1』の話が多めになってしまいましたが、どの媒体でもされない「くじ引きの話」からしたので、『公私混同』らしさがあったかと思います。 いつもゲストさんに考えていただいている「BEST3」ですが、この回では私もランキングを発表しました。題して「高校3年生のうちにやれてよかったコトBEST3」です。 プライベートだけで考えました。マニュアルで車の免許を取った、友達が増えた、お笑いを意味わかんないくらいいっぱい観た、の3つがランクイン。詳しい話はぜひ本編でご確認ください。 1年の振り返りをする放送も、2回目ができてうれしかった。本当に『公私混同』をつづけられているのはありがたいことです。 2023年の振り返りも『公私混同』でできるといいな。そのためにも盛りだくさんな年にしていかなければなりませんね。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 奥森皐月の公私混同ではメールを募集中。 募集内容はTwitterに定期的に掲載しているので、テーマや大喜利のお題などそちらからご確認ください。 宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp です。たくさんのメールをお待ちしております。 logirl公式サイト内「ラジオ」のページでは毎週アフタートークが公開されています! 本編の振り返りをはじめ、ゆったりと本編とは違った内容でお話ししていますよ。 こちらは無料でお聴きいただけます。過去回も遡れるのでぜひお聴きください。 (写真:『奥森皐月の公私混同 アフタートーク』) 『奥森皐月の公私混同』番組公式Twitterアカウントがあります。 番組やこの収録後記の感想などは「#奥森皐月の公私混同」をつけて投稿してください。たくさん感想をつぶやいてください。 📢お知らせ🎍明けましておめでとうございます㊗️2023年も #奥森皐月の公私混同 と #奥森皐月 をよろしくお願いします🐰 1月の配信ですが、配信周りのメンテナンスの為1月中はお休みになります。次回は2月を予定しております。お待たせしてしまいますが、準備が整うまでしばらくお待ちください。 — 奥森皐月の公私混同は傍若無人 (@s_okumori) January 3, 2023 また、奥森皐月個人のTwitterアカウントも開設しました。番組アカウントとともにフォローよろしくお願いします! ひとりでも、みんなでも綺麗『イルミネーション』 pic.twitter.com/SqjXELq4qw — 奥森皐月 (@okumoris) January 15, 2023 『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開。 お休みをいただいておりましたが、2月から再開しました、お待たせしてしまい申し訳ございません。引き続きご視聴よろしくお願いします!
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日本中が大注目! W杯・サッカー豆知識に興味津々|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第21回
お年玉をもらいました、まだ子供です。高校3年生・18歳の奥森皐月です。 私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が毎週木曜日18時にlogirlで公開されています。 このブログでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いています。 今回は『奥森皐月の公私混同~ソレ、私に教えてください!~』の第4回から第7回までの振り返りです。 月額990円ですが、logirlに加入すれば最新回までのエピソードがたくさん視聴できます。もちろん『奥森皐月の公私混同』以外のさまざまな番組も観られます。2023年のスタートとともにlogirlデビューしてみるのはいかがでしょう。 「指定ゴミ袋」に関する最高のベスト3を発表! (写真:奥森皐月の公私混同 第4回「指定ゴミ袋、教えてください!」) 11月1週目の配信のテーマは「指定ゴミ袋、教えてください!」。ゲストに可児正さんをお招きしました。 さっそく矛盾が生じるのですが、私自身「指定ゴミ袋」自体にピンときていなかったため、教えてほしいと思ったことも当然ありません。まずは指定ゴミ袋とは何か、というところからスタートしました。 各自治体によってゴミ収集のルールが定められており、その一環で指定されているゴミ袋が「指定ゴミ袋」だそう。可児正さんは全国の指定ゴミ袋を収集されているとのことでした。 ここまで聞いた段階では、どこに魅力があるのかピンときませんでしたが、時間が経つにつれ少しずつそのよさに気づくことに。 やはり醍醐味は「そこでしか買えない」ということ。あくまでも地方自治体が定めているものなので、ほかの地域で購入・利用することはできません。よって、その土地で購入しなければならないというのが最大の魅力。 また、ゴミ袋という生活用品だからこそ、観光地で手に入れることはできません。わざわざ「暮らし」がある場所まで行って買うというのは、とてもおもしろいと思いました。 日常的にしているわけではありませんが、私は見ず知らずの土地の住宅街を歩くのが好きです。知らない場所にも当たり前に生活があるということを実感したり、よそ者としておじゃましながら歩いているという感覚があって楽しい。それに似た部分があったため、一気に理解が進みました。 お土産やご当地グッズの究極体といってもいいかもしれません。集めたくなる気持ちもだいぶわかります。 そうはいえども、ゴミ袋となるとデザインは限られてきます。せいぜい色が違ったり、〇〇市などと書いてあるだけだろうと思っていました。しかし、お持ちいただいた指定ゴミ袋を見ると、想像を遥かに上回る多様性がありました。 象徴的なのは、その自治体のご当地キャラがデザインに組み込まれているパターン。かわいらしくて見ているだけでもおもしろかったです。 また、中にはなんのキャラクターかよくわからない子もいたのが印象的。説明も何もなく、ちょっとかわいいやつがいる、というゆるさがいいなと思いました。 ほかにも「燃える」「燃えない」以外の表現があることを初めて知りました。可児さんの着眼点がずっと変でよかった。 「奥森に伝えたい!ベスト3」のコーナーでは、「抱かれたい自治体指定ゴミ袋ベスト3」という前代未聞のランキングが発表されました。 ただ、3位から順に理由を聞いていくと妙に納得できてしまい、それもおかしかったです。このランキングはかなり見てほしい。最高のベスト3でした。 夏だけじゃない、冬のコンビニアイスが熱い! (写真:奥森皐月の公私混同 第5回「コンビニアイス、教えてください!」) 翌週はゲストにアイスマン福留さんをお招きし「コンビニアイス、教えてください!」のテーマでお届けしました。 アイスはそこそこ好きなほうだと思い込んでいましたが、福留さんのエピソードの強烈さを聞いたら、軽々しくアイスが好きなどと言えなくなってしまいましたね。 そもそも、新作のアイスが発売される頻度が信じられないくらい高い。知らない事実でした。言われてみれば各コンビニで違うアイスを取り扱っていたり、つい最近見たのにもうなくなっている、ということもよくあります。 それをくまなくチェックして、見つけ次第すべてゲットする。恐るべき行動力です。 また、パッケージもきれいに洗って、形を元どおりにして保管しているとのことで衝撃を受けました。アイスマンどころじゃないです、アイスキングとかアイスカイザーとかのほうが適しています。それくらいアイスに注がれている熱が凄まじかったです。 ところどころお笑いにたとえて説明してくださったのが、優しくてわかりやすかった。この人の熱量はやばいぞ、と思いつつ自分のことに置き換えたら共感できる。 何かを愛する者は、対象がなんであれわかり合える部分がありますね。愛する、と書いたら一度「アイスる」と変換されてかなり恥ずかしくなってしまいました。話が逸れました。 ベスト3では「今食べるべき冬アイス」をご紹介いただきました。やはりアイスのメインシーズンは夏ですが、冬のアイスも実はアツい。この時期に発売される新作アイスにもよさがあることがわかりました。 この回では今までに一度もなかった試食タイムが設けられたため、奥森がいつも以上にご機嫌。大好きなアイスを食べられる時間があって、これまでの収録では見せられなかった笑顔が出てしまったかと思います。 終始、福留さんのアイスに対する真摯な姿勢に感動する1時間でした。こうしている間にもまた新作アイスは発売されているはずなので、またアイスの盛り上がっている時期にお話を聞きたいと思いました。 番組のおかげで、文化系女子でもW杯を楽しめた! (写真:奥森皐月の公私混同 第6回「サッカー、教えてください!」) 第6回のテーマは「サッカー、教えてください!」。松村澪さんにお越しいただき、サッカーを教えてもらいました。 お笑い、音楽、アートなどを趣味としているハイパー文化系女子の私は、とにかくスポーツの知識がありません。ルールから何から、本当に何も知らない。 この番組は、まったく知らない分野でも教わりながら魅力を知ることができます。とても楽しかった。 松村さんのお話の素晴らしさのひとつは、サッカーをプレイする側も観戦する側もどちらも経験されているというところ。さらに今はそれを伝えるお仕事をされているため、多面的にサッカーの魅力を語ってくださったように思います。 普段のお仕事では、ある程度前もって調べて学んでおくことがありますが、この番組に関してはあえて事前情報を入れずに臨んでいます。そのため、ゲストさんについても深く知らないでお会いしている状態です。 お越しくださっているゲストさんはどなたも最高の1時間を作ってくださっていますが、特に松村さんのことは、収録が終わったときに大好きになっていました。「サッカーの魅力を伝えたい、教えたい」という熱い想いがひしひしと伝わってきましたね。 収録用にノートに細かくメモをしてきてくださって、本当にありがたかったです。 とにかくおきれいで、サッカーの経験もあって、優しくて、マメで、死角がない!と思っちゃいました。素敵な方です。 W杯が開幕する直前にお越しいただいたのですが、このタイミングでお話を聞くことができて本当によかった。結果的に日本中が大注目する歴史的な盛り上がりを見せましたね。この収録がなければ、私は完全に世間に置いていかれていたことでしょう。 さすがに細かなルールまでは完全に理解できていませんが、大会の見どころやよりW杯を楽しめる豆知識をいくつも教えていただいたおかげで、とても楽しく観戦することができました。素晴らしい番組ですね。 意外と奥が深かった「路線バス」の世界 (写真:奥森皐月の公私混同 第7回「路線バス、教えてください!」) 11月最終週の配信は、よだれどりのすなおさんをお招きして「路線バス、教えてください!」をテーマにお送りしました。 すなおさんのバイブスがずっとおもしろくてかなりツボでした。バス愛の強さゆえのおもしろさです、最高です。 収録時はゲストさんと私が事前に打ち合わせすることはなく、カメラが回っているときが完全に初見のリアクション。台本もあまり決まっていないので、その場その場で気になったことをゲストさんにお尋ねしています。 テーマによっては実際にその分野にまつわるものをお持ちいただくこともあるのですが、私は本番前に「何か入っていそうなバッグを持っているなあ」とチラチラ見ることしかできません。 この回では「バス停の看板」という大物を見せていただいたため、かなりテンションが上がりました。普通はバス停でしか見られませんからね。スタジオに看板があるという光景が珍しくておもしろかった。 あまり考えたことがありませんでしたが、路線バスというのは電車に比べ、ひと駅の区間が短く入り組んでいる。そのため電車以上に奥が深い世界だということがわかりました。 細かい路線図がつながり合い、さらにいくつものバス会社が交じり合っている。脳内でその路線図を考えるのが楽しいというお話は、なんとなく共感できました。 ひと口にアイドルが好き!といっても、坂道グループが好きな人もいれば、いわゆる地下アイドルが好きな人もいる。お笑い好きといっても、小劇場が好きな人や新喜劇が好きな人など、挙げたらキリがないほどに細かく別れています。 同じように、なんならそれ以上にバス界は広いです。なんといったって、全国に細かく枝分かれしているわけだから全部を知るのは本当に難しい。それゆえにバス好きはコミュニティが狭いというお話も印象的でした。 バス好き女性タレントはまだいないから狙い目だとの情報も教えていただきました。2023年は積極的に路線バスに乗って、バスのイベントにも参加してみようと思います。したたかだなあ。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 (写真:『奥森皐月の公私混同』) 奥森皐月の公私混同ではメールを募集中。 募集内容はTwitterに定期的に掲載しているので、テーマや大喜利のお題などそちらからご確認ください。 宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp です、たくさんのメールをお待ちしております。 logirl公式サイト内「ラジオ」のページでは毎週アフタートークが公開されています! 本編の振り返りをはじめ、自由度の高いトークを作家の皆さんとお届け中。 こちらは無料でお聴きいただけます。過去回も遡れるのでぜひお聴きください。 (写真:『奥森皐月の公私混同 アフタートーク』) 『奥森皐月の公私混同』番組公式Twitterアカウントがあります。 番組やこの収録後記の感想などは「#奥森皐月の公私混同」をつけて投稿してください。たくさん感想つぶやいてね。いつもチェックしています。 📢お知らせ🎍明けましておめでとうございます㊗️2023年も #奥森皐月の公私混同 と #奥森皐月 をよろしくお願いします🐰 1月の配信ですが、配信周りのメンテナンスの為1月中はお休みになります。次回は2月を予定しております。お待たせしてしまいますが、準備が整うまでしばらくお待ちください。 — 奥森皐月の公私混同は傍若無人 (@s_okumori) January 3, 2023 また奥森皐月個人のTwitterアカウントも開設しました。番組アカウントとともにフォローよろしくお願いします! ひとりでも、みんなでも綺麗『イルミネーション』 pic.twitter.com/SqjXELq4qw — 奥森皐月 (@okumoris) January 15, 2023 『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開。 公開直後の1時間は無料でご覧いただけます。どうにかこの期間にクリックしてほしいです。おもしろい番組なので観てください。 次回は、「未知の世界から聞きなじみのない言語」を中心にお届けする予定です。 お楽しみに。
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番組リニューアル!「前代未聞のベスト3」が連発|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第20回
高速道路を運転できました、めちゃくちゃ大人です。高校3年生・18歳の奥森皐月です。 私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が毎週木曜日18時にlogirlで公開されています。 毎月このブログでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いています。 今回は番組が『奥森皐月の公私混同~ソレ、私に教えてください!~』にリニューアルした初回から第3回までのまとめです。 月額990円ですが、最新回までのエピソードがたくさん視聴できます。もちろん『奥森皐月の公私混同』以外のさまざまな番組も観られます。年末にイッキ観するのもいいかもね。 祝・リニューアル!「好きなもの」を語り尽くしてもらう番組に 2021年10月からラジオ風配信を続けてきましたが、1年経ったタイミングでリニューアルをしました。 サブタイトルは「ソレ、私に教えてください!」に。毎週あるひとつの分野に詳しい方をゲストにお招きし、1時間まるまる好きなだけ語ってもらうという番組です。 私自身、好きなことはとことん掘り下げて知識を得ていますが、知らないことはとことん知らない。これからのために、幅広い知識をつけたいという気持ちもあり、このようなコンセプトになりました。 また、好きなものへの熱量と知識量がある人の話は、聞いているだけで元気になれるし、とてもおもしろいと思っています。自分に置き換えても、好きなものについて語れるときは楽しいし、つい熱くなってしまう。 このパワーを毎週いろいろな人から受けていたら、近い将来あらゆる知識を持った人になれるかもと思ったときは心が躍りました。 先日、芸人さんの生配信におじゃました際、『公私混同』の話をしました。 番組内容を聞くやいなや「芸能界のゴールみたいな番組だね、千原ジュニアさんとかがやるやつだよ」と言われ、妙に納得してしまいました。それを高校生がしている、というところに新鮮さとおもしろさを見出してもらえればうれしいです。 リニューアルにあたり、ひとつ問題になったのが「メール募集」について。 これまでラジオ形式の配信をするにあたり、たくさんのリスナーさんにメールを送っていただいていました。それがいきなりすべてなくなってしまうというのはどうしてももったいなく、寂しく感じられたので、メール募集は継続することに! 大喜利コーナーは「大喜利公私混同カップ2」へ進化し、毎週ゲストのテーマにまつわる大喜利のお題が出るというルールになりました。 個人的にはこのアップデートはかなりよかったと思っています。大喜利という架空とゲストの知識による事実の衝突。相反するもののように感じられますが、突然リンクすることがある。 この融合がすごくおもしろくて、毎週メールを読んでゲストの反応を見るのがとても楽しいです。いつもメールを送ってくださるみなさん、ありがとうございます。 年間300本映画を観る「映画紹介人」が登場 (写真:奥森皐月の公私混同 第1回「映画、教えてください!」) 記念すべきリニューアル初回のテーマは「映画、教えてください」。ゲストにジャガモンド斉藤さんにお越しいただきました。 手探りのなか、斉藤さんの映画にまつわるエピソードと本編を観たくなる紹介でとても充実した回となりました。「映画」となるとジャンルとしてあまりにも広いような気もしましたが、映画とどのように関わって生きてきたかというお話からずっとおもしろかったです。 芸人という職業でありながら映画に詳しい。この相関関係のような構図についても話してくださって興味深かったです。私も、お笑いを職業にしていないからこそ外野からの意見を言える部分があるので、共感できるところもありました。 つまらない映画を観る、という体験も楽しんでいるというお話も非常によかったです。 「奥森に伝えたい!BEST3」のコーナーでは「奥森に観てほしい、女性が主人公の超おもしろい娯楽映画」のランキングを紹介してくださいました。 第1回からかなり限定的なランキングを披露いただき、これがとにかく最高でした。 ベスト3のテーマの選び方が素敵です。各映画のプレゼンもわかりやすい上に続きが気になって、強く惹きつけられました。 実際に紹介していただいた映画を観たのですが、どれも本当におもしろかった。年間300本映画を観る人が紹介するのだから間違いないとは思いますが、想像以上に楽しめました。 普段あまり映画を頻繁に観るほうではないのですが、ご紹介いただいた映画はあっという間に感じて、もっと映画を観たいという気持ちすら掻き立てられました。 一方で1位の映画の紹介は、少しほかに比べてあっさりとしているように収録時は感じました。しかし実際に観てみると、あのプレゼンの素晴らしさを実感しました。 収録が終わってから思ったことは、「映画紹介人」という肩書きのよさ。どうしても映画にまつわる言葉だと「評論」や「批評」が浮かびますが、斉藤さんは純粋に魅力的な作品を紹介されています。 今回、その高いプレゼン力を目の当たりにして、唯一無二の存在だと感じました。まだまだ聞き足りないこともあったので、またお越しいただきたいです。 「タコス回」では、初めて聞く言葉の連続! (写真:奥森皐月の公私混同 第2回「タコス、教えてください!」) 第2回のテーマは「タコス、教えてください」でした。映画とは打って変わって狭いテーマだったので、1時間持つのかと少し心配でしたが、とてもおもしろい回でした。 コアなテーマの醍醐味のひとつは「なぜそれと出会ったのか」というエピソードですね。ゲスト・高木払いさんのタコス愛に火をつけたきっかけは意外なものでした。 こちらにタコスの知識がまったくないからこそ、常に初めて耳にする言葉の連続で楽しい。「それは何? それはどういう意味?」と連続して思うことって、普通に生きているとあまりないですよね。それがこの番組の収録では味わえるので幸せです。 タコス回の一番よかったところはベスト3のコーナー。高木払いさんは「タコスのためだけに存在するいぶし銀アイテムベスト3」というランキングを用意してくださりました。 タイトルだけではあまりピンときませんでしたが、すべて実物を用意してくださったのでとてもおもしろかったです。 そもそもタコスに必要な道具があることすら想像できませんでしたが、用途を聞くとどれも大事。けれども使い道が狭すぎて笑えます。 てっきりオススメの店や食べ方を紹介するランキングがくると思っていたので、意表を突かれました。ただ、高木払いさんのおかげでこのコーナーのおもしろみをより感じられたのでありがたかったです。 番組内でオススメしていただいた渋谷のタコス屋さん「ラ カビナ」がとてもおいしかったので、みなさんも機会があれば行ってみてほしいです。 団地を浴びたい。半身が沈むほど引き込まれた「団地沼」 (写真:奥森皐月の公私混同 第3回「団地、教えてください!」) 第3回は「団地、教えてください」で、ゲストにトッキブツ太田さんにお越しいただきました。団地もまたコアなテーマのようでしたが、私はもともと興味があるテーマだったので楽しかったです。 ずっと前から団地という存在は気になっていました。身近にあまりないけれど、たまに見かけるとつい眺めてしまう。団地沼に右足のつま先だけ浸かっているような状態でした。この収録により半身が沈むほどには引き込まれることに。 太田さんによる「団地を浴びる」という表現。団地には抗えないほどの規模感と迫力を感じていたので、ぴったりだと思います。団地を浴びたい。 団地にもさまざまな種類があることを今回初めて知りました。建築様式が似ているようで全然違うようです。それぞれかっこいい名前がついているので、ぜひ本編を観て確認していただきたい。 また、棟がいくつもあって、番号などで分けられているものが団地だという定義も初めて知りました。毎回、そのテーマの定義づけを聞くのもおもしろいです。 ベスト3の「映える団地」はどれもすごかった。無機質で規則的であるゆえの美しさ、まわりの景色と相まってキレイな情景を作っているさま、見ているだけでテンションが上がりました。 この回の最後のほうは、ゲストと同じくらいの熱量で向き合えていた気がする。それくらい団地の魅力をたっぷり知りました。 映画、タコス、団地と初っ端から規則性のまるでないテーマの連続。これこそがこのリニューアルのよいところだと思っています。1週ごとにまるっきり違う話をしているのに、共通してどれも深く熱く語られる。 収録が始まるまではどうなるかわかりませんでしたが、いざ始まってみると本当に楽しい番組です。観ている皆さんにも楽しんでいただけているのならばなにより。 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 (写真:『奥森皐月の公私混同』) 奥森皐月の公私混同ではメールを募集中。 募集内容はTwitterに定期的に掲載しているので、テーマや大喜利のお題などそちらからご確認ください。 宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp です、たくさんのメールをお待ちしております。 logirl公式サイト内「ラジオ」のページでは毎週アフタートークが公開されています! 本編の振り返りや最近観たお笑い、たまにまじめな話をしたりしなかったり。 こちらは無料でお聴きいただけます。過去回も遡れるので聴いてね。 (写真:『奥森皐月の公私混同 アフタートーク』) 「奥森皐月の公私混同」番組公式Twitterアカウントがあります。 番組やこの収録後記の感想などは「#奥森皐月の公私混同」をつけて投稿してください。たくさん感想つぶやいてね。いつもチェックしてます。 個人Twitterアカウントも開設しました! こちらもぜひフォローしていただきたいです。よろしくお願いします。 Tweets by okumoris 『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開。 心優しいlogirlさんのおかげで、公開直後の1時間は無料でご覧いただけます。このチャンスを機にまずは観ていただきたいです。 次回は、「愛が強すぎるゆえの衝撃行動が続々……!」を中心にお届けする予定です。 お楽しみに。
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堪忍袋の緒が切れた!奥森皐月を怒らせたメール|『奥森皐月の公私混同<収録後記>』第19回
車を運転できるようになりました、大人です。高校3年生・18歳の奥森皐月です。 私がMCを務める番組『奥森皐月の公私混同』が毎週木曜日18時にlogirlで公開されています。 毎月このブログでは収録後記として、番組収録のウラ話や収録を通して感じたことを奥森の目線で書いています。 今回は『奥森皐月の公私混同~冠ラジオがやりたい~』のまとめを書いてみます。基本は9月配信分のことが多いです。logirlの本編と、この記事をあわせてご覧いただくとより楽しんでいただけるかと思います。 logirl会員は月額990円ですが、最新回までのエピソードがたくさん視聴できます。もちろん『奥森皐月の公私混同』以外のさまざまな番組も観られます。 「厄介なときの彼女みたい」奥森皐月を怒らせたメールとは (写真:奥森皐月の公私混同 第44話「奥森さんを怒らせたい!」) 9月8日の配信では「奥森さんを怒らせたい」がテーマ。私が怒りそうなメールをリスナーさんに送っていただきました。 この企画をやりたいと言ったのは私です。もともとあまり怒りの感情がないため、怒ってみたいとは常日頃思っています。 怒らせメールはさまざまな角度から飛んできたので、非常におもしろかったです。 普段あまり怒らない私の堪忍袋の緒が切れる瞬間がありました。自分でも驚きましたが、すごく淡々とメールに反論していて怖かったです。もう少し「怒」のイメージに合うような姿を見せたかったのですが、一番厄介なときの彼女みたいなメール受けになってしまいました。 新たな自分に出会えた瞬間はぜひ観ていただきたいです。嫌な怒り方をしています。 芸術の秋!みんなのメールでひとつのアートを作ろう (写真:奥森皐月の公私混同 第45話「奥森皐月 初 個展『公私混同』」) 翌週配信は、芸術の秋ということで、個展を開くための作品案を募りました。 普段からアート展はよく観に行くのですが、現代アートと大喜利ってほぼ同じだと思っています。大喜利の答えを可視化するだけで作品になるのではないかと日々考えていました。 この回の楽しかったところは、各メールの作品が集まることによって最終的にひとつの展示ができるところ。みんなでひとつのものを作るような感覚でわくわくしました。 私を軸に考えてくださっているからか、全体的に作風に統一感があったのもおもしろかったです。 「学校で誰ともしゃべることがないから、暇つぶしに何度も読んでいたMONO消しゴムの説明書き」をはじめとしたノスタルジックな作品も、寂しさと儚さがあってよかったです。 「作品案を送ってください」なんて、かなり雑なお願いな気もしますが、きちんと企画に沿ったおもしろいメールがくるのがなによりうれしい。素敵なリスナーさんに支えられてここまで来ています。こういうことを本編で話すのは恥ずかしいから、ここにこっそり書くよ。 1時間まるっと、奥森皐月とリスナーが大喜利! (写真:奥森皐月の公私混同 第46話「大喜利公私混同カップスペシャル!」) 第46話では念願の企画「大喜利公私混同カップスペシャル」を開催しました。 毎週シンプルにリスナーと奥森が大喜利をするコーナー「大喜利公私混同カップ」。1時間丸々この企画だけできたら夢のようだとずっと思っていましたが、コーナー始動から1年のタイミングでようやく叶えられました。 4つのお題それぞれでMVPを決める、とてもシンプルな内容でしたが、とにかく楽しかったです。最高のメールがそろっていて、本当にあっという間の1時間でした。 当然のことですが、メールがたくさん来ない限りこの回は成立しないので、1時間も大喜利メールを読めるというのはかなりの奇跡。かさ増しに私もメールを送って、ちゃっかり採用されたのも楽しかったです。これは私が一番楽しんでいるだろうから申し訳ない。 実は番組リニューアル当初も同じラジオネームで投稿していたので、1年越しに奥森皐月が投稿していましたとネタバラシできました。 「大喜利公私混同カップ」を毎週やってきたこともあるのか、先日おじゃました大喜利ライブではいくつも回答ができました。知らず知らずのうちに力がついていたのならかっこいいですよね。 リスナーさんの回答がハイレベルなおかげで、私は被らない回答を考えることにいつも苦労していました。それだけたくさん送ってもらえているのがありがたい。 これまでの集大成のような放送になって幸せです。またこういう回もやりたいな。 全員優勝!「コレなら誰にも負けない」種目を募集 (写真:奥森皐月の公私混同 第47話「コレなら優勝運動会!」) 第47話では「コレなら優勝運動会」を開催。 昨今の小学校では運動会の競技で順位を決めないこともあるそうですが、それがどうにも腑に落ちない。そのようななか、好きなバンドがライブMC中に「全員優勝しようね~!」と言っていて「これだ」と思いました。全員が優勝すればいいだけの話でした。 どうせリスナーはかけっこで優勝できないだろうという偏見のもと、コレなら誰にも負けないという種目を送ってもらいました。予想していなかった角度から優勝していく人が続出して、とても楽しいメールテーマ。 印象深いのは「子供のころ低周波治療器で遊んでいたので、電流が流れるのに強い」というほぼ『HUNTER×HUNTER』のキルアのような人。そして「こまめにバックアップを取っているから、携帯が目の前で水没しても平気でいられる」という人。 検証はしていませんが、このふたりは紛れもなく優勝だと思いました。 どんなに些細なことでも、自分だけができることやほかの人より秀でていることがあるのではないかと思っています。非常にポジティブな企画。とりあえず『公私混同』を観てくださっている方には、全員に私から優勝を差し上げます。 リニューアルから1年。まだまだ加速する『奥森皐月の公私混同』 2021年の10月にリニューアルして約1年間、「冠ラジオがやりたい」という一心で全力を投じました。 5月には文化放送さんで1時間もひとりでラジオ特番をさせていただきました。紛れもなく『公私混同』を続けられていたからです。 また、ゲストに伊集院光さんをお招きしてラジオのお話をじっくり聞かせていただく夢のような時間も、この番組で叶えることができました。 (写真:奥森皐月の公私混同 第18話「伊集院光さんとラジオのはなし」) そのほかにも憧れの方とお話しできたり、テレ朝なのにラジオイベントを開催して豪華なゲストにお集まりいただいたり。 「ラジオじゃないけれど」というところから「ラジオじゃないからこそ」という番組になったと思っています。スタッフさんにもリスナーの皆さんにも感謝です。 唯一無二の放送はたくさんできたので、あとは私がホンモノのラジオパーソナリティになるだけですね。 そのときには、これまで以上にメールを送って応援してほしいです。もちろん『公私混同』はいつまでも観てくださいね。 「冠ラジオがやりたい」のタイトルはなくなってしまいましたが、その気持ちは今ももちろんあります。むしろ加速しているくらいです。 引き続き『公私混同』と奥森皐月をよろしくお願いします。なにとぞ! 『奥森皐月の公私混同』は毎週木曜18時に最新回が公開 (写真:『奥森皐月の公私混同』) 募集内容はTwitterに定期的に掲載しているので、テーマや大喜利のお題などそちらからご確認ください。 すべての宛先は s-okumori@tv-asahi.co.jp です、たくさんのメールをお待ちしております。 logirl公式サイト内「ラジオ」のページでは毎週アフタートークが公開されています! 本編に入りきらなかったトークから、ディープすぎる話、かなり聞き応えがあります。たまにまじめな話もしているかも。 こちらは無料でお聴きいただけます、聴いて。 (写真:『奥森皐月の公私混同 アフタートーク』) 『奥森皐月の公私混同』番組公式Twitterアカウントがあります。 今一番アツいTwitterアカウントだと思ってフォローしてほしいです。 番組やこの収録後記の感想などは「#奥森皐月の公私混同」をつけて投稿してください。 たくさん感想つぶやいてね。いつもチェックしています。 今日500円の手相占いに行って「何の仕事?」と聞かれたので「タレントです」と答えました。そこから5分間で13回くらい「オーディションをたくさん受けなさい」と言われました。あと、「話うまいしさんま御殿とか出たほうがいいよ」とアドバイスいただきました。出たいです。手相占い???(奥森本物) pic.twitter.com/J4FiRK9UU0 — 奥森皐月の公私混同は傍若無人 (@s_okumori) June 27, 2022 『奥森皐月の公私混同』はlogirlにて毎週木曜18時に最新回が公開。 心優しいlogirlさんのおかげで、公開直後の1時間は無料でご覧いただけます。このチャンスを機にまずは観ていただきたいです。 次回は、「番組リニューアル! 前代未聞のベスト3が連発??」を中心にお届けする予定です。 お楽しみに。
Daily logirl
撮り下ろし写真を、月曜〜金曜日に1枚ずつ公開
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藤本唯千夏(Daily logirl #128)
藤本唯千夏(ふじもと・いちか)2010年9月24日生まれ。北海道出身 Instagram:_icchan.f TikTok:ick924 撮影=石垣星児 ヘアメイク=渋谷紗矢香 編集=中野 潤 【「Daily logirl」とは】 テレビ朝日の動画配信サービス「logirl」による私服グラビア。毎週ひとりをピックアップし、撮り下ろし写真を月曜〜金曜日に1枚ずつ公開します。
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森﨑美月(Daily logirl #127)
森﨑美月(もりさき・みづき)2007年4月9日生まれ。神奈川県出身 Instagram:morisaki_mizuki_ ドラマ『猫カレ -少年を飼う-』(BSテレ東)志田こころ役で出演中 撮影=NAITO ヘアメイク=ACO 編集=中野 潤 【「Daily logirl」とは】 テレビ朝日の動画配信サービス「logirl」による私服グラビア。毎週ひとりをピックアップし、撮り下ろし写真を月曜〜金曜日に1枚ずつ公開します。
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藤﨑ゆみあ(Daily logirl #126)
藤﨑ゆみあ(ふじさき・ゆみあ)2008年2月16日生まれ。広島県出身 Instagram:yumia_fujisaki X:@FujisakiYumia 撮影=青山裕企 ヘアメイク=渋谷紗矢香 編集協力=千葉由知(ribelo visualworks) 編集=中野 潤 【「Daily logirl」とは】 テレビ朝日の動画配信サービス「logirl」による私服グラビア。毎週ひとりをピックアップし、撮り下ろし写真を月曜〜金曜日に1枚ずつ公開します。
Dig for Enta!
注目を集める、さまざまなエンタメを“ディグ”!
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アニメを愛するふたりがひも解く、ヒット作が生まれる理由──DJ・KO KIMURA×アニメ評論家・藤津亮太
KO KIMURA 木村コウ(きむら・こう) 国内ダンスミュージック・シーンのトップDJ。クラブ創成期から現在までシーンをリードし、ナイトクラブでの活動のみならず、さまざまなアーティストのプロデュース、リミックス、J-WAVE『TOKYO M.A.A.D SPIN』にてラジオDJとしてなど、国内外で活躍中。 藤津亮太(ふじつ・りょうた) アニメ評論家。地方紙記者、週刊誌編集を経てフリーのライターとなる。主な著書として『「アニメ評論家」宣言』(2003年/扶桑社、2022年/ちくま文庫)、『アニメと戦争』(2021年/日本評論社)、『アニメの輪郭』(2021年/青土社)などを出版。 『葬送のフリーレン』含め、数々の注目作品が並ぶ10月クールのアニメ。今回logirlでは、毎クール何十番組以上ものアニメを観ている大のアニメ好きであるDJ・KO KIMURAとアニメ評論家・藤津亮太とのアニメ対談を実現させた。ふたりが観てきたアニメ遍歴をたどりながら、アニメの在り方やこれからのシーンの変化、そして10月クールアニメの注目作など思う存分語ってもらった。 目次深夜アニメの始まりと現在異世界転生モノはおもしろい!?リアリティと丁寧さが求められるアニメ10月クールアニメの注目作は? 深夜アニメの始まりと現在 ──今回はアニメ対談ということで、おふたりにアニメについてのお話をたくさん伺えたらと思います。まずDJとしてご活躍中の木村コウさんの経歴から知りたく、音楽にハマるきっかけとは? 木村 初めは特撮の主題歌などのアニソンから音楽を好きになりました。小さいころ『超人バロム・1』(1972年)や『愛の戦士レインボーマン』(1982〜1983年)の曲のドーナツ盤を親に買ってもらったりして。実家が花屋なんですが、手伝いをすると時給が出るので、貯めたお金でレコードを買うというのを子供のころからしてました。まわりはキャンディーズとかを好きな人が多かったけど、僕はなんとなく反発する子で違うほうに行きたくて。だんだんアニソンから映画音楽を好きになってきたのが小学校高学年ぐらいですね。高学年になると学校で放送委員会を担当できるようになるので、給食のときに自分の好きな映画音楽『タワーリング・インフェルノ』(1974年)とか『ポセイドン・アドベンチャー』(1969年)、『ロッキー』(1977年)のテーマなどを流して、給食をまずくしてました(笑)。そこからフュージョン音楽、当時のバンドだとカシオペアとかほかの小学生が聴いてない音楽を掘ってました。CMで流れているフュージョンとかカッコよかったので。 藤津 どれも世代的にわかります! ちょうど80年前後に、音楽だけじゃなくてデジタルっぽいビジュアルのCMも出てきて。 木村 あと、SHŌGUN(ショーグン)のようなスタジオミュージシャン系音楽も聴いてました。なるべく同級生と被らない方向になんとなく……。 藤津 そのころからもう、今の道が決まってきてる感じなんですね。 木村 放送委員会をやってたときが楽しくて、だんだん音楽のことをやりたいなと思い始めてて。音楽を掘っていくにつれてファッションも好きになっていき、ヴィヴィアン・ウエストウッドなどのデザイナーの服がかっこよくて、次第に自身のファッションも決まっていきました。自分の知ってる知識をどうにかして活かせないかなと思ったとき、NYのHIP-HOPシーンで、DJのスクラッチが流行っているらしいと噂が流れてきて。僕も始めたかったけど、当時ターンテーブルは1台7万円くらいしてすぐ買えなくて……。中学校3年生の少年だったので、実家の手伝いをしてなんとかターンテーブルとDJミキサー1台を買えて。高校生になって夏休みにダムを埋めに行くバイトをして、もう1台を買って。貴重な夏休みを工事現場のおじさんと過ごしました(笑)。 藤津 レコードは大切に扱わないといけないものだから、スクラッチという技を初めて知ったときは「痛む!」って思った記憶があります。そういう使い方もあり得るんだ、と驚きました。 木村 DJするときには、違う2曲がキレイに重なってたりするんですよね。最初はそれがどういうことがわからなくて、小節のルールもよくわからなかったし。音楽的知識がないと2曲がうまく混ざらなくて、BPM(※曲のテンポ)を合わせるのも難しいので初めは手探りでした。教本とかもないので、いろんなMVとかを何度も止めて超チェックして。でもその元の音楽がなんなのかわからないから、一瞬映るレコードを見て「アメリカの〇〇というレーベルの曲だ」ってお店で探して。 ──当時のDJシーンはどんな感じだったんですか? 木村 チャラい系のユーロビートを流すところがほとんどでした。でも、僕はそこには行きたくなかったので、洋服屋さんで流すカセットを作ったり小さなNY風のDJバーでDJをさせてもらったり。音楽でいうとニュー・ウェーブからセックス・ピストルズからブラック・コンテンポラリー、Chicとかをかけたり。地元が岐阜県大垣市で、町内でも信号機がひとつしかないような地域で、町の小さいレコード屋には欲しいレコードがなかったので、長い時間かけて名古屋まで買いに行ってました。 藤津 僕はDJシーンに全然詳しくなくて、知り合いにアニソンDJをやってる人はいますけど。 木村 僕もアニソンは放送委員会時代からかけてました! 藤津 僕らの世代もですが、アニメが盛り上がるタイミングがあって、そのあと一度アニメシーンが切り替わるんですよ。あのころアニメが好きだったけどアニメから離れてしまった人が一定数いた時代があって。 木村 『機動戦士ガンダム』(1979〜1980年)が終わったぐらいですかね? 藤津 もう少しあとの1984年いっぱいでアニメブームが去ったということが、いろんなデータを突き合わせていくと見えてくるところがあって。だいたいどんなころかというと1983年の春が『幻魔大戦』、『クラッシャージョウ』、『宇宙戦艦ヤマト 完結編』。1984年が春に『風の谷のナウシカ』、夏に『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』。 木村 1990年代の半ば、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995〜1996年)や『天空のエスカフローネ』(1996年)のころからまた盛り上がったんですかね? 『銀河英雄伝説』のビデオっていつでしたっけ? 藤津 たしか1988年にスタートですね。 木村 『銀河英雄伝説』の時代はよかったですよね。まだ深夜にアニメ放送もやってなくて、ビデオで販売したあとにテレビ放送が始まって。そのあたりから深夜アニメ枠がちょっとずつ忙しくなってきた感じ。あかほりさとる先生(※小説家/マンガ原作者)が原作のアニメ『セイバーマリオネット』(1996年)、『MAZE☆爆熱時空』(1997年)が放送され始めたあたりからまた盛り上がりましたよね。 藤津 1984年でシーンが切り替わったあと、当時、幼かった視聴者が中学生になったころに『エヴァ』が現れた感じです。その直前に『美少女戦士セーラームーン』(1992〜1997年)が大ヒットして、その熱気が『エヴァ』につながる感じです。『セーラームーン』がすごいのは、オタクも小学生の女の子も、男女問わず熱狂してましたからね。実はエヴァとセーラームーンは、キャストが被ってるんですよ。 木村 ああああ! たしかにそうですね。 藤津 『エヴァ』の庵野秀明監督はすごく『セーラームーン』が好きで、制作にも参加してたりするんです。『エヴァ』は、1997年春に劇場版『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』の公開が決定して、テレビシリーズが深夜帯で再放送されたんですよ。それの数字がめちゃくちゃよくって! テレビ東京が「じゃあ深夜に積極的にアニメ枠を設けよう」と判断して、そこから深夜アニメが増えていくんです。今のようなかたちの深夜アニメが増えたきっかけのひとつが、『エヴァ』再放送だったんですね。 木村 今は深夜アニメを観るのでどんどん忙しくなってます(笑)。逆に子供向けアニメが少なくなってきましたもんね。『「鬼滅の刃」竈門炭治郎 立志編』(2019年)は深夜放送が先でしたし、昔は夕方に放送されてたアニメ自体がほぼ深夜になっちゃって。とはいえ、今の子はNetflixとか配信サイトで観れちゃいますからね。 藤津 あとハードディスクレコーダーが出てきて、録画が便利になりましたよね。我々、VHS(※ビクターなどが販売していた家庭向けビデオテープレコーダ)や、ベータマックス(※ソニーが販売していた家庭向けビデオテープレコーダ)のころから体験している世代からすると、こんなに便利かと……。 木村 本当に超便利ですよね。ビデオでいう3倍的な感じで録っててもすぐいっぱいになるぐらいアニメ録画してますけど(笑)。録画してるアニメをずっと観なきゃいけなくて、毎日録画を消化するのが大変で。毎期、新しいアニメは50番組ぐらいあるじゃないですか。全部観なきゃいけないとなると……。完全に子供向きのものと、僕が音楽の仕事をしてるので音楽絡みのアニメは省いてますが。 藤津 とはいえ、そのジャンルを省いても、かなりの数ありますよ(笑)。実際に木村さんの録画リスト画像を見せてもらいましたけど、絨毯爆撃的にご覧になってる感じで、すごいなって。 木村コウの実際の「録画リスト」の一部 木村 とりあえず1話だけは全アニメ観てます。観なきゃいけないというか、観てないと不安になるというか。誰と話をするわけではないけど、知らないって悲しいですよね。音楽では“学者聴き”っていうんですけど──学者の人は、自分の守備範囲より2割ぐらい広く知識を入れるみたいな。 藤津 チェックをしておこうってことですね。 木村 何かのときに合わせられますからね。あと、アニメ好きって全員同じだと思われません? アニメ好きの人はたくさんいるけど、それぞれ趣味が違って。クラブ音楽も同じで、クラブ音楽好き=クラブ好きといわれてしまって。「君たち話してみたら」って、知らないふたりをくっつけようとする人がけっこういるんですよね。アニメ好きと言うと、よくそうされて。話し出してみるけど、お互い腹の探り合いがいつも始まります(笑)。 藤津 どの範囲が好きなのか、わからないですもんね。 木村 だから会話が平行線なんですよ。この間も初めて会った人とアニメの話をしたら、途中からちょっと守備範囲が違うかなと思って。過去観てたアニメを遡りながら接点を探して、結果『少年アシベ』(1991年)とかになるみたいな。相手は「コウさんとアニメの話ができておもしろかったです! またお願いします!」と言ってくれたけど、僕は「次は何を話せば……」って(笑)。藤津さんは評論家をされていらっしゃるから、とにかくたくさん知ってないとで大変ですよね? 藤津 できるだけ観ようと思ってますが、数が多いのでね……。仕事関係で、過去作品で観直さなければならないものもわりとありますし。配信だと最新でアップされた作品を2話ずつぐらいまとめて観ていくようにしてます。1話ずつ連続していろんな作品を観るとほかの作品と印象が混ざってしまうので、ひとつの作品を連続して観たほうがしっかり覚えられます。 木村 少なくとも3話ぐらい連続で観たいですね。 異世界転生モノはおもしろい!? 藤津 僕、よく言うんですけど、「好きなアニメがある」と「アニメが好き」は違っていて。多くは「好きなアニメがある」人なんです。ただ、僕らはジャンル自体に興味があるといいますか。好きなジャンルの山の形を確認したいのであって、その山を形成している一つひとつへの関心とはまた別に、少し違う見方でアニメを観てるんです。ただ、個別のアニメをちゃんと観続けてないと、その山は何年かごとに形が変わってしまうんですよね。 木村 僕は昔からSFっぽいのが好きなのもあって、今はやっぱり異世界転生モノが好きですね。原作がマンガやラノベのものが多いですけど、そこまでは追えてないです。 藤津 異世界転生モノって、もともと小説投稿サイト『小説家になろう』などからスタートしているものが多いんですが、聞くと、あそこは『(週刊少年)ジャンプ』(集英社)よりも過酷ですね。デイリーでランキングが出るので、毎日読者を飽きさせずに更新をするのにすごく特化していて。だから流行の伝播と進化の度合いが早いんです。早すぎるぐらい。そのあたりのトレンドが、数年遅れでアニメ業界に現れてくるんです。異世界転生モノは、“普通に転生して、強い能力でうまくやっていく”というストーリーだったのが、最近だと転生して自動販売機になったりとか、スローライフを送ったりとか、変化球もいろいろあって(笑)。その進化の速度にアニメ業界が振り回されてる感はありますね。 木村 なるほど、だからラノベ作品が多いんですね。アニメでおもしろかったら原作も読む人もいますが、そっちまで手を出しちゃうと忙しすぎて……。 藤津 そっちはそっちで量がたくさんありますからね(笑)。 木村 買いまくらないといけなくなるから「異世界破産になる」と僕の友人が言ってました(笑)。異世界転生モノだけじゃなくてもってなるとよけいに。 藤津 僕もよっぽどのことがない限り、原作には手を出さないようにしてます。マンガ原作で原稿書くときに照らし合わせてアニメがどう工夫してるか確認したいときは買いますけど。それ以上のことをすると、大変なことになっちゃいます(笑)。 木村 原作はあんまりでもアニメになっておもしろくなる作品も多いですよね。『鬼滅の刃』はアニメになってさらにおもしろくなったと思います。 藤津 『鬼滅の刃』はアニメで跳ねましたね。原作は、連載当初はそこまでバカ売れしていたわけではなかった印象です。 ──木村さんは、異世界転生モノ以外だと、最近気になるジャンルは? 木村 やっぱりSFモノが好きですね。あと、キャラ萌えしない系が好きかな。好きな方向のキャラはありますが、この声優さんだからほかの作品を観ようとか、トークライブに行こうとかはできてないですね(笑)。 藤津 そっちはそっちで沼ですからね(笑)。SFモノが好きというのは世代的なところもありますよね。当時、映画『スター・ウォーズ』が流行っていましたし。1970年代後半から1980年代初頭に多感な時期だった世代は、SF好きが多いと思います。 木村 僕はもう50歳超えてるんですけど、こういう年齢になっても、アニメを観てられるような時代になったのはよかったと思います。音楽でもナイトクラブのような場所で最先端音楽をやってられますし。先日ナイトクラブでDJしていたら20歳ぐらいの女の子に「コウさんっていくつなんですか?」と言われて。すでにアラフィフですらないし、アラカンだけど微妙な感じで、だから「四捨五入して100歳」と伝えるようにしてますけど(笑)。 藤津 僕も、もうまわりが若いと、ひとりで平均年齢上げてると思っちゃいますよね(笑)。1960年前後生まれの人たちが、アニメを観るのが自然な最初の世代なんです。わかりやすくいうと庵野秀明監督とか、今上天皇と同世代で、子供のころ買ってもらった本が『図解 怪獣図鑑』(1967年/秋田書店)みたいな世代ですね。1963年に本格的テレビアニメ第1号の『鉄腕アトム』が放送開始なんですが、そこからテレビアニメや特撮番組が作られていく過程で、彼らが一緒に年齢を重ねていきます。そして、この人たちが大学生になるタイミングで『ガンダム』が来る。彼らが視聴者・ファンの中核を形成して、アニメを観る年齢を少しずつ上げていってくれてるんです。 木村 それはありがたいですよね。ここ数年、エヴァをやっている鷺巣詩郎(※さぎす・しろう/音楽家:『エヴァンゲリオン』シリーズ全作のアニメ音楽、映画『あぶない刑事』や『シン・ゴジラ』などあらゆる映像音楽を手がける)さんの音楽を、今時のダンスミュージックにするという仕事をやってます。余談ですけど、鷺巣さんは実際に特撮のスタジオにいることで作曲をすることになった、という話を伺いました。 藤津 鷺巣さんは『マグマ大使』(1967〜1968年)などを作っていた、ピープロ(※日本のテレビアニメ・テレビ番組・特殊映像の製作会社「株式会社ピー・プロダクション」)の社長(うしおそうじ)さんの息子さんなんですよね。 木村 だから小学生のころからスタジオで手伝いをしていたみたいですね。「みんな人生のターニングポイントあると思うけどいつ?」という話になったんだけど、鷺巣さんは「生まれたときがターニングポイントでした」っておっしゃっていて(笑)。すごいな、時代を作ってきた人だなと。 リアリティと丁寧さが求められるアニメ ──作品のジャンルはもちろん、アニメ音楽もどんどん変わってきてますよね? 木村 最近のアニメはレコード会社が推してるアーティストをアニメに入れ込もうと、少し製作委員会っぽい匂いがしますよね。20年ぐらい前の『交響詩篇エウレカセブン』(2005〜2006年)だと、京田知己監督や脚本家・佐藤大さんがダンスミュージック好きで、作品の中でテクノを流して注目されてたんですよね。僕も1曲だけ作らせてもらったんですが、のちに映画版を作る際は「アニメ具合がいろいろと変わって、自分がかけたい音楽を作中でかけられなくなった」と監督から聞きました。 藤津 『エウレカセブン』の全音楽を集めたCDが販売されてますが、テクノしか入ってないディスクもありますからね。 木村 作中に代々木公園みたいな場所でDJパーティーをやるシーンがあるんですけど、実際にそういうイベント(※1998年より代々木公園で開催されている野外フリーフェス『春風』)があって、現実とリンクしてるんです。 藤津 僕は『エウレカセブン』を何回か取材をしてるんですけど、公園のシーンは「明け方までみんなで騒いだあと、、ダルダルになっている空気の中で曲がかかってる」というイメージで作られているそうなんですよ。 木村 とりあえずその場でヘラヘラ動いてると楽しくなってくるみたいなシーンで、まさに実際もそうですし、リアルでとてもいいシーンでした。最近、DJアニメがたくさん出てきてますが、少しリアルから離れているかなと。「このグルーヴが〜」とか「バイブスが〜」とか実際は言わないですから(笑)。 藤津 (笑)。そういう意味ではDJがキャラ化したんですかね。「こういうことを言ってそう」みたいなね。ほんと音楽系のアニメ増えましたよね。 木村 最近はアニソン音楽にいろんなシーンの方が入ってきて、話題にはなりますけど、定番のアニソンが懐かしくてたまに聴きたくなってしまいますよね。 ──木村さんは本当に多くの作品を観られていますが、好きな監督の作品はあるんですか? 木村 そこはあまり関係なく観ています。逆に製作会社のほうが気になります。でも、基本的にはそういうのには縛られずになんでもチェックするようにしてます。SF以外だと、たとえば『君に届け』(2009〜2010年)はよかったですね。『四月は君の嘘』(2014〜2015年)や、最近では『わたしの幸せな結婚』(2023年)もストーリーがいいなと。『わたしの幸せな結婚』といえば、友達がフランス人の女性と結婚したんだけど、奥さんが『わたしの幸せな結婚』が好きなんですって。「Crunchyroll」(※海外の定額制ネット配信サービス)があるから、日本の最新アニメを観られるみたいで。普通に『SPY×FAMILY』(第1期:2022年、第2期:2023年)がいいとか、『モブサイコ100』(2018年)がいいとか言ってて、アニメの話をしているんです。改めて世界でアニメが流行ってるんだなと実感しました。 藤津 2015年ころから配信ビジネスが世界的に拡大して、日本のアニメがほぼ時間差なしで海外に届くようになったんですよね。以前は、海外のアニメファンはすぐには日本の作品を観られなかったので「日本でこういう新作アニメがあるらしい」という情報だけあって、そこを海賊版が補ってたんです。 木村 だから古いアニメとかだと、外国語字幕がついてるものがあるんですね。 藤津 80年代から海外では供給と需要のギャップがずっとあったのが、配信ビジネスでかなり解消されて、世界の配信会社に大量のアニメが売れていて。だから、現在アニメが活況なんです。たとえば『転生したらスライムだった件』(第1期:2018年、第2期:2021年)なども北米ですごい人気があるんですよ。その売り上げが次の作品の費用になるので、作品が増えていく仕組みになってるんですね。 木村 『ジャンプ』も「MANGA Plus」(※海外向けマンガ誌アプリ)で読めるようになりましたもんね。それぐらい海外では流行ってますからね。 藤津 アニメが売れると原作が紙で売れる。『NARUTO -ナルト-』(原作:岸本斉史)がまさにそのパターン。だけど今、出版社は「MANGA Plus」で英語でも読めるようにして、おそらくは最初のタッチポイントをマンガに切り替えたいと思ってるんです。その後にアニメが人気になったほうが出版社にとってはうれしいわけで。今、アニメビジネスは転換期だなと思っています。 木村 本当にそうですよね。 藤津 僕は大学で20歳ぐらいの学生にアニメ産業の歴史を教えているんですが、彼らは子供のころから動画共有サイトが当たり前で、中学生ぐらいからは配信サイトが主流になってる。テレビを観る習慣がない子ばっかりなわけですよ。「君たちはこれが当たり前だと思ってるかもだけど、この10年ぐらいで急激に起きたことで、このあとまだどうなるかわからない。今がめちゃくちゃ過渡期だよ」という話をしてます。テレビという柱がしっかりあって、そこにいろんな枝がついてるという状況じゃなくなったんです。テレビ局も放送外収入を求められる時代で、もっと積極的にアニメにコミットして自社の収入として入れられるように各社動いてる感じですよね。だから、地上波でアニメの枠が増えてるのは、視聴率が取れるからではないんですよね。この作品にコミットして長く運用していくとか、何回か続けているうちにそのうち大当たりが出るかも、という期待なんですよね。 木村 先行投資みたいなもんですよね。 藤津 それこそテレビ朝日だと「NUMAnimation」(※2020年から“沼落ち”をコンセプトに設けられた深夜アニメ枠)がありますよね。おそらく『ユーリ!!! on ICE』(2016年)が大ヒットしたことを機に、設けられた枠なんだと思います。 木村 『ユーリ!!! on ICE』は、おもしろかったですよね。 藤津 フィギュアスケートをあそこまでアニメで描くのはすごい。フィギュアスケートを全12話で描く上で3回は大きい試合がないとダメだろうと僕は思ってたんですよ、練習シーンを除いて。それをやりきれるの?って思っていたら、『ユーリ!!! on ICE』はやりきりましたね。ただ大変なのは、ビジュアル表現含めそういうふうに、「すごいことをやった」のが、その後のアニメの当たり前になっていくのは、ファンとしてはうれしいけど、同時に大変そうで。たとえば『黒子のバスケ』(2012〜2015年)とかも『SLAM DUNK』(1993〜1996年)よりも遥かに丁寧にバスケシーンが描かれるようになっているわけで、アニメの現場は大変そうだなと思います。 木村 2003年、『LAST EXILE』のころからやたらキレイな絵が出てきて驚いきました。キレイな絵だとより引き込まれやすい傾向はありますよね。 藤津 インパクトがありますからね。この間、大学生の息子に『呪術廻戦』(MBS/TBS系)の渋谷でのバトルの絵がすごかったから「観て!」って言われましたよ。家族がよく使う渋谷駅も出てるからって。そのシーンだけ見せられましたよ(笑)。 木村 それでいうと、聖地巡礼が『らき☆すた』(2007年)や『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006年)のときから一般的になりましたよね。聖地を巡ることを考えて作られてるなって思うこともあります。実家(岐阜県大垣市)の近くが『聲の形』(2016年)の聖地なんですけど、まさにここで遊んでたなっていうシーンがあって。 藤津 親水公園みたいなところ出てきますよね。 木村 自分も『灼眼のシャナ』(2005〜2006年)の聖地・大宮や『らき☆すた』の聖地は行きたいって思って行ってしまいました。『ノエイン もうひとりの君へ』(2005〜2006年)のために函館まで行って、「本当にハリストス正教会がある!」って興奮しました(笑)。 藤津 それはすごいですね(笑)! 2000年代に入って、アニメでもロケハンするのが当たり前になったんです。最終的に書く風景は架空でも、想像で描くより実際にその土地の街路樹や古い建物の古び方を見て、街の雰囲気から丁寧に作るとアニメのリアリティが増すんです。あと厳密にいうと、シナリオハンティングにも少し近いものでもあります。こういう空間があるなら、こういうシーンに使えるとかを見つけたり。あと、デジカメのおかげで資料写真を大量に手に入れられるようになり、場合によっては、撮ってきた写真をそのまま画面の中に反映することも増えました。 木村 リアルと重なるとやっぱり視聴者として、現実で見つけるとうれしいですもんね。田園調布に行ったとき『フルーツバスケット』(2001年)のシーンがあってうれしかったですし。 藤津 実写や映画のロケ地と違うのは、アニメの聖地巡礼に行くと二重映しになるんですよ。拡張現実じゃないですけど、実写だと「ここだな」で終わるんですが、アニメだと「ここが実際の風景で、アニメだとこうなってるのか」に加えて、そこにさらにキャラクターが重なって見えてきて、いろんなレイヤーが重なる感じが楽しいところなんですよね。 木村 現実世界では年月が経っていても、アニメの中だと描かれた時代の景色に一瞬で戻ることができるのもいいですよね。 藤津 原恵一監督の『カラフル』(2010年)という映画は、再開発中だった二子玉川が舞台なんです。だから今はもうない景色なんだけれど、映画の中には作ってる最中の工事現場が残ってるという。当時、そのあたりを車で通ったときに「ああああ! 『カラフル』に出てきた交差点だ!」と驚きましたもん。 木村 たしかに土地を見たら、作品がパッと浮かぶというか。本当におもしろいですよね。 10月クールアニメの注目作は? ──ここまでにいろんな作品が出てきましたが、現在放送中の10月クールの作品も魅力的な作品が多いですよね。 木村 『葬送のフリーレン』(日本テレビ系)が話題になってましたが、ほかに話題になってるものってどの作品なんですか? 藤津 まわりで出来栄えがいいよね、と話題になっているのは『オーバーテイク!』(TOKYO MXほか)ですね。 木村 『オーバーテイク!』はおもしろいですよね! 藤津 この作品はオリジナルなので期待が高いというか。 木村 僕はF1が好きなので観ちゃいますね。これ原作ないんですか? 藤津 ないんですよ。取材してゼロから作ってるので、観てる側も先の展開もわからないから新鮮ですよね。大変そうなレースシーンもとても丁寧に作っていて、すごいなと思います。あとは『薬屋のひとりごと』(日本テレビ系)ですね。ちょっとミステリーっぽい謎解き要素もあって。 木村 初回はスペシャルで90分ほどありましたよね。初回90分放送は『【推しの子】』(2023年4〜6月/TOKYO MXほか)のときからやってますし、『葬送のフリーレン』もそうでしたが、番組サイドが推したいからなんですかね? 藤津 狙って初回ロング放送にしてる作品もあると思います。『【推しの子】』は序盤のストーリーをまとめて観てもらったほうが、その後の新展開に入っていきやすいので、まとめて放送したのかなと思います。物語のセッティングとしてまずはここまで観てほしい、と。『金曜ロードショー』枠で放送した『葬送のフリーレン』は狙ってると思います。できるなら『鬼滅の刃』ぐらい大きく育てていきたいという期待があってのことだと思います。 木村 ヒットが出たらアニメの主題歌は儲かったりするみたいで。僕の知り合いが某アニメの主題歌を作ってるんですが「コウくん、アニメって儲かるね(※小声で)」って(笑)。シリーズものだったんだけど、シリーズ1で家が建ったと言ってました。僕はお金儲けというより、とにかくアニメが好きなのでアニメの仕事はいつもやりたいなと思っているんですが、仕事じゃなくて趣味としてやりたい。アニソンDJをやればと言われることもあるけど自分の手の内を見られてる感じがして。「ああ、こういうの好きなんだ……」とオタクの人に超上から目線で見られる気がして恥ずかしくてできません(笑)。けど、アニメには何かで参加したいです。 ──このあとの展開において、期待値が高い作品はどれでしょうか? 木村 『アンダーニンジャ』(TBS)はどうなるんだろうって、気になりますね。だんだん話がつながってきたけど、最終的に何が目的かまだわからないからよけい気になります。 藤津 あれは、どうなるんでしょうね(笑)? 『アンダーニンジャ』の笑いはけっこうオフビートじゃないですか(笑)。深夜アニメの中ではけっこう攻めてる企画だなって思います。あと、想像よりずっとジャンプっぽくておもしろいなと思ったのは『アンデッドアンラック』(MBS/TBS系)。 木村 キャラも含めてジャンプっぽいですよね。やっぱりジャンプ作品は外さないというか。 藤津 設定がかなり変なのにツボを押さえてあるのと、「ナンバリングされてる幹部と次々戦っていく」という展開に持ち込むあたりがいかにもジャンプで。そういう外枠がしっかりしているからキャラクターも楽しめるし。あとカラーの違いでいうと、『SHY』(テレビ東京系)もおもしろい。これは『(週刊少年)チャンピオン』(秋田書店)なんですよね。ジャンプでスーパーヒーローを日本版にアレンジすると『僕のヒーローアカデミア』(2016〜2023年)なんだけど、チャンピオンだと『SHY』なんだなって。 木村 たしかに! チャンピオンや『(週刊少年)サンデー』になるとヒーロー像が変わってきますもんね。それでいうと『NARUTO』もヒットしましたよね。DJしてると、DJブースの向こうから携帯画面を見せてきて曲のリクエストをしてくる人がいるんですが、海外で、この10年ぐらい「NARUTO」って文字をタイプして、「お前、日本人ならNARUTO知ってるだろ?」ってアピってくる人が増えたんです。 藤津 10年前ぐらいかな、動画投稿サイトとか見てると『NARUTO』の走り方をマネをしてるアメリカの若者がけっこういるんですよ。そこまで普通に伝わってるんだって思いましたけど。80年代にビデオが海外にも流通することになり、日本アニメにもおもしろい作品があるぞ、とアメリカの業界内で話題になるんです。『トイ・ストーリー』(1995年)のジョン・ラセターとかも、1980年代初頭に、宮崎駿監督の存在を知ってたんですよ。だから『となりのトトロ』(1988年)の制作段階で、ジョン・ラセターはジブリを訪ねてるんですよ。『広島国際アニメーションフェスティバル』に自分の初期のCG『レッズ・ドリーム』(1987年/ピクサー・アニメーション・スタジオが制作した短編アニメ)を持ってくるときだと思うんですが「ジブリに行きたい」と、尋ねてたと。その流れで『AKIRA』(1988年)とか『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年)とか、向こうの一般的な人たちは知らないけど、“ミュージシャンズ・ミュージシャン”的にマニアックな人たちは知っているという。 木村 海外の人は『攻殻機動隊』系のジャンル好きですもんね。それこそウォシャウスキー兄弟監督の映画『マトリックス』(1999年)を観たときに「そのまんまやってるな」って思いました(笑)。 藤津 グリーンの文字でちょっとずつ決まるタイトルバックとか、『攻殻機動隊』の雰囲気を自己流にうまく持っていった感じですよね。話は逸れましたが、10月クール作品がほかにも……。 木村 『はめつのおうこく』(MBS/TBS系)もおもしろかったですね。 藤津 おお、僕はまだチェックしきれてないですね。いや、全然話が尽きないですね(笑)。 木村 毎クール、話をしたいぐらいです(笑)。本当にアニメは心を豊かにしてくれます。 撮影=服部健太郎 取材・文・編集=宇田川佳奈枝
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気づいたら“天才子役”と呼ばれていた 壁を乗り越え手にした美山加恋の “ふたつの武器”
美山加恋 1996年12月12日生まれ、東京都出身。2002年に子役デビューを果たし、ドラマ『僕と彼女と彼女の生きる道』(フジテレビ)で一躍脚光を集めると、ドラマ『ちびまる子ちゃん』シリーズ(フジテレビ)や『受付のジョー』(日本テレビ)など数々の作品に出演。ドラマ、映画のほかミュージカル『ピーター・パン』や舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』にも出演して話題に。また、テレビアニメ『キラキラ☆プリキュアアラモード』、『アイカツ!』シリーズ、映画『かがみの孤城』など声優としても活躍。現在、ドラマL『around1/4(アラウンドクォーター)』(ABCテレビ)にヒロイン・平田早苗役で出演中。 2002年に子役デビューを果たし、一度も活動を止めることなくドラマ、映画、舞台、声優とシーンを問わず活躍し続けてきた。子役としてのイメージが強かったが、2022年に俳優20周年を迎え、大人の女性としてさらに経験を積み重ね次なるフェーズへと踏み出している。そんな彼女が2023年夏、新たに挑戦するのが“25歳の壁”を描く恋愛群像劇『around1/4(アラウンドクォーター)』。赤裸々なテーマをもとにした本作で同年代ヒロインを演じることへの覚悟や想い、そしてこれまでの“俳優・美山加恋”の人生を振り返ってもらった。 目次偶然が重なりスタートした芸能活動“新しい自分探し”苦悩と葛藤を抱えた10代幻のように過ぎた撮影は忘れられない“青春”「楽しまないともったいない」と思えるようになった20代 偶然が重なりスタートした芸能活動 ──去年デビュー20周年を迎えられましたが、ご心境はどうですか? 美山 私にとっては、芸能活動が人生そのものなんですよね。だから「やっと」とか「長かった」とか、そういうのではなくて。「またひとつ大人になったな」という感覚ですね(笑)。 ──たしかに、デビューが5歳ですからね。 美山 私がこの世界に入ったのは、偶然だったんです。マンガ雑誌『ちゃお』(小学館)を読んでいたら、たまたま芸能事務所のレッスン生募集の広告を見つけて、お母さんが前の事務所に入れてくれました。そのときは「映像に出たい」とか「舞台に出たい」と考えてはいなかったんですけど、偶然オーディションがあって、偶然受けたら偶然合格して、偶然デビューできた感じで。 ──偶然が重なって気づいたら女優になっていた、と。 美山 流れに身を任せたスタートでした。ちゃんとお仕事をするようになった最初のターニングポイントでいうと……やっぱり2004年にフジテレビで放送された『僕と彼女と彼女の生きる道』は大きかったなと思います。 ──最高視聴率が27.1%の大ヒットドラマですからね。オーディションのことは覚えていますか? 美山 オーディションを受けに行く話をしたとき、女優の賀来千香子さんに「あなたなら絶対にこの役を取れるから、がんばってきなさい」と言われたのをすごく覚えています。そこでスイッチが入ったんですよね。賀来さんの言葉を信じて、自分なりにがんばったら、本当に合格をいただきました。 ──主演は草彅剛さんで、その娘の小柳凛役に大抜擢されましたが、これがいかにすごいことかっていうのは、幼いながらに感じていました? 美山 そのころ、あまりテレビを観ていなかったので、私自身は事の大きさをちゃんとは理解できていなかったです。それでも国民が愛するSMAPの草彅さん(演じる小柳徹朗)の娘役ということで、「これはとんでもないことなんだよ!」とまわりの方から言われたのは覚えています。ちなみに去年、ABEMAで放送されている、新しい地図さんの番組『7.2 新しい別の窓』に出させていただいて、約6年ぶりに草彅さんと再会したんですよ。「25歳になりました」と伝えたら「大人になったね。でも、加恋はあのころから大人だったよね。落ち着いていたよ」と言っていただきました。 ──じゃあ、年齢以上に大人っぽかったんですね。 美山 話している内容が大人だったみたいですね。あと、細かくは覚えていないですけど、草彅さんがセリフを忘れていたら、私がそのセリフを教えてあげるとか、そんなことをしていたらしいです(笑)。 ──素晴らしいですね! そのときは何歳ですか? 美山 5歳から7歳の間に作品を撮っていたので、小学1、2年生ですかね。 ──世間では“天才子役”といわれていましたけど、美山さん自身はその自覚がなかったとか。 美山 そうなんです(笑)。学校に行ったら上級生の子から「加恋ちゃん、芸能活動をしてるんだね!」と言われて、「誰から聞いたんだろう?」ぐらいの感じでしたね。 ──不思議に感じてることが、逆に不思議ですよ(笑)。 美山 そもそも、自分がテレビに出ている認識がその当時はなくて。初めて「自分はテレビに出ているんだ」と思ったのが『めざましテレビ』(フジテレビ)の占いコーナー。1位は射手座とか書いてあるじゃないですか。なぜか、そこに私の顔が映ってたんですよ(笑)。毎朝、学校へ行く前に『めざましテレビ』の占いコーナーを観ていたので、「え、私がテレビに出てる!」みたいな。初めての衝撃でしたし、逆にそれぐらいテレビを観ていなかったんです。だから自分が“天才子役”といっていただいていたのも、当時は認識していなくて。そういうのって、あとあと気づくんですよね。 ──小学生のころには「このまま私は女優をやっていくんだ」と考えていました? 美山 いえ、考えていなかったです。将来の夢を書く授業があって、そこにはパティシエとか飛行機の操縦士と書いていました。 ──まわりから「いやいや、女優でやっていきなよ!」とは言われなかった? 美山 言われなかったです(笑)。お母さんからは「無理はしないでね、いつ辞めてもいいんだからね」とずっと言われていたので、そんなに女優を意識していなかったです。それに職業として認識できていなかったので、楽しい習い事の延長というか「今日も現場へ行くのうれしいな!」と思っていました。 “新しい自分探し”苦悩と葛藤を抱えた10代 ──中学生になって、徐々にお仕事が落ち着いたことで、冷静に将来のことを考えたそうですね。 美山 学校で過ごすことも、友達といる時間もすごく増えまして。「こういう過ごし方もあるのか」と、そこで初めて普通の学生生活を知りました。それが、すごく楽しかったんですよね。一方で、このままお仕事をしなかったら、私は女優の仕事をやらなくなってしまうのかな?と初めて不安になったんです。「このままでいいのかな?」って。不安になるってことは、やっぱり“お芝居が好きで現場が好き”ということだから、学校も楽しいけど仕事もがんばらなきゃ!と自分を見つめ直しました。 ──それで学校も仕事も大事にしたいと。 美山 学校生活も楽しかったですけど、現場にいる楽しさとは全然違うからこそ、どちらかひとつに絞ることができなかったです。「女優という居場所をなくしたくない」と思っていたので、取り残されないように必死でしたね。常に未来のことを想像して、そのたびに不安になって、というのを繰り返していました。そうはいっても、先のことを考えてもわからないことばかりなんです。どんな仕事が来るのかもわからないし、いつ自分がテレビに映れるのかもわからない。運もすごく必要な職業なので、想像したって全部が思いどおりにいくことなんてないんだな、と心で覚悟していても、やっぱり不安が出てくる。 ──そんな苦悩と葛藤を中学生で抱えて……。 美山 一回でも仕事を辞めてしまったら、もう戻れないだろうな、と感じていたので、活動を途切れさせたくなかったです。だけど久々に現場に戻ったときは、すごく怖かったんですよ。「私は女優でいいのかな?」みたいな。「お芝居するのは久しぶりだけど、私のお芝居は合っているんだろうか?」と不安を感じたときがあって。でも、そこで「諦めよう」じゃなかったんですよね。「お芝居は辞めちゃいけない」「続けなくちゃいけない」と思ったのを覚えています。 ──そこまで追い込まれていたのは、どうしてだったんですかね? 美山 いろいろとタイミングが重なったんですよね。それまでは子役として、お母さんと一緒に台本を読んで教えてもらっていたし、レギュラー出演のドラマがわりと多くて。ずっと同じスタッフさんと仕事をしていたので、ドラマの現場をホームのように感じていたんです。だけど、中学生になったころから、レギュラー番組よりもゲスト出演が増えて。自分ひとりで台本を読んでお芝居を考えるようになったことで、急に独りになった感覚に襲われました。「独りぼっちで、この世界と戦わなくちゃいけないんだ」と思ったんです。そうすると、この世界に私のお芝居は通用するんだろうか?とわからなくなってしまって。ちょうど仕事が減ってきたときと、不安を抱えたタイミングがばっちりハマったんです。 ──その不安はどのように脱したんですか。 美山 “自分の形”みたいなものを、自ら決めているつもりはなかったんですけど、どこか決められているような感覚になっていて。高校生のころに「この殻を破らないと、新しい自分を見てもらえないな」と思いました。そこから18歳のときに、歌ったことも踊ったこともなかったけど、ミュージカルに挑戦したりとか、同時に2.5次元がちょうど流行り出したころに、ご縁があって舞台『「終わりのセラフ」The Musical』に出させていただいたりして。なんといっても、声優さんとお仕事をご一緒する機会が増えたんですね。それまで声優さんが舞台に出られるイメージがなかったんですけど、「声優さんは舞台にも出るんだ!」と衝撃を受けて。「私も声優さんみたいに、自分のイメージ以外の役も幅広く演じられるようになりたい」と思った矢先に、アニメ『エンドライド』が決まったので、自分の中ではすごくつながっている数年でしたね。 ──舞台といえば、『ハリー・ポッターと呪いの子』で嘆きのマートル役とデルフィー役を演じられて大きな話題になりましたね。しかも、マネージャーさんが「うちの美山はすごいんです!」とまわりの関係者に言っていたとか。 美山 自己肯定感が爆上がりですね、本当に! 一同 (笑)。 ──何がそう思わせたんですか? マネージャー 映画のイメージが強い役ですし、体力的にも大変な役なのに、軽々とやってみせるからよけいにすごいと思ったんですよね。舞台で見ると、すごく大きく見えました。 ──最も身近な方のそういう言葉が、自分の成長を感じられますよね。 美山 そうなんですよね。あまり自分で自己肯定感上げることができないので、すごく助かっています。 幻のように過ぎた撮影は忘れられない“青春” ──『ハリー・ポッター』のご出演も驚いたんですけど、現在放送中のドラマL『around1/4 (アラウンドクォーター)』でヒロイン・平田早苗役を演じることも驚いたし、覚悟が必要だったのかなと思って。 美山 あ、そうですか? 私は「ありがとうございます!」と思って、すぐにお受けしました。1年みっちり『ハリー・ポッター』をやってきて、久々のドラマ出演であること、しかもヒロインを私に任せていただけるのも、すごくうれしかったです。恋愛モノをやらせていただけることも、みなさんが私を信頼してくださっているのかなと思えて、そういう意味でもうれしかったです。 ──原作をお読みになって、どんな印象を持ちましたか? 美山 原作は縦スクロールマンガなのもあって、メインで登場する5人の日常がテンポよく進んでいくので、とても読みやすかったです。私が演じる早苗は、SEXを含め恋愛に苦手意識を持っていて、なかなか心を開くことができないけど、明るく生きている淡白な性格の女性なんですね。それを映像でどう落とし込んでいこうかな、と原作を読みながらいろいろと考えていました。 ──早苗を演じる上で、心がけたことはなんでしょうか? 美山 早苗の話は、かつてのバイト仲間だった新田康祐(佐藤大樹)との関わりが主軸にあるんですけど、いい意味で康祐と早苗は似ているようで対照的な部分もあって。とにかくすごく素直なんですよ。起こった物事に対して全力で向き合う。そのたびに叫んだり号泣したり、ボロボロになりながら25歳を全力で生きてるな、と思うシーンが多いです。だからこそ、あまり深くは考えずに、目の前で起こる出来事に対して毎回素直に反応できるようにしよう、と心がけていました。 ──主演を務める佐藤大樹さんの印象や人柄は、どのように感じました? 美山 FANTASTICS from EXILE TRIBEというグループでリーダーをされているからか、出演者やスタッフの結束力を高めて、現場を盛り上げるのがすごく上手なんです。だから私も安心して現場にいられましたし、とにかくみんなが笑っていましたね。それは佐藤さんがみんなとのコミュニケーションを大事にしてくださったから、現場もリラックスした雰囲気に包まれました。あと積極的に宣伝をしている姿は、私も見習いたいと思いました。目標を持たれて、それを口に出してくださる方なので、そういうのもチームとしてはすごく助けになるんですよね。「佐藤さんについていこう」と思えるので、本当に素敵な座長でしたね。 ──すでにクランクアップをされているそうですが、撮影を振り返っていかがですか? 美山 20日間ほどで全10話を撮影したので、なんか幻のようにも感じていて(笑)。本当に撮り終えたんだっけ?と思うくらい、あっという間に過ぎ去ったんですけど、一日一日がすごく濃かったんですね。今でもその日に何を撮って、どこで撮影して、どんなシーンがあって、監督とどんな話をしたのか鮮明に思い出せるほど、濃い撮影期間でした。なんか……青春だったなと思えるというか、1シーンごとに思い出が詰まっているので、本当に素敵な時間を過ごさせていただきました。 「楽しまないともったいない」と思えるようになった20代 ──変化球の質問ですけど、撮影を振り返って「このときの自分はゾーンに入っていたな」と思うシーンはどこでしょう? 美山 早苗の心がぐしゃぐしゃになっているシーンは、わりとゾーンに入ってましたね。高校時代から8年間、ずっと付き合っていた彼氏・林健太に振られるところから物語が始まるんですけど、早苗の中で健太に「つまらない」と言われたことが、いつまでも心に中でシコリのように残っているんです。それは、早苗が無理してでも行動を起こす原動力やきっかけにもなっているぐらいの出来事。健太に「つまらない」と言われて、うっぷんを晴らそうとサパークラブで大はしゃぎして、その結果後悔することになるんですけど、そのシーンは自己肯定感が爆下がりの早苗なんですね。おそらく10話の中で一番下がるシーンというか。そのときに康祐を誘って拒否されて「あ……私はまたダメだったんだ」と落ちるところまで落ちるシーンは本当にしんどかったですね。しかも長回しのオンパレードで、現場の温度も暑くて、わりと時間をかけて撮ったので、次の日は目がパンパンになりました(笑)。 ──ずっと大号泣してますからね。 美山 ふふ、そうなんですよ。撮影後半から大事なシーンがすごく多かったので、康祐とのラストシーンは時間も日にちもかけて大切に撮りました。早苗と康祐のシーンは大変な撮影が多かったですけど、そのぶん素敵に編集していただいて、たくさんの人に見てもらえたらすベての苦労が浮かばれます(笑)。 ──健太が早苗を振った理由って、まだ自分に伸びしろがあると思っているから「もっといい子と出会えるかもしれない。だから、早苗との関係を切っておこう」と思ったわけですよね。でも年齢重ねると伸びしろよりも、今ある幸せをちゃんとつかまなきゃと思うものなんですけど、それは僕が25歳をとっくに卒業したからそう思うわけで。ぶっちゃけ10代は勢いのまま恋愛しちゃっていいし、30代以降は相手のためにも結婚を意識する。じゃあ、その間にある25歳の恋愛ってなんなんでしょうね? 美山 まさしく、健太に関しては自分に伸びしろを感じたんですよね。女性と男性でそこの価値観もちょっと違うというか、早苗的には将来のことも考えた結果、目の前の幸せをつかもうと決めていたんですけど、きっと健太とは人生のスパンが違ったのかなって。でも早苗も早苗で、このままではいけないと思ってる自分もいる。25歳の早苗はちょうど現実と理想の狭間にいるというか……なんなんですかね? どういう恋愛をしてたらいいのかわからなくなり、そこで葛藤する様子が早苗の話なのかな、と思います。 ──これまで数々の作品に出演されてきた美山さんの中で、『around1/4(アラウンドクォーター)』はどんな立ち位置の作品ですか。 美山 今、出会えたことがすごくうれしい作品です。等身大の女の子ですし、今だからこそできる役でもありますし。別の道で活躍してきた同世代のみんなとお芝居ができたのは、今後の活力にもつながります。インタビューの時点では第1話が放送されたばかりですけど、すごく映像がキレイで! 「毎週このクオリティでやるんだ」ということにも驚きました。スタッフさんの気合いも入った作品に、ヒロインとして関わることができたのは、本当に大きな財産だなと思います。 ──今回は、美山さんの女優人生を中心にお話を聞いてきましたが、改めてその時々で壁にぶち当たり、それを乗り越えて今があるんだと思いました。 美山 5歳のときにお芝居を始めて、小学5年生ぐらいからひとりで現場に行くようになり、台本もひとりで読むようになり「台本ってどう読むんだろう?」とか、お芝居の基礎を学びました。中学生になってからは、まわりの方からも“大人の世界に片足を突っ込んだ”と認識されるので、子役だけど子役じゃない時期に突入しました。そうすると、求められることがわりとわかるようになってきて、そこがひとつの壁だったのかもしれないですね。 ──お芝居が楽しむだけではなくなった。 美山 そうですね。「自分は何かを求められているのか」とぼんやり気づくようになって、「じゃあ私は何をしたらいいだろう」と“正解を探し始める道”へ歩き始めました。そこから「もっとお芝居うまくならなければ」とお芝居の研究ゾーンが始まって──だんだん自分の得意不得意がわかってきて「できないことをやれるようになりたい」と自分のいいところより、悪いところのほうに目が行ってしまう時期が始まりました。「こんな自分を変えなければ」という焦りが、高校生ぐらいで1回くるんです。みんな進路を考え出すじゃないですか。ぼんやり「このまま私は女優さんかな? 女優だろうな」って。じゃあ、続けていくには自分ができないことをできるようになったり「何か特技がなきゃいけない」と思い、自分の武器を探す時期に入って、そこがもうひとつの壁でした。“今までのお芝居”と“新しいアプローチ”というふたつの武器を同時に使えたらいいんじゃないか、と思って声優さんのお仕事もやるようになって。そこから壁というより、楽しみ方がわかるようになってきたんです。しかも、自分のいいところにも目を向けられるようになった。「結局、楽しまないともったいない」と考えられるようになってきて、今に至ります。 ──今は生きやすくなっているし、自らそうしてきたんですね。 美山 そうなんです! 最大限の楽しみを持って、お芝居をやりたいと思えるようになりました。 『around1/4(アラウンドクォーター)』 毎週土曜深夜2時30分〜(テレビ朝日)/毎週日曜夜11時55分〜(ABCテレビ) ※ABCテレビ放送後TVer /ABEMAで見逃し配信 【出演】佐藤大樹(EXILE/FANTASTICS)、美山加恋、工藤遥、松岡広大、曽田陵介、藤森慎吾(オリエンタルラジオ)、平岡祐太 ほか 取材・文=真貝 聡 撮影=友野 雄 編集=宇田川佳奈枝 ヘアメイク=関東沙織 スタイリスト=椎名倉平
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誰しも愛せる魅力がある──漫画家としての文野紋を作り上げた作品たち
文野 紋 (ふみの・あや)漫画家。2020年『月刊!スピリッツ』(小学館)にて商業誌デビュー。2021年1月に初単行本『呪いと性春 文野紋短編集』(小学館)を刊行。同年9月、『月刊コミックビーム』(KADOKAWA)で『ミューズの真髄』を連載スタート。単行本『ミューズの真髄』1巻&2巻は重版がしており、3月10日には最終3巻が発売された。 『logirl』記事コンテンツのコラム連載として、ドキュメンタリーへの愛を語っている漫画家・文野紋。今年3月に美大受験をテーマにした『ミューズの真髄』最終3巻が発売され、作品は完結を迎えた。そこで、彼女が『ミューズの真髄』を描くきっかけや漫画家となった経緯、また、並々ならぬ“ドキュメンタリー愛”を持つ理由など、話を聞いた。 目次『ミューズの真髄』キャラクター紹介いまだに夢に出てくる、美大浪人時代作品の大きなテーマは“承認” 部屋はギャップを描く大切な場所あふれ出るドキュメンタリーへの愛 『ミューズの真髄』キャラクター紹介 瀬野美優(せの・みゆう)一般企業に勤める23歳事務職。美大受験に失敗してから5年間、大好きな絵を描くことを諦め、母親の敷いたレールの上で生きてきた。合コンで鍋島に出会い、再び絵を描くことを決意し家を飛び出すのだが……。 鍋島海里(なべしま・かいり) 広告代理店勤務。美優とは合コンで知り合い意気投合するが、心ない言葉で傷つけてしまう。 月岡未来(つきおか・みらい) 東京藝術大学に通う学生。東中野美術予備校で油絵科夜間部講師のアルバイトをしており、美優のクラスを受け持つ。 龍円草太(りゅうえん・そうた)高円寺のバーの店主。家出をして行き場のない美優に、救いの手を差し伸べる。 いまだに夢に出てくる、美大浪人時代 ──『ミューズの真髄』が全3巻で完結となりました。美大受験をテーマにしたこの作品を描いたきっかけを教えてください。 文野 そもそも私が美大浪人を経験していまして、結局は美大に行けなかったんですけど……そのころの夢をいまだに見るんです。あまりにも何度も夢を見るので、これは何かかたちにしたほうがいいのかなと思っていて。ちょうど『月刊コミックビーム』の編集さんから連載をしませんか、と声をかけていただいていたので、この題材を選んで描きました。 ──どんな夢ですか? 文野 今の私が美大予備校に通っていて、マンガを描きながら受験とかできるのかな……と悩んでいたり、予備校講師の先生に「仕事は辞めたくないんですけど」と相談しながら受験をしたりする夢を見ます。 ──なるほど。『ミューズの真髄』は3巻で完結しましたけど、もともと青図として描いていたストーリーどおりに進みました? 文野 当初は美優がもう少し、いわゆるマンガ的なハッピーエンドになるようなかたちを想定していたんですけど、美優がキャラクターとして動いていくなかで、その終わり方だとちょっとわだかまりが残るかもしれないなと感じたので、一番最初の想定と比べると、ラストはけっこう変わっていきましたね。 ──マンガ的なハッピーエンドというと、美大に合格するということですか? 文野 もともと東京藝術大学には合格できないイメージはあったので、第2志望の地方公立の美大に受かるとか。そういう結末を当初は考えていました。ただ、2巻ラストで美優が髪型を憧れの月岡さんに寄せるというシーンで、これはすごい展開になるのかな?と思って、美優なりのハッピーエンドにしようと決めました。 ──その月岡さんに憧れて髪型を変えてピアスを開けるというアイデアは、月岡さんを描いていくなかで出てきたのですか? 文野 まだこの作品が何巻で完結とかも決まっていないとき、美優と月岡さんを軸にしたストーリーを考えていたので、月岡さんとのエピソードではいくつかやりたいことがあったんです。その中のひとつが(美優が月岡に)容姿を寄せることで。結果、物語の中で美優がそれを選択するシーンを描きました。 ──読者は途中で、月岡さんが実は浪人を重ねていることを知りますが、最初からそういう設定にしていたんですね。美優にはご自分を投影している部分もあるかと思うのですが、美優の人物造形のモデルがもしいたら教えてください。 文野 美優については、特定のこの人というのはなくて。自分と一緒に浪人していた仲間の話を参考にさせてもらいながら、自分の経験とをつなぎ合わせたキャラクターです。 作品の大きなテーマは“承認” ──どの登場人物も他人から承認されるとか、自分で自分自身を承認するとか、何かを認める/認められるみたいなものがテーマとしてあるように感じられました。 文野 はい、それはすごく考えていました。多くの人が幼少期に、特に家族から承認される経験があるかないかが人格形成にものすごく関わると私は考えていて。それが得られなかった人の苦しみというのは、それを当然に得られている人からはわかりにくい。逆に得られなかった人はそれがわかりにくいってことがわからなくて暴走したことをしてしまう、というのが現実でもたくさんあるのかなと。 それは『ミューズの真髄』もそうですし、短編集『呪いと性春』も同じで、制作するにあたってすごく考えているテーマのひとつです。そういう承認の経験が乏しいキャラクターが、この作品だと“美術”っていう承認される/されないが漠然としている──たとえば100メートルを何秒で走ればいいとかそういう話ではない──そういうところに身を置いたときの話で。『ミューズの真髄』を書くにあたって、“承認”はすごく大事なテーマでした。 ──明確な基準があるわけではなくということですよね。実際に美優とお母さんとの関係に、そういうところがあるのかと。最初に読んでいたときは、なんとなく“毒親”的な印象を受けていたのですが、読んでいくにつれて、それを超えているというか、毒親でもないのかなという気もしてきました。 文野 子供の精神的な影響において、悪影響を及ぼしているという面では毒親だと思うんです。ただ、性格が悪いから毒親というわけではなく、そういう人物にもほとんどの場合は原因や理由があってそうなっていて。親子関係に関わらず、全部そうだと思っているんですけど。鍋島とかも。 ──たしかに、そういう意味では鍋島もそうですね。読者は美優が知らないであろう、鍋島の事情とかも知ることができますし。みんな何かしらバックボーンを持っているのは絶えず意識して描かれていたんですね。この鍋島のモデルはいるんですか? 文野 はい。もともと別の作品で古着について描こうと思っていたときに取材した方で、その方が「自分はUNIQLOの服を着るのが怖い」という話をされていたんです。なぜなら自分に自信がないから、その土壌に立つと、その勝負になってしまう。そういう理由で古着が好きみたいで。古着好きの人って一見するとオシャレで自分に自信がありそうって思うじゃないですか。明らかに都会的なイメージだけど、そこにある気持ちは傍から見るとわからなくて、実は自信がないからそういうトガった服を着ている人もいることを知りました。第一印象との違いがある人物はおもしろいなとずっと感じていて、今回『ミューズの真髄』でキャラクターとして入れられそうだったので、入れてみました。 ──龍円に関しても、裏設定を考えていたんでしょうか? 文野 一応考えてはいました。一度ネームを描いたことがあるんですけど、担当編集さんに相談したら「美優との関わりが薄いから、今のタイミングで入れるのはどうなんだろう」という話になって。たしかに鍋島と違って龍円の過去のエピソードは美優の人生に影響しないから、それを見せる必要はないかもしれない。美優と近い部分はあるかもしれないけど、龍円はまったく違う価値観で生きているから。 ──たしかに、読者からすると、龍円は最初はすごく協力的でいい人なのかなと思わせつつ、実はその場しのぎのドライな人だったりするので、「え?」と思うところもありました。美優の印象的なシーンとして、1巻の、お母さんとケンカをした夜にキャンバスを持って2階から飛び降りるシーンがありますが、あのシーンはどんなところから発想が生まれたんですか? 文野 イメージ的には、映画の予告であったらおもしろそうなシーンが1話の中に入っていたほうがいいなと思っていました。映画の予告編でキャンバスを持って飛び降りるシーンがあったら、ちょっとは観たいと思ってもらえるかなって。 部屋はギャップを描く大切な場所 ──文野さんはこの作品に限らず、登場人物の部屋の中をすごく描き込むというか、わりと雑然と描くことが多いと感じています。そこにもこだわりはあるんでしょうか? 文野 そうですね。部屋は、キャラクターを言葉ではない部分で説明するのにすごく適している場所だと思っています。鍋島と美優に関しては、今時の感じがあるけど実は……という少し心が複雑なキャラクターなので、そのギャップを描くのに部屋は表現しやすくて大切な場所です。 ──なるほど。月岡さんの部屋は、まさにちゃんと絵を描いている人の部屋だなと。 文野 生活部屋とアトリエが一体化しているイメージで、家具や食べ物、化粧道具よりも画材とか絵の道具がいっぱいある部屋です。美優が自分の部屋との違いを感じるシーンとして描きました。 ──文野さん自身が美大受験をしていたころは、どちらの部屋に近かったですか? 文野 自分はわりと雑然としてました……(笑)。そのころは実家から通っていたので、アトリエみたいにできなかったんですけど、美大生になったら月岡さんみたいな部屋にしたいなと考えてました。 ──そうなんですね。あと、この作品だけではないのですが、表現としてものすごい量のセリフを一気に描き込む場面がいくつか出てくるじゃないですか。どういう効果を狙って作っているコマなのかを伺えればと。 文野 美優や『呪いと性春』に出てくる女の子は、抜けている部分と妙に理屈っぽい部分が同居していて、それが生きづらさや、難しさの理由のひとつだと思うんです。そういう人たちが感情が高ぶったとき、長文でしゃべってくれるのが、私はすごく好きで。なので、抜けているのに理屈っぽいキャラクターの表現として使っています。 ──吹き出しにノイズを入れている場面もありますよね。 文野 あれはすごく長いセリフをしゃべっているのが、もはやBGMみたいな。読んでね、というセリフじゃなくてたくさんしゃべっているということが伝わってほしいなというときに使っています。 ──絵としての表現ということですね。一番印象に残っているシーン、好きなシーンはどのあたりですか? 文野 3巻の試験のシーンですね。マンガのキャラクターとはいえ、美優みたいな人はものすごく現実にいそうで、2巻のラストから美優を苦手に感じる読者もいると思うんです。主人公は基本的に好感度があって、正しいことをする人が多いですし。けど、美優はそうではなく、わりと間違ったことをしてきているというのが1、2巻のストーリーで。それを踏まえた上で、美優が出す決断をどうしたらいいのかと悩んでいて。いわゆる王道のハッピーエンドではないんですけど、美優がやってきたことに対して誠実な答えを出せたのかなと思うので気に入っています。 ──欲を言うなら、もうちょっとここを描き込みたい、描き加えたいなという箇所はありますか? 文野 エピソード的に足したいなと思うところは実はそんなになくて、3巻でキレイに完結できたなと感じています。ただ、もっとちゃんと伏線を張ればよかったなという部分はたくさんあります……。技術的な話になるんですけど、構図を描くときに手で窓を作ってのぞき込むっていうシーンが3巻にあって、この仕草は1巻から絶対描いておくべきだったよな……とか。 ──これから『ミューズの真髄』を読まれる方には、どういうところに注目してほしいですか。 文野 読んだ方に、ここまで才能がない凡人にフォーカスしてる作品は珍しいと言っていただくことがすごく多くて。そういう才能がないと悩んでいる人がいたら、ラストで美優が導き出した結論で何かを感じていただけると思うので、ぜひ読んでもらえたらと思います。 SNSがきっかけで職業・漫画家の道へ ──そもそも文野さんがマンガを描き始めるようになったきっかけを教えてもらえますか? 文野 大きなきっかけというのは特にないんですが、小学生のときから絵を描くのが好きだったので、“マンガを描いてみよう”みたいな本を買ってマンガを描いていました。 ──当時から、まわりの人には「絵、上手だね」と言われてました? 文野 それがあんまり言われてなくて……。すごく記憶に残っているのは、兄や友達と絵を描いて、その中の好きな絵に投票するという遊びをやっていた時期があって。そのときの最下位が私で……。それがめちゃくちゃ悔しくて、そこから逆に練習しよう!と思ったのかもしれません(笑)。 ──漫画家になろう、と職業として意識したのはいつぐらいからですか? 文野 村田雄介さんの『ヘタッピマンガ研究所R』(集英社)を読んだことがきっかけで「漫画家いいな〜」と思い始めました。ただ職業として意識したのは、デビューする半年前とかです。 ──わりと最近なんですね。ちなみに好きな漫画家さんは? 文野 冨樫義博さんや浅野いにおさん、高屋奈月さんが好きです。 ──冨樫さんは……『幽☆遊☆白書』(集英社)だったりとか。 文野 そうです! 『幽☆遊☆白書』だと“仙水編”が好きで、あと『レベルE』(集英社)も。 ──『HUNTER×HUNTER』(集英社)とかも。展開、ついていけています? 文野 もちろん、読んでます! 『HUNTER×HUNTER』が休載している間にYouTubeで解説動画を10回ほど観たんですよ。なのに追いつけてないんです……みんな名前難しいから。 ──登場人物もセリフも多いですからね。『レベルE』とかは世代的には上ですよね。 文野 そうですね。コインランドリーに『(週刊少年)ジャンプ』(集英社)が置いてあって、そこで『HUNTER×HUNTER』にすごいハマったんです。『HUNTER×HUNTER』のためにジャンプを買うようになったので、冨樫さん作品は全部読もうと思って読みました。 ──なるほど。将来的にはSFやファンタジー要素が入っている作品も描いてみたいなって思っていたり……。 文野 はい、いつか挑戦してみたいです。鬼頭莫宏さんの『ぼくらの』(小学館)『最終兵器彼女』(小学館)にもハマりました。人間の感情を軸にしながら世界のことが関わってくるもの、いわゆる“世界系”はすごくいいな〜って思います。 ──世界系の作品だと、アニメもわりとありますよね。 文野 『新世紀エヴァンゲリオン』や『コードギアス』シリーズとか好きです! ──いろんな作品に触れていますね。実際に漫画家になる過程を伺えればと思うのですが、どういう経緯で? 文野 美大浪人を2年させてもらったんですけど、美大受験は学費だけじゃなくて、画材代とかでもお金がとてもかかるんです。とりあえずアルバイトをしながらSNSにイラストを投稿していたらフォロワーが増えていったことがあって。当時はまだSNSでマンガを投稿することがそれほど流行っていなかったからなのか、けっこう反応もよくて。同時期に『月刊!スピリッツ』(小学館)にも投稿したら“スピリッツ賞”で佳作をいただけました。コミティアで出展していたマンガを『月刊コミックビーム』の前の編集長が読んで、声をかけてくださって、商業誌で描くようになった、という経緯です。 ──漫画家としてデビューが決まったときはどうでしたか? 文野 雑誌に載るというのはもちろんうれしかったんですけど、仕上げの原稿を送るときや見本誌が届いたときとか、自分の拙さにめちゃくちゃ落ち込んでしまって。すごくうれしい!というよりは、もっと練習しないとやばいな……という気持ちで。 ──実際に読者の反応を見て、気にしたりします? 文野 気になるので見ないようにしてます(笑)。 ──次はどんなテーマを描きたいですか? 文野 テーマはまだ決まっていないんですけど、『ミューズの真髄』でキャラクターの人柄が誤解されて読まれてしまうこともあったなと感じてて。私はキャラクターを描くときに、それこそお母さんや鍋島とか悪者として登場したキャラについても、個人的には悪者を描くぞ!と考えて描いてはいなくて。いい人とはいえないけど知っていくとかわいい人、いろんな抱えているものがあって悪者だと一概にはいえない人。どのキャラクターにも魅力があることを伝えたいのに、それを伝えることは難しいなって。だから、次はもっとちゃんと伝えたいです。 あふれ出るドキュメンタリーへの愛 ──話は変わりますが、文野さんには現在『logirl』でドキュメンタリーについての連載「文野紋のドキュメンタリー日記 ~現実(リアル)を求めて~」を執筆いただいています。たしかSNSで「ドキュメンタリーのコラムどっかで書けないかな」とつぶやいていたのを見て、オファーさせていただいたのですが、ドキュメンタリーを好きになったきっかけを教えてください。 文野 一番最初はアルバイト先にサブカルチャーに詳しい先輩がいて、その方が原一男監督をすごい好きで、「『ゆきゆきて、神軍』は絶対に観るべきだ!」っておすすめしてくれたんです。それがきっかけでドキュメンタリーを好きになりました。 ──最初が『ゆきゆきて、神軍』なんですね! 濃いですね。そこからは、どんな順番で? 文野 そこから原一男監督の作品をいくつか観ました。そのあとテレビ局に興味を抱くきっかけがあって、『さよならテレビ』(東海テレビ)を。上京してからミニシアターに行けるようになって、特にポレポレ東中野が好きで、新作は全部チェックしていてすごいハマって、過去作品も観るようになりました。 ──中でも一番刺さったドキュメンタリーは? 文野 東海テレビの『ホームレス理事長 ~退学球児再生計画~』がすごく好きです。それこそ一見すると悪役みたいな人がたくさん登場します。現実にいたら万人受けしない、マンガの主人公には絶対ならないようなキャラクターしか出てこない作品で。でも、単に悪者という描き方ではなくて、ちゃんと愛せるところがあるように映しているので、そのバランスがいい作品です。過激なキャラクターでもおもしろく映すことができるというのはすごいなと。 中盤で、理事長がカメラを回しているテレビ局の方に「金を貸して」と土下座するシーンがあって、それは衝撃的でした。撮られていることで、お金を貸してくれるかもしれないと思って頼むってけっこうすごいシーンですよね。普通はカメラと撮影対象者って交わらないものじゃないですか。それが交わることでおかしなことが起きてしまう、カメラの暴力性。ドキュメンタリーというものにおいてのカメラの位置、カメラが入っている時点でリアルではないということのひとつだと思うんですけど。それもあって、すごく印象的な作品だなと思いました。 ──東海テレビのドキュメンタリーは、対象者との距離感がおもしろいですよね。 文野 『さよならテレビ』も、カメラがあることでのオチがあるというか。 ──東海テレビの作品は、ほとんど観られているんですね。海外ドキュメンタリーはご覧になります? 文野 日本の方が撮っている『ハイパー ハードボイルド グルメリポート』(テレビ東京)は好きで観たんですが、それ以外は、まだそんなに掘れていないですね。外国の方が撮られているとその国の文化や常識など、勉強不足のところがあるので。 ──たしかに日本人の視点があるかないかで変わりますよね。連載では、直近だと『水俣曼荼羅』に触れていました。ボクも作品を観たんですけど、正直いうと6時間は長かった……。文野さん6時間全部観たんだ、すごいな、と思ったんですよね。 文野 私は映画館で観たんですけど、6時間は余裕でした。1部で出てくる大学教授の方は“マッド”と言われていて、いわゆる世間がイメージする科学者像とは異なるし、3部ではいろんな人に恋をする素敵な女性が出てきたり、登場人物がすごく興味深くておもしろいんです。 ──そうなんですよね。ちなみに、ご自分で何か密着したドキュメンタリーを撮りたいと思ったことは? 文野 自分でドキュメンタリーを撮るというのは、あんまりイメージができないです。もし撮るとしたら、私は変な人が好きなので(笑)、刺激的な人に密着して、自分も刺激をもらいたいなって思います。 取材=鈴木さちひろ 撮影=まくらあさみ 文・編集=宇田川佳奈枝
BOY meets logirl
今注目の「BOY」をピックアップし、撮り下ろし写真を公開
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川本光貴(BOY meets logirl #034)
川本光貴(かわもと・こうき)2003年3月22日生まれ。福岡県出身。 Instagram:koki._.kawamoto X:@koki_kawamoto 木曜劇場『いちばんすきな花』(フジテレビ系/10月期)松井隼人役で出演中 撮影=矢島泰輔 編集=高橋千里 【「BOY meets logirl」とは】 今、注目の「BOY」をピックアップし、撮り下ろし写真を公開します。
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翔(BOY meets logirl #033)
翔(しょう)2006年5月9日生まれ。ロサンゼルス出身 Instagram:sho0509official X:@Sho0509official 日本テレビ『超無敵クラス』(毎週日曜12時45分~放送)にレギュラー出演中 『翔 2024 卓上カレンダー』11月4日(土)発売&「お渡し会」11月3日(金・祝)タワーレコード渋谷店にて開催 撮影=友野 雄 編集=宇田川佳奈枝 【「BOY meets logirl」とは】 今、注目の「BOY」をピックアップし、撮り下ろし写真を公開します。
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前田拳太郎(BOY meets logirl #032)
前田拳太郎(まえだ・けんたろう)1999年9月6日生まれ。埼玉県出身。劇団EXILEのメンバー Instagram:kentaro_maeda_official ドラマストリーム『君には届かない。』(TBS)W主演・毎週火曜深夜24:58 O.A (※一部地域を除く。放送日によって放送時間が異なります) 撮影=矢島泰輔 編集=高橋千里 【「BOY meets logirl」とは】 今、注目の「BOY」をピックアップし、撮り下ろし写真を公開します。
若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>
「初舞台の日」をテーマに、当時の期待感や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語る、インタビュー連載
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男女コンビという先入観と向き合う人間横丁の希望とジレンマ|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#24(後編)
「サンドウィッチマンさんに『付き合ってるの?』って聞かないじゃないですか」 人気の男女コンビ・人間横丁の内田紅多は、インタビューでそう語った。相方の山田蒼士朗のことを「私が男の人になったみたい」と語るほど、ふたりの雰囲気はぴったり合っている。でもそれはあくまでも相方として、だ。 男女コンビであること。キャラクターっぽく思われてしまうこと。人間横丁のふたりは、観客の先入観と向き合いながら、芸を磨いている。芸歴3年目のふたりの現在地を聞いた。 【インタビュー前編】 “すこしふしぎ”なコンビ・人間横丁の初舞台は賞レース|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#24(前編) 目次なんで男女コンビが仲いいと「付き合ってる」と思われるんだろう「これでいつも一番ウケてます!」とキレてしまう「わかりやすい」は「誰でも思いつける」 なんで男女コンビが仲いいと「付き合ってる」と思われるんだろう 左から:内田紅多、山田蒼士朗 ──コロナが始まった年に養成所に入ったおふたりは、どう過ごしていたのでしょうか。 内田 毎日一緒にいたよね。 山田 僕が土日だけバイトをしていて、それ以外はずっと会ってたね。 内田 養成所のときは、朝10時に会って終電で帰ってた。私は実家暮らしでコロナを家に持ち帰るのも怖かったので、バイトはしてなくて。その名残りで今もやってないです(笑)。 ──その濃密な時間が、おふたりの親密な空気感を作ったんでしょうね。ちなみに前編で伺ったように、初舞台でかけたネタは「コールドスリープ」を題材にしたSFでした。そこから、“すこしふしぎ”な設定を日常に落とし込んだネタをするようになったのはいつごろですか? 内田 それは最初にやった漫才からかも。「なんで爪を切ることになったんだろう?」っていうネタ。「きっと最初に爪を切り始めた人がいるから、みんなもマネして切るようになったんだよね?」って。 山田 そのネタが思い浮かんだときピーンときたのを覚えてる。設定とかも笑いながら一緒に考えてたね。 ──こうやってお話ししても、漫才の雰囲気そのままの人柄だなと思うんですが、最初から自分たちらしい漫才をやろうと思っていたんですか。 山田 どっちもツッコミができないね、ってところからです。ツッコめないので、内田さんの言うことを訂正するみたいになって。 内田 最初はダブルボケっぽくやってたんだけど、やっぱりツッコんだほうがいいんだろうね、って。でもパンって叩くとかできないから、山田くんなりに訂正しようか、って。 ──養成所で、基本の型から覚えようとは言われないものですか? 内田 ちゃんとツッコミをやりなさい、とかそういうのはなかったです。でも、私と山田くんの関係性が気になるっていうのはよく言われてて……。そこが一番難しかったかもしれません。 山田 お客さんがふたりの関係性をわからないまま見ると、不自然に感じるってよく言われたね。 ──男女コンビならではの悩みですね。 内田 それはよく嘆いていて。たとえば、サンドウィッチマンさんとか仲いいですけど、でもあのふたりに「付き合ってるんですか?」って聞かないじゃないですか。なのに、なんで男女が仲いいと、そんなこと言われなきゃいけないんだろうって思います。 ──男女コンビはそれを意識して、あえて女性が男性に強く当たるパターンがよくある気がします。それも先入観をかわすためなのかもしれない。 内田 そういうのもあるし、ネタに関してもたとえば「彼氏欲しいんだよね」って言うことで、お客さんが「あ、じゃあこの相方は彼氏じゃないんだ」って思えるとか。でも、男女だからってところにこだわるのは、ちょっと年齢上の人が多くて、同世代はそんなに気にしてない。もうちょっとの間、我慢すればいいことなのかなと思います。 「これでいつも一番ウケてます!」とキレてしまう ──最近のネタを見ていると、内田さんの毒っ気が少しずつ強くなったように感じるのですが、そこは意識されていますか? 内田 もともとの性格なんです。以前は「サンドウィッチマンは仲がよくてもいいのに、なんで私たちはダメなの!」みたいなグチは、山田くんにしか言えなかったんです。どっかで「いい子でいなきゃ」っていう気持ちがあったんだと思う。でも、隠していてもどうしても出てきちゃうんです。 それに、ほかの芸人さんや仲いい人が、私のそういう部分を「全然いいじゃん」とか「おもしろいよ」って言ってくれることが増えて、かしこまる必要ないんだなと思えるようになりました。普段もそうだし、別にネタの中に入っててもいいんだなって。 ──そうだったんですね。山田さんも「もっと自分を出せばいいのに」と思っていましたか? 山田 たしかにそうですね。養成所の講師の方に強く言うのはよくないと思うけど、へへへへへ(笑)。 ──そんなことがあったんですか。 内田 これは本当に反省してるんですけど……。養成所の特別コースで、先輩の三福エンターテイメントさんが来てくださったことがあって、ネタ見せをしたんです。そのときに「いいと思う」って褒めていただいて。 でも、そのあとに「今はキャラクターっぽいのもあって調子いいだろうけど、養成所卒業したら急にウケなくなったりするからね」と言われたんです。それは私たちに対する言葉というよりも、みんなへのアドバイスだったと思うんです。 ──「ほかの人はウケるために焦ってキャラ漫才しなくてもいいよ」というようなニュアンスだった。 内田 はい。でも、そのときの私は、「付き合ってるの?」とか「キャラクター漫才」って言われすぎて過敏になってたんだと思います。 山田 うんうん。 内田 養成所のライブでのお客さん票も悪くなかったので、思わず「これでいつも一番ウケてます」って言っちゃって……。 山田 言っちゃったね(笑)。 内田 本当にいろんな気持ちになっちゃって、あのあとは死ぬほど落ち込みました。ネタ見せ終わって、自分の席に戻った瞬間から「あーやっちゃったな……」って。女子更衣室に戻っても、なんであんなこと言っちゃったんだろうって、しゃがみこんで「うわぁ~!」ってなっちゃった。 ──三福さんの言葉で、内田さんの中に溜まっていたものがあふれ出した。 内田 三福さんの言葉はほかの芸人さんに向けたものだったので、びっくりされたと思います。 山田 うん、僕もびっくりしすぎてフォローできなかった……(苦笑)。 内田 三福さん、私のこと怖いって思ってるよね……。本当にあれはよくなかったな。 ──ふたりの本来の人柄が「キャラクター」だと思われてしまうのは悔しいですよね。もちろん漫才だからデフォルメしてる部分はあるでしょうが、それはあくまでも本来のおふたりの人柄あってのもの。それをキャラと言われると「それは違うよ」と否定したくなるのも無理はないだろうなと。 内田 うーん、そのときにそう思って反発したのかは覚えてないですけど、「キャラではないのにな」っていう意識はたしかにずっとありました。今なら私たちの感じを「キャラ」って言うのも全然わかるんですけど。 その点、まわりの芸人さんや普段のライブのお客さんは、いつもこのままの私たちを当たり前に受け入れてくれてるので、すごくやりやすいです。 「わかりやすい」は「誰でも思いつける」 ──芸歴3年目にもかかわらずメディア出演も増えていて、順調に活躍されています。一方で、賞レースで結果を出したいとも常々おっしゃっていますね。 内田 そうですね。そのためにはやっぱり万人にわかってもらえるようにならないといけなくて。このままで褒められることも多いし、私たちもこのままでいいんだって思えてるんですけど。 山田 たしかに若い世代、お笑いが好きな人はわかってくれるけど、そうじゃない人が見ると、「何やってるんだろう?」って思われるので、そこを超えたいね。 ──M-1グランプリに合わせたネタ作りもしていますか。 山田 それはよく考えることで。賞レースで結果を出したいなら、寄せられるようにならなきゃいけないですよね。でも内田さんの意志が強すぎて、ね(笑)。 内田 やっぱり観ている人に「自分でも思いつきそう」って思われたくないんです。賞レースでネタをやるってことは、多くの人の目に触れる機会が多いじゃないですか。だからよけいに寄せたネタはやりたくないと思ってしまう。わかりやすいってことは、思いつきやすいってことだと思うから。私はそれをすごく心配してしまいます。 ──ジレンマですね。 内田 私は漫才のテーマの部分を考えるのが、すごく好きなんです。そこを誰も思いつかないものにしたい。でもそうなるとわかりやすさから離れてしまう。本当はテーマの部分で折れてわかりやすいものにして、ネタの中で自分たちにしかできないことをやるべきなんだろうけど……。 ──いわゆるコンビニ店員とかデートとか、そういうテーマでの漫才に抵抗がある? 内田 「見たことある」「どっかにありそう」って思われちゃうのがイヤで。 ──前編で「きょうだいとも被りたくなかった」とお話しされていましたけど、それと通ずる話ですね。 内田 そうかもしれません。山田くんは「コンビニでも人間横丁らしいネタになるよ、大丈夫だよ」って言ってくれるし、そうだねって思うんだけど。 ──ほかのお仕事についてはどうですか。テレビ出演は楽しい? 山田 すごくうれしいです。僕は小さいころからテレビっ子だったので、とても楽しい。 内田 お昼の番組とかもっと出られたらいいよね。 ──内田さんはゲーム好きとおっしゃっていましたが、ゲーム番組はまだ出てないですか? 内田 いやいやいや。ゲームのお仕事は全然したことないです。もっと強かったら出られるかもしれないけど。 山田 でも、『マリオパーティー』すごかったよ。 内田 たしかに。でもうますぎて、寒い雰囲気になったよね。 山田 内田さん、ミニゲームがうますぎて、誰も勝てなかった。 内田 あれはイヤな思い出ですね……。かといって手を抜いてやるのも違うし。勝ちすぎちゃった。でも、勝ちまくったときのリアクションがすべてだなとも思いました。そこは努力しないとな。本当どうしたらよかったんだろうね? 山田 僕にはわからないよ〜(笑)。 文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平、田島太陽 人間横丁(にんげんよこちょう) 山田蒼士朗(やまだ・そうしろう、1999年7月23日、東京都出身)と内田紅多 (うちだ・べえた、1997年3月15日、東京都出身)のコンビ。人力舎の養成所であるスクールJCA29期生、2020年結成。YouTubeチャンネル『人間横丁のにんげんよこちゅ〜る』は不定期更新中。活動情報はXのアカウント@ningen_yokochoでチェックできる。 ムック『First Stage 芸人たちの“初舞台”』発売中! この連載<First Stage>がムックになって発売されました。 これまでに登場した中から9組の若手芸人に加えて、新たに真空ジェシカの撮り下ろし取材を追加! 彼らの初舞台の思い出、そしてこれからを、写真とともにB5サイズのムックでお楽しみいただけます。 『First Stage 芸人たちの“初舞台”』(扶桑社) 【後編アザーカット】
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“すこしふしぎ”なコンビ・人間横丁の初舞台は賞レース|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#24(前編)
芸歴3年目の男女コンビ・人間横丁。内田紅多と山田蒼士朗は、ふたりにしか醸し出せない、親密で柔らかなムードと、藤子・F・不二雄的な“すこしふしぎ”なネタで、注目を集める。 コロナ禍の始まりとともに芸人になったふたりは、どんな道を歩んで、その世界に足を踏み入れたのか。 漫才のニュースタイルを切り開こうとする人間横丁のふたりが芸人となった、初舞台の思い出を聞く。 若手お笑い芸人インタビュー連載<First Stage> 注目の若手お笑い芸人が毎月登場する、インタビュー連載。「初舞台の日」をテーマに、当時の高揚や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語ります。 目次ワクワクさせてくれるお笑いが好きだったブラマヨと天竺鼠が好きだった山田くんコンビ結成は即決「私がそのまま男の人になったみたい!」キングオブコント予選で「どこの子なの?」と聞かれる ワクワクさせてくれるお笑いが好きだった 上から:山田蒼士朗、内田紅多 ──内田さんは芸人やお笑いに全然興味なかったそうですね。 内田 テレビもあんま観てなくて。お笑いを好きになったのは大学からです。 ──子供のころは何が好きでしたか? 内田 4人きょうだいなんですけど、ずっとゲームやってて。4人でゲームキューブの『マリオカート』とかやってました。本当にゲーム三昧。でも、プレステは大人っぽいイメージだったので、ニンテンドーばっかりでしたね。 ──ほかのことには興味がなかった? 内田 そうですね……でも、妹がテレビ好きで『ピカルの定理』(フジテレビ)とかはなんとなく観てました。妹がいつも流行を追いかけてたおかげで、私も友達の話題についていけてた。 ──妹は女優の内田紅甘(うちだ・ぐあま)さんですね。紅甘さんは子役のころから演技の世界にいます。内田さんはそっちに興味は持たなかったんですか? 内田 被ることしたくないなぁってずっと思っていました。同じことをやってたら絶対比べられちゃう。妹は演技上手で、かっこいいんですよ。きょうだいと同じことしたら比較されるから避けてきました。 ──なるほど。大学では映像制作やWEBデザインを学んだそうですね。 内田 画面の中のことをずっとやっていましたね。卒業したらゲームプランナーになるのもいいなぁと思って、目指してる時期もありました。でも、大学時代にバラエティ番組を観るようになったんですよ。『有田ジェネレーション』(TBS)が好きでよく観てました。知らない芸人さんがたくさん観れてうれしくて。 ──そもそも全然興味のなかったお笑いにハマったきっかけは、なんだったんですか? 内田 これはちょっと恥ずかしいんですけど、当時ピスタチオさんがね、めっちゃブレイクしてたんです……。テレビで初めて観て衝撃を受けて。それでメディア情報を追っかけ出したら、ヨシモト∞ホールの配信があるのを知って。それを観ているうちに、好きな人が増えてお笑いにハマりました。それで、就活の時期にゲームプランナーか芸人で迷ったんです。 ──それで芸人を選んだ? 内田 いや、どっちも素敵だな〜となったけど、友達に話したら「就職したほうがいいと思うよ」って言ってくれたんです。普通そういうときって「好きなことやりなよ!」って無責任に背中を押すじゃないですか。でも、その子は「働いたほうがいい」と。それがすごい衝撃で。たしかにそうだなぁって就活することにしたんです。でも結局3社くらいしか受けなくて全部落ちちゃって。 どうしようかなって思ったんですけど、絵を描くのが好きだったから、フリーターしながら絵でも描いてそれがいつかお仕事になったら楽しいかなって。バイトしている間もお笑いは変わらず好きで、半年くらい経ったときに「やっぱり養成所入ろう!」と思ったんです。 ──きっかけがあったんですか。 内田 ちょうどそのころサツマカワ(RPG)さんを好きになって。「こんなお笑いあるんだ!」って衝撃を受けたんです。同時に、自分の好きなお笑いのジャンルが明確にわかった感じがあって。自分の好みがちゃんとわかっているなら、自分でもやれるかもと思って芸人になることにしました。 それですぐバイトも辞めたんです。店長がダジャレばっかり言う人で、この人と一緒にいたらおもしろくなくなっちゃうって心配になって辞めました。全然悪い人じゃなかったんだけど(笑)。 ──内田さんをお笑いに導いたピスタチオもサツマカワさんも正統派というよりは、我が道を行くタイプですね。 内田 たしかに今思うとそうかもしれない。正統派と呼ばれる方よりもそっちのほうが好みなのかな。基本的にワクワクすることが好きで。「何してくれるんだろう!」って思わせてくれる人が好きなんです。 ブラマヨと天竺鼠が好きだった山田くん ──山田さんはいつからお笑いに興味を持ったんですか。 山田 物心ついた3〜4歳ぐらいのときには、もうお笑い番組を観てました。 ──1999年生まれですよね。 山田 そうです。だからM-1がずっと記憶に残ってて。ブラックマヨネーズさんが最初に好きになりました。 ──ブラックマヨネーズの優勝は2005年でした。6歳のときですね。 山田 保育園の卒園式で夢を発表するときは「お笑い芸人になります」って泣きながら言いました。 内田 なんで泣いちゃったの? 山田 寂しいのと、恥ずかしいのがあったんだと思う。僕が泣いてるのを見て、親が全員泣いたって言ってました。いつも笑ってて、友達のお父さんお母さんにもニコニコ話しかけてたから、そんな子が泣いてみんなも驚いたのかな。 内田 ずっと笑ってたんだ、今と変わらないね。 山田 へへへへへ(笑)。 ──どんなお子さんだったんですか。 山田 人を笑わせるのもずっと好きでした。小学校のときはお楽しみ会で出し物を考えてやったり、学童ではコンビを組んでネタをやったり。落語家の方が来て、前座で出たんです。 内田 どんなネタやったの? 山田 8月でこんなに暑いなら、12月はもっと暑いよね、みたいな。数が増えるとどんどん暑くなるみたいなネタだったかな。『コロコロコミック』でやってた『スーパーマリオくん』でペーパーマリオ編みたいなのがあって、それで漫才やってたんです。それをちょっとマネたような気がします。 ──幼少期を過ぎて、そのあともお笑いへの熱は上がる一方でしたか。 山田 中学でバスケをして、高校の写真部に入って、お笑いからちょっと興味が離れちゃったんですよ。みんなが観るようなバラエティ番組は観てたけど。初めてお笑いライブに行ったのも、働き始めてからです。 ──山田さんは社会人経験があるんですよね。 山田 はい、高校卒業してから2年間介護士をしていました。デスクワークは絶対やりたくないなぁと思って、給料がいいところ探したら介護かなぁって。中学校のときバスケやってたりで体力はあったし、おじいちゃんおばあちゃん好きだったので。 ──大学に行くとか、写真の勉強することは考えなかった? 山田 一瞬よぎったりしましたけど、でももう何も学びたくなくて(笑)。保育士にもなりたかったけど学校行くのがイヤですぐ働きました。それで働いているときに、またお笑いを観るようになって。当時は天竺鼠さんが好きでした。一度ライブを観に行こうと思って、同期の子と一緒にルミネの平日昼公演に行って。その帰りにはやっぱりあっち側に行きたいと思いました。 ──お笑いファンに戻るのではなく、芸人になろうと思ったんですね。 山田 そうですね。でも、僕は飽きやすい性格なので、この気持ちが続いたらやろうと思って1年は待ちました。その間にもいろいろお笑いライブは行ってて、吉本以外にもK-PROのライブにもいろいろ行って。1年後も全然気持ちが落ちていなかったので、養成所に入ることにしました。 ──なぜ人力舎を選んだんですか。 山田 最初はやっぱり吉本かなと思ってたんです。でも、怖そうだった……(笑)。人力舎は怖くなさそうだったので、ここにしました。最初はコントやりたかったのもあったので、コント師が多いのもいいなと思って。 コンビ結成は即決「私がそのまま男の人になったみたい!」 ──そして2020年にふたりは出会うわけですが、コロナが始まったばかりのころの養成所の雰囲気はどうでしたか。 内田 そのときはもう入学式もなくて。 山田 スタートも1カ月遅れたよね。 内田 講師のあいさつもYouTubeの限定公開動画を観といてください、みたいな。 山田 自己紹介もZoomで、1カ月はリモート授業でした。 ──じゃあ最初はZoomで会った? 内田 私と山田くんは違うクラスだったので、そういうわけでもなくて。 山田 僕が内田さんの自己紹介の動画を観て、「この人とやるなぁ」ってピーンときたんです。でもすぐには勇気が出なくて、4日悩んでメールを送りました。 内田 そのメールも変だったよね(笑)。「名前が赤と青でよくないですか?」って。私が「紅多」で山田くんが「蒼士朗」だから。 ──いきなりそれは怖いですね(笑)。 山田 すごくね、悩んじゃって。ぐるぐるしすぎちゃいましたね。 内田 私も「うわ、ちょっとおバカな子から来ちゃったなぁ」って思って悩んだんですけど、まぁ電話くらいいいかって。しかもちょうどそのときに最初にお試しで組んでいた人と解散したところだったので。 山田 グミ、たくさん食べられちゃったんだよね? 内田 そうなの。たしかに「食べていいよ〜」って言ったけど6個も食べて。それは違うよなぁって解散しました。 ──山田さんの第一印象は「ちょっとおバカな子」だったわけですが、実際に電話してみてどうでしたか? 内田 なんかいいなぁってすぐ思いました。私がそのまま男の人になったみたいだと思って。ずっとニコニコしてるし、ゆっくり話すし、落ち着くなぁって。私はまずはいろんな人と組んでみるつもりだったから、すぐ組むことにしました。 ──そして人間横丁が生まれた。 山田 最初、内田さんが組む前に書いたネタを見せてもらって、これはすごいぞ……ってなったんですよね、へへへへ(笑)。 内田 そうなんだぁ、初耳。私は養成所に入る前からネタを書いてたんですよね。 山田 テーマが近かったりしたんだよね。僕たちSFとかが好きだから。 内田 私が「実は火星人だった〜」みたいなネタだったね。それで私たちは組むのが早かったから、その年のキングオブコントの予選に出られたんですよ。 キングオブコント予選で「どこの子なの?」と聞かれる ──じゃあお客さんの前に出た初舞台はキングオブコントの1回戦ですか。漫才ではなくコントだったんですね。 山田 そうですね、僕の誕生日でした。 内田 そうだ、そうだ。 ──芸人としての初舞台が誕生日ってすごいですね。芸人として生まれ直したというか……。 山田 すごい、いい表現ですねぇ(笑)。 ──初の賞レース予選はどうでしたか。 山田 コロナ禍に入って初めてだったので、並ぶときも距離を開けなきゃいけなくて。外で待機するのもダメで、時間ぴったりに来て会場に入って。 内田 そしたらすぐ私たちの名前が呼ばれて、「うわーっ!」って慌てて。 山田 急いで着替えて……。 内田 めちゃめちゃ怖かったです。マスクもギリギリまでつけてなくちゃいけないのに、衣装にポケットもないからどうしよ〜って焦ったりして、けっこう泣いちゃいそうでした。 ──会場入りしてすぐ出番となると、雰囲気もつかめなくて緊張しそうです。 内田 そうですねぇ。私たちのうしろに並んでたのが、なんかおじいさんで……。 山田 コントD51さんだよ。 内田 そのすごいおじいちゃんが「どこの子なの?」って話しかけてくれて。自分たちでこの大会の最高年齢だって言ってたんです。その人が穏やかだったから、それで泣かずに済んだかも(笑)。 ──緊張もほぐれて本番はどうでしたか? 内田 練習のときは、もしかしたらブザー鳴っちゃうくらいの尺だったんですけど、全然鳴らなくて。むしろ一瞬で終わりました。自分でも最後のくだり話しながら「もう終わりっ!?」と思うくらい。 山田 緊張して早口になっちゃったね。 ──どんなネタをやったんですか? 内田 山田くんが400年のコールドスリープから覚めて、不動産屋さんに行くネタです。でも人口が減りすぎて各都道府県にひとりずつ住んでるっていう。養成所で「ウケないのが普通だから」ってハードルを下げてもらってたので、ウケないのは全然平気でした。でも、よく賞レースとかお笑いライブに来られる有名なお笑いファンの方がいて、その方だけ最後のくだりで笑ってくれましたね。 ──「ピンクおばさん」ですかね。 山田 たぶんそう……でも、僕たちはそのときそのおばさんが有名だって知らなかったから、もしかしたら違う人かもしれません。 ──でも、おふたりとも緊張しないイメージがあったので意外でした。さすがに初舞台は緊張した? 内田 私はわりといつも緊張してます。山田くんはあんまり緊張しないよね? 山田 大事なときとか初めてのときは緊張するけど、それ以降はあんまり。キングオブコントはやっぱりドキドキしました。 ──初舞台を終えたあとの帰り道とか覚えてますか? 山田 始まる前に「終わったら誕生日会しようね」と言ってたので、祝ってもらいました。 内田 コメダ珈琲でねぇ。 ──そこは内田さんがごちそうして……。 山田 おごってもらってはないです(笑)。それぞれ好きなものを頼んでね。 内田 そうだったねぇ。 文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平、田島太陽 人間横丁(にんげんよこちょう) 山田蒼士朗(やまだ・そうしろう、1999年7月23日、東京都出身)と内田紅多 (うちだ・べえた、1997年3月15日、東京都出身)のコンビ。人力舎の養成所であるスクールJCA29期生、2020年結成。YouTubeチャンネル『人間横丁のにんげんよこちゅ〜る』は不定期更新中。活動情報はXのアカウント@ningen_yokochoでチェックできる。 ムック『First Stage 芸人たちの“初舞台”』発売中! この連載<First Stage>がムックになって発売されました。 これまでに登場した中から9組の若手芸人に加えて、新たに真空ジェシカの撮り下ろし取材を追加! 彼らの初舞台の思い出、そしてこれからを、写真とともにB5サイズのムックでお楽しみいただけます。 『First Stage 芸人たちの“初舞台”』(扶桑社) 【前編アザーカット】 【インタビュー後編】 男女コンビという先入観と向き合う人間横丁の希望とジレンマ|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#24(後編)
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『キングオブコント』でなめた苦汁も糧にする、群青団地の次なる展望|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#23(後編)
2021年結成の若手コント師・群青団地。令和ならではの設定と、たしかな演技力で注目を集め、『ツギクル芸人グランプリ2023』ではファイナリストになった。 しかし今年の『キングオブコント』は、まさかの2回戦敗退。日本一のコントを決める大会の壁は分厚かった。 芸人の初舞台を振り返る本連載「First Stage」。今回は、群青団地初の賞レース決勝となった『ツギクル芸人グランプリ』や、初めての挫折だと語るKOC敗退、そして今後の展望について聞いた。 【インタビュー前編】 『ツギクル芸人グランプリ2023』で注目を集めた、群青団地の初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#23(前編) 目次斬新な設定に自信があったツギクルの勝負ネタ「気まずい瞬間」をコントにしたい相方の書いたネタがスベることに納得できないネタを大事にするためにやるべきこと 斬新な設定に自信があったツギクルの勝負ネタ 左から:福田智哉、横颯太 ──7月にフジテレビで放送された賞レース『ツギクル芸人グランプリ2023』の決勝に進出しました。芸歴3年目で、初めての賞レース決勝はいかがでしたか。 福田 楽屋がわりと和やかだったので安心してたんですが、本番はさすがに緊張しました。ただ、『オンライン』というネタはセリフがないので、緊張がコントに影響することはなくて、そこはよかったですね。セリフを飛ばすのが一番心配なので。 横 けっこう手応えもあったんですよ。ネタ終わり、袖でハイタッチしたよな? 福田 うん。正直、ファイナルステージに行ったなと思ってました。 横 僕らはBグループのトップバッターだったんですが、結局そのグループはひつじねいりさんが決勝に行った。 ──群青団地のコントが新鮮な設定と、繊細な演技力で魅せたのに対し、ひつじねいりの漫才はパワープレイで押し切りましたね。 横 すごかったですね。僕らは斬新な発想のネタで勝負するつもりだったので悔いはなかったですけど……自分たちがどういう人間なのかネタで伝えられなかった。そこは反省ですね。 ──同期のツンツクツン万博は、衝撃的なネタでファイナルステージに進出しました。同期の躍進は悔しいものですか? 横 もちろん悔しかったですけど、それはツンツクツンに負けたからではなくて。彼らが結果を出したのに、僕らは爪あとを残せなかった。そのことが悔しかったです。だから、彼らが『ピッツァマン』のネタでバズって、テレビに呼ばれたりするのは純粋にうれしいですね。 福田 僕らとツンツクツンはもともと仲いいんですよ。 横 そうそう。ツギクルが決まったときも、4人でごはん行って決起集会しました。だから彼らの活躍は普通にうれしいですね。 「気まずい瞬間」をコントにしたい ──おふたりのコントは演技力を見せるネタが多いように思います。影響を受けた芸人はいますか。 福田 相方は、かが屋さんが好きで。「これおもしろい」ってずっと言ってたのは覚えてます。僕は相方に誘われて芸人になるまで、お笑いにほとんど興味がなかったんでわからないですが。 横 かが屋さんはそうですね。お笑い始めようって思った2019年ごろにずっと観てました。演技力がすごくて、マイムだけで状況説明をさせるのもすごいなと尊敬してました。 ──今日は奇しくもかが屋っぽい服装での登場となりましたね。 横 恥ずかしいわっ! 福田 さすがにこの格好でかが屋さんへの憧れを話すのは照れますね……(笑)。 横 でも本当に、かが屋さんのおかげで、ああいうお笑いが好きだって気づかせてもらった部分はあって。僕らは明確なボケで人を笑わせるタイプの芸人ではない。 ──ネタを作る上で大事にしている感覚はありますか。 横 僕はけっこう「気まずい瞬間」が好きなので、そういう情景をコントにする節はあります。あと、最近はふたりがしゃべってるときの音というか、音圧を意識してますね。 ──どういうことでしょうか。 横 コントのキャラクターが、テンポよく会話のラリーをしてるのがリアルじゃないなって思うようになって。感情が昂ぶった人間同士って、お互いの言葉が被さるじゃないですか。その感じを、声の音圧で表現できないかと考えながら台本を書くようになりました。あと、静かなシーンと盛り上がるシーンで音圧にメリハリをつけるようになった。そうするとウケやすさが全然違う。ネタ合わせからじゃなくて、ネタを書くときからそこは意識してます。 福田 相方はネタ合わせでも丁寧に教えてくれるんで、やりやすいです。 横 でも、福田は演技が本当にうまいんですよ。誘ったときはむしろ下手だろうなと思ってたくらいなので、そこはラッキーでした(笑)。コミカルな動きもできるし、ちょっとムリがありそうなマイムでも、要望を伝えて練習したら、そつなくできるようになる。 福田 相方はコントの状況やキャラクターのことを言葉にして説明してくれる。だから僕も理解できて、演技も自然とできる感じです。染み込んだ状態でキャラの感情に入りきれれば、自然と演じられる。 横 逆に僕のほうが不器用なんですよ。どう動いたらいいかっていうイメージが頭にはあるんだけど、それを自分の体では表現できない。だから難しい動きのあるキャラクターはいつも福田に頼んでますね。 相方の書いたネタがスベることに納得できない ──群青団地はツギクル決勝進出や、事務所ライブ『月笑(げつわら)』での躍進など、波に乗っていますが、一方で、今年の『キングオブコント』は2回戦敗退となりました。早々に敗退したのは、おふたりにとっても予想外ですよね。 横 うーん、たしかに結果が出た瞬間はめちゃくちゃ悔しかったし、納得できなかったです。ライブに出るのもイヤなくらい。でも2回戦敗退以降、ライブに出るたびに先輩がイジってくれたんですよ。自分たちで言うのもアレですけど、今までの僕らって、わりとトントンとうまく行ってて、イジりにくい存在だったんです。 ──芸人としてはイジられたほうがおいしいですよね。 横 はい。まだ芸歴3年目ですけど、これまで明確な挫折がなくて、イジりにくかったと思うんです。だから、早いうちに負けるのも悪くないと知れたのはよかったです。敗北も笑いに変えられるのが芸人だと思うので。 ネタに関しても「これが自分たちらしいコントだ」って決めつけてたけど、まだ何もわかってなかったですね。自分たちらしさを残しつつ、いろんなファイトスタイルを身につけようと思いました。 ──福田さんはいかがでしたか。 福田 正直めちゃくちゃ手応えあったので、信じられなかったです。普段感情を表に出すタイプじゃないんですけど、気づいたらTwitter(X)に、「きつ」の2文字を投稿してました……。 きつ — 群青団地 福田智哉 (@gunjoUdanchI_FT) August 4, 2023 横 今、感情を表に出すタイプじゃないって言いましたけど、結果が悪いとき、福田は僕以上に悔しがるんですよ。芸歴1年目だったら一喜一憂するのもわかるけど、いまだに毎回新鮮に悔しがってるの見て、すごいなって思います。 福田 相方のネタがおもしろいから、なんでそれを評価してくれないんだろうって悔しくなるんですよね。自分がどうこうっていうより、相方の書いたネタが伝わらないのが納得できない。 横 そう言ってくれますけど、一個だけ根に持ってることがあって。ツギクルでやったネタ、福田は最初「いや、どうなんだろうねぇ……」って否定的だったんです。 福田 しゃべらないし、明確なボケのないネタじゃないですか。僕はコテコテの漫才とかを観てきたので、台本だけだとあのネタのよさが理解できなかったんです。 横 どこで「このネタはおもしろい」って気づいたの? 福田 えっと……ライブでウケたときです。だから僕も客と同じタイミングで気づきました。 横 客が笑って気づいたんなら、客より遅いから。福田が一番最後に気づいたんだよ(笑)。 ネタを大事にするためにやるべきこと ──まだ芸歴3年目のおふたりですが、これからのビジョンはありますか。 横 今はとにかく僕らのことを知ってもらう時期だと思います。お笑いを始めたばっかのときは、ネタだけで評価されたいと思ってたんですよ。東京03さんみたいに、ライブだけでも食っていけるようになりたいって。 でも、ライブにたくさん出させてもらって気づいたんですよね。ネタをお金にするのはすごく難しい。だから、ネタを大切にするためにも、テレビやYouTubeもがんばって、お笑いで食べていけるようにならなきゃいけない。ネタにこだわらず視野を広げることが、結果的にネタを大事にすることにつながるのかなと。 ──お笑い芸人にとって「売れる」という言葉の意味も変化してきたと思います。群青団地にとっては、どういった売れ方が理想ですか。 横 僕の理想はアルコ&ピースさんです。いきなり人気者になったわけじゃなくて、ずっとなんかいいところにいて、気づいたら確固たる地位を築いているという。あれはすごいですよね。 ──横さんは『アルコ&ピースのオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)リスナーだったんですよね。 横 そうですね、ずっと憧れです。あのおふたりがラジオをずっと続けてるのも、ご本人たちがやりたいことだからっていうのが伝わってくる。大儲けできなくても、やりたいことを続けるために、いいラインを維持する。あのかたちが理想です。 ──群青団地もArtistspoken Podcastで、ラジオ配信『新夜零時を過ぎたら』をしています。ラジオの仕事も広げていきたいですか。 横 正直めちゃめちゃやりたいです。でも相方がしゃべるのが得意じゃないんで(笑)。 ──前編で話していた、誰にも伝わらない高校時代のふたりだけのノリを発信するのも実はアリなんじゃないかと思いますが。 福田 本当にリスナーの方々を置いてけぼりにしちゃうんじゃないですかね……。 横 でも、たしかに自分たちだけのノリは出していきたいですね。 福田 YouTubeもそっちなんですかね。自分たちのおもしろいと思うことをそのまま出すというか。それができたらいいですね。 横 でもやっぱりキングオブコント優勝が今一番の目標です。やっぱりコントが好きなので、そこで一番を獲りたい。福田も優勝したいよね? 福田 もちろんです! 横 同じ気持ちでよかったです(笑)。 文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平、田島太陽 群青団地(ぐんじょうだんち) 横颯太(よこ・そうた、1996年10月5日、埼玉県出身)と福田智哉(ふくだ・ともや、1996年10月17日、愛媛県出身)のコンビ。2021年結成。芸歴3年目にして『ツギクル芸人グランプリ2023』(フジテレビ)ファイナリストとなる。冠Podcast『新夜零時を過ぎたら』がArtistspoken Podcastにて毎週火曜日深夜0時に更新中。YouTube『群青団地チャンネル』でネタや企画動画も配信中。 ムック『First Stage 芸人たちの“初舞台”』発売中! この連載<First Stage>がムックになって発売されました。 これまでに登場した中から9組の若手芸人に加えて、新たに真空ジェシカの撮り下ろし取材を追加! 彼らの初舞台の思い出、そしてこれからを、写真とともにB5サイズのムックでお楽しみいただけます。 『First Stage 芸人たちの“初舞台”』(扶桑社) 【後編アザーカット】
focus on!ネクストガール
今まさに旬な、そして今後さらに輝いていく「ネクストガール」(女優、タレント、アーティスト等)を紹介していく、インタビュー連載
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女優・桜田ひより、二十歳を迎えて、変わったこと、変わらないこと
旬まっ盛りな女優やタレントにアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。 桜田ひより(さくらだ・ひより)。『明日、ママがいない』(2014年/日本テレビ)などへの出演を経て、『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』(2017年/MBS・TBS)でドラマ初主演を果たす。近年では『卒業タイムリミット』(2022年/NHK)、『彼女、お借りします』(2022年/朝日放送・テレビ朝日)、『生き残った6人によると』(2022年/MBS・TBS)などで、ヒロイン役を連投。映画『交換ウソ日記』(2023年)では主演を務めた。現在『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系/毎週火曜よる9時〜)、『あたりのキッチン!』(東海テレビ・フジテレビ)に出演中。 インタビュー【前編】 目次お腹は空きつつ、心は満たされる『あたりのキッチン!』殺人鬼を演じてみたいけど、追われる役が多い二十歳を迎えて、変わったこと、変わらないこと お腹は空きつつ、心は満たされる『あたりのキッチン!』 ──放送中の主演ドラマ『あたりのキッチン!』について伺いたいです。どのような作品ですか? 桜田 はい、今も絶賛撮影中で、お腹が空きます(笑)。撮影中は、本当にお腹がすごく空くんです。 ──(笑)。料理については、どうですか? 桜田 作品内の料理は手軽に作れるもの、家庭料理が多いので、視聴者の方々もまねしていただきやすいかなと思います。この作品自体はグルメに焦点を当てるというより、グルメとハートフルなドラマの要素が組み合わさっているんですよね。 主人公の辺(あたり)「清美」ちゃんはコミュニケーション能力がゼロの大学生で、話が進むにつれて、関わっていく人々によって成長していく過程や、将来の自分についての悩みにもがく姿など、大学生ならではの胸に迫る瞬間も描かれています。観ていただければ、お腹も空きつつ、でも心は満たされる素敵な作品だと思います。 ──『あたりのキッチン!』ではメガネをかけていましたが、今までも桜田さんが演じるのはメガネをかけたキャラクターが多い印象があります。 桜田 メガネをかけてお芝居するのって意外と難しいと思っていて。技術的な問題になっちゃうんですけど、反射でどうしても顔が撮れなかったり、フレームで目が隠れたりということがあって。顔の角度とかも、意識しないとちょっと難しいんです。 ──たしかに。お顔も小さいので、合うメガネを見つけるのも難しいでしょうし。 桜田 メガネの形で、雰囲気も変わってきますし。 ──『家政夫のミタゾノ』の「実優」ちゃんと『あたりのキッチン!』の「清美」ちゃんは、キャラクター的にもかなり違いますが、その演じ分けはどうでしたか? 桜田 楽しいです。どちらもやっぱり演じていて楽しいですし。「実優」ちゃんのように相手のパーソナルスペースにすんなり入り込むことも楽しいですし、「清美」ちゃんのちょっとずつ成長していく姿は親目線というか、がんばれがんばれっていう気持ちで演じているので、それも楽しいです。観ていただく方々に変化を感じていただけることを期待しています。 殺人鬼を演じてみたいけど、追われる役が多い ──今後、挑戦してみたい役柄はありますか? 桜田 今後……そうですね。まだ制服を着る役にも挑戦できるかなと思うので、制服を着た役や、若さならではの恋愛に焦点を当てた役とか、それと! 刺激的な殺人鬼のような役にも挑戦してみたいと思っています。二十歳を過ぎてから、役の幅もますます広がると思っているので、さまざまな役に挑戦していきたいです。 ──若い女優さんにこの質問をすると、みなさん、殺人鬼の役を挙げるんですよね(笑)。 桜田 わぁー。みなさん、思考がちょっと変わってるのかもしれないですね。私もだけど(笑)。 ──殺人鬼の役を演じたいということですが、今までって、逆に何かに追われる役のほうが多かったりしません? 桜田 たしかに! 追われる役、多いですね。よく森に逃げて、森の中を走り回るシーンが多かったです。 ──ですよね。それと、プライベートの話も伺いたいのですが、最近ハマっているものや気になっていることはあります? 桜田 私、最近何してるんだろう……(笑)。思い出せない……台本を読んでいることくらいしか思い浮かばないです。楽しみを見つけたいと思います。 ──(笑)。何かやってみたいことはありますか? 桜田 マイナスイオンがたくさん出ているような森に行って、癒やされる系の旅館に泊まってみたいです。鳥のさえずりを聞きながら、リラックスできる場所で過ごしてみたいです。私はインドア派なので、思いきって外に出てみたいですね。 ──ちょうど1年くらい前に取材で話を伺ったときには、スカイダイビングをやりたい、と。 桜田 ああー(笑)。スカイダイビングは、ずっとやりたいんです。機会があれば挑戦したい。気球にも乗ってみたいです! 二十歳を迎えて、変わったこと、変わらないこと ──去年の12月に二十歳を迎えてもうすぐ1年が経ちますけど、どうですか? 何か変わりました? 桜田 なんにも変わっていません(笑)。仕事は本当に充実した1年で、着実にステップアップしている感覚はあるんですけど、プライベートでは何も変わりませんでした。 ──たとえば、お酒を飲むようになったり……。 桜田 そうですね……お酒も本当にたまにしか飲まないので。しかも基本的に家族と乾杯することが多いです。 ──なるほど。まわりからの期待など、二十歳になって変わったと思うことはありますか? 桜田 そうですね、仕事先で、作品を観たよ、よかったよ、と褒めていただく機会が増えたと思います。すごくうれしいです。 ──あと、現在思っている(スカイダイビング以外に)今後、挑戦してみたいことってあります? 桜田 冬に「かまくら」をつくってみたいです! これまで「かまくら」をつくったことがないので、試してみたいです。家の中でやりたいことは、だいたいやってきたと思うので。連れ出してくれる何かがないと、外に出られないんです(笑)。だから「かまくら」をつくりに行きたいですね。 ──「かまくら」づくりは、けっこうコツがいるんですよね。 桜田 崩れないようにがんばりたいです。手先が器用だと思うので、できる気がします(笑)。 ──体力も……。 桜田 体力も意外とあると思うので……がんばります! ──具体的にこのあたりへ行きたいとか、考えている場所はありますか? 桜田 北海道でおいしいものを食べたいですね。特に海鮮系。 ──北海道でおいしいものを食べて、「かまくら」をつくって、気球に乗って……。 桜田 森の鳥のさえずりを聞きながら(笑)。 ──ぜひ、そういう仕事を。 桜田 お待ちしております(笑)。 ──(笑)。最後に……日常生活で気をつけていることとか、普段やっていることはありますか? 桜田 撮影中はお弁当を食べることが多いので、時間があるときは、サラダや野菜を摂取して身体のバランスを保つようにしています。睡眠にも気をつけています。睡眠不足になると肌が荒れたりするので、スキンケアや身体のメンテナンスは、ゆとりがあるときに心がけていますね。最近は特に。 ──料理とかも? 桜田 たまに自炊もします。家族が食べたいものをつくったりしています。簡単なスープをつくったりすることが多いですね。 ──いわゆる冷蔵庫にあるものを使って……。 桜田 レシピさえあれば、基本なんでも! 取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 ヘアメイク=菅井彩佳 編集=中野 潤 ************ 桜田ひより(さくらだ・ひより) 2002年12月19日生まれ。千葉県出身。『明日、ママがいない』(2014年/日本テレビ)などへの出演を経て、『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』(2017年/MBS・TBS)でドラマ初主演を果たす。映画『交換ウソ日記』(2023年)では主演を務めた。現在『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系/毎週火曜よる9時〜)、『あたりのキッチン!』(東海テレビ・フジテレビ)に出演中。写真集『my blue』(集英社)が11月29日に発売予定。W主演を務める映画『バジーノイズ』が2024年初夏に公開予定。
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『ミタゾノ』に新しい風を吹かせたい。女優・桜田ひよりの役づくり
#17 桜田ひより(前編) 旬まっ盛りな女優やタレントにアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。 桜田ひより(さくらだ・ひより)。『明日、ママがいない』(2014年/日本テレビ)などへの出演を経て、『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』(2017年/MBS・TBS)でドラマ初主演を果たす。近年では『卒業タイムリミット』(2022年/NHK)、『彼女、お借りします』(2022年/朝日放送・テレビ朝日)、『生き残った6人によると』(2022年/MBS・TBS)などで、ヒロイン役を連投。映画『交換ウソ日記』(2023年)では主演を務めた。現在『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系/毎週火曜よる9時〜)、『あたりのキッチン!』(東海テレビ・フジテレビ)に出演中。 「focus on!ネクストガール」 今まさに旬な方はもちろん、さらに今後輝いていく「ネクストガール」(女優、タレント、アーティスト等)を紹介していく、インタビュー連載。 目次中学3年生で“役”に没入する感覚を経験作品を通して“青春時代”を擬似体験『ミタゾノ』に新しい風を吹かせたい 中学3年生で“役”に没入する感覚を経験 ──桜田さんがこの世界に入ってからの、初仕事は覚えていますか? 桜田 本当の意味で最初に行った仕事というと、詳しく思い出せないんですけど……でも小さいころから演技のレッスンに通っていて、気づいたらドラマや映画に出ていた気がします。 ──こんなふうになりたいと憧れた女優の方などはいました? 桜田 女優さん……5歳くらいから始めているので、そのころはまだ将来像まで考えることはありませんでしたね。習い事の延長のような……仕事というより、楽しいものとして、演技を楽しんでいました。 ──なるほど。経験を重ねる中で、特に印象に残っている作品はありますか? 桜田 中学3年生のときに出演した映画『祈りの幕が下りる時』(2018年)です。初めて“役”に没頭したという経験がとても印象に残っていて、鮮明に覚えています。いい意味で“役”と一体化する感覚を得ることにつながったんですけど、逆な意味では(演じていた)記憶がなくなるのは怖いなと感じたりもしました。 ──印象に残っている共演者の方はいますか? 桜田 小日向(文世)さん、お父さん役でした。とても印象に残っています。 ──まわりの反応はどうでした? 桜田 反応はスゴかったです。たくさんの反響をいただき「大ヒット御礼の舞台挨拶」にも登壇させていただいたので。本当に多くの方から、印象に残ったと言っていただけました。 ──その後もいろいろなドラマに出演されていますが、「役づくり」について、ルーティン的なものはできたりしましたか? 桜田 そうですね。役づくりの際に大切にしているのは、自分自身が、演じる役の一番の理解者であることです。たとえば、殺人鬼のような役を演じる場合、通常の感覚ではその役の行動に共感できないじゃないですか……なんでこんなことするんだろう?とか、普通の人じゃ考えられないようなことをするという。そういう非日常的な役を演じるにあたって、実際には経験したこともないし、その思考回路に入ることもできません。だからこそ、演じる役の過去や背景を想像し、役の立場や行動を理解するよう努めます。 たとえば、幼少期に何があったのかとか、どのような経験からこうなったのかとか……こういったアプローチをして理解を深めることによって、その役の立場や意味を理解できるようになると思っています。役割も明確になりますし。 ──たとえば……女子高生役やリアルな彼女の役、またはSFや架空設定の役など、それぞれ異なる役を演じる際には、どのように? 桜田 私は原作のある作品に出させていただくことが多いので、そのときは原作を入念に読み込んで、その世界に入り込むことから始めたり。あと、洋画や海外の作品も好きなので……現実離れした作品とか多いので、架空の設定にも抵抗感が薄いですし、想像力を広げることも無限大だと考えているので。なので、役づくりで苦労することはあまりありません。作品の世界にスムーズに入り込めるほうだと思っています。 ──海外の作品で、特に好きなものはありますか? 桜田 SF、ファンタジー、アクションとかすごく好きですね。 ──具体的な作品を挙げるとしたら? 桜田 ありきたりなんですけど『スター・ウォーズ』『ハリー・ポッター』『ミッション:インポッシブル』『バイオハザード』などが好きです。ほとんどアクションとSFですね(笑)。 作品を通して“青春時代”を擬似体験 ──最近では、映画『交換ウソ日記』がありましたけど、この作品はどうでした? 高校生役でしたね。 桜田 そうですね。青春ものを演じることは、自分の人生の中で限られた期間しかないと思っています。大人になっちゃうとできないし、子供すぎても難しかったし。だからこそ、今の絶妙なラインでいるからこそ、この作品が成立すると感じました。 同世代の俳優の方々と共演することは刺激になりますし、制服を着て青春ものを演じることは、高校時代や中学時代に基本的に仕事をしていた私にとって、青春を味わう機会でしたね。 ──なるほど、手応えはどうでした? 桜田 手応え……実際には試行錯誤が多かったです。作品をつくる側として、観てくださる方にどれだけキュンキュンしてもらえるかがすごく重要だと思っているので、本当に、表情の微妙な変化など、それらを監督、プロデューサー、カメラマン、そして共演者と協力してつくり込みました。けっこう緻密な計算はありましたね。 ──まわりからの反響は? 桜田 はい、ありました。特に女性のファンの方からの反応が増えたように感じました。これが初めての恋愛映画で、ヒロインを務めることになったので、ファンのみなさんもすごく喜んでくれて。 ──ご自身、映画館で鑑賞されたりとか……。 桜田 観ました! 実際に映画館に行って観ました。みなさん、意外なところにキュンキュンしてくれてたりとか……え? ここでキュンキュンするんだ、とか。私たちが演じた作品に真摯に向き合ってくれている様子を見て、とても印象に残っています。 『ミタゾノ』に新しい風を吹かせたい ──近々のドラマ出演について伺わせてください。『家政夫のミタゾノ』のオファーを受けたとき、どうでした? 桜田 シリーズとして続いている作品だったので、それに伴う責任も感じました。単にシリーズの一環として捉えるのではなく、この『家政夫のミタゾノ』という世界観に新しい風を吹かせられる機会と思い、挑んだんです。現場はすごく明るく、松岡(昌宏)さんや伊野尾(慧)さんが温かく迎えてくださったので、とても楽しかったです。 ──桜田さんが演じるのは、どのような役柄なんでしょう? 桜田 私が演じている矢口「実優」ちゃんは感情が激しくて、シーンごとに、喜び、怒り、悲しみがジェットコースターのようにコロコロ変わるキャラクターだったので、演じるのがすごく楽しかったです。「実優」ちゃんに振り回される周囲のキャラクターたちとの関係性の在り方も、この作品ならではだと思います。 ──撮影中、印象に残ったエピソードや、共演者とのエピソードはありますか? 桜田 めちゃくちゃ暑かったですし、ロケ地が全部遠かったんです。移動距離がかなり長かったので、この夏は『ミタゾノ』に捧げていたな(笑)と感じています。 ──松岡さんや伊野尾さんはどうでした? 桜田 おふたりとは、撮影の合間に本当に他愛もない会話をさせていただきました。生で見る「ミタゾノ」さんは、画面で見る「ミタゾノ」さんより迫力満点です(笑)。大きさ含めて、ぜひとも生で見てほしいって思いました。 ──放送回の中で「実優」さんが活躍するエピソードはあります? 桜田 はい、「実優」ちゃんが活躍するエピソードも、もちろんあります! あと、全編を通してなのですが、「実優」ちゃんは基本的にゲストの方々にツッコミを入れていくタイプなので……ワーッてやっている中に、ポンポンおもしろいツッコミを入れたり、物語が進行する中で瞬時におもしろいツッコミを考えたり、テンポを崩さずにセリフを言う必要がありました。このリズムを崩さないようにしたり、「実優」ちゃんのツッコミが笑いを誘導できるようにバランスを取ることは、今回の撮影で難しい部分でしたね。 ──今回、初めて『家政夫のミタゾノ』を観る方にとっての見どころは? 桜田 やっぱり「ミタゾノ」さんが存在することによって、作品内の謎が次第に明らかにされていく過程が楽しいところです。それと、登場するゲストの方々が、本当にこんなにやっちゃっていいんですか?っていうくらい、もうハチャメチャに作品の中で暴れてくださっているので、その中に、合いの手を入れていく「実優」ちゃんだったりとか。うまくお茶の間に笑いを届ける役割を果たせていればいいなと思います。 ──特に印象に残っているエピソードはあります? 桜田 やっぱり第1話は印象的でした。私自身も初めて『家政夫のミタゾノ』の世界に入った瞬間でしたし。第1話では、ゲストとして松本まりかさんが登場して(演技的に)暴れ回っているパフォーマンスがすごく印象深かったです。さすがだな、と。その空気感をベースに『家政夫のミタゾノ』の世界観へ、私も一気に入り込むことができました。 ──ありがとうございます。各エピソードとも、楽しみです。 取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 ヘアメイク=菅井彩佳 編集=中野 潤 ************ 桜田ひより(さくらだ・ひより) 2002年12月19日生まれ。千葉県出身。『明日、ママがいない』(2014年/日本テレビ)などへの出演を経て、『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』(2017年/MBS・TBS)でドラマ初主演を果たす。映画『交換ウソ日記』(2023年)では主演を務めた。現在『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系/毎週火曜よる9時〜)、『あたりのキッチン!』(東海テレビ・フジテレビ)に出演中。写真集『my blue』(集英社)が11月29日に発売予定。W主演を務める映画『バジーノイズ』が2024年初夏に公開予定。 【インタビュー後編】
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“恐竜推し”女優の山谷花純、3度目の朝ドラ出演への思い
#16 山谷花純(後編) 旬まっ盛りな女優やタレントにアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。 山谷花純(やまや・かすみ)。オーディションを経て、ドラマ『CHANGE』(2008年/フジテレビ)で女優デビュー。2015年『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(テレビ朝日)に“モモニンジャー”役として出演。女優としてドラマ、映画への出演を重ね、主な出演作は映画『劇場版コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―』(2018年)、映画『フェイクプラスティックプラネット』(2020年)、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年/NHK)、『親友は悪女』(2023年/BSテレ東)など。現在、NHK連続テレビ小説『らんまん』に“宇佐美ゆう”役として出演中。後編では、最近の仕事からプライベートまでを伺った。 インタビュー【前編】 目次「悪女」を演じて、気づいたこと3回目となる朝ドラへの出演好きな恐竜は、スピノサウルス 「悪女」を演じて、気づいたこと ──最近のお仕事について伺いたいのですが、『親友は悪女』で主演されていましたね。不思議というか、独特な役で……まるで原作からそのまま抜け出てきたような空気感で演じられていました。 山谷 そうですね。本当にみんなから「意地悪」って言われて! 「性格が悪そう」とも(笑)。 『親友は悪女』ではダブル主演ということもあり、役づくりにおいては相手役との関係性を重視しました。もし私ひとりが主演だったら、違ったアプローチをしたかもしれません。でも、ダブル主演という表記がされていたことから、お互いに強く叩かれなければ受けきれない部分もあると考えました。私が弱かったら(「堀江真奈」役を演じる)清水くるみさんの苦しみも立たないだろうなと。相手をかわいそうと思わせなければ、私も活きてこないだろうと思いましたし。それならば、容赦なくやったほうがお互いにとってすごくいいだろうなと思って、けっこうひどいことをしましたね(笑)。 もちろん負けたくない気持ちもありましたが、お芝居は相手のために行うものだと思います。ただ、私がパンッと叩くとき、叩かれた側も痛いですし、叩く手も痛い。だから、撮影中は家に帰ってくると疲れがどっと出てましたね。叩くことの痛みを実感しました。ちょっと時間が経ってから、自分が疲弊していたことに気づく。 ──ダブル主演……なるほど。それは考えたことがありませんでした。 山谷 ある意味、親友関係や、いじめられっ子いじめっ子などの作品は、お互いが弱かったり強かったりしないと成立しないんじゃないかと思います。 ──伝わりにくいかもしれませんが、プロレスのような感じですかね? 山谷 まさにそんな感じです(笑)。格闘技のような感覚。 ──まわりの感想は、どんな感じでしたか? 山谷 親からは、「すごく嫌な子だねぇ」って言われたり、「そんな娘に育てた覚えはないよ」と言われたりしました(笑)。でも「強い役が似合うね」とも言われます。実は、読んだときに共感したのは清水くるみさんが演じた役のほうでした。撮影が終わって時間が経つと、私が演じた「高遠妃乃」と共通する部分も少しずつ見つかってきて、実は承認欲求が強い部分や負けず嫌いな部分が似ているのかもと気づきました。 3回目となる朝ドラへの出演 ──なるほど。次に『らんまん』についても伺わせてください。役柄については、どうですか? 山谷 長屋の住人という設定で、たくさんのキャストがいる中で、自分がどのようなバランスを取って存在感を出していくか、台本を読んだときに考えました。長屋にはワケありの人が多くて(笑)、皆さまざまなものを抱えて十徳長屋にたどり着いたという背景があります。 私が演じる「おゆう」さん(宇佐美ゆう)は、恋愛や異性へのバックボーンを抱えて唇を噛みしめながら生きてきた強い女性です。物語の中で(「おゆう」さんが自らの)過去をオープンにする回があるのですが、そのときには絶対にかわいそうと思われたくないと思いました。脚本家の長田育恵さんは、女性から見てもかっこいいと思える女性を描くのが得意で、素敵な言葉で物語を紡いでくださるので、その世界に恥ずかしくない存在でありたいと思いました。どんなに悲しいことがあっても、私はその過去を抱きしめながら、明日を生きているし、今は笑っているんだよ、それが幸せだと思うんだという気持ちを視聴者に届けたいと思い、役作りに取り組んでいます。地に足をつけて踏ん張ることだけを意識していますが(笑)、自分の中の強い部分や負けず嫌いな部分にも意識を向けながら、役に向き合っていますね。 ──連続テレビ小説(朝ドラ)は何回か経験していると思うのですが、作品によって現場に違いがあったりしますか? 山谷 最初のころの『おひさま』(2011年)の記憶はほとんどなくて……。『あまちゃん』(2013年)の現場のことは、うっすらと覚えています。ただ、そのときは作業着を着ることができてうれしかったという記憶くらいで(笑)。海女(あま)の学校に行って「じぇじぇじぇ!」って言えるみたいな(笑)。海女のダンスを踊るのが大変だったとか、そういう部分的な記憶はありますが、具体的に何が起きたとか、話したことはほとんど覚えていません。 ──では、今回の『らんまん』で、しっかりと朝ドラの現場を経験されたという……。 山谷 そうですね。当時(『おひさま』『あまちゃん』の撮影時)は、まだ中学生や高校生で、お仕事という感覚がそれほど強くありませんでした。好きなことをしているだけで、習い事のような感覚でお芝居をしに行っていました。だからこそ、今になって朝ドラの現場での撮影方法や進行の仕方などを初めて経験するような感じなんです。 ──『らんまん』の撮影中に、共演者の方々とこんなことをしているみたいなことは、何かありますか? 山谷 将棋をやっていましたね、子役の子と。将棋は年代を問わず楽しめるゲームだし、大人も一緒に遊べるんだなと。それと、この作品は明治時代の設定なので、撮影現場に金平糖とかあやとりがあったりするんです。カメラが回っていないところでも、みんなが着物姿で金平糖を食べている様子は素敵です(笑)。渋谷のど真ん中で、スタジオに来るまではセンター街を抜けてくるのに、スタジオに入ったら着物姿になってかつらをかぶり、下駄を履いて……みたいな。で、撮影が終わると、またネオン街を抜けて駅へ向かう。不思議な感覚です。でも、それもこの仕事の楽しさのひとつだと思います。 ──たしかに。楽しそうな現場ですね。『らんまん』での山谷さんのココを見てほしいという、見どころをぜひ。 山谷 人間は失敗を重ねて、今があるんだと思います。その中で、悔いていることがたくさんあると思うんです。でもそれでも乗り越えて、たとえわずかな後悔があったとしても、「悔いていないよ。今が一番楽しいし、あのときに戻れるなら同じ道を選ぶ」と言えるような「おゆう」さんの姿を見てほしいです。 好きな恐竜は、スピノサウルス ──ありがとうございます。プライベートも少し伺いたいのですが、最近ハマっていることは何かありますか? 山谷 最近はインドアを卒業しようと思っています。去年までは映画を観たり、本を読んだり、マンガを読んだりと、すべてを家の中で楽しむことに没頭して、インドアを極めようとしていましたが、さすがにそれは不健康だなと思って。最近は散歩をしたり、コーヒーを片手に外で過ごすこともあります。 あと、もう一度恐竜にハマってみようと思って! 子供のころから恐竜や動物が大好きで、絵本を読んでもらうよりも、図鑑を見せてもらって育ちました。おばあちゃんと一緒に、図鑑の中の恐竜で物語を作る遊びをずっとしていました。最近はそれを思い出して、恐竜の映画やアニメも、改めて楽しんでいます。恐竜展にも行って、子供のころと同じ気持ちになりました。本物の恐竜が存在していたことを再確認して、いつか本物の恐竜に会えるかもしれないと思ったり。久しぶりに仕事を忘れて楽しむ時間を取り戻せて、リフレッシュできたのはとてもよかったです。 ──恐竜展というのは、恐竜の骨が飾られている展示ではなく……。 山谷 いや、飾ってました。本物の。 ──最近よくある、ロボット的に動くやつではなく? 山谷 私、恐竜の骨が好きなんですよ(笑)。恐竜の保存状態が素晴らしく、皮膚の断面なども残っているんです。最近は新種の「ズール」という恐竜が日本に来ていて、それが目玉でした。本当に存在していたことを実感できて、とても楽しかったです。 ──恐竜に関しては、途中で新たな発見があったりしますよね。実はカラフルだったとか。 山谷 そうです、そういう発見もあります。恐竜にヒレがあったのではないかとか、水陸両用だったのではないかとか、爪の長さとか、いろいろ。 ──それを、まわりの方とも話されるんですか? 山谷 ほとんどの人には共感されないですね(笑)。ただ、山谷家では姉妹そろって恐竜が好きだったので、マンモスとか、古代のモノとか……家族の中では盛り上がります。 ──おすすめの恐竜は先ほど言っていた「ズール」? 山谷 いや、私のおすすめはスピノサウルスですね。ゲラノサウルスとライバル関係にあったんですよ。スピノサウルスはティラノサウルスよりもシュッとしていて、ゴツくはないですが、爪が鋭かったり。 ──……肉食? 山谷 肉食です(笑)。この前、恐竜展に行ったときにフィギュアが売られていて、つい買っちゃいそうでしたが、まだ早いかなと思って我慢しました。 ──いずれは……? 山谷 私は熱しやすく冷めやすい性格なので、一瞬で手に入れてしまったら冷めてしまうだろうなと思って、我慢して帰りました(笑)。 ──なるほど。インドアのほうについても伺いたいのですが、WEB(『smart Web』)で映画評の連載(「All IS TRUE」)をされていますよね。ご自分で執筆したり、俳優の吉田鋼太郎さんや、のんさんとの対談をしたりというのは、本職の仕事とは違う経験だと思いますが、実際にやってみてどうですか? 山谷 いやぁ、難しいけど楽しいですね。すごく新しい挑戦です。 ──もともと、執筆などの表現も好きだったりします? 山谷 私は文章を書くのがとても好きで、小さいころから作文が大好きでした。国語のテストの「この作品を読んだ感想を述べよ」という問題でも、私の回答はたいてい独創的すぎて「×」になってしまうんです。感想を述べたのになぜ×をつけるのかと抗議して○をもらったこともあります(笑)。本当に生意気な小学生でした。ただ、文章で表現することは、演技のときには言葉で表せない表情や感情を、文字で表すということにもつながっていて。うれしい気持ちひとつ取っても、どのようにうれしかったのか、何を伝えたいのか、どのような文章にしたら相手がすんなりと気持ちを理解してくれるのか……そういうことを考えて、表現方法を工夫することがとても楽しいです。 ここのところずっと小説を読むことを怠っていたんですが、年明けから読書を復活させて、いろいろな作品を読んでいます。作家さんによって言葉の使い方や文章の組み立て方が違うので、参考にもなります。 ──最近読まれた小説で、これは!という作品はありますか? 山谷 湊かなえさんの『絶唱』(新潮社)です。ちょうどこのあいだ読み終わったんですが、阪神・淡路大震災とトンガ王国という国を絡めた物語で、善意の二面性や被災者への思いなどが描かれています。湊かなえさんは登場人物の視点を分けて描くので、一冊の本でも短編集を読んでいるような感覚になって、私はとても好きですし、素敵だなと思います。 ──山谷さん自身が出演された映画の原作『告白』(双葉社)も読まれたんですね。 山谷 もちろん、大好きです。『告白』も大好きですし、『母性』(新潮社)もとてもおもしろかったです。 ──その『告白』での学生役など、今までいろいろな役を演じてきていますが、今後やってみたい役柄はありますか? 山谷 そうですね、準備してから挑まないといけないような、役職的な役に挑戦してみたいと思っています。今までは患者の役など、お世話をしていただく……何かエピソードを持ってくる役が多かったのですが、ちょっと年齢も上がってきたこともあり、医者や弁護士など、さまざまなゲストを受け止める役に挑戦してみたいと思っています。 何度も病気をして手術を受けた役を演じたことはあるのに、医者として手術着を着たこともないんです。たぶん専門用語もたくさんあって大変だと思うんですけど、しっかりと勉強し準備をして役に入る経験をしたいと思っています。 ──楽しみにしています。 取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 ヘアメイク=永田紫織 編集=中野 潤 ************ 山谷花純(やまや・かすみ) 1996年12月26日生まれ。宮城県出身。オーディションを経て、ドラマ『CHANGE』(2008年/フジテレビ)で女優デビュー。2015年『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(テレビ朝日)に“モモニンジャー”役として出演。女優としてドラマ、映画への出演を重ね、主な作品は映画『劇場版コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―』(2018年)、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年/NHK)、ダブル主演を務めた『親友は悪女』(2023年/BSテレ東)など。2019年『フェイクプラスティックプラネット』で、マドリード国際映画祭2019「最優秀外国語映画主演女優賞」を受賞。現在、NHK連続テレビ小説『らんまん』に“宇佐美ゆう”役として出演中。
サボリスト〜あの人のサボり方〜
クリエイターの「サボり」に焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載
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「先入観を洗い直し、枠組みからものを考える」大川内直子のサボり方
クリエイターの活動とともに「サボり」にも焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載「サボリスト~あの人のサボり方~」。 今回お話を伺ったのは、株式会社アイデアファンドの代表として文化人類学の手法をビジネスの分野で活用し、調査や分析を行っている大川内直子さん。文化人類学的な思考がもたらす調査の特徴や、日常を変えるヒントとは? 大川内直子 おおかわち・なおこ 佐賀県生まれ。東京大学教養学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。専門分野は文化人類学、科学技術社会論。学生時代にベンチャー企業の立ち上げ・運営や、マーケットリサーチなどに携わった経験から、人類学的な調査手法のビジネスにおける活用可能性に関心を持つ。大学院修了後、みずほ銀行に入行。2018年、株式会社アイデアファンドを設立、代表取締役社長に就任。著書に『アイデア資本主義 文化人類学者が読み解く資本主義のフロンティア』(実業之日本社)がある。 目次ビジネスの現場で知った文化人類学の可能性先入観に捉われず、丁寧に観察する他人を知ることが、自分を知ることにつながる日常のルーティンを取っ払いたい ビジネスの現場で知った文化人類学の可能性 ──まず、文化人類学をビジネスに活用するようになった経緯について聞かせください。 大川内 大学の学部時代から文化人類学を専攻していて、そのころに「ビジネス人類学」という領域があり、海外では文化人類学者が企業で活躍しているということを知ったんです。ただ、当時は文化人類学の役に立たなそうなところがおもしろいと感じていたので、自分がビジネスに活用するなんて思っていませんでした。 ──大川内さん自身は、もともと研究者肌のタイプなんですかね? 大川内 そうですね。大学に残って研究するほうが肌に合っているだろうなと思っていました。そんなときに、たまたまアメリカのGoogleの依頼で、日本で人類学的調査をする仕事をしたことがあったんです。あらゆるデータを持っている最先端の企業が、文化人類学の泥臭い手法や知見を必要としていることに衝撃を受けると同時に、文化人類学の可能性を肌で感じました。 ──そのときはどんな調査を行ったのでしょうか。 大川内 日本の若者がどのようにスマートフォンを使っているのか調査しました。高校生や大学生の家に行かせてもらい、その様子を観察するんです。データだけではスマホを使っていない時間のことや、使っているときの姿勢や反応はわからないじゃないですか。データからは見えない部分を調査するという体験自体がすごくおもしろいと感じました。 ──それで大学の外に出て働くという道も意識するようになったと。 大川内 ほかにも同じような海外企業の案件をお手伝いすることがあり、日本でも海外企業をクライアントに文化人類学の調査を提供していくことは可能だなと思いました。あくまでも自分ひとりが生活していくレベルですが。 それに、今後は日本でも大学の人材とビジネス界の人材が混ざり合い、相互作用していくような気がしていたので、一度外の世界でがんばっても、また研究がやりたくなったら大学に戻れるんじゃないかという気持ちもありましたね。 ──銀行に就職されたのも、先を見据えてのことなんですか? 大川内 そうですね。学生ベンチャーをやっていた経験がのちの起業につながるんですけど、学生のまま起業しても、組織におけるものごとの決め方や進め方、お金の流れなどがわからない。それで、組織や金融について学ぼうと、銀行に就職しました。 ただ、いざ入ってみると銀行の仕事がすごくおもしろくて。周囲も優秀な方ばかりで、ずっと勤めてもいいかなとも思っていました。でも結局、失敗しても成功しても、自分にしかできないことをやってみたいと思い、「アイデアファンド」を立ち上げたんです。 先入観に捉われず、丁寧に観察する ──社名に「アイデア」と入っていますが、起業時から文化人類学的調査をビジネスの世界で行うだけでなく、アイデアにつなげるという部分を意識されていたのでしょうか。 大川内 銀行にいたとき、大学院とはあまりに違う時間の流れの早さに衝撃を受けました。そこから、資本主義について考えるようになったんですね。私が出した『アイデア資本主義』という本のコンセプト(※)も、このときに頭の中にあったもので。それで、文化人類学を通じてアイデアを生み出し、少しでも社会をおもしろくする活動をしたいと思うようになったんです。 ※物理的なフロンティアの消滅に伴い、アイデアが資本主義の新たなフロンティアとして台頭し、よいアイデアに資本が集まる社会になること ──調査にはいくつか手法があるようですが、どのようなスタイルが基本なのでしょうか。 大川内 基本的には泥臭いフィールドワークですね。現場に行って観察し、お話を聞く、みたいな。調査期間はだいたい2カ月ほどで、プロジェクトの内容や目的に応じて1日だけの視察もあれば、4カ月くらいかける場合もあります。 ただ、コロナ禍に入ってそれが難しくなったこともあり、ビッグデータをフィールドに見立てた調査も行うようになりました。商品の購買データだけでは見えなかったものも、テレビの視聴ログ、スマホの利用履歴などを組み合わせていくと、人の行動が立体的に見えてくるんですよ。 ──調査をして報告するまではどのような流れになるんですか? 大川内 まず、調査方法をデザインするところから始めています。一般的なリサーチ会社のアンケート調査のように数を集めるのではなく、誰を対象にどういう順番でどのくらいの時間をかけて調査するのが効果的なのか検討するんです。文化人類学の調査はたくさんの人を対象にはできませんが、そのぶんおもしろくて意味のある調査ができるよう、対象をピンポイントで洗い出していきます。 また分析にも時間をかけていて、仮説や先入観に捉われず、調査で集めたたくさんのファクトをもとにさまざまな可能性について議論しています。 ──誰を対象に、いかに観察するかは文化人類学の知見が活きるポイントですね。 大川内 そうですね。おもしろいものに気づけるかスルーしてしまうかは観察者次第ですし、観察中に仮説の修正・再構築ができるかどうかも勝負の分かれ目で。その上でAさんというターゲットに向けて商品を作るなら、だんだんAさんという人物の顔が見えてくるというか、行動パターンや考え方が浮かび上がってきて、Aさんの行動理論が作れたらいいなと思っています。 ──そうしてターゲットの人物像を提示するだけでなく、アイデアと結びつけて提案するようなこともあるのでしょうか。 大川内 私たちだけでアイデアを出すのではなくて、クライアントと一緒にアイデアを出していくことが多いです。ターゲットのインサイト(行動の根拠や動機)とクライアントが持つ技術や顧客網を組み合わせると、どんな新商品が考えられるのか、とか。 他人を知ることが、自分を知ることにつながる ──文化人類学的なアプローチが機能したケースとしては、どんなものがありますか? 大川内 大手家電メーカーさんの家電修理サービスの調査なんですけど、商品の故障やトラブルに対して修理対応する部門があるので、もっと活躍させてアピールできるようにしたいというご相談でした。でも、調査でわかったのは、顧客は修理が必要になった時点でかなりマイナスの気持ちを抱くということだったんです。 修理サービスを提供する側としては、壊れたものを修理すれば喜ばれるという前提だったのが、顧客にしてみれば商品が壊れた時点で「不良品だったのでは?」と感じるし、直ったところで新商品を買ったときのような喜びもない。こうして問題のフレームから考え直す必要があるというところから議論できたときは、文化人類学のよさが活かせたなと思います。 ──先入観を捨てて立ち止まって考えたり、注意深く観察したりすることは、ものの見方や考え方を見直すためのちょっとしたヒントになるような気もしました。 大川内 人間の考えとか行動って経路依存性が強いので、ルーティン化されやすいんですよね。それは合理的に生きるために必要な進化だと思うんですけど、行き過ぎると凝り固まってしまう。そこで、あえてでき上がった“自分の中の経路”を変えてみる、つまり考え方の枠組みを変えてみることも重要だと思います。文化人類学がそういったアプローチに強いのは、さまざまな社会を調査してきたからなんです。 たとえば、西洋の文化人類学者によるアフリカの民族調査は、現地の常識などに捉われず観察できた一方で、自分たちの常識を見直す自己批判にもつながっていきました。人と比べることで自分もわかるというフィードバックを続けてきたんです。 私たちが日本で調査する場合、外部の視点は持てませんが、視座を変えたり広げたりするための工夫として、先入観を洗い出すようにしています。この人ならこういうことを言うだろう、こういうことが好きだろう、といった先入観を洗い出し、調査で答え合わせするんです。そこで覚えた違和感を掘っていくと、本質や発見にぶつかるというか。 ──そうやって一度先入観を見直すと、人に対する印象なども変わってきそうですね。 大川内 そうですね。人が生きる術としても、文化人類学は役立つんじゃないかと思っていて。私も個人的にはコミュニケーションってあまり得意じゃないんです……(笑)。でも、文化人類学者の心で他者を理解し、自分も理解することでなんとかやっていけている。 自分の中に「人間事典」みたいなものがあって、「この人はこういうカテゴリーの人かな?」「同じカテゴリーの人でもこういう違いがあるんだな」とか、書き込んだり書き換えたりしているんです。あまりいい趣味とはいえませんが……私はこの事典なしでは人間関係を構築できないと思いますね。 日常のルーティンを取っ払いたい ──大川内さんも、サボりたいなって思うことはありますか? 大川内 サボってる時間、仕事の時間、趣味の時間みたいなものが三位一体というか、あまり区別できていないかもしれません。仕事といっても、中長期的に会社の方向性とか依頼されている講演の内容とかを考えていることもあって。「こういうことをしたいな」って考える時間は、自由に頭を使って夢想している趣味の時間でありつつ、ある意味では事業計画にもつながっている。そういうイメージですね。 ──じっくり考える時間をリフレッシュにあてるようなこともあるのでしょうか。 大川内 場所や時間軸を変えるようなことはやっていますね。午前中にブルドーザーのように溜まったタスクをガーッと処理して、午後は場所を変えて2時間だけ本質的なことを考える時間にしよう、とか。両方うまくできるとリフレッシュになるし、満足感もあるんです。 ──では、単純にやっていて夢中になるもの、好きな時間などはありますか? 大川内 パズルがすごく好きで。数独やジグソーパズル、ナンプレ、フリーセルなんかを無心で解いている時間は好きですね。うすーく脳が冴えている状態でものを考える時間にもなっているので、安らいでいるのかわかりませんが。 ──この連載では、無心になる時間やぼーっとする時間を設けることで、ぼんやりとした考えがアイデアに結びつく、とおっしゃる方もいるのですが、それに近いのかもしれませんね。ほかに息抜きはありますか? 大川内 もともとはひとり旅が好きでした。場所を変えて自分の中の当たり前を洗い直して、考え方のパラダイムを変える、ある種の息抜きとして旅をしていたんです。子供が生まれてからはそうもいかなくなったので、土日だけ子供と田舎のほうに行って緑を楽しんだりしています。田舎育ちなので、「山に帰りたい」という衝動が常にあるんですよ。 ──慣れ親しんだ空気を感じたいというか。 大川内 たぶんそうですね。資本主義の最先端みたいな東京にいて、その合理性に適合している自分にイライラしてしまうというか。それこそ、経路依存的な状況に陥っているので、それを取っ払うために土日だけでもがんばっているんです。 ──ささやかでも、あえてルーティンを崩してみるのって、自分の中の枠組みをずらすことにちょっとつながりそうですね。 大川内 そう思います。いつも通り過ぎている駅で降りてみるとか、近所の知らない道を歩いてみるとか、そういうことでも気づきはあるというか、おもしろいですよね。 撮影=石垣星児 編集・文=後藤亮平
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「どんなときでも、人に寄り添う気持ちを忘れない」浅田智穂のサボり方
クリエイターの活動とともに「サボり」にも焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載「サボリスト~あの人のサボり方~」。 近年、映画やドラマの世界では、性的描写などのセンシティブなシーン(インティマシー・シーン)において、俳優の安全を守りながらスタッフの演出意図も最大限実現できるようサポートするスタッフ「インティマシー・コーディネーター」の存在が注目されつつある。 今回は日本で数少ないインティマシー・コーディネーターである浅田智穂さんに、その仕事の内容や自身の働き方について聞いた。 浅田智穂 あさだ・ちほ 1998年、ノースカロライナ州立芸術大学卒業。帰国後、エンタテインメント業界に通訳として関わるようになり、日米合作映画『THE JUON/呪怨』などの映画や舞台に参加。2020年、Intimacy Professionals Association(IPA)にてインティマシー・コーディネーター養成プログラムを修了。日本初のインティマシー・コーディネーターとして、映画『怪物』、ドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』(カンテレ・フジテレビ系)、『大奥』(NHK)などの作品に参加している。 目次自分が新しいことに挑戦するとは思わなかった日本で活動するために設けた3つのガイドライン「安心できた」の声がうれしいリラックスするために、知っているところへ行く 自分が新しいことに挑戦するとは思わなかった ──どんなきっかけでインティマシー・コーディネーターになられたのでしょうか。 浅田 大学時代に舞台芸術を学んでいたこともあり、ずっとエンタテインメント業界で通訳の仕事をしてきました。それが、コロナ禍になって仕事がなくなってきたころに、以前一緒に仕事をしたことのあるNetflixの方からご連絡いただいて、『彼女』という作品で出演者もNetflixもインティマシー・コーディネーターの導入を希望しているのだけれども、日本にはいないので「浅田さん、興味ありますか?」とお声がけいただいたんです。 養成プログラムは英語圏でしか受けられず、応募するには現場経験も必要だったため、英語ができて現場も知っているということで、ご連絡いただけたんだと思います。 ──それまではインティマシー・コーディネーターについても知らなかったんですか? 浅田 そうなんです。当時40代半ばで子育てもしていましたし、自分が新しいことに挑戦するなんて思いもよりませんでした。絶対大変だと想像できたので悩みましたが、日本の映像業界の労働環境にはまだまだ問題があると感じるなかで、自分の手で少しでも改善できることがあるのなら意味のある仕事だなと思い、挑戦してみることにしました。 ──プログラムでは何を学ばれたのでしょうか。 浅田 ジェンダー、セクシャリティ、ハラスメントのほか、アメリカの俳優組合のルールや同意を得ることの重要性などについても勉強しました。監督や俳優とのコミュニケーションの取り方、ケーススタディ、あとは、前貼りのような性器を保護するアイテムの使い方や安全な撮影方法など、現場での具体的な対応についてもいろいろ学びました。 ──アメリカでも#MeToo運動(※)をきっかけに注目されたそうですが、それほどノウハウが確立しているんですね。 浅田 そうですね。海外の作品ってインティマシー・シーンも激しくやっているように思われがちなんですが、全然そんなことはなくて。触っているようでクッションを入れているとか、アンダーヘアが見えているようでウィッグを使っているとか、お芝居と割り切ってプロフェッショナルに徹しているんです。そういった実情は日本の現場でもよく話しています。 ※セクハラや性的暴行などの被害体験を、ハッシュタグ「#MeToo」を使用してSNSで告白・共有した運動。2017年にアメリカから世界に広がった。 日本で活動するために設けた3つのガイドライン ──浅田さんは実際にどのように作品に関わられているのでしょうか。 浅田 依頼が来た際には、まず私が設けている3つのガイドラインを一緒に守っていただけるプロダクションと仕事をしたいとお伝えします。アメリカのように細かい労働条件が決まっていない日本でインティマシー・コーディネーターのルールだけを持ち込んでもうまくいかないので、最低限のガイドラインを設けているんです。 それはまず、必ず事前に俳優の同意を得ること。強制強要しないということが第一です。次に、必ず前貼りをつけること。カメラのフレーム外であっても性器の露出をさせないということです。衛生面、安全面、それから共演者や周囲のスタッフへの配慮として必ずつけていただきます。3つめは、クローズドセットという必要最小限の人数しかいない現場で撮影をすること。映像をチェックするモニターも通常より減らします。この3つを一緒に守っていただける意思が感じられない作品はお断りしています。 ──撮影前の確認事項が大事なんですね。 浅田 はい、そうです。その上で台本を読み、インティマシー・シーンと思われる場面をすべて抜粋し、確認します。「そのままベッドへ」とあれば、その続きがあるのか、あるのなら布団をかけているのか、服を脱いでいくのかなど、監督にどういうシーンかお伺いするんです。 次にキャストのみなさんと面談し、各シーンについて確認します。そこで「そこまではできない」といった声があれば監督に戻し、撮影方法や内容を見直しながら双方が納得できるかたちを相談します。 あとは、同意書のサポートや、演出部、メイク部、衣装部といったスタッフとの打ち合わせ、共演者がいる場面でのお互いの許容範囲のすり合わせなどがあります。 ──それから撮影に入ると、現場も監修されるわけですよね。 浅田 はい。まずクローズドセットが守られているかなどをプロデューサーと確認します。あとは、キャストに不安がないか確認しつつ、現場の人数や体制によって、私が前貼りを担当したり、近くでバスローブを持ったりすることもあります。当然、現場で撮影していると演出上の課題が出てくることはあるので、監督が私を介してキャストに伝えたいことがあれば間に入ったりもしますね。 ──現場の方々に理解され、受け入れられるのも大変そうです。 浅田 そうですね。今までにないポジションの人間が急に入って、確認作業も増えるわけなので。俳優側には私に脱ぐように説得されるのでは、と思われる方もいましたし、監督側にも私にインティマシー・シーンを止められると思っていた方がいました。でも、それは想定の範囲だったので、なんとか乗り越えようと。 それに、「ルールを守らなきゃ」といったイヤな緊張感が現場に漂うこともありましたが、一度一緒に仕事をして、インティマシー・コーディネーターの役割を理解していただくと、そんなに神経質にはならなくなるもので。ルールさえ守っていれば普通に和やかに撮影して問題ないと、だんだんわかってもらえるようになりました。 「安心できた」の声がうれしい ──日本の現場に参加されるにあたって、心がけていることはありますか。 浅田 同意を得るにあたって、「ノー」と言いやすい環境を作ることですね。できないことをできないと言うからこそ、できることがあるわけで。面談をするときも、ちょっと悩まれている俳優が断りやすくなる環境を大切にしています。 現場でも「あれおかしいんじゃない?」と思ったら誰でも言えるような環境にしたいんです。クローズドセットで人数を制限していても、それをちゃんと理解されていない方がいるときもあります。そんなときも、まわりの人が告げ口じゃなくて「入っちゃいけない人だよね?」って私に聞けるような空気にしたいと思っています。 ──仕事とはいえ、センシティブなことについて人に話すのはなかなか難しいと思います。コミュニケーションにおいて意識していることなどはありますか。 浅田 私はたぶん、本当に人が好きなんですよね。新しく人と出会ってお話しできるのは財産だと思っています。ただ、いきなり「インティマシー・コーディネーターです」と言っても信頼してもらえるわけではありません。話せること、話せないこと、人それぞれです。俳優が監督の希望する描写をできないと言ったとき、まずは顔色を見て聞けそうなときに理由を聞くようにしています。そして解決できない理由なら、それ以上は詮索しません。 あとは、できるだけ知識を増やし、リサーチすること。年配の監督からしたら、私なんかは新参者の小娘なんですよね。だから、彼らと話す上で説得力を持たせるためにも、経験や知識を蓄えることは大切にしています。キリがないので全部は難しいんですけど、監督の過去作などもできるだけ観るようにしています。 ──そうした取り組みや働きかけが実を結び、やりがいを感じられる場面もあったのでしょうか。 浅田 俳優は、別の作品でやったことはできると思われてしまったりもするんですけど、作品ごとに役も話も違いますし、どのような不安をお持ちなのかわかりません。なので、私はこれまでのことは関係なくサポートして、「なんでも相談してください」とお伝えするようにしています。その結果、「不安がなかった、安心できた」と言ってもらえるとすごくうれしくて。 それに、過去のインティマシー・シーン撮影の経験で苦しんでいるスタッフの方もいます。おかしいと思うことがあっても、自分からは何も言えなかった、何もできなかったと告白されることもあります。でも、俳優の同意が取れているとわかっている現場なら、スタッフの不安も減って、安心して自分の仕事に集中できると思うんです。 ──結果として、作品に関わる人たちみんなにいい影響を与えられるんですね。 浅田 そういう意味で驚いたのは、作品を観たお客さんからの「インティマシー・コーディネーターがいてよかった」といった声がSNSに上がっていたことです。自分の好きなタレントや俳優が、安全な環境でイヤなことをさせられていないとわかると、すごく安心だしうれしいという反応があるとは思っていませんでした。それだけに、私の名前がプロダクションにとってのアリバイにならないよう、責任を持って仕事をしなくてはいけないとも思います。 ──では、インティマシー・コーディネーターという仕事や、ご自身についての今後の展望などはありますか? 浅田 今、日本には私を含めてふたりぐらいしかインティマシー・コーディネーターはいないんです。それだと、年間数十本くらいの作品しかカバーできないんですけど、日本映画だけでも年間で600本くらい作られている。絶対的にインティマシー・コーディネーターが足りていないので、私のほうで育成も進めようとしています。ただ、とにかく現場の仕事で忙しいので、思うように準備が進みません……。 リラックスするために、知っているところへ行く ──それだけお忙しいとサボるヒマなんてないですよね……。 浅田 そうなんですけど、そもそもワーカホリックなところがあるかもしれません。仕事とプライベートの切り替えが下手で。やっぱり好きなことを仕事にしていると、なんでも仕事につなげちゃうんです。仕事に関連する作品をチェックしている時間も、仕事なのかプライベートなのかよくわからないというか。 ──では、シンプルにリフレッシュできることはどんなことなのでしょうか。 浅田 最近はあまり行けていないのですが、家族旅行ですね。行ったことのないところに行こうとすると、またリサーチに夢中になってしまうので……リラックスしたいときはなじみのあるところに行きます。 一番リラックスできるのは、キャンプと温泉。温泉は宿さえ決めればあとは食事も出てくるので、出かけることもなく宿の中で過ごします。キャンプではケータイもできるだけ見ずに、自然の中でゆっくりコーヒーを淹れて飲む時間が好きです。コーヒーは大好きなので、普段からリラックスしたいときも、気合いを入れたいときも飲んでいます。 ──何も考えない時間が大切なんですね。 浅田 そうですね。普段は常に頭の中をフル回転させてしまうタイプなので、ぼーっとできないんですよ。答えが出ないようなことを考えるのが好きというか、何かを分析したいというか。無駄なことかもしれないけれど、それがどこかで役立っているところもあるような気がしています。 ──何も考えない時間がリフレッシュになるように、日常で無になれる、夢中になって何かを忘れるようなことはありますか? 浅田 やっぱり家族といるときですね。自分は仕事人間だと思いますが、忙しい中でも家族と一緒にごはんを食べたり、子供が寝たあとに夫とふたりで話をしたり。私が仕事をしている横で娘が勉強したりしている時間も大切にしています。ついつい「あとでね」とか言っちゃうんですけど、宿題の丸つけだけでも彼女と向き合おうと思ってみると、こんなに楽しくて素敵な時間なんだと改めて感じることもあるんです。 撮影=石垣星児 編集・文=後藤亮平
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「なんでもおもしろがって、バカバカしいことに手数と熱を込める」藤井亮のサボり方
クリエイターの活動とともに「サボり」にも焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載「サボリスト~あの人のサボり方~」。 映像作家の藤井亮さんは、石田三成をPRした滋賀県のCMやNHKの特撮番組『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』など、いわゆる“お笑い”とは異なる文脈で、ナンセンスな作品を数多く手がけている。藤井さん流の映像作品の作り方や、日常をおもしろがるためのヒントなどについて聞いた。 藤井 亮 ふじい・りょう 映像作家/クリエイティブディレクター/アートディレクター。武蔵野美術大学・視覚伝達デザイン学科卒業後、電通関西、フリーランスを経てGOSAY studiosを設立。滋賀県の石田三成CM、『ミッツ・カールくん』(Eテレ)、キタンクラブ『カプセルトイの歴史』、『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』(NHK)など、考え抜かれた「くだらないアイデア」で作られた遊び心あふれたコンテンツで数々の話題を生み出している。 目次初めて作った映像で、教室がどっと沸いたやりたいことをやるために、主張し続ける架空の世界を、実際にあるかのように作り上げたいおもしろがれるかどうかは、自分次第 初めて作った映像で、教室がどっと沸いた ──1979年生まれの藤井さんが手がけられるものからは、同世代の人たちが幼少期に触れていた昭和のコンテンツのムードを感じます。藤井さんご自身はどんな子供で、どんなものに影響を受けていたのでしょうか。 藤井 愛知県出身なんですけど、本当に普通の田舎の子供でした。当時の子供がみんな好きだった『週刊少年ジャンプ』、ファミコン、キン消し(キン肉マン消しゴム)が好きで、親は公務員で、3人兄弟の真ん中で、特筆すべきクリエイター的エピソードが全然ないんです。 ──何か変わったものが好きとか、ちょっと変わったところがあるわけでもなく。 藤井 全然。ただ、絵を描くことは好きで、小学生のころは隣の席のヤツを笑わせるために、先生を主人公にしたキャラクターがひどい目に遭う漫画を描いたりしていましたね。常に誰か見せたい対象がいて、自分の内面を掘り下げるようなもの作りをしたことがないという点は、今につながるかもしれません。 ──その結果、美大に進学するようになったんですね。美大ではどんなことを学んでいたのでしょうか。 藤井 武蔵野美術大学の視覚伝達デザイン学科は、いわゆるグラフィックデザインをやる学科で、入学当初はカッコいいグラフィックやCDジャケットを作りたいと思っていたんです。でも、「映像基礎」という授業をきっかけに、映像にズブズブとハマっていっちゃって。 機材の使い方もわからないまま、自分で絵コンテを描いてくだらないコントみたいな映像を作ったんですけど、それを流したら教室がどっと沸いたんですよ。今まで絵を描いたりしても味わえなかった体験で、気がつけば、4年生までずっと変な映像ばっかり作る生活になっていました。 ──授業と関係なく映像を作っていたんですか? 藤井 そうです。今考えるとどうかしてるなと思うんですけど。発表する場もなく、見せるあてもないのに、映画っぽい映像や手描きのアニメーションなど、節操なくあれこれ作っていました。 ──藤井さんの映像には、お笑い的なものとは少し異なるテイストのおもしろさがあると思うのですが、その点で影響を受けた人や作品はあるのでしょうか。 藤井 お笑いをあまり観てこなかったことがコンプレックスだったりもするんですけど、そういう意味ではマンガの影響はあるかもしれないです。学生のころは『伝染るんです。』や『バカドリル』など、不条理系といわれるマンガを読んで「こういうの作っていいんだ」と衝撃を受けました。 ──たしかに、自分の感覚的なおもしろさを理屈抜きで表現しているという意味では、藤井さんの作品にも通じるものを感じます。では、学生時代のもの作りとして、思い出深い作品などはありますか? 藤井 学園祭ですかね。学園祭が好きで、模擬店を「藤子Bar不二雄」という全員、藤子不二雄キャラのコンセプトカフェにするとか、無駄にがんばっていたんです。最終的には実行委員になって、学園祭のポスターや内装などを作ったりもしました。 デザイン部門として、作れるものは全部作って。テーマもバカバカしく戦隊ものにして、大学の入口に巨大ロボの顔をどーんと設置したり、教室を基地みたいにしたり、顔ハメ看板を置いたり。子供みたいにバカなことをやるのも、当時のまま変わってないですね。 ──バカバカしい思いつきを徹底して具現化させる執念みたいなものも、現在に通じるような気がします。 藤井 ベースの思いつきはしょうもないんですけど、作り込みでどうにかごまかそうとするところはありますね。当時から、自分には少ない手数でセンスのいい作品を作ることはできないと薄々わかってきていて。それで、数の暴力というか、とにかく手数と熱量でどうにか突破するしかないと思っているところがありました。 やりたいことをやるために、主張し続ける ──広告代理店に就職されたのも、映像を作るためだったのでしょうか。 藤井 映画やアニメなどの映像作品の最後には広告代理店のクレジットが入っているから、ここならいろいろな映像を作れるだろうと、ちょっと勘違いして受けちゃったんです。 でも、アートディレクター採用みたいな感じだったので、最初はポスターやロゴのデザインしかやらせてもらえませんでした。それでも、やっぱり映像を作りたくて入ったので、企画だけは出し続けていましたね。 ──自分の希望を声に出したり、かたちにしたりすることって大事ですよね。 藤井 そうですね。特に新人のときはおもしろいと思ってもらえる手段もないので、どうでもいい役割に力を入れるなど、とりあえず主張し続けていました。会社の宴会の告知のために、めちゃくちゃ凝ったバカバカしいチラシを作って会社中に貼ってみたり。結果、それが目に留まって、おもしろい仕事をしているチームから声がかかるようになったんです。 ──最終的にはCMを手がけられるようになった。 藤井 ただCMの場合、代理店のCMプランナーは、基本的には企画までしかやらせてもらえなかったんです。監督は制作会社のCMディレクターが担当していて。でも、僕は映像を考えるだけでなく作ることもやりたい。それで、自分でも監督する方向に勝手に変えていきました。 「全然やれますけど」みたいな雰囲気で、「今回、僕が監督やりますんで」って言っちゃう。内心は「どうやったらいいのかな……?」って思ってましたけど、まずはできるフリをしてやるしかないなと(笑)。 ──実際には監督経験がないわけで、そのギャップはどう埋めていったんですか? 藤井 冷や汗かきながら勉強したり、人に聞いたりしていました。それでも、やっぱり最初は演者さんに怒られたりしましたね。段取りも何もできていなかったので。失敗したら次はないと思うほど、どんどん空回りしてしまったというか。 ただ、現場と噛み合わなくても、本気で何かをやろうとしている気持ちは伝わるのか、そのCMを見た方が別の仕事で声をかけてくださることもあって。「あんまりヒットしてないけど、こいつは変なことを一生懸命やろうとしてるな」みたいな。 架空の世界を、実際にあるかのように作り上げたい ──現在は藤井さんの作風に惹かれた方々から、さまざまなコンテンツの依頼が来ているかと思いますが、企画の段階ではイメージが伝わりにくいものもあるんじゃないでしょうか。 藤井 僕は作っているものはおもしろ系なんですけど、プレゼンは低いテンションで淡々と進めることが多くて。企画の意図や構造を丁寧に説明していくので、ふざけたものを作ろうとしているとは思われないこともあって、意外とすぐに「いいですね」と言っていただけることが多いです。 それこそ、石田三成のCMは滋賀県のPRコンテンツのコンペで提案したんですけど、「怒られるんじゃないかな」と思いながら説明したら、その場で「これがいいですね、やりましょう」という話になって。選んでくれた方の度量がすごいんですけど。 石田三成CM<第一弾> ──制作自体もまじめに淡々と進めているんですか? 藤井 そうですね。作り手側はそんなにふざけていないというか、おもしろがっていないところはあります。作る側がおもしろがるのと、見た人がおもしろがるのはちょっと違うと思っていて。内輪で盛り上がっている感じが出ていると、僕はちょっと冷めちゃうんですよね。みんながまじめに作ったんだけど、結果的に変なものになってしまった、みたいなおもしろさが好きなんです。 ──作品のテイストとしても、世の中にある「まじめにやってるけど、どこかおかしい」といったズレに着目し、そのエッセンスを取り込まれていると思います。そのために日頃からアンテナを張っていたりするのでしょうか。 藤井 日常にある違和感を探すのは好きですね。そのうえで、自分がグッとくるものに対して「なぜグッとくるんだろう?」と深掘って考えるようにしています。そうやって深掘りしていくと、そのままパクるのではなく、エッセンスを取り出すことができる。パロディというよりシミュラークル(記号化)というか。何かをまねしたいのではなく、架空の世界を実際にあるかのように作っていくのが楽しいんでしょうね。 だから、企画のテーマが決まると「いかに本当にあったか」というディテールを詰めていきます。1970年代の特撮作品をモチーフにした『TAROMAN』を作ったときも、岡本太郎のことはもちろん、特撮文化についてもめちゃくちゃ調べました。そうしているうちに、当時の特撮にあったであろう何か、ディテールが見えてくるんです。 TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇 PR動画 ──『TAROMAN』はキャストのしゃべり方からして違いますよね。本当に1970年代に録音したんじゃないかと思いました。 藤井 最初は役者さんに昭和っぽくしゃべってもらおうと思っていましたが、初日にやめようと決めて、全部アフレコにしました。やっぱり役者さんでも昭和っぽくしゃべるのって難しいんですよ。だから、役者さんは昭和っぽい顔で選んで、声は声で昭和っぽくしゃべれる方を探しました。結果的に声と口の動きが微妙にズレているんですけど、それが逆に昭和の特撮っぽくなったというか。当時の特撮も実際にアフレコだったりするので。 ──そういったディテールをかたちにするために、『TAROMAN』ではご自身でどこまで担当されたんですか? 藤井 企画、脚本、監督のほかに、キャラクターデザインや絵コンテ、アニメーションのイラスト、背景作りなど、思いつくことはあらかたやっています。もちろん、撮影、編集、ジオラマ制作など、信頼できる人にやってもらった部分もたくさんありますけど。 とにかく世界観だけはブレないよう気をつけたので、膨大な手直しが必要でした。編集の段階に入ってからも、1カットずつ確認して背景を作り直したり、色を変えたり、タイミングをズラしたりして。 ──そのこだわりがあの世界観を支えていたんですね。では今後、同じくらい熱を入れてみたいこと、興味のあることなどはありますか? 藤井 基本的に「やったことのないことをやりたい」と思っているのですが、なかなか難しいですね。今は生活の半分くらいが育児になっているので。でも、子供向けのコンテンツをたくさん摂取していることも、インプットにはなっているんです。何かしらおもしろがれるところはあるし、「こうしたらいいんじゃないか」と考えることもある。それもどこかで活かせたらいいですね。 おもしろがれるかどうかは、自分次第 ──藤井さんは、仕事の手を止めてついついサボってしまうようなことはありますか? 藤井 Wikipediaのリンクを踏み続けて何かの事件をずっと調べるとか、延々とネットを見ちゃうことはありますね。ただ、直接仕事とは関係なくても、どこかでつながるような気もしているので、そういう意味では明確にサボりとは言えないというか、サボるのが上手じゃないかもしれません。根っこの部分では、生活が下手なタイプなんですけど。 ──生活が下手? 藤井 もともと怠惰な人間なので、仕事や育児をやることでギリギリ人のかたちをさせてもらってるというか。だから、家族がちょっといないだけで、洗いものが山積みのまま朝4時まで起きてるとか、一気に生活がぐちゃぐちゃになってしまうんです。休みを有意義に過ごすのも苦手で、無理して出かけることもありますが、気を抜くと家でダラダラとマンガを読んじゃったりします。 ──ダラダラするのもリフレッシュにはなっているんでしょうね。意識的に息抜きをするようなことはないのでしょうか。 藤井 いろんなものに依存したいなとは思っていて。コーヒーでカフェインを摂るとか、いろんなものに依存して、自分の「依存したい欲」、「責任を放り投げたい欲」を分散したいんです。というのも、普段は父親であったり監督であったりすることで、どうしても依存される側、責任者側になってしまうので。 ──ほかにどんなものに依存しているんですか? 藤井 最近はお酒も飲まなくなったので、人がハマっているものに付き合わせてもらったりしています。サウナ好きの人にサウナに連れていってもらうとか。あと、子供の趣味にも積極的に付き合うようにしています。電車が好きだったときは鉄道博物館に行ったり、新幹線を見に東京駅に行ったり、『ウルトラマン』にハマったときは一緒にショーに行ったり。 そうすると、それまでは何百回と東京・大阪間を往復しても何も考えずに新幹線に乗っていたのが、「お、今日はN700Sか!」と車両に注目するようになったりして。どうでもよかったことの解像度がぐっと上がるのがおもしろいんですよね。 ──先ほどのお子さんと子供番組を観ている話も同じというか、なんでも楽しもうと思えば楽しめる。 藤井 ある意味、何を見てもそんなに苦じゃないんですよね。おもしろがれるか、おもしろがれないかは自分次第で、おもしろがる力があれば何かしら楽しみ方は見つけられるものなので。 ──そういった経験が、結果的にお仕事にも役立っているんですね。では、シンプルに落ち着く時間、好きな時間はありますか? 藤井 風呂ですかね。「会社を辞めよう」とか、大きな決断はだいたい風呂場でしてるんですよ。それも家の風呂じゃなくて、銭湯とかで決断したり、考えたりすることが多くて。だから何かを決めた記憶は、たいてい風呂の天井のイメージと結びついてるんです。 ──それまでなんとなく考えていたことが、お風呂でかたちになるんですかね。逆に、何か結論を出そうとお風呂に行っても、うまくいかないかもしれないですね。 藤井 そうかもしれないですね。意識してやるとうまくいかない気がします。 撮影=石垣星児 編集・文=後藤亮平
エッセイアンソロジー「Night Piece」
気持ちが高ぶった夢のような夜や、涙で顔がぐしゃぐしゃになった夜。そんな「忘れられない一夜」のエピソードを、オムニバス形式で届けるエッセイ連載
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一歩近づいたあの日の目標、不器用な優しさに涙した夜(青戸しの)
エッセイアンソロジー「Night Piece〜忘れられない一夜〜」 「忘れられない一夜」のエピソードを、毎回異なる芸能人がオムニバス形式でお届けするエッセイ連載。 青戸しの(あおと・しの) 神奈川県出身・ライター兼モデル。2018年夏から被写体としての活動を始め、自身やカメラマンのSNSに写真がアップされると、そのつかめない表情や雰囲気、かわいさからすぐに話題となり人気が急騰。最大で月間100件以上の撮影依頼の問い合わせがある人気モデルとなり、ポートレートモデルの先駆け的存在として雑誌で特集が組まれるなど業界から注目を浴びた。go!go!vanillas「パラノーマルワンダーワールド」のMVにてヒロイン役を務めるなど演技の活動もする一方で、『小説現代』(講談社)にてミステリー小説の書評連載を務めるほか『ar web』(主婦と生活社)では乙女の憂鬱をテーマに恋愛コラムの連載も担当、映画の感想コメントを提供するなど、ライターとしても活躍の幅を広げている。 Instagram:aotoshino_02 TikTok:aotoshino_02 X:@aotoshino_02 記憶に残り続ける言葉や、夜は案外短く、とてもシンプルだったと思う。 シュークリームを3つ抱えてバス停から走る。 息切れしながら玄関を開けると「ただいま」と言うよりも先に「おかえりー!」と大きな声が聞こえた。 その日は久々の帰省だった。 リビングのドアを開けると、炊き立てのご飯の匂いがしてぐーっとお腹が鳴る。 「今日は米何合食べて帰るんか」 出会い頭、父に意地悪を言われた。 久々に会った娘への第一声がそれか!と思いつつ父なりの愛情表現でもあるので、「5合」と冗談で返すと「大丈夫! 2回お米炊くから!」とキッチンから母の真剣な声が聞こえた。 振り返ると手の込んだおかずが机いっぱいに並べられていて、とても冗談だとは言えなくなった。 私の実家では「もう勘弁してください……」と言うまで追加の料理が出てくる。 もしかしてあの冷蔵庫は異空間にでもつながっているのだろうか……? 満腹になってソファに横たわる私を横目に、父は「お風呂」と言ってリビングをあとにした。 昔から20時になるとお風呂に入って、そのまま寝るのが日課なのだ。 『金曜ロードショー』で観たい映画が放送される日はどうしているのだろうか。 そもそも好きな映画とかあるのだろうか。 私は食事中にひととおり近況報告を済ませていたが、父は相づちを打つのみであまり自分の話をしない。 「お父さん相変わらず淡白だね」 「そう? だいぶ変わったと思うけど……」 特段変わった様子は見当たらなかった、白髪が少し増えたくらいだ。 「え〜、たとえばどこが?」 お母さんはお土産のシュークリームをかじりつきながら昔から変わらない、優しい笑顔で言った。 「お風呂から上がる前に、お父さんの部屋のぞいておいでよ」 言われるがまま、私は数年ぶりにそっと父の部屋に忍び込んだ。 相変わらずきれいで、ホコリひとつない。 ホテルのように整えられたベッド、無駄なものがないシンプルなデスク。 お父さんも私と同じO型だよな……?と改めて血液型占いの信憑性を疑っていると、デスク横の棚に並べられた時計と靴が目に入った。 どちらも私がプレゼントしたものだった。 よく見るとビジネス書が並べられていたはずの本棚には、私が連載している雑誌が隙間なくきっちりと並べられている。 母の言っている意味が、久しぶりに入ったこの部屋にぎゅっと詰まっていた。 この歳になってまで父に泣かされるのが悔しくて、あふれそうになる涙をグッとこらえる。 正直、自信がなかったのだ。 今も昔も、自慢の娘でいる自信がなかった。 大人になってから、忙しさを理由に何カ月も会わない日々が続いたり、誕生日に連絡するのを忘れたりすることもある。 実家に顔を出すのもたいていが落ち込んでいるときで、せっかく作ってくれたご飯をひと口も食べられない日もあった。 父はそんな私を、責めたことは一度もなかったけど、口に出して慰めることもしなかった。 その距離感が居心地よくもあり、ずっと不安でもあったのだ。 言ってくれればよかったのに、「いつでも見てるよ」と、もっと早く教えてくれればよかったのに。 肝心なところが変わっていない、昔から優しさが不器用さに隠れてしまう人だった。 「お父さんね、大事なお仕事がある日は必ずしのがプレゼントした時計をつけて出勤するんだよ」リビングに戻ると、内緒ねと母が教えてくれた。 「雑誌は発売日に買ってくるし、しのが帰ってくる日は、張り切って買い物に連れて行ってくれるんだから」 わかってはいたけど、うちの冷蔵庫は異空間につながっているわけではなかった。 さっきまで「まだ食べるのか」と文句を言っていた父がなんだかかわいく思えてくる。 「いらんこと言わんでいい」 お風呂から上がった父が珍しくリビングに戻ってきた。 母はしまった!という顔をしてキッチンへ逃げていく。 どうしたらいいのかわからず「そろそろ帰ろうかな……」とその場から逃げ出そうとする私に、父は「送ってやろうか?」と言った。 「え?いいの?」 「車出してくるから待ってろ」 母からたくさんのお土産を受け取り、父の車に乗り込んだ。 車内はYOASOBIの「夜に駆ける」が流れている。 「お父さんYOASOBIとか聴くんだ」 「若い子は聴くらしいな」 返事になっていない。 私が知っていそうな曲をかけてくれたのだろうと、都合のいい解釈をした。 「時計、新しいのプレゼントしようか?」 飾られていた時計は数年前にプレゼントしたもので、今ならもう少しいい物を買ってあげられる。 父はしばらく黙ったあとに 「いい、あれが気に入ってる」 とまっすぐ前を向きながら答えた。 「そっか」 話したいことがたくさんあるのに夜景はぐんぐん進んでいく。 少しでも車をゆっくり走らせてほしかった。 まだ実家に住んでいたころ、父は今よりずっと怖く見えていた。 仕事であまり家にいなかったし、口数も少ない。 当時の私は休日に父とふたりで過ごしても、何を話していいのかわからず、窮屈に感じていた。 「またすぐに帰ってくるね」 今の私にできる精いっぱいの甘え方だった。 口下手なのは父に似たらしい。 「いつでも帰ってこい」 たったひと言、ぶっきらぼうで淡白な返事だったけど、明日からも踏ん張って生きていくにはじゅうぶんすぎる言葉だった。 きっとこれから挫折することもあるだろう。 泣きながら過ごす夜もあるだろう。 それでも、この先どんなに苦しいことがあっても大丈夫だと、そう思えた。 運転中の父の横顔は昔よりずっと穏やかで、若くはない。 数年後にはあの殺風景な部屋を私でいっぱいにしてみせる。 新しくできた目標を胸に、眠りについたあの夜を私はきっと忘れない。 先日、実家に帰省すると花と一緒に『週刊プレイボーイ』が玄関に飾られていた。 ご丁寧に私が掲載されているページが開かれている。 「玄関に飾るのはやめてよ……」 母に頼み込むと「俺の部屋にもあるぞ」 と父が部屋から2冊目を持ってきた。 ギャグのような光景に思わず吹き出す。 今日もまた、あの日の目標に一歩近づいた。 文・写真=青戸しの 編集=宇田川佳奈枝
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たどり着いた真夜中の終着駅。人生で最もスリルを感じた夜(鳥飼 茜)
エッセイアンソロジー「Night Piece〜忘れられない一夜〜」 「忘れられない一夜」のエピソードを、毎回異なる芸能人がオムニバス形式でお届けするエッセイ連載。 鳥飼 茜(とりかい・あかね) 漫画家。1981年生まれ、大阪府出身。2004年に『別冊少女フレンドDXジュリエット』(講談社)でデビュー。代表作に『おんなのいえ』(『BE・LOVE』/講談社)『先生の白い嘘』(『月刊モーニング・ツー』/講談社)『地獄のガールフレンド』(『FEEL YOUNG』/祥伝社)、『サターンリターン』(『週刊ビッグコミックスピリッツ』/小学館)など。 指を折り数えると身震いしてしまうのだが、あれはもう20年近く前なのだった。そのころ私はアルバイト兼自称漫画家で、雑誌に載った読み切りの原稿料を投じて、ニューヨークの街に乗り込んだ。ただ旅行に行っただけだが、興奮していたし、この上ない緊張感と不安でいっぱいだった。 海外では音楽を聴くくらいしか能力を発揮しないガラケーと、地球の歩き方と銘打たれた地図つきのガイドブックを携え、初めての海外ひとり旅だった。 踏み切れたのは、バイト先で偶然出会ったひと組のカップルと、古本屋で知り合ったアメリカ人学生がどちらもニューヨーク在住で、ニューヨーク未経験の私に遊びに来なよ!と誘ってくれたからで、若く厚かましい私はその親切になんのうしろめたさもなく乗っかったのであった。 英会話が得意なわけでもないし、20代前半の臨時収入なんて知れている。ホテル代は彼らの親切で無償だったので、予算は飛行機代と、毎日の食事代だけでギリギリだったはずだ。 そんな丸腰でよくぞ無事に帰ってこられたと今となっては感心する限りだが、人生で最もスリルのある夜を経験したのもこのときだ。 同じニューヨークといえど、彼らの自宅はマンハッタンとブルックリンという2カ所に跨っていた。そこを行き来するのに、移動は専ら地下鉄である。 当時のニューヨークは、大きく変化を迎えたばかりで、若く無知な外国人の自分にも地下鉄が利用できるくらいには治安がよくなったらしかった。それでもブルックリンにはまだまだ危険の多い場所があり、地下鉄で往来するということ自体相当なスリルがあった。 その日は友達がブルックリンでのパーティーに誘ってくれて、夜中過ぎに解散となり、私は宿泊させてもらっているマンハッタンのカップルの家までひとりで帰ることになった。 ニューヨークではひと晩中、電車が走っている。昼間の移動には少し慣れてきていたが、初めての路線で深夜にひとりということもあって、緊張もひとしおだった。身も引き締まるところだが、普通の人と違って、私は「緊張するほど慎重さを欠く」というたいへん難儀な性質なのである。 何度も念押されたはずの乗り換えをスコンと忘れ去り、終点へ向かう深夜過ぎの地下鉄車内はどんどん人気が少なくなっていた。何かがおかしい気がするが、自分が間違っている確証が持てない。電車内に表示されている路線図は簡素化されすぎていて、自分がどこに運ばれる予定なのかがわからない。よけいな動きをして無駄に失敗を重ねるくらいなら、とにかく確実に結果がわかるまでこのまま電車に乗っていようと思った。 深夜1時を過ぎたニューヨークの地下鉄の乗客は次々と帰路につき、怪しいと感じた時点で車両には私だけだったと思う。駅が進むにつれどんどんノイズが薄れ静かになっていく。少なくとも聞き覚えのある地名が出てきてくれれば少しは安心するかもしれないのに、などと根拠のないことを思い始めたとき、電車はとうとう終着駅に到着した。アナウンスを聞いて、かるく戦慄した。「ワールドトレードセンター」。世界を震撼させた前代未聞のテロ事件からまだ数年、何度もニュースで耳にしたあの場所に、深夜2時前、私はたったひとりで降り立った。 あらかじめ知ってのとおり、ここは世界屈指のビジネス街である。東京のそれと同じように、真夜中を過ぎたビジネス街に用事のある人はほとんどいない。際立って静かなのは単にそれだけが理由のはずだが、地理的にも終着点であること、そしてさらに、この場に惨禍に見舞われた無数の魂が眠っていることを思うと、静寂と闇が膨張し、地下鉄構内をかろうじて照らす電気を今にも飲み込みそうな気配を感じた。ここは、都会の夜の端っこだ。 私は完全なパニックから、まずホームに降り立った人の中に女性ふたり連れを見つけ、藁にもすがるように声をかけた。話しかけてどうなるわけでもないが、誰かに優しくしてもらわないと不安で仕方がなかったのだ。果たして、どうなるわけでもなかった。彼女たちも旅行者で、私が戻りたい場所への行き方を知らなかった。彼女たちにとってはここが目的地なので、当然のように地上へと掃き出されていった。 私もいっそ地上に出て、タクシーでとにかく帰るという選択肢も考えたが、タクシーが体よく捕まらなかったときのことを考えると、地上よりも地下鉄構内にいたほうがましなのではないかとまごついた。 私は完全なひとりだった。 ニューヨークではひと晩中電車が走っていると書いたが、時刻表などはない。従って、次の電車はだいたい何分置きに来るとかいう予想もできない。夜中になると本数が減ること、ホームで待つときはカメラのある場所にいること、という友人からの教えが思い出された。ここで屈強な、何か悪いことを企んでいる人間と鉢合わせたら私は死ぬ、冗談抜きでそう思った。 人がいるところを必死で探し、改札口に駅員を探すが乗客どころか駅員さえいない。こんなの終夜営業といえるのか?と怒りすら覚えた。ようやくホームの端で黙々と線路の改修工事をしている移民系の男性を見つけ、事情を片言ながら説明すると、ここで待っていればいつかは電車が来ると言われた。いつかはわからないけど、と。 人がいるということに、こんなに救われたことはない。電車が来るまで、オレンジの光に照らされた一角の、彼の工事作業をただ呆然と見つめていた。外国の、自分とは本来関係のない場所に立って、見知らぬ人の作業を眺めながら私はいつ来るか知れない真夜中の電車を待っていた。 簡単に考えればわかることだが、どこかで乗り換えを忘れて終点にたどり着いたのなら、降りずに折り返し、正解の地点で乗り換えれば済むだけのことなのだった。おそらくほんの十数分後のことであろう、折り返しの電車はやってきた。今度は無事降車した乗換駅で、心配をかけているであろう宿主に手持ちのコインで公衆電話をかけ、ただ今帰路についている旨を説明した。説明しながら、なんと無駄な冒険だったことかと笑いが込み上げてきた。電話口の宿主も笑っていた。 よけいな不安を不注意から創作して盛り上がっただけの一夜だった。 慌て、窮し、考え、自ら何かを解決したようで、実はどうということもなくゼロ地点にいただけのような話だ。 くだらなくも、自分にとっては相当に映画的な夜の顛末であった。 GoogleマップとSNSとタクシーアプリがあればこんな経験はきっとしないで済むであろう。 忘れられない夜になったが、二度と再現できない夜はすべて忘れられない夜である。 戻ってこないもの、場所、人、それらが偶然ひとところに集まった夜を我々は日々更新中なのだが、忘れられない夜となるのはそれらが過ぎ去り、手のうちからこぼれてしまったあとなのだ。 文・撮影=鳥飼 茜 編集=宇田川佳奈枝
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“好き”を貫く大切さに気づいた、神様と出会えた忘れられない夜
エッセイアンソロジー「Night Piece〜忘れられない一夜〜」 「忘れられない一夜」のエピソードを、毎回異なる芸能人がオムニバス形式でお届けするエッセイ連載。 阪田マリン(さかた・まりん) 2000年12月22日生まれ。昭和カルチャーが大好きで“ネオ昭和”と自ら命名し、ファッションやカルチャーを発信する人気インフルエンサー。数々のメディアや企業からの出演オファーが殺到中。SNSでの総フォロワー数は約23万人。同じくZ世代で昭和歌謡に精通するシンガーの吉田カレンとタッグを組み、世に放つ懐かしくも新しいネオ昭和歌謡プロジェクト「ザ・ブラックキャンディーズ」を結成。昭和98年4月29日にシングル「雨のゴールデン街」でデビュー。 私の忘れられない夜はなんだろう。 思い浮かべるとあの日の出来事がすぐさま頭に浮かび上がった。 2022年8月14日に参戦した山下達郎(※敬称略)のコンサートだ。そのコンサートの話をする前に、この話をしたい。 私は70s、80sの音楽や文化や服装が大好きだ。私が中学2年生のときに祖母の家にあったレコードプレーヤーで、チェッカーズの「Song for U.S.A.」という曲を初めて聴いた。そのとき、レコードの仕組みや音質に影響を受けたことがきっかけで、当時流行っているものが見えなくなるぐらい“昭和のもの”に夢中になっていった。けれど中2の私はみんなと違うものが好きだということは“恥ずかしいこと”だと思っていた。仲間外れにされたらどうしよう……と。友達とカラオケに行ったとき昭和の歌を歌いたいはずなのに、歌えなかった。本当はとってもとっても歌いたかったのにね。 中学校の廊下には音楽ボックスというものが置いてあった──給食の時間に流してほしい音楽をリクエストできるというボックスだ。匿名でリクエストができるので私は紙に“山下達郎「クリスマス・イブ」”と書いて提出した。 それは真冬のことだった。給食の時間に「クリスマス・イブ」が流れた。私はうれしすぎて心の中でコッソリと喜んだ。みんなはこの歌にどんな反応をしてるだろう……知ってる人はいるかな? この曲を好きな人はいるかな?とまわりを見たが、みんな無反応で「誰の曲?」という感じだった。やっぱそうなるよなぁと。時代が時代だもんね。中学生の私は自分の好きなことを隠し、カラオケでも妥協をして流行りの歌をみんなに合わせて歌っていた。そんな私が高校生になるときに山下達郎の名言に出会う。 “新人バンドなどがよく説得される言葉が「今だけ、ちょっと妥協しろよ」「売れたら好きなことができるから」でも、それはウソです。自分の信じることを貫いてしなかったら、そこから先も絶対にやりたいことはできない” 私はこの名言を見てハッとした。 自分を貫くってどれだけ大事なことなんだろう。 それに気づいた私は高校からは好きなものを好きと言い、自分を隠さずに生活した。だけど、友達は全然私のことを忌避しなかった。むしろ「その趣味いいね!」と言ってくれたのだ。それから中学校生活と比べものにならないくらい高校生活は楽しいものとなった。最近は私の好きな昭和が仕事にもつながってきている。自分を貫き信じることの大切さを教えてくれた山下達郎。まさに私にとっての神様なのだ。 さて、コンサートの話に戻る。念願のチケット当選を喜び、友人とふたりで行く予定だったのだが友人がカゼをひいてしまい、私ひとりで参戦することになった。ひとりでコンサートに行くのは初めてだし、なんといっても山下達郎を生で観られるのはこの日が初めてだ。心臓がドキドキと飛び出そうで、手汗がびっしょりしていた。 少し早めに会場に到着し、グッズを購入した。もちろんカゼで行けなかった友人にもね。泣きながら悲しんでいたから(笑)。席に座ると私はこんなことを考えた。 「山下達郎は私の中で神様だ……本当に存在するのかな。この目で拝めるのかな。夢じゃないかしら」と。 まるでその場にいる自分が信じられなくなるぐらい、ふわふわとした気持ちになった。 山下達郎はどんなときでも私の心の支えだった。 失敗した日、成功した日、寂しい夜、うれしい夜、そんなとき、いつも山下達郎を聴いていた。 あぁ会場が暗くなった。 もうすぐ始まるのだ。息を呑む。 ジャカジャカジャンとギターの音が聞こえた。すぐにわかった。この曲は私の大好きな「SPARKLE」だ。そして山下達郎が登場した。 どうしよう、目の前が涙で滲んでぼんやりしている。登場してわずか5秒も経たないうちに、私は号泣してしまった。目をつむると大好きだった山下達郎の声や音楽を独り占めしているような気分になった。この曲はお父さんが教えてくれた曲で、小学校のころ毎年夏になると白浜の海水浴によく連れて行ってもらって、帰りの車の中で「SPARKLE」がよく流れていたのを覚えている。車の窓を全開にすると夕日とともにムワッとした風が入ってきて「曲が聴こえなくなるから窓を閉めて」とお父さんに怒られたのを思い出した。 山下達郎の音楽を聴くと、当時のいい思い出がアルバムを開いたときのように次々とよみがえってくる。私は中でも「Paper Doll」という歌がとても大好きで、(コンサートで)この曲を歌ってほしいな、とずっと願っていた。ツアーなので調べるとセトリも事前に見られるのだが楽しみが減るような気がして、あえて絶対調べないようにしていた。コンサートの中盤に差しかかったころ、なんと「Paper Doll」が流れ始めた。私はなんてラッキーなんだ。初めての山下達郎のコンサートで、私の一番大好きな曲が聴けるなんて。 いつまでも 一緒だと 囁いている 君はただ 手のひらに 僕を乗せ 転がしている だけなのさ Paper Doll 僕等の恋は まるでおもちゃさ 遊び疲れる時を きっと 君は待ってるんだ 僕は好きな女性に遊ばれている。と悟っているような、弱気な男性を描いた歌詞。こんなリリックどうやったら思いつくんだろう。改めて山下達郎の才能を身に感じながら大切に大切にこの1曲を聴いた。観客席のひとりがペンライトを振っていた。それに気づいた山下達郎は「僕のコンサートでペンライトを振ってる人いるんだね(笑)珍しいなぁ。ありがとう」と言った。わぁ……うらやましい。私もペンライトやうちわとか持ってこればよかったと後悔をした(笑)。一瞬で時間は過ぎ、コンサートは終わった。私の隣に座っていた3人組の女性たちはおしゃべりをしながら「あの曲がよかった」とか「ここは感動したね」とか楽しそうに語り合ってる。ひとりで来ている私はコッソリとその話を聞きながら「うんうん、たしかにそこ感動したわ」ニヤリと、心の中で共感したりしていた。ひとりでのコンサートは寂しいと思っていたが、集中して楽しむことができたし、会場みんなが一体となる感覚なので、ひとりもありだなぁと気づいた。 会場を出たのは21時ごろ。真夏なのにその日は少し涼しく、星が見えていた。さっきまで私たちの目の前にいた山下達郎。会場を出て外の空気を吸うと、やはり夢だったような気がしてちょっぴり虚無感に襲われた。やはりひとりでコンサートは寂しいかもと思った。楽しい時間は一瞬で過ぎるな。本当だったら今この帰り道、イヤホンをつけて山下達郎の歌を聴きながら余韻とともに電車に乗るのだが、私は我慢をした。 家に帰ってからリスペクトと愛を込めて、山下達郎のレコードに針を落とすのだ。そんな小さなこだわりや、少しの手間が音楽をよりいっそう輝かせる。コンサートの余韻に浸りながらあの夜、家で聴いた「SPARKLE」最高だったな。 忘れられない夜だ。 文・写真=阪田マリン 編集=宇田川佳奈枝
文野紋のドキュメンタリー日記 ~現実(リアル)を求めて~
人生を変えた一本、退屈な日々に刺激をくれる一本、さまざまな愛に気づく一本など──漫画家・文野紋によるリアルな視点、世界観で紹介するドキュメンタリー映画日記
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生きづらさから芽生える創作意欲──漫画家・文野 紋×ドキュメンタリー監督・圡方宏史
文野紋のドキュメンタリー日記 ~現実(リアル)を求めて~ 人生を変えた一本、退屈な日々に刺激をくれる一本、さまざまな愛に気づく一本など── 漫画家・文野紋によるリアルな視点、世界観で紹介するドキュメンタリー映画日記。 logirl記事コンテンツのコラム連載として、ドキュメンタリーへの愛を語っている漫画家・文野紋。かねてより東海テレビが作るドキュメンタリーの大ファンとのことで、今回『ホームレス理事長』『ヤクザと憲法』『さよならテレビ』を手がけた監督・圡方宏史を招き、対談を敢行。お互いの印象や作品づくりにおける苦悩や信念など、対談の中で見えてきた、ふたりの共通点とは。 文野 紋(ふみの・あや) 漫画家。2020年『月刊!スピリッツ』(小学館)にて商業誌デビュー。2021年1月に初単行本『呪いと性春 文野紋短編集』(小学館)を刊行。同年9月から『月刊コミックビーム』(KADOKAWA)で連載していた『ミューズの真髄』は2023年に単行本全3巻で完結。2023年9月より、ウェブコミック配信サイト『サイコミ』にて『感受点』(原作:いつまちゃん)の新連載がスタート。 圡方宏史(ひじかた・こうじ) テレビディレクター、東海テレビ所属。2014年に公共キャンペーン・スポット『震災から3年~伝えつづける~』でギャラクシー賞CM部門大賞を受賞。同年2月、映画『ホームレス理事長 ~退学球児再生計画~』で、ドキュメンタリー映画を初監督。2016年に映画『ヤクザと憲法』、2020年に映画『さよならテレビ』を公開。 互いの作品から見えてきた共通点 ──今回は、文野さんが東海テレビのドキュメンタリーが好きということで実現した対談ですが、そもそも文野さんがドキュメンタリーを好きになったきっかけは、原一男監督作品だったそうで。 圡方 ええ、そうなんですか! どうやって知ったんですか? 文野 アルバイト先にドキュメンタリー映画に詳しい先輩がいて、「これは観なきゃダメだよ」と言われて。『ゆきゆきて、神軍』のDVDを買ったらハマってしまい、『全身小説家』も観たりしました。 圡方 そっから入るってすごいですね! ──東海テレビのドキュメンタリーシリーズと出会ったのは? 文野 マンガの題材としてテレビ局を検討していたときに、参考になるものがないかなと思って調べていくなかで、『さよならテレビ』の存在を知りました。 圡方 『さよならテレビ』はなかなか観られないはずですが、どうやって観たんですか? 文野 本当に申し訳ないんですけど……テレビ局に就職した知り合いがいて、その人が偶然持っていたので観せてもらいました。そのあと映画版も観たんですけど、映画版は上映後にプロデューサーの阿武野(勝彦)さんの講演があると聞いて、兵庫県民会館まで観に行きました。ほかの作品はポレポレ東中野で東海テレビさんのドキュメンタリー特集とかを上映してくださっているので、そこでまとめて観たりとかして。 圡方 ありがとうございます。 ──圡方さんは、今回こういうお話が来てどう感じましたか? 圡方 基本的にはサラリーマンというか、毎日普通に会社に行って、たまにドキュメンタリーを撮る以外はニュース制作の1スタッフなので、なぜ自分がここに呼ばれているのかよくわからないというのが正直なところですね(笑)。普段は取材する側なので不思議な気持ちですし、漫画家の方にお会いするは初めてで。あと、ドキュメンタリー好きな若い人って少ないんですよね。たまに若い人からパンフレットにサインを求められたりするんですが、「実は私……」って名刺を出してきて。「あぁ、同業者か」みたいな。 文野 実は私、阿武野さんにサインしてもらったことがあります! 圡方 そうそう! 阿武野にも今回の取材の話をしたら、「あぁ、知ってる知ってる! 変わってるよね(笑)。よろしく言っておいて」と、伝言を承りました。 文野 ありがとうございます(笑)。 圡方 文野さんはドキュメンタリーについて語り合える方は身近にいらっしゃるんですか? 文野 マンガの編集さんには新聞系の週刊誌から異動されてきた方とかもいらっしゃって、東海テレビの話をできる方もいます。 圡方 東海テレビの作品をご覧になって、どう感じていらっしゃるんですか? 文野 やっぱり人を映すことに長けていらっしゃるなと。いい人とか悪い人とか職業みたいなものではなくて、東海テレビさんの作品は、それこそ『ヤクザと憲法』が顕著ですが「ヤクザ=悪い人」と決めつけることなく、ちゃんとその人を映している。マンガを描く上でも意識しているので、1視聴者としても尊敬しますし、すごくおもしろいなと思います。 圡方 今日は(文野さんが)マンガの主人公とキャラが似ている方なのかなと思って来たのですが、ご自分の考えを理路整然と話される方で驚きました。ご自身をキャラクターに投影されているわけではないんですか? 文野 投影している部分もありますが、私は人の話を聞くのもすごく好きなので、取材したことと自分のことを組み合わせて描いています。 圡方 なるほど。『ミューズの真髄』の1巻の最初のほうで、お母さんがめっちゃ怒るところがあったじゃないですか。 文野 窓から飛び降りるところですかね? 圡方 ああいう描写は普段なかなか見ないので、おもしろいなと思って。ほかにもいくつかそういう底なしの怖さみたいなところが出てきて、ゾゾゾってするところがあったんで、「あ、こういうところがドキュメンタリー好きな部分なのかな」と勝手に推測してきたんです。文野さんはご自身の作品において、ドキュメンタリーの影響は大きいと感じていますか? 文野 個人的には大きいと思うんですけど、どれくらい現れているのかはわからないです。マンガではわかりやすくかわいいキャラとか、かっこいいキャラが人気になりやすいというのが鉄則なんですが、自分は多面性を描きたくて、そこはドキュメンタリー好きなことと影響しているのかなって思います。 圡方 僕は、社会とか所属している組織の中ではまったく認められていないのは自分でも理解しているんだけど、どこかドキュメンタリーを「自分にもできるんだよ」って主張するための材料にしているというか、自分のことを認めてほしくてやっている部分があるんだろうなって思うんですね。生きづらさの反動みたいな。それは、文野さんのマンガを読んでいてもすごく感じました。 文野 生きづらさはすごく感じています。世の中に対する漠然とした怒りみたいなものが、私の中でマンガを描く上での原動力としてあるので。その漠然とした怒りの昇華の先として、マンガがあるというか。 圡方 僕の撮った作品の中では、生きづらさを抱えている人がバカにされるんです。『ホームレス理事長』なんかも、もしかしたら彼にしかできないことがあるかもよって思っている部分もありますし、取材対象に自分を投影しているところもあるかなと思っています。 文野 私も事務作業が苦手なので、『さよならテレビ』の渡邊さんや『ヤクザと憲法』だったら部屋住みの若い彼に感情移入して観ていたところがあります。 圡方 僕の中では『さよならテレビ』の渡邊くんだし、『ヤクザと憲法』の部屋住みの彼が主人公なんですけど、どっちも作品としては主人公たり得ないもんだから、ふたりに寄るとカメラマンやプロデューサーは正直「うっ!」となるというか……。取材対象も主役級じゃないと「なんであいつを取材するんだ?」って言われることが多かったんです。文野さんの作品ではどうですか? 文野 『ミューズの真髄』の場合は主人公が主人公っぽくないというか、むしろ脇役っぽいキャラクターが主人公になっているのかなと。一般的には前向きでエネルギッシュで、才能にあふれていて、人生うまくいくようなキャラクターが主人公になりやすいと思うんですけど、(瀬野)美優は才能があまりなくて、途中で人のマネをしちゃったりとか、髪を切っただけで変わった気になっちゃったりとか、読者から見ると「それは違うだろう」って思うようなことをやっちゃう主人公なので。「こういうキャラの魅力もわかってほしいな」みたいな気持ちで描いていました。 圡方 「自分は凡人だ」みたいな描写がすごくあるじゃないですか。天才は別にいて、その人には絶対に勝てないのがおもしろいなと思いました。自分にもそういう感覚があるし、若くして圧倒的な才能を持っていながら早くから認められている。そういう人たちとの違いに気づいてしまう自分……みたいなところにすごくリアリティがあるなと思いながら読んでいました。僕自身がまさに放っておくと自滅していくようなタイプなので(笑)。 文野 私も自分はまだまだ足りてないなと思います。圡方さんはドキュメンタリーを作るとき、ひとりで考えていますか? 圡方 僕の場合は、カメラマンとしゃべりながら作っていく感じです。おそらく漫画家さんにとっての編集者の役割を、カメラマンが担っているんじゃないかなと。自分がおもしろいと思っている対象が、本当におもしろいのかどうかを客観的に判断する人が必要になってくるんです。もちろんカメラマンと意見が食い違うときもありますけど。それこそ渡邊くんなんかは僕自身はめちゃくちゃおもしろいと思ったし、彼で表現できるなと思ったんだけど、カメラマンは「えー! そこ行くか?」と思ってて。そのときは自分の中で確信があったからそのまま行きましたけど。逆にカメラマンに「これは絶対に外すなよ」ってけしかけられることもあるんですが、こちらとしてはそこに行くといろいろ傷つきそうだし、めんどくさそうだし、正直「行きたくないな」って思うんだけど。文野さんにもきっとそういう存在はいますよね? 文野 実はそうでもなくて……(笑)。 圡方 あ、そうでもないですか? 文野 『ミューズの真髄』に関しては、序盤以外はほとんど自分で決めていることが多いかもしれません。もちろん編集部の許可がないと雑誌には載らないので、「こういう感じで」という企画書みたいなのを書いたりはしました。もともと私は同人即売会で自費出版でマンガを描いていて、それを見た編集長が「描きたいものを描いていいよ」と声をかけてくださったので、自分の意見が通りやすかったと思います。エンタメとして成立させるために「もう少し恋愛要素を……」みたいなアドバイスをされることはありますし、毎話ネームを上げたあとに編集者と打ち合わせはします。 作品づくりにおける苦悩とは? 文野 圡方さんも企画を通すために、プロットを出したりされますか? 圡方 それでいったら僕もすごい恵まれていますね。プロデューサーの阿武野さんという人は、ものすごい器が大きくて、「テーマにタブーはないよ」「やりたきゃ違う地方のネタでもいいよ」って言ってくれます。自分が本当に興味があって、世の中が見えてくるようなものであれば、なんでもいいって。さらに通常は放送エリア内の取材対象に限られてるんですけど、東海地方じゃなくてもいいよとも。実際『ヤクザと憲法』は大阪ですし。もしそれが企画書をしっかり書いて、ある程度視聴率が取れるとかっていう算段がないと通らないような環境だったら、絶対 1作品も撮れていないと思いますね(笑)。ましてや『ホームレス理事長』なんて、どういう結末になるかもわからない状態で入ってるんで。そういう意味では、すごく縁に恵まれていたと思います。 文野 マンガも編集者との間ではOKが出ていた企画でも、法務部からコンプライアンス的に問題があるとダメ出しされることもありまして……。そうすると「そこを変えたら違うだろ」「言いたいことなんも伝わんないだろ」みたいな根本的な直しが入るんですね。「これがもしドキュメンタリーだったらやってもいいけど、マンガは創作だから作者がそう思っていると思われてしまう。若い未来ある作家にリスクがあることはさせられない」という感じで言われてしまって。マンガとドキュメンタリーの差について自分なりに考えたんですが、ドキュメンタリーも作者の視点や意図が入るという意味では創作物になりますよね。 圡方 もちろんドキュメンタリーも創作物ですね。 文野 圡方さんの作品は、題材からして攻めているというか、斬り込んでいる印象があります。 圡方 これは反動ですね(笑)。普段の僕はサラリーマンで、外部のディレクターさんが作ってくれたものをチェックする係なんですよ。たとえば赤信号で渡っている人がいたりとか選挙ポスターがあったりとか、その人が不利益を被るかもしれない部分をカットしたり。どちらかいうと編集者に近い立場の仕事をしているんです。ローカル局だから、編集者と法務部を兼ねていて。で、いざプロデューサーから「何をやってもいいぞ」って言われると、「えーっ!?」てなっちゃって、閉じ込めていたパンドラの箱みたいなのがズドーンって開いちゃうことが多いんですよね(笑)。普段はすごくストレスがかかる仕事なので。 文野 それは意外でした。『さよならテレビ』を撮る前からそうですか? 圡方 もちろんです。『さよならテレビ』なんて、まさにそれが詰まったような作品です(笑)。 ──周囲から「こんなの撮るの?」みたいな反発はないんですか? 圡方 もちろん反発はあります。でもチャンスはなかなか巡ってこないですから、「もういいや」ってどこか割り切っているところもあります。もともと組織には染まれていないわけで、どこまでいったって自分は優等生グループには入れないので。机も汚いですし(笑)。文野さんはドキュメンタリーを撮ろうと思われたことはないんですか? 文野 いや(笑)。私はマンガの技法的な、マンガならではの表現に興味があるので、「マンガでできないならドキュメンタリーを撮ろう!」とは今はまだ思わないですし、私の場合は“絵を描くのが好き”というところからスタートしているので、できる限りマンガで表現したいと思っています。けど、いつか自分が本当にやりたいことが、マンガという媒体だと伝わらないと思ったときに、やり方を変えることはあるのかもしれないです。 圡方 なるほど。たしかにそうですよね。 文野 ドキュメンタリーって情報量がめちゃくちゃ多いですよね? フィクションだとセットを用意して撮るから、意図的に物を配置する必要がありますけど──たとえばキッチンを撮るとなったときに、わざと汚れをつけないと汚れないとか。マンガも同じで、汚れを描写しないと汚れがつかないんです。でも、ドキュメンタリーは自然なかたちでキャラクターの背景を見せられるし深みを出せる。それがドキュメンタリーの好きなところでもあり、そういう部分をマンガにも入れ込めたらいいなと思いながら描いています。 圡方 でもドキュメンタリーはフラストレーションもすごくあって……絶対に思いどおりの展開にはならないですからね。それこそ『ホームレス理事長』はその典型で。僕はストーリーが好きな人間だから最後はキレイに終わりたいと思っちゃうほうなので、フラストレーションはめちゃくちゃありましたね。いまだに『ホームレス理事長』はあの終わり方でよかったのかって自問自答しています。 文野 理事長に借金を申し込まれるのは予期していないことだったんでしょうか? 圡方 もちろんです。「よし!」っていう気持ちもどこかにあるんだけど、自分が思い描いていたストーリーからはみ出しちゃってて。どうやってこれを作品の中に入れ込んだらいいものかと悩みました。ただ、自分の想像の範囲を超えたことが起きて、それをなんとか作品の中に入れ込もうとしたときのほうが、心に残るものができる気がします。全部自分の手のひらの上で描いたとおりになるものって、あまりおもしろくならないので。 文野 その後、闇金で借りるじゃないですか。それについてはどう感じていたんですか? 圡方 ずっと毎日一緒にいると、それがもう日常なんですよね。「そりゃ借りるよね」って。人にもよりけりですけど、シンパシーを持ちすぎてしまうと、描けなくなってきてしまうので、取材対象との距離感は意識するようにはしていますね。あんまり一緒にご飯食べに行かないとか。あまり仲よくなりすぎると、関係性が画にも出ちゃうので。 文野 それこそ『ホームレス理事長』でいじめられていた子が監督にビンタされる場面は、もしも自分だったら止めに入ってしまいそうだなと思いながら観ていました。 圡方 あそこは僕もすごく居たたまれないというか、背景も知っていたし、どっちにも思いがあるから。でも、あんまり思い入れすぎてもよくないのかなと思いながら、いつも現場にはいるようにしています。 文野 やはりドキュメンタリーでは、取材相手に介入してはいけないものなんですか? 圡方 そう思っています。だから理事長に土下座をされて「お金を貸してください」と言われたときに貸さなかったのかな。それは取材者としてやっちゃダメだと思いましたし。 文野 中には家族が撮っているドキュメンタリーもありますが……? 圡方 そういう場合は、前提となる部分もちゃんと描写して作品の中に入れ込むようにします。それでいえば『さよならテレビ』で僕が渡邊くんにお金を貸している場面があるんですけど、彼に「お金を貸してくれ」と頼まれたとき「貸すけど、撮らせてね」と言いました。 文野 「しめしめ」とは思わなかったんですか? 圡方 僕も悪い人間なので、「しめしめ」とは思いましたけど(笑)。最後のネタバラシがなければ、途中も使っちゃダメというか。 文野 すごく興味深いです(笑)。 ドキュメンタリーもマンガも自分の切り売り(圡方) 圡方 マンガは自分の思いどおりになっていくものなんですか? 文野 いや、なっていかないです。『ミューズの真髄』の中で、主人公が憧れている人の容姿や絵をそのまんまマネするというシーンがあるのですが、これは一般的にはいいことだといえないと思っていて。美優が月岡(未来)先生のマネを始めたときは、「あ、これはおもしろくなるぞ!」と思いました。主人公が他人の猿真似をするマンガは見たことがないぞ、と。 圡方 やっぱり描きながら変わっていくところがあるんですね。ここまで話をしてきて、なんだかんだ文野さんと似ている部分もあるのかなと思っています。 文野 そうかもしれないですね。 圡方 全然関係ないですが、星新一が好きってどこかで書かれていましたよね? 僕も星新一とか筒井康隆とか好きで。文野さんの作品を見ていても自分の中の「普通さ」と「でも自分にしかできないこともある」みたいな、そういうエゴとの闘いみたいなことを毎日やっていそうな人だなと思って。そういう生きづらさが僕にもすごくあるので。個人的なアドバイスをするとしたら、やっぱり自分を活かしてくれる環境に巡り合えたらいいですよね。あまり自分で調整して丸くなりすぎずにやっていけば絶対巡り合わせみたいなものが来るときがあると思うので。自分の生きづらさみたいなものを大切にしてほしいです。 文野 ありがとうございます。ちなみに、圡方さんは自分の信念みたいなものをどこまで貫けますか? 私は、先のコンプライアンスの件で「編集部にクレームが来るかもしれない」と言われて、「じゃあやめます」と言ってしまいました。 圡方 僕も本当にダメですね。基本、主張はできないです。だからこそ作品の中で自分の言いたいことを表現できるドキュメンタリーを作ってるかな。普段は思っているだけで口に出しては言えないから、こういうことやってるんですよね。 文野 言いたいことをSNSなどで伝える漫画家さんも多いと思うんですけど、自分はできないので。いつかちゃんと作品で昇華しようと思っています。 圡方 思っていることが全部言えたら、描く理由がなくなる日が来ると思うので、それでいいと思います。 文野 ある漫画家さんが、作品を批判されたときに「自分が批判された」と思える作品じゃないといい作品とはいえないし、「次のマンガは全部、前のマンガで後悔していることや批判への仕返しだ」というようなことをおっしゃっていて。自分もそういう気持ちで作品を作ろうと思っています。 圡方 本当にそのとおりですね。ドキュメンタリーもマンガも自分の切り売りだと思うんですよね。自分の考えがバレちゃうから恥ずかしいし。でも、そういうものじゃないと意味がないというか。同じようなことを思っていても言えない人たちが作品を観て、「ああ自分も生きていていいんだ」と思ってくれたら、やる価値があるなと思うので同感ですね。ちなみに読者からの声は、ダイレクトに届きます? 文野 手紙とかは編集者が中を見て大丈夫なものだけを転送してくれるので、いいことが書いてあるものしか来ないです(笑)。けど、SNSとかは見られるので……。東海テレビさんの場合、ホームページに感想が書き込めるようになってますけど全部見るんですか? 圡方 いや、見ない。“東海テレビのドキュメンタリー”というだけでいい意見が多いんですよ。それが個人的にはすごい気持ち悪いなと思ってて、だからあんまり見ないようにしてますね。というのも、さっき言ったみたいにいろんな関係、環境があって初めてやれてるっていうだけで、自分の力じゃないのに「がんばった」みたいなコメントを見ると勘違いしちゃうなと思って。それ一番怖いじゃないですか。自分の力量以上の評価をされるのは。 ──でも、そもそも認めてほしくて作品を作っているところもあるんじゃないですか? 圡方 おっしゃるとおりですね。でも、自分の中では「ちゃんと表現できた」と自分で認められているんで、意外と人の意見はそんなに気にならないというか。 文野 私は褒められるのが苦手なので、サイン会とかありがたいですけど、本当にやめてくれという感じで(笑)。 圡方 それはなぜですか(笑)? 文野 いやじゃないですか! 描いただけで先生とか呼ばれるの(笑)。 圡方 その根底には何があるんですかね? 文野 あまり自信がないからですかね。自分の作品を「どこに出しても恥ずかしくない」とは思っていないところもあるかなと。あと、あまり褒められても気を遣っちゃいますし。 圡方 作り続けねばならないと思うと、それがまたプレッシャーになってきますよね。過去の自分が自分の圧になってくるっていうか、勝手に自分で自分の作品性みたいなものを限定しちゃうというか。「お前はこれが得意なんだから、こっちの路線行けよ」とか「こういうものをやってくれよ」って言われると、「期待されてるならそっちに行かなきゃ」とかって思っちゃうんですけど。でもあまりそうならずに、自分が表現したいと思ったものを表現するほうがいいのかもしれない。表現したいものがないのに「なんかやらなきゃ」ってなると、あんまりよくないなと思うので。 ──でも、逆にフラストレーションが溜まらないと作品につながらないとか。 圡方 生きづらさみたいなものは、ずっとつきまとうので。生まれつきのものではあると思います。 文野 私もなくならない気がします。 圡方 外に出してる自分と実際の自分とのギャップみたいなものはどこまでいってもあるんで、それを作品のほうに出したいなと。 ふたりが惹かれる“おもしろい”と思える存在 ──そのほか作品づくりにつながることはありますか? 文野 う~ん……。世の中に対して「それはどうなんだ?」と思っていることとか、みんな当たり前みたいに言ってるけど、「それって偏見なんじゃないの?」みたいなことがきっかけになるかもしれないですね。 圡方 僕も似てますね。世の中的には絶対間違ってるぞって言われているけど、本当にそうなのかな?みたいなところがあって。物語とリアリティというか、「こんなのおかしいよ!」ってだけじゃないもの、ドキュメンタリーだから描けるものを組み合わせて作っていこうとは思っています。僕は会社になじめない人なので、その僕が会社に居続けることで感じる生きづらさみたいなものが、作品のモチベーションになっているので当面は辞めないと思います。『ホームレス理事長』は劇場に一番お客さんが入っていないんですけど、それでも会社員だから作り続けられているところもあったりするので。 文野 あと私は、自分に不幸なことが起きたときに創作意欲が湧くのですが、圡方さんはいかがですか? 圡方 そうですね……もし不治の病になったら自分のことは撮るかもしれないです。 文野 東海テレビ取材班として取材記を出されてはいますが、圡方さんは本を出したりされないんですか? 圡方 文章はダメで……。阿武野さんはライター寄りで、文章もめちゃくちゃ読ませますよね。あの人にVTRを見せるとすぐにナレーションを書かれちゃうんです(笑)。ナレーションで語るのが上手だから。でも、僕はなるべくナレーションを入れたくなくて、そこの攻防はすごくありますね。 文野 圡方さんはナレーションを入れたくないんですね。 圡方 もともと自分はそういうのが苦手だから、一生懸命撮っているところがあって。ナレーションを入れると努力が水の泡になってしまうというか。ナレーションがなくても伝わるものを自分で作りたいなと。やっぱりナレーションで語ると、自分で思っていることがバレちゃうじゃないですか(笑)。でも僕、文野さんのマンガで吹き出しの中に長文のセリフがブワーって書いてあるのは好きですよ。あそこは作者の思いが詰まった表現だなと思いながら読んでました。実際にああいう人いますよね。 文野 あれはマンガ表現的にやっているのもあります。本をパッと開いたときにあれが目に飛び込んできたらおもしろいかなと。でも、実際に私もそういうタイプの人なのかもしれないです(笑)。そういえば、マンガ用に取材をしているなかで、どれぐらいそのまま描いていいんだろうと悩むことがあるんです。あまりにもそのまま描くと失礼かなとか。 圡方 マンガを描くときも取材するんですね。 文野 人によると思いますが、私はたくさんしています。土方さんは「このカットは使わないでください」と言われたら、使わないですか? 圡方 断言はせず「一応考慮はします」って言います。だから今回の自分のカッコつけてる写真も、もし最悪使われちゃったとしても、「あ~、わかるわかる!」と言うと思います。やっぱり撮られた以上は、覚悟しなきゃいけないと思うので(笑)。そういえば、最初に話していたテレビ局を舞台にしたマンガはどうなったんですか? 文野 あれは頓挫してしまいました……。 圡方 そうなんですね。でも取材は無駄にならないじゃないですか。滅びゆくものっていうのは題材になりやすいですし、おもしろいですよ。今、NetflixとかABEMAとかやってもおもしろくないと思うんですけど、「負けゆく者たち」っていうのは対象としておもしろいですよ。時代から退場させられていく人たちっていうのは。そこに美学みたいなものがあるし。 文野 たしかに、私も散り際みたいなものには惹かれます。もし再始動したら、圡方さんに取材を申し込んでもいいですか? 圡方 もちろん、取材受けますし、監修もしますよ! もしやるとなったら声かけてくださいね。そのためにも会社に居続けます! 取材・文=渡邊 玲子 撮影=服部健太郎 編集=宇田川佳奈枝
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業界のタブーに踏み込んだ、映し出される“人間らしさ”──圡方宏史『ヤクザと憲法』
文野紋のドキュメンタリー日記 ~現実(リアル)を求めて~ 人生を変えた一本、退屈な日々に刺激をくれる一本、さまざまな愛に気づく一本など── 漫画家・文野紋によるリアルな視点、世界観で紹介するドキュメンタリー映画日記。 東海テレビドキュメンタリー劇場第8弾として2016年に公開された今作は、大阪の指定暴力団、二代目東組二代目清勇会を約100日間にわたり密着したドキュメンタリー映画だ。 監督・圡方宏史、プロデューサー・阿武野勝彦。『ホームレス理事長 -退学球児再生計画-』(2014年)などで知られ、のちの2020年には衝撃作『さよならテレビ』(2020年)をも生み出した名コンビ。 テレビ業界ではヤクザを取り扱うことはほとんどない。特に、圡方は普段は報道局の記者をしている身。報道局でヤクザものはタブーである。本作は、そんなテレビ業界のタブーである“ヤクザ”を約100日間にわたって密着し、その日常を映し出す。 2014年8月21日、撮影が開始された。撮影にあたり、交わされた取り決めは3つ。 ・取材謝礼金は支払わない ・収録テープは事前に見せない ・モザイクは原則かけない カメラに映るヤクザたちは皆、顔を出し本名も公開されている。これだけで、いかにこの作品が衝撃的であるか伝わるだろう。 撮影を開始した圡方は「部屋住み(※組事務所に移住して雑用などを行う、修行期間の若手組員のこと)」のひとりに事務所を案内される。ヤクザの事務所といえば、金ピカの置物があるようなゴージャスな場所を想像するが、カメラに映る清勇会の事務所は質素そのものだ。本棚には部屋住み曰く“癒やし”用の動物の本まで並んでいる。 だが、もちろん、我々が住んでいるのとまったく同じ部屋ではない。事務所前の道路には監視カメラが設置されているし、出入口は銅鉄製の防弾ドアになっている。 総会の決算で述べられている金額も、私たちが想像するよりずっと小さい。部屋住みへの“お小遣い”は、月にわずか2万円。 東海テレビでは「想像するな。想像することは起こらない」をドキュメンタリーのルールのひとつに定めているという。カメラに映る清勇会の事務所は、ひと目でそれを感じさせてくれる。 かと思えば、決定的な場面は映されていないので詳細は伏せるが、(圡方曰く、彼らは「尻尾をつかませないということに非常に長けて」いるらしい)、背筋がヒヤリとするような違法行為を行っているであろう場面も映されている。 物語の中盤、もうひとりの部屋住みとして登場する青年もまた、“意外”な存在だ。21歳の彼は自ら志願して組に入り、部屋住みとして事務所の掃除などの雑用をしているが、どうにもうまくやれているとは言い難い。この子はこの先ヤクザとしてやっていけるのだろうか、と映画を観ている我々が心配になってしまう様子だ。 彼は圡方たちに対し、学校でのいじめについて語る。詳細は語られていないため具体的な事情はわからないものの、その語りからは彼が学校に対して居づらさを感じていたのではないかと察せられる。 65歳の舎弟(組員)は親のような気持ちで彼に接しているという。舎弟である彼は、前のシーンで選挙はどうするのかと尋ねられ「私は選挙権がないんですよ」と答えていた姿が印象的だ。彼らは大晦日、ふたりでテレビを観ながら酒を飲み、年を越す。その会話はどこかクスリと笑ってしまうものだ。ヤクザは親子盃を交わして親分・子分になる家族のようなものだ、という話は有名だが、このシーンはそういった説明よりも鮮明に組員同士のつながりを感じさせるものだ。 本作のタイトル『ヤクザと憲法』の憲法とは、日本国憲法第14条第1項のことだ。 第14条 1.すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 ヤクザは暴力団排除条例により、保険に入れない。銀行口座を作れない。宅急便や出前の受け取りを拒否されることもある。子供を幼稚園に通わせることすらもできない。 圡方が取材していた警察関係者が言うには、ヤクザは今は追い詰められて、絶滅寸前なのだそうだ。 この映画を見ていると、内容もさることながら報道局の記者でありながらタブーとされている“ヤクザ”にカメラを向け続けた制作陣も興味深く感じさせられる。 東海テレビ取材班による制作ドキュメント『ヤクザと憲法──「暴排条例」は何を守るのか』(岩波書店)によると、本作は監督である圡方のヤクザに対する強い気持ちから始まったという。 「これは、東海テレビにしかできません、絶対に」 圡方というと、以前こちらでも紹介した『さよならテレビ』や、高校を中退した高校球児とその子たちを守ろうとするNPO法人「ルーキーズ」の理事長が金策に奔走する様子を描く『ホームレス理事長 -退学球児再生計画-』(2014)の監督としても知られている。 私は好きな映画は何か、と聞かれたとき、必ずそのひとつとして『ホームレス理事長』を挙げている。この映画もなかなか挑戦的なシーンが映されているのだが、そのうちのひとつに“土下座のシーン”がある。金策に苦戦した理事長が取材をしている圡方に対して20万円を貸してくれと土下座して頼むのだ。理事長はルーキーズを守るために身銭を切り、電気もガスも水道も止められ、アパートを追い出され、闇金にまで手を出す様子が映されている。理事長が元高校球児たちを守るためのお金集めに苦悩していることは一目瞭然だ。その苦悩が切実に映されている映画なのだ。しかし、それを撮っているテレビ局員は彼を直接的に救うことはない。テレビ局という大きな会社に務めるサラリーマンが、たったの20万円を、自分も金に困っているから貸せないということはないだろう。 取材対象とカメラの関係性について考えさせられるドキュメンタリー作品はいくつかあるが、『ホームレス理事長』のこのシーンは、それを鮮明に感じさせるものだろう。私は映画館で初めてこのシーンを観たとき衝撃を受けた。このシーンを放送するのか、と。 前述の制作ドキュメントでも『ホームレス理事長』について「放送後も相当大変なやりとりを経験した」と記している。 『ヤクザと憲法』にはそのテーマに似合わず、少し笑ってしまうようなシーンいくつか存在する。そのひとつに、序盤、圡方が部屋住みに対して質問攻めをするシーンがある。テントが入った大きな包みを見て「マシンガンとかでは?」と尋ねてみたり、「拳銃はないんですか?」と尋ねてみたり。部屋住みの男も呆れているようだ。曰く、「先方からアホだと思われようが、疑問や違和感をその場でぶつけていかないといけない」らしい。 もうひとつ、この映画で圡方ら取材班が印象的なシーンとして、清勇会の事務所に大阪府警の警察官が家宅捜査を行うシーンがある。ガサ入れに来た捜査員は荒っぽい言葉でカメラを止めるよう圡方に怒鳴る。圡方曰く、どうやら圡方を組織関係者と勘違いしているようだったらしい。しかし、圡方はカメラを回し続けた。 『ハイパー ハードボイルド グルメリポート』(テレビ東京)で知られる上出遼平は『Yahoo!ニュース』のインタビューで、思い込みをひっくり返される瞬間がある番組をやりたい理由のひとつとして、「『ヤクザと憲法』を見た時に、「自分の思い込みがくるんとひっくり返る」感覚を確かに覚えたことが衝撃的」であったと語っている。 上出は文芸誌の『群像』(2021年4月発行号)にて「僕たちテレビは自ら死んでいくのか」という檄文を発表し、話題になった。その中では、上出が関わった音声コンテンツでとある企画がコンプライアンスを理由に発表寸前でお蔵入りになったことが語られている。そのとある企画というのが「暴力団構成員と密接な関係にある暴走族の少年」を取材したものだった。 社長はお蔵入りを決定した理由のひとつとして「他人に迷惑をかけている集団(人間)を取材することに意義を感じない」と告げたという。それに対する上出の「他人に迷惑をかける者、法を破る者を取材することに意義はある。」(講談社『群像』2021年4月発行号より引用)という文章からは強い意志を感じる。 この「僕たちテレビは自ら死んでいくのか」は名文だと思うので、機会があればぜひ読んでいただきたい。 当たり前だが、プロデューサーである阿武野も今作に対し「けっしてヤクザを肯定するために作った番組ではない」と語っているし、実際に見ていただけたらそのような内容では一切ないことがわかるだろう。 監督の圡方は『VICE』のインタビューで次のように語った。 「実際の人間の日常を覗いて、ヤクザも人間なんだなぁと感じてほしい。そこからスタートしたいですね。」 さらに圡方は東海テレビのドキュメンタリーに関し「大事なのは、自分たちがいかに正直かどうかだ。」と語る。覚悟さえあれば最終的にはなんとかなるのだという。 当然この映画が映しているのもまた、ヤクザというもののほんの一部でしかないし、この映画を観てヤクザをわかってつもりになるべきではない。 だが、少なくとも“ヤクザも人間である”という事実だけは感じられるのではないだろうか。 文野 紋 (ふみの・あや)漫画家。2020年『月刊!スピリッツ』(小学館)にて商業誌デビュー。2021年1月に初単行本『呪いと性春 文野紋短編集』(小学館)を刊行。 同年9月、『月刊コミックビーム』(KADOKAWA)で『ミューズの真髄』を連載スタート。単行本『ミューズの真髄』1巻&2巻は重版が決定しており、3月10日には完結最終3巻が発売された。 (C)東海テレビ放送
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20年の歳月をかけて描いた“人間の感情” 6時間超の大作──原一男『水俣曼荼羅』
文野紋のドキュメンタリー日記 ~現実(リアル)を求めて~ 人生を変えた一本、退屈な日々に刺激をくれる一本、さまざまな愛に気づく一本など── 漫画家・文野紋によるリアルな視点、世界観で紹介するドキュメンタリー映画日記。 2021年11月27日、撮影15年、編集5年、3部構成で上映時間は合計6時間12分の超大作ドキュメンタリー映画が公開された。監督は破天荒な元陸軍軍人・奥崎謙三を追ったドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』(1987年)などで知られる原一男だ。 私は初めて触れたドキュメンタリー映画が同作であったこともあり、原一男は大好きなドキュメンタリー監督のうちのひとりだ。例に漏れず『水俣曼荼羅』の公開を心待ちにし、もちろん劇場に足を運んで視聴した。 水俣病は日本における高度経済成長期の四大公害病のひとつで、1953年ごろから1960年代にかけて熊本県水俣湾で発生した。その正体は周辺の化学工業(チッソ株式会社)から排出されたメチル水銀化合物に汚染された魚介類を日常的に食べていたことによる水銀中毒である。 2004年10月15日、撮影がスタートした。 この日は最高裁判所関西訴訟、通称「水俣病関西訴訟」の判決日であった。水俣病関西訴訟とは、かつて不知火海(水俣湾を含む内海)周辺地域に居住し、のちに関西に移住した患者59名(控訴審時58名及びその承継人)がチッソ株式会社・国・熊本県に対し、損害賠償を求めたのだ。 第1部では主に、熊本大学医学部教授の浴野成生(えきの・しげお)さんが、水俣病による感覚障害の定説とされていた「末梢神経説」に対し、新病像論「中枢神経説」を主張する様子が描かれている。撮影当時、水俣病は「52年判断条件」というとても厳しい基準を満たさなければ認定されず、ほとんどの患者は水俣病であると認定されない状況が続いていた。この条件は「末梢神経説」を前提としたものであったため、浴野さんが主張する「中枢神経説」はその条件を覆し、認定されない水俣病患者を水俣病であると証明するものだった。 この浴野成生という人物は非常に独特で、魅力的だ。浴野さんは、なにも正義の使命感だけで水俣病を研究しているわけではない。彼は水俣病を学問として捉えており、原も彼が水俣病患者の脳に接するシーンを“オタクっぽい手つき”と評している。映画を観た人の中には彼を“マッド浴野”と言う人までいるという。水俣病にフォーカスした作品で、このようなキャラクターが登場するのは非常に意外でおもしろい。 第2部では主に、小児性水俣病患者の生駒秀夫(いこま・ひでお)さんを中心に水俣病の実情を映していく。彼は原たちを一番歓迎した住民で、さまざまな場所に案内したという。原によると一番仲よくなった住民だそうだ。また第2部の中盤にあたる2009年、水俣病問題の最終解決を旗印に「水俣病特別措置法」が成立する。水俣病に見られる症状を持っている人に一時金210万円と療養費、療養手当が支払われるというものだった。ただし、新たに裁判を起こした場合は手帳が使えなくなるという条件。和解する裁判が相次いだが、反発する者もいた。佐藤英樹(さとう・ひでき/「水俣病被害者互助会」団長)さんは「水俣病は絶対に終わりません」と語る。 第3部では胎児性水俣病患者の坂本しのぶさんが原とともに、これまで好きになった数々の男性を訪ねていくことになる。きっかけは『もやい音楽祭』で、しのぶさんが作詞した曲「これが、わたしの人生」が優秀作品賞を受賞したことだ。 「じっとステージの上にいて、歌を聞いて、自分が作った歌でしょう、何を思ってたの?じっと何か考えているふうに見えたの」 原の問いに、しのぶさんが答える。 「側に大好きな人がおったの」 原はオーディオコメンタリー(『水俣曼荼羅』初回限定版DVD-BOX特典)で、そのときのしのぶさんの表情は、今までの人生の悲喜交々があふれての表情だと思っていたため、驚いて「昔好きだった人を訪ねに行かないか」と提案したのだと語った。おもしろおかしく恋愛トークをするしのぶさんと、その想い人を見て、切なさで涙が出てきたのだと、そう語る原の声も涙ぐんでいるように聞こえる。第3部のオーディオコメンタリーでは、このあとも原の住民たちに対する強い感情がうかがえる。 作家の石牟礼道子(いしむれ・みちこ)さんと渡辺京二(わたなべ・きょうじ)さんを訪ねるシーンがある。そこで原は“悶え神(もだえがみ)”という概念を教わる。 「自分が何の加勢もできんから、せめてね、せめて嘆き悲しみを共にしてやろうということですよね」 「人のことなのにさ、我がことのように悶える人がいるってわけですよ。そのことを悶え神っていうふうに部落で言うんだそうです」 原一男といえば、以前は『さようならCP』(1972年)の横田弘、『極私的エロス・恋歌1974』(1974年)の武田美由紀、『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三、『全身小説家』(1994年)の井上光晴……と強烈な個人に密着したドキュメンタリーを制作している印象が強かった。中でも『ゆきゆきて、神軍』の奥崎謙三は強烈だ。原は自身の映画を“スーパーヒーローもの”と呼ぶもこともあった。 2018年、キネマ旬報社から発行された『タブーこそを撃て!原一男と疾走する映画たち』で、原は当時のことを振り返り「圧倒的に強い人たちに出逢い、カメラを手に格闘しながら強くなりたい。そう思っていたんです」と語る。 しかし近年は、大阪・泉南アスベスト国賠訴訟を記録した『ニッポン国VS泉南石綿村』(2018年)、そして『水俣曼荼羅』など群衆に目を向けた作品の印象が強い。『水俣曼荼羅』では“曼荼羅”という言葉を用いて、個ではなく群衆を映したことを表現している。 『水俣曼荼羅 製作ノート』(2021年/皓星社)によると、『水俣曼荼羅』の撮影が始まって10年くらい経ったころ、親睦会で浴野さんが「今回の映画は交響楽、シンフォニーみたいな映画になるだろう」と挨拶をしたらしい。しかし、原一男は次第にいろいろな楽器の音をひとつに重ねて作る“シンフォニー”というより“曼荼羅”のほうがしっくりいくと気持ちが変わっていったのだそうだ(“曼荼羅”とは、密教で宇宙の真理を表すために、仏や菩薩の集会を体系的に図示したもののことである。) 第1部の中盤、認定申請を4回棄却され“偽善者”扱いまでされた水俣病患者。緒方正実(おがた・まさみ)さんは、熊本県が提出した棄却理由書に“人格”によって検査結果が信頼できないかのような文言が書かれていることに気づく。指摘を受け、水俣市へ謝罪に来た県の担当者3名は、自分の仕事のやり方が間違っていた旨を率直に認め、公開された場で謝罪するのだ。 このことについて原は「行政の人の中でも水俣病という問題に真っ向から取り組もうとする人がいなくはないんですけども、それが大きな力になって国の方針を変えるというところまでいきませんもんね。どっかでそういう声ってつぶされていくっていいますかね」とコメントしている。 (『水俣曼荼羅』初回限定版DVD-BOX特典オーディオコメンタリーより引用) “敵側”のこういった人物を映しているところが、シンフォニーというよりむしろ曼荼羅に近いイメージだという理由のひとつなのではないかと思う。 また『水俣曼荼羅』では、52年判断条件を覆す研究をしている浴野さんを、正義感に燃える情に熱い医師という安易なイメージの枠にはめて描いたりはしない。同じく、胎児性水俣病患者のしのぶさんは「恋多き女」という顔を見せてくれる。 本作はひとりの人物にフォーカスするのではなく、水俣病を取り巻くさまざまな人々を映している。しかし、その人々は単に水俣病患者という「群衆」としてではなく、「緒方さん」「生駒さん」「しのぶさん」……として描かれているのだ。 『キネマ旬報』2021年12月上旬号のインタビュー「私は、「私たち」を描く人に変わった」で、原は“前期”、“後期”という言葉を使って説明している。 「前期の私の映画は「個」を撮ったけど今は「私たち」という認識が私の中で強くなっている」 「(『水俣曼荼羅』について)いろんな人間が入り組んで、一つの世界の中で曼荼羅をあやなしている状況をまるごと描いてみたいという気持ちがずっとあった」 このような被写体の変化について、原は時代の影響があるという。昭和から平成、令和と時代が流れていくにつれて奥崎謙三のような人間は生きられなくなった。もし今の時代に奥崎謙三のような人間がいても、インターネットで叩かれるなどして『ゆきゆきて、神軍』に映る彼のようにはいかないのではないか。 原は奥崎謙三のような強烈な個性の人間、撮りたいと思う人間がいない時代になったことで、映画監督としての自分は終わってしまったのではないかと落ち込んでいたという。 そんななか、原に手を差し伸べたのが“水俣病”。普通、民衆には奥崎謙三のような強い感情のほとばしりはなく、むしろ日本の民衆は控えめで権力に逆らうことは少ない。しかし、アスベストの被害者や水俣病の患者たちは、加害側の企業や行政に対し怒るべきであると学習している。奥崎謙三ほど強くはないが、必ず感情が出てくる。原はそれをとにかく丁寧に撮っていこうと決めたのだという。 『水俣曼荼羅 製作ノート』では次のようにも語っている。 「この作品において、私は極力、水俣病の患者である人たちや、その水俣病の解決のために闘っている人たちの感情のディティールを描くことに努めた」 「『水俣曼荼羅』はこれまでの公害運動を描いた作品のように画一的なパターンの運動映画ではない。観るもの=観客の自由な解釈に委ねる「遊び心」にあふれた内容に仕上がっているはずだ」 オーディオコメンタリーで、原は最後、このように映画を締める。 「私たちは映画を作る、ドキュメンタリーを作るっていうことは、石牟礼さんの言葉を借りていえば、私たち自身が悶え神なんだろうなというふうに思いながら、まだまだくたばっていく最後の最後まで悶え神としてドキュメンタリーを作っていかなきゃいけないんじゃなかろうかって、今もそういうふうに思っているんですね」 『水俣曼荼羅』は「第95回キネマ旬報ベスト・テン 文化映画作品賞第1位」「第76回毎日映画コンクール ドキュメンタリー映画賞」など各賞を受賞し、高く評価されている。 公式サイトに、このような一文がある。 “『ゆきゆきて、神軍』の原一男は『水俣曼荼羅』で、鬼才から巨匠になった──” 文野 紋 (ふみの・あや)漫画家。2020年『月刊!スピリッツ』(小学館)にて商業誌デビュー。2021年1月に初単行本『呪いと性春 文野紋短編集』(小学館)を刊行。 同年9月、『月刊コミックビーム』(KADOKAWA)で『ミューズの真髄』を連載スタート。単行本『ミューズの真髄』1巻&2巻は重版が決定しており、3月10日には完結最終3巻が発売された。 発売元:キネマ旬報社 販売元:ハピネット・メディアマーケティング (C)疾走プロダクション
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2PMの約7年ぶり“完全体”に涙腺崩壊。奇跡の来日公演レポート|『林美桜のK-POP沼ガール』第9回
「林 美桜のK-POP沼ガール」 K-POPガチオタク・林美桜テレビ朝日アナウンサーの沼落ちコラム 10月7日〜8日に開催された2PMのコンサート『2PM 15th Anniversary Concert <It's 2PM> in JAPAN』に、母といつもお世話になってるハレスの方々と一緒に行ってきました。 2PMのデビュー15周年を記念したコンサート。 日本での“完全体”(*1)の公演は、なんとおよそ7年ぶり。 忙しいなか、韓国でも日本でも、新曲をリリースしてはハイタッチ会やテレビ出演など、たくさん活動してくれていた2PM。 もう7年も前か……。 東京ドーム公演の最後「I'll be back」で、必ず戻ってくると約束してから……。 約束の「I'll be back」に、全細胞覚醒! 各メンバーのソロ活動はありましたが、完全体はあまりにも久しぶりなので、「かけ声どんな感じだったっけ……?」となんだかふわふわモード。 そんななか 突然暗転し、ざわめく会場。 Jun. Kの「I'll be back」。 これは……! 7年前の約束のI'll be back!! 私の中の全細胞覚醒。脳内温度上昇。涙腺崩壊。膝ガクガク。 そこに! 6人が!! いる!!!! なんて素晴らしい景色。 この景色を見るために私は生きていたんだった……。 2PMといえば!なアップテンポな曲が「Jump」「ミダレテミナ」「Hands Up」と続き、いきなりセンターステージまで飛び出して、縦横無尽に楽しそうに飛び回るメンバー。 会場が歓声に包まれるなか……最初の挨拶。 2PM「ただいま、2PMです!」 私「イェーーーーーー!!!!」 2PMが活動を休止している間に就職してアナウンサーになり、無駄に鍛え上げられた声帯から、人生で一番大きな声が出ました。 7年経っても変わらない、メンバー6人の魅力 まぶしいほどにステージ上で輝く6人。 パフォーマンス(さらに洗練されてる)、トーク、メンバーのわちゃわちゃ感が、まったく変わっていないことに感激。 Jun. Kさんの歌声はやっぱり2PMの柱。 会場のみんなをグッと集中させて聴かせる。 メンバーに対する、まるで我が子を見るようなあたたかい眼差しには、胸がギュッとなっちゃいました。 「おじいさん」イジリも久しぶりでうれしそうだったなぁ……。ほっこり。 ニックンさんは相変わらずしっかり者なチャーミング紳士。 ライブビューイングの視聴者への配慮を片時も忘れないし、ちょっとでも怠けるメンバーには(主にテギョン。今回は、汗を今すぐふいてと顔にタオル押しつけてましたけど。笑)しっかり指導もする。 クヌ(*2)の「彼女」もよかったなぁ……必死で目に焼きつけて永久保存版にしました。あまりにもスイートでした。 テギョンさんの名司会には、もうお腹がよじれるくらい笑いました。 司会なのにジャイアン状態。 テギョンのおかげで、メンバーの弾ける笑顔がたくさん見られました。感謝。 こんなにおもしろいのに、パフォーマンスになると一変。 特にワンショットで抜かれたときの表情には、感嘆のため息がでます。 ジュノさんは改めて、すごい人です。 2PMの中だとダンスも歌もパートが多いのにまったくブレないし、どの瞬間を切り取っても最高潮。 私的には、テギョンの名曲「ヤリタクナイ」にツッコミを入れているジュノがかわいすぎて……。 メンバーと一緒のときは、ツンデレ王子のツンとデレのコントラストがよりはっきり際立っていいですね。なんてラブリー。 ウヨンさんが「Without U」のパフォーマンスの中でグッとスイッチが入る瞬間は、本当に惚れるほどかっこいいですよね。痺れました。 トークではメンバーにイジられ、かわいがられるぴよぴよな存在は変わらず。 ソロ活動だったら何度もファンに「(僕)大丈夫?」と呼びかけファンが応えるところを、この日はメンバーが「大丈夫!」と返しているのを見て、なんだか……私の中に親心が生まれました。 チャンソンさんはやっぱり最強マンネ。愛すべき存在でした。 パフォーマンス中もトーク中も、メンバーに積極的に絡みに行っていて!(笑) かまってほしいときのきょとんとした顔がたまらん。 そして、チャンソンさんはトークが素晴らしいですよね。 ファンを思って練り出した、美しい言葉の一つひとつが沁みました。 相変わらずマンネがトークをしっかり締めていて、 これぞ2PMが誇るスーパーマンネ先生。 ハレスのみなさんも、7年ぶりとは思えない言葉のキャッチボール。安定感と一体感。 2PMとハレスの間にある、変わらない厚い信頼関係にグッときました。 ハレスの空気感も変わらずでした。 「終わってほしくない」と感じさせてくれた時間 なぜかセクシーアレンジされた(笑)「10 out of 10」。 キレも華やかさも当時と変わらない「Heartbeat」。 あのときの瑞々しさがそのままの「Take off」。 見どころ満載で挙げきれませんが こんなにも終わってほしくないと思った時間、今までなかったです。 本当にずっと続いてほしかった。 2PMメンバーのみなさんもそう思っていたはず!! 感謝の気持ちがとめどなくあふれた帰り道、 2PMと過ごして、楽しかったり、うれしかったり、励まされたり…… いろんな思い出を、母と泣きながら語って帰りました。 長い期間活動できるK-POPアーティストが多くはない中、 変わらない姿で戻ってきてくれるというのは…… 奇跡ですよね。 第一線で活躍し続けてくれるメンバーの姿を見て、もっと自分もがんばらなくては……とアツい思いが込み上げてきました。 また2PMとハレスの皆様に会える日を信じてます! ※記事初出時、内容に誤りがありました。お詫びして訂正いたします 林美桜のチョアチョア♡メモ *1/完全体 2016年10月の東京ドーム公演を最後に、メンバーの兵役などを理由に活動休止となった2PM。その後はそれぞれソロ活動をしていたが、今回のコンサートで約7年ぶりの6人全員集合(=完全体)となった。 *2/クヌ ニックンとウヨンのカップルのこと。ファンを溶かすほど甘いふたり。見ているだけで癒やされます。私の2PMとの出会いはクヌの動画でした 文=林 美桜 編集=高橋千里
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SEVENTEEN、Kep1er、Stray Kidsの素顔が尊い!テラサで楽しむ「秋の推し活」|『林美桜のK-POP沼ガール』特別編
「林 美桜のK-POP沼ガール」 K-POPガチオタク・林美桜テレビ朝日アナウンサーの沼落ちコラム 最近やっと涼しくなり、過ごしやすくなってきましたね! 私はアン・ボヒョンさんやチョン・へインさんのファンミに行ったり、 2PMのコンサートに行ってきましたよ! それはそれは幸せな時間でした。 ですが、秋ってすごいですね……過ごしやすい気候に相まって集中力がみなぎっています。 推し活がはかどる。 ……ということで、K-POPアーティストのバラエティ番組を観始めました。 『全力!SEVENTEEN』 『本気でKep1erランド』 『Stray Kids 東京ミッションツアー』 テレビ朝日と、動画プラットフォーム『TELASA』(テラサ)が完全連動した “音楽バラエティのシリーズ”(*1)として配信されています。 しかも! なんと! 今ならこれらの番組が、テラサで独占見放題配信中なんです! K-POPペンは、地上波でもちろん観ましたよ!という方も多いと思うのですが、 実はテラサでは、今まで地上波放送された番組も、テラサオリジナルコンテンツも! 両方観ることができるんです。 ここでは、私のかなり主観の入ったおすすめポイントを挙げながらご紹介できたらと思います(メンバー一人ひとりに焦点を当てられていないのは本当に申し訳ございません)。 メンバーのトーク&お顔に見惚れる『全力!SEVENTEEN』 まずは、『全力!SEVENTEEN』。 地上波:2022年12月10日(土)、17日(土)放送回 VOCAL TEAM、HIPHOP TEAM、PERFORMANCE TEAMに分かれ、ごほうびをかけたゲームに挑戦。 ごほうびは、メンバーたちが「日本でやりたいこと」「日本で食べたいもの」。 こちら、視聴するみなさんは1秒でも目を逸らしたりほかのことを考えたりする暇を与えられず、忙しさを感じてしまうほどに魅力が詰まった番組でございます。 SEVENTEENのメンバーのトーク力、リアクション……すべてにおいて脱帽です。 個人的には、 前半の「だるまさんが転んだ」ゲームがお気に入り。 だって、止まるたびに地球の宝が……なんてきれいなお顔。 静止するメンバーの動画を観ているこちらも一時停止するという、意味わからない時間が生まれます。 カメラマンさんもうれしくなっちゃったんだろうな……めっちゃ寄ってるもの(笑)。 ごほうびを楽しむメンバーも、また最高におかしくてかわいくて、 “平成ノブシコブシ吉村(崇)さんの足を入れた足湯”の温度を確認しまくるメンバーには爆笑しましたよ。 テラサ限定配信では、地上波では放送しきれなかったゲームの数々や、 歌収録に密着したバックステージ映像が観られます。 「チャムチャムチャム」(観た人ならわかる)や、リラクゼーション機器に癒やされ瞳を閉じるメンバーの“絵に描きたくなるほどの美しさ”など、見どころ満載です。 1回観るだけじゃ当然足りません…… 13人のメンバーをチッケム目線で、ぜひ13回お楽しみください! ゲームもごほうびもかわいさ満点!『本気でKep1erランド』 続いては、『本気でKep1erランド』。 地上波:2023年4月1日、15日(土)放送回 Kep1erの日本初・冠特番! ※残念ながら、ヨンウンは番組を欠席しています メンバーたちが3チームに分かれ、激レアごほうびをかけ、体を張ったものからチームワークが試されるものなど、さまざまなゲームに挑戦します。 冒頭、チェヒョンちゃんがヒカルちゃんの名前を忘れてしまったり(笑)。 最初はちょっと緊張気味なメンバーたち。 そんなドキドキな姿はもう親心が生まれるほど。 私的お気に入りゲームは…… 「椅子取りゲーム」は毎秒移り変わるエンディング妖精で豪華すぎますし、 「ひらひらティッシュキャッチゲーム」も楽しかったです。 スーパースローモーションで観る、メンバーたちの隙のない美しさは必見。 スローモーションでも完璧さを保ち続けることなんて可能なの?って思うのですが、異次元にかわいい彼女たちなら可能なわけなんですね。 また、ごほうびを嗜むメンバーたちはもう……視聴者が溶けてしまうほどのかわいさ。 今回のごほうびの中でも「壺芋ブリュレ」は、実は私が『ザワつく!金曜日』という番組でお取り寄せチャレンジしたことがあるんですが、購入まで数週間待ちの人気スイーツでした。 ですから、ごほうびの壺芋ブリュレを発見したとき、番組スタッフのKep1erへの本気度を感じましたよ。 スイーツたちもKep1erに食べてもらえて幸せだったろうなと、スイーツ側の気持ちを考えてしまうほど眼福シーンが詰まってます。 ご覧ください。 また、パフォーマンスも豪華で、 「tOgether fOrever」 「I do! Do you?」 「Wing Wing」 の3曲を披露してくれているんですが、 なんと、全曲スタイリングが違います。 忙しいなか、Kep1erの皆様ありがとうございます。 しかも……すべて「フル尺」! みなさん、観るしかないです。よろしくお願いします。 外ロケにケミ爆発!『Stray Kids 東京ミッションツアー』 最後は、『Stray Kids 東京ミッションツアー』。 地上波:2023年5月20日(土)、6月3日(土)放送回 8人が「バンチャンチーム」と「チャンビンチーム」に分かれてロケへ! 遊園地では、絶叫アトラクションやお化け屋敷へ。 お好み焼き&ラーメンなど東京のグルメも満喫! 最後はお台場でBBQ! Stray Kidsが外ロケしてたなんて聞いてないよ……その日、絶対東京都の空気おいしかったじゃん!となぜか怒りが生まれてしまうほど素晴らしい企画のロケ。 スタジオ収録では見られない、たくさん動くからこその「素」が垣間見られて、ペンにとってはありがたい番組になっております。 まず、遊園地って何事。 怖がるメンバー、強気なメンバー、あんまり変化がないメンバー……みんな違ってみんないい。 私的には…… バンチャン、フィリックスのケミが爆発(*2)してました。 ジェットコースターで、怖がるフィリックスを支えてあげるバンチャンさん。 もう、こんな尊いことがあっていいの……? 保護保護保護!!!! 観てるこちら側、ジェットコースターに乗るより心臓動いちゃった( ; ; ) テラサ限定配信では、このふたりがお化け屋敷を体験するんですが、ちょっとした冒険記くらい内容濃いので、こちらもぜひ。 BBQもよかったですよ……お肉を焼くメンバーたちにめちゃくちゃキュンとしてしまいました。 1日ロケをともにして、まるで家族のような関係性を築いたMCのみなさんとの会話もいいです。 MCがお父さんに見えてきます。 テラサ限定配信にしかない、バス内でのトークはファンミ並みに濃い内容になっております。 シソンヌじろうさんとのアイソレはかわいくて何度も観られちゃいます。 今年の秋は「テラサの秋」。観られるときに観るべし! ここで、私が番組制作スタッフから得た情報を紹介! 実は、毎回メンバーたちにアンケートを取って、本当に食べたいものや行きたいところを聞き、企画内容を決めているそう。 また、楽曲パフォーマンスは、1曲ずつとても時間をかけて撮影しているんだとか。 ぜひ、メンバーとスタッフのこだわりを感じてほしいです! 番組制作陣の熱い思い、伝わりましたでしょうか。 そして最後に忘れてはいけないのが、配信には期限があるということ。 くれぐれも見逃さないよう、気をつけてください! 私のモットーは「推しは推せるときに推すべし」なんですが、 「観られるときに観る」ことも大切ですね。 皆様、お早めに……。 そして、私がなぜこんなにテラサを推しているのかといいますと、 TREASUREの特番が放送されるからなんです! 『トレバラ~TREASUREのバラエティ塾~』 地上波:10/28(土)24:30〜25:00放送、11/11(土)25:00〜25:30放送 MCは、今回ご紹介した3番組でもおなじみのノブコブ吉村さん&シソンヌ長谷川(忍)さんです。 5:5のチームに分かれ、日本のテレビの“定番ゲーム企画”を通じて、日本のバラエティを学んでもらいます。 最終的により多くのポイントを獲得したチームが、トレジャー……つまり“お宝のごほうび”をゲット! はい! 観るしかないです!! みなさん、テラサの秋にしませんか? 「TELASA K-POP」のご視聴はこちらから! 林美桜のチョアチョア♡メモ *1/テレビ朝日×テラサの“音楽バラエティのシリーズ” K-POP以外は、以下のような人気番組がラインナップしています! 『藤井 風テレビwithシソンヌ・ヒコロヒー』 『UVERworld~やけにチャイムの鳴る夜~』 『Cafe GREEN APPLE~ミセスLOVERが集う店〜』 *2/ケミが爆発 ケミは「ケミストリー(化学反応)」の語頭を取ったもの。心の準備が追いつかないほどに、バンチャンとフィリックスのケミストリーが素晴らしいコンテンツを生み出していたので、「爆発」と表現。グループ内で生まれたコンビや数人の集まりに対して使うことが多いです。メンバー同士の関わり合いの中で生まれる、このメンバーとこのメンバーだからこそ!のかわいさ、おもしろさ、癒やしをファンは見逃しません。 文=林 美桜 編集=高橋千里
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サバイバル番組で思い出す「アナウンサー練習時代」だったころ|『林美桜のK-POP沼ガール』第8回
「林 美桜のK-POP沼ガール」 K-POPガチオタク・林美桜テレビ朝日アナウンサーの沼落ちコラム 前回の記事で、韓国の大手事務所HYBE主催のサバイバル番組『R U Next?』について書いたのですが、語り足りず…… 無事、次回に続きました。 ありがとうございます。 2AM、少女時代、KARA…「K-POP第2世代」を生き抜いた審査員 その『R U Next?』 審査員にもガッチリ心をつかまれました。 2AM グォン 少女時代 スヨン KARA ギュリ K-POP第2世代(*1)という戦国時代を生き抜き、今もマルチに活躍するスターたち。 存在だけでも圧倒されちゃいますね。 特に、グォンさんの言葉は沁みました。 ある練習生に対しての「本気でアイドルになりたいのか疑問です。魅力的なキャラだけでは実力はカバーできませんから」という厳しい指摘。 レジェンドの言葉に、K-POPアーティストになるという覚悟はどれだけのものなのか。 K-POPの世界の厳しさを突きつけられたような気がしました。 すでにデビューして、私たちに夢を見せてくれるアーティストたちは、どれだけの努力を積み重ねているんだろうか……と思いを馳せてしまうほどに。 コーチたちの、厳しい中にも愛のある指導も見どころのひとつだと思います。 サバイバル番組を観て「私の目標はなんだっけ…」 記事を2本に分けてまでも語りたかったサバイバル番組ですが、 私はこういったサバイバル番組やオーディション番組を観ながら 自分の人生に照らし合わせてぼうっと思いにふけっていることがあります。 練習生たちは、私の想像にも及ばないほどつらく厳しい熾烈な争いの中で 失敗して脱落したり、チャンスをつかんで夢を叶えたり…… 人生の中の激動の時期を見せてくれているわけなんですが、 その中のさまざまなシーンをうすーくうすーく引き延ばして考えれば 自分の人生のいろいろなターニングポイント、日々の小さな出来事にも重なるような気がして。 練習生の「アーティストになりたい」というあふれんばかりの情熱に触れて 「自分も新人のときにはあった情熱……最近消えかけてるかも……」 練習生のひたむきな努力に 「私、最近何か全力でがんばってたっけ……」 デビュー決定の瞬間 「私の目標はなんだったっけ……」 という感じで、練習生たちを通して常にぼんやり生きてしまっている自分を振り返って、 反省したり学んだりすることが多いです。 「アナウンサー練習時代」だったころの私 余談になりますが、 私にもアナウンサーの練習生時代(笑)がありました。 『R U Next?』のプロフィール写真風に……落書きを……。申し訳ございません。衝動が抑えきれず 4月に入社してから10月くらいまで、およそ2時間の授業を3コマ、毎日受講していました。 その様子を『はい!テレビ朝日です』という番組が密着し、放送するんですが 私は、自分が失敗するのをカメラに撮られるのが恥ずかしくて恥ずかしくてしょうがなくて、ですね。 『R U Next?』のようにずっと撮影されていたわけではないですが なんだか素を撮られるのもソワソワして、スタッフさんに対してちょっとそっけなくなっちゃったりして。 「卒業制作」という先輩社員に披露するニュース読みや フリートークのオンエア前なんかは、 身体中から「私、今、集中しているので話しかけないでください」オーラをビンビンに出していたなぁと。 今考えれば本当にそれこそお恥ずかしい限りです。 でもそれくらい、そこにあるカメラ、その奥のスタッフ、その先の視聴者を気遣う余裕なんか1ミリもなかったわけです。 大切な同期、三谷紬アナと井澤健太朗アナ。辛かった新人研修。ふたりがいなきゃ絶対に乗り越えられなかった……頼りっぱなしだったな(今も) こんな過去もありますので 練習生たちは本当にすごいなと思ってます。 ありのままを視聴者に届けてくれて。 大きなことに挑戦しながら、成長の苦しい過程も見せてくれる。 なかなか簡単なことじゃないとだと思うんですよね。 書きながら、なんと7年前まで思いを馳せてしまいました。 失礼いたしました。 ぜひ、皆様も『R U Next?』ご覧ください。 デビューメンバーは決まったばかり! まだ間に合います!! 林美桜のチョアチョア♡メモ *1/K-POP第2世代 世代の区切りは人それぞれだと思いますが……私にとっての第2世代は、東方神起、KARA、少女時代、2PM、2NE1など(すべてを挙げきれず申し訳ございません……)です。私が初めてK-POPに触れるきっかけになった世代です。本国でも忙しいなか、たくさん来日して活動していましたよね! この世代の活躍が、今の日本でのK-POPというジャンルの浸透につながっているのかな……と思います。今でもグループ活動を再開したり、俳優やバラエティタレントなどさまざまなジャンルで、第一線で輝く頼もしいレジェンドたちです。 文=林 美桜 編集=高橋千里
AKB48 Team 8 私服グラビア
大好評企画が復活!AKB48 Team 8メンバーひとりずつの撮り下ろし連載
【会員限定】AKB48 Team 8 私服グラビア Extra
【会員限定】AKB48 Team 8メンバーひとりずつの撮り下ろし連載
生きづらさを乗り越える「大人のためのマンガ入門」
仕事、恋愛、家族、結婚……大人のありきたりでありがちな悩みや生きづらさと向き合い、乗り越えていくためのヒントを探るマンガレビュー連載(文=山本大樹)
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「才能」という呪縛を解く ミューズの真髄
【連載】生きづらさを乗り越える「大人のためのマンガ入門」 仕事、恋愛、家族、結婚……大人のありきたりでありがちな悩みや生きづらさと向き合い、乗り越えていくためのヒントを探るマンガレビュー連載。月1回程度更新。 『ブルー・ピリオド』をはじめ美大受験モノマンガがブームを呼んでいる昨今。特に芸術というモチーフは、その核となる「才能とは何か?」を掘り下げることで、主人公の自意識をめぐるドラマになりやすい。 文野紋『ミューズの真髄』も、一度は美大受験に失敗した会社員の主人公・瀬野美優が、一念発起して再び美大受験を志し、自分を肯定するための道筋を探るというストーリーだ。しかし、よくある美大受験マンガかと思ってページをめくっていくと、「才能」の扱い方に本作の特筆すべき点を見出すことができる。 「美大に落ちたあの日。“特別な私”は、死んでしまったから。仕方がないのです。“凡人”に成り下がった私は、母の決めた職場で、母の決めた服を着て、母が自慢できるような人と母が言う“幸せ”を探すんです。でも、だって、仕方ない、を繰り返しながら。」 (『ミューズの真髄』あらすじより) 主人公の美優は「どこにでもいる平凡な私」から、自分で自分を肯定するために、少しずつ自分の意志を周囲に示すようになる。芸術の道に進むことに反対する母親のもとを飛び出し、自尊心を傷つける相手にはNOを突きつけ、自分の進むべき道を自ら選び取っていく。しかし、心の奥深くに根づいた自己否定の考えはそう簡単に変えることはできない。自尊心を取り戻す過程で立ち塞がるのが「才能」の壁だ。 24歳という年齢で美術予備校に飛び込んだ美優は、最初の作品講評で57人中47位と悲惨な成績に終わる。自分よりも年下の生徒たちが才能を見出されていくなかで、自分の才能を見つけることができない美優。その後挫折を繰り返しながら、予備校の講師である月岡との出会いによって少しずつ自分を肯定し、前向きに進んでいく姿には胸が熱くなる。 「私は地獄の住人だ あの人みたいにあの子みたいに漫画みたいに 才能もないし美術で生きる資格はないのかもしれない バカで中途半端で恋愛脳で人の影響ばかり受けてごめんなさい でももがいてみてもいいですか? 執着してみていいですか?」 冒頭で述べたとおり、本作の「才能」への向き合い方を端的に示しているのがこのセリフである。才能がなくても好きなことに執着する──功利主義の社会では蔑まれがちなこのスタンスこそが、他者の否定的な視線から自分を守り、自分の人生を肯定していくためには重要だ。才能に執着するのではなく、「絵」という自分の愛する対象に執着する。その執着が自分を愛することにつながるのだ。それは「好きなことを続けられるのも才能」のような安い言葉では語り切れるものではない。 才能と自意識の話に収斂していく美大受験マンガとは別の視座を、美優の生き方は示してくれる。そして、美優にとっての「美術」と同じように、執着できる対象を見つけることは、「才能」の物語よりも私たちにとっては遥かに重要なことのはずである。 文=山本大樹 編集=田島太陽 山本大樹 編集/ライター。1991年、埼玉県生まれ。明治大学大学院にて人文学修士(映像批評)。QuickJapanで外部編集・ライターのほか、QJWeb、BRUTUS、芸人雑誌などで執筆。(Twitter/はてなブログ)
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勝ち負けから離れて生きるためには? 真造圭伍『ひらやすみ』
【連載】生きづらさを乗り越える「大人のためのマンガ入門」 仕事、恋愛、家族、結婚……大人のありきたりでありがちな悩みや生きづらさと向き合い、乗り越えていくためのヒントを探るマンガレビュー連載。月1回程度更新。 30代を迎えて、漠然とした焦りを感じることが増えた。20代のころに感じていた将来への不安からくる焦りとはまた種類の違う、現実が見えてきたからこその焦りだ。 周囲の同世代が着々と実績を残していくなか、自分だけが取り残されているような感覚。いつまで経っても増えない収入、一年後の見通しすらも立たない生活……焦りの原因を数え始めたらキリがない。 真造圭伍のマンガ『ひらやすみ』は、30歳のフリーター・ヒロト君と従姉妹のなつみちゃんの平屋での同居生活を描いたモラトリアム・コメディだ。 定職に就かずに30歳を迎えてもけっして焦らず、のんびりと日々の生活を愛でながら過ごすヒロト君の生き方は、素直にうらやましく思う。身の回りの風景の些細な変化や季節の移り変わりを感じながら、家族や友達を思いやり、目の前のイベントに全力を注ぐ。どうしても「こんなふうに生きられたら」と考えてしまうくらい、魅力的な人物だ。 そんなヒロト君も、かつては芸能事務所に所属し、俳優として夢を追いかけていた時期もあった。高校時代には親友のヒデキと映画を撮った経験もあり、純粋に芝居を楽しんでいたヒロト君。芸能事務所のマネージャーから「なんで俳優になろうと思ったの?」と聞かれ、「あ、オレは楽しかったからです!演技するのが…」と答える。 「でも、これからは楽しいだけじゃなくなるよ──」 「売れたら勝ち、それ以外は負けって世界だからね」 数年後、役者を辞めたヒロト君は、漫画家を目指す従姉妹のなつみちゃんの姿を見て、かつて自分がマネージャーから言われた言葉を思い出す。純粋に楽しんでいたはずのことも、社会では勝ち負け──経済的な成功/失敗に回収されていく。出版社にマンガを持ち込んだなつみちゃんも、もしデビューすれば商業誌での戦いを強いられていくだろう。 運よく好きなことや向いていることを仕事にできたとしても、資本主義のルールの中で暮らしている以上、競争から距離を置くのはなかなか難しい。結果を出せない人のところにいつまでも仕事が回ってくることはないし、自分の代わりはいくらでもいる。嫌でも他者との勝負の土俵に立たされることになるし、純粋に「好き」だったころの気持ちとはどんどんかけ離れていく。 「アイツ昔から不器用でのんびり屋で勝ち負けとか嫌いだったじゃん? 業界でそういうのいっぱい経験しちまったんだろーな。」 ヒロト君の親友・ヒデキは、ヒロトが俳優を辞めた理由をそう推察する。私が身を置いている出版業界でも、純粋に本や雑誌が好きでこの業界を志した人が挫折して去っていくのをたくさん見てきた。でも、彼らが負けたとは思わないし、なんとか端っこで食っているだけの私が勝っているとももちろん思わない。勝ち/負けという物差しで物事を見るとき、こぼれ落ちるものはあまりに多い。むしろ、好きだったはずのことが本当に嫌いにならないうちに、別の仕事に就いたほうが幸せだと思う。 私も勝ち負けが本当に苦手だ。優秀な同業者も目の前でたくさん見てきて、同じ土俵に上がったらまず自分では勝負にならないということも30歳を過ぎてようやくわかった。それでも続けているのは、勝ち負けを抜きにして、いつか純粋にこの仕事が好きになれる日が来るかもしれないと思っているからだ。もちろん、仕事が嫌いになる前に逃げる準備ももうできている。 暗い話になってしまったが、『ひらやすみ』のヒロト君の生き方は、競争から逃れられない自分にとって、大きな救いになっている。なつみちゃんから「暇人」と罵られ、見知らぬ人からも「みんながみんなアナタみたいに生きられると思わないでよ」と言われるくらいののんびり屋でも、ヒロト君の周囲には笑顔が絶えない。自分ひとりの意志で勝ち負けから逃れられないのであれば、せめてまわりにいる人だけでも大切にしていきたい。そうやって自分の生活圏に大切なものをちゃんと作っておけば、いつでも競争から降りることができる。『ひらやすみ』は、そんな希望を見せてくれる作品だった。 文=山本大樹 編集=田島太陽 山本大樹 編集/ライター。1991年、埼玉県生まれ。明治大学大学院にて人文学修士(映像批評)。QuickJapanで外部編集・ライターのほか、QJWeb、BRUTUS、芸人雑誌などで執筆。(Twitter/はてなブログ)
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克明に記録されたコロナ禍の息苦しさ──冬野梅子『まじめな会社員』
【連載】生きづらさを乗り越える「大人のためのマンガ入門」 仕事、恋愛、家族、結婚……大人のありきたりでありがちな悩みや生きづらさと向き合い、乗り越えていくためのヒントを探るマンガレビュー連載。月1回程度更新。 5月に『コミックDAYS』での連載が完結した冬野梅子『まじめな会社員』。30歳の契約社員・菊池あみ子を取り巻く苦しい現実、コロナ禍での転職、親の介護といった環境の変化をシビアに描いた作品だ。周囲のキラキラした友人たちとの比較、自意識との格闘でもがく姿がSNSで話題を呼び、あみ子が大きな選択を迫られる最終回は多くの反響を集めた。 「コロナ禍における、新種の孤独と人生のたのしみを、「普通の人でいいのに!」で大論争を巻き起こした新人・冬野梅子が描き切る!」と公式の作品紹介にもあるように、本作は2020年代の社会情勢を忠実に反映している。疫病はさまざまな局面で社会階層の分断を生み出したが、特に本作で描かれているのは「働き方」と「人間関係」の変化と分断である。『まじめな会社員』は、疫禍による階層の分断を克明に描いた作品として貴重なサンプルになるはずだ。 2022年5月末現在、コロナがニュースの時間のほとんどを占めていた時期に比べると、世間の空気は少し緩やかになりつつある。飲食店は普通にアルコールを提供しているし、休日に友達と遊んだり、ライブやコンサートに出かけることを咎められるような空気も薄まりつつある。しかし、過去の緊急事態宣言下の生活で感じた孤独や息苦しさはそう簡単に忘れられるものではないだろう。 たとえば、スマホアプリ開発会社の事務職として働くあみ子は、コロナ禍の初期には在宅勤務が許されていなかった。 「持病なしで子供なしだとリモートさせてもらえないの?」「私って…お金なくて旅行も行けないのに通勤はさせられてるのか」(ともに2巻)とリモートワークが許される人々との格差を嘆く場面も描かれている。 そして、あみ子の部署でもようやくリモートワークが推奨されるようになると、それまで事務職として上司や営業部のサポートを押しつけられていた今までを振り返り、飲食店やライブハウスなどの苦境に思いを巡らせつつも、つい「こんな生活が続けばいいのに…」とこぼしてしまう。 自由な働き方に注目が集まる一方で、いわゆるエッセンシャルワーカーはもちろん、社内での立場や家族の有無によって出勤を強いられるケースも多かった。仕事上における自身の立場と感染リスクを常に天秤にかけながら働く生活に、想像以上のストレスを感じた人も多かったはずだ。 「抱き合いたい「誰か」がいないどころか 休日に誰からも連絡がないなんていつものこと おうち時間ならずっとやってる」(2巻) コロナによる分断は、働き方の面だけではなく人間関係にも侵食してくる。コロナ禍の初期には「自粛中でも例外的に会える相手」の線引きは、限りなく曖昧だった。独身・ひとり暮らしのあみ子は誰とも会わずに自粛生活を送っているが、インスタのストーリーで友人たちがどこかで会っているのを見てモヤモヤした気持ちを抱える。 「コロナだから人に会えないって思ってたけど 私以外のみんなは普通に会ってたりして」「綾ちゃんだって同棲してるし ていうか世の中のカップルも馬鹿正直に自粛とかしてるわけないし」(2巻) 相互監視の状況に陥った社会では、当事者同士の関係性よりも「(世間一般的に)会うことが認められる関係性かどうか」のほうが判断基準になる。家族やカップルは認められても、それ以外の関係性だと、とたんに怪訝な目を向けられる。人間同士の個別具体的な関係性を「世間」が承認するというのは極めておぞましいことだ。「家族」や「恋人」に対する無条件の信頼は、家父長制的な価値観にも密接に結びついている。 またいつ緊急事態宣言が出されるかわからないし、そうなれば再び社会は相互監視の状況に陥るだろう。感染者数も落ち着いてきた今のタイミングだからこそ本作を通じて、当時は語るのが憚られた個人的な息苦しさや階層の分断に改めて目を向けておきたい。 文=山本大樹 編集=田島太陽 山本大樹 編集/ライター。1991年、埼玉県生まれ。明治大学大学院にて人文学修士(映像批評)。QuickJapanで外部編集・ライターのほか、QJWeb、BRUTUS、芸人雑誌などで執筆。(Twitter/はてなブログ)
L'art des mots~言葉のアート~
企画展情報から、オリジナルコラム、鑑賞記まで……アートに関するよしなしごとを扱う「L’art des mots~言葉のアート~」
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【News】西洋絵画の500年の歴史を彩った巨匠たちの傑作が、一挙来日!『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』が大阪市立美術館・国立新美術館にて開催!
先史時代から現代まで5000年以上にわたる世界各地の考古遺物・美術品150万点余りを有しているメトロポリタン美術館。 同館を構成する17部門のうち、ヨーロッパ絵画部門に属する約2500点の所蔵品から、選りすぐられた珠玉の名画65 点(うち46 点は日本初公開)を展覧する『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』が、11月に大阪、来年2月には東京で開催されます。 この展覧会は、フラ・アンジェリコ、ラファエロ、クラーナハ、ティツィアーノ、エル・グレコから、カラヴァッジョ、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、レンブラント、 フェルメール、ルーベンス、ベラスケス、プッサン、ヴァトー、ブーシェ、そしてゴヤ、ターナー、クールベ、マネ、モネ、ルノワール、ドガ、ゴーギャン、ゴッホ、セザンヌに至るまでを、時代順に3章で構成。 第Ⅰ章「信仰とルネサンス」では、イタリアのフィレンツェで15世紀初頭に花開き、16世紀にかけてヨーロッパ各地で隆盛したルネサンス文化を代表する画家たちの名画、フラ・アンジェリコ《キリストの磔刑》、ディーリック・バウツ《聖母子》、ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《ヴィーナスとアドニス》など、計17点を観ることが出来ます。 第Ⅱ章「絶対主義と啓蒙主義の時代」では、絶対主義体制がヨーロッパ各国で強化された17世紀から、啓蒙思想が隆盛した18世紀にかけての美術を、各国の巨匠たちの名画30点により紹介。カラヴァッジョ《音楽家たち》、ヨハネス・フェルメール《信仰の寓意》、レンブラント・ファン・レイン《フローラ》などを御覧頂けます。 第Ⅲ章「革命と人々のための芸術」では、レアリスム(写実主義)から印象派へ……市民社会の発展を背景にして、絵画に数々の革新をもたらした19世紀の画家たちの名画、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む》、オーギュスト・ルノワール《ヒナギクを持つ少女》、フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲く果樹園》、さらには日本初公開となるクロード・モネ《睡蓮》など、計18点が展覧されます。 15世紀の初期ルネサンスの絵画から19世紀のポスト印象派まで……西洋絵画の500 年の歴史を彩った巨匠たちの傑作を是非ご覧下さい! 『メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年』 ■大阪展 会期:2021年11月13日(土)~ 2022年1月16日(日) 会場:大阪市立美術館(〒543-0063大阪市天王寺区茶臼山町1-82) 主催:大阪市立美術館、メトロポリタン美術館、日本経済新聞社、テレビ大阪 後援:公益財団法人 大阪観光局、米国大使館 開館時間:9:30ー17:00 ※入館は閉館の30分前まで 休館日:月曜日( ただし、1月10日(月・祝)は開館)、年末年始(2021年12月30日(木)~2022年1月3日(月)) 問い合わせ:TEL:06-4301-7285(大阪市総合コールセンターなにわコール) ■東京展 会期:2022年2月9日(水)~5月30日(月) 会場:国立新美術館 企画展示室1E(〒106-8558東京都港区六本木 7-22-2) 主催:国立新美術館、メトロポリタン美術館、日本経済新聞社 後援:米国大使館 開館時間:10:00ー18:00( 毎週金・土曜日は20:00まで)※入場は閉館の30分前まで 休館日:火曜日(ただし、5月3日(火・祝)は開館) 問い合わせ:TEL:050-5541-8600( ハローダイヤル) text by Suzuki Sachihiro
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【News】約3,000点の新作を展示。国立新美術館にて「第8回日展」が開催!
10月29日(金)から11月21日まで、国立新美術館にて「第8回日展」が開催されます。日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門に渡って、秋の日展のために制作された現代作家の新作、約3,000点が一堂に会します。 明治40年の第1回文展より数えて、今年114年を迎える日本最大級の公募展である日展は、歴史的にも、東山魁夷、藤島武二、朝倉文夫、板谷波山など、多くの著名な作家を生み出してきました。 展覧会名:第8回 日本美術展覧会 会 場:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2) 会 期:2021年10月29日(金)~11月21日(日)※休館日:火曜日 観覧時間:午前10時~午後6時(入場は午後5時30分まで) 主 催:公益社団法人日展 後 援:文化庁/東京都 入場料・チケットや最新の開催情報は「日展ウェブサイト」をご確認下さい (https://nitten.or.jp/) 展示される作品は作家の今を映す鏡ともいえ、作品から世相や背景など多くのことを読み取る楽しさもあります。 あらゆるジャンルをいっぺんに楽しめる機会、新たな日本の美術との出会いに胸躍ること必至です! 東京展の後は、京都、名古屋、大阪、安曇野、金沢の5か所を巡回(予定)します。 日本画 会場風景 2020年 洋画 会場風景 2020年 彫刻 会場風景 2020年 工芸美術 会場風景 2020年 書 会場風景 2020年 text by Suzuki Sachihiro
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【News】和田誠の全貌に迫る『和田誠展』が開催!
イラストレーター、グラフィックデザイナー和田誠わだまこと(1932-2019)の仕事の全貌に迫る展覧会『和田誠展』が、今秋10月9日から東京オペラシティアートギャラリーにて開催される。 和田誠 photo: YOSHIDA Hiroko ©Wada Makoto 和田誠の輪郭をとらえる上で欠くことのできない約30のトピックスを軸に、およそ2,800点の作品や資料を紹介。様々に創作活動を行った和田誠は、いずれのジャンルでも一級の仕事を残し、高い評価を得ている。 展示室では『週刊文春』の表紙の仕事はもちろん、手掛けた映画の脚本や絵コンテの展示、CMや子ども向け番組のアニメーション上映も予定。 本展覧会では和田誠の多彩な作品に、幼少期に描いたスケッチなども交え、その創作の源流をひも解く。 ▽和田誠の仕事、総数約2,800点を展覧。書籍と原画だけで約800点。週刊文春の表紙は2000号までを一気に展示 ▽学生時代に制作したポスターから初期のアニメーション上映など、貴重なオリジナル作品の数々を紹介 ▽似顔絵、絵本、映画監督、ジャケット、装丁……など、約30のトピックスで和田誠の全仕事を紹介 会場は【logirl】『Musée du ももクロ』でも何度も訪れている、初台にある「東京オペラシティアートギャラリー」。 この秋注目の展覧会!あなたの芸術の秋を「和田誠の世界」で彩ろう。 【開催概要】展覧会名:和田誠展( http://wadamakototen.jp/ ) 会期:2021年10月9日[土] - 12月19日[日] *72日間 会場:東京オペラシティ アートギャラリー 開館時間:11:00-19:00(入場は18:30まで) 休館日:月曜日 入場料:一般1,200[1,000]円/大・高生800[600]円/中学生以下無料 主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団 協賛:日本生命保険相互会社 特別協力:和田誠事務所、多摩美術大学、多摩美術大学アートアーカイヴセンター 企画協力:ブルーシープ、888 books お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル) *同時開催「収蔵品展072難波田史男 線と色彩」「project N 84 山下紘加」の入場料を含みます。 *[ ]内は各種割引料金。障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料。割引の併用および入場料の払い戻しはできません。 *新型コロナウイルス感染症対策およびご来館の際の注意事項は当館ウェブサイトを( https://www.operacity.jp/ag/ )ご確認ください。 ▽和田誠(1932-2019) 1936年大阪に生まれる。多摩美術大学図案科(現・グラフィックデザイン学科)を卒業後、広告制作会社ライトパブリシティに入社。 1968年に独立し、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしてだけでなく、映画監督、エッセイ、作詞・作曲など幅広い分野で活躍した。 たばこ「ハイライト」のデザインや「週刊文春」の表紙イラストレーション、谷川俊太郎との絵本や星新一、丸谷才一など数多くの作家の挿絵や装丁などで知られる。 報知映画賞新人賞、ブルーリボン賞、文藝春秋漫画賞、菊池寛賞、毎日デザイン賞、講談社エッセイ賞など、各分野で数多く受賞している。 仕事場の作業机 photo: HASHIMOTO ©Wada Makoto 『週刊文春』表紙 2017 ©Wada Makoto 『グレート・ギャツビー』(訳・村上春樹)装丁 2006 中央公論新社 ©Wada Makoto 『マザー・グース 1』(訳・谷川俊太郎)表紙 1984 講談社 ©Wada Makoto text by Suzuki Sachihiro
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「誰も観たことのないバラエティを」。『ももクロChan』10周年記念スタッフ座談会
ももいろクローバーZの初冠番組『ももクロChan』が昨年10周年を迎えた。 この番組が女性アイドルグループの冠番組として異例の長寿番組となったのは、ただのアイドル番組ではなく、"バラエティ番組”として破格におもしろいからだ。 ももクロのホームと言っても過言ではないバラエティ番組『ももクロChan』。 彼女たちが10代半ばのころから、その成長を見続けてきたプロデューサーの浅野祟氏、吉田学氏、演出の佐々木敦規氏の3人が集まり、番組への思い、そしてももクロの魅力を存分に語ってくれた。 浅野 崇(あさの・たかし)1970年、千葉県出身。プロデューサー。 <現在の担当番組> 『ももクロChan』 『ももクロちゃんと!』 『Musee du ももクロ』 『川上アキラの人のふんどしでひとりふんどし』、など 吉田 学(よしだ・まなぶ)1978年、東京都出身。プロデューサー。 <現在の担当番組> 『ももクロChan~Momoiro Clover Z Channel~』 『ももクロちゃんと!』 『川上アキラの人のふんどしでひとりふんどし』 『Musée du ももクロ』、など 佐々木 敦規(ささき・あつのり)1967年、東京都出身。ディレクター。 有限会社フィルムデザインワークス取締役 「ももクロはアベンジャーズ」。そのずば抜けたバラエティ力の秘密 ──最近、ももクロのメンバーたちが、個々でバラエティ番組に出演する機会が増えていますね。 浅野 ようやくメンバー一人ひとりのバラエティ番組での強さに、各局のディレクターやプロデューサーが気づいてくれたのかもしれないですね。間髪入れずに的確なコメントやリアクションをしてて、さすがだなと思って観てます。 佐々木 彼女たちはソロでもアリーナ公演を完売させるアーティストですけど、バラエティタレントとしてもその実力は突き抜けてますから。 浅野 あれだけ大きなライブ会場で、ひとりしゃべりしても飽きがこないのは、すごいことだなと改めて思いますよ。 佐々木 そして、4人そろったときの爆発力がある。それはまず、バラエティの天才・玉井詩織がいるからで。器用さで言わせたら、彼女はめちゃくちゃすごい。百田夏菜子、高城れに、佐々木彩夏というボケ3人を、転がすのが本当にうまくて助かってます。 昔は百田の天然が炸裂して、高城れにがボケにいくスタイルだったんですが、いつからか佐々木がボケられるようになって、ももクロは最強になったと思ってます。 キラキラしたぶりっ子アイドル路線をやりたがっていたあーりんが、ボケに回った。それどころか、今ではそのポジションに味をしめてる。昔はコマネチすらやらなかった子なのに、ビックリですよ(笑)。 (写真:佐々木ディレクター) ──そういうメンバーの変化や成長を見られるのも、10年以上続く長寿番組だからこそですね。 吉田 昔からライブの舞台裏でもずっとカメラを回させてくれたおかげで、彼女たちの成長を記録できました。結果的に、すごくよかったですね。 ──ずっとももクロを追いかけてきたファンは思い出を振り返れるし、これからももクロを知る人たちも簡単に過去にアクセスできる。「テレ朝動画」で観られるのも貴重なアーカイブだと思います。 佐々木 『ももクロChan』は、早見あかりの脱退なども撮っていて、楽しいときもつらいときも悲しいときも、ずっと追っかけてます。こんな大事な仕事は、途中でやめるわけにはいかないですよ。彼女たちの成長ドキュメンタリーというか、ロードムービーになっていますから。 唯一無二のコンテンツになってしまったので、ももクロが活動する限りは『ももクロChan』も続けたいですね。 吉田 これからも続けるためには、若い世代にもアピールしないといけない。10代以下の子たちにも「なんかおもしろいお姉ちゃんたち」と認知してもらえるように、我々もがんばらないと。 (写真:吉田プロデューサー) 浅野 彼女たちはまだまだ伸びしろありますからね。個々でバラエティ番組に出たり、演技のお仕事をしたり、ソロコンをやったりして、さらにレベルアップしていく。そんな4人が『ももクロChan』でそろったとき、相乗効果でますますおもしろくなるような番組をこれからも作っていきたいです。 佐々木 4人は“アベンジャーズ"っぽいなと最近思うんだよね。 浅野 わかります。 ──アベンジャーズ! 個人的に、ももクロって令和のSMAPや嵐といったポジションすら狙えるのではないか、と妄想したりするのですが。 浅野 あそこまで行くのはとんでもなく難しいと思いますが……。でも佐々木さんの言うとおりで、最近4人全員集まったときに、スペシャルな瞬間がたまにあるんですよ。そういう大物の華みたいな部分が少しずつ見えてきたというか。 佐々木 そうなんだよねぇ。ももクロの4人はやたらと仲がいいし、本人たちも30歳、40歳、50歳になっても続けていくつもりなので、さらに化けていく彼女たちを撮っていかなくちゃいけないですね。 早見あかりが抜けて、自立したももクロ (写真:浅野プロデューサー) ──先ほど少し早見あかりさん脱退のお話が出ましたけど、やはり印象深いですか。 吉田 そうですね。そのとき僕はまだ『ももクロChan』に関わってなかったんですが、自分の局の番組、しかも動画配信でアイドルの脱退の告白を撮ったと聞いて驚きました。 当時はAKB48がアイドル界を席巻していて、映画『DOCUMENTARY of AKB48』などでアイドルの裏側を見せ始めた時期だったんです。とはいえ、脱退の意志をメンバーに伝えるシーンを撮らせてくれるアイドルは画期的でした。 佐々木 ももクロは最初からリミッターがほとんどないグループだからね。チーフマネージャーの川上アキラさんが攻めた人じゃないですか。だって、自分のワゴン車に駆け出しのアイドル乗っけて、全国のヤマダ電機をドサ回りするなんて、普通考えられないでしょう(笑)。夜の駐車場で車のヘッドライトを背に受けながらパフォーマンスしてたら、そりゃリミッターも外れますよ。 (写真:『ももクロChan』#11) ──アイドルの裏側を見せる番組のコンセプトは、当初からあったんですか? 佐々木 そうですね、ある程度狙ってました。そもそも僕と川上さんが仲よしなのは、プロレスや格闘技っていう共通の熱狂している趣味があるからなんですけど。 当時流行ってた総合格闘技イベント『PRIDE』とかって、ブラジリアントップファイターがリング上で殺し合いみたいなガチの真剣勝負をしてたんですよ。そんな血気盛んな選手が闘い終わってバックヤードに入った瞬間、故郷のママに「勝ったよママ! 僕、勝ったんだよ!」って電話しながら泣き出すんです。 ああいうファイターの裏側を生々しく映し出す映像を見て、表と裏のコントラストには何か新しい魅力があるなと、僕らは気づいて。それで、川上さんと「アイドルで、これやりましょうよ!」って話がスムーズにいったんです。 吉田 ライブ会場の楽屋などの舞台裏に定点カメラを置いてみる「定点観測」は、ももクロの裏の部分が見える代表的なコーナーになりました。ステージでキラキラ輝くももクロだけじゃなくて、等身大の彼女たちが見られるよう、早いうちに体制を整えられたのもありがたかったですね。 ──番組開始時からももクロのバラエティにおけるポテンシャルは図抜けてましたか? 佐々木 いや、最初は普通の高校生でしたよ。だから、何がおもしろくて何がウケないのか、何が褒められて何がダメなのか。そういう基礎から丁寧に教えました。 ──転機となったのは? 佐々木 やはり早見あかりが抜けたことですね。当時は早見が最もバラエティ力があったんです。裏リーダーとして場を回してくれたし、ほかのメンバーも彼女に頼りきりだった。我々も困ったときは早見に振ってました。 だから早見がいなくなって最初の収録は、残ったメンバーでバラエティを作れるのか正直不安で。でも、いざ収録が始まったら、めちゃめちゃおもしろかったんですよ。「お前らこんなにできたのっ!?」といい意味で裏切られた。 早見に甘えられなくなり、初めて自立してがんばるメンバーを見て、「この子たちとおもしろいバラエティ作るぞ!」と僕もスイッチが入りましたね。 あと、やっぱり2013年ごろからよく出演してくれるようになった東京03の飯塚(悟志)くんが、ももクロと相性抜群だったのも大きかった。彼のシンプルに一刀両断するツッコミのおかげで、ももクロはボケやすくなったと思います。 吉田 飯塚さんとの絡みで学ぶことも多かったですよね。 佐々木 トークの間合いとか、ボケの伏線回収的な方程式なんかを、お笑い界のトップランナーと実戦の中で知っていくわけですから、貴重な経験ですよね。それは僕ら裏方には教えられないことでした。 浅野 今のももクロって、収録中に何かおもしろいことが起きそうな気配を感じると、各々の役割を自覚して、フィールドに散らばっていくイメージがあるんですよね。 言語化はできないんだろうけど、彼女たちなりに、ももクロのバラエティ必勝フォーメーションがいくつかあるんでしょう。状況に合わせて変化しながら、みんなでゴールを目指してるなと感じてます。 ももクロのバラエティ史に残る奇跡の数々 ──バラエティ番組でのテクニックは芸人顔負けのももクロですが、“笑いの神様”にも愛されてますよね。何気ないスタジオ収録回でも、ミラクルを起こすのがすごいなと思ってて。 佐々木 最近で言うと、「4人連続ピンポン球リフティング」は残り1秒でクリアしてましたね。「持ってる」としか言えない。ああいう瞬間を見るたびに、やっぱりスターなんだなぁと思いますね。 浅野 昔、公開収録のフリースロー対決(#246)で、追い込まれた百田さんが、うしろ向きで投げて入れるというミラクルもありました。 あと、「大人検定」という企画(#233)で、高城さんがタコの踊り食いをしたら、鼻に足が入ってたのも忘れられない(笑)。 吉田 あの高城さんはバラエティ史に残る映像でしたね(笑)。 個人的にはフットサルも印象に残ってます。中学生の全国3位の強豪チームとやって、善戦するという。 佐々木 なんだかんだ健闘したんだよね。しかも終わったら本気で悔しがって、もう一回やりたいとか言い出して。 今度のオンラインライブに向けて、過去の名シーンを掘ってみたんですが、そういうミラクルがたくさんあるんですよ。 浅野 今ではそのラッキーが起こった上で、さらにどう転していくかまで彼女たちが自分で考えて動くので、昔の『ももクロChan』以上におもしろくなってますよね。 写真:『ももクロChan』#246) (写真:『ももクロChan』#233) ──皆さんのお話を聞いて、『ももクロChan』はアイドル番組というより、バラエティ番組なんだと改めて思いました。 佐々木 そうですね。誤解を恐れずに言えば、僕らは「ももクロなしでも通用するバラエティ」を作るつもりでやってるんです。 お笑いとしてちゃんと観られる番組がまずあって、その上でとんでもないバラエティ力を持ったももクロががんばってくれる。そりゃおもしろくなりますよね。 ──アイドルにここまでやられたら、ゲストの芸人さんたちも大変じゃないかと想像します。 佐々木 そうでしょうね(笑)。平成ノブシコブシの徳井(健太)くんが「バラエティ番組いろいろ出たけど、今でも緊張するのは『ゴッドタン』と『ももクロChan』ですよ」って言ってくれて。お笑いマニアの彼にそういう言葉をもらえたのは、ありがたかったなぁ。 誰も見たことのない破格のバラエティ番組を届ける ──そして11月6日(土)には、『テレビ朝日 ももクロChan 10周年記念 オンラインプレミアムライブ!~最高の笑顔でバラエティ番組~』を開催しますね。 吉田 もともとは去年やるつもりでしたが、コロナ禍で自粛することになり、11周年の今年開催となりました。これから先『ももクロChan』を振り返ったとき、このイベントが転機だったと思えるような特別な日にしたいですね。 浅野 歌あり、トークあり、コントあり、ゲームあり。なんでもありの総合バラエティ番組を作るつもりです。 2時間の生配信でゲストも来てくださるので、通常回以上に楽しいのはもちろん、ライブならではのハプニングも期待しつつ……。まぁプロデューサーとしては、いろんな意味でドキドキしてますけど(苦笑)。 佐々木 ライブタイトルに「バラエティ番組」と入れて、我々も自分でハードル上げてるからなぁ(笑)。でも「バラエティを売りにしたい」と浅野Pや吉田Pに思っていただいているので、ディレクターの僕も期待に応えるつもりで準備してるところです。 浅野 ここで改めて、ももクロは歌や踊りのパフォーマンスだけじゃなく、バラエティも最高におもしろいんだぞ、と知らしめたい。 さっき佐々木さんも言ってましたけど、まだももクロに興味がない人でも、バラエティ番組として楽しめるはずなので、お笑い好きとか、バラエティをよく観る人に観てもらいたいです。 佐々木 誰も見たことない、新しくておもしろい番組を作るつもりですよ。 浅野 『ももクロChan』が始まった2010年って、まだ動画配信で成功している番組がほとんどなかったんですね。そんな環境で番組がスタートして、テレビ朝日の中で特筆すべき成功番組になった。 そういう意味では、配信動画のトップランナーとして、満を持して行う生配信のオンラインイベントなので、業界の中でも「すごかった」と言ってもらえる番組にするつもりです。 吉田 『ももクロChan』スタッフとしては、番組が11周年を迎えることを感慨深く思いつつ、テレビを作ってきた人間としては、コロナ以降に定着してきたオンライン生配信の意義を今改めて考えながら作っていきたいです。 (写真:『テレビ朝日 ももクロChan 10周年記念 オンラインプレミアムライブ!~最高の笑顔でバラエティ番組~』は、11月6日(土)19時開演 logirl会員は割引価格でご視聴いただけます) ──具体的にどういった企画をやるのか、少しだけ教えてもらえますか? 浅野 「あーりんロボ」(佐々木彩夏がお悩み相談ロボットに扮するコントコーナー)はやるでしょう。 佐々木 生配信で「あーりんロボ」は怖いですよ、絶対時間押しますから(笑)。佐々木も度胸ついちゃってるからガンガンボケて、百田、高城、玉井がさらに煽って調子に乗っていくのが目に見える……。 あと、配信ならではのディープな企画も考えていますが、ちょっと今のままだとディープすぎてできないかもしれないです。 浅野 配信を観た方は、ネタバレ禁止というルールを決めたら、攻められますかねぇ。 佐々木 たしかに視聴者の方々と共犯関係を結べるといいですね。 とにかく、モノノフさんはもちろんですが、少しでも興味を持った人に観てほしいんですよ。バラエティ史に残る番組の記念すべき配信にしますので、絶対損はさせません。 浅野 必ず、期待にお応えします。 撮影=時永大吾 文=安里和哲 編集=後藤亮平
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logirlの「起爆剤になりたい」ディレクター・林洋介(『ももクロちゃんと!』)インタビュー
ももいろクローバーZ、でんぱ組.inc、AKB48 Team8などのオリジナルコンテンツを配信する動画配信サービス「logirl」スタッフへのリレーインタビュー第5弾。 今回は10月からリニューアルする『ももクロちゃんと!』でディレクターを務める林洋介氏に話を聞いた。 林洋介(はやし・ようすけ)1985年、神奈川県出身。ディレクター。 <現在の担当番組> 『ももクロちゃんと!』 『WAGEI』 『小川紗良のさらまわし』 『まりなとロガール』 リニューアルした『ももクロちゃんと!』の収録を終えて ──10月9日から土曜深夜に枠移動する『ももクロちゃんと!』。林さんはリニューアルの初回放送でディレクターを務めています。 林 そうですね。「ももクロちゃんと、〇〇〇!」という基本的なルールは変わらずやっていくんですけど、画面上のCGやテロップなどが変わるので、視聴者の方の印象はちょっと違ってくるかなと思います。 (写真:「ももクロちゃんと!」) ──収録を終えた感想はいかがですか? 林 自粛期間中に自宅で推し活を楽しめる「推しグッズ」作りがトレンドになっていたので、今回は「推しグッズ」というテーマでやったんですが、ももクロのみなさんに「推しゴーグル」を作ってもらう作業にけっこう時間がかかってしまったんですよね。「安全ゴーグル」に好きなキャラクターや言葉を書いてデコってもらったんですが、本当はもうひとつ作る予定が収録時間に収まりきらず……それでもリニューアル1発目としては、期待を裏切らない内容になったと思います。 ──『ももクロちゃんと!』を担当するのは今回が初めてですが、収録に臨むにあたって何か考えはありましたか? 林 やっぱり、リニューアル一発目なので盛り上がっていけたらなと。あとは、ももクロは知名度のあるビッグなタレントさんなので、その空気に飲まれないようにしないといけないなと考えていましたね。 ──先輩スタッフの皆さんからとも相談しながらプランを立てていったのでしょうか? 林 そうですね。ももクロは業界歴も長くてバラエティ慣れしているので、トークに関しては心配ないと聞いていました。ただ、自分たちで考えて何かを書いたり作ったりしてもらうのは、ちょっと時間がいるかもしれないよとも……でも、まさかあそこまでかかるとは思いませんでした(笑)。ちょっとバカバカしいものを書いてもらっているんですけど、あそこまで真剣に取り組んでくれるのかって逆に感動しました。 (写真:「ももクロちゃんと! ももクロちゃんと祝!1周年記念SP」) 「まだこんなことをやるのか」という無茶をしたい ──ももクロメンバーと仕事をする機会は、これまでもありましたか? 林 logirlチームに入るまで一度もなくて、今回がほぼ初対面です。ただ一度だけ、DVDの宣伝のために短いコメントをもらったことがあって、そのときもここまで現場への気遣いがしっかりしているんだという印象を受けました。 もちろん名前はよく知っていますが、僕は正直あまりももクロのことを知らなかったんですよね。キャリア的に考えたら当然現場では大物なわけで、そのときは僕も時間を巻きながら無事に5分くらいのコメントをもらったんですが、あとから撮影した素材を見返したら、あの短いコメント取材だけなのに、わざわざみんなで立ち上がって「ありがとうございました」と丁寧に言ってくれていたことに気がついて、「めっちゃいい子たちやなあ」って思ってました。 ──一緒に仕事をしてみて、印象は変わりましたか? 林 『ももクロちゃんと!』は、基本的にその回で取り上げる専門的な知識を持った方にゲストで来ていただいてるんですが、タレントさんでない方が来ることも多いんですよね。そういった一般の方に対しても壁がないというか、なんでこんなになじめるのかってくらいの親しみ深さに驚きました。そういう方たちの懐にもすっと入っていけるというか、その気遣いを大切にしているんですよね。しかもそれをすごく自然にやっているのが、すごいなと思いました。 ──『ももクロちゃんと!』は2年目に突入しました。今後の方向性として、考えていることはありますか? 林 「推しグッズ」でも、あそこまで真剣に取り組んでるんだったら、短い収録時間の中ではありますが、「まだこんなことをやってくれるのか」という無茶をしてみたいなと個人的には思いました。過去の『ももクロChan』を観ていても、すごくアクティブじゃないですか。だから、トークだけでは終わらせたくないなっていう気持ちはあります。 (写真:「ももクロChan~Momoiro Clover Z Channel~」) 情報番組のディレクターとしてキャリアを積む ──テレビの仕事を始めたきっかけを教えてください。 林 大学を卒業して特にやりたいことがなかったので、好きだったテレビの仕事をやってみようかなというのが入口ですね。最初に入ったのがテレビ東京さんの『お茶の間の真実〜もしかして私だけ!?〜』というバラエティ番組で、そこでADをやっていました。長嶋一茂さんと石原良純さんと大橋未歩さんがMCだったんですが、初めは知らないことだらけだったので、いろいろなことが学べたのは楽しかったですね。 ──そこからずっとバラエティ畑ですか。 林 AD時代は基本的にバラエティでしたね。ディレクターの一発目はTBSの『ビビット』という情報番組でした。曜日ディレクターとして、日々のニュースを追う感じだったんですが、そもそもニュースというものに興味がなかったので、そこはかなり苦戦しました。バラエティの“おもしろい”は単純というか、わかりやすいですが、ニュースの“おもしろい”ってなんだろうってずっと考えていましたね。たとえば、殺人事件の何を見せたらいいんだろうとか、まったくわからない世界に入ってしまったなという感じがしていました。 ──情報番組はどのくらいやっていたんですか? 林 『ビビット』のあとに始まった、立川志らくさんの『グッとラック!』もやっていたので、6年間ぐらいですかね。でも、最後まで情報番組の感覚はつかめなかった気がします。きっとこういうことが情報番組の“おもしろい”なのかなって想像しながら、合わせていたような感じです。 番組制作のモットーは「事前準備を超えること」 ──ご自身の好みでいえば、どんなジャンルがやりたかったんですか? 林 いわゆる“どバラエティ”ですね。当時でいえば、めちゃイケ(『めちゃ×イケてるッ!』/フジテレビ)に憧れてました。でも、情報バラエティが全盛の時代だったので、結果的にAD時代、ディレクター時代を含めてゴリゴリのバラエティはやれなかったですね。 ──情報番組のディレクター時代の経験で、印象に残っていることはありますか? 林 芸能人の密着をやったり、街頭インタビューでおもしろ話を拾ってきたりと、仕事としては濃い時間を過ごしたと思いますが、そういったネタよりも、当時の上司からの影響が大きかったかなと思います。『ビビット』や『グッとラック!』は、ワイドショーだけどバラエティに寄せたい考えがあったので、コーナー担当の演出はバラエティ畑で育った人たちがやっていたんですよね。今思えば、バラエティのチームでワイドショーを作っているような感覚だったので、特殊といえば特殊な場所だったのかもしれません。僕のコーナーを見てくれていた演出の人もなかなか怖い人でしたから(笑)。 ──その経験も踏まえ、番組を作るときに心がけていることはありますか? 林 どんなロケでも事前に構成を作ると思うんですが、最初に作った構成を越えることをひとつの目標としてやっていますね。「こんなものが撮れそうです」と演出に伝えたところから、ロケのあとのプレビューで「こんなのがあるんだ」と驚かせるような何かをひとつでも持って帰ろうとやっていましたね。 自由度の高い「配信番組」にやりがいを感じる ──logirlチームには、どのような経緯で入ったんでしょうか? 林 『グッとラック!』が終わったときに、会社から「次はどうしたい?」と提示された候補のひとつだったんですよね。それで、僕はもう地上波に未来はないのかなと思っていたので、詳細は知らなかったんですけど、配信の番組というところに興味を持ってやってみたいなと思い、今年の4月から参加しています。 ──参加して半年ほど経ちますが、配信番組をやってみた感触はいかがですか? 林 そうですね。まだ何かができたわけじゃないんですけど、自分がやりたいことに手が届きそうだなという感じはしています。もちろん、仕事として何かを生み出さなければいけないですが、そこに自分のやりたいことが添えられるんじゃないかなって。 具体的に言うと、僕はいつか好きな「バイク」を絡めた企画をやりたいと思っているんですが、地上波だったら一発で「難しい」となりそうなものも、企画をもう少ししっかり詰めていけば、実現できるんじゃないかという自由度を感じています。 ──そこは地上波での番組作りとは違うところですよね。 林 はい、少人数でやっていることもありますし、聞く耳も持っていただけているなと感じます。まだ自分発信の番組は何もないんですけど、がんばれば自分発信でやろうという番組が生まれそうというか、そこはやりがいを感じる部分ですね。 logirlを大きくしていく起爆剤になりたい ──logirlはアイドル関連の番組も多いです。制作経験はありますか? 林 テレビ東京の『乃木坂って、どこ?』でADをやっていたことがあります。本当に初期で『制服のマネキン』の時期くらいまでだったので、もう9年前くらいですかね。いま売れている子も多いのでよかったなと思います。 ──ご自身がアイドル好きだったことはないですか。 林 それこそ、中学生のころにモーニング娘。に興味があったくらいですね。ちょうど加護(亜依)ちゃんや辻(希美)ちゃんが入ってきたころで、当時はみんな好きでしたから。でも、アイドルに熱狂的になったことはなくて、ああいう気持ちを味わってみたいなとは思うんですけど、なかなか。 ──これからlogirlでやりたいことはありますか? 林 先ほども言ったバイク関連の企画もそうですが、単純に何をやればいいというのはまだ見えてないんですよね。ただ、logirlはまだまだ小さいので、僕が起爆剤になってNetflixみたいにデカくなっていけたらいいなって勝手に思っています。 ──最後に『ももクロちゃんと!』の担当ディレクターをとして、番組のリニューアルに向けた意気込みをお願いします。 林 『ももクロちゃんと!』はこれから変わっていくはずなので、ファンのみなさんにはその変化にも注目していただければと思います。よろしくお願いします! 文=森野広明 編集=中野 潤
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言葉を引き出すために「絶対的な信頼関係を」プロデューサー・河合智文(『でんぱの神神』等)インタビュー
ももいろクローバーZ、でんぱ組.inc、AKB48 Team8などのオリジナルコンテンツを配信する動画配信サービス「logirl」スタッフへのリレーインタビュー第4弾。 今回は『でんぱの神神』『ナナポプ』などのプロデューサー、河合智文氏に話を聞いた。 河合智文(かわい・ともふみ)1974年、静岡県出身。プロデューサー。 <現在の担当番組> 『でんぱの神神』 『ナナポプ 〜7+ME Link Popteen発ガールズユニットプロジェクト〜』 『美味しい競馬』(logirl YouTubeチャンネル) 初めて「チーム神神」の一員になれた瞬間 ──『でんぱの神神』には、いつから関わるようになったんでしょうか? 河合 2017年の3月から担当になりました。ちょうど、でんぱ組.incがライブ活動をいったん休止したタイミングでした。「密着」が縦軸としてある『でんぱの神神』をこれからどうしていこうか、という感じでしたね。 (写真:『でんぱの神神』) ──これまでの企画で印象的なものはありますか? 河合 古川未鈴さんが『@JAM EXPO 2017』で総合司会をやったときに、会場に乗り込んで未鈴さんの空き時間にジャム作りをしたんですよ。企画名は「@JAMであっと驚くジャム作り」。簡易キッチンを設置して、現場にいるアイドルさんたちに好きな材料をひとつずつ選んで鍋に入れていってもらい、最終的にどんな味になるのかまったくわからないというような(笑)。 極度の人見知りで、ほかのアイドルさんとうまくコミュニケーションが取れないという未鈴さんの苦手克服を目的とした企画でもあったんですが、@JAMの現場でロケをやらせてもらえたのは大きかったなと思います。 (写真:『でんぱの神神』#276/2017年9月22日配信) 企画ではありませんが、ねも・ぺろ(根本凪・鹿目凛)のふたりが新メンバーとしてお披露目となった大阪城ホール公演(2017年12月)までの密着も印象に残っていますね。 ライブ活動休止中はバラエティ企画が中心だったので、リハーサルでメンバーが歌っている姿がとても新鮮で……その空間を共有したとき、初めて「チーム神神」の一員になれたという感じがしました。 そういった意味ではねも・ぺろのふたりに対しては、でんぱ組.incという会社の『でんぱの神神』部署に配属された同期入社の仲間だと勝手に感じています (笑)。 でんぱ組.incが秀でる「自分の魅せ方」 ──でんぱ組.incというグループにどんな印象を持っていますか? 河合 僕が関わり始めたころは、2度目の武道館公演を行うなどすでにアイドルグループとして大きく、メジャーな存在だったんです。番組としてもスタートから6年目だったので、自分が入ってしっかり接していけるのかな、という不安はありました。 自分の趣味に特化したコアなオタクが集まったグループ……ということで、それなりにクセがあるメンバーたちなのかなと構えていたんですけど、そのあたりは気さくに接してもらって助かりました。とっつきにくさとかも全然なくて(笑)。 むしろ、ロケを重ねていくうちにセルフプロデュースや自己表現がすごくうまいんだなと思いました。自分の魅せ方をよくわかっているんですよね。 ──そういったご本人たちの個性を活かして企画を立てることもあるのでしょうか? 河合 マンガ・アニメ・ゲームなどメンバーが愛した男性キャラクターを語り尽くすという「私の愛した男たち」はでんぱ組にうまくハマった企画で、反響が大きかったので、「私の憧れた女たち」「私のシビれたシーンたち」と続く人気シリーズになりました。 やはり好きなことについて語るときはエネルギーがあるというか、とてもテンション高くキラキラしているんですよね。メンバーそれぞれの好みというか、人間性というか……隠れた一面を知ることのできた企画でしたね。 (写真:『でんぱの神神』#308/2018年5月4日配信) ──そして5月に『でんぱの神神』のレギュラー配信が2年ぶりに再開しました。これからどんな番組にしていきたいですか? 河合 2019年2月にレギュラー配信が終了しましたが、それでも不定期に密着させてもらっていたんです。そのたびにメンバーから「『神神』は何度でも蘇る」とか、「ぬるっと復活」みたいに言われていましたが(笑)。そんな『神神』が2年ぶりに完全復活できました。 長寿番組が自分の代で終了してしまった負い目も感じていましたし、不定期でも諦めずに配信を続けたことがレギュラー再開につながったと思うと、正直うれしいですね。 今回加入した新メンバーも超個性的な5人が集まったと思います。やはり今は多くの人に新メンバーについて知ってほしいですし、先ほどの「私の愛した男たち」は彼女たちを深掘りするのにうってつけの企画ですよね。これまで誰も気づかなかった個性や魅力を引き出して、新生でんぱ組.incを盛り上げていきたいです。 (写真:『でんぱの神神』#363/2021年5月12日配信) 密着番組では、事前にストーリーを作らない ──ティーンファッション誌『Popteen』のモデルが音楽業界を駆け上がろうと奮闘する姿を捉えた『ナナポプ』は、2020年の8月にスタートしました。 河合 『Popteen』が「7+ME Link(ナナメリンク)」というプロジェクトを立ち上げることになり、そこから生まれたMAGICOURというダンス&ボーカルユニットに密着しています。これまでのlogirlの視聴者層は20〜40代の男性が多かったですが、『ナナポプ』のファンの中心はやはり『Popteen』読者である10代の女性。そういった人たちにもlogirlを知ってもらうためにも、新しい視聴者層への訴求を意識した企画でもあります。 (写真:『ナナポプ』#29/2021年3月5日配信) ──番組の反響はいかがでしょうか? 河合 スタート当初は賛否というか、「モデルさんにダンステクニックを求めるのはいかがなものか?」といった声もありました。ですが、ダンス講師のmai先生はBIGBANGやBLACKPINKのバックダンサーもしていた一流の方ですし、メンバーたちも常に真剣に取り組んでいます。 だから、実際に観ていただければそれが伝わって応援してもらえるんじゃないかと思っています。番組も「“リアル”だけを描いた成長の記録」というテーマになっているので、本気の姿をしっかり伝えていきたいですね。 ──密着番組を作るときに意識していることはありますか? 河合 特に自分がディレクターとしてカメラを回すときの場合ですが、ナレーション先行の都合のよいストーリーを勝手に作らないことですね。 僕は編集のことを考えて物語を固めてしまうと、その画しか撮れなくなっちゃうタイプで。現場で実際に起きていることを、リアルに受け止めていこうとは常に考えています。一方で、事前に狙いを決めて、それをしっかり押さえていく人もいるので、僕の考えが必ずしも正解ではないとも思うんですけどね。 音楽の仕事をするために、制作会社に入社 ──テレビ業界を目指したきっかけを教えてください。 河合 高校時代に世間がちょうどバンドブームで、僕も楽器をやっていたんです。「学園祭の舞台に立ちたい」くらいの活動だったんですけど、当時から「仕事にするならクリエイティブなことがいい」とはずっと考えていました。初めは音楽業界に入りたかったんですが、専門学校に行って音楽の知識を学んだわけでもないので、レコード会社は落ちてしまって。 ほかに音楽の仕事ができる手段はないかなと考えたときに浮かんだのが「音楽番組をやればいい」でした。多少なりとも音楽に関われるなら、ということで番組制作会社に入ったのがきっかけです。 ──すぐに音楽番組の担当はできましたか? 河合 研修期間を経て実際に採用となったときに「どんな番組をやりたいんだ?」と聞かれて、素直に「音楽番組じゃなきゃ嫌です」と言ったら希望を叶えてくれたんです。1998年に日本テレビの深夜にやっていた、遠藤久美子さんがMCの『Pocket Music(ポケットミュージック)』という番組のADが最初の仕事です。そのあとも、同じ日本テレビで始まった『AX MUSIC- FACTORY』など、音楽番組はいくつか関わってきました。 大江千里さんと山川恵里佳さんがMCをしていた『インディーウォーズ』という番組ではディレクターをやっていました。タレントさんがインディーアーティストのプロモーションビデオを10万円の予算で制作するという、企画性の高い番組だったんですが、10万円だから番組ディレクターが映像編集までやることになったんです。 放送していた2004〜2005年ごろ、パソコンでノンリニア編集をする人なんてまだあまりいませんでした。ただ僕はひと足先に手を出していたので、タレントさんとマンツーマンで、ああでもないこうでもないと言いながら何時間もかけて動画を編集した思い出がありますね。 ──現在も動画の編集作業をすることはあるんですか? 河合 今でもバリバリやっています(笑)。YouTubeチャンネルでも配信している『美味しい競馬』の初期もそうですし、『でんぱの神神』がレギュラー配信終了後に特別編としてライブの密着をしたときは、自分でカメラを担いで密着映像とライブを収録して、それを自分で編集したりもしました。 やっぱり、自分で回した素材は自分で編集したいっていう気持ちが湧くんですよね。忘れかけていたディレクター心に火がつくというか……編集で次第に形になっていくのがおもしろくて。編集作業に限らず、構成台本を作成したり、けっこうなんでも自分でやっちゃうタイプですね。 (写真:『でんぱの神神』特別編 #349/2019年5月27日配信) logirlは、やりたいことを実現できる場所 ──logirlに参加した経緯を教えてください。 河合 実は『Pocket Music(ポケットミュージック)』が終わったとき、ADだったのに完全にフリーになったんですよ。そこから朝の情報番組などいろんなジャンルの番組を経験して、番組を通して知り合った仲間からいろいろと声をかけてもらって仕事をしていました。紀行番組で毎月海外に行ったりしたこともありましたね。 ちょうど一段落して、テレビ番組以外のこともやってみたいなと考えていたときに、日テレAD時代の仲間から「テレ朝で仕事があるけどやらない?」と紹介してもらい、それがまだ平日に毎日生配信をしていたころ(2015〜2017年)のlogirlだったんです。 (写真:撮影で訪れたスペイン・バルセロナにて) ──番組を作る上でモットーにしていることはありますか? 河合 今は一般の方でも、タレントさんでも、編集ソフトを使って誰でも動画制作ができる時代になったじゃないですか。だからこそ、「テレビ局の動画スタッフが作っている」というクオリティを出さなければいけないと思っています。難しいことですが、これを諦めたら番組を作る意味がないのかなという気がするんですよね。 あとは、出演者との信頼関係を大切に…..といったことですね。特に『でんぱの神神』『ナナポプ』といった密着系の番組は、出演者の気持ちをいかに言葉として引き出すかにかかっていますので、そこには絶対的な信頼関係を築いていくことが必要だと思います。 ──実際にlogirlで仕事してみて、いかがでしたか? 河合 自分でイチから企画を考えてアウトプットできる環境ではあるので、そこは楽しいですね。自分のやりたいことを、がんばり次第で実現できる場所。そういった意味でやりがいがあります。 ──リニューアルをしたlogirlの今後の目標を教えてください。 河合 まずは、どんどん新規の番組を作って、コンテンツを充実させていきたいです。これまで“ガールズ”に特化していましたが、今はその枠がなくなり、落語・講談・浪曲などをテーマにした『WAGEI』のような番組も生まれているので、いい意味でいろいろなジャンルにチャレンジできると思っています。 時期的にまだ難しいですが、ゆくゆくはlogirlでイベントをすることも目標です。logirlだからこそ実現できるラインナップになると思うので、いつか必ずやりたいと思っています。 文=森野広明 編集=田島太陽
大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』
仙波広雄@スポーツニッポン新聞社 競馬担当によるコラム。週末のメインレースを予想&分析/「logirl」でアーカイブ公開中『美味しい競馬』MC
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大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(ジャパンカップ)
YouTube(logirl 【テレ朝動画公式】YouTube)美味しい競馬#141)は、ゲストに成瀬琴さんを迎えて配信中です。成瀬さんの御尊父は鹿戸雄一調教師。鹿戸師といえば近年ではエフフォーリアですが、最初のG1勝ちはスクリーンヒーローのジャパンカップ。08年でした。もう15年たつんですか。ともあれ予想は11月26日(日)の東京11R・ジャパンカップです。 先週のマイルCSは◎ソウルラッシュが3番人気2着。1~5着は全て印が回っており、エリザベス女王杯も含めて京都芝の傾向はつかめていたと思います。東京芝は血統の偏りがどうこうというより、基本的に堅いですね。人気する馬は実績があったり、各種のアドバンテージがあるわけですが、そうした指標を信用していい馬場です。 ◎②イクイノックス。 天皇賞・秋の内容が規格外すぎます。SNSなどで探せば詳しいラップ分析をしている方もいるでしょうから、そのあたりは割愛します。普通に走れば大丈夫です。巷間いわれる「初の中3週」、「調教での気合が乗りすぎ」はまあ、そうと言えばそうですが、この理由でイクイノックスが負けると想定するには弱いですね。負ければ敗因がそのあたりになる、というだけです。 ○⑩ダノンベルーガ。 天皇賞・秋は2、3着馬が後方から追い込んできた馬でした。イクイノックスの土俵に乗って戦った馬の中では4着のこの馬が最先着。体質的になかなかパンとしない面がありますが、こういうタイプはそうそう完成することもなく、いつまでもこんな感じです。条件的に合うであろう今回、きっちり押さえておきましょう。パンサラッサの2つ外の枠で序盤のレースが非常にしやすい。距離も延びた方がいいと思います。 ▲⑰スターズオンアース。 このレースは内枠有利が明確、一方で外枠はかなり劣位に立たされますが、そんなに気にしなくてもいいかと思います。というのも2桁馬番に序盤が甘めの馬が多いうえ、両隣のインプレスとウインエアフォルクも後方脚質。ディープボンドやショウナンバシットの動き次第では、すんなり中団、しかも6番手あたりまであるとみました。天皇賞・秋を自重しましたが、ここに向けての仕上がりは問題ありません。 ☆①リバティアイランド。 負担重量的にも3歳牝馬が有利。イクイノックスがいなければ大本命という存在ですが、凄く強い馬の対抗格に置かれるのはその馬を意識せざるをえず、決して楽ではありません。イクイノックスとは得意ラップのゾーンもちょっと違うので、逆転を無理と判断するなら対抗にするより、いっそ押さえに回します。消すのはちょっと無理。 馬券は3連単軸2頭流し。 <1着>②→<2着>⑩→<3着>①③⑤⑨⑭⑰。 <1着>②→<2着>①③⑤⑨⑭⑰→<3着>⑩。12点。 text:仙波広雄@大阪スポーツニッポン新聞社 競馬担当/【logirl】でアーカイブ公開中『美味しい競馬』MC
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大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(マイルチャンピオンシップ)
YouTube(logirl 【テレ朝動画公式】YouTube)美味しい競馬#140)は、ゲストにSKE48の熊崎晴香さんを迎えて配信中です。先週の配信でも伝わったと思いますが、熊崎さんはかなりの競馬ガチ勢です。未来は明るいですね。予想は11月19日(日)の京都11R・マイルチャンピオンシップです。 先週は◎ルージュエヴァイユが5番人気2着。人気的に買いたくなかったブレイディヴェーグに勝たれたのはこの際、置いておきます。印を打った8頭のうち7頭が1~7着。京都芝の「上がりや時計はそこそこ速くても、ヨーロッパっぽさが必要」というトレンド予想は大きく外れてないのでは、と思う次第です。 ◎①ソウルラッシュ。 牝系は母母父がストームキャットで米国系ですが、ルーラーシップ×母父マンハッタンカフェという表に出ている血統が十分に欧州らしさを内包しているので十分とみました。京成杯AHをステップとしてこのレースに臨んだ馬はさっぱり走らないのですが、中山の野芝と京都の秋芝がリンクしないのは理解できるところ。この馬の場合、前走は適性うんぬんでなく59キロでも完勝したように力が抜けていました。なので、これまでの京成杯AHステップとは一線を画します。かつ久々に先行する競馬をできたのが大きい。正直、切れ味勝負でセリフォスやシュネルマイスターとヨーイドンして勝てるとは思っていません。好位から先に仕掛ける形で何とかしたい。その意味では、最内枠も鞍上モレイラもぴったり来ます。 ○⑥ダノンザキッド。 過去2年3、2着ですが阪神開催。京都と阪神なら阪神の方がいいタイプですが、この馬は秋が得意で、この時季に調子を上げてきます。11月は2歳時東スポ杯2歳S1着、3歳時MCS3着、4歳時MCS2着。馬自身の資質もありますし、これだけ同時期に走れば、仕上げる方もその気にならないはずがありません。 ▲⑪セリフォス。 今年2走目。本来は富士Sを使う予定がスキップしましたから、ローテーションとしては昨年に及びません。それでも似たようなメンバーで、休み明けの仕上げに定評のある厩舎ですから、さしてマイナスでもない。あまり数を走らないので印象は薄めですが、かなり強いマイラーです。 ☆⑯ナミュール。 不器用なので、いっそ大外は歓迎でしょう。どうもトライアルホース感は拭えませんが、のびのび走れればG1でも通用する地力はあると思います。 △⑨シュネルマイスター。 現役屈指のマイラーで、京都芝もぴったり。あっさり勝たれたらその時はその時で、以前よりズブくなっていますので、押さえで。 馬券は3連単軸1頭流し。 <1着>①→相手⑤⑥⑦⑨⑪⑫⑱。42点。 text:仙波広雄@大阪スポーツニッポン新聞社 競馬担当/【logirl】でアーカイブ公開中『美味しい競馬』MC
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大胆に予想!『美味しい馬券〜「美味しい競馬」スピンオフ〜』(エリザベス女王杯)
YouTube(logirl 【テレ朝動画公式】YouTube)美味しい競馬#139)は、ゲストにSKE48の熊崎晴香さんを迎えて配信中です。熊崎さんは夕刊紙で競馬予想を連載しており、今回もノートいっぱいのメモを携えてきてくれました。予想は11月12日(日)の京都11R・エリザベス女王杯です。 このレース、毎年のように外国人騎手の騎乗馬が好走しています。今年も上位人気馬から穴馬筆頭格まで4頭が外国人騎手。とりわけエリザベス女王杯、京都芝2200mで外国人騎手が活躍する理由は配信で推察していますが、大前提として欧州の平地競馬シーズンが終わって、短期免許騎手が大挙やってくる期始めがこの週あたり。ノーザンファームがとっておきの馬をあてがうという側面もあります。 ◎②ルージュエヴァイユ。 鞍上はKohei Matsuyama…松山弘平。兵庫県出身の日本人騎手です。前振りするだけしておいてあれですが、騎手アプローチでなく血統からのアプローチ。父ジャスタウェイはハーツクライ産駒らしく、4歳秋で本格化。娘のこの馬も本物になるのは少々時間がかかりましたが、前走の府中牝馬Sでの2着の内容が良く、今が旬といった頃合い。加えて直系祖母が凱旋門賞馬デインドリーム。フランスの凱旋門賞だけでなく、地元のドイツ、そしてイギリスでもG1を勝って欧州を席巻しました。そんな馬がジャパンCでは6着だったのが興味深いところですが、ともあれ欧州血統志向となっている改装後の京都で、もう一丁パフォーマンスの向上を期待したいところ。 ○⑦ジェラルディーナ。 鞍上のムーアはこの馬の父モーリスでG1を4勝、母ジェンティルドンナでG1を2勝。専属契約を結ぶクールモア産でもないのに、自身でG1計6勝の両親から生まれた馬。アイスマンと呼ばれるムーアもロマンを感じたようで、「今回は特別な思いがあります。日曜が楽しみです」と実にうれしそうだったとか。昨年のエリザベス女王杯以降はずっと強力牡馬相手なので、牝馬限定で前進は当然。あと、思い切りやる気のムーアには加点せざるを得ません。 ▲⑥ディヴィーナ。 配信でも触れましたが、距離が長いのは確かですが、距離だけを理由に切ると痛い目に遭いそうな気がします。充実期のモーリス産駒は走るごとに壁を突破する感がありますし、それだけの充実度を見せていると思います。 ☆①ブレイディヴェーグ。 どう乗れば勝てるか。中団インから馬群をさばく形でしょうか。いずれにしてもロングスパート型が幅を利かすレースで、この馬は瞬発力特化型。来たら能力が抜けていたということでしょう。 馬券は3連単フォーメーション。 <1着>②→<2着>⑥⑦→<3着>①③⑥⑦⑪⑬⑭。 <1着>⑥⑦→<2着>②→<3着>①③⑥⑦⑪⑬⑭。 <1着>⑥⑦→<2着>①③⑥⑦⑪⑬⑭→<3着>②。12点×3で36点。 text:仙波広雄@大阪スポーツニッポン新聞社 競馬担当/【logirl】でアーカイブ公開中『美味しい競馬』MC
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