目標に捉われず“今”を楽しむ? ぱーてぃーちゃんのネクストステージ|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#27(後編)

若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>

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コロナ禍のテレビに突如として現れ、ノーテンキなギャル漫才でブレイクしたぱーてぃーちゃん

そんな彼らが、一介のお笑い好きから芸人になった初舞台について、聞いていく。前編ではリーダー的存在であるすがちゃん最高No.1がまさかの大遅刻で、信子と金子きょんちぃのみの展開に。

さて、すがちゃんは無事インタビュー現場にたどり着くのか? ぱーてぃーちゃんの現在地はいったいどこだ。

【インタビュー前編】

ぱーてぃーちゃん結成前夜、ギャルふたりがコンビで立った初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#27(前編)

すがちゃん、未だ到着せず

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左から:信子、金子きょんちぃ、(撮影には間に合った)すがちゃん最高No.1

──前編に続き、すがちゃんさんがまだ到着されていません。なので、もう少しおふたりに話を聞きたいんですが、そもそもすがさんとの関係はどんな感じだったのでしょうか。

信子 もともと(信子&きょんちぃのコンビ)「エンぷレス」のネタを書いてもらってたんです。私が「こんなことやりたいんだよね」って伝えて、おしゃべりしながら95%くらい作ってもらってた。

きょんちぃ アイツのシェアハウスに居座って「ネタ書かないんなら、ウチらは帰らないぞ!」って脅してた。

信子 面倒見いいんだよね。ワタナベに所属して最初にごはん連れてってくれたのもすがちゃんだし。それからは「月一すがの会」でごはん連れてってもらった。

──そんな3人が、すがちゃんの元のコンビ解散をきっかけに合流するわけですけど、初舞台って覚えてますか?

信子 それが2020年の11月かな? すがちゃんが解散したのが10月なんで。その時期って解散する芸人が多くて。

きょんちぃ 毎年、賞レースの予選で負けて、解散する芸人が多い時期。でも、あの年はコロナだったから特に多かった。

信子 そうそう。で、そういう解散してこれからどうしようって芸人を集めて、即席ユニットを作るライブがあった。そこで初めて3人でやったんだよね。あの日がぱーてぃーちゃん史上一番スベったけど、なんか遊びでやっただけだから、あんまり思い出はないかも。

遅れてきた男が説明する、ぱーてぃーちゃん結成話

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──そこからどうやって正式に組むことになったんですか?

信子 えっと……。

きょんちぃ あれ? アイツ来たんじゃね?

すが 本当に申し訳ございません……! 今、地球で一番申し訳ないと思ってる男です。

信子 遅すぎ〜(笑)。てか急に入ってくるなし。何しゃべろうとしてたか忘れたじゃん!

きょんちぃ 正式に組んだのはいつかって話。

すが わかりました、全部私が説明いたします。正式に組んだのは2021年の4月ですね。その前は2〜3回一緒にライブ出たり、ネタ番組のオーディション動画を送ったりするだけだったんですが、そのタイミングでぱーてぃーちゃんのポーズ漫才ができて、それがハマって北海道放送の『知らなくて委員会』の「芸人ショートネタ選手権」に出られることになったんです。そこで初めて人生で一度もがんばったことなかった我々が本気で準備しました。

信子 めっちゃがんばったよね!

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──今のすがさんって分析家なイメージがありますが、当時はノリでぶつかるタイプだったんですね。

すが 人がいいって言うことは全部やらないっていう、ちょっとトガッた感じでした。でも『知らなくて』のときは、ちゃんとハマるためにめちゃめちゃシミュレーションして備えたんです。結果的に本番の出来がめちゃくちゃよくて優勝させてもらって、その日のうちに、APさんから「ほかの番組にも出てくれない?」って言われましたね。テレビって、ハネたらほかにつながるって本当なんだなって実感した。

──『知らなくて委員会』をきっかけに、正式にぱーてぃーちゃんを結成した?

すが 端的に言うとそうですね。僕ら、きょんちぃのバイト先のバーでネタ合わせをすることが多かったんですけど、ある日ふたりがそこに僕を呼び出したんです。これは「組もう」って誘われるなっていうのは察してたんですよ。っていうのも、僕のシェアハウスの同居人がテレビマンなんですけど、そいつは僕らが組むのを勧めてて。ギャルたちにも「後輩のお前らから一緒にやろうって言ったほうがいい」って言ってたらしい。

信子 そうだね。

すが だから僕もそういう心づもりだったんだけど、店に入ったらコイツらタバコ吸いながら白々しく「おはよ〜」って言ってて。いつまで経っても言い出さないから結局僕が折れて「いったんやってみるか?」って言ったら「ナオトがそう言うんだったらいいよ〜」とか言ってきやがった。こいつらマジ、シャバかったですよ。

きょんちぃ もう遅刻反省モード終わってんじゃん。

すが くっ……申し訳ありません。

アオハルだったブレイク前夜

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──正式に組んだ2021年の終わりに出た『おもしろ荘』でブレイクしますが、その前に売れると確信したタイミングはありましたか。

すが ぱーてぃーちゃんのポーズができて、K-PROのライブで初めて披露したときは初めてイケるかもって思いましたね。

信子 耳がキーンってするくらいウケたもんね。

きょんちぃ 私たちがポーズ取った2秒後に笑いが来た。

すが あの笑いは「おもしろい」だけじゃなくて「新しいものを見た!」っていう興奮も入ってたな。

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──『おもしろ荘』の出演ってどうやって決まるんですか?

すが 秋くらいにオーディションが始まるんですよ。だから4月に組んでからはそこを目がけてがんばってました。一次審査は通ったんですけど、二次から総合演出の名物おじさんが出てきて、「ガチャガチャやりすぎだな。シンプルなギャルとチャラ男の漫才が見たかった」って反応が悪かった。たしかにそのときは、とにかくブチかませばいいと思ってたんですよね。で、今回は落ちたかなって思ってたら、たまたま若手のスタッフが僕らを好きって言ってくれて、なんとか最終まで残った。それで次が最終。日テレの会議室にお客さん入れてやるんですよ。

信子 めちゃめちゃ緊張した!

きょんちぃ 空気が重いっていうか、変な感じだった。お客さんも審査員みたいな顔してるから。

すが ははは(笑)。

きょんちぃ ちゃんぴおんず、ぱーてぃーちゃんの順だったんだけど、ちゃんぴおんずがあり得ないくらいスベってて。

すが 「ちょんってすなよ」を見つける前だから。僕らはまぁスベってないくらいで、結果的に受かった。それで翌日また日テレに呼ばれるんですけど、そこからがまた地獄だった。

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すが しっくりこなくて結局ネタ全部作り直したりとか。たまたましんどいロケが重なったりライブ詰め込みすぎたりしたせいで死ぬほど忙しかった。

きょんちぃ すがちゃん、めっちゃじんましん出てたよね。

信子 ヤバかった。一瞬、目を離してまた見たらプツプツプツって出てた。あのころはすがちゃんを労ってジュース買ってあげたりしてた。懐かしすぎる!

すが でもなんか青春っぽかったよな。

信子 うん、マジでアオハルだった。

賞レースは一回休み……?

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──もうお時間もそろそろなんですが、最後に3人はこの先どうなっていきたいのか聞かせてください。

きょんちぃ 私はM-1(グランプリ)チャンピオン。

信子 賞レースは勝ちたいね。来年は『R-1(グランプリ)』決勝行くから! 『THE W』(女芸人No.1決定戦 THE W)もがんばる!

──賞レースも出られるものは全部出て、決勝の舞台を狙っていく。

すが いや、うーん……それも悩みどころですねぇ。

きょんちぃ はぁ? 早くM-1獲ろうよ。

信子 『キングオブコント』も!

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すが いや、真剣な話、テレビに出ながら賞レースのネタを仕上げるってめちゃめちゃ難しいなって痛感してるんだよ。俺らくらいの露出度だと一回のテレビ出演で世間のイメージもガラッと変わるから、そこを微調整しながらネタに落とし込むのが難しい。実際、テレビにたくさん出ながら、賞レースに挑戦してる人は異常ですよ。

僕らは今後、タレント活動がメインとなるタイプの芸人だと思うんで、タレントとして成長しながらネタも作ってライブで仕上げていくやり方は、正直見えてない。

──今年は賞レースに出ない選択もあり得る?

すが どうしよっかな……。

信子 ぱーてぃーちゃんは違うよ!

きょんちぃ ウチらが休んだら終わりだよ。コイツら芸人辞めたんだって思われるから。

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すが もうニン(漫才における“人柄”)は出せたし、のびのび自分らのよさを出すところはクリアできた。新たなシステムが必要で。そこさえ思いつけば準決勝、決勝も見えてくるとは思うんですけど。

信子 えー、どんなかたちであれ、絶対出続けるべきだよ。

すが 要検討ですね。

──過渡期にあるぱーてぃーちゃん、興味深いです。今日はありがとうございました。ここでお時間が来てしまったので、撮影に移りましょう。

信子 すがちゃんは後日、補習だから!

──そうですね。少しリモートで追加取材お願いします。

すが 全然なんでもやります!

自信満々でスベった初舞台

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──(後日)改めまして、すがさん。今日は取材お願いします。ご自宅ですか?

すが そうですね。確定申告してました。

──年度末の忙しいタイミングで追加取材ありがとうございます。今日はすがさんが芸人としてどんな初舞台を踏んだのかを聞かせてください。そもそも芸人になろうと思ったきっかけはなんだったんですか?

すが もともとテレビ番組のADをやってたんです。そこでキャリアアップを図ろうとしたんだけど、採用試験に落ちちゃって。そのタイミングで専門学校時代の同級生に呼び出されて「芸人にならねぇか?」と誘われたんです。

自分が表に出る仕事なんて無理だって最初は言ったんですけど、即興で一回やろうと言われるがままに深夜のカラオケでネタのまね事したら「イケるんじゃね?」と勘違いしてしまった。満員のお客さんの前で爆笑を取る自分たちが浮かんだんです。

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でも、芸人になろうと思ったタイミングが5月とか中途半端な時期で。NSCに入るには1年待たなきゃいけないから他事務所を探して、最初はマセキ(芸能社)に行きました。だから芸人としての初舞台はマセキのオーディションですね。「俺ら絶対ウケるっしょ」って自信満々だったけど、あり得ないくらいスベリましたね。

──どんなネタをやったんですか。

すが 相方が書いたネタだったんですけど、くまのプーさんのマラソン大会みたいなテーマの漫才でした。プーさんってかわいらしいけど、実際はクマだからヤバいぞ、みたいな。僕はツッコミでしたね。それで結局マセキはあきらめて、半年後に秋入学でワタナベ(エンターテインメント)に入りました。「君たちは天才だ。第二のハライチになれるよ」ってめっちゃ褒められて天狗になって行ったら、第二のハライチが100人ぐらいいた。

──全員に同じことを言ってたと(笑)。

すが 騙されたなとは思ったけど、まぁ事務所入んないと仕事はなかなか来ないだろうなと思ったんで、そのまま入りましたね。

次々と後輩に抜かされたコンビ時代

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──2013年秋に入学したワタナベの養成所はどうでしたか?

すが めっちゃ調子よかったです。当時僕らが養成所ライブで作った連勝記録は、10年経った今でも破られてないんですよ。1回だけ、“Why Japanese people!?”を産みたての厚切りジェイソンに負けましたけど、それ以外は全勝。でもあっという間にジェイソンに抜かれましたね。

──とはいえ、養成所時代にそれだけ活躍すると将来を嘱望されるんじゃないですか。

すが 「第二のキングコングが来るらしいぞ」って言われてたみたいで、お笑いちょろいなって調子乗ってました。結局、所属してからは事務所ライブでは勝てるものの、テレビのオーディションに受からなくて。後輩のブルゾンちえみ、四千頭身、丸山礼が売れて、先輩でもサンシャイン池崎さん、平野ノラさん、クマムシさんがブレイクして、自分らはさんざんでしたね。

──鳴かず飛ばずで、数年後に一緒に事務所に入った相方とのコンビを解散します。

すが 5年目ぐらいまでは同じ方向見て歩いてたんですけどね。第7世代が出てきたタイミングで、僕がそろそろ売れなきゃなと思って、「まだ迎合しないぞ」ってトガッてた相方と考え方がズレていきました。

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──それでぱーてぃーちゃんを組むことになると。

すが そうですね。個人的にはピンで10年目までは本気でがんばってみようかなって思ったときに、軽い気持ちでギャルたちとネタやったらこんなことになりました。

──もともとふたりには芸人としての魅力を感じていて組んだんですか?

すが 芸人としておもしろいと思ったことはなかったですね。人としてはめちゃめちゃおもしろかったけど。アイツら、本当どうしようもないチンピラだったんですよ。芸人界に初めて舞い降りた養殖じゃない天然のギャルだったから、そりゃ合わないですよね

──ギャルでありながら、お笑いへの愛も人一倍強いふたりですよね。

すが 当時はそこがまた厄介でした。お笑い憧れが強烈なぶん、舞台に上がると芸人っぽく振る舞わなきゃいけないって気持ちが前面に出ちゃって身動き取れないみたいな。アイツらは本当にテレビに鍛えてもらった感じです。

アイツらのこと嫌いになりそうだった

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──この間、3人インタビューした際に、賞レースに消極的な発言をしてたじゃないですか。ちょっと前までのすがさんは、年間計画をきっちり立てて、賞レースの目標もしっかり決めていましたが、今はそういうモードじゃないんですか?

すが そうですね。前は本当に細かくビジョンを決めて、どういう見え方をすればテレビ出演やCMがゲットできるか考えて動いてたんですけど……3人ともストレスが溜まりすぎたんで、去年の夏前くらいから綿密に計画を立てるのはやめたんです。ちょっと売れるスピードがゆるやかになっても、なんか楽しいほうがいいかなって僕も思うようになりました。

──ブレイクの波に乗ってるときに、シフトダウンするのは勇気がいりませんか。

すが たしかに勇気いりましたけど、でもそのまま行くほうがしんどかったっすね。正直、毎日アイツらのこと嫌いになりそうだったし。組んでから3年近くになりますけど、4回ぐらい解散しようと思ったこともある。でもそれは僕が立てた目標や、ふたりを急かす感じが原因だったなって気づいたんです。ぱーてぃーちゃんにおいて一番大事なのは、自分らが楽しくやれること。未来のためじゃなくて今が楽しいってほうを選んでるので、今は全然愉快にやってますね。

──前はきょんちぃさんが急に髪色変えたとかでバトルしてましたもんね。

すが もうそういうの疲れちゃったんです。俺、別に生活指導じゃねぇんだからさって(笑)。もうみんな好きにして、楽しくやろう、それでいいんだと。アイツらもそっちのほうが性に合ってるんですよ。見てるほうもストイックな僕らより、バカみたいに楽しそうなぱーてぃーちゃんのほうが好きだろうし。とりあえず愉快な感じで続けてれば、俺らはおもしろいんじゃないかなって今は思ってます。

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ぱーてぃーちゃん
すがちゃん最高No.1(1991年8月21日、山形県出身)、信子(1992年8月1日、大分県出身)、金子きょんちぃ(1993年9月19日、神奈川県出身)のトリオ。2021年、コンビを組んでいた信子ときょんちぃに、すがちゃんが合流して結成。同年末の『ぐるナイおもしろ荘』(日本テレビ)への出演をきっかけにブレイク。賞レースに挑戦しながら、個人としても活躍する。YouTubeチャンネル『ぱーてぃーちゃんの今夜はなにパ?』は、“ガチガチに決めちゃうとイヤになっちゃうから”不定期更新中。

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ももクロちゃんとぱーてぃーちゃん~ぱーてぃーちゃんが裁判!?~

【後編アザーカット】

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