ふたりの主人公から教えられた“信じること”の大切さ──中島セナ×奥平大兼インタビュー

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中島セナ(なかじま・せな)
2006年生まれ、東京都出身。2017年にスカウトされモデルデビュー後、モード系ファッション誌やCMなどを中心に活躍中。映画『クソ野郎と美しき世界/慎吾ちゃんと歌喰いの巻』(2018年)で女優デビューし、「ポカリスエット」CMの主演に抜擢され話題に。12月配信開始の『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』(ディズニープラス)ではナギ役を演じ、奥平とW主演となる。

奥平大兼(おくだいら・だいけん)
2003年生まれ、東京都出身。『MOTHER マザー』(2020年)で映画デビューを果たし、同作で第44回日本アカデミー賞新人俳優賞や第63回ブルーリボン賞新人賞ほか受賞。2023年、映画『君は放課後インソムニア』や『ヴィレッジ』、『あつい胸さわぎ』、『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』、ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ)と立て続けに出演。12月20日配信開始の『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』(ディズニープラス)ではタイム役を演じる。2024年3月8日には主演映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』が公開。

 

12月20日より、ディズニープラスで独占配信される『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』は、“実写”と“アニメ”が交錯する壮大なふたつの世界で、ふたりの主人公が躍動するオリジナルファンタジー・ アドベンチャー大作。予告映像は公開されているものの、全貌は明かされず謎のベールに包まれた本作。W主演の中島セナと奥平大兼のふたりに演じるおもしろさや難しさ、そして本作で伝えたいメッセージについて語ってもらった。

実写もアニメも思いっきり演じられた(奥平)

──本作の主人公は、現実世界の横須賀に暮らす空想好きな女子高生・ナギ(中島セナ)と、異世界のウーパナンタから突然、現実世界にやってきた半人前のドラゴン乗り・タイム(奥平大兼)。それぞれの世界で生きづらさを感じていたふたりが出会い、ともに世界を救うために命がけの冒険の旅に出る物語です。

奥平 最初にお話をいただいたときは、ほかにはない世界観なので、具体的なイメージが湧かなかったんです。まずは、この物語をちゃんと理解するところから始めました。それこそ今作は“ドラゴン”や“冒険”など、男の子の好きな要素が詰まっている作品。監督(萩原健太郎)さんやプロデューサーさんと初めてお会いしたときに「必ず魅力的な作品にしてやる」という気合いが伝わってきて「この人たちだったら、難しい世界観でもちゃんと届けることができるはずだ」と思ったのと同時に、ふたりの凄まじい熱量に背中を押されましたね。

中島 私も初めて台本に目を通したときは、映像でどうなるのかがよくわからなかったです。特に、アニメと実写のパートがどのように交錯していくのかが、想像できなくて。まずは撮影に臨むにあたって、演じる役のことを理解しようとしました。あと、なんといっても子供のころから観ていたディズニー作品に関われるのは、すごくうれしかったです。

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(C)2023 Disney

──おふたりが演じる役の印象を教えてください。

中島 ナギは、自分の考えを人に理解されないことに、苦しみを感じている子で。人生に期待をせず、夢を持つことをあきらめていましたが、タイムやナギの親友の男子高生・ソン(エマニエル由人)のおかげで、次第に成長をしていきます。

──ナギは中島さんと同じ17歳ということで、シンパシーを感じたところはありましたか?

中島 私も、生きづらさや窮屈さを感じることがあるので、そういうところは共感できました。ナギを演じるにあたって、等身大で挑もうと意識したのと、彼女の苦悩が現れるように臨みましたね。

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──世の中に対して、期待せず割り切っている感じは、表情からも伝わってきました。些細な表情の作り方や佇まいも、相当意識されていたのかなと。

中島 そうですね。ただ、私もそういう部分があると思うので、そこまでまったく真反対の役をやっているわけではなかったから、わりとナチュラルに出せたのかなと思います。

奥平 僕が演じるタイムは、絵に描いたような純粋な人間で。あきらめることを知らないし、人を疑うこともない。もちろん物語が進むにつれて、タイムの人間性が少しずつ変わっていくんですけど、自分が信じているものに対しては、なんの疑いもなく純粋に突っ走ることができる。この現実世界ではいないような、ちょっと珍しい子だと思います。

──タイムを演じるにあたって、大事にされたことはなんでしょう?

奥平 タイムが憧れているドラゴン乗りの英雄・アクタ(新田真剣佑)は、小さいころから異世界で過ごしてきたから、異世界の常識が自分の中に根づいているんですよね。異世界ならではの文化や社会を通して、タイムの性格が形成されたはずだから、そこを知ることに少しでも手を抜いてしまうと、役のリアリティがなくなってしまうと思い、監督と話をしながら、徹底して役のイメージを固めていきました。

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──今回、奥平さんは実写とアニメで同じ役を演じられましたね。

奥平 実写パートを撮影したあとに、アニメパートを録りまして。「実写の雰囲気にアニメのタイムを寄せよう」とおっしゃってくださったので、変にアニメパートのことを考えることはなかったです。先に実写の撮影で思いっきりやって、それに合わせてアニメのアフレコができたのは、すごく助かりました。そもそもアニメのお芝居はまったく経験がないですから、アニメーション監督(大塚隆史)にテイストはお任せして、できるだけ実写で作ったタイム像を忘れずにいようと心がけましたね。

奥平大兼から見た中島セナの魅力

──せっかくの対談ということで、お互いのご印象も伺えたらと思うんですけど。

奥平 ええ! どうだろう……? 最初の印象って覚えてるかな(笑)。

中島 ふふふ。

奥平 今の印象になってしまうんですけど、セナさんに加えてエマくんとのシーンが多かったので、基本的に3人一緒にいたんです。みんな年齢がバラバラだったので、最初はちゃんとしゃべれるか不安だったんですけど、意外と話せるようになっていって。なによりエマくんが現場の雰囲気を明るくしてくれて、すごく助かりました。エマくんがふざけて、それに僕も乗っかったら、意外とセナさんも乗ってくれて。セナさんにそういうイメージがなかったから、エマくんと「うれしいですね!」と話していたのが記憶に残っています。

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──中島さんの人柄についてはどう見えていますか?

奥平 最初にセナさんを見たのは、とあるCMで。お会いする前はクールなイメージが強かったんですけど、いざ話してみたら年相応のかわいらしさがあって。そんなに年齢の壁を感じることもないな、と思いました。だからこそ、ふざけている場面で乗ってきてくれたのかなと思います。けど、3人の中だったら一番大人だったかもしれないです。

中島 ははは(笑)。

──中島さんは奥平さんと初めて会ったときの印象って覚えています?

中島 最初は、みんなで台本の読み合わせをしましたよね?

奥平 あ、あった! そうだ、そうそう!

中島 そこで感じたのは、演じる役に対して自分の答えがちゃんとある方なんだなと。基本的に撮影も一緒だったんですけど、タイムも奥平さんも自然体で素敵な方だなって思いました。演技に対してすごく熱があるし、みんなで明るく話したりして、とても楽しかったです。ただ、最初は私もクールというか静かな方だと思っていたんですよ。でも、エマくんと一緒にしゃべっているときはすごく楽しそうで。

奥平 この場にエマくんがいてほしいね(笑)。

中島 演技に対しての刺激も受けましたし、楽しい時間を過ごさせていただきました。

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──俳優・中島セナさんの特性って、どう見えていますか?

奥平 一番強く思うのは、セナさんにしか出せない魅力があるんです。それは、俳優さんとしてすごく素晴らしいことだと思いますし、持って生まれた武器だと思います。それこそ最近、誰かと話していたんですけど、どういう役であれ、すごく見入っちゃう人っているじゃないですか。セナさんはそういうタイプの方。意識せずとも、なんか目で追っちゃう。そういう魅力を持っているのは本当に素晴らしいことだし、誰しもが持っているものではなくて。お芝居をご一緒して、すごく新鮮でした。今回は僕も含めて、演技経験が少ない3人だったんですよね。とはいえ、今作の物語を進めていく上で、重要なカギになる大役で。そういう役割を担うのはエマくんも初めてだったから、最初は相当緊張していたと思うんです。ディズニー作品の主演をやると聞いて、僕自身もかなりのプレッシャーがありましたし、みんなプレッシャーがあったなかで、どんどん場数を重ねていって。こんなこというと、上からみたいで嫌なんですけど、ふたりの成長が一番間近で見られたなと思うんです。お芝居もそうですけど、現場での所作など役者さんとして成長していく姿を見られてうれしかったので、これからほかの役も見てみたいなと思います。

──森田剛さん、田中麗奈さん、新田真剣佑さん、成海璃子さんなど、そうそうたる方々が脇を固めるなか、ダブル主演を務めたお気持ちはどうですか?

奥平 主演を任せていただく機会は、今までもあったんですけど「主演だからがんばるぞ」よりも、どんな役でも「そういえば、僕が主演じゃないのか?」とハッとする瞬間があるぐらい、自分がメインだと思って作品に参加してきたんです。逆に、そのおかげで今作も“主演だから”と変に責任を感じることがなかったです。素晴らしい先輩方に囲まれつつ、引けを取らないようにがんばろうと思いました。

中島 やっぱりプレッシャーもありましたし、そもそも長期間の撮影が初めてだったんです。どうなるのかわからない部分もあったんですけど、奥平さんと一緒だったのがとても頼もしかったですし、まわりのみなさんに助けてもらいながら、やりきることができました。

 “やり続けること”が大事だと学んだ(中島セナ)

──まだ物語の全貌が明かされていませんが、この作品が視聴者に訴えているメッセージはなんでしょうか?

奥平 タイムは良くも悪くも、普通の人と感覚が違うので、彼に共感できるかといったら、おそらくあまりできないかもしれないです。でも僕が演じていて思ったのは、簡単な言葉になってしまいますけど、“信じることの大切さ”なんですね。タイムって「この人には、こういう接し方をしよう」という感覚がないので、全員平等に接する。誰のことも区別しないで、温かく接してあげられるんです。そんな中で、すごくタイムのよさが出ていたと思う場面がありまして。たとえば、困っている方がいたら、多くの方は近寄りがたいと思ってしまう気がするんですけど、タイムはなんの躊躇もなく寄り添ってあげる。映像ではさらっと描かれているのかもしれないですけど、そこが僕は好きなんですよね。「すぐに同じようなことができるか?」といわれたら、難しいかもしれないですけど、そういう温かさは大事だよなって。ほかにも、この作品にはいろんなメッセージが込められていると思いますし、観た方によって感じ方も違うと思うんですけど、個人的にはただ単に映像作品として楽しんでほしい気持ちも強くあります。

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中島 私も“信じること”というのは大きなテーマに含まれていると思いますし、ナギという子はさまざまなことをあきらめてしまって、自分のことも他人のことも信じられていない状況から、タイムと出会って変わっていく。そして自分と人を信じてみようと前を向こうとする姿に注目していただきたいですし、それぞれの正義や主張があるなかで、何を選んで信じていくのかは、物語の中で重要なポイントかなと思います。

──おふたりが今作を通して、俳優として人間として得たものはありますか?

中島 タイムのまっすぐな人間性は、本当に魅力的だと思いますし、もしも自分の中に取り入れることができたら人生観が変わるのかなって。私もナギとは同じ方向性の人間だと思うので、信じることはすごく大事だと今一度思いましたし、3〜4カ月という長い撮影を初めて経験して、人間的な成長もあったかなと思います。

──その人間的な成長の部分って、言葉にできますか?

中島 “やり続けること”ですね。常に仕事に対して誠実に向き合う姿勢は、とても大事だなと改めて学びました。

奥平 17歳でそれが言えるってすごいですよ!

中島 いえいえ(照笑)。奥平さんはどうですか?

奥平 ゆっくり時間をかけて撮影していたぶん、照明の角度だったりカメラの位置だったり、本当に細かくこだわっていた現場で。自分だけじゃなくてまわりのスタッフさんがいかにやりやすくできるかを考える姿勢は、この現場ですごく勉強になりました。それと監督が「こういう画を撮りたい」と話したら、カメラマンさんが「じゃあ、こう撮りましょう」と提案しているなかで、僕もお芝居に影響がない程度に「これはどうですか?」と言わせてもらう機会がたびたびありました。今回はスタッフさんが若い方が多いのと、距離が近かったので意見を出しやすかったんですよね。現場でただ芝居をするだけじゃなくて、まわりを見てスタッフさんとコミュニケーションを図ることも大事だなと学びました。人間的に得たものでいうと、最近、二十歳になりまして。改めて、タイムのように純粋さを持っておくことは大事だなと。役者というお仕事をしているからこそかもしれないですけど、大人になるにつれて考えることとか責任も大きくなっていく。それでもタイムのように何も考えないで純粋に楽しむことや、何も疑わないで突き進むことも、時にはすごく大事な選択肢なのかなと思いました。

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──ちなみに、撮影を通して「ディズニー作品ならではの現場だな」と感じたことはありましたか?

奥平 特に、視覚的なこだわりにディズニーらしさを感じましたね。ファンタジーの作品だからというのもあると思うんですけど、予告を観たときにディズニーならではの魅力が詰まっている画だなって。衣装やセットもそうですし、そこはほかの作品と大きく違いましたね。

中島 セットやスケール感は「やっぱりディズニーだな」と思いましたし、奥平さんの言ったようにファンタジー作品というのもありますけど、色使いも独特ですごく好きです。そういうところは、“ディズニーならでは”だなと思いました。

──おふたりが言うように、壮大な世界観と色彩豊かな映像美で。稚拙な表現ですけど、予告だけでワクワクしますよね。

奥平 そうなんですよね! 子供心をくすぐられるというか、ああいう映像を大人が本気で作っているところがすごくいいですよね。

──そういえば、スタジオに入ってきたときにおふたりとも“懐かしの再会感”があったんですけど、顔を合わせるのはいつ振りなんですか?

奥平 実は、会うのがすごく久しぶりなんです。撮影が終わったのは昨年の12月とかで。そのあとにみんなで少し会ったりしましたけど、こうしてちゃんとお話しするのは1年以上振りで。なんか……気持ち(中島の)背が大きくなったなと思って。

中島 親戚のお兄さんみたい(笑)。

奥平 気のせいかもしれないですけど(笑)。僕は僕で二十歳になってから初めて会いますし、ちょっと不思議な感覚なんですよね。そういえば、今も絵は描いてます?

中島 あ、描いてます。

奥平 撮影現場でエマくんが絵を描いていたんですけど、それがすっごい下手で(笑)。演じているソンは絵が上手な役なんですけど、エマくん自身は下手なんです。セナさんはすごく上手なんですよ! 「絵をよく描くんです」とおっしゃっていたから、今も描かれているのかちょっと気になりました。

中島 ほぼ毎日描いています。

奥平 あ、そうなんだ! いつか『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』の絵も描いてほしいです。

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(C)2023 Disney

『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』
2023年12月20日(水)よりDisney+(ディズニープラス)で独占配信開始。【出演】
中島セナ、奥平大兼、エマニエル由人、SUMIRE
津田健次郎、武内駿輔、嶋村侑、三宅健太、福山潤、土屋神葉、潘めぐみ、宮寺智子、大塚芳忠
田中麗奈、三浦誠己、成海璃子/新田真剣佑(友情出演)、森田剛【スタッフ】
監督:萩原健太郎
アニメーション監督:大塚隆史
脚本:藤本匡太、大江崇允、川原杏奈
原案:solo、日月舎
キャラクター原案・コンセプトアート:出水ぽすか
プロデューサー:山本晃久、伊藤整、涌田秀幸
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
アニメーション制作:Production I.G
(C)2023 Disney

取材・文=真貝 聡 撮影=友野 雄 編集=宇田川佳奈枝
スタイリスト=柴原コトミ(中島セナ)、伊藤省吾/sitor(奥平大兼)
ヘアメイク=SHUTARO/vitamins(中島セナ)、速水昭仁/CHUUNi Inc.(奥平大兼)

Dig for Enta!