「息抜きのラジオもアイデアのタネに」川上アキラのサボり方

サボリスト〜あの人のサボり方〜

lg_c_8_t_a

クリエイターの活動とともに「サボり」にも焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載「サボリスト〜あの人のサボり方〜」

今回は、2008年のデビューから10年以上にわたってももいろクローバーZを支える名物マネージャー・川上アキラさんが登場。「ほとんど自己流でやってきた」というマネージャーとしての仕事術や、メンバーの近くで多忙な毎日を送る中でのリフレッシュ方法を語ってもらった。

川上アキラ かわかみ・あきら
1974年生まれ、埼玉県出身。株式会社スターダストプロモーション執行役員・プロデューサー。マネージャーとしてキャリアをスタートし、沢尻エリカらの俳優のマネジメントを担当。その後、2008年にももいろクローバーを立ち上げ、国立競技場ライブを実現するなどの人気グループへと導く。

「餅は餅屋」、仕事は線引きが大事

──川上さんのマネージャーとしてのお仕事についてお聞きしたいです。

川上 タレントを世に出す仕事がマネージャー業なんじゃないですかね。売れるっていう言い方が合ってるかわからないですけど、収益が上がって、メンバーと、彼女たちに関わるスタッフが食べていけるようにする仕事だと考えてますね、昔から。

──タレントが「売れる」ことを最終ゴールとして考えると、マネージャーである川上さんはどんな役割を担っているのでしょうか。

川上 タレントが一番いい状態で仕事をできる環境を作るのがマネージャーの仕事かもしれないですね。そのためにいろんな現場に立ち会ったりすることもありますし、番組やコンサートのスタッフと調整したりすることもあります。だから基本的には調整役ですね。

──ももいろクローバーZのクリエイティブの部分に関してはどうですか?

川上 コンサートでも番組でも楽曲でも、そういうクリエティブに関しては専門の方々がいるので、そういう人たちにお任せして。餅は餅屋ですから、アイデアレベルで種をまいたりすることはありますけど、基本的にはそれぞれ信頼できる専門スタッフに任せています。そういう意味では僕らはスタッフには恵まれてますね。

210917_0028

──もともとどういうきっかけでマネージャーになったんですか?

川上 大学のときにテレビのADのアルバイトをしてたんですけど、つらくて逃げちゃったんですよね。そのときに収録の現場に来てたマネージャーを見て「なんか楽そうだな」って思ったのはあるかもしれないです。単純におもしろそうだなって思ったのもありますけど、別に志高くマネージャーを目指したわけじゃないですね。

──実際にマネージャーになってからは苦労もされましたか?

川上 苦労っていうか、肉体的に大変なのはやっぱりテレビの制作の人たちだろうから、肉体的なつらさは特になかったですね。ただ、失敗はしましたよ。若いころは何もできてなかったんじゃないですか。いろいろ経験した今だったら、もうちょっとうまくできるんじゃないかとは思いますけどね。

昔はけっこう厳しめにタレントに接してたんで、もうちょっと柔らかく接してもよかったなとかは思います。そのときはほかのやり方を知らなかったし、それがメンバーのためになると思ってたから。それから僕自身も経験を積んだし、メンバーも成長してきたんで、接し方も少しずつ変わってきました。

──ももいろクローバーZとは10年以上の付き合いですが、マネジメントをする上で意識していることはありますか?

川上 あくまでメインは表現者である彼女たちだし、実際にステージに立つのは僕じゃないから、尊敬を持って接することですかね。お客さんの前や、カメラの前に立っている人にしかわからない領域があるので、そこはしっかり線引きしてます。その上で、彼女たちを俯瞰で見て何か参考になることが言えたらいいかなっていうスタンスですね。

──メンバーはもちろん、マネージャーは外部のさまざまなスタッフと接する機会も多いですよね。

川上 そうですね。でも、仕事以外での付き合いは一切しないようにしています。いろんなことが面倒臭くなりそうだし、あくまで仕事での付き合い。そうやって割り切ったほうが仕事がしやすいんですよね、あくまで僕の場合はですけど。

210917_0043

新しい出会いのタネは至るところにある

──今回は企画にちなんで「息抜き」の方法についてもお聞きしたいです。仕事のオンとオフはきっちり分けているほうですか?

川上 けっこうダラダラ仕事のことを考えてるかもしれないです。毎日車で片道2時間くらいかけて通勤してるんで、車に乗ってる時間はとにかく長いんですよ。だから行き帰りは基本的にラジオを聴いていて、それが息抜きになってるのかもしれないです。

車に乗ってる時間にもよるんですけど、伊集院(光)さんの番組は聴いてますし、ほかにはニッポン放送の『テレフォン人生相談』とか『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』、TBSラジオの『たまむすび』とか。大して何も考えずに聴いてるんですけど、「あ、これは仕事に使えそうだな」って気づくこともあるし、やっぱり仕事に紐づいてはいますよね。

──そこから新しい出会いも生まれる?

川上 そうですね。この前もたまたまうちの事務所の本仮屋ユイカが出ているABS秋田放送のラジオをなんとなく聴いてたら、そこのアナウンサーさんがももクロの大ファンだって言っていて。それをTwitterでつぶやいてみたら返信もいただいて、いつかそういうアナウンサーさんがいる番組にも出てみたいなと思ったり。そういうヒントはありますね。

──ももいろクロバーZはこれまでもさまざまなジャンルの方々とコラボしたり、ライブで共演したりしていますが、そういう方々の情報も積極的に集めているんですか?

川上 いや、そんなに一生懸命チェックしてるわけではないですよ。単純に、テレビ観て「この人おもしろいな」って思うくらいです。この前『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日)を観てたら80年代アイドルに詳しい女の子が出てきて、「うちの佐々木彩夏と会わせたいな」とか。

普段からすごく意識してるわけじゃないですけど、テレビとかネットとかYouTubeを観て、こういう人がいるんだなって知る感じですね。あとは世の中の流れを見てつかんでおいたほうが、直接的ではなくても「こういうライブを作ったらいいのかな」「こういう人をゲストに呼ぼうかな」っていうヒントはありますよね。

──これまでで印象的なゲストとの出会いは?

川上 ゲストというか、今でも一緒にお仕事してますけど、ももクロと本広克行監督との出会いはおもしろかったですね。もともと僕が本広監督の作品が好きだったこともあって、「いつか本人たちに会わせたいな」と思ってお呼びしたんです。そのあと「七番勝負」(トークイベント『ももいろクローバーZ 試練の七番勝負』)で本人たちと最初に会ったのがきっかけで、映画『幕が上がる』も作りましたし、印象深い出会いですよね。

210917_0086

撮影中、偶然通りがかった(!)ももクロの高城れにさんと

ストレス解消法は「とにかく食べること」

──仕事で落ち込むこともありますか?

川上 だいたい寝たら忘れるタイプですけどね。あとはとにかく食べる。だから食べることがストレス解消になってるんですよね。それでここまで太ったわけだから、「お前が言うな」って話かもしれないですけど(笑)。今日も朝から築地場外でホルモン丼を食べてきましたから。まだまだ全然、食べれますよ。

──すごいですね。休日はリフレッシュに時間を割いたりしていますか?

川上 別にこれといった趣味はないんで、もうただただダラダラしてますよ。日曜の夕方から徳光さんが出てる『路線バスで寄り道の旅』(テレビ朝日)の再放送を観て、『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)を観て……っていうルーティーンです。別に仕事のことを考えてるわけでもないですし、あの時間はすごく有意義ですよね。そう考えるとテレビっ子なのかもしれないですね。それで昼間から酒を飲めていれば一番いいですね。

──ちなみに、平日のルーティーンもあったりするんですか?

川上 子供ができてからは寝るのも早くなったんで、だいたい9時半くらいには寝ちゃうんです。そこから朝5時半とか6時に起きて、朝風呂に入る。ニュースをチェックしたり、ネットで情報収集したりするのはだいたいその時間ですね。

210917_0060

コロナ禍でもできることを粛々と

──ももクロは、デビューしたてのころからテレ朝動画やCSテレ朝チャンネルでも番組を持つなどテレビ朝日とはとても深いつながりがありますよね。特に番組スタートから10年以上が経つ『ももクロChan』はグループにとっても象徴的な番組だと思います。

川上 『ももクロChan』は本当にグループの初期からやらせてもらってる番組ですし、メンバーにとっても番組がホームになっていると思います。スタッフのみなさんのおかげですよね。

──ホームという意味では、テレ朝動画logirlの『川上アキラのひとのふんどしでひとりふんどし』も、メンバーの身近な姿が感じられる場になっていますよね。

川上 なかなかライブができない状況ですが、『ひとりふんどし』はメンバーの近況を伝える場というか、イメージだとラジオのフリートークにも近いと思います。今はYouTubeとかInstagramとかいろいろありますけど、彼女たちにとっては、一番リアルタイムに近いかたちで自分たちを伝えられる場になってるんじゃないですかね。

オンラインライブ

『ももクロChan』では、番組初となるオンラインイベント
「テレビ朝日 ももクロChan 10周年記念 オンラインプレミアムライブ!~最高の笑顔でバラエティ番組~」を11月6日(土)19時開演
ももクロが10年間で培ったバラエティスキルの集大成として、
歌やコントやバラエティ企画に挑戦!
logirl会員は割引価格でご視聴いただけます

──『ももクロちゃんと!』(テレビ朝日)も、10月から土曜深夜(3時20分放送)に枠が移動し、リニューアルされたばかりですよね。番組のますますの進化が楽しみです。では最後に、これからグループとしての展望や挑戦したいことを教えていただけますか?

川上 いつになるかわからないですけど、お客さんをたくさん入れて、声を出してっていうライブができなくなってますから、そういうのはもう一回やりたいですよね。コロナ禍になってから、エンタテインメントに関わる人はみんな頭を悩ませてると思いますけど。

基本的に、エンタメって世の中がちゃんと平和で幸せで余裕があるときに見るものですから。もともとそんな大層なものだと思ってないんで、僕は。だからこういう状況でも世の中に迷惑をかけずに喜んでもらえることがあるなら粛々とそれをやっていこう、っていう感じですね。

──やれることを地道にやっていく。

川上 そうですね。ただ、この前の9月に横浜アリーナで開催された『@JAM EXPO 2020-2021』にももクロが呼んでもらって、久々のライブ出演だったんですけど、やっぱりいいなとは思いましたね。ご時世次第ですけど、そういうこともできたらなと思います。

lg_c_8_t_b

撮影=石垣星児 文=山本大樹 編集=後藤亮平

サボリスト〜あの人のサボり方〜
クリエイターの「サボり」に焦点を当て、あの人はサボっているのか/いないのか、サボりは息抜きか/逃避か、などと掘り下げていくインタビュー連載。月1回程度更新。

 

サボリスト〜あの人のサボり方〜