“感覚派”女優・畑芽育は、映画館で“バレたい”

focus on!ネクストガール

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#15 畑 芽育(後編)

旬まっ盛りな女優やタレントにアプローチする連載「focus on!ネクストガール」。

畑芽育(はた・めい)。現代劇から時代劇に至るまで、ドラマ、映画などでの好演が光る。近年では『女子高生の無駄づかい』(2020年/テレビ朝日)、『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(2020年/MBS)、『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(2021年/日本テレビ)などのドラマや、映画『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』(2021年)などに出演。公開中の映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』(2023年)では“片想いごっこ”をするヒロインを演じている。今年4月には、自身初の写真集『畑芽育 1st写真集「残照」』(KADOKAWA)を発売。

インタビュー【前編】

「focus on!ネクストガール」
今まさに旬な方はもちろん、さらに今後輝いていく「ネクストガール」(女優、タレント、アーティスト等)を紹介していく、インタビュー連載。

『千輝くん』を観に、何度も映画館へ

──お芝居の話を伺いたいのですが、映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』が大ヒットしていますよね。

 はい、とてもうれしいです!

──大ヒットの実感は?

 本当に自分でも、もう何回くらい行ったかな? 5、6回は自分で劇場に足を運んで……友達を引き連れて一緒に観に行ったりとかして。今までにできなかった経験をさせてもらえて……明らかに人生が変わったなという瞬間を味わいました。感動でもあり、やっとだな、という気持ちもあり。ここからがスタートな気がしています。

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──映画館へみんなで行ったとき、まわりに気づかれたりとかは?

 まったくです。まったく! せっかく何回も劇場に行っているから、バレたいんだよね、と友達に相談したら「私ですら映画館に本人がいるとは思わないよ」と返されて(笑)。「そうだよね、しょうがないよね」と一応、納得したんですけど……映画が公開されている間にもう何回か足を運んで、バレたらうれしいなと思います(笑)。うしろにいるよ!という気持ちです。

やっぱりヒロインを務めさせていただいて、その作品を観るために、わざわざお金を払って映画館へ足を運んでくださるお客さんに……その一人ひとりに感謝を伝えたいくらいなんです。もう、劇場の入口に立って「ありがとうございます!」と、一人ひとりに言いたいくらいの気持ち。でも、なかなかバレないので……本当にうしろを振り返ってほしいです!みなさんに(笑)。

──明転したら、うしろを振り返ってもらって……。

 絶対にうしろを振り返ってほしいです! いるかもしれないので(笑)。

“ブス”なヒロインを演じて

──映画の中で好きなシーン、がんばったなというシーンはありますか?

 素敵だなと思うのは……千輝(彗:高橋恭平)くんとふたりで公園のベンチに座っているときに“片想いごっこ”に終止符を打って、けじめをつけるということを伝えるシーンで、そこで(如月)真綾ちゃんが「千輝くんは私がつらいときにふと現れて、そのときに一番欲しい言葉をかけてくれるよね」というセリフを言うんです。そのセリフに……私にとってそういう存在っているのかな?と考えさせられたりもしながら、真綾ちゃんの中での千輝くんの存在の大きさとか、千輝くんに対する気持ちが、このセリフに詰まっているなとも思って。

あのシーンを撮っているときに、スタッフさんがすごく褒めてくださったんです。撮影が全部終わって「お疲れさまでした! すごくよかったです」という言葉をかけてもらえることはあっても、個々のシーンの撮影中、監督やスタッフさんから「よかった」と言われることは、あまりなくて。なので、とても印象的でした。そのシーンがちゃんと映画に使われていて、自分でも認められる部分だったので、注目して観てほしいところかなと思います。

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──なるほど。作品を観ての素の感想なんですけど……女優さんだからもちろんおきれいですし、それなのに映画での最初の設定で「このブスが……」と言われることに、観ていて少し違和感があったんですよね。

 ありがとうございます。うれしいです(笑)。

──最初に真綾ちゃんが(山田太郎:曽田陵介に)告ったシーンで「キモい、ブス……」って言われる。いやいや、どこがどうなるとそう見えるの?って(笑)。

 SNSで自分の名前をエゴサ……「畑芽育」と入れてみると、次の検索ワードに「ブス」って出るんです。「……え!?」と思って調べてみると「映画の中で、畑芽育ちゃんがブスと言われているのがよくわからない」みたいな書き込みで(笑)。その意味での検索候補でホッとしたというのもあるんですけど。

でも本当に、ブスと言われるキャラクターだということを忘れないように演じていました。最初に演じたとき(新城毅彦)監督から「ちょっとかわいらしすぎる」というお言葉をいただいて、自分のことをかわいいと思っている少女マンガのヒロインじゃなくて、自分はドジで抜けているところもあるけれど、観ている人たちが背中を押したくなるようなヒロイン像でないといけない、と意識しました。

物語は、真綾ちゃんの視点でずっと描かれていて、心情がコロコロ変わりながら進んでいくので、観ている人が真綾に自分を投影できるようなキャラクターじゃないといけないということを、監督ともお話しして理解が深まったんです。

──監督もすごいなぁと思ったのが、ああいう表現は、普通メイクやメガネでいじったりするじゃないですか……不細工風に見えるようなメイクで。そういうメイクは一切しないで演じさせるというのが……。

 なかったですね。むしろ、過去最高にかわいく映してくれていました。

──ですよね、その意味でも、表現が斬新だなと思って。

 そうなんです、まったく。とにかくかわいくしてくれたんです。ヘアメイクもそうだし、照明とか全体的に本当にかわいくきれいに見えるように撮ってくださっていて。監督が過去に撮っていた作品もたくさん観させていただいたんですけど、本当になによりもヒロインがかわいくて、背中を押したくなる。それでいて主人公である男の子もすごく輝いて見えるという……監督のすごさを改めて感じましたし、今回ご一緒できて本当にうれしかったです。

──今でもキャストの方々と連絡を取ったりはしますか?

 はい。仲よくさせてもらっていて、小原知花を演じた莉子ちゃんとは一緒に温泉に行ったり、プライベートでも週に1回くらいは会う仲です。撮影は2022年の6月だったんですけど、莉子ちゃんと楽しくワイワイ過ごしていたら、あっという間に映画が公開されて、本当に時間の早さに驚いています。撮り終わった直後は、2023年の3月までは長いな……と、思っていたくらいだったんですけど、あっという間にプロモーションまで終わっちゃったなという。改めて作品は始まったら終わるんだなと感じましたし、最後のイベントのときには、寂しさを感じました。いいチームだったし、それだけ思い入れのある作品だったんだ、と。

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“感覚派”女優は、役づくりをしない?

──なるほど。『千輝くん』以外の、今までやってきた仕事の中で、印象に残っている作品はありますか?

 実は私、自分の作品を見返すのが苦手で……出演作もほとんど観ないようにしているんです。家族が観ていてもチャンネルを変えたくなるくらい、本当に嫌で(笑)。でも『荒ぶる季節の乙女どもよ。』に関しては、自分でも見返したいなと思うくらい作品もすごく素敵だったし、取り扱う題材もおもしろくて興味深いものでした。自分が演じているキャラクターの(須藤)百々子ちゃんには思い入れがありますね。玉城ティナちゃんが演じている菅原(新菜)さんを好きになる役で、撮影期間中は本当に好きだったな……と。それくらい役に入り込めたし、監督とも今までにないくらいお話しして感情を引き出す作業をたくさんしていただいたなという。熱中して作品を作っていたこともあって、観てもらいたいなと力強くおすすめできるのも『あらおと』かなと思います。

──独特のテーマですよね。

 そうですね。性をテーマにした作品だったので。一見触れづらい部分を、がっつり女の子だけで扱っているのに、幅広い世代の方に観てもらえましたし、この先何年も語り継がれる作品になればいいなと思って取り組んでいました。今でも『あらおと』を繰り返し観ていますという声をいただくと、すごくうれしいなって。

──『あらおと』もですが、今までいろいろな役を演じていると思うんですけど、役づくりをするときは、どんなふうに行いますか?

 『千輝くん』みたいに原作があるものは、もちろん読み込んだりしてなるべく寄せたいなと思います。『千輝くん』の現場で監督から、「畑は本当に感覚派だ」と言われたんですね。私って感覚派なのか!って、そこで気づいて……今までの作品を振り返ってみても、たしかにセリフは入れていくんですけど、ガチガチに動きまでは固めてないなという感じはあって。すごく作り込んでいくというより、その場の雰囲気と相手の動きに合わせて一緒にやりたいという意識だったんです。本当にセリフとそのときの感情……最初の感情だけを作って、あとは飛び込んでやっているなという。その意味では、あまり役づくりはしていないのかもしれないです。

──そこは監督の言う「感覚派」で……。

 感覚で挑んでいるのかな……それが良くもあり悪くもあると思うんですけど。作り込まないといけないというか、その感情をちゃんと作って…… 動かなきゃいけないときは、自分でなんとなくそういう選別をして作っていくんですけど。群像シーンみたいな、ワンシーンに3人以上いるシーンのときは、何も考えていないような気がします。そこは感覚……ノリなのかもしれないです。

──なるほど。ひとつの方法論ですよね。今後やってみたい役柄はありますか?

 すごくしゃべる役が楽しかったなというのはあるんです。しゃべる役って、感情が言葉に乗るから芝居が映えて見えるしわかりやすいというか、目に見えてその人の芝居がわかるからいいのかなと思うんです。逆に、しゃべらない役って案外難しいのかもしれない。今までもちょっと寡黙で影のある女の子を演じることはあったんですけど、今後、もっとしゃべらない、しゃべらないながらも感情が入り乱れているような、そういうクセのある役が来たら楽しいだろうなと思います。

ブラッド・ピットに恋焦がれ

──役づくりにも通じていて興味深いです。映画などで、好きな作品はありますか?

 語れるなという映画は“オーシャンズ”です。……オーシャンズシリーズ(『オーシャンズ11』2001年/『オーシャンズ12』2004年/『オーシャンズ13』2007年)が大好きで、もう数え切れないほど観ています。朝まで語れますね、それぐらい好きで。もうブラッド・ピットさんに恋をしてしまって……。

──ブラピの作品で一番好きなのが“オーシャンズ”?

 “オーシャンズ”かなあ……でも『ジョー・ブラックをよろしく』(1998年)もすごく好きです。いつかお会いできたらうれしいなって。

──どこかで会う機会も、ありそうですよね。

 『ブレット・トレイン』(2022年)の日本プレミアでイベントをやっていたときに、フワちゃんさんがブラッド・ピットと一緒に写真を撮っていて、うらやましかったんです! 私もフワちゃんさんの枠に行けば、ブラット・ピットに会えると思って、血迷った時期もありました(笑)。……でも、いや女優でがんばろうと、女優としてブラッド・ピットに会おうと。

──『ブレット・トレイン』だったら、出るチャンスも……。

 そうですよね。真田広之さんも出ていらっしゃいましたけど、日本の俳優が海外に行くチャンスが増えたということは感じていて、絶対に昔よりは遥かにそういうチャンスが多く来ると思っているんです。なので、私も、いつか世界進出してブラッド・ピットに会うという……大きな夢ですが(笑)。

──楽しみにしています。プライベートで、最近ハマっていることはありますか?

 最近ちょっと麻雀をかじり始めました(笑)。それこそ映画で共演した板垣李光人さんと趣味の話をしていて、板垣さんは麻雀ができるみたいなんです。教えてほしいと頼んだのですが、全然教えてくれないんです(笑)。仕方ないので今、携帯で必死に勉強しています。難しい! もう意味がわからない……なに? ロン? なにそれ?っていう感じなんですけど。牌とか並び、そういうことを学ぶところからやっています。

──覚えたら、そっちの仕事も増えるかもしれない。

 それもありますよね。やっぱり趣味が多かったら多いだけ……『アメトーーク!』(テレビ朝日)で、そういう多趣味な芸人さんも出てらっしゃるじゃないですか。趣味が仕事につながったら楽しそうなので、2023年は趣味を増やそうと思います。まずは麻雀からちょっとがんばって覚えます(笑)。

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実は韓国語が達者です

──海外進出というと、英語はしゃべれるんですか?

 英語は全然話せないんです。でも韓国語は、少しだけしゃべれるんです。中学生くらいからずっと好きなんですけど、韓国ドラマを観て、とにかく推しがしゃべることを理解したいという。それを原動力に、独学で学び始めて韓国語での日常会話はできるようになりました。

──え! すごい! ちょっとしゃべってもらえたりします?

 ええーー!(笑)

──たとえば、自己紹介とか……。

 (―韓国語で自己紹介―)

──ガチで、すごいですね! なんとおっしゃったんですか?

 「私は畑芽育です」って。「今、私が韓国語をしゃべってもみなさんわからないでしょうから恥ずかしいです」と言いました(笑)。でも、全然まだまだです。

──いやいや、全然すごいですよ。話されていることもわかるんですか?

 はい。韓国へ行ったときも、ちょっとゆっくりしゃべってくれたらわかるなと思いました。値切りとかもできます。ちょっと値切るくらいなら(笑)。

──韓国ドラマを観ているだけで覚えちゃうって……。

 でも中学生だったからできたのかもしれないです。中学生のとき、授業の勉強もしながら、片隅でずっと韓国語のテキストを読んでいました(笑)。

──ちなみに、ハマっていた韓国ドラマというのは?

 当時は『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』(2016年)というドラマ……『トッケビ』きっかけでコン・ユさんを好きになって、コン・ユさんの出ている作品を全部観あさって。『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』(2022年/Netflix)とかも……囲碁が劇中に出てくるんです。だから囲碁も覚えようかなと、ちょっと今いろいろ考えています(笑)。趣味を増やそうって。

──『logirl』でも今度、初めてK-POPの方にインタビューをすることになったんですけど、誰も韓国語はできないので……。

 私、行きましょうか?(笑)

──今後、韓国ドラマ方面へ進出というのも、ありますよね。

 ですね(笑)。いつか叶ったらいいですね。

──韓国でだったらフワちゃん枠を取ることも……。

 ええー!(笑)……できるかなあ。まずは、もっと勉強しないとって思いました。でも、やっぱりブラッド・ピットさんのためには英語を勉強しようかな(笑)。

──ブラピ基準だと、そうなりますよね(笑)。ありがとうございました!

取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 ヘアメイク=渋谷紗矢香 編集=中野 潤

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畑 芽育(はた・めい)

現代劇から時代劇に至るまで、ドラマ、映画などでの好演が光る。近年では『女子高生の無駄づかい』(2020年/テレビ朝日)、『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(2020年/MBS)、『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(2021年/日本テレビ)などのドラマや、映画『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』(2021年)などに出演。公開中の映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』(2023年)では“片想いごっこ”をするヒロインを演じている。今年4月には、自身初の写真集『畑芽育 1st写真集「残照」』(KADOKAWA)を発売。

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▼日本の好きなドラマを聞くと「『最愛』(2021年/TBS)です。吉高由里子さん、かっこよかったです。本当に引き込まれました。作品自体もいいし、脚本も、音楽も……すべてにおいて完璧なドラマです」

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