挫折を乗り越えて再びブレイクスルーを果たしたコットンの次なる夢|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#19(後編)

若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>

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2021年の改名後、『キングオブコント2022』で準決勝し、ブレイクしたコットン

しかし彼らはラフレクラン時代にも売れる切符をつかみかけていた。

あまりにも早すぎた出世と、その重圧の時代を乗り越え、実力でブレイクスルーを果たした彼らに話を聞いた。

【インタビュー前編】

期待のコンビとして順風満帆なスタートだったコットンの初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#19(前編)

若手お笑い芸人インタビュー連載<First Stage>
注目の若手お笑い芸人が毎月登場する、インタビュー連載。「初舞台の日」をテーマに、当時の高揚や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語ります。

同期で最も多忙でも、手応えはなかった

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左から:西村真二、きょん

──2012年に結成したラフレクランですが、2014年には所属劇場である∞ホールで、ジャングルポケットとニューヨークとともにTOP3に名を連ねましたね。同期の中でも、最も早い出世だったのではないでしょうか。

 

西村 そうですね。ただ、実力があったっていうよりも、本当にたまたまだと僕らは思ってたんで。実際、2016年にはTOPから落ちました。

──2015年には『CanCam』のWEBサイトで西村さんが「​​ラフレクラン西村のハイスペック伝説」というインタビューを受けてました。

西村 そうですね。『お笑いポポロ』とかもそうですし、アイドル系の媒体にも俺ら全部出ましたね。

きょん 同期の中では圧倒的に仕事は多かった。

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西村 バイト辞めるのも早かったですし、テレビ露出もほんの少しずつですけど、月1〜2回は出させてもらってたよな。

──当時はこのまま売れていくだろうなって感覚でしたか。

西村 うーん……。それはなかったかなぁ。

きょん 「このまま行ってくれ……!」っていう願いでしたね。

西村 自分たちがどう闘ってるのかもわかってなくて、舞い込んでくる仕事をただ全力でがんばるだけでした。これがどんなふうに売れる道につながってるのか、この仕事の扉の向こうに何が待っているのかがまったくわからないまま。

──がむしゃらにがんばっていた。

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西村 「がむしゃら」っていうポジティブな表現も合ってないかもしれない。「全力でこなしてた」っていうほうがしっくりくるかもしれないよね。

きょん うん。

西村 反省の仕方もわからない状態でした。

きょん 冷静ではなかったですね。ずっと肩に力入ってて、テレビでも「きょん君、どうですか?」って振られても、空回りして終わりでした。

「西村と川瀬名人は“圧人間”なんです」(きょん)

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──3〜4年目のころは、反省するための、経験や技術も足りてなかったということなんでしょうか。

西村 そうですね。当時は本当にただただVTR観て、感想を振られてから慌ててパッションだけで答えてました。11年目になってようやく「VTR中にコメント用意しとかなきゃな」って準備できるようになりましたね。今は自分の中の武器庫を開いて、「ここはダガーナイフで接近戦だな」「ロケットランチャーぶっ放そう」みたいに考えられるようになって……まぁ今も下手くそですけど。あんま裏言うのもアレですけど、今はよくコンビでも反省会しますね。

きょん 次に活かす反省ね。

西村 「きょん、あそこはもっと短めにいかんと。編集されとるやん」とか「俺もあそこは悪かった」とか言ってますね。ただ、彼があんまり理論タイプじゃなくて……。

きょん パッションタイプ。

西村 って言うと聞こえはいいですけど、単純に空回りタイプなんで。昔はしっかりしてたんですけどねぇ、11年経ってこんなにしゃべれなくなるとは思わなかったですよ。当時は流暢にしゃべったし、会話とかもちゃんとできてたのに、なぜか11年経ってできなくなっちゃって。

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──西村さんが頼りがいあるからかもしれないですね。

きょん はぁい!

西村 いや、マジで困るんですよ。きょんは社会性があるからわかりづらいんですけど、よくよく聞くとめちゃくちゃなことばっか言ってるんですよ。

きょん そういうときが、ありますねぇ。

西村 いや、そういうときしかない!

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──以前、ゆにばーすのはらさんが「∞ホールにいる芸人の中で、唯一相談できる人がコットンのきょん」と言っていたんですが、それでも本当に相談に乗れるんですか?

きょん あっはっは(笑)。たしかにはらさんはサシで飯行って「あのさ、きょん。相談があるんだけど」ってたしかにめっちゃ多いです。あのですね、なんつーんだろうなぁ。なんつーんだろう……。

西村 その「なんつーんだろう」がムカつくなぁ。

きょん この圧ですよ。西村とか川瀬名人は“圧人間”なんです。

西村 イヤな言い方。ツッコミしてやってるのに。

きょん 僕もはらさんも、平和な空間だったら話せるんです。

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西村 今日も『ラヴィット!』終わりにモグライダーさんと動画撮りましたけど、芝(大輔)さんもツッコミすぎてもう疲れてるんですよ。僕もきょんが無視できないくらい間違えるから、ツッコミ疲れする気持ちがわかるんですよ。

きょん ともしげさんのほうがミス多くない?

西村 いや、そういう問題じゃなくて。ともしげさんは言い間違えとか、つっかえたりとかするんだけど、お前はできるオーラ出しといて間違えるから一番厄介なの。観てる人が気づくか気づかないかくらいのミスだから、ツッコミにくい。こないだもラジオで「『バチェラー』の坂東(工)さん」っていうボケがしたいのに、「どうも、板東英二です」って普通に間違えてて。そんな入口じゃなくて、もっと中で笑いが欲しいんですよ。もうしんどいっすよ。

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きょん 僕とかともしげさんといると、ツッコミの腕が試されるでしょうねぇ。

西村 そういう意味では、きょんにツッコミをうまくさせてもらってるかもしれないですね。

きょん 最近うまくなったよね? あはははは(笑)。

西村 ムカつくなぁ!

『キングオブコント』でぶるぶる震えていたきょん

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──初舞台の話でいうと、『キングオブコント2022』では初の決勝進出で、準優勝に輝きました。

西村 僕はめちゃくちゃ冷静でした。準備はしてきたし、あとはなるようになれっていう感じで。放送が始まると、ファイナリストはみんな楽屋で放送を観るんですけど、一番手のクロコップさんのネタが始まった段階で僕は外に出ましたね。あんま観ててもしゃあないなぁと思って。ただ、相方がおもろかったですね。

きょん めちゃくちゃ緊張してました。

──きょんさんって意外と緊張される性格なんですね。

きょん どうなんですかね。賞レースは今でも緊張します。

西村 震えがち。

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──声が震える?

西村 いや、体がめっちゃ震えるんです。『M-1』とかでも、3回戦までは平気なのに準々決勝くらいから急に震え出すんですよね。

きょん 手元のジェスチャーで震えるんですよね。だから自分では震えてる感覚はないんですけど。

西村 グラスを持ったり、警察手帳を見せたりする動きのときに、ぶわーって震え出す。

きょん 『キングオブコント』の1本目は「あーもう! どうしよどうしよー!」ってなってました。動きだったり言葉だったりが多いネタで、一個のミスですべて崩れるので、めちゃくちゃ集中しなきゃいけないんですけど、大緊張でそれどころじゃなかった。相方も俺にしかわからないくらいの「きょん落ち着け」ってサインを出してくれるほどで。

西村 ずっと目で「お前、大丈夫か?」って。

きょん 実際、自分のテンポも気持ち上がっちゃって、それで「俺すっごいドキドキしてるわ」って実感しました。世間の方とか審査員にはバレないレベルではあるんですけどね。「おじゃましますー」って部屋に入るところから冷蔵庫を開けるところまではけっこう緊張しましたね。ネタの後半でようやく落ち着きました。

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西村 これはもういろんなところで言ってるんですけど、明転する3秒前に僕のうしろできょんが「あとは俺に任せろ」って言ったんですよ。で、僕は無視したんですけど、「直前にボケれる余裕があるならよかった」って安心してたんです。なのに一発目のボケでプルプル震えてて、「なんやこれ」と思いましたね。

きょん 『R-1』であんなに震えたらヤバいですよ。「落ち着け」って“目配り”してくれる人もいないから。(※取材は『R-1』決勝の前に行った)

西村 目配せ。ほら、こういう細かいミスをするんです、コイツは。

コンビはふたりでひとつ

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──最後に、今後の目標を教えてください。

きょん 僕は『めちゃイケ(めちゃ×2イケてるッ!)』(フジテレビ/以下同)が大好きだったんで、テレビの冠番組はもちろん憧れますね。『笑う犬』シリーズだったり『リチャードホール』も観てたんで、お金がすんごいかかったコント番組もしたいです。今でいえば『新しいカギ』みたいな。

あとは、コットンがいれば劇場が埋まるみたいなお客さんを集められるコンビになりたいです。今は男性ブランコさんがそういう存在で、かっこいい背中を見せてくれてるので、僕らもいつかそうなりたいですね。

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──きょんさんがしゃべってる間、西村さんがずっと笑ってるんですが……。

西村 いや、すみません(苦笑)。ずっと僕のコメントパクってるなぁと思って。『キングオブコント』終わりのインタビューで目標を聞かれて、僕が「今までお世話になってきた吉本の劇場を盛り上げたいです」って言ったんです。それ以来、きょんが俺より先に劇場について言及するようになってるんですよ。

──マネージャーさんもうなずいてますね(笑)。

西村 コイツ、コメント全部パクるんですよ。

きょん いや、彼がね、短くて濃厚なこと言うのでいいなって思っちゃうんですよ(笑)。こないだも1時間取材を受けて、にっくんがバーって書かれてるなか、僕、2行だったんですよ。載せてもらうためには、パクるしかない!

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西村 『ABCお笑いグランプリ』ラストイヤーのときも、何社か取材してくれて。まぁ湿っぽいこと言っても仕方がないのでボケようと思って「もう一回NSC入り直したら、芸歴リセットですよね? なのであと10年闘います!」って1社目のときに言ったんですよ。そしたらきょんが2社目でそれを言い出して。あのときはマジでビックリしたもん。

きょん コンビはふたりでひとつらしいよ。だからパクるとかないんだって。にっくんが言ったことは俺も言っていいらしいよ。

西村 最近も2023年の目標聞かれて「すべての賞を総なめにする。ベストジーニストもモンドセレクションも全部取りたい」って答えたんですけど、それをきょんがTwitterでつぶやいてて(笑)。全部パクるやん!

きょん 前にも言ったけど、俺の隣でいいコメントしないほうがいいよ。盗っちゃうから。

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西村 いろんなインタビューで僕が普通のコメント言ってるなとみなさん思うかもしれませんが、あれ、きょんにパクられてビックリしてるからなんですよ。

きょん にっくんの目標は僕の目標でもあるから。

西村 まぁ今回も僕は普通のコメントになりますが、目標は『キングオブコント』優勝です。去年準優勝して露出も増えてきて、優勝するなら今年しかないと思ってます。

きょん もちろん僕もです!

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文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平、田島太陽

コットン
2012年4月、ラフレクランとして結成。西村真二(にしむら・しんじ、1984年6月30日、広島県出身)と、きょん(1987年11月18日、埼玉県出身)のコンビ。『ABCお笑いグランプリ』では、2017年から4度ファイナリストになり、2019年には『NHK新人お笑い大賞』で優勝を飾る。2021年4月、『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日)への出演をきっかけに、コットンに改名。翌年、『キングオブコント2022』で初めて決勝進出し、準優勝。

【後編アザーカット】

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