ラランド「今は振り返れない」快進撃の始まった初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#6(前編)

若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>

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群雄割拠の若手お笑いシーンの中でも、異彩を放つ男女コンビ・ラランド

2014年に上智大学のお笑いサークル「SCS」でコンビを結成し、4年目には大学お笑いサークルの頂点を決める大会『NOROSHI』で優勝。その翌年2019年には、アマチュアながら『M-1グランプリ』でセミファイナリストになった。その後、めきめきと頭角を現し、若手芸人の代表格のひと組となった。

コンビ結成から現在に至るまで順風満帆のラランド。そんなふたりに、船出となった《First Stage=初舞台》について聞いた。

「若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>」
注目の若手お笑い芸人が毎月登場する、インタビュー連載。「初舞台の日」をテーマに、当時の高揚や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語ります。

どうやって組んだか覚えてない

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サーヤ

──上智大学のお笑いサークルで活動されてたおふたりのそもそもの出会いはアカペラサークルの新歓コンパだったそうですね。

サーヤ アカペラサークル入るつもりで新歓行ったんですけど、楽しくなさすぎて。そこで私と同じようにすごく気まずそうにしてたのがニシダで、私から声かけたのが最初ですね。私たち同じイスパニア(スペイン)語学科だったので、顔は見たことあったんですよ。だから「同じ学科だよね」って話しかけてみたら、意外と話が合っちゃって。

ニシダ そうですね、お笑い好きっていう話になって。

サーヤ 「『オンバト』観てんだ!」みたいなね。ニシダは地下ライブも観に行くって言ってたので「がっつりお笑いファンなんじゃん」ってことで仲よくなりましたね。

ニシダ 高校生のときは横浜に住んでたんですけど、吉本の∞ホールとかたまに行ってて。その流れで大学入学したころは地下ライブにもハマってたんですよ。

──ニシダさんはお笑い芸人を目指していたんですか?

ニシダ いや、当時はおもしろいなぁってファンとして観てるだけだったので、自分がお笑いやるって考えたことは全然なかったですね。

サーヤ なのに私がお笑いサークルに入るときに「お笑いサークル行くけど、どう?」って誘っちゃったんですよ。

ニシダ 「誘わなきゃよかった」みたいな言い方するなよ(苦笑)。僕はサーヤさんに誘われるがまま見学に行って。

サーヤ ニシダはコアな芸人も知ってたし、会話もちゃんと打ち返してくるから、話してて楽しかったんですよね。

──じゃあお互いにサークルに入ったときから、ふたりでコンビを組むつもりで。

ニシダ 僕は組みたかったですね。サーヤさんギャグセン高いし、おもしろい人だなって最初の段階で思ってたので。

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ニシダ

サーヤ 私は別に考えてなかったです。サークルの部室にいるとニシダがちょくちょく「組もうよ」「ちょっとやってみない?」って言ってきてたのは覚えてますね。でも、私はずっと流してて。あとコンビ組むにあたって外堀を埋められたのがキモかったです。

ニシダ そうだっけ?

サーヤ そうだよ、まわりの人に「ニシダが組みたがってるよ」って言わせるんですよ。キモかったなぁ。

ニシダ キモくないだろ、別に。

サーヤ いや、キモかったのよ。積極的に誘ってくるから意欲あるのかなと思ったらそうでもなくて、結局私にネタ書かせるし。

──正式に結成した日って覚えていますか?

ニシダ いつだっけな……。

サーヤ 学食でネタ合わせした日だった気がするけど、はっきり覚えてないです。1年生はデビューライブが5月にあったんで中旬くらい?

ニシダ たぶんそれくらいじゃない?

サーヤ ニシダ以外に組みたいと思える人もいなかったし、とりあえずふたりでできるネタ作らなきゃなって感じで。

──気づいたらなんとなく組んでいた。

ニシダ そうだったと思います……。けっこう大事なことなのに、あんまり覚えてないもんですね……。

初ライブ後、調子に乗ったニシダ

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──初舞台はいかがでしたか?

サーヤ 初めてにしてはウケたんですよね。ライブ前のネタ見せは先輩にめちゃくちゃウケたし。一発目でウケて、みんなにちやほやされて。初舞台前のニシダは緊張してたくせに、ウケたもんだから調子に乗ってブイブイ言われせるようになって……。

ニシダ そんなことないだろ!

サーヤ 2年に上がったら、ネタ書いてないのに後輩にダメ出ししてたじゃないですか。「ふたりのキャラクターに合わない」とか「その設定だったら、今の単語抜いたほうがいい気がするな」とか言ってさ。

ニシダ すごいな、俺。そんなこと言ってたっけ……。

サーヤ ニシダが偉そうに後輩にアドバイスしてるの見るのが好きでしたねぇ。「ニシダやってんなぁ〜(笑)」って。

ニシダ 俺もたいがいだけど、サーヤさんも趣味悪いな!

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──ちなみにその初ライブでやったネタって覚えてますか?

サーヤ 「彼女がスマホになっちゃう」っていう独特の漫才でしたね。

──ポップな雰囲気のネタですね。今でも軽くネタ合わせすればできそうですか?

ニシダ いやぁ……ほんとにたぶんあの一回しかやってないんで難しいですよ。

サーヤ ボケとかなんとなく思い出せるけど……今はもう恥ずかしくてできないっすね。

ニシダ 動画探したらどっかにあるんだろうけど、絶対観たくないな(笑)。

コンビ継続の秘訣は、マイペースの死守?

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──結成当初からプロを目指していらっしゃったんですか?

サーヤ いや、組みたてのころは、ただお笑いやりたいというサークルのノリでしたね。いろんな大会に出るうちに、目指したくなった感じです。でもお笑い続けるにしても辞めるにしても、私は実家の経済状況的に一回就職はしておく必要があって。

だけどニシダは大学中退したり再入学したりしてて、お笑い以前に何を考えてるのかがわかんなかったんですよ。だからお笑い続けていくにしても、ニシダとコンビをずっと続けていくのはムリだろうなとは思ってましたね。

──しかし2018年に全国一のお笑いサークルを決める大会『NOROSH』で優勝されて。そこでラランドとしても、もっと上を目指せるみたいな機運が出てきたんでしょうか。

サーヤ いや……ニシダの意志は相変わらずまったく見えなくて。私が就職しても、ニシダはずっと大学に残ってて、何がしたいのか全然わからない。まぁ、でもふたりで漫才するのは好きだったんで、会社が休みの土日はライブに出たりしてっていうのを続けてましたね。

ニシダ 俺も大学生で暇だったんで、土日は全然やってましたね。

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──ニシダさんはサーヤさんが卒業して焦りを感じたりしなかったんですか?

ニシダ 多少は感じてたはずなんですけど、たしかにそこまで真剣には考えてなかったというか……。まぁ結果的に後輩も2個下くらいまでは見送りましたよね。

サーヤ ニシダがずっとサークルの部室にいて、「なんでニシダさんは卒業しないんだ……」って後輩たちがすごくイヤがってましたね。

──後輩に煙たがられているのに、学校に残り続けるタイプの人間でここまで成功されている方も珍しいですよね。

ニシダ お笑いサークルに限らず、部室に入り浸るような先輩は大成しないイメージありますもんね。

サーヤ よく自分でそれ言えるなぁ。いっつも不思議なんだけど、自分のこと他人事みたいにしゃべるよね。全部お前の話だよ!

──(笑)。そういうニシダさんがフラフラしている時期って、サーヤさん的には「早く進路決めてくれよ」と苛立ったりはしませんでしたか?

サーヤ それはなかったんですよね。ニシダは出会ったときから何考えてるかわかんないし、まともじゃないっていうのは知ってたので。だから私は自分のペースを乱さないように生活しながら、とりあえず土日に漫才やれればいいかって思ってました。

サーヤはなぜニシダと手を切らないのか

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──なんだかんだいっても、ニシダさんを見放さないサーヤさんが不思議だなと思うんです。サーヤさんはニシダさんとお笑いをやることに、どんな魅力を感じていたんですか?

サーヤ 魅力……? ニシダとやることの魅力……。

ニシダ そこ疑問持つなよ。

サーヤ 魅力かぁ……。ちょっと持ち帰ってもいいですか……?

ニシダ 後日回答(笑)。

サーヤ いや、でもインタビューのあともニシダのこと考えるのもダルいか……。うーん……普通に友達と楽しくしゃべってる延長で漫才ができてるって感じですかね……。いや、やっぱわかんないです。すごくきれいな言い方しちゃってるから、これ本心じゃないかも。

ニシダ 撤回が早いな……。

──逆にニシダさんは、サーヤさんがニシダさんのどこに魅力を感じていると思われますか?

ニシダ サーヤさんはニシダで一番笑う人間なんですよ。サーヤさんが本当の笑顔を引き出せるのは、たぶんニシダしかいない。言葉で直接言われたことはないですけど、そう思ってくれてるんじゃないですかね。……だよね?

サーヤ ……。

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──黙秘ですね(笑)。ちなみにラランドは、かっちりとした台本を作らないそうですね。

サーヤ 昔はそうでしたけど、最近はちゃんと台本書いた漫才もやってますね。こないだの単独では、コントの台本も書きましたよ。前はニシダが「台本に沿うと、俺っぽくなくなっちゃう」って言ってたんで、よさが消えるならアドリブっぽい感じのほうがいいかなと思ってたんですけど……。ニシダがドラマに出るようになって変わったんですよ。

ニシダ いやいや、そんなことはないですよ……。

サーヤ 俳優としてスキルを磨いて、自分の言い方ができるようになってきたというか。今は漫才もコントも、台本があってもちゃんとニシダのよさが活きるんですよ。

ニシダ どの角度から俺の俳優業イジってんだよ! まぁまぁ。でも、たしかに最近は台本にすることが増えてきて。作り方も変わってきましたねぇ。

サーヤ 何それ、まるで自分が台本書いてるみたいな言い方するじゃん(苦笑)。「作り方も変わってきましたね」って言うけど、何も書いてないでしょ。

ニシダ こういう細かい言い方のニュアンスで、インタビューを読んでる人は「ニシダもちゃんとネタ作り参加してるんだなぁ」って勘違いしてくれるからね。

サーヤ ニシダはそうやってごまかすのが本当うまいよね。

ラランド唯一の弱点とは

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──ラランドは、初ライブもウケたし、お笑いサークルでも日本一になったし、着実に売れているし、常勝というか負け知らずですね。

ニシダ 「青春アミーゴ」みたいな?

サーヤ 「地元じゃ負け知らず」。

──「今日は負けたなぁ」って思ったことありますか? 一番スベった思い出とか。

サーヤ 『笑点』(日本テレビ)かな? お客さんが全然なびかねぇなぁ、全員寝てんのかなって思いましたね。あと、『きみまろ寄席』。

ニシダ あれか……漫才協会のベテランの方が4人くらい審査員でいて。

サーヤ 80歳くらいの審査員の方々がみんな寝てましたね。それで最後に「東洋館出なさい」って言われるという、何も観てなかっただろ!みたいな(笑)。

ニシダ 懐かしいなぁ。(東京)ホテイソンさんも出てて。

サーヤ そうそう、たけるさんが備中神楽まで繰り出してハマりにいこうとしたのに、「そういうのはあんまりよくないよ」ってなぜか怒られて(笑)。

──ホテイソンさんのかわいそうなエピソードはともかく(笑)。ラランドがスベったのは、いずれも年齢がかけ離れたお客さんの前でだけ。

サーヤ たしかにそうかもしれないですね。ダダスベリって経験ないかも。まあ、大スベリしないように、直前に客層見てツカミとかネタ変えたりもするんで、スベりようがない。でも、さすがにオーバー80の人に合わせるのは難しかったですね(笑)。

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ラランド
サーヤ(1995年12月13日、東京都出身)とニシダ(1994年7月24日、山口県出身)のコンビ。2014年、上智大学のお笑いサークル「SCS」で結成。2018年『お笑いサークル団体戦 NOROSHI』に「オデッセイ」として出場し、優勝。翌年末にはアマチュアながら、『M-1』のセミファイナリストとして敗者復活戦に進出。2021年2月には個人事務所「レモンジャム」を設立。サーヤが社長に就任し、ニシダは正社員となった。YouTubeチャンネル『ララチューン【ラランド公式】』には、ネタ動画やさまざまな企画動画をアップする。『ラランド・ツキの兎』(TBSラジオ)や、『ラランドの声溜めラジオ』(GERA放送局)でラジオパーソナリティを務める。また、サーヤ単独のレギュラー番組に『トゲアリトゲナシトゲトゲ』(テレビ朝日)や『ラランド・サーヤの虎視舌舌』(文化放送)がある。

文=安里和哲 写真=青山裕企 編集=龍見咲希、田島太陽

【前編アザーカット】

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【インタビュー後編】

ラランド「“M-1出場”は売れるためじゃない」|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#6(後編)

 

若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>