女優・芋生悠が魅入られた表現の世界。“自分”になれる場所を探していた

focus on!ネクストガール

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#12 芋生 悠(前編)

旬まっ盛りな女優やタレントにアプローチする連載「focus on!ネクストガール」

芋生悠(いもう・はるか)。2014年「ジュノン・ガールズ・コンテスト」にてファイナリストに選出され、翌2015年に女優業をスタート。以降、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK2019年)や映画『左様なら』(2019年)、『ソワレ』(2020年)、『ひらいて』(2021年)など、数々の映画やドラマへ出演を重ね、今夏放送されたドラマ『あなたはだんだん欲しくなる』(BS-TBS2022年)では、連続ドラマの初主演を務めた。とてもフランクな空気をまとっている芋生さんに話を伺った。

「focus on!ネクストガール」
今まさに旬な方はもちろん、さらに今後輝いていく「ネクストガール」(女優、タレント、アーティスト等)を紹介していく、インタビュー連載。

絵を描いていくなかで知った表現するおもしろさ

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──最初に、この世界に入ったきっかけを教えてください。

芋生 「ジュノンガール」のオーディションを受けたのがきっかけですね。もともと空手や美術をやっていて。空手で選手として成功したらいいなと思った時期もあったし、美術の大学へ行って絵描きになるとか、絵を使って何かやれたらいいな……とか、いろいろと考えていくなかで、自分を見つめ直す時間が生まれて、オーディションを受けてみようと。

描く絵では自画像が多いんです。もともとは自分の内面を表現するのはあまり得意じゃなかったんですけど……絵を描いていくなかで、表現することっておもしろいなと思って。もっと(自分を)さらけ出せる場所はないのかな?って探していたら、オーディションを見つけて。それで漠然と、表現することができたらいいなという思いで応募しました。

そのオーディションの最終選考で『ロミオとジュリエット』を朗読したんですけど、そのときに初めて「私はお芝居がしたいのかもしれない」ということを思って、そこから今があるような感じです。

──なるほど。絵を描くことは、何きっかけで始めたんですか?

芋生 中学生のころ、学校の友達とあまりなじめずに美術室にこもっていることが多かったんです。美術の先生とずっとおしゃべりをしていたら、あるとき「せっかくだから絵を描いてみたら?」と言われて、それがきっかけですね。一番最初に油絵を描いたんですが、難しかったけど、すごく楽しくて。それで、高校へは美術で行こうかなと思ったりもしました。

──自画像は、クロッキーとかではなく、最初から油絵で。

芋生 はい、けっこう“油絵”が好きでしたね。クロッキーも鉛筆画も、いろいろなものが好きなんですけど、なんか油絵って失敗しても……

──上から塗れる(笑)。

芋生 そう、なんかうまくいく(笑)。何回でもやり直せるっていうのが好きですね。

──自画像って、難しいですよね?

芋生 そうですね。上手に描こうとしてもダメで、自分が本当に“何”を描こうとしているかがわかるというか……。

──自分で描いた中で、一番表現できた自画像って、どんなものでしたか?

芋生 高校に入って最初に描いた自画像です。ちょうど女優を目指そうかなって悩んでいるときに描いた絵で、自分を表現すること自体はまだ上手じゃなかったときでもあったので、自分のあまり見たくない部分なんかも(絵に)全部出ていて。その絵を見た人には「怖い」って言われるんですけど、その絵は好きですね。

──葛藤が出ていたんですかね……そんななかでオーディションを受けて、お芝居がやりたいと思ったというときのことなのですが、たとえばステージ上で発声したときに「楽しい」と思ったみたいな感じでしょうか?

芋生 オーディションのとき、スポットライトが当たっているなか、ひとりで立って、お客さんが観ているという感じがすごく気持ちよくて。自分じゃない人になるというのが、すごく新鮮で楽しかったんです。

──そして事務所に入られて……一番最初にやった仕事は覚えていますか?

芋生 最初はスガシカオさんのミュージックビデオです。

──そのときは現場に行ってみて、どうでした?

芋生 初めての現場だったんですけど、そんなに緊張はしなくて。自分に近い役だったということもあって、自然にやっていたかなと。

芝居を通じて自分になれる場所を探していた

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──その後、本格的に演技の仕事をやるにあたって、最初に「私、演じてる」って思った作品は何になります?

芋生 最初はよくわかっていなかったというか、本当に“自分”になれる場所を探していたんです。お芝居をしているときが一番生きている感じがして、ここなのかもしれないという、そういう思いでやっていたんですけど、『後家安とその妹』(2019年)という舞台をやったときに、ようやく自分探しを終えて、やっと役者としての自分が立てたというか……私は役者なんだなというのを感じました。

──舞台は人前ですよね、映像とは相当違いますか?

芋生 そうですね。あのとき(『後家安とその妹』)は2回目の舞台で、W主演な上、落語を舞台にした作品だったこともあって、自分とはかけ離れた役だったりもしたので、すごくプレッシャーがありました。ほかの手練れの役者さんたちと自分を比べてしまうし……私は今までずっと役者と言っていたけど、全然なれていなかったんだなというのを感じて、すごく悔しくて。

そんななかで、徐々に回を重ねるごとになじんでくるというか……その世界に没頭するようになって。苦しくもあったし、お芝居をしていてすごく感じるものがありました。

──なるほど。その後、映画などの出演作品で印象に残っている作品はなんですか?

芋生 最近の作品なんですが、印象に残っているのは白石(和彌)監督の『仮面ライダーBLACK SUN』です。私が役者を始めたてのころ、多くの映画をバーって観て勉強している中で、白石さんの作品が好きになって、いつかご一緒できたらいいなと思っていたので、決まったときはすごくうれしかったです。

自分の役がないと成り立たないような場面もあって、台風の目みたいな役だったんですけど……それを白石さんに任せていただいたのもうれしかったし、初めて感じる緊張感もあってすごく楽しかったですね。

──実際に現場に入ってみて、白石監督はどうでしたか?

芋生 私がお芝居を純粋に楽しんでいると、白石さんにはそれが伝わっている感じがして、指針になっていました。

──『仮面ライダー』の世界観に、今まで触れたことはありましたか?

芋生 あります! 『仮面ライダー電王』(2007年)がすごく好きで。

──佐藤健さんのライダーですね、独特な設定の。白石監督の映画で好きな作品は?

芋生 『日本で一番悪い奴ら』(2016年)がすごく好きで、映画館にも5回くらい観に行きました。バイオレンスは……血が出たりとかって、あまり好きじゃないんですけど、やっぱりエンタテインメントとしてすごく楽しめるし、でも人間ドラマもちゃんと見えるという、そのあんばいがいいなと思って。

──バイオレンスや、血を見るのは好きではないとのことですが……それこそ阪元裕吾監督の作品(『ある用務員』、2021年)なんかはバイオレンス祭りですけど、撮影現場ではどうでしたか?

芋生 血が出たりとか……そういうシーンって実際の血ではないんですけど、そういうシーンを作ろうとしているっていうのが、いい大人が遊んでいるみたいな感じがあって、現場は楽しいです。でも作品としてでき上がっちゃうと、すごく怖すぎて観れないんです。

──なるほど(笑)。『ある用務員』の撮影中に、何か印象的なことはありました?

芋生 撮影中(役柄として)私は守られている側で、次々と現れてくる刺客はみんな、どんどんクランクインしてクランクアップしていくんですけど、(私を守る)福士(誠治)さんは、ずっと現場でその刺客たちに対していろいろなアプローチでアクションをしなきゃいけないから、けっこう大変そうで。それもあって、私も何かアクションをしたくなるというか……私も参戦しますか!みたいな気持ちになっていく(笑)。

──まさに、芋生さんが空手をやってらっしゃるとプロフィールで拝見していたので、どこかで参戦するんだろうと思っていたんですよ。てっきりどこかで、芋生さんがアクションで入ってくるのかな?と思っていたら映画が終わっちゃったんで。あ、そうなんだと思って(笑)。

芋生 はい、すごく戦いたかったです。私が福士さんを守りたいみたいな(笑)。

10年やっていた空手から学んだこと

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──空手は何年くらいやられていたんですか?

芋生 10年くらいやっていました。

──何流?

芋生 松濤館。

──おー、ガチというか……。

芋生 そうですね。わりとガチです、形と組手と。

──大会へも出られていたんですか?

芋生 はい、大会にも出ていました。

──実際、空手が役に立つことってあります?

芋生 空手は、アクションをするときに役立つというのもあるし、礼儀や姿勢も学べたので。あとは精神を統一するときとか……けっこう現場で役に立ちますね。殺陣(たて)なんかはやっぱり、カメラにどれだけかっこよく見えるかみたいなものだから。武田梨奈さんと共演したときは、そういうところを学ばせてもらって「もっとカメラ側に、こう振りかぶってていいんだよ」とか、教えてもらっていました。

──将来的にはアクション作品にも出てみたいですか?

芋生 そうですね。アクションもやりたいです! 殺陣もやってみたいなって思うし。あと“弓”とか、いろんなものをやってみたいです。

「いつか母親役に挑戦したい」

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──今後は、どんな役をやってみたいですか?

芋生 そうですね……なんだろうな? 「お母さん」役はやってみたいなと、ずっと思っています。私は母親を一番リスペクトしているので、母親役はやりたいなと思います。今は娘役をやることが多くて……今年やった舞台(『広島ジャンゴ2022』、2022年)では、天海祐希さんが母親役だったんですけど、娘役をやることによって、母親ってやっぱりかっこいいなというのを感じることが多くて。母親役は、懐の深さや背中の大きさのようなものを表現しなくちゃいけないから、いつか挑戦してみたいです。

取材・文=鈴木さちひろ 撮影=時永大吾 ヘアメイク=渋谷紗矢香 編集=龍見咲希、中野 潤

 

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芋生 悠(いもう・はるか)

1997年12月18日生まれ。熊本県出身。2014年『ジュノン・ガールズ・コンテスト』にてファイナリストに選出され、翌2015年に女優業をスタート。以降、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK/2019年)や映画『ソワレ』(2020年)、『ひらいて』(2021年)など、数々の映画やドラマへ出演を重ね、今夏放送されたドラマ『あなたはだんだん欲しくなる』(BS-TBS/2022年)では、連続ドラマの初主演を務めた。

▼AmazonPrimeVideoにて世界独占配信している『仮面ライダーBLACK SUN』(全10話)に“新城ゆかり”役として出演中

【インタビュー後編】

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