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体罰についての興味深い研究・・・

投稿日:2015年06月02日 17:07

全柔連で体罰やセクハラを防ごうと冊子を作りました。私もこの制作に少しばかりお手伝い。
柔道のような武道はそれ自体に力でねじ伏せる要素を含んでいるだけに、暴力根絶といっても一筋縄ではいきません。明治時代に柔術から柔道を作った嘉納治五郎師範は、技の習得と徳の習得は別物であるといっています。

柔道が強い人は、イコール「徳」が備わってわけではないということです。

技術の鍛練と同時に、講話によって徳育をしていく必要を説いています。

スポーツ界から暴力をなくしていくために、まずは柔道から襟を正していかなくてはと、全柔連のコンプライアンス委員会やMINDプロジェクトの皆さんは一生懸命改革に着手なさっていますが、まだまだ勘違いされている市井の道場指導者もいらっしゃるようで、残念でなりません。

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ところで、暴力に関して興味深いブログを拝見しました。

脳の研究をされている篠原菊紀教授のブログです。
http://higeoyaji.at.webry.info/201304/article_3.html

篠原教授にご許可をいただき、以下にブログの内容を転載いたします。

★体罰容認の方々が引用するガンノエさんの研究。
・保守的なプロテスタントの家族と他の家族では、思春期初期の適応に与える父親の権威主義の影響が異なる。権威主義的な養育は、保守的プロテスタントではない家庭では内在的外在的問題を増やす直接的な要因となるが、保守的プロテスタント家庭ではそうはならなかった。一方で、親が宗教団体に加入することは、権威主義的養育が適応を阻害するのを和らげそこなう。こどもの能力を高めるのを援助する上で特に保守的プロテスタントの家族過程を理解することが大切。(Gonnoe 2006)
・たたくことは4~7歳の子と黒人にとってけんかを少なくし、8~11歳の子と白人ではけんかを増やす。6歳以下ではたたくことが攻撃性を高める証拠はない。8~11歳の片親の白人家庭だけが攻撃性を高める。子ども自体と家族状況がたたくことが害になるか予防的になるかを決める(Gonnoe 1997)。

★関連論文を調べると、
◎たたくことや体罰は攻撃性、問題行動、精神疾患などを増やすのか?
・他の要因を除去しても三歳での体罰が5歳での攻撃性を増す。たたく程度の体罰でも子どもの攻撃性を増す(Taylor 2010)。
・2004-2005年にかけて集められたアメリカ成人34653人のデータから、体罰(虐待を除いて)は、気分障害、不安障害、薬物乱用、人格障害のリスクを1.36-2.46倍にすることがわかりました。これは社会人口統計学的な因子や破壊的な家族史などを考慮してうえで導かれた結果です。気分障害、不安障害など臨床介入の対象となる障害(1軸障害)の2-5%、人格障害などの2軸障害の4-7%がひどい体罰に起因することもわかりました。この研究では収入が少ない方が、高卒以下の方が体罰が少ないとの結果も出ていて興味深い。(Afifi 2012)

・どの人種や民族でも初期の問題行動はたたくことを増やし、初期にたたくことは問題行動を増やす(Gershoff 2012)。
・一歳のときの母の叩きは三歳の時の子どもの攻撃性がより高くなることとかかわる。三歳の時の叩きは5歳までの攻撃性の増加を予測する。一歳初期の母親の叩きは子どもの問題行動を予測し、母がやさしくとも叩きをすることがまねくネガティブな結果を中和しない(Lee 2013)

・従来の相関係数rを用た研究では、たたくことや体罰と問題行動(内、外)、認知機能に有意な関係がありその影響は小さくなかったが、相関偏相関prを用いて解析したところ、叩きや体罰と問題行動(内、外)、認知機能に有意な相関はあるがその影響は小さくなった。したがってその影響は限定的(Ferguson 2013)。

・一歳の時のたたきは三歳の時のたたきと問題行動の外在化を増やす。三歳の時のたたきは5歳の時の内在的問題と問題の外在化を増す。一歳の時のたたきと5歳の時の行動上の問題は、3歳時点での叩きの継続に圧倒的に影響する。一歳の時のたたきと3,5歳の時の認知機能にかかわりは見いだせなかった(Maguire-Jack 2012)

・ひどい叩きを経験している子どもは、母親が報告する問題行動のレベルが高い。叩きは問題行動に先立ってか同時にかに起こり、問題行動の結果、叩きが起こるわけではない。ある年の緩い叩きは翌年のひどい叩きのリスクファクターになる。(Lansford 2012)
・人種や民族によって叩きの頻度は異なったが、叩きと問題行動は一貫して関連した。どの人種、民族も、早期の叩きは問題行動を増やし、早期の問題行動は叩きを増やした(Gershoff 2012)

◎遺伝要因を考慮すべき
・非常に多くの研究がたたくことがかえって攻撃性、精神病理性、犯罪などの結果を招くことを示す一方で、たたくことと反社会的行動の関係がすべての子に当てはまるわけではないことも示されている。双子研究から、遺伝要因がたたくことと反社会的行動に影響を与えることが分かった。また特に男性で遺伝要因と体罰が関係することが分かった(Boutwell 2011)。

補足:反社会性の遺伝率(男性思春期)63%、家庭環境17%、家庭外環境21%
・これまでの研究から親がたたくことと、子どもの自制心が問題行動の顕著な要因として指摘されている。双子を使った遺伝学的な研究から、この三者の関連は多義的であり、問題行動、体罰を受けること、自制心それぞれに遺伝要因が影響し、またその交互作用にも遺伝要因がかかわる(Barnes 2013)。

・行動抑制は極端な寡黙に特徴づけられる内在化した問題で、問題行動の外在化を防ぐ可能性がある。養育スタイルは子どもの行動抑制と問題行動のこうしたかかわりによって左右されうる。14~24か月のころ研究室で行動抑制と診断された113人について、7歳の時の母親の養育スタイルと4,7,15歳の時点での内在化または外在化した問題についての母親の自己申告を評価した。4歳時点での内在化した問題は、寛大な養育態度で育てられた行動抑制を有する子どもでもっとも多かった。さらに、権威主義的な養育態度は内在化する問題を増やすのを抑制し、外在化する問題を減らした。子ども期から思春期にわたる問題行動のパターンを縦断的に調べる場合、子ども自体と環境のふたつの因子を考慮に入れることが重要だ(Williams 2013)

◎そのほか
・体罰の効果はどういう行動に対してのものか、親としてどう位置づけられているかで決まる。体罰を重ねることに何の意味もない一方で、体罰の使用が必ずしも貧しい結果を生むとは限らない。権威主義的、命令的なのはもっと悪い(Simons 2012)

・体罰を防止する試みを行う場合、家族内で同時に起こっている攻撃性に留意すべきだ。近親者への暴力、小さな暴力、身体的ではない攻撃が子どもに体罰を行う家庭では増えている(Taylor 2010)

・昨年一年で16%の子供がひどいあるいは潜在的な虐待的しつけをうけた(Runyan 2010)。

・幼児期に虐待を受けた経験のある母親は幼児を1.5倍たたく(Chung 2009)世代間連鎖か遺伝要因の共有か。

・たたくと反社会的行動が増す関係は再確認されたが、このパターンは言ってきかすことや心理相談でも見られ、権利の制限や自分の部屋に入らせることでも部分的に当てはまった。問題行動の背景要因を考慮するとどの戦略も変わらない。方法よりいついかように行うかが重要(Larzelere 2010)。

★まとめ
・体罰は問題行動をふやすとする論文が多い。
→すくなくとも体罰で問題行動をおさえることは難しそうだ。
・個人の遺伝子、家庭の文脈によって体罰が問題行動を減らすこともある。
・遺伝要因(子と親)と、遺伝要因が環境によってどう発現するかを考慮して研究していく必要がある。
→反社会的問題行動の遺伝率が6割程度あり、家庭環境の影響が二割弱、家庭外環境が二割強とすれば、たたこうが指導しようが、どうやってもうまくいかない感覚を社会としてはそこそこ持っておく必要がある(例:うつ傾向:40%、親や教師評定自閉症傾向:7~8割)
→反社会的問題行動の出現を想定した社会づくりが必要。
→そうするとぐるっと回って罰系(体罰である必要はない)と伸ばし系のバランス、もっと大切なのは社会的支援体制が必要。

個人ベースでは、
・痛み回路がこころの痛みの理解でも共有され、他者の痛みの理解でも使われ社会的共感性の基盤をつくる。
・罰系学習(扁桃体系)と強化学習(線条体系)は異なる。
・前者は一発学習、行動消去に効き、不安様行動を伴う(扁桃体ではノルアドレナリン、分界条床核ではグルタミン酸系、島ではドーパミン系・嫌気)。
・後者はこまめな学習、行動獲得にかかわり不安を抑制する(線条体ではドーパミン系、分界条床核ではGABA系)。
・単純課題は罰系が効く、ちょっと複雑な課題では報酬系。クリエイティブな課題ではどっちもきかない、むしろ阻害要因となる。
・損失と報酬の比は2~2.5:1くらい(カーネマンら)。
・努力と才能、褒めるなら努力の方(ドゥエックら)。

一発叱ったら三回以上褒める感覚で、褒めるなら努力の方に重きを置く感覚で育て、自発化を待つ。
ま、当たり前のお話し。このとき、親や社会の介入で子どもがどうにかできるなんて直線的に思わん方がいい。どうにもならないというわけではなく、なるようになるしなるようにしかならない。親は鷹揚に構えていい。

以上

 

 

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