2010年03月14日 09:30

 トリノ王立歌劇場で8公演行ったオペラ「ピーター・グライムス」の千秋楽も無事成功に終わりました。幕の降りた舞台上で、5週間を共にした歌手やスタッフ達と別れを告げて楽屋に戻ると、廊下は沢山のオーケストラメンバーで大混雑。はじめは気づかなかったのだけれど、みんなが僕に別れの挨拶に来てくれていたのでした。そして、まるでクリスマスみたいにメンバーからのプレゼントの数々。自家製のワインや、トリノの古い街並みの版画、みんなの寄せ書き付きの記念写真…。本当に素晴らしい思い出をありがとう!この日のことは一生忘れないと思います。
 住み慣れた(笑)トリノを離れ、ベルリンで少しだけゆっくりしています。今回仕事は取材だけで、ベルリン・フィルのコンサートを聴きに行ったり、オペラを観に行ったり。もちろん美味しいものも一杯食べて、家ではDVD鑑賞をしたりと、つかの間の超高速充電です!
 というのも来週の初めにはパリに飛び、1週間後の日曜に17年間振り続けてきたパリ・ラムルー管弦楽団と実は最後のコンサートを迎えるのです。兵庫の芸術監督を引き受けたこと、題名が始まったことなどで予想していたよりもずっとスケジュールが過密になり、それでも1年のうち半分はヨーロッパでの生活ですが、活動の場が主にフランスからドイツに移って来たこともあって、今シーズンはラムルーの舞台に一度しか上がることができませんでした。僕にとってラムルーは、指揮者として育ててくれた場であり、心の底から音楽を楽しめる仲間達であり、ラジオフランスの二つのオーケストラやパリ管弦楽団という世界でもトップクラスのオーケストラの指揮台に上がるために、常に僕の背中を押し続けてくれた応援団でもありました。今も彼らと舞台を共にすることは、とても特別なことですし、首席指揮者を降りることは本当に辛いことですが、1シーズンに1回だけしか指揮台に上がらないというのは、オーケストラにとっても良いことではないので、区切りを大事にと思い、今回を最後にすることにしました。辞めることを決める前から、今シーズンはマーラーの交響曲第6番を演奏することに決めていたのですが、オケから「悲劇的」とタイトルの付いたこの曲で、われわれの17年間の歴史を終えるわけにはいかないということで、なんとマーラーは演奏会の前半になり、休憩後に、バーンスタインの代表作「キャンディード序曲」「ウェスト・サイド・ストーリー」から<シンフォニック・ダンス>を演奏し、最後はこのオケが世界初演をした曲でもある、ラヴェルの「ボレロ」で終わることになりました。演奏をする方も大変ですが、聴く方も大変。まるでフルマラソンをするようなプログラムですが、17年の思い出一杯詰まった、そしてきっと一生の思い出に残る公演になると確信しています。

 

 題名の放送は、女性アーティストによるビートルズ特集でした。男性だけのグループだったビートルズの魅力が、こうして女性の感性を通して、また違う味わいを生むというところが素晴らしかったですし、ビートルズというバンドが本物であるからこそ、長い年月を経ても色あせず、様々な光を当てることによって、益々彼らの魅力は増しているのではないでしょうか。バーンスタインが「20世紀最大の音楽家」と評した彼らの業績は、こうして次の世代にしっかりと残ったのです。
 ところで、今回はスタジオでの収録でしたが、舞台セットと照明がとても美しかったと思いませんか?普段はコンサートホールという、出来上がった空間での収録ですから、演奏の邪魔も出来ないし、かといってそのままでもつまらないということで、限られた空間を演出することに物凄く苦労しているのですが、今回は、ここぞとばかりにスタッフが腕をふるってくれました!彼らにもブラウン管の向こうからぜひブラボーと声をかけてくださいね!

 

視聴者からのコメント
2010年03月15日 10:11
K.Matz.

フランスに於ける活動、お疲れ様でした。新天地では、是非黛作品を!!私がビートルズの音楽に直接触れたのは、中学時代にブラバンの顧問にビートルズ世代の先生が新任としていらしたのが最初です。岩井さんがアレンジされた某ニューサウンズの「ハード・ディズ・ナイト」の譜面を練習したのを覚えています。それから、多数のビートルズ・ナンバーを岩井さんの譜面で演奏しました。その中でも「サムシング」は、私自身がユーフォニュームを吹いて見たくなりました。過去の番組でもビートルズ特集はありましたが、それをベースにしながらも新しい感覚による名番組だったと思います。

2010年03月14日 10:47
emiemi

トリノでの大成功、おめでとうございます。初日のライブをネットで聴いただけでも、劇場の興奮が伝わってきました。
ラムルー管との演奏も、ネット配信されないかしら・・・。
たくさんの想いが詰まった演奏は、きっと伝説になるんじゃないかしら。
小さい頃、エレクトーンを習っていて、「ヘイジュード」を弾きました。子供心に、和みを感じたのを覚えています。弾き語りにも挑戦したのですが、それが続いていればもう少し英語に強くなれたのにぃ。

2010年03月14日 10:00
サドラー2号

オペラの大成功おめでとうございます!トリノの皆さんを虜にした佐渡さんのピーター・グライムス、ぜひ生で聴きたかったなぁ~
ビートルズはやはり素晴らしいですね。若い頃は活動中のバンドに目を奪われていましたが、何年たっても色褪せない新鮮な音楽であることに、今さらながら驚かされます。ビートルズ、フォーエヴァー!皆さんのアレンジもどれもステキで、ビートルズの新しい魅力がいっぱいでしたね。
ところで、ラムルーとのラスト・コンサート、さすがは17年佐渡さんと苦楽をともにしてきただけあって、素晴らしいプログラムですね!ボレロはまた、逆ヴァージョンで演奏していってはどうでしょう?演奏者が誰もいなくなって、最後に佐渡さんだけが残るという・・・ラストコンサートにそれはやりすぎか・・・。思えば、私が佐渡さんの後援会に顔を出すようになった頃、ちょうどラムルーとのお仕事が始まったのでした。それからの大活躍は、間違いなく、ラムルーの長い歴史に新たな一時代を築かれましたね。存分にオーケストラともお客様ともお別れを惜しんできてくださいね。