2010年03月07日 09:30
トリノでの生活もすっかり慣れました。オーケストラのメンバーが代わる代わる毎日のように食事に誘ってくれるのですが、さすがイタリア人、さんざん飯食って、ワインを飲んで、グラッパを数本飲みほして、夜中に解散。彼らは、次の日の朝一番から、ワーグナーの「タンホイザー」を練習しているのですよ。オーケストラ演奏会を含めて9公演ある、今回のトリノ王立歌劇場での僕の仕事も、残すところあと2回となりました。物凄く良い批評も出たそうで、劇場のみんなも、とても喜んでくれています。この劇場の特徴は、素晴らしく物凄くチームワークが良いことなんですね。イタリアでこれまで僕は10年以上仕事をしてきましたが、今回ほど一つの街に長く住み、深くイタリアを眺めたことはなかったので、色々なことがとても新鮮でした。特にこのトリノで気がついたことは、仕事場でもみんなが挨拶をし合い、褒め合い、時には口げんかもあるのですが、それも全てお互いを認め合っているからこそであり、思うに、全てがとても自然なのです。時代の流行に流されることなく、自分の国、自分の街に誇りを持っていて、皆がそれを大事に大事に育てている、素晴らしい文化だと思いました。この夏、彼らは初めて日本に来ます。東京文化会館と横浜で公演がありますので、ぜひ聴きに行かれてはどうでしょうか!

数年前のことになりますが、思い出すと面白い縁で、僕はこの劇場と実は繋がっています。覚えていてくださっている方もいるかもしれませんが、「オーラの泉」というテレビ番組にゲストで出演した際、番組ホストの江原啓之さんから「佐渡さんの後ろに、トスカニーニが見えます」という言葉をもらったことがありました。その時僕は、あまりも偉大な指揮者の名前に大変戸惑ったのですが、その収録の数日後、やはりトリノでイタリア国立の放送オーケストラ(日本でいったらN響ですね)を指揮している時に、今回のトリノ王立歌劇場からの出演オファーを受けたのです。それで、どんな劇場なのかと見学に行って見て本当にビックリ!そこには見上げるほど大きなトスカニーニのポスターが、まるで僕を出迎えてくれたかのように飾ってあったのです。後で知ったことですが、トスカニーニが初めて指揮者についた劇場が、このトリノ王立歌劇場であり、その年は彼の没後50年の記念イヤーだったのです。更には、放送響のコンサートホールも、実はトスカニーニが作ったそうで…。超厳しいことで有名なマエストロ・トスカニーニですから、僕の演奏にはいろいろ注文があるでしょうが、これからも彼の指導霊を信じて、しっかりと勉強を続けたいと思います。

 

さて、今回の放送は『題名を考える音楽会』でしたが、お馴染クレーマーちさこ教授に加え、助手の加羽沢さんもなかなか良い味を出していました!新キャラクターの登場ですね。確かに、既に付けられている題名から、音楽のイメージが決まってしまい、聴く人の発想が自由になれないということが言えると思います。音楽はとても自由な創造物です。こうした取り組みは、知識で頭でっかちになりがちなクラシックファンにとっては、新鮮だったのではないでしょうか。なかなか難しいかもしれませんが、皆さんどうぞ自分のお好きなように、素晴らしい音楽を心から楽しんでください!

 

視聴者からのコメント
2010年03月12日 13:30
M。

勝手につけられた題名でも、親しみを感じて曲の印象も強くなります。クラシックの第〇番〇〇長(短)調といわれても何の曲か覚えられなくて。ベートーベンの交響曲でも3・5・6・9は子供の時から知っていても、第7番はあんなに素晴らしい曲なのに、あまり知りませんでしたから。
「G線上のアリア」この題名をオルゴールで知り(!題名独り歩き?)最近は組曲のエアーとして聴きますが、本当にG線でひかれたのは初めてみたような気が。すてきな演奏でした。
トリノ王立歌劇場日本公演の「ラ ボエーム」には森麻季さんがムゼッタ役で出演予定、先日リサイタルで「ムゼッタのワルツ」を聴きました。今週DVDの整理をしていたら、過去の「題名」に佐渡さんがメインで出演された時、森さんが歌われていました。いろいろつながりがありますね。

2010年03月08日 11:16
あると・まま

笑い転げながら観させていただきました。身支度をしていた娘もついつい手を止めて、テレビの前に座り込んでいました。とっても楽しかったです!
「大都会」もなるほどでしたが、私はちさこ教授の「あけてよ~」が頭から離れません。今後この曲を聴くたびに、ドンドンと戸をたたく子どもの姿が目に浮かぶことでしょう。
またぜひ第2回目をお願いいたします。
とても厳しい(怖~い)イメージのトスカニーニですが、実は佐渡さんのようにおちゃめな面もおありだったのかしら、とふと思いました。「題名…」みたいな番組をやってみたかった、とか。

2010年03月07日 22:32
サドラー2号

うわぁ、びっくり!
ちょうど昨日、HDDの中を整理しようと思って、佐渡さんがご出演の「オーラの泉」をDVDにダビングしながら見直していて、「そういや、トスカニーニの後を追え、って話はどうなってるんだろう」と考えていたばかりなんですよ!!まさか、佐渡さんからその後日談をここで伺えるとは・・・。驚きました。巨匠トスカニーニ、トリノに佐渡さんがいらしたとき、きっと「ここまでよく来たね」って出迎えてくださったんですね。
クレーマーちさこ教授の舌鋒はますます鋭く、絶好調ですね。
「雨だれ」がそのまんま、っていうのも納得できる話で、私もあれは雨だれにしか聴こえないです(^^;;;;;;;;
でも、最近では「運命」は上海太郎さんのCDのおかげで「朝ごは~ん」って聴こえて困るんですけど・・・。

2010年03月07日 21:58
クラリ

題名のない音楽会のはずが題名を考える音楽会に!
こんなユニークな音楽会もあるんですね。
日曜日の朝から大いに笑い楽しませてただきました。
さぞかし天国でベートーベンも喜んでいることでしょう。

2010年03月07日 17:17
40年来のファン

運命と名づけられたおかげで、最近ラメーンのCMに使われちゃいましたね。改名された
大都会といっても、その路地裏の屋台ラメーン。第一楽章の後半で、オーボエ(チャルメラ)
短いカデンツァありますね。こうゆう運命になろうとは、ベートーベンも予測出来なかった
のでしょう。
G線上のアリア、ヴァイオリン独奏では、久しぶり。もっぱら、第三組曲でした。
音域が随分低く感じました。

2010年03月07日 12:18
トクちゃん

佐渡さんとトスカニーニ・・・すごく素敵なお話です♪
今日はちさ子教授、そして加羽沢助手!本当に良い味出してましたね~!
ところで平原綾香さんと藤澤ノリマサさんがバッハの「G線上のアリア」をモチーフにした「Air」という曲をデュエットしてるんですよ。こちらも良い曲です♪
来週の挾間美帆さん・・・兵庫県立芸術文化センターでもおなじみの・・・楽しみです♪

2010年03月07日 09:49
K.Matz.

バッハの「エア」に対する“G線上のアリア”とういタイトルが相応しいのは、このヴィルヘルミのアレンジ版のみなのですね。この版で初めて聴きましたが、ちさ子さんの素晴しい演奏もありいいアレンジだと思いました。ヴィルヘルミさん、よく思いついたものです。
この番組にこのタイトルをつけたのは、黛さんなんですよね。