2009年05月10日 09:30
フライブルグから一旦ベルリンに戻り、数日後に次の公演先、フランクフルトに移動しました。こちらの新幹線ICEでベルリンから約4時間。移動はとても快適でしたが、ヨーロッパで電車に乗るたびに、指揮者として駆け出しだった頃のことを思い出して胸がキュンとします。地球の反対側に渡り、音楽の本場ヨーロッパで自分の夢が実現できるのかどうか、自分にも自信がないし、不安を一杯抱えながら、コンクールやオーディションに参加するための移動に使ったのが夜行列車だったからです。車窓から見える穏やかで美しいヨーロッパの景色とは対照的に、心の中で「頑張れ!」と、何度も何度も自分を励まし、また結果が悪かった帰路などは、自信喪失し落ち込んで、考えこんで、悶々と過ごした夜行列車の長い夜のことをありありと思い出します。もう20年以上も前のことですが、こういう記憶は感覚的に、深く身体に刻まれているものなのですね。フランクフルト歌劇場のオーケストラとは楽しい練習を繰り返し、今日と明日が本番です。こうしたトラウマも、昔話として笑って話せる良い演奏会になればと思います。
 
さて、今回は名曲百選。ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」の第2楽章をメインにお送りしました。番組内でも紹介しましたが、僕には6歳年上の兄がいて、彼はなかなかクラシックを聞かないのです。子供の時は僕よりピアノが上手く、本人も決して音楽が嫌いなわけではないと思うのだけれど、まあ、堅苦しいことが徹底して嫌いなのと、子供の頃に、長男だからというので、母親が音楽教育に力を入れすぎた。それでその反動なのか、ピアノには一切触らなくなり、僕の演奏会にもたった一度だけ野外コンサートに来たものの、それはそれは良く眠れたそうです…。その時の楽屋での兄貴の言葉「裕って凄いなぁ、俺が目を覚ましたら、みんな一杯拍手してたぞ!」大物です。それでも僕と兄貴はとても仲が良く、年に何回かはゴルフに行くのですが、コースに着くまでのドライブの時間が我々を繋ぐ大事な時間なわけです。親のこと、子供の頃の思い出話、仕事のことなど、色々おしゃべりをするわけですが、先日初めて兄貴の方から音楽の話が出たのです。「俺な、最近クラシックが好きなんや」僕の夜行電車のトラウマどころではないぐらい、大きな壁であっただろうクラシックを、兄貴が好きと言っている!!これは僕にとっては、とても大きな驚きでした。「新世界やってくれよ。あれはええ曲やわ~。」そんな家族の個人的なリクエストで実現した番組ですが、テレビを観てくださっている方たちの中にもきっと、まだまだクラシックは堅苦しいと感じている方は多いのではないでしょうか?そうした方に新しいページを1枚めくってもらう大きなチャンスが作れたかなぁと思います。ちょうどベルリン・ドイツ交響楽団と「新世界より」ライブ録音した新しいCDが発売されましたので、今度はそれをお土産に、兄貴をゴルフに誘いたいと思います。
 
視聴者からのコメント
2009年05月20日 00:40
おたふく

よいご兄弟ですね。
お母様からのお仕着せではなく、長い年月をかけて自らクラシックを好きだと言えるようになったお兄様のお気持ちのなかには、あらためてお母様への感謝と、粉骨砕身にしてクラシックと向き合っている弟様への深い愛情を感じました。
Alte Operさまのフランクフルトでのコンサートのレポートも、とても楽しく読ませていただきました。

2009年05月13日 11:23
いしかわ

今回の「新世界より」は本当に日本の人々に知れ渡っていますよね。ドヴォルザークが書いたなんてことを知ってる人はまあ、普通いないでしょうけど、家路はだれもが知っているし、第四楽章も聴けば、こいつは!と思うと思います。かく言う私もそうでした。

それにしても第二楽章のあの途切れる部分はなんとも不思議です。何を意図して何も鳴らさない時間を指示したのかはとても気になります。ここで浮かぶ印象は人によって様々だと思いますが、私は少し不安がよぎった気がします。あれ?どうしたんだろう?というような感じです。どきりとします。そしてまた音楽が流れ出したかと思ったらすぐ鳴り止む。はれ? でもここで心を揺り動かされている時点で術中にはまっているのかもしれません。流石です。

このときの収録、じつは葉書があたったので聴きに行かせてもらいました。でも、やっぱり生で聴くのとTVで見るのとは本当に違うような気がします。なにかまた別の体験をしているように感じられました。やっぱり音楽って本当に一期一会なものなんだなぁと実感しました。

それと、誕生日おめでとうございます。これからもがんばって応援します!私も今月の今日の日付をひっくり返した日が誕生日なので、自分に佐渡さんのCDをちょっと早いけど今日プレゼントしたいと思います。ていうかもう発売していたのか・・・。大きな誤算!

2009年05月11日 14:04
40年来のファン

5音音階とは聞いてましたが、シが出現してたんですか。給与3倍も初耳でした。
ドヴォルザークが交響曲を沢山作曲したのは、チャイコフスキー同様相性がよかった
からでしょうか。スメタナ、ヤナーチェクはせいぜい一曲。
黛さん、涅槃、曼荼羅、交響曲ですが、形式は大分違いますね。
9番も然る事ながら、その他の交響曲もいいですね。
青島ドヴォルザークさん、髭はそっくり、髪量不足でした。

2009年05月11日 06:57
Alte Oper

フランクフルト在住の者です。
今日(5月10日)のコンサート聴きに行きました!最初の室内楽、ワルツの様なリズムのところで佐渡さんの指揮にあわせ自分も体が揺れていました。お隣に座っていた老婦人が素敵ってドイツ語で言っていました。チェロは若い音が出ていましたね。これからが楽しみです。アンコールのバッハが良かった。そして第7番、オケの良いところが120パーセント出ていたんじゃないでしょうか。佐渡さんとの信頼感が伝わってきました。(生意気ですみません)音がアルテオーパー一杯にきらびやかに輝いて聴こえました。本当に素晴らしかったです。帰り掛けカフェに寄ると皆プログラムの佐渡さんのページをひらいて読んでいましたよ。なんだか自分のことの様に嬉しかったです。今日は心に残る演奏会でした。ありがとうございます。また度々いらしてください。ご活躍をお祈りしております。

2009年05月11日 01:22
Miyabi

「ベートーベンの次に有名な第九番」と言われると、確かにうなずけます。
今回のお話を聴いて佐渡さんの新世界のCDを聴いていると、昨日までよりもますますジーンとする深い音に聴こえます♪
またいつか生で聴かせて下さ~い。

2009年05月10日 22:14
サドラー2号

佐渡さんの最新CDの「新世界」を毎日通勤の往復車中で繰り返し繰り返し聴いています。1楽章から4楽章、どこをとっても素晴らしい!1佐渡さんの「新世界」は何度もコンサートで聴いているはずなんですが、当時も佐渡さんの演奏には感動してワクワクしてドキドキしたはずですが、今回のCDの演奏は当時とは比べ物にならないくらい、すごいです。「佐渡さんらしさ」というか「佐渡さんの音色」は当時も今も変わってないように感じますが、当時と比べて、各パートの音が全部整理されそれぞれにきちんと自己主張しながらも全体がまとまっている、そんな印象を持ちました。「新世界」が素晴らしい曲なのはもちろんですが、佐渡さんの指揮の素晴らしさ!!これはぜひ、この感動を生で味わいたい!また久しぶりに「新世界」をコンサートで聴かせていただきたいものです。

2009年05月10日 13:24
みこ

初めてコメントさせていただきます。
こんにちは!!

「新世界より」2楽章の美しいメロディーがこの曲であることは以前から知っていましたが、
CMなどでよく耳にする4楽章冒頭部分もこの曲だとは最近まで知らず、
知ったときには驚いてすぐCDを手に入れて聴きまくりました。
もぎぎさんの「くわしっく名曲ガイド」でのナビゲートを元に全曲通して聴くと
また改めてこの曲が好きになり、
そういう時にこちらの番組で聴かせていただいて、
指揮や演奏の方々の様子も見られて、
非常に嬉しかったです!!

朝から幸せ気分です♪
ありがとうございました!
CD、買わせていただきます!!

2009年05月10日 10:54
naikun

私が5歳くらいの頃、父が聴いていた「家路」がとても好きで、レコード盤を傷つけないよう必死で針を落としながらこっそり勝手に何度も聴いた思い出があります。高校の頃には吹奏楽で第一楽章を演奏したこともあり、「新世界」は一番好きな曲です。今日まではバーンスタイン指揮・イスラエルフィルのCDが一番のお気に入りだったんですけど、佐渡さんの第二楽章に感動したので、ぜひ全曲を佐渡さんの演奏で聴きたいと思いました。

2009年05月10日 10:34
ひまわり

佐渡さんご一家は、生なカタチで音楽に接している様なのですね、家風だから、と言う理由でみんな音楽をやり、その割にはたいしたことはない、と言うご一家もお有りのようですが!

2009年05月10日 10:10
しのママ

『新世界より』は中学・高校の音楽の鑑賞で聞き、初オーケストラは小沢征爾さんの『新世界』でした。しばらくぶりで聞いたのですが、解説をいただくと、違った側面かrも「脳」が活性化されますネ!

2009年05月10日 09:59
naikun

父が聴いていたレコードの中の「家路」に惚れ込んでこっそり何度も聴いたのは私が5歳の頃でした。中学生のとき吹奏楽で第一楽章を演奏したこともあって、「新世界より」は思い入れの深い曲です。でも、佐渡さんの指揮で聴くといつもその曲に新しい発見があって、より深く感動させられます。リクエストしてくださったお兄様に感謝です。

2009年05月10日 09:56
rumirumi

”新世界”の演奏を聴いて、朝から癒しの気分に浸れました。
やはり、いい曲ですね。佐渡さんのお兄さんの気持ちがわかります。
早速、佐渡さんの新CDを購入して、聴こうと思います。

2009年05月10日 09:40
emiemi

「家路」は小学生のときの放課後を思い出させます。そして、この曲が日本の曲でないのを知った時はびっくりしましたぁ。
今から、改めて新CDの「新世界」聴きます♪

2009年05月10日 09:30
げ@一介のリスナー

遠く離れた異国から望郷の念をこめて祖国へ馳せる思い。新たに体験する異国情緒から受ける官能的な刺激。そして日々を過ごす異国の中でも故なく蔑ろにされている民族的弱者への労り。それらが綯い合わさったところにこの名曲が誕生したわけですね。

この郷愁の響きは本当に美しい。