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劇場支配人の音楽会

投稿日:2017年04月02日 09:30

名音楽家あるところに名プロデューサーあり。才人にはしばしばその真価を見抜いて世に知らしめてくれるパートナーがそばにいるもの。今週は「劇場支配人の音楽会」。新たに司会に就任した石丸幹二さんが、これからの番組で魅力あふれる作品やアーティストを見出していきたいという思いを込めて、初回はこのテーマでお送りいたしました。
 歴史に名を残した芸術プロデューサーとして、まっさきに名前が挙がるのがディアギレフでしょう。ディアギレフが主宰したロシア・バレエ団(バレエ・リュス)は当代随一の画家や音楽家も巻き込みながら、パリで大成功を収めました。ディアギレフはサンクトペテルブルクで演奏されたストラヴィンスキーの最初期の小作品「花火」「幻想的スケルツォ」を聴いて感銘を受け、彼にロシア民話の火の鳥の題材とした大規模なバレエ音楽を書くように依頼します。「火の鳥」作曲時のストラヴィンスキーは28歳。この若者がその後20世紀音楽の中心的人物として次々と傑作を残すことになったわけです。まさしく慧眼ですね。
 あのザルツブルク音楽祭の設立にもかかわったマックス・ラインハルトも名プロデューサーのひとり。ヨーロッパで早熟の天才として知られていたコルンゴルトをハリウッドに招き入れました。
 コルンゴルトは近年、再評価が進んでいる作曲家です。オペラ「死の都」が2014年に新国立劇場で上演されて話題を呼んだのは記憶に新しいところ。また、番組で小林美樹さんがすばらしいソロを披露してくれたヴァイオリン協奏曲は、この10年ほどの間に演奏頻度がぐっと高まってきているように感じます。別の言い方をすれば、この曲をレパートリーとするヴァイオリニストが増えてきたといえるでしょうか。
 今回は第3楽章が演奏されましたが、機会があればぜひ全曲を聴いてみてください。むせかえるような濃密なロマンとみずみずしいポエジーにあふれた大傑作だと思います。

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2500回記念④ 歴史を彩る音楽会

投稿日:2017年02月26日 09:30

番組2500回記念シリーズの掉尾を飾るのは「歴史を彩る音楽会」。クラシック界を担う若きスター奏者のみなさんが一堂に会して、アンサンブルを組んでくれました。超優秀な奏者たちがひしめく若い世代を代表するような豪華メンバーが勢ぞろい。みなさん、本当に上手いですよね。あのメンデルスゾーンの弦楽八重奏曲ときたら! あれだけ細部まで彫琢された精妙な演奏はめったに聴けるものではありません。
 メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲は、よく音楽祭などで演奏される名曲です。室内楽というと多くの作曲家が弦楽四重奏の名曲を書いていますが、八重奏が書かれることはまれなこと。弦楽四重奏団2つ分の奏者が必要になりますので、本来演奏機会は限られているのですが、なにしろ曲がとてつもなくすばらしい(これを16歳の年に書いたメンデルスゾーンの早熟ぶりには驚嘆するしかありません)。ですので、弦楽器の名手がたくさん集まる機会があると、せっかくだからこの曲を演奏しようということになります。番組収録中に奏者の方々もおっしゃっていましたが、いつかこのメンバーで全曲演奏するところを聴いてみたいものです。
 ショパンのピアノ協奏曲第1番では、辻井伸行さんのピアノや川瀬賢太郎さんの指揮も加わって、いっそう華やかなアンサンブルがくりひろげられました。本来はピアノとオーケストラのための作品ですが、今回は室内楽編成に編曲してのショパン。こういったピアノ協奏曲を室内楽編成で演奏する試みは19世紀にも行われていました。なるほど、小編成には小編成の魅力があるということに気づかされます。個々の奏者間の対話の要素が強まり、奏者たちの技量の高さがしっかりと伝わってきます。辻井さんの華麗なピアノと川瀬さんのキレのある指揮ぶりのコントラストも絶妙の味わいを生み出していました。

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プリンセスの音楽会

投稿日:2015年12月20日 09:30

 今週はディズニー映画を彩る名曲をたっぷりと聴くことができました。ディズニープリンセスの大メドレーがありましたが、改めてディズニーは名曲の宝庫だと実感します。五嶋龍さん、小林美樹さん、塚越慎子さんをはじめ、大勢のアーティストたちがすてきな演奏を聴かせてくれました。特に印象に残ったのはトロンボーンの中川英二郎さん。トロンボーンって、あんなにまろやかで優しい音色が出せるんですね。

 来年、2016年にウォルト・ディズニーは没後50年を迎えます。映像と音楽のコラボレーションに関して、ウォルト・ディズニーほどの先駆者はいません。番組中でも紹介された映画「ファンタジア」が公開されたのは1940年のこと。もう75年も前の作品です。

 映画「ファンタジア」では、アニメーションとクラシックの名曲を高いレベルで融合させて、それまでにない芸術としての鑑賞に耐える映像作品が生み出されました。とりわけ有名なのはデュカス作曲「魔法使いの弟子」の場面でしょうか。ミッキーマウスが見習い魔法使いに扮して出演して、魔法の力でほうきに水汲みをさせようとしますが、魔法の止め方がわからずに水浸しになって一大事に。ユーモラスなストーリーは原曲に添ったものです。

 音楽と映像のコラボレーションを重視するウォルトの姿勢は、その後のディズニー作品にも引き継がれています。1959年のアニメ映画「眠れる森の美女」では、同じ童話を題材としたチャイコフスキーのバレエ音楽が用いられました。主題歌となったオーロラ姫の「いつか夢で」は、このチャイコフスキーのバレエに登場する「ワルツ」に歌詞を添えたものですが、もしかするとディズニー名曲として原曲以上に広く親しまれているかもしれませんね。

 ちなみにこの曲は、2014年公開の映画「マレフィセント」でも使われていました。こちらは「眠れる森の美女」のアップデート・バージョンとでもいいましょうか、原作では悪役だった魔女が主役になっています。同じワルツのメロディが、ダークな雰囲気でアレンジされていたのが見事でした。

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