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フィギュアスケートの音楽会

投稿日:2015年12月13日 09:30

 毎年、フィギュアスケートの新シーズンが開幕すると、今年はどんな音楽が使われるのだろうかと気になります。フィギュアをきっかけに曲を好きになるというケースもよくありますよね。

 今シーズン、特に注目していたのは浅田真央選手がフリーで使用している「蝶々夫人」のアリア「ある晴れた日に」。イタリアの代表的な作曲家プッチーニが書いたオペラ「蝶々夫人」は、明治時代の長崎を舞台にしています。名家の生まれながら、15歳にして芸者となってしまった蝶々さんは、アメリカ海軍士官ピンカートンと結婚します。幸せいっぱいの蝶々さん。ところがピンカートンにしてみれば、蝶々さんは現地妻でしかありません。日本で結婚式まで挙げたのに、赴任期間が終わるとアメリカにいる本当の婚約者のもとへとさっさと帰ってしまいます。

 捨てられたにもかかわらず、蝶々さんはピンカートンを信じて夫の帰りを待ちます。アリア「ある晴れた日に」で歌われるのは、そんな蝶々さんの純粋な思い。浅田真央選手の演技では、序奏が鳴りだした瞬間から、すでに蝶々さんの一途な思いが表情にあらわれていたように感じます。

 それにしてもピンカートンって、ひどい男ですよね。プッチーニのオペラには、こんなふうにヒロインがかわいそうな目にあう話がたくさんあります。蝶々さんも最後はピンカートンとの間に生まれた子に別れを告げて、切腹してしまいます(劇場だとここで啜り泣きが漏れます)。

 「蝶々夫人」を書いた後、現実のプッチーニの身辺にも悲劇が訪れます。プッチーニの妻エルヴィーラが、小間使の少女とプッチーニとの不倫を疑ったのです。嫉妬深いエルヴィーラに追いつめられて、少女は自らの命を絶ってしまいました。事件は法廷に持ち込まれ、少女は無実だったという判決が下されます。プッチーニはこの事件に傷つき、それまでに書いてきた「かわいそうな少女の悲劇」を書けなくなってしまいました……。

 ところで、フィギュアスケートでクラシックの名曲を使うときは、演技に合わせて曲の一部をカットしたり、つなぎ合わせたりすることが一般的です。今回は演技映像に合わせての生演奏ということで、そういったカットも含めて忠実に再現されていました。映像と演奏がぴたりと同期していたのがすごかったですね。

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