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藤田真央がモーツァルトのピアノ・ソナタを弾く音楽会

投稿日:2020年12月05日 10:30

今週は国際的に活躍する若手ピアニスト、藤田真央さんの演奏によるモーツァルトのピアノ・ソナタをお楽しみいただきました。以前、辻井伸行さんにベートーヴェンのピアノ・ソナタに独自の視点からタイトルを付けてもらいましたが、今回も同様に真央さんならではの視点で名曲に新たなタイトルが添えられました。
 実はモーツァルトのピアノ・ソナタは同じ曲でもいろいろな名前で呼ばれています。たとえば、今回最初に演奏されたピアノ・ソナタ ハ長調K.545。モーツァルトに詳しい方は「ケッヘル545」などと呼びます。ケッヘル番号とは一種の作品番号で、この番号があれば確実に曲を特定できます。でも3桁の数字って、なかなか覚えられないんですよね。CDではこの曲を「ピアノ・ソナタ第15番ハ長調K.545」と表記することが多いと思います。ところが、同じ曲を最近「ピアノ・ソナタ第16番」と表記するケースも目立ってきました。数え方の違いで番号が変わってしまったのですが、これでは混乱してしまいます。番号ではなく、「ハ長調ソナタ」のように調で区別する方法もあります。でもモーツァルトのソナタにはハ長調がいくつもあって、これだけでは曲を特定できません。
 そんな事情もあって、この曲に愛称がついていればいいのにな……と思うこともしばしば。これからは真央さん流に、この曲を「天真爛漫」と呼ぶことにしたい!と思ってしまいました。
 しかも真央さんの演奏は「天真爛漫」と呼ぶにふさわしい自然体のモーツァルト。歯切れよく軽快で、しかも情感豊か。モーツァルトを得意のレパートリーとするピアニストは限られていますが、真央さんはそのひとりとして今後ますます活躍の場を広げてくれそうです。
 ピアノ・ソナタ イ短調K.310は「満身創痍」、ピアノ・ソナタ 変ロ長調K.281は「温故知新」。これも真央さんの説明を聞いて納得。四字熟語でそろえているのがおもしろいですね。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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