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ピアノ界のスーパースターが20年かけて挑んだ曲を聴く音楽会

投稿日:2020年08月08日 10:30

今週はピアノ界のスーパースター、ラン・ランをお迎えしました。今、ラン・ランが取り組んでいるのは、バッハの難曲「ゴルトベルク変奏曲」。これは演奏家にとって特別な作品です。プロのピアニストでもこの曲をレパートリーに入れている人は決して多くはありません。鈴木優人さんが説明してくださってように、この曲は本来、2段鍵盤のチェンバロのために書かれた作品。バッハの時代にはまだ現代の私たちが知るようなピアノはありませんでしたので、バッハの作品はどれもピアノ用には書かれていません。「ゴルトベルク変奏曲」を現代のピアノでバッハを弾くためには、さまざまな工夫が必要になってきます。
 しかも「ゴルトベルク変奏曲」は大作です。曲は簡潔な「アリア」でスタートします。その後、30曲もの多彩な変奏が続き、最後にまた冒頭の「アリア」が帰ってきます。全曲の演奏時間は50分から100分程度(楽譜上の反復を忠実にするか、省略するかで大幅に長さが違ってきます)。かなり長い曲ですので、リサイタルでは「ゴルトベルク変奏曲」一曲のみでプログラムが組まれていることも珍しくありません。お客さんもこの曲を聴きに来るときは「今日は特別な大作を聴くのだ!」という相当な期待と覚悟をもって集まってきます。最後に「アリア」が戻ってくるときには、まるで旅から帰ってきたかのようなしみじみとした感慨がわき起こります。機会があればぜひ全曲を聴いてみてください。
 バッハはとても古い時代の作品ですが、ヤン・ティルセン作曲の「アメリのワルツ」は現代の名曲です。2001年に大ブームとなったジャン=ピエール・ジュネ監督のフランス映画「アメリ」で用いられました。その後、「アメリのワルツ」はピアノピースとして広く人気を獲得しています。今ではもとの映画は知らないけれど、曲は知っているという方も少なくないのではないでしょうか。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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