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映画音楽の秘密がわかる音楽会

投稿日:2020年03月21日 10:30

今週は映画音楽の名曲に込められた秘密を探ってみました。聴きなじんだあの曲に、そんな創意工夫が盛り込まれていたとは!
 映画「007」の「ジェームズ・ボンドのテーマ」の秘密はリズム。ギターが奏でる短いリズムの反復が聴く人を引き込みます。角田さんがおっしゃるように、ラヴェルの「ボレロ」と似た効果があるんですよね。
 同じスパイ映画でも「ミッション:インポッシブル」は、あえて不安定な5拍子を採用することで緊迫感を高めています。ハラハラドキドキの映画だから5拍子。クラシック音楽でも5拍子の名曲はいくつもあります。チャイコフスキーの「悲愴」第2楽章は5拍子のワルツで寂寞とした味わいを生み出していますし、ラフマニノフの交響詩「死の島」では海が5拍子で波打って不気味さを演出します。
 映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」は8分の6拍子で波を表現しています。これも波や川の流れを表現する際によく使われる拍子。スメタナの「モルダウ」をはじめ、ショパンやメンデルスゾーンの「舟歌」などでも8分の6拍子が用いられています。
 「ロッキー」のテーマで印象的なのは、なんといってもトランペットでしょう。トランペットは歴史的に軍楽隊に欠かせない楽器であり、ファンファーレのための楽器でもありました。ヴェルディのオペラ「アイーダ」など、勝利の場面で高らかに鳴らされるのはいつもトランペット。だから「ロッキー」のテーマは、音楽が勝利を予告しているとも言えます。
 映画「ハリー・ポッター」のチェレスタの音色には、どこか現実離れした雰囲気があります。チャイコフスキーはほかの作曲家に先駆けて、バレエ「くるみ割り人形」の「こんぺい糖の踊り」でこの楽器を使いました。「くるみ割り人形」が大ヒットしたため、世界中のオーケストラがこの曲を演奏しようと、チェレスタを買い求めました。チェレスタが世界中に広まったのは、チャイコフスキーのおかげと言ってもいいでしょう。

飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)

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