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バッハの謎を知る休日

投稿日:2017年06月25日 09:30

まさかあの有名な肖像画にそんな秘密が隠されていたなんて。そう思った方も多いのでは。本日は「バッハの謎を知る休日」。もっとも有名なバッハの肖像画に描かれている小さな楽譜の秘密を探りました。
 あの肖像でバッハの手にしていた楽譜が、本当に演奏可能な作品だったとは驚きです。なにしろ、「カノン」と題されているのに、楽譜を見てもどこがカノンなのかよくわかりません。しかも「6声」と題されているにもかかわらず、書かれているのは「3声」分の音符のみ。見慣れない記号まであって、読み方がわかりません。しかし、あの曲が題名通り「6声の三重カノン」として再現できることを、鈴木優人さんが鮮やかに解いてくれました。
 楽譜を上下反転させるなんて、普通は思いつきませんよね。このように先行声部に対して後続声部が反行形で模倣するものを反行カノンと呼びます。ほかに後続声部が先行声部を逆行して模倣する逆行カノン(蟹のカノン)といった例もあります。カノンの手法は主に古い時代の作曲家たちによって使われ、バッハより後の時代になるとごく限られた場面でしか用いられなくなりました。
 パズルのようなロジックでできた音楽ですが、演奏を聴けばわかるように、「6声の三重カノン」は美しい音楽になっています。このあたりがバッハの非凡なところ。いくら複雑で緻密な構造を持っていても、耳で聴いて喜びがなければ芸術作品とはいえません。
 カノンやフーガのように、複数のメロディをそれぞれの独立性を保ちつつ組み合わせる作曲技法を対位法と呼びます。その対位法の大家であるバッハの究極の作品のひとつが、最後に演奏された「音楽の捧げ物」より「6声のリチェルカーレ」。各パートが複雑に絡み合って眩暈がするような立体感を生み出しつつ、全体の響きは玄妙で味わい深い。これぞバッハの魅力でしょう。

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