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2026年1月31日睦月の肆

岡山・倉敷市編
~茶の湯の町 もてなし庵~

舞台は岡山県倉敷市。古くからお茶の文化が息づく玉島地区で、懐石料理とお茶でもてなす、“お茶事(ちゃじ)”の店を始めた佐藤和正さん(62歳)と、妻の佳美さん(60歳)が主人公です。
岡山県岡山市出身の和正さん。20歳で農林水産省に入省し、山口県、東京都、埼玉県、北海道で勤務し、47歳で故郷の岡山県に赴任しました。その時に玉島出身で当時介護福祉士をしていた佳美さんとお見合いで出会い、和正さん51歳、佳美さん49歳で結婚。結婚後、直ぐに東京勤務となったが佳美さんに支えられ和正さんは仕事に邁進します。そんな和正さん、独身時代から陶磁器の収集が趣味でした。休日になると蚤の市や骨董市に足を運び、陶磁器を買い集め自宅で鑑賞していたそうです。やがて、その趣味は器を愛でる茶道へとつながっていきます。さらに、和正さんは料理も趣味に…。
そのきっかけは、仕事で大勢の部下を抱えた時に、上司から「部下の気持ちを知るには、胃袋を掴め」と助言をもらい、部下を自宅に招いては手料理を振る舞うことで、様々な料理を作るようになりました。そんな和正さんに転機が訪れます。それは、定年退職後、佳美さんの希望で倉敷市玉島へ移住したことが発端でした。かつて北前船の寄港地として栄えた玉島は、商談の場として茶室が沢山つくられ、お茶文化が深く息づく町でした。そのことを知った和正さんは「そうだ、ここで得意な料理とお茶をいかした“お茶事”の店を始めよう」と思い立ちます。こうして自宅を改装し、去年3月『備中玉島湊鐡屋 わたしのお茶事 和佳』を開業しました。
“お茶事”は千利休が原型を作ったと云われ、濃茶を空腹に飲むと本来の味を味わえないために、お茶の前に懐石料理を出したのが始まりと云われています。食事の途中にお酒も振る舞うなど、4時間以上かけて行われるのが正式なのだそうですが、気軽にお茶事を味わって欲しいと和正さんは2時間を目途にもてなしをしています。
お茶事を通して、おもてなしの心と日本固有の茶の湯文化を伝え、玉島地区を盛り立てたいと頑張る和正さんと明るく支える妻の佳美さんの姿。そして、お茶事でつながった玉島の人たちとの交流を紹介します。

『備中玉島湊鐡屋 わたしのお茶事 和佳』では、正座ではなくテーブルとイスで気軽にお茶事を楽しむことができます。「釜で湯が沸く音を聞きながら、気持ちをリセットして、次につながって行くような場所にしてほしい」と和正さんはいいます。穏やかな気持ちで食事をして、庭を眺めながらお茶をいただく。慌ただしい日々の中で、心身ともにリラックスさせてくれる素敵な時間です。

お客様をもてなす準備は前日から始めます。食材は地元・玉島地区の物にこだわり、豆腐、醤油、日本酒は長年愛されてきた老舗で購入。そして野菜は有機栽培のものを可能な範囲で取り入れます。和正さんは生産者の思いもお客様に伝えたいと、実際に畑まで足を運ぶほど。全ては玉島の良い物を多くの人に知って欲しい、その思いからです。

夕食時、佳美さんにある質問をしました。自宅でお店を開くことに抵抗はなかったですか?と。すると佳美さんは「最初は自宅に知らない人が来るのが嫌だなと思った。でも私が反対したら、夫は諦めてしまう。後で後悔して欲しくなかった…」そう話してくれました。第二の人生をスタートさせた和正さんを優しく支えている佳美さんです。2人とも「今、幸せ度200パーセント!」と笑顔。結婚12年目、まだまだ初々しいお二人です。

玉島地区は、かつて北前船の寄港地だった港町。商談の場として沢山の茶室がつくられ茶の湯文化が広まりました。和正さんは、そんな玉島の歴史を多くの人に知って欲しいと、お客様の要望があれば町の案内もしています。お茶文化とともに栄えた老舗の和菓子屋や干拓工事の成功を祈願し祀られた神社などをめぐり、お茶文化が深い玉島の魅力を伝えています。

楽園通信

備中玉島湊鐡屋 わたしのお茶事 和佳

和正さんと佳美さんが切り盛りするお茶事の店です。
玉島地区の食材を使って作られた懐石料理と和正さんが点てたお茶を味わえます。

営業時間:午前11時~午後2時
定休日:月・火・木曜

料金:1人 10,000円(税込み)
※完全予約制 (1日1組限定、最大5人まで)
※詳しくはHPをご確認ください