奈良・御所市
~好きを極める 酒蔵5代目の挑戦~
舞台は奈良県御所市。日本酒好きが高じて自分でお酒が造りたいと会社を辞め、酒蔵で杜氏修業を始めた谷口明美さん(56歳)が主人公です。
明美さんは大阪府出身。証券会社と保険会社で延べ30年勤めていた明美さんですが、常々「会社員は向いていない」と思っていたといいます。そんな明美さんが、よく思い出していたのが鍛冶職人だった祖父・喜代治さんと過ごした時間。幼い頃よく遊びに行き、包丁を打つ喜代治さんの姿を見ていたそう。また、喜代治さんは大の酒好き。嬉しそうに毎晩日本酒を飲んでいた姿を今も覚えているそうです。そんな喜代治さんに似て、明美さんもお酒が大好きになり、さらに“モノづくりがしたい”と思っていました。ある日、旅行先で買ってきた日本酒を飲むと「あれ?イメージした味と違う」と感じたという明美さん。そして、その時に「そうだ!自分で日本酒を造ったらいいんだ。それが自分のやるべき仕事だ」と考えたのです。しかし、酒造りには酒造免許が必要であり、新たに免許を取得するのはハードルがかなり高いことを知ります。そこで見つけたのが、各都道府県にある「事業承継・引継ぎ支援センター」の存在。明美さんは酒蔵の事業承継を希望し、奈良県の支援センターに登録しました。すると、運よくマッチングしたのが『葛城酒造』だったのです。葛城酒蔵は、4代目の久保伊作さん(71歳)が受け継いできましたが、杜氏の高齢化などに伴い酒造りを一年間断念した時期もありました。それでも「自分の代で蔵をつぶすわけにはいかない」と酒造りを再開し、蔵を守っていました。がしかし、後継者が居ないので「事業承継・引継ぎ支援センター」に相談していて、明美さんと巡り合ったのです。こうして、明美さんは50歳で保険会社を辞め、翌年、4代目・久保さんの元、住み込みで修業を始めました。そして2021年12月、明美さんは正式に『葛城酒造』の5代目として酒蔵の承継者になり、今は杜氏の修業をしながら、久保さんと共同で経営をしています。
『葛城酒造』は、明治20年創業。130年もの間、伝統の灯を絶やさないよう、主要銘柄「百楽門」の味を守り続けてきました。明美さんは、その味と蔵を守り続け、さらに、昔のように活気ある酒蔵にしたいと、日々挑戦を続けています。そんな弟子に対する師匠・久保さんからのエールは「好きこそ物の上手なれ」。杜氏という新たな道で、新酒造りを頑張る明美さんの姿と応援する家族の姿。そして、歴史ある蔵の酒を愛する地域の人々との交流を紹介します。
新酒造りの時期を迎えた『葛城酒造』。酒造りは麹造りから始まります。麹菌をふった蒸米を冷めないうちに急いで麹室へ運びます。室に入れてから丸2日。麹が完成しました。「麹に触っている時が一番好き!」と語る明美さん。しかし、麹は出来ましたが、これからが酒の仕込み本番です。
師匠と明美さんだけの小さな酒蔵なので、配達も明美さんの仕事です。「若い方が継いで地域を活性化してくれて嬉しい」と、地域の方々も、谷口さんが5代目として酒蔵を承継したことを喜んでくれています。シャクヤク酵母を使ったオリジナルのお酒の醸造など、新たな取り組みも行っています。
新酒の仕込みが始まると朝が早いので、蔵の離れに寝泊まりしている明美さんですが、久しぶりに自宅へ帰りました。大阪で暮らしている妹・理恵さんが遊びに来て、夕食を作ってくれました。と言ってもお酒のアテ!アサリ、タラ、白子の酒蒸しなどが並び、もう盃が止まらないお2人です!「このために働いている」と明美さん。至福のひと時です。理恵さんは、新たな一歩を踏み出した姉・明美さんを全力で応援してくれています。
お酒の元となる「酒母」に、麹、蒸米、仕込み水を4日間かけ3回に分けて加え、ゆっくりと発酵させます。これが「三段仕込み」と呼ばれる日本酒特有の仕込み方です。そして仕込みを終えてから、およそ1か月後、醪(もろみ)を搾れば新酒の完成です。今シーズン最初に仕込んだ新酒のお味は…。「キレが良くサラッとしていて百楽門らしい」と笑顔の明美さんと師匠・久保さんです。ここからまた『葛城酒造』の伝統が受け継がれていきます。

葛城酒造
明治20年創業。
主要銘柄「百楽門」は、酒蔵とオンラインで販売を行っています。
詳細はHPをご確認ください。
不定休
「百楽門」各種清酒 720ml 1,500円~

東川酒店
御所市内の地酒を取り扱う酒店です。
「百楽門」各種取り揃えています。
全国地方発送も行っていますので詳細はSNSをご確認ください。
電話:0745-62-2335
営業時間:午前9時~午後7時
定休日:水曜・毎月最終火曜



