香川・三豊市
~同級生夫婦 瀬戸内の美食宿~
今回の舞台は香川県三豊市。岐阜県から移住し、『旅宿・咄々々(とつとつとつ)』を始めた深井夏子さん(60歳)と夫の志郎さん(60歳)が主人公です。
岐阜県美濃市出身のお2人は、中学・高校の同級生。中学では同じバスケットボール部に所属していましたが、当時は顔見知り程度で接点はなかったそう。その後、志郎さんは車の金型を製造する会社に就職し、夏子さんは化粧品会社で美容部員として働きました。そんな2人が高校卒業から12年ぶりに再会。きっかけは、化粧品会社を辞めた夏子さんが働いていたレストランバーに志郎さんが客として偶然訪れたことでした。志郎さんは当時、金型会社を退職し、家具職人を目指して職業訓練校に通っていました。その話を聞いた夏子さんは「自分がカフェを始める時はぜひ家具を作って欲しい」と話したといいます。やがて家具職人となった志郎さんの元に、夏子さんから実際に家具の製作依頼の連絡が届きます。これをきっかけにお2人の交流が深まり、再会から6年後に37歳で結婚しました。その後、志郎さんは再び車の金型設計の仕事に戻り、夏子さんは、カフェが人気店となり忙しい日々を送ることに。そんなある日、夏子さんに乳がんが見つかります。幸い早期発見だったため、手術後5日間で仕事に復帰できましたが、体力的にも精神的にも負担は大きかったといいます。「ランチに来てくれるお客さんたちの顔が浮かび、店を閉める決意ができなかった」という夏子さん。次第に心身ともに疲れ、限界を感じていきました。そんな夏子さんの姿を見かねた志郎さんは「ずっと憧れていた瀬戸内地方に移住しよう」と提案。移住相談会に足を運び、数ある候補地の中でお2人が一番魅かれたのが香川県でした。夏子さんが希望した「海のある町」が決め手でした。こうして2017年、お2人は岐阜県から香川県三豊市へ移住。暫くはのんびり海を眺め暮らしていた夏子さんでしたが、何もしない暮らしに限界を感じ始めます。そんな時に移住先の知人から「シェアキッチンを手伝ってみない?」と誘われ、週末だけカフェの仕事を始めることに。すると夏子さんは次第に元気を取り戻し、さらに、夏子さんの作るランチはたちまち人気になりました。すると、「もう一度、飲食の仕事をしたい」と思い始めます。丁度その頃に一軒の日本家屋と出会い、夏子さんは「ここで、料理でもてなす宿がしたい!」と考えたのです。こうして日本家屋を購入し、2020年に1日1組限定の『旅宿・咄々々』をオープンしました。
“咄々々”は禅語で、「あらまあ!びっくりした!」という意味をもつそうです。かの千利休は、お茶会のたびに趣向を凝らし、客が驚く瞬間のために工夫を重ねたのだとか。そんな風にお客さまをもてなしたい。その思いを込めて、お2人の宿は『旅宿 咄々々』と名付けられました。宿の自慢は地元産食材を使った夏子さんの本格的なコース料理。さらに、志郎さんが案内する体験ツアーも人気を集めています。瀬戸内の町に移住し宿を始めた夫婦の日常と常連客との触れ合い、そしてお2人の暮らしぶりを瀬戸内の美しい景色とともに紹介します。
『旅宿 咄々々』、料理担当の夏子さん。「料理における手間は労力のうちに入らない」そうで、一切の妥協を許しません。この日は食材を仕入れに、産直市場や果樹園など3つのお店を回りました。納得するものが買えるまで帰らないと、食材を見極める目が真剣です。一方、“凝り性”の志郎さんは掃除担当。欄間なども徹底的に磨き上げます。お客様を迎えるため、なんと丸一日かけて掃除をするのだとか。お客様の笑顔のため、全力を尽くすお2人です。
この日、志郎さんはご宿泊のお客さまと体験ツアーに出かけました。向かった先は、瀬戸内国際芸術祭が行われていた粟島。自転車で散歩するようにゆっくり走る“ポタリング”で島内をめぐります。この日は天気も良く、絶好のポタリング日和。美しい粟島の景色と芸術作品の鑑賞に、大満足のツアーとなりました。
『旅宿 咄々々』のディナータイム。志郎さんが今朝収穫したばかりの落花生や里芋を使った色とりどりの前菜盛り合わせに、ビーツを使った色鮮やかなポタージュ。そして、瀬戸内の魚介を使った揚げ物やムニエル、リゾット。さらに、オリーブ牛のローストビーフが登場。一皿ごとに「美味しい!」「優しい味!」とお客様も笑顔がこぼれます。瀬戸内の恵みと夏子さんのこだわりが詰まった『咄々々』のコース料理。大満足のディナーでした。
お2人には瀬戸内に移住して心に決めたことがあります。それは「無理をしない」こと。そして「たまには夫婦で出かける」こと。今日は2人でポタリングです。海岸線を走り、やってきたのは父母ヶ浜。夕日が絶景の観光名所です。コーヒーを片手に、ほっと一息。「移住しよう!」という志郎さんの一言で、新たな一歩が踏み出せた夏子さん。「こうして、のんびり夕日を眺められるのも、ありがたい。志郎くんが言ってくれなかったら来る決断はできなかった」と改めて感謝の気持ちを伝えます。夏子さん・志郎さん、これからも瀬戸内の暮らしを楽しんでくださいね。

旅宿 咄々々
夏子さんと志郎さんが営む宿。夏子さんが厳選した食材を使って作る
コース料理や、志郎さんが案内する体験ツアーが人気です。
1泊2食付きコースプラン 19,000円~
1日1組限定
不定休
※詳しくはHPをご確認ください



