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2025年10月18日神無月の参

岩手・二戸市
~ようこそ!わたしの庭へ~

舞台は、岩手県二戸市。小高い農地の漆畑や林に囲まれた場所に、ぽっかりと美しいガーデンが現れます。可憐な花々が咲きほこり、山野草や樹木が優しい彩りと木陰をつくる広大な庭。元々畑だったこの場所にコツコツと手を入れ、6年の歳月をかけて見事な観光ガーデンに変えた藤嶋淑子さん(68歳)と夫の明範さん(70歳)が主人公です。
二戸市(旧福岡町)出身、3人姉妹の末っ子だった淑子さん。祖父の代に農地を手に入れ豆や麦、雑穀などを栽培。両親も兼業農家として生計を立てていました。教員を目指し大学に進学した淑子さんは、秋田出身で美術を学ぶ明範さんと出会い、交際がスタート。卒業後、淑子さんは教員となり宮城県へ赴任、明範さんは大学院を経て彫刻家として歩み始めます。安定した生活とは程遠かった明範さんは、淑子さんと結婚したい一心で美術教員となる道を選択。結婚後は明範さんの勤務先の茨城県つくば市で暮らし、淑子さんは3人の娘の子育てに専念しました。明範さんは教員の仕事の傍ら彫刻制作を続けたことから、淑子さんは家庭の全てを任される事となり、彫刻にのめりこむ夫に不満を抱いていたそう。子育てが落ち着くと、資格を取りスクールカウンセラーとして働きます。そして近所で手に入れた土地を有効活用しようと花の種を撒き、趣味でガーデニングを始めます。一方、故郷では父亡き後に母が一人で家や農地を管理していました。姉達は遠方に暮らしており、淑子さんは「私が面倒をみるしかない」と考え、定年後に彫刻家となった明範さんも賛同。そして2017年、二戸市にUターンします。淑子さんは母のサポートをしつつ、長年の間にすっかり荒れてしまった畑に手を入れ始めました。最初は、“戻って来ざるを得なかった故郷で何か楽しみを”という思いだった淑子さん。木を伐採し花や山野草の苗を植え、明範さんは樹木の植え替えや小道の整備などを担当しました。夫婦でコツコツと作業するうち、およそ1500坪ある畑は、美しい庭へと変貌。これを多くの人に見てもらいたいと2023年春に『ニノガーデン』をオープンしました。
何年も地道な作業を続け、畑を広大なフラワーガーデンに生まれ変わらせた淑子さんと明範さん。今ではその努力を知る仲間や友人に囲まれ、応援を受けながら充実した毎日を送っています。どうかこれからも、素敵な庭をつくり続けてくださいね!

美しく整備された『ニノガーデン』は、多彩な植物がそこかしこに植わっています。もともと設計図はなく、淑子さんが思い描いた通りに樹木や花を植え、大きく育つと株分けして配置。明範さんは、淑子さんの指示で道をつくり、境界線に丸太を並べウッドチップを敷き詰めたり芝を貼ったりなど力仕事を担当してきました。敷地は年々広がっていき、「一体どこまでやるの?!」とその規模に内心驚いていたそうです。
広大なガーデン内は、ハーブやラベンダーを植えた野原のようなエリア、バラでまとめたエリアなど、テーマごとに分けられています。中でも淑子さんが大切に考えているのは、地元・北岩手らしい自然を再現したエリア。シラカバの木が立ち並び、地面に植えたウルイやコゴミなどの山菜が風にそよぐ様子は、とっても魅力的です。入園料を頂く際に園内地図を手渡し、お客さんはそれを片手に庭を巡ります。広大な庭には、ところどころに明範さんの彫刻が飾られ、これがまたうまく草花と調和し素敵な憩いの場となっています。

休園日などに時間が出来ると、明範さんは近所につくった工房に向かいます。教員の仕事を退職後、彫刻家として活動してきた明範さん。これまでは、大きな石を使った彫刻作品が多かったのですが、移住後に石皿の制作を始め『石皿工房NINO』を開きました。使うのは、薄くスライスした安山岩などの石。ガラス成分を多く含むため、高温の窯で焼くと熱で柔らかくなり、重石などを用いて硬い石を皿状に湾曲させることが出来るんです。明範さんは、皿の面に星座や天の川を描いたり「宇宙」がテーマの作品を作っていて、重厚感があり落ち着いた色合いの石皿は評判。今はこの石皿制作に夢中ですが、ガーデンのオープン期間は日々の植物の世話や庭の整備に追われてしまいます。なかなか創作時間がとれないため、まもなく迎える冬季休業の時期を楽しみに待っているそうです。これもまた、みちのく北岩手ならではの過ごし方です。

美しい花々が咲き誇り、樹木や山野草などが点在し、訪れる人々を癒す『ニノガーデン』。でも、この状態を維持するためには、地道な努力が必要です。淑子さんは時間さえあれば、地面に生えてきた雑草を抜き、花木の選定や植え替えをしたりと大忙し。とにかく敷地が広いので、最近では植物好きなボランティアやアルバイトの学生などがガーデンの整備を手助けしてくれ、とっても助かっています。そんな『ニノガーデン』には1年半前、新しい施設がオープンしました。それが広い「ドッグラン」。営業日はお客さんに利用してもらい、休日は藤嶋家の愛犬・ニノが明範さんと一緒に貸し切りで走り回っています。実はこのドッグラン、先代犬・イチが病気になり、最後の時間をゆっくり過ごしてもらいたいと淑子さんの発案で作りました。今後もたくさんのワンちゃんに利用してもらえるといいですね!

この日、『ニノガーデン』に沢山の女性たちが集まってきました。主なメンバーはボランティアで、ガーデンの仕事を手伝ってくれる方々です。この日、淑子さんとお仲間が作っていたのは「へっちょこ団子」。この地域で古くから食べられているおやつで、タカキビの粉を熱湯でとき、丸めたものを小豆の汁で煮込みます。「へっちょ」とは、地元の方言で「苦労」という意味合い。冬が長い北岩手では、晩秋に農作業を終える「秋じまい」という習慣があり、「一年間、お疲れさまでした」という意味をこめて、この「へっちょこ団子」を食べてきたそうです。お世話になった仲間たちも「子どもの頃に食べた」「美味しい!」と大喜び。淑子さんは新たな仲間たちと出会えたことに感謝し、これからも広がる絆を楽しみにしていると語ります。明範さんはそんなみなさんの温かな支えをしみじみと感じ、思わずウルウルしちゃうのでした。

楽園通信

二ノガーデン

主人公・藤嶋さんご夫婦が営むオープンガーデン。

営業時間 午前10時~午後4時
営業日 金・土・日曜日・祝祭日

春夏シーズン 4月下旬~7月上旬
秋冬シーズン 9月初旬~10月下旬
※詳しくはHPをご確認ください

大人1人 400円
高校生以下 無料
犬1頭につき 200円

楽園通信

石皿工房NINO

主人公明範さんが営む石皿工房。
NINOガーデンのコンテナ内で販売もしています。
詳しくは、「石皿工房NINO」のホームページをご確認下さい。

問い合わせ時間 午前9時~午後6時
営業日 不定休