新潟・上越市
~城下町 妻の喫茶店と夫の蕎麦屋~
舞台は新潟県上越市。長年夢見ていた喫茶店を開いた西脇美智子さん(73歳)と、その隣でお蕎麦屋さんを始めた夫・直行さん(75歳)が主人公です。
新潟県上越市出身の美智子さん。長野県の短大に進学し、初めての一人暮らしで心の拠り所になったのが喫茶店でした。マスターと話をすることで淋しさが紛れ「喫茶店っていいな」と思うように。23歳で同じ上越市出身の直行さんとお見合い結婚。3人の子育てに追われ、忙しい日々を送る中、同居していた直行さんの母親の介護も始まりました。美智子さんは「いつか喫茶店をやりたい!」という思いは抱きながらも、15年以上、家族のために身を粉にして頑張りました。そんな美智子さんにとって、日常を一時でも忘れられたのが喫茶店。喫茶店でのかけがえのない時間に救われ、母親の介護を全うできたそうです。しかし今度は、子どもたちの学費が重くのしかかり、美智子さんは介護施設での仕事に就きます。喫茶店を開く夢は、またしても後回しに。その後、子どもたち全員が独立すると、気が付けば美智子さんは古希を迎えていました。そんな時、介護施設で担当していた高齢者に「旦那が元気なうちに何かやらないと何にもできなくなるよ。喫茶店をやるなら今だよ!」と言われて「ハッ」とします。一念発起した美智子さんが店の開業準備を始めると、定年退職後に趣味の蕎麦打ちを楽しんでいた直行さんも「俺も蕎麦屋をやってみたい!」と触発されます。そして2人が開業の場所として見つけたのが雁木通りに面した「町家」。奥行きが深い特徴を生かして、手前に美智子さんが喫茶店『マリキータ』、奥に直行さんが『そば処 なおじろう』をオープンしました。
家族のために懸命に走り続けた美智子さんは、長年、抱き続けた「喫茶店を開く夢」をついに叶え、直行さんは「蕎麦打ち」で新たな生きがいを見つけました。別々だけど一緒…。それがうまくいくのは、雪国の暮らしをみんなで守る「雁木(がんぎ)」のように、互いを思いやる気持ちがあったからこそ。70代になってからの新たな挑戦、好きなことをトコトン楽しむご夫婦の暮らしぶりを紹介します。
『マリキータ』自慢の手作りランチは地元・上越産コシヒカリの玄米を小豆と炊き上げた発酵玄米ご飯にコロッケ、さらにナスやニンジンなど採りたて野菜の日替わり小鉢も付いています。看板商品のコロッケにはお2人の大切な思い出があるんです。30年ほど前、家族5人が一列に並んでみんなでコロッケをよく作ったんです。こねて、まるめてパン粉をつけて…あの頃から同じ作り方。子どもたち3人を育て上げた思い出のコロッケは今や『マリキータ』の看板商品で、多くのお客様から愛されています。
町家の特徴である奥行きの深さを生かして手前に美智子さんが喫茶店『マリキータ』、奥に直行さんが『そば処 なおじろう』をオープン。喫茶店を通り抜けないと奥のお蕎麦屋さんに入れないなんて、夫婦だからこそできる配置ですね。この日、美智子さんが持ってきたのは巨大なユウガオ!でも固くて切れないので、直行さんに助けてもらい、無事、きれいに切ることができました。夫婦隣同士のお店だからできる助け合いです。これも雁木の精神!思いやりは大事ですね。
この日はご夫婦そろって食材の仕入れへ。訪ねたのは、地元の農家・三輪芳夫さん。
美智子さんのお目当ては、『マリキータ』の看板商品、コロッケに使っている男爵イモ。ホクホクとした食感が特徴で、コロッケにぴったり!「元気に育った野菜を食べると私たちも元気をもらえる」と語る美智子さん。三輪さん、元気なお野菜をいつもありがとうございます。
この日、ご夫婦は散歩のため高田城址公園にやってきました。今年で結婚して50年目を迎えるお2人ですが、お互い新たな発見がまだまだあります。最近、直行さんが驚いたことは、美智子さんの知り合いの数!美智子さんは喫茶店を始めたことでますます友達が増えているとのこと。「新しい人と繋がれることが楽しい!」と話す美智子さん。1人1人の優しさがつながる雁木の精神を大切にしているからこそ、みんなが仲良くなる『マリキータ』をつくりだしているのかもしれませんね。

マリキータ
美智子さんが営むカフェです。
コロッケが人気のランチは数に限りがあります。
営業時間:午前10時30分~午後6時
定休日:月・火曜
発酵和ランチ 1,200円

そば処 なおじろう
直行さんが営む蕎麦屋さんです。
営業時間:午前11時~午後2時30分
定休日:月・火曜
もりそば(並盛) 800円
天ぷら7点 500円
にこにこセット 1,700円



