愛媛・岡村島
~島に笑顔を! 瀬戸内の小さな食堂~
今回の舞台は、愛媛県岡村島。およそ250人の島民が住む小さな島で、誰もが安心して暮らせるよう、港の近くに食堂を開いた加藤成崇さん(47歳)と妻の千晴さん(44歳)が主人公です。
千葉県出身の成崇さんは、大学卒業後に食品関係の会社などでサラリーマンを経験し、2009年、学生時代に知り合った千晴さんと結婚。数年後には都内にマンションを購入しました。一見すると順風満帆な日々を送っていた成崇さんですが、実際はマンションのローンを返済するため、朝から晩まで働き詰めの日々だったといいます。こうした生活が続いたある日、「突発性難聴」を発症。数週間の入院生活を送る中で、毎日病室にお見舞いに来てくれる千晴さんと久しぶりにゆっくりとした時間を過ごすことができました。その時、千晴さんから「今の方が幸せだ…」とつぶやかれたことで、成崇さんの人生観は大きく変化します。これからの人生は“人間らしい暮らしをしよう”と誓った成崇さんは、退院後、移住先を探すためセミナーなどに参加。以前に千晴さんと瀬戸内芸術祭を訪れていたことから「瀬戸内の島暮らしに憧れるね」と話したことを思い出した成崇さん。その後、千晴さんと瀬戸内海のさまざまな島を訪れましたが、岡村島は違っていたといいます。「歩いていると島の人がミカンをくれたり、引っ越しを考えていると話すと家を紹介してあげる」と親切な人ばかり。都会にはなかった島民の温かさに触れ、すっかり魅了されたそうです。「この島で暮らそう!」と決意した成崇さんは、2017年4月に今治市の地域おこし協力隊として岡村島に移住しました。島の魅力を多くの人に伝えようと様々な活動を行う中、岡村島の食材を使った食堂を開きたいと思い立ちます。そして、3年間の地域おこし協力隊の活動を終えると、2020年4月に『関前食堂』をオープンしました。食堂の一番人気は、島レモンのバターチキンカレーと島ひじきのキーマカレーの両方を楽しめる「合い盛りカレー」。瀬戸内の獲れたての魚を使った限定海鮮丼も評判です。2022年には、長男・世都くんが誕生しさらに賑やかな毎日を送っています。
岡村島へ移住し、島の魅力を伝える成崇さんと家族の姿、そして島民との温かいつながりや移住仲間との交流を紹介します。
『関前食堂』では、岡村島の魅力的な食材を使った料理を楽しむことができます。数量限定の「本日の漬け丼御膳」は、島の新鮮な魚を味わうことができると好評で、開店と同時に売り切れてしまうほどの人気。漬け丼のために「暖簾待ちをしてきた」と話すお客さんの姿も。他にも「合い盛りカレー」は、島レモンの酸味をいかしたバターチキンカレーと、島特産の新芽ひじきのキーマカレーの両方を楽しむことができます。成崇さんは料理を通じて、島のおいしい魅力を伝えています。
この日、成崇さんはお弁当の準備をしていました。地元の漁師さんから仕入れたサメは唐揚げ、農家さんから頂いた白瓜は煮付けにして、島の食材をいかした特製弁当が完成です。すると、成崇さんは特製弁当を持って島のとあるお宅へ…。実はこれ高齢者の見守りを兼ねた宅配弁当だったのです。お弁当を受け取った山岡君夫さんは、「1週間にいっぺんね、楽しみにしとるんよ!」と嬉しそうな様子。これまで支えてもらってきた島の人たちへの恩返しも込めた素敵な活動です。
成崇さんはこの日、味噌の仕込みに向かいました。かつて、島のほとんどの家庭で作られていたという「しま味噌」。いつしか途絶えていましたが、島のお母さん方にご指導いただきながら、成崇さんが復活させました。成崇さんと一緒に仕込みをしていた村上一恵さんは「助かります、若い人が来てくれて!」と話します。今年もおよそ80キロの「しま味噌」の仕込みが無事に終わりました。
かつて「みかんの島」として名を馳せるほど、みかん栽培が盛んに行われていた岡村島。しかし、高齢化が進み、今やみかん農家も数えるほどに…。島のあちこちで耕作放棄地が増え、畑が山に侵食されていました。そこで成崇さんは、移住仲間の今里さんと耕作放棄地を開墾して『SEKIZEN FARM』を始めました。ここでは、「はるか」や「甘夏」、「レモン」など様々な品種の柑橘類を栽培しています。

関前食堂
成崇さんと千晴さんが営む食堂です。
営業日時 金曜 午前11時半~午後1時半
土・日曜・祝日 午前11時~午後2時
※詳しくはSNSをご確認ください
合い盛りカレー 1,100円
本日の漬け丼御膳 1,000円~ ※土日祝のみ(不漁時は提供なし)



