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2025年7月26日文月の肆

和歌山・有田川町
~廃材に命ふきこむ家具工房~

舞台は和歌山県有田川町。廃棄されるパレット(物流用の木製荷役台)の板を使い、アップサイクル家具を作っている宮尾隆弘さん(47歳)と妻の陽子さん(46歳)が主人公です。
有田川町出身の隆弘さんは障害者福祉施設でヘルパーをしていました。26歳の時、看護師の陽子さんと結婚。娘が生まれたのを機に自宅を構え仕事に邁進した隆弘さんでしたが、36歳の時、心臓発作をおこし「異型狭心症」と診断されます。原因は仕事からくるストレスでした。その後は無理をしないように仕事を続けた隆弘さん。ある日、よく行く市場で山積みにされた廃棄予定のパレットが目に留まります。隆弘さんはそのパレットが病気の自分と重さなったと語り、廃棄されるパレットを何かに生かせないかと考え始めます。すると同じ頃、後輩の建具屋さんの父親が亡くなり、木工工作機械を破棄すると聞き、迷わず譲ってほしいと願い出ます。そこから、知り合いに工作機械の使い方を教わり、休日には廃棄パレットの板を使い棚やテーブルなどを作り始めました。作った家具は知り合いの家具店に持ち込んでアドバイスを求めるなど、徐々に木工の腕を磨いていきました。そして、家具作りを始めて1年後の2018年、隆弘さんは仕事を辞め、自宅近くの空き倉庫を借り、アップサイクル家具の製造・販売をする『SIL(Smile Is Life)」』を開業しました。
人生の再起をかけ、廃棄されたパレットでアップサイクル家具を作る隆弘さんと支える家族の姿、そして仲間たちとの交流を紹介します。

廃棄された木製パレットの板を使ってアップサイクル家具を作るには、パレットの解体から始めます。まずは、釘を1本1本丁寧に抜き、板の表面をカンナで綺麗に削るなど手間がかかります。こうして、ようやく材料になるのですが、パレットに使っている木の種類は様々。当然、木目も色もバラバラです。でも、隆弘さんは「バラバラ方が良い、人もそれぞれ個性が違うように、色んな木目や色の板が集まってこそ、“味のある家具”が作れる」と言います。

最初は趣味で作り始めたアップサイクル家具ですが、テーブルなど形は出来ても強度が足りない。悩んだ時にアドバイスをしてくれたのが、隆弘さんの中学時代の後輩で家具店を営む森本真輔さん。森本さんは、隆弘さんが初めて作ったテーブルを今も事務所で使っています。以前、そのテーブルを売ってほしいと、お客様からオファーがあった時に「隆弘さんの記念すべき第1号だから残したい」とオファーを断ったと言います。そんな森本さんに背中を押され、隆弘さんは『SIL』を始めることを決意したんです!

隆弘さんは、家具を納品したお客様の元を訪ねました。クラフトビールのブルワリー『NOMCRAFT Brewing』ではカウンターテーブルを。アメリカンフードの『GOLDEN RIVER』では、お客様用のテーブルを作りました。その中の一つ、隆弘さん自身が一番気に入っているテーブルがありました。そのテーブルを手で撫でながら「いい感じに育ってきたね」と隆弘さん。その笑顔は、我が子の成長を喜ぶ父親の顔でした。

大阪で暮らす長女・未咲さんが帰省したので家族でバーベキューです。近所で暮らす隆弘さんのご両親も一緒です。隆弘さんが、廃棄パレットで家具を作り始めた時は「これが家具?これ売れるの?」と心配したというご両親でしたが、今は「自慢の息子です」と笑顔。長女・未咲さんは「たまにSNSで父が作った家具を見つけると、恥ずかしいけど“イイね!”をしちゃう」と、ちょっと照れながら話してくれました。隆弘さん、これからも笑顔を絶やさず素敵なアップサイクル家具を生み出していってください。Smile Is Life!応援しています!

楽園通信

SIL

隆弘さんが営むアップサイクル家具の工房です。
オーダーメイドも受け付けています。

営業時間 午前10時~午後6時
不定休
※詳しくはHPをご確認下さい

スパイスボックス 13,800円
キャンプテーブル 18,300円