愛知・豊田市稲武地区
~心あったか 足湯カフェ~

舞台は愛知県豊田市の山間部、稲武地区。主人公は、子どもの不登校をきっかけにこの地に移住した櫻井麻紗子さん(42歳)。そして麻紗子さんの移住支援を担当した元・市役所職員の友治さん(41歳)が、もう一人の主人公です。2人はこの出会いが縁で結婚し、足湯カフェ『グローティール イナブ』を開きました。地域を見渡せるテラスで足湯につかり美味しい食事ができると、地元の方や観光客にも評判です。
名古屋市出身の麻紗子さん。家は祖父母が営む昔ながらの氷屋さんで、小さい頃から年齢も職業も違う人々と接することに慣れていきました。26歳で結婚し、長男・孝太くんと長女・楓花ちゃんを出産しましたが、ほどなくして夫とは別居。子育てのため飲食店で必死に働くうち、「自分の店を持ちたい」という夢を抱くようになります。そんな中、不登校に悩むようになった長男の希望で田舎への移住を考えた麻紗子さん。移住促進を行っていた豊田市稲武地区を見学し、一目で気に入った家族は移住を決意します。この時、親身に町を紹介してくれた市役所の職員こそ、後に結婚する事になる友治さんでした。常々「資源が沢山あり、可能性があるこの町をもっと盛り上げたい」と考えていた友治さん。その熱い思いに惹かれ、麻紗子さんは「これからも一緒に居ませんか」と告白をしました。そして友治さんは夢を一緒に叶えようと市役所を退職し2人は結婚。空き家になっていた元居酒屋の建物を改装し、2023年4月に足湯カフェ『グローティール イナブ』をオープンしました。長男・孝太くんはすっかり地域に馴染み、家族同然の親友もできて「本当に移住してよかった!」とここでの暮らしを満喫しています。足湯カフェには自然を求める観光客や近所に住む恩人や仲間が集い、いつもにぎやかです。
母子で移住してきたこの町で、夫・友治さんと出会い、カフェ開業の夢を叶えた麻紗子さん。稲武地区で元気に生活を楽しむ子どもたちを見守りながら、「地域に恩返しをしたい」と願っています。これからも沢山の思いが詰まった足湯カフェで、地元の止まり木のような場所を作っていって下さいね!



店の自慢は、のどかな里山の風景を一望できるウッドデッキに設置した「足湯」。
稲武地区には140年を超える養蚕の歴史があり、その絹の成分が贅沢に入った入浴剤を使っています。定休日、櫻井さん夫婦は町おこし仲間で東京からUターンしてきた古橋真人さんのもとへ。古橋家はかつて、地域に養蚕業を奨励し、産業をおこした豪農でした。古橋さんは代々続くその歴史を絶やすまいと、伊勢神宮の祭祀に使う織物「にぎたえ」に使う絹糸を奉納する役割を引き継いだり様々な活動をしています。そして、シルクの成分を使った入浴剤を生み出しました。それが「にぎたえしるく湯」で、森の香りや深い緑の色にこだわったという入浴剤は、爽やかな香りとつるっとした湯ざわりが評判です。『グローティール イナブ』の足湯があるテラスから望む、静かな里山の風景にまさにぴったり!



オープンは朝8時、朝からポカポカになろうとお客様がやってきます。名古屋文化圏の喫茶店の朝といえば“モーニング”!コーヒー1杯の値段で、トーストと茹で卵、小倉あんまで付くセットが大人気。「地域を元気にし、内外に魅力を伝えたい」という夫婦の思いから店のメニューは“地産地消”がテーマとなっています。この日は、朝からキレイに着物を着こなした地元のマダム軍団がご来店。足湯に浸かりゆっくりモーニングを召し上がったあと、皆さんが扇子を片手にテラスで披露したのが見事な舞踊です!実は皆さん、地元の『民謡踊る会」のメンバー。寒空の下踊りを終えると、「気持ちいい!もう一曲いい?」とのお言葉をいただきました。櫻井さんご夫婦も「テラスを作って良かった、またいつでも踊りに来てください!」と嬉しそうでした。



お店の休業日、お2人は食材の仕入れに向かいました。『すえひろ家』は稲武の老舗製麺所。友治さんの友人でお店の3代目、今泉喜規さんは“きぬあかり”という小麦粉を使って「生きしめん」を打ち、是非仕入れたいとお願いしたそう。友治さん特製のピリ辛の坦々ソースと絡めて提供する「てんたん麺」はモチモチした食感が大評判!今泉さんとは 共に稲武のために頑張る仲間同士、いつも町おこしの話で盛り上がります。次に伺ったのは『池ヶ平牧場』。新美さん親子はこだわりの「高原コーチン」を標高1100mの高原で平飼いしています。この鶏が絶品で、櫻井さんご夫婦はこちらで「高原コーチン」の手羽元、そして生みたて玉子を仕入れ。お店では稲武特産のシイタケや野菜とともに手羽元を煮込み「薬膳スープ」に仕立てます。滋養あふれる深い味わいで、セットの地元産米「ミネアサヒ」に高原コーチンの玉子をからめ、塩や醤油麹などで味付けして食べるのがお勧めだそう。



この日は、19年前までお店の建物で居酒屋を営んでいた近藤和香子さんが来店しました。足湯カフェをオープンするにあたり、山里の景色が見えるようにと壁を壊し改装をした麻紗子さんと友治さん。当初は「何が始まったのか!」と、和香子さんはとても驚いたそうです。しかし、店内は昔のままのカウンターや床、座敷をそのまま活かしていたことに「涙が出るくらい嬉しかった!」と和香子さん。「譲り受けたからには再びあかりを灯したかった」というお2人の思いが、時代を繋ぎ、この場所を蘇らせました。週末にはナイト営業もしている『グローティール イナブ』では、和香子さんの居酒屋で人気だった“幻の唐揚げ”も直伝のレシピで再現、美味しいと大評判です。移住した稲武で、新たなスタートを切ったお二人。これからも家族で暮らしを楽しみながら、この町を盛り上げていってください。




グローティール イナブ
麻紗子さんと友治さんが営む“足湯カフェ”です。足湯に浸かりながら地元愛あふれる料理を味わうことができます。
足湯、店内ともに席数が少ないので、ご来店の際は予約がおすすめ。
詳細はお店のSNSをご確認ください。
電話 0565-98-1767
営業時間 午前8時~午後5時
※3月~ 午後7時まで
土曜のみ 午前11時~午後9時
定休日 月曜
てんたんめん 1,200円
おやまのごちそう まるごといなぶ 1,300円