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2024年5月25日皐月の肆

福島・田村市編
~仲良し2人のお米カフェ~

舞台は福島県田村市。「お米と発酵」がテーマのカフェ『nda焙(んだばい)』を始めた仲良し2人が主人公です。接客や農家からの仕入れなどを担当するのが、橋本妙子さん(59歳)。メニュー決めなど厨房をテキパキと仕切る料理長が、篠﨑加奈さん(49歳)です。店で出すのは、玄米を自家焙煎する「玄米コーヒー」を始め、米粉麺や米粉パンが主役のメニュー。味付けにも米こうじを使ったりと、まさにお米と発酵づくし!お2人は「福島の農家を元気にしたい」という思いで活動しています。
郡山市出身の妙子さんは、声楽家を目指しレッスンに励んでいましたが、21歳で結婚して夢を諦めることに。5人の子育てに家事にと、忙しい日々を過ごしていましたが転機が訪れます。2011年に夫を病で亡くし、東日本大震災を経験したことで「当たり前はない。生きているだけで幸せだ」と実感したそう。そして一念発起し、再び歌を学び始めます。46歳の時に念願の声楽家となり、被災した子供たちを癒やしたいと県内の小学校を回って歌うボランティア活動をスタート。同時に地元農家から「風評被害で福島の農産物を買ってもらえない」という苦しい声を耳にするように。そんな状況から「農家が作る野菜やお米の素晴らしさを自分たちの力で発信したい!」と思い始めます。一方、東京出身の加奈さんは、26歳の時にインドネシアで雑貨店を起業。その後、飲食業に転職し企画や運営に携わります。2017年、スリランカを旅行中に偶然出会ったのが、妙子さんでした。帰国後に聞きたいことがあり、連絡を取ると…「教えるから郡山に遊びにおいで」という思いがけない妙子さんの言葉で、福島県を訪れることに。すっかり福島が気に入り通い始めた加奈さんでしたが、翌年なんと、会社が倒産してしまいます。落ち込む姿を見た妙子さんは、気分転換になればと「福島に農業をしにおいで」と誘いました。農作業を手伝う中で福島の農家の苦しみを知った加奈さんは、「一緒に農家を元気にする仕事をやろう」という妙子さんの声に応えることに。2人はまず福島の米で甘酒や麺を開発。次に玄米コーヒーを手がけ、多くの人に飲んでもらおうと発信の場を作ることに。こうして、田村市の空き家を借り去年10月、お米と発酵のカフェ『nda焙』をオープンしました。
子育てを終え、声楽家として活動するうちに愛する福島の農家を元気にしたいと思い立った妙子さん。そんな友人に誘われ、福島を訪れて新たな夢を見つけた加奈さん。不思議な出会いで運命が繋がったお2人の夢は大きく、「世界へ!」これからも妙子さんと加奈さんの挑戦は、続いていきます。

お米と発酵をテーマに様々なメニューが提供されている『nda焙』。ランチタイムの人気メニューは、ピリッと辛味がきいた「タイカレー」。nda焙特製の玄米と白米を使った2色の米粉麺と共にいただきます。この時、ルーを少し残してホカホカの福島産の白米を追加するのがおすすめ!また、キノコのダシで煮込んだ豆腐をご飯にのせた「とうめし」は、ふっくらご飯の上に味が染みた豆腐、さらに発酵食品である鰹節がどっさりのっていてボリューミーなメニューです。自家製や地元産の野菜をふんだんに使い、野菜や果物の差し入れなども頻繁に届くため、急におかずが増えることも。この日のランチセットでは、米こうじや塩こうじなどで味付けした発酵尽くしのサラダが4種類とリンゴのぬか漬けなど漬物が3種類も並びました!そして、nda焙のネーミングの元になった名物「玄米コーヒー」は、玄米を3時間~5時間かけてじっくり焙煎して作ります。お米の品種によって味が全く違うそう。麦茶や玄米茶のような香ばしさがクセになるおいしさです。

朝7時過ぎ。厨房担当の加奈さんは店で仕込みを開始。まずは郡山産のこしひかりを計量し、とぐことから始めます。加奈さんは一人でメニューのプランを考えながら作業する、この時間が大好き。この日は、小カブと塩こうじを合わせた漬物を仕込み、続いて美味しいと大評判の「米粉食パン」を焼きあげます。フワフワで香ばしさのある食パンを目指しているそう。この米粉食パンの相棒となるのが「発酵あんこ」。砂糖を使わず、米こうじの発酵の力で時間をかけて自然な甘みを引き出しており、あっさりした甘さの発酵あんこは、悪感なくたっぷり食べられちゃいます!
朝8時、開店です。地元の農家・菅野さんがお目当てのモーニングセットを食べにやって来ました。焼いた米粉パンは、お餅のように外はカリッ!中はモッチモチ。発酵あんこをたっぷりのせていただきます。「米粉のパンは味が違う!」と菅野さんは大満足。そしてドリンクはnda焙名物の「玄米コーヒー」。こちら実は、菅野さんが育てたお米を焙煎したもの。「まさか玄米が、コーヒーになると思っていなかった」と喜びの声を聞くことができました。

この日、妙子さんは郡山市の農家・遠藤さんのお宅を訪ねました。農家とのやりとりや打ち合わせは妙子さんの担当です。このあたりは妙子さんが育った場所で「田舎すぎて嫌だった次期もあったけど、安達太良山と田んぼが広がる風景が今は大好き」だと言います。この地で牛を飼い、その堆肥で旨い米を育てる名人の遠藤さん。『nda焙』に畑を貸してくれ、妙子さんの農業の師匠でもあります。遠藤さんご夫婦からは、農業のことや伝統食についてなど様々な話を聞いて、お店の活動に生かしているんです。妻の厚美さんは妙子さんが訪ねるといつも、郷土の味「イカニンジン」や自家製の漬物など“農家めし”で、もてなしてくれます。「みんなが農家を離れていく時代に、農家のためにこんな活動をしてくれて嬉しい。」と遠藤さんご夫婦は喜び、いつも妙子さんと加奈さんを応援してくれています。そんな遠藤さんから畑をお借りしているのは、自分たちも野菜作りを経験して農家の気持ちを知るため。他にも地元の宍戸さんから田んぼを借りて、米作りもしています。野菜の栽培、収穫担当は妙子さん。そして一生懸命育てた野菜は、加奈さんの手によって、おいしい料理に生まれ変わるんです。

夕方。妙子さんの実家で、晩御飯の時間です。妙子さんとその父・佐藤正親さん、母・京子さんと共に、家族のように仲良く酒を酌み交わしているのが加奈さん!
京子さんは、加奈さんが来る時はいつも、野菜や山菜・川魚など地域で採れる食材づくしの料理を、食卓いっぱいにこしらえて迎えてくれるんです。焼酎を飲みながら正親さんと、近くで採れる山菜の話で盛り上がる加奈さん。「一時間も山菜採りやれば、トラックさ半分採れる」「そんなわけないでしょう!一人でトラックさ半分はないでしょ、お父さん!」と、加奈さんが正親さんにすかさずツッコミを入れる様子は親子そのもの。こうして2人の会話が盛り上がると、妙子さんはいつもしゃべらず聞き役に回るそうです。京子さんからは、「加奈ちゃんは娘と同じ!」と嬉しい言葉もいただきました。そんなあったかいお父さんとお母さんに力をもらって、日々の活動を頑張っている加奈さんと妙子さんです!

楽園通信

nda焙

朝8時からのモーニングでは、おにぎりのセットもあります!
加奈さんが作る米粉のスイーツも豊富です。
そして販売コーナーでは、契約農家さんのお米やnda焙の塩こうじ、玄米コーヒーなども販売しています。

営業時間 午前8時~午後4時
     モーニング:午前8時~午前10時
     ランチ:午前11時~午後2時
定休日 月曜