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2024年2月24日如月の肆

長野・阿南町新野
~祭りの里の集いカフェ~

舞台は長野県下伊那郡阿南町新野。毎年1月に夜を徹して行われる「雪祭り」で知られ、歴史と伝統ある山里です。自然豊かなこの地域に長男・栄登くんと共に移住した竹原由紀さん(58歳)が主人公。新野にはカフェやコンビニがなく、由紀さんは地域のみなさんが気楽に集える場所を作りたいと、去年『カフェ カブキ』を始めました。薪窯で焼くピザや新野の野菜を使ったパスタなどが大人気。いつも近所の方々が集ってはにぎやかに語らいます。
愛知県名古屋市出身の由紀さんはシステムエンジニアとして働いていました。英語が得意で休暇を取っては海外旅行に出かけたり、昔から好奇心が旺盛で思いついたら即行動するタイプ。結婚し、37歳で離婚を経験した後は、インターネットで雑貨店を始めます。仕事に邁進する中、パートナーとの間に長男・栄登くんが誕生。8年前にシングルマザーとなる決心をし、ひとり息子の栄登くんを大切に育ててきました。そんな中、「生き物や自然が大好きな栄登を、自由に自然の中で遊ばせてあげられるような環境で育てたい」と考えた由紀さん。田舎にある学校を探すと、高齢化が進む阿南町新野で、地元有志が移住をサポートする活動をしていることを知り、栄登くんとこの町に移住します。そして新野での生活を送る中で「ここにはコンビニもカフェもない。みんなどこで集まったり話したりするんだろうか。それなら自分が集いの場所を作ろう!」と考えるように。町には、移住をサポートしてくれた方々が会合の場所として使っていた空き家があり、昔から「株木(かぶき)」の屋号で呼ばれていました。その家を借りられることになり、去年4月『カフェ カブキ』をオープンさせたんです。
そんな神秘的な土地・新野にたどり着き、新たな輝ける場所を作った由紀さん。新野を「第二の故郷」と語ります。この地ですくすくと育った栄登くんは、もうすぐ高校生。間もなく、新たな門出の時を迎えます。

お店では自由な発想でメニュー作りをしている由紀さん。薪窯で焼きあげるピザは、具材が見えないほどチーズがてんこ盛り!「お客さんが喜ぶ顔が見たい」とサービス精神旺盛なんです。野菜たっぷりのパスタはスープとドリンクがセットで900円。日々、ご近所さんが差し入れを持ってやって来るなど、食材も自然と集まってくるんです。
そんな『カフェ カブキ』では、由紀さんの故郷・名古屋スタイルの“鉄板に卵を敷いて焼き上げるナポリタン”が珍しいと大ブーム!また、食事が終わったお客さんには「食べやぁ」と山盛りのお菓子を差し出す由紀さん。心ゆくまでゆっくりしていってほしいという思いからのサービスです。するとお客さん同士が自然と仲良くなって会話が弾む。そんな姿をながめるのが由紀さんにとって最高に幸せな瞬間だと言います。

移住した時は小学生だったひとり息子の栄登くんも、現在、中学3年生。かつて由紀さんと一緒に寝ていた部屋を飛び出し、別の部屋にこっそり自室を確保するなど思春期真っ只中のお年頃!この日は週1回行われているバドミントンクラブの練習の日。新野の中学校は全校生徒が17人で、生徒のほとんどがバドミントン部に所属しています。栄登くんはすでに引退しましたが、その後も熱心に練習に参加しているんです。由紀さんは大人になっていく栄登君の姿を見て少し寂しい気持ちを感じながらも、成長したわが子の姿に目を細めていました。実は今後、名古屋に進学することを希望している栄登くん。いよいよ由紀さんも、自分だけの生きがいや生き方について考え始める時期がやって来たんです。

今年も600年以上続く「雪祭り」の季節がやってきました。国の重要無形民俗文化財に指定されている伝統行事で、夜を徹して行われるおごそかな祭りです。五穀豊穣の願いを込め、伝統の舞を奉納。祭りの間に雪が舞えば「今年は豊作」とされます。クラスメートの夏樹くんに誘われて、参加することにした栄登くん。去年に続き二度目の雪祭りです。祭りは正月から始まっていますが、クライマックスは14日の本祭り。日も暮れ、夜を徹する祭りの始まりです。栄登くんたち新野の子どもは学校が休みになり、大人も仕事を休んで遠方からもかけつけて参加します。面をかぶった様々な舞など次々と伝統行事が行われる中、夜が明け、馬の面をかぶった栄登くんの出番です。なだめられる暴れ馬の役で、雪もちらつき寒い中、役に徹し頑張っていました。栄登くん、お見事でした!

息子を伸び伸びと育てたいと新野に移住した由紀さん。『カフェ カブキ』を始め、これから増える自分の時間のために、地元の方とのつながりをどんどん広げている最中です。そんな時、力になってくれるのが、新野に生まれ育った友人・中村絹代さん。連れだって訪ねたのは祭りで使う「しの笛」づくりの名人・田村清七さん。そして地域の漬物名人、奥田睦恵さんのお宅。地元で頑張ってきた名人たちとの新たな繋がりも生まれ、温かな気持ちを感じた由紀さん。さらには、絹代さんや若い仲間たちと手を組み、町おこしの縁日イベントを開催するメンバーにもなりました。これからが新たな人生のスタートです。たくさんの新野の仲間と共に、チャレンジを楽しんで行ってください!

楽園通信

カフェ カブキ

竹原由紀さんが営む集いの場所『カフェ カブキ』。
栄登くんの進学に伴い、今後は不定期営業になります。

『カフェ カブキ』
営業時間:午前11時~午後9時
不定休 要予約
※詳細は、『カフェ カブキ』のSNSをご確認ください

ドリンク 380円~
パスタ 900円~
ピザ 1,000円~