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2023年7月15日文月の参

福岡・八女市
~よみがえれ!僕らの里山~

舞台はお茶の栽培で知られる福岡県八女市。その山あいに古くから「男ノ子(おのこ)」と呼ばれてきた地域があります。山深い土地で、先人たちは山林を開き斜面に棚田を作り稲作を行ってきました。四季折々に姿を変える里山の棚田は美しいものでしたが、農家の高齢化により多くが耕作放棄地になってしまいました。そんな集落を「再び美しい里山にしよう」と立ち上がったのが、主人公の谷川雅啓さん(67歳)。故郷を愛し大切に思う雅啓さんが、高校時代の同級生たちに呼びかけ、それぞれの得意分野を生かしながら、みんなで里山の再生活動に取り組んでいます。ただし、全員が農業に関しては素人で…。日々、汗と泥にまみれながらの活動は、苦労の中にもやりがいがあり、みんな「いまが青春!」といったいい笑顔です!
八女市の男ノ子地域に生まれ育った雅啓さん。小さい頃は、この里山全体が遊び場でした。やがて小学校の教師となった雅啓さんは、同じ学校で出会った佳代さんと交際し、結婚。熱血先生として知られ教職に没頭、最後は校長にまでなりました。そして定年が間近に迫った頃、心を痛めていたのが、だんだん荒れていく故郷の棚田や里山の姿でした。「綺麗だった棚田が耕作放棄地に…。この状況を何とかしなければ」と強く感じた雅啓さん。そんな時、故郷を愛し町おこしに尽力した亡き父・晃一さんの遺言を思い出しました。それは「人との出会いを大事にしろよ」という言葉。そして高校の同窓会が開かれると、集まった同級生に「一緒に田んぼをやらん?」と声をかけた雅啓さん。すると思いがけず「協力したい」「米作りをやってみたい」と賛同、出資する仲間が現れたのです。そして雅啓さんの定年後、高校の同級生10人ほどで、里山再生チーム「男ノ子ファーム」を結成。手弁当で草や木を刈り、耕作放棄地となった棚田を整備しました。2019年には初めてのお米を収穫。最初は数枚だけでしたが、今では地域の方からの依頼で「男ノ子ファーム」メンバーで21枚もの田んぼを世話しています。年間を通じての棚田での農作業は過酷かつ体力仕事が多いものの、その分達成感も。また退職後も小学校で働く佳代さん(63歳)や、母の和子さん(92歳)も活動を応援し、何かとサポートしてくれています。
愛する故郷を再生したいと、同級生たちと米作りに奮闘する雅啓さん。「この地域をもっと元気にしたい、人を呼びたい」と夢は膨らみ続けます。今後は裏山を開拓しキャンプ場や展望台を作る計画も。家族や地域の方々の力を借りながら、かつて見た美しい里山をよみがえらせるべく、仲間と尽力する毎日はとても充実しています。

ご近所のお宅を訪ねた雅啓さん。先月まで「男ノ子焼の里 保存会」の会長をしていた81歳の近見泰治さんは、「男ノ子焼の里を活性化させたい。都市部の人たちに来てもらいたい」と熱心に活動に取り組んできた方で、雅啓さんをバックアップしてくれています。そして90歳の地域の長老・戸村勇さんと共に向かったのは、「不動の瀧」です。滝の上には2体の「お不動様」が祀られ、薬師如来や弥勒菩薩など十三体の仏像・「十三仏」が並ぶ場所。ここは、雅啓さんが里山を再生しようと活動を始めた原点です。子どもの頃はよく遊びに来ていた所で、地域の守り神として地元の人々に大切にされてきた場所でしたが、5年ほど前までヤブが生い茂り、倒木もあって立ち入りが出来なくなっていました。雅啓さんはこれを何とかしたいと仲間に声をかけ、同級生と木を伐採し、草を刈りました。仏様もキレイに掃除し、近くに休憩できるあずま屋も作りました。雅啓さんは「ここが男ノ子の田んぼの源流」だと言い、滝の清らかな水が川となり、男ノ子の棚田を潤しているそう。そうして作られるお米は昔から大変甘く美味しく、雅啓さんたちはそんなお米の味わいも復活させようとしています。「男ノ子清流米」と名付けました。

田植えの2週間前のこと。大切な「不動の瀧」から田んぼへと清らかな水を引くため、仲間とともに水路を整備していました。山から流れる水路は、台風や大雨などによって毎年必ず土砂で埋まってしまうため、田植え前の時期に必要な作業なんです。泥は重く大量にあり、周囲に伸びた草も刈らないといけません。みんなで泥まみれになって1日作業、ようやく水路に水が流れた…と思ったら、今度は休む間もなく、「しろかき」作業。水を張った田んぼの土と肥料をかき混ぜ、土を柔らかくすることで田植えに備えます。斜面につくられた棚田の土はデコボコしており、作業は簡単には進みません。また、棚田ならではの苦労も…。機械が入らない場所や田んぼの隅っこなどはすべて手作業でしないといけません。そんな中、休憩のお楽しみは腹ごしらえ。近所の食堂で買ってくるお弁当がみなさんのお気に入りです。しかし弁当代は全て自前。機械や道具なども自費です。それでも「この景観を守るために棚田を作らないといけない!」という使命を感じ、みんなでワイワイ言いながら作業しています!

『男ノ子焼の里』のすぐ近くに雅啓さんのご自宅があります。妻の佳代さんも小学校の先生で、定年後も働いています。一日中田んぼで汗を流し疲れて帰ってきた雅啓さんですが、大好物の佳代さん特製・肉じゃがや煮物、豪快な鰻のかば焼きなどが食卓に並び、焼酎片手にニッコニコの笑顔です!
そして一緒に食卓を囲む雅啓さんの母・和子さんは、御年92歳。日本酒が大好きで、毎日の晩酌を欠かしません。しかもコーヒーカップになみなみとついで飲む母を「飲み助よ!」と自分のことはさておき、たしなめる雅啓さん。それを横目に「これが、元気の秘訣かもしれんよ!」と余裕の笑顔を見せる、一枚上手の和子さん。かつてはご夫婦と同じく、2人の子育てをしながら教員をしていました。妻の佳代さんも日本酒が好きで、家族でお酒を酌み交わしながらの楽しい宴は笑い声が絶えません。とっても仲良しの谷川家です。

これまでは田んぼを、慣れないながらも懸命に耕し続けてきた雅啓さんら「男の子ファーム」メンバー。数年の経験でようやく余裕が出来てこの春、一般から募集した初めての田植えイベントを行うことになりました。待ちに待ったイベント当日。ファミリー層や子どもたち、若い方を中心に総勢33名の参加者が集まってくれました。長靴をはいても泥に足をとられるので、みんな裸足で田んぼに入ります。大変さを知ってもらうため、イベントはあえて手植え作業。指導役のメンバーたちは普段機械植えしか経験していないため、事前に練習をして臨みます。参加者も指導者も田んぼの泥に「ドボン」してしまうなど、ハプニング続出の2時間後…。ようやく田んぼ2枚分の田植えが終了!泥だらけになりながらも頑張った全員で、お次はランチタイムです。地域のお母さん方の協力で郷土料理の「だご汁」や棚田で採れた「男ノ子清流米」を使ったおにぎり、アユの塩焼きなどが並びました。参加者の中に20代の2人組の若手男性を発見した雅啓さん。故郷八女の自然を愛している彼らは「今後も是非参加してみたい」と言ってくれました。そうしてイベントは無事終了。仲間とともに「新たな出会いがあった」「大成功!」と口々に感想を言い合います。これからみんなで植えた稲が育ち、新たな仲間が増えていくのが楽しみですね!

楽園通信

荘厳院

祀られている約5メートル、木彫りの十一面観音像は、住職であり仏像彫り師の西田法雲さんが彫り、作りあげたもの。堂々たるたたずまいで地域を見守ってくれています!

電話 0943-23-7177
拝観時間 午前8時~午後5時

楽園通信

男ノ子焼の里

主人公・雅啓さんが運営に携わっている施設です。
かやぶきの建物の前には、男ノ子ファームのみんなが育てている棚田の美しい景色が広がります。
ゲストハウスの他に、「男ノ子焼」の陶芸教室なども開催しています。

また、「農場長」こと雅啓さん率いる「男ノ子ファーム」里山再生活動に興味のある方はご連絡を。同級生でなくとも、どなたでも参加可能です!

電話 0943-22-8023
営業時間 午前10時~午後4時
定休日 月曜

男ノ子焼の里 ゲストハウス
一棟貸切 25,000円(4人まで)
※1人増えるごとに3,000円(最大6名)