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2023年7月8日文月の弐

山形・河北町
~伝承の味噌 里のこうじ屋さん~

舞台は山形県河北町。親戚が営んでいた『糀屋(こうじや)』を継ぎ、地域の味噌を伝承する川端徹さん(52歳)と妻の由美さん(52歳)が主人公です。
東京出身の徹さんと山形出身の由美さんは、東京で学校給食の調理員をしていました。結婚後も子育てをしながら仕事を続けていた2人は、30代後半で人生の転機を迎えます。きっかけは由美さんの父・忠さんからの電話でした。忠さんは「親戚の糀屋が3代目の体調不良により店を畳むことになった」と知らせてきたのです。『糀屋』とは、地域の家々から預かった米を糀にして味噌をつくる商売のこと。由美さんの親戚の店は、戦後間もなく創業した『矢ノ目糀屋』。閉店後は自宅兼店を建て替えるため、味噌づくりの道具も廃棄するとのこと。由美さんも幼いころから食べていた味噌で、上京してからも山形から送ってもらい食べていました。だからこそ、その『矢ノ目糀屋』の味噌が無くなるとは考えもしなかったことでした。忠さんから「今なら糀屋を継がせてもらえるかも知れない」という話も。実は、由美さんと徹さんは「いつかは田舎暮らしをしたい」と考えていて、忠さんは「それなら山形で暮らし、仕事は糀屋を継げばいい」と考えていたのです。しかし、今直ぐに田舎で暮らすつもりなどなかった2人は突然の話に戸惑いました。すると忠さんが「味噌を食べる人はこの先もいなくならない」と一言。この言葉に2人は奮起し糀屋を継ぐことを決意しました。3年間、東京から山形に通い3代目から味噌づくりを学び、2013年に家族で山形に移住。築100年の蔵を購入し、その隣に作業場を構え、『矢ノ目糀屋』4代目として味噌の製造販売を始めました。その後、2015年には『糀屋カフェ たんとkitchen』をオープン。糀と味噌を隠し味にした特製カレーのランチや甘酒などの提供を始めました。
『矢ノ目糀屋』の味噌は、大豆の量に対して糀の分量が多いのが特徴です。仕込んでから1年間熟成させ販売しています。味噌の購入客は「糀の香りがして、昔ながらの味噌の味がする」と大絶賛。
地域で愛されてきた『矢ノ目糀屋』の味噌。その味を残そうと日々奮闘する徹さんと由美さんの日常と、地域住民との触れ合いを紹介します。

『矢ノ目糀屋』の看板商品は2人がつくる味噌。ふわりと香る糀の風味と、優しい甘さが特徴です。甘さの秘密は、大豆の量に対して1.5倍の糀を使っていること。徹さん曰く「これは3代目に至るまでに導き出された黄金比」なんだとか。また、矢ノ目の味噌作りに欠かせないのが先代から受け継いだ木樽。この木樽に入れ1年間熟成させることで、矢ノ目の味噌が出来上がります。「はい、お休み」味噌を詰めた木樽に由美さんが声を掛けます。我が子のように愛情込めて作るお味噌、完成は1年後です。

ここに味噌屋があることを知ってもらうため、お2人が工房の隣に作ったショップ イン カフェ、『糀屋カフェ たんとkitchen』。築100年の蔵を改装した趣のある店内で、矢ノ目糀屋の味噌や糀を使ったメニューを提供しています。人気は『糀屋の甘酒』。すっきりとした甘さが特徴です。ランチメニューは『糀屋カレー』で、知り合いの農家から仕入れた新鮮野菜のサラダと自慢のお味噌汁も付いています。食材は全て山形県産を使っています。カレーを食べ「美味しい!」お味噌汁を飲んで「美味しい!!」とお客さん満面の笑顔でした。

炭火で焼くお肉にヒメタケ!そして『矢ノ目糀屋』自慢の味噌をたっぷり付けて食べるキュウリ!今夜は友人を誘い楽しいバーベキューパティーです。
長女・なつひさんと次女・小夏さんも『矢ノ目糀屋』の味噌が大好きで、由美さん徹さんをずっと応援してきました。「開店当初は娘たちに“今日はお客さん来た?”って毎日聞かれるほど、心配をかけた」と話す由美さん。改めて、家族、友人たちに感謝し、故郷で暮らせる喜びを噛みしめ、今を楽しんでいるようです。

味噌が活躍するのは和食だけではありません。この日、『糀屋カフェたんとkitchen』はパン屋さんの特別ランチです。知人のパン屋さんが作るメニューは、クリームチーズに『矢ノ目糀屋』の味噌を混ぜたペーストをパンに塗り具材を挟んだサンドイッチ。濃厚なクリームチーズと甘くて糀の香り立つ矢ノ目の味噌がベストマッチ。パンの美味しさを引き立てます。「お味噌ってしょっぱいイメージがあるけど、これは甘い感じがする」「味噌いい、合う!」とお客様も大絶賛。お味噌の可能性は無限大なんですね。

楽園通信

矢ノ目糀屋

徹さんと由美さんが営む糀屋。味噌や塩糀などの販売の他、
ショップ イン カフェでは甘酒や一日10食限定のランチ「糀屋カレー」
などを提供しています。

営業時間:月~土曜日 12時~午後6時
       ※ランチは木、金、土のみ
定休日:日曜・毎月28日 他不定休あり
問い合わせ:営業日の午後2時~午後5時