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2023年3月18日弥生の参

長野・富士見町
~アルプスの夫婦食堂~

舞台は長野県富士見町。築250年の古民家を改装して『小さな食堂 山ひこ』を開いた矢沢吉美さん(57歳)と夫の正文さん(55歳)が主人公です。
神戸で生まれ横浜で育った吉美さんは、東京の銀行で営業の仕事をしていました。26歳で結婚しましたが48歳のとき離婚を経験します。一人になり「一度きりの人生、やりたいことをしよう」そう考えた吉美さんは、手始めに以前から興味があった家庭菜園を始めました。そして自分で育てた野菜を美味しく食べたいと、今度は調理学校に通います。これがきっかけで吉美さんは料理に目覚め、ついには会社を辞め都内の料理店で働き出しました。そんなある日、知人から「山梨で一緒にカフェを始めよう」と誘われ、生活拠点を山梨に移します。カフェ開業準備に追われる中、車の運転免許を取得しようと教習所に通い、そこで正文さんと“運命の出会い”を果たします。正文さんは富士見町出身。東京芸術大学を卒業後、東京で絵画教室をしながら画家として活動していましたが、父親の病を機に6年前に帰郷。知人の農林業を手伝いながら木製家具などを制作していました。
正文さんと出会ってほどなく、吉美さんに悲しい現実が…。知人と開店準備を進めていたカフェが頓挫したのです。落胆した吉美さんでしたが、一先ず富士見町のペンションで住み込みで働くことに。でも部屋には引っ越し荷物が入りきらない。そのことを知った正文さんは、荷物の保管場所として古民家を探してくれました。さらに、いずれ吉美さんが自分の店を開業できるようにと、古民家の改装を始めたのです。これをきっかけに2人は距離を縮め2019年に結婚。そして去年10月、改装を終えた古民家で吉美さん念願の店『小さな食堂 山ひこ』をオープンしたのです。
『小さな食堂 山ひこ』の人気メニューは、人参のポタージュと自家製フォカッチャのランチ。そして、具沢山のけんちん汁、お漬物、凍み大根の煮物などが付いた「山ひこランチ」の2種類。調理は吉美さん、正文さんも盛り付けや接客を手伝っています。
幾多の困難を乗り越え、夢を叶え、本当の幸せを見つけたと語る吉美さん。信州で出会い、結ばれた正文さんとの穏やかな暮らしを紹介します。

『小さな食堂・山ひこ』は昼のみの営業。この日は、近所の今井さんご夫婦と移住仲間の中林淳子さんがいらっしゃいました。中林さんは「楽しそうに人生を歩んでいる吉美さんと正文さんが憧れであり、目標なんです!」と、目に涙を浮かべ語っていました。それを聞いた吉美さんは「改めて、いい出会いに恵まれ幸せ」と笑顔でした。

定休日、吉美さんはランチの仕込み、人参のポタージュ作りです。茹でた人参をミキサーにかけ、さらにザルで濾します。吉美さんは手間暇を惜しみません。「大変とも思うけれど、この手間が楽しい」と言います。困難を乗り越え、夢を叶えた吉美さん、厨房で穏やかな時間を過ごします。

夫・正文さんは、東京芸術大学で日本画を学んだ画家。現在は木製の器や家具なども作っています。そんな多才な正文さんを吉美さんは、「あー」と呼んでいます。一方、正文さんは吉美さんを「うた」と呼びます。それは吉美さんが短歌を詠むから。そんな吉美さんが東京時代に詠んだ短歌が…「草花に雨しみわたる朧夜(おぼろよ)の大江戸線はお化けを乗せて」。この短歌を聞いた正文さんは、「仕事に疲れた自分を灯影したものが、短歌に昇華されたのかなと感じる」と、当時の吉美さんの心情を察していました。

この日、吉美さんと正文さんが訪れたのは、自宅から歩いて5分ほどの正文さんのご実家です。母・文子さんと大病を患った父・正彦さんの様子を見に足を運んだのです。父・正彦さんは10年ほど前まで、『山ひこ木材』という屋号で材木店を営んでいました。この屋号を無くしてしまうのが忍びないと食堂の名前を『山ひこ』にしました。両親への感謝の気持ちが込められているんですね。

楽園通信

小さな食堂 山ひこ

吉美さんが営むランチ営業の食堂です。メニューは吉美さんが丁寧に仕上げたポタージュのランチと、けんちん汁などが付いた「山ひこランチ」の2種類から選べます。
尚、メニューは季節・食材によって内容が変わります。

営業時間 午前11時30分~午後3時(14時30分 L.O.)
定休日 水・木・金曜
山ひこランチ 1,000円~(1日20組限定)