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2023年2月4日如月の壱

石川県・輪島市
~未来につなぐ故郷スペシャル 2023 立春~

「SDGs」をテーマにした1時間拡大スペシャル。Uターンした故郷と、移住し根付いた新たな故郷を、明るく元気にしている2組の夫婦をご紹介します。
まずは、石川県輪島市の人里離れた山間に移住したご夫婦のお話です。里山で育てた豆や野菜、山の幸を使った“和菓子工房とカフェ”を開いた萩野由紀さん(56歳)と、建築の仕事をしながら妻の活動を支える夫の紀一郎さん(58歳)が主人公。地元のおばあちゃんたちから教わった、自然を敬い暮らす知恵や伝統食作りを生活に取り入れ、里山暮らしを楽しんでいます。東京に生まれ育った由紀さんは建築デザインを学び就職しましたが、結婚を機にアメリカ留学する紀一郎さんについて行くことに。日本と米国を行き来するうち「和紙作りを勉強したい」と思い立った由紀さん。受け入れてくれた紙漉き工房があったのが、輪島市三井町でした。家族と共に訪れると…茅葺の家に田んぼ、美しい自然が織りなす風景はまるで昔話に出てくるような世界。この地が気に入り「移住するぞ」と決めたのは紀一郎さんの方でした。当時3人の子育てに追われていた由紀さんは初めての田舎暮らしに最初は戸惑ったものの、元来好奇心旺盛なタイプ。野菜を育て、四季折々に保存食に加工しながら暮らすおばあちゃんたちと交流するうち、見よう見まねで野菜作りを始めます。地元住民や都会の人を巻き込み、里山の自然や伝統を守る活動もスタート。その一つが田んぼのあぜで豆を育てる昔ながらの「畔豆」の復活でした。子育てが終わる頃、この豆を使って何かをしたいと思い立った由紀さんは、和菓子を作ることに。2020年5月、自宅で和菓子工房『のがし研究所』、完全予約制の『の菓子café』をオープンさせました。食材は小豆をはじめとする6種類の自家製豆に畑の野菜や、山で採れる木の実、海藻など地元のものづくし。さらに地域の伝統行事を自分流にアレンジしてカフェのイベントに取り入れ、お客さん方に伝えています。日々自然に感謝しながら「里山暮らし」を謳歌する由紀さんと紀一郎さん、笑顔一杯の毎日です。

地域のお年寄りと交流するうち、由紀さんが強烈に興味を持ったのが毎年12月に米農家が行う、奥能登の農耕儀礼。
それは「あえのこと(田の神様まつり)」と呼ばれ、“田んぼの神様”に一年を感謝し、自宅に招いてもてなす大変珍しく厳かな行事です。
由紀さんはかつて、行事当日にご近所のお宅を訪ねて回り調査しました。
それぞれ違いはありますが、どの米農家も一升マスに沢山の赤飯を入れ、海の幸・山の幸を輪島塗のお膳に並べて神様を迎えていたんです。
そして昨年12月。萩野さんご夫婦は地元の方やお客さんを招き「アエノコトnogashitrail」と称すイベントとして、萩野家流「あえのこと」を行いました。
近所の米農家さんの田んぼを借り、行事に詳しい地元神社の宮司・細川さんに指導を受けながら毎年行っています。
まず田んぼへ出向き“田の神様”にお礼し、お連れします。
この時「出発します、田んぼがぬかるんでいるので気を付けて」など、神様がそこにいるように声をかけます。
自宅では“ごっつお(御馳走)”でもてなし、マスからこぼれ落ちそうな大量の赤飯や、ちくわ一本やお揚げ丸ごとを煮込むダイナミックな煮しめ、巨大おはぎなど、何もかも大きくするのがしきたりです。
ご夫婦は自分たちなりのやり方で、伝統を未来に残したいと考えています。

月に一度ほど、由紀さんが完全予約制で行うのが「の菓子アフタヌーンティー」。
自家栽培で作った沢山の種類の豆や季節の山の幸、畑で採れる野菜などを使って毎回新作の和菓子を作り、自家焙煎の野草茶と共に3種ほどお出ししています。
今回は冬がテーマ。まずは、ミカンの皮やジャムで味や風味をつけた「蜜柑の生菓子」から。また能登では冬に水ようかんを食べる風習があり、由紀さんは自家製の大納言小豆をふんだんに使い、甘さ控えめの水ようかんを作りました。続いてはシロップ漬けの柚子の皮に、柚子果汁で味を調えた道明寺粉を詰めた「生柚餅子」。これは軒先につるし、収穫体験をして頂きます。最後のお菓子はというと…突然、由紀さんが首からお菓子入りのお盆をつり下げノスタルジックな“駅の売り子”に扮して登場!お持ちしたのはようかんをカステラ生地で挟んだ昔懐かしい「シベリア」です。参加者の皆さんも「面白い!」と大喜び!お客さんを楽しませながら、里山の知恵や歴史も添えて伝える、これが「の菓子スタイル」です。


京都府・伊根町
~未来につなぐ故郷スペシャル 2023 立春~



続いては京都府伊根町、2010年に放送した一家の元を13年ぶりに再訪します。主人公は、Uターンして伝統建築の「舟屋」で一日1組の宿を始めた、鍵 賢吾さん(52歳)と美奈さん(52歳)ご夫婦。元々は美奈さんの故郷・茨城県で喫茶店を営んでいましたが、賢吾さんの父・昭敏さんが病に倒れ故郷の伊根町に戻ることに。そして父が残してくれた舟屋を改装し、漁業体験民宿『舟屋の宿 鍵屋』を2009年にオープンしました。当時の町は高齢化が進み寂しくなっており、若者はみんな外に働きに出て、宿泊施設の数も激減していました。そのため鍵夫婦の帰郷は年配の方々に喜ばれ、大いに期待されていました。そして13年後の今…、変わらず元気に宿の営業を続けるご夫婦は地域の若者を牽引する存在となり、夫婦の姿を手本に若手が次々と宿泊施設を開業していました。また、取材当時に小学生だった長男・海斗さんは現在24歳に!父に代わって遊覧船・釣り船の船長をし、夜はシェイカー片手に鍵屋専属バーテンダーという2つの顔を持っています。また賢吾さんは数年前に仲間たちと、観光客の散策拠点としてカフェや和食の店が入る複合施設『舟屋日和』を立ち上げました。今や周辺には観光客が集い、京都でも人気の観光地に。さらに鍵さんご夫婦は今年、親戚の漁師小屋を改装して会員制の宿&キッチン『おふくわけ』もオープンさせました。ある日、プレオープンが行われ、やって来たのは有名イタリアンシェフ。パスタやローストチキンなど美味しいイタリアンを地元の皆さんに振る舞いました。ご夫婦は都会からプロの料理人に泊まってもらい、彼らには美しい伊根の風景&新鮮な地元食材などの“お福分け”を、そして町の人々には料理人が来た時に珍しい料理を“お福分け”したいと、この施設を作ったんです。ご夫婦や海斗さんも新たな料理を学べてこれまた自分達にも“お福分け”!伊根町を愛する鍵夫婦の挑戦が故郷に活気をとり戻すきっかけとなり、今は長男の海斗さんにその思いが受け継がれています。これからがますます楽しみです。

前回の2010年の放送時は、高齢化・過疎化に悩む町の姿をお伝えしていましたが、13年という月日の間に劇的に変化していました。漁港に行くと、元気に働く若手の姿が見受けられ、とっても活気がありました。そして鍵屋にも大きな変化が!13年前は賢吾さんが行っていた伊根湾の遊覧船ガイド、今は主として長男・海斗さんに任せています。面白い地元あるあるネタなど、海斗さんならではのユーモアを交えたガイドでお客さんに大人気!海斗さん指名のお仕事も来るほどです。そのおかげで鍵さんご夫婦は、これまでよりも宿の料理に力を入れられるようになりました。今はブリを中心とした冬の魚が美味しい季節。ブリしゃぶにカマ焼き、ブリ大根・寿司などに加え、皿一杯にずらりと盛り付けられた地魚のお造りなど「いろんな種類の魚がとれてしまうので、あれもこれも食べてもらいたい!」と張り切っていました。また、そんな宿泊客の食卓にはバーテンダーの衣裳に身を包んだ海斗さんが現れます。東京でバーテンダーの修業をした海斗さん。見事な手さばきでオリジナルカクテルを作り、お客さんを喜ばせているんです。

2010年時点で伊根湾周辺の宿泊施設は減り、一時は稼働しているのが2軒ほどになってしまったため、賢吾さんは「いつか40軒に増やし、町を賑やかにしたい」と夢を語っていました。そして今年、なんと海沿いの宿泊施設は35軒になる予定です。宿泊施設の数も、劇的に増えていたんです。鍵夫婦に影響を受けて開業したのが、海の師匠・治成さんの息子・亜衡(つぎちか)さん。実家の舟屋を改装し『舟屋の宿 蔵』を始め、他にも続々と若手が新しい宿を開業しています。これで宿泊できる場所が増え、町に多くの観光客がやって来るようになりました。また、伊根町に新スポットもできました。舟屋を模した形の『舟屋日和』という、飲食店などが入った観光複合施設。実は賢吾さんがプロジェクトリーダーとなって地元の仲間たちと立ち上げに関わりました。これまで人が集まる場所が無かった伊根町にどうしたら人を呼べるか、賢吾さんと仲間たちは、来る日も来る日も会議を重ねて完成しました。海の目の前に建つ施設の中にはお洒落なカフェや、地魚料理や寿司などを楽しめる和食店があり今や沢山の観光客が、この『舟屋日和』を目指して伊根を訪れるようになりました。

楽園通信

のがし研究所

石川県輪島市編の主人公のお菓子工房。
完全予約制で、月に数日のみ開きます。
「の菓子アフタヌーンティー」は自家栽培小豆や四季折々の草木、和菓子の道具など「の菓子」の背景を感じながら「の菓子」を楽しむ完全予約制イベント。また、「の菓子トレイル」は萩野家流の「あえのこと」など里山の散策との菓子とお茶を楽しむイベントです。
(※どちらも不定期で開催)

「の菓子afternoon tea」
・完全予約制・8席限定・4,000円〜
・不定期開催 2回/月程度
「の菓子 online shop」
・季節の詰め合わせ「の菓子」の通販サイト
・不定期開催 2回/月程度
「の菓子trail」
・完全予約制・8席限定・5,000円〜
開催日時・予約・詳細はのがし研究所のFacebookまたはInstagramをご覧ください。

舟屋の宿 鍵屋

京都府伊根町編でご紹介した主人公の宿。
一日1組限定で、舟屋まるごと貸切です。
お部屋は、1階食堂と2階の寝室と展望ルーム。
食事は、伊根の旬の海の幸が味わえる他、バーテンダーの長男・海斗さんによるオリジナルカクテルも味わえます。
そして漁業体験民宿ならではの釣り体験と伊根湾遊覧も楽しめます。

電話:0772-32-0356
料金:舟屋日和「海宮(わだつみ)」での夕食プラン26,000円(2名)
   鰤(ぶり)コース 41,000円(2名)他
   釣り船体験 5,500円~(2名以上)
毎月1日(10時半より)から3か月先の予約を電話で受け付けています。

伊根町観光交流施設 舟屋日和

京都府伊根町編でご紹介した主人公が、新たに創設した伊根町の観光拠点の複合施設。
割烹料理店、カフェがあります。

電話:0772-32-1700
定休日:水曜日