
長野市・戸隠
~元建築士が継ぐ 美しき竹細工~

舞台は長野市戸隠。父の跡を継ぎ400年の歴史を誇るという「戸隠竹細工」の職人になった元建築士・徳武利文さん(65歳)と支える妻・文子さん(66歳)が主人公です。
戸隠出身で、ものづくりが好きだった利文さん。民宿だった実家を継がず、東京で建築設計の仕事に就き、松本市出身の看護師・文子さんと知り合い、26歳の時に結婚します。故郷に住む両親を思い、長野市に戻って地元の設計事務所に転職。共働きで2人の娘を育て、忙しい日々を過ごしました。母・ふじみさんが亡くなったことを機に民宿は閉めますが、戸隠竹細工の職人だった父・圭太郎さんは一人暮らしを続けていました。
そんな父を気にかけていた利文さんに思わぬ転機が訪れます。それは、57歳の時に見た初夢。「竹細工をあなたはやるんですよ」という天からのお告げでした。文子さんの後押しもあり、利文さんは1年後に会社を辞め、圭太郎さんに弟子入り。竹細工を学び始めて2年が経った頃、圭太郎さんは天寿を全うしました。“修業に終わりなし”そんな父の教えを胸に利文さんは、戸隠竹細工の伝統を守り、魅力を発信していきたいと実家を改装。2020年、『竹細工工房 文の郷』を開きました。
丈夫で見た目が美しい竹かごを作るには、正六角形を正確に編んでいくことが大切で、形の良し悪しも決まります。職人歴5年の利文さん曰く「職人になるには10年、15年の修業が必要。自分はまだひよっこ」とのこと。
伝統ある戸隠竹細工の職人の世界に飛び込み、日々奮闘する利文さんと、温かく見守る妻や家族、そして先輩職人や地域の方との交流を紹介します。



利文さんはこの日、材料の「ネマガリダケ」を調達します。戸隠竹細工の職人しか入れない黒姫山の中腹まで、歩いて約40分の山道を登ります。「ネマガリダケ」の群生地に到着すると手早くナタで採取。戸隠竹細工は、編む部分によって使う竹の年数が異なります。この日は1年目の若い竹を、自分が使う分だけ採り下山しました。



しなやかで粘りのある「ネマガリダケ」で竹細工を作っていく利文さん。作業途中の作品は必ず家に持ち帰り、文子さんに見てもらっています。毎回、クオリティが上がっていく姿を見ているからか「最初のころに比べると上手になったでしょ!」と嬉しそうな文子さん。笑顔で明るく利文さんをサポートします。



旅館の女将さんからの依頼で作った、「湯かご」の様子を見に来た利文さん。湯かごの取っ手と、経年により縁が広がってしまった「おしぼりかご」の修理を頼まれました。利文さんが向かったのは、師と仰ぐ井上栄一さんの工房です。父から学べなかった縁の修理方法を相談すると、惜しげもなく技を見せ説明してくれる井上さん。利文さん、しっかり技を学んで、職人としてどんどん成長していましょう!



師匠・井上さんの工房に戸隠竹細工の若い組合員が集まりました。よく集まってはこうして勉強会をしています。この日は、自分たちの作品を持ち寄り、アイデアや意見を交換します。しなやかなで強い「ネマガリダケ」を使った伝統ある竹細工。利文さんは、ふるさとの宝「戸隠竹細工」を改めて伝承したいと心に刻みます。




戸隠観光情報センター
長野市戸隠の魅力といえば、「天岩戸開き神話」の舞台とされる戸隠神社や、「ぼっち盛り」という小分けの盛り付けが特徴の戸隠そば。そして、伝統工芸「戸隠竹細工」を制作・販売するお店もいくつかあります。
利文さんの工房『文の郷』の竹細工はオーダーメイド。これからの時期はワークショップも予定しているそうです。
電話番号 026-254-2888
営業時間 午前9時~午後5時