
神奈川・葉山町
~今日も好日 カヤック工房~

神奈川県葉山町で木製カヤックとカヌーを製作する『好日葉山工房』を開いた、原田幹寿さん(68歳)と師匠の梅原雅士さん(74歳)が主人公です。
愛知県春日井市出身の幹寿さんは、地元の大学を卒業後、アメリカに短期留学をしました。帰国後、愛知県の工作機械メーカーに就職し、27歳の時に留学先で出会った三千代さんと結婚。赴任先のイギリスで2人の子どもが生まれました。その後、工業用制御装置メーカーに転職し、東京での勤務をきっかけに神奈川県藤沢市に移住。幹寿さんに転機が訪れたのは55歳の時、大腸がんが見つかったことでした。およそ半年間続いた闘病生活の中、今後の人生を考えた幹寿さんは「これからは、やりたいことをできるだけ実現させよう」と心に誓いました。そのやりたいことの1つが、自然に恵まれた葉山町で暮らすこと。さらに、以前から興味があったカヤックに乗ることでした。ある日、葉山町に建てた自宅の近くに、木製カヤックの工房があることを知り門を叩きました。その工房の主が後に一緒に工房を始めることになる、師匠・梅原雅士さんでした。
雅士さんは東京都出身で造園業を営んでいました。50歳の時、ドライブに行った先でたまたま見かけたカヤックに魅了され、趣味で木製のカヤックを作り始めます。そして63歳の時、造園業の傍ら葉山町にカヤックとカヌーの工房を構え、幹寿さんのように自分で作りたいという希望者の指導をしていました。しかし、雅士さんにも転機が訪れます。それは工房を構えてから9年後のこと。借りていた土地が売却されることになり、やむなく工房を閉めることになったのです。一方その頃、工房を開こうと準備を進めていた幹寿さん。師匠・雅士さんの近況を耳にし「それなら一緒に工房をやりましょう」と声をかけました。こうして、師匠と弟子がコンビを組み、今年2月、『好日葉山工房』を新設しました。工房では木製のカヤックやカヌーの製作販売の他、ワークショップも行っています。
「たくさんの人に波のゆらぎを楽しんで欲しい」それが2人の共通の思いです。日々カヤック作りに情熱を傾ける幹寿さんと雅士さん、それを支え応援する家族の姿。そして工房を開業して出会った様々な人たちとの交流を通して、葉山町で見つけた男2人の第二の人生を紹介します。



ワークショップでカナディアンカヌーを作っている杉本さんが工房にやってきました。この日は、カヌーの強度と耐水性を保つため、外壁にガラス繊維のシートを張りつけ、接着用の樹脂を塗る作業でした。週に1度の作業でおよそ3か月、「少しずつですが完成に近づいている」と嬉しそうな杉本さん。でも完成までは、まだ1カ月ほどかかるそうです。「作る工程から楽しむ」それが『好日葉山工房』のモットーなんです。



カヤックやカヌーの制作には主に宮崎県産の杉材を使っていますが、いずれは地元葉山の杉で作りたいと幹寿さんと雅士さんは考えています。実は、葉山の山には戦後、植林された杉が沢山ありますが、放置され荒れている山が増えているのだそうです。そんな山を守り、木材を活用しようと活動しているボランティアグループから「間伐した杉を使えないか」との話が舞い込んだんです。早速、山を案内してもらった幹寿さんと雅士さん。間伐予定の樹齢70年程の杉を目にして「この杉で作りたい」、「なんだかワクワクする」と目を輝かせていました。



工房を始めて5カ月。幹寿さんと雅士さんのご家族が初めて一堂に会しました。工房のオープンを記念して、みんなでバーベキューです。師匠と弟子の2人が始めた工房について、ご家族に聞いてみると…幹寿さんの長女・千里さんが「工房を継ぎたい」と打ち明けてくれました!それを初めて聞いた幹寿さんは満面の笑顔!家族みんなに祝福された『好日葉山工房』、改めての船出の日となりました。



晴天のこの日、工房でカヤックの準備をするお2人の姿がありました。忙しくとも、時間を見つけては、自分で作ったカヤックで海に向かいます。海は凪、富士山も見える絶好のカヤック日和。「カヤックに乗って波の“ゆらぎ”を感じる時が至福の時間」と笑顔のお2人。葉山の海とカヤックを心から愛する幹寿さんと雅士さんです。




好日葉山工房 Goodday Hayama Workshop
雅士さんと幹寿さんの指導でカヤックやカヌーを作るワークショップがあります。
世界に1つだけのオリジナルカヤックを作ってみてはいかがでしょうか。
詳しくは『好日葉山工房』のホームページをご確認ください。
不定休