
東京・練馬区
~まるで本物!ミニチュアパン~

舞台は東京都練馬区。主人公・今川あゆみさん(36歳)が作りだすのは、“こんがり焼け、乗せたバターが溶け出しているトースト”や“チーズがトロリと溶けた具だくさんのピザトースト”など…。これはどれも樹脂粘土で作られた、まるで本物のようなミニチュア作品、どれも指先にちょこんと乗るほどのサイズなんです!あゆみさんは去年、自宅でアトリエ『ima_pan』を本格始動させ「ミニチュアパン作家」として活動を始めました。前職はなんと、本物のパンを焼きあげるパン職人でした。
神奈川県川崎市出身のあゆみさん。幼い頃からパンが大好きで、パン屋さんになりたいと心に決めたのは中学生の時でした。高校卒業後は、迷うことなく製パンの専門学校へ進学し、卒業後はパンの製造・販売会社に就職します。パン職人は体力勝負の仕事でしたが、技術が向上していくことが楽しく充実した日々を過ごしていました。その後は店長として働き、パンの全国コンテストで準優勝するなど輝かしい経歴を持つあゆみさん。当時、休日の息抜きとして楽しんでいたのが手芸で、最初はスイーツをモチーフにした実物大の作品でしたが…。なんでも突き詰めてやりたくなる性格から、だんだん作るサイズが小さく精巧になっていきました。ところが、2020年コロナ禍で状況は一変します。お店の休みが増え外出もままならない中、趣味のミニチュア製作に力を入れるようになり、粘土ミニチュアの専門書を読み独学で研究。ミニチュア製作の技術が向上していくにつれて、一度真剣にやってみようと思い、2021年8月に会社を退職し、『ima_pan』を本格始動しました。
パン職人からミニチュアパン作家へ転身したあゆみさん。パンへの愛情を存分に込めて、どこまでもリアルさを追求するミニチュアパンの世界は驚きの連続です。



『ima_pan』では「マヨたまトースト」など様々な種類のトーストや、クロワッサン・食パンなど樹脂粘土製のパンミニチュアを、ピンバッジやピアスなどのアクセサリーにして販売しています。インターネットのみの販売で、個数限定の受注生産です。毎回、即完売になるほど人気で作品はいつも一回きりの限定品。あゆみさんは「常に新しいものにチャレンジしたい」と、定番商品以外は同じ物を作りません。トッピングのフルーツやナッツなど具材の一つ一つまで手作りで行うため、注文を受けてから納品まで2カ月ほどかかります。過去には、ソテーしたエビやアスパラガスを挟んだクロワッサンサンドやフルーツをたっぷり乗せたパンとコンポートをセットにしたピアスなどを販売。今回の受注生産で販売した新作の「ネコさんシリーズ」はネコ型の食パンに生クリームやサクランボなどをトッピングしたキュートな作品。ミニチュアファンのみならず、ネコ好きの皆さんにも大好評でした。



「やるならすごいヤツになりたい!“絶対本物じゃん”と言われるくらいのクオリティーにしたい」と言い切る、あゆみさん。日々、妥協を許さず、よりリアルにミニチュアパンを作るため研究を続けながら製作しています。
作り方は…まず、オーブン粘土で食パンの生地の気泡までも細かく再現した原型を作り、この原型をもとに型を作ります。より本物らしく作るには粘土の色付けが命。前職であるパン職人の知識を生かし、オーブンでパンが焼けた時の火の入り方などを精巧に表現していきます。少しずつ色を変えたアクリル絵の具を、5~6回塗り重ねて焦げ目をつけていくと…本当にこんがり焼けたようなリアルな出来に!時には道具まで自作するあゆみさん。ラップの箱に付いている刃を切り取ってまるめ、小さなしぼり金が完成、これを使って食パンの上に薄い卵色の樹脂粘土をしぼりだすと…超リアルなマヨネーズに!驚きです。



常に一人でミニチュア製作に打ち込んでいるあゆみさん。週に一度は休日をとり、アクセサリーパーツの専門店に材料の買い出し行ったり、パン屋さん巡りを楽しみます。といっても、結局はミニチュア製作のための研究なんです。アクセサリーパーツの店では金属パーツの仕入れや、アクセサリーの完成品を見て勉強。パン屋さんでは、焼き目のグラデーションやフランスパンの切れ目などに注目し、「ミニチュアで作った場合ここがカワイイ!」と想像したりしているそう。この日はパン職人時代の会社の後輩、澤畑さんと角谷さんと待ち合わせ。以前から気になっていた練馬区桜台にあるパン店『ブーランジュリー
ルニーク』で買い物をし、あゆみさんの自宅でランチ女子会です。パン職人から転職して9カ月、あゆみさんが近頃感じている心境の変化が…「パンをまた作りたくなった。自分でパン屋さんを始めて、週の半分パン屋さん、半分ミニチュア作って」そんな夢を後輩に語っていました。



仕上がったパンミニチュアに、ピアスやピンバッジの土台など金属アクセサリーパーツを接着し、ラッピングをしたら完成です。作品が届くのを待ってくれているお客さんの顔を思い浮かべながら、一つ一つ丁寧に梱包して発送します。そして、仕事が落ち着くと向かうのが、神奈川県川崎市にある実家。母のひろみさんはいつも新作のアイデアを出してくれますが、あまり採用されないそうで「いつもウルトラ却下!」とぼやいていました。そして、また新作の試作にとりかかります。次は夏に向けて爽やかな作品、フルーツたっぷりのデニッシュとフルーツソーダを作りたいというあゆみさん。パリパリしたデニッシュのリアルなパイ層や、みずみずしいフルーツ、シュワシュワと泡立つフルーツソーダなど、これまたリアルすぎる新作が完成しました!




ima_pan
あゆみさんが1つ1つこだわって作ったミニチュア作品が購入できます。
インターネット販売のみで、実店舗はありません。
受注生産なので、注文から発送まで2カ月ほどかかります。
詳細は『ima_pan』のインスタグラムをご確認ください。
ブローチ・ピンバッジ 2,300円~
イヤーアクセサリー 6,000円~