
群馬・みなかみ町
~囲炉裏の宿 ふるさと慕情~

舞台は群馬県利根郡みなかみ町。故郷にUターンし、2017年に農家民宿を始めた大木栄治さん(62歳)が主人公です。
農家の3人兄弟の長男として生まれた栄治さん。都会への憧れから高校を卒業後、東京の大学へ進学し、卒業後は大手住宅メーカーに就職。その後、40代で洋菓子製造販売会社に転職し仕事にまい進しましたが、50代に入ると甲状腺の機能が低下し病院通いをするように。そんなある日、たまたま病院の待合室で見たテレビ番組が帰郷のきっかけとなりました。テレビで流れていたのは竹細工の様子。栄治さんは実家の囲炉裏端で竹籠を編む祖父の姿を思い出したのです。すでに両親も他界し、囲炉裏のある実家は空き家になっていました。「このままでは家も田畑も荒れていく。長男として自分が守らなければ」と栄治さんは帰郷を決意。56歳で退職し、みなかみ町に戻り農業を始めました。するとほどなく、町の依頼で修学旅行生の体験民泊を受け入れることになったのです。農業を始めたばかりで最初は不安でしたが、楽しそうに畑仕事をする子供たちの姿に癒され、更に子どもたちから貰った手紙に感動。栄治さんはやり甲斐を感じ民宿をやろうと決意します。こうして、2017年3月『農家民宿 月夜野(つきよの)いろり庵』を開業しました。宿名の“月夜野”とは合併前の町名で、“いろり”は幼い頃から実家にあった囲炉裏に因んでいます。
慕わしい故郷にUターンして6年。実家で農家民宿を始めた栄治さんの暮らしぶりと、宿泊客や仲間との交流を紹介します。


部屋の真ん中にある薪ストーブを置いた囲炉裏。ここで調理するのは、自家製野菜をたっぷり入れた鍋や、おでん、焼き魚など。『月夜野いろり庵』は簡易宿所のため、お客さんも一緒に調理します。美味しい料理と共に、囲炉裏の熱でゆっくりと温めた熱燗も格別です。「薪の香りが落ち着く」と宿泊のお客さんにも人気です。


この日、栄治さんが向かったのは、大木家が代々受け継いできた山林。幼い頃、チェーンソーで木を伐る父・満雄さんの姿に憧れていた栄治さん。故郷に戻った今では自らチェーンソーを操って、囲炉裏で使う薪を調達します。当時は、嫌々やっていた薪作りの手伝いも、今では懐かしい思い出。「気分転換になる」と楽しみながら薪を割る栄治さんです。



月に1度ほど『月夜野いろり庵』で開かれるランチ会。季節の味覚が採れるとご近所の主婦の皆さんが集まるのが恒例となりました。この日は、栄治さん指導の下、群馬県の郷土料理“おっきりこみ”を作りました。「お父さんのように温かくて優しい」とみなさんに慕われています。


栄治さんの日常は毎朝欠かさない愛犬・ジンくんとの散歩から始まり、朝焼けなど気に入った故郷の風景を写真に収めます。宿泊の予約がない時には、ジャズを聴きながらコーヒーを飲み愛猫とゆっくり過ごし、「邪念を拭いたい」と近くのお寺で座禅を組むことも。そんな暮らしを楽しんでいる栄治さんです。




農家民宿 月夜野いろり庵
寒いときは囲炉裏端でまったり。暖かくなったら、野菜の収穫体験。
季節によって体験内容も変わるので、四季折々の楽しさがあります。
詳しくはホームページをご確認ください。
1泊2食(日帰り温泉付き) 8,500円
※一日1組4名まで(週2組限定)
不定休
※群馬県まん延防止等重点措置の実施中は休業