
埼玉・川越市
~ 元エンジニア俺流の農業 ~

舞台は埼玉県の南部に位置する川越市。エンジニアの経験を生かして、肥料と農具を改良しながら野菜を育てる八木澤勝一さん(65歳)と支える妻の善子さん(56歳)が主人公です。
福島県出身、工業高等専門学校で電気工学を学んだ勝一さん。埼玉県にあるオートバイメーカーで研究開発エンジニアをしていました。33歳の時に善子さんと職場結婚し3人の子供が生まれます。勝一さんに転機が訪れたのは、住んでいる団地の理事に選出された58歳の時。理事仲間から家庭菜園を勧められ、軽い気持ちで畑を耕したのがすべての始まりでした。“初めて使った鍬が扱いにくい”と感じ、エンジニア魂に火がついたのです。“使い勝手の悪い鍬を何とかしたい”と休日に鍬の改良に取り組み次第に農業にも興味を持った勝一さん。62歳で会社を退職後、県立農業大学校に短期農業学科があることを知り入学。1年間有機農業を学びながら農具を研究しました。そして2019年、農業大学校を卒業し、休耕畑を借りて農法を研究しながら野菜を育てる暮らしを始めたのです。
勝一さんのご自宅は、34年前に購入した団地の5階。夕方、勝一さんは毎日向かう場所があります。それは同じ棟の2階の部屋。そこには夕食を作る妻・善子さんの姿が…。実は団地にはエレベーターが無いため5階までの階段移動が辛くて、善子さんは2階の部屋で暮らしているのです。そもそも2階の部屋を購入したら5階の部屋は手放すつもりでしたが、勝一さんは眺めが良いからと、5階の部屋でそのまま暮らすことに。現在、勝一さんが2階の部屋に行くのは夕食の時だけなんです。そんな夫婦の日常と、肥料と農具を改良して野菜作りに励む勝一さんと仲間たちの交流を紹介します。



勝一さんが借りている畑は4反。鶏糞、米糠、オカラなどを混ぜた自作の肥料を使って、独自の農法で大根や白菜などの野菜を育てています。また、畑の入り口には直売所を設置し、野菜の販売もしています。形が悪いような野菜は“おまけ”として無料で分けています。お客さんから「びっくりするほど甘くて美味しい」と言われ「そういう育て方をしています」と勝一さん自信満々!満面の笑顔です。



団地の2階で暮し、普段はドラッグストアにお勤めの善子さん。お休みのこの日は、勝一さんのバッグを手作りしていました。一緒に作っていたのは双子の妹・光子さんです。光子さんも同じ団地に住んでいるので、しょっちゅう行ったり来たり。手芸を楽しんだ後は、旦那さんの愚痴を言い合いながら?コーヒータイム!楽しんでいます!



夕食は善子さんが暮らす2階で食べるのがお2人のルール。また、洗濯機は勝一さんが暮らす5階にはありません。そのため、畑仕事で汚れた服を入れ洗濯機を回すまでは勝一さん。その後干して畳むのは善子さんです。善子さん優しい!夕食の献立には勝一さんが育てた野菜を必ず使います。最近は大根、さつま芋、白菜を使ったメニューが毎日だそうです。善子さんは「私は白菜よりキャベツが好き!」と勝一さんに要望していました。因みに、朝食は善子さんが買って準備してくれています。それを畳んでもらった洗濯物と一緒に5階に持ち帰る勝一さん。善子さん、やっぱり優しい!



この日、勝一さんが待ちに待った“ある物”が届きました。鍛冶屋に特別に発注していた勝一さんオリジナルの鍬です。「軽い、軽い!」と勝一さんも大興奮。使いやすくイメージ通りに仕上がったようです。細かな注文に応え作ってくれた福島県の鍛冶職人・永井寛人さんは「作っている過程が楽しかった。喜んでもらえて嬉しい」と笑顔。でも、勝一さんは更なる改良を考えているようです。まだまだエンジニア魂全開の勝一さんです!



かさはた菜園の直売所
八木澤さんの畑に設置している小さな直売所です。畑に幟がたっている時は販売中です。野菜が無くなり次第終了です。